説明

受風計測装置及びこれを備えた受風監視システム

【課題】該受風計測器の風取入口以外を本体部で覆われているので、受風計測装置が鉄塔や電柱に架設されている電線やトランスのような設置機器の近くに設置されても、設置機器の点検・修理等の作業において、支障がほとんど生じない受風計測器を提供すること。
【解決手段】受風計測装置1は、ケーブルを保持するケーブル支持構造物に取り付けられる。受風計測装置1は、ケーブル支持構造物に形成された本体部と、本体部に取り付けられた受風計測器であって該受風計測器の風取入口以外を本体部で覆われている受風測定器と、を備える。風取入口はケーブルの伸びる方向に直角の方向に向いていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転計測装置及びこれを備えた受風計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔のような支持構造物に架設される配電線のようなケーブルは、このケーブルに対して直角の方向に吹く風による、風圧荷重やケーブルの大きな揺れなどの配慮が必要である。
【0003】
従来、このような風を計測するために、受風計測装置として気象観測用プロペラ風車を備えた風向風速計を鉄塔の頂部や鉄塔に設けられた専用の設置箇所に設置して、定点観測が行われている(非特許文献1参照)。
【0004】
一般的な気象観測用プロペラ風車はプロペラが裸状態で鉄塔や電柱に設置されるので、気象観測用プロペラ風車の設置場所は、専用支持物や建物等の頂部又は腕金外部に限定される場合が多々ある。
【0005】
また、気象観測用プロペラ風車は、マクロ的な風速データの収集を目的に、気象台や消防のような行政によって限定された範囲に設置される。よって、任意地点での風速観測は、携帯用計測装置を携帯して行う必要があるので、その風速観測ができる範囲は、限定された範囲にとどまる。
【0006】
また、気象観測用プロペラ風車は、プロペラの回転を電磁的変換により計測している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「鉄塔や風車などについて暴風に対する安全性を評価するプログラム」http://csweb.denken.jp/transfer/event/pdf/2008_tech_M3.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、気象観測用プロペラ風車は、プロペラ部分が露出しているから、設置できる箇所に制約があったり、外部要因による破損があったりする。特に、気象観測用プロペラ風車は、これを鉄塔や電柱に設置する場合、鉄塔や電柱に架設されている電線やトランスのような設置機器の点検・修理等の作業において、支障が生じない位置、すなわち、電線から離れた位置することが求められるので、ケーブルに作用する風の直接的な測定がしにくい。
【0009】
また、気象観測用プロペラ風車は、マクロ的な風速データの収集を目的に行政によって設置されるので、地形や都市構造によるミクロ的観測、傾向が困難・一般利用が困難な場合が多い。特に、都市においては、隣接する高層ビルの間に設置される電線に作用する風力の測定が困難な場合が多い。
【0010】
特に、ケーブルを保持するケーブル支持構造物に取り付けられる受風計測装置は、ケーブルに吹き付ける風のうち、ケーブルに対し直角の方向に作用する力の原因となる風成分を計測することが求められ、それ以外の方向における風成分は重要でない場合が多いが、上述の気象観測用プロペラ風車は、全方向の風、すなわち、風成分を測定するものなので、過剰測定装置となる場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上述の課題を解決するため、精鋭研究を重ね、以下の発明をするに至った。
【0012】
ケーブルを保持するケーブル支持構造物に取り付けられる受風計測装置は、前記ケーブル支持構造物に形成された本体部と、前記本体部に取り付けられた受風計測器とを備える。受風計測器は、該受風計測器の風取入口以外を前記本体部で覆われている。前記風取入口は前記ケーブルの伸びる方向に直角の方向に向いている。
【0013】
前記本体部は前記ケーブル支持構造物から前記ケーブルの伸びる方向に延在している。前記受風計測器は、前記伸びる方向において、前記本体部の先端部の近傍に取り付けられている。
【0014】
前記受風計測器は、回転軸とそれぞれが前記回転軸から半径方向にかつ前記回転軸の伸びる方向に延在する複数の板状の羽とを有する回転羽と、前記回転羽の半分を覆うカバーとを備える。
