説明

口内刺激具

【課題】少なくとも歯の一部に装着される装着部と、該装着部に一体的に固定され、該装着部が歯に装着された状態で、口内から被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部とを備えてなる口内刺激具において、上歯と下歯とを普通に咬合させた状態に近い自然な状態で、装着からツボ等の刺激までを、簡単かつ確実に行えるようにする。
【解決手段】装着部を、上歯前部30の表面に接する前面部21、上歯前部30の裏面に接する後面部23、および該後面部23と前面部21の各下端を連絡する連絡部24を有して、上歯前部30に装着可能なものとし、上記後面部23には、下歯前部32の先端が係合し得る係合部25を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内からツボや顎関節部等を押圧して種々の治療を行うための口内刺激具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
東洋医学によれば、図10に示すように顔面にはいくつかの経穴(ツボ)があり、このツボをハリまたは灸で刺激すると、ツボに応じて様々な不快感を解消し得ることが知られている。
【0003】
例えば、両鼻翼(小鼻の丸い部分)A,Aの外縁の中点と鼻唇溝(鼻の両側の溝)B,Bとの各中間部位にある「迎香」と呼ばれるツボCを刺激すると、嗅覚異常、鼻づまり等を解消し得る。また、鼻孔と鼻中隔小柱と鼻翼の直線上の中心点にある「鼻流」と呼ばれるツボD、または「迎香」の下方で鼻唇溝の中心にある「散笑」と呼ばれるツボEを刺激すると、鼻炎の症状を解消し得る。両鼻翼の外方3cmの位置にある「巨りょう」と呼ばれるツボFを刺激すると、鼻カタル、三又神経痛、顔面神経麻痺の症状を改善し得る。
【0004】
また、図11に示すように口内にもいくつかのツボがあり、東洋医学には、このツボに針を刺したり、三稜針という針で点刺して出血させたりする治療法がある。例えば、舌の先を上に巻いて上下の前歯で舌を挟むと舌の裏側に二本の静脈があるが、左側の静脈上の「金津」と呼ばれるツボGまたは右側の静脈上の「玉液」と呼ばれるツボHを刺激すると、舌の腫れや痛み、失語症等の症状を改善し得る。
【0005】
また、左右の顎関節部に自身の左右の手を当てて大きく開口したとき、動きを大きく感じるところがあるが、顎関節症、歯ぎしり等の症状がある場合は、その内側の動きが悪くなっていて、筋の緊張がみられる。この場合、顎関節部を口内の上下の歯の付け根奥から後上方に指で押すことにより運動マッサージを行うと、患部の緊張を緩めて、例えば顎がガクガクする、重圧感がある、強く咬むと痛い等の種々の顎関節部の違和感を軽減することができる。
【0006】
ところで、上記「迎香」、「巨りょう」等は、顔の表面からはうまく押すことができないのみでなく、長時間押圧することも不可能なので、専門の鍼灸師による鍼治療または灸治療に頼らざるを得なかった。同様に、顎関節部を口内から長時間指で押すことも不可能であり、専門家の治療に頼らざるを得なかった。また、「金津」、「玉液」は、痛みに敏感なため、一般には針による治療は行われていない。
【0007】
上記事情に鑑みて本発明者は、各種ツボや顎関節部等に対して、専門家に頼らなくても容易にかつ大きな痛みを伴うことなく刺激を与えて、それによる種々の治療効果を期待し得る口内刺激具を先に提案した(特許文献1参照)。すなわち本発明者は、「迎香」、「巨りょう」等の顔面のツボの部位を口内から押圧しても、嗅覚異常、鼻カタル等を解消し得ること、また、押圧ならば痛みに敏感な「金津」等のツボを治療に用い得ること、さらに、患部を器具により押圧しても運動マッサージを行い得ることを見出し、そのための口内刺激具を発明するに至ったものである。
【0008】
より詳しく説明すると、この特許文献1に示される口内刺激具は、少なくとも歯の一部に装着される装着部と、この装着部に一体的に固定され、この装着部が歯に装着された状態で、口内から被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