【0015】
前記本体部は、前記ケーブル支持構造物の腕金に形成されている。
【0016】
受風監視システムは、複数の上述の受風計測装置と、前記複数の受風計測装置に接続するネットワークと、前記ネットワークに接続した受風監視コンピュータとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、受風計測器は該受風計測器の風取入口以外を本体部で覆われているので、受風計測装置が鉄塔や電柱に架設されている電線やトランスのような設置機器の近くに設置されても、設置機器の点検・修理等の作業において、支障がほとんど生じない。
【0018】
また、風取入口はケーブルの伸びる方向に直角の方向に向いているので、ケーブルに吹き付ける風のうち、ケーブルに対し直角の方向に作用する力の原因となる風成分を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る受風計測装置の一部を省略した前面図である。
【図2】図1に示した受風計測装置の正面断面図である。
【図3】図1に示した受風計測装置をケーブル支持構造物に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示した受風計測装置の回転計測装置の一部を省略した前面断面図である。
【図5】図4に示した回転計測装置の説明のための一部を省略した前面図である。
【図6】図4に示した回転計測装置の動作を説明するための前面断面図である。
【図7】図6に続く回転計測装置の動作を説明するための前面断面図である。
【図8】本発明に係る受風監視システムを説明するための斜視図である。
【図9】本発明に係る別の受風計測装置の一部を省略した正面断面図である。
【図10】図9に示した受風計測装置の一部を省略した前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0021】
図1に示すように、受風計測装置1は、本体部10と、本体部10に取り付けられた受風計測器20とを備える。
【0022】
本体部10は、例えば、75mm×75mm×750mmの中空四角柱で形成されており、その一端部にスリット12とその中央に形成された凹部13と、他端部に後述する、複数の電線201を保持する電柱205のようなケーブル支持構造物200の腕金220(図3参照)に取り付け可能な取付部17とを備える。
【0023】
スリット12は、水平方向(図1の紙面において垂直方向)に形成されており、一対の側壁11を有する。したがって、スリット12は、風取入口として作用する。
【0024】
図1及び図2に示すように、スリット12及び凹部13は、それぞれ、本体部10に回転可能に収容された後述する受風計測器20のクロスフロー型風車22のうち、一方の半分を隠す大きさ、及び、他方の半分を露出する大きさを有している。これにより、本体部10には、クロスフロー型風車22のうち、一方の半分を隠す大きさのカバーが形成されているのと同じ作用を奏するので、本体部10に作業者が乗っても、スリット12が形成する空間は、クロスフロー型風車22が回転するに必要な空間を確保することができる。
【0025】
クロスフロー型風車22は、側壁11に回転可能に支持された回転軸23と、回転軸23から半径方向に伸びる複数の羽部21とを備える。羽部21の幅方向(図2の紙面において垂直方向)の寸法は、一対の側壁11の内寸法よりも若干小さく設定されている。
【0026】
複数の羽部21のうち、凹部13によって覆われている羽部21は風をほとんど受けない。したがって、方向W1の風は、風方向において回転軸23よりスリット12側の羽部21にしかほとんど当たらないので、クロスフロー型風車22は時計方向C1に回転し、方向W2の風も、風方向において回転軸23よりスリット12側の羽部21にしかほとんど当たらないので、クロスフロー型風車22は反時計方向C2に回転する。
【0027】
風の方向が方向W1、W2以外の方向である場合、その風は、その風方向において、回転軸23のスリット12側と凹部13側の羽部21に当たるが、凹部13で覆われている羽部21には、その風が当たらないから、回転軸23のスリット12側と凹部13側の当たる割合は、方向W1、W2方向の風速に応じた割合と略等しくなる。つまり、クロスフロー型風車22は、あらゆる方向から風が吹いても、方向W1、W2の方向に相当する風に応じた回転数で回転することになる。
【0028】