以下、図8および9を参照して、上記口内刺激具の一例について説明する。図8(a)〜(d)はこの口内刺激具10を示すものであり、(a)は正面図、(b)は(a)中のb−b線に沿った断面図、(c)は(a)中のc−c線に沿った断面図、(d)は装着部が上歯部に倣って破線d−d部で折り曲げられた状態を示し、(a)中のb−b線に沿った断面図である。
【0010】
この口内刺激具10は、上歯前部に装着される装着部11と、この装着部11の上端からそれぞれ斜め上外方へ延びる一対の押圧部12とからなり、例えばエチレンビニールアセテート等の口腔が耐え得る最高温度よりも低く口腔の通常温度よりも高い軟化温度を有するプラスチック材料で一体成形された、湾曲した板状体よりなる。一対の押圧部12は、それらの各先端部の中心間の左右方向の間隔が約40mmとなるように形成されるとともに、各押圧部12には、この押圧部12の柔軟性を高めるための開口部13がそれぞれ形成されている。
【0011】
この口内刺激具10は、温度80℃程度の熱湯に漬けて軟化せしめられた後、図8(d)に示すように、上歯前部14の形状に倣って同図(a)のd−d線に沿って内方へU字状に折り曲げられて上歯前部14に密着せしめられた後、一旦口中から取り出され、冷水に漬けて装着部11を硬化させ、再度上歯前部14に装着される。
【0012】
この口内刺激具10は、図9に示すように、装着部11が上歯前部14に装着された状態で、押圧部12の突端が「迎香」と呼ばれる経穴(ツボ)C,Cを上唇の内側から上方へ押圧して刺激するように構成されている。
【0013】
このような口内刺激具によれば、極めて簡単な構成で「迎香」を刺激することができ、また装着時の違和感も少ない利点がある。そして、嗅覚に異常が生じたり、風邪あるいは花粉症によって鼻水が止まらなかったり、鼻づまりが生じたとき、この口内刺激具10を上歯前部14に装着すると、上記症状を解消することができる。
【0014】
なお、この特許文献1に示される口内刺激具は、前述した軟化および硬化の処理を順次施すことなく、一般的な合成樹脂等を用いて、最初から硬化した状態で図8(d)に示す形に形成されてもよい。
【0015】
上述した口内刺激具は、被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部が装着部に一体的に固定して設けられているので、該口内刺激具を歯に装着するだけで、誰もが容易に、かつ効果的に口内から口の近くに位置する被押圧治療部としての顔面のツボを押圧して刺激を与え、それによって種々の治療効果を期待することができる。また、灸等による治療のように顔面に痕跡を残すこともないから美容上からも好ましい。
【0016】
なお、上記押圧部が「迎香」と呼ばれるツボを上唇の内側から上方へ押圧し得る形状に形成されている場合は、嗅覚に異常が生じたり、風邪あるいは花粉症によって鼻水が止まらなかったり、あるいは鼻づまり等の症状を解消することができる。特に花粉症に対して効果がある。
【0017】
また、上記押圧部が「鼻流」または「散笑」と呼ばれるツボを押圧し得る形状に形成されている場合は、鼻炎の症状を改善することができ、「巨りょう」と呼ばれるツボを押圧し得る形状に形成されている場合は、鼻カタル、三又神経痛、顔面神経麻痺の症状を改善することができる。あるいは、上記押圧部が「金津」または「玉液」と呼ばれるツボを押圧し得る形状に形成されている場合は、大きな痛みを伴うこともなく、衛生的に、舌の腫れや痛み、失語症等の症状を改善することができる。前記押圧部は、口内で他のツボを押圧し得る形状であってもよく、その場合は、ツボに応じて種々の治療効果が期待できる。
【0018】
上記押圧部が口内の上下の歯の付け根奥の顎関節部を押圧し得る形状に形成されている場合は、誰もが容易に、かつ効果的に顎関節部を押圧して指圧効果を得ることができ、あるいは長時間運動マッサージすることができ、これにより、患部の緊張を緩めて顎関節部の違和感を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3199236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上説明した通り特許文献1に示される口内刺激具は、所期の目的を十分に達成するものであるが、取扱い性に改善の余地が残されている。以下、この点について詳しく説明する。