本体部10には、クロスフロー型風車22の回転を計測する回転計測装置100が取り付けられている。回転計測装置100は、クロスフロー型風車22の回転軸23の回転を計測する。
【0029】
図3に示すように、受風計測装置1の取付部17は、受風計測装置1の風取入口が電線201の伸びる方向に直角の方向に向くように、ケーブル支持構造物200の腕金220に取り付けられている。
【0030】
ケーブル支持構造物200は、図3では、電柱であるが、これに限定されず、電線や通信ケーブル等のケーブルを支持するものであればよく、例えば、鉄塔を挙げることができる。
【0031】
電柱205は、複数の電線201を電線支持用の腕金210で電気的に絶縁状態で支持している。
【0032】
図4に示すように、回転計測装置100は、回転体24と、一対の投受光子51、52と、光パルスカウンター70とを備える。
【0033】
回転体24は、被回転計測体に相対的回転不能に形成されており、本実施形態では、回転軸23の一部をなしている。回転体24は、この回転体24の回転軸を通りその回転軸と直角の方向に貫通する貫通孔25が形成されている。
【0034】
また、図5に示すように、回転体24は、回転体24の回転軸を中心軸とする円筒側面部26を備える。これにより、円筒側面部26の軸は、回転体24の回転軸の伸びる方向において回転体24と貫通孔25の軸線との交点を中心を通ることになり、また、円筒側面部26は、この中心を通る回転体24の半径方向に形成されていることになる。円筒側面部26は、後述する投受光子51、52から発せられた光を反射することができるような表面を有する。
【0035】
図4に示すように、回転体24、ひいては、回転軸23の端部は、軸受28を介して回転計測装置100のフレーム101に回転可能に支持されている。
【0036】
フレーム101には、一対の貫通孔102が形成されている。一対の貫通孔102は、これらの軸線が、いずれも、回転体24の回転軸の伸びる方向において回転体24と貫通孔25の軸線との交点を中心を通るように、フレーム101に形成されている。
【0037】
フレーム101には、さらに、投受光子51と投受光子52とが取り付けられている。投受光子51と投受光子52とは、回転体24の回転軸を間に置いて互いに反対側の位置に、かつ、互いにその回転体に向き合う位置に配置されている。
【0038】
投受光子51、52は、互いに異なる波長の光を投光する。また、投受光子51は、投受光子51又は投受光子52が発した光を受光する。同様に、投受光子52は、投受光子51又は投受光子52が発した光を受光する。
【0039】
光パルスカウンター70は、投受光素子53、54と、光パルスカウント比較演算60とを備える。
【0040】
投受光素子53、54は、それぞれ、波長λ1、波長λ2のパルス状の光を発することができる。また、投受光素子53、54は、波長λ1、波長λ2を区別してパルス数を計数することができる。そして、投受光素子53、54は、それぞれ、光芯線を介して、投受光子51、52に、光学的に接続している。すなわち、投受光素子53は、波長λ1のパルス状の光を発光し、発光されたパルス状の光を光芯線を介して投受光子51から発する。同様に、投受光素子54は、波長λ2のパルス状の光を発光し、発光されたパルス状の光を光芯線を介して投受光子52から発する。
【0041】
光パルスカウント比較演算60は、投受光素子53、54によって波長λ1、波長λ2ごとに、計数されたパルス数を比較し、回転体24、ひいては、クロスフロー型風車22の単位時間当たりの回転数を求め、求めた回転数を受風計測システム71に送る。
【0042】
受風計測システム71は、回転数や回転速度を所定の表示手段や通信手段で使用者や利用者に提供する。
【0043】
より具体的には、図6に示すように、回転体24が、貫通孔25の軸方向と貫通孔102の軸方向が一致する位置に、回転すると、投受光子51から発せられた光が、一方の貫通孔102、貫通孔25、及び、他方の貫通孔102を通って投受光子52に届く。同様に、回転体24が、貫通孔25の軸方向と貫通孔102の軸方向が一致する位置に、回転すると、投受光子52から発せられた光が、一方の貫通孔102、貫通孔25、及び、他方の貫通孔102を通って投受光子51に届く。
【0044】
しかし、図7に示すように、回転体24が、貫通孔25の軸方向と貫通孔102の軸方向が一致する位置以外の位置に、回転すると、投受光子51から発せられた光が、一方の貫通孔102を通り、円筒側面部26で反射し、再び、一方の貫通孔102を通って投受光子51に届く。同様に、回転体24が、貫通孔25の軸方向と貫通孔102の軸方向が一致する位置以外の位置に、回転すると、投受光子52から発せられた光が、一方の貫通孔102を通り、円筒側面部26で反射し、再び、一方の貫通孔102を通って投受光子52に届く。
【0045】
図8に示すように、複数の受風計測装置1は、都市や市街地のような所定の地域に設置される。各受風計測装置1の受風計測システム71は、回転数や回転速度を図3の光通信ケーブル230や図8の広域光通信ケーブルLや無線通信手段を介して集中管理施設250に集約され、インターネットNを介して使用者や利用者のコンピュータ260に提供する。提供を受けた利用者は、風力情報、都市開発等による環境変化管理に役立てることができる。
【0046】
受風計測装置は、図9及び図10に示すような受風計測装置1aであってもよい。受風計測装置1aは、本体部10aの形状が本体部10と異なる以外は、受風計測装置1と同じ構造を有しているので、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
受風計測装置1aで用いる本体部10aは、受風計測装置1で用いる本体部10よりも小さい。したがって、本体部10aの幅方向(図9の紙面における上下方向)は、受風計測器20のクロスフロー型風車22の直径よりも小さい。
【0048】
そこで、本体部10aは、クロスフロー型風車22の半分を覆うためのカバー31を有し、カバー31によって、凹部13が形成されるように構成している。
【0049】
また、本体部10aの一端部には、スリット12を形成する一対の側壁33の先端が互いに接近しないように、一対の側壁33の先端には、これらを接続する接続部材32が形成されている。これにより、本体部10aに作業者が乗っても、スリット12が形成する空間は、クロスフロー型風車22が回転するに必要な空間を確保することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a 受風計測装置
10 本体部
10a 本体部
11 側壁
12 スリット
13 凹部
17 取付部
20 受風計測器
21 羽部
22 クロスフロー型風車
23 回転軸
24 回転体
25 貫通孔
26 円筒側面部
28 軸受
31 カバー
32 接続部材
33 側壁
51、52 投受光子
53、54 投受光素子
60 光パルスカウント比較演算
70 光パルスカウンター
71 受風計測システム
100 回転計測装置
102 貫通孔
200 ケーブル支持構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを保持するケーブル支持構造物に取り付けられる受風計測装置であって、
前記ケーブル支持構造物に形成された本体部と、
前記本体部に取り付けられた受風計測器であって該受風計測器の風取入口以外を前記本体部で覆われている受風測定器と、を備え、
前記風取入口は前記ケーブルの伸びる方向に直角の方向に向いていることを特徴とする受風計測装置。
【請求項2】
前記本体部は前記ケーブル支持構造物から前記ケーブルの伸びる方向に延在しており、
前記受風計測器は、前記伸びる方向において、前記本体部の先端部の近傍に取り付けられている請求項1に記載の受風計測装置。
【請求項3】
前記受風計測器は、回転軸とそれぞれが前記回転軸から半径方向にかつ前記回転軸の伸びる方向に延在する複数の板状の羽とを有する回転羽と、前記回転羽の半分を覆うカバーとを備える請求項1又は2に記載の受風計測装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記ケーブル支持構造物の腕金に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の受風計測装置。
【請求項5】
複数の請求項1から4のいずれかに記載の受風計測装置と、
前記複数の受風計測装置に接続するネットワークと、
前記ネットワークに接続した受風監視コンピュータとを備えることを特徴とする受風監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−185745(P2010−185745A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29543(P2009−29543)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)