【0021】
図8の口内刺激具10を上歯前部14に装着し、そして各種ツボ等に刺激を与えるに当たっては、図8(d)の形状となっている口内刺激具10を指先で保持してその折り返し部を上歯前部14に概略組み合わせた後、底部10Bを下歯前部の先端で押し上げることにより、上歯前部14に緊密に組み合わせるとともに、押圧部12の突端を前記経穴(ツボ)C,C等に下方から突き当てるように取り扱われる。
【0022】
その際、上歯と下歯とを通常の咬合状態、つまり下歯前部が上歯前部よりも若干後方位置にある状態にしたままでは、刺激具底部10Bを下歯前部の先端で押し上げることはできないので、下顎部を不自然に若干前に押し出すようにし、その状態で下歯前部先端を刺激具底部10Bに下から押し当てることが必要になる。人によっては、この不自然な状態を取り続けるのが難しい場合も有る。また、ツボ等への刺激を断続的に行いたい場合は、上歯と下歯とをカチカチと鳴らす場合のように、下顎部を上下に動かすことになるが、上記不自然な状態下で下顎部をそのように上下に動かすことは、人によっては難しい場合もある。
【0023】
さらに、上歯と下歯を通常に咬合させた状態において、歯の位置から前記経穴(ツボ)C,C等の刺激対象までの距離は人それぞれであって、特に子供等においてはこの距離が極端に短いこともある。この距離が短い人の場合は、下歯前部の先端を刺激具底部10Bに押し当てると、ツボ等の刺激が強くなり過ぎることもあり、反対に上記距離が長い人においてはツボ等の刺激が不十分になることもあり得る。
【0024】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、特許文献1に示されたような口内刺激具において、上歯と下歯とを普通に咬合させた状態に近い自然な状態で、装着からツボ等の刺激までを、簡単かつ確実に行えるようにすることを目的とする。
【0025】
さらに本発明は、特許文献1に示されたような口内刺激具において、歯の位置からツボ等の刺激対象までの距離がまちまちであっても、上歯と下歯とを通常に咬合させた状態に近い自然な状態で、刺激力を適切に設定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明による口内刺激具は、
少なくとも歯の一部に装着される装着部と、
該装着部に一体的に固定され、該装着部が歯に装着された状態で、口内から被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部とを備えてなる口内刺激具において、
前記装着部が、上歯前部の表面に接する前面部、上歯前部の裏面に接する後面部、および該後面部と前記前面部の各下端を連絡する連絡部を有して、上歯前部に装着可能なものとされ、
前記後面部に、下歯前部の先端が係合し得る係合部が形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
なお本発明の口内刺激具においては、上記係合部が上下方向に互いに離して複数形成されていることが望ましい。
【0028】
また、上述のように複数の係合部が設けられる場合は、それらの係合部が左右方向に延びる細長い突部からなり、該係合部の互いの間に、それらを分離する空間が形成されていることが望ましい。
【0029】
ここで、上記被押圧治療部とは、そこを押圧することにより、種々の治療効果を期待し得る部位をいい、例えば各種ツボや関節部等がこれに該当する。
【0030】
上記押圧部は「迎香」、「流鼻」、「散笑」または「巨りょう」と呼ばれるツボを上唇や頬の内側から上方へ押圧し得る形状とされるのが望ましい。また、上記押圧部は「金津」または「玉液」と呼ばれるツボを下顎の内側から上方へ押圧し得る形状とされてもよい。なお、ツボは、これらに限定されるものではない。また上記押圧部は、顎関節部を口内から上方へ押圧し得る形状とされてもよい。
【0031】
他方、上記装着部は、熱湯により軟化せしめられて歯の形状に倣って折曲げ可能とされていることが好ましい。
【0032】
上記いずれの態様においても、装着部と押圧部とは一体成形により形成することができるが、押圧部が装着部とは別体の耐熱性材料で形成され、かつこの押圧部の基部が連結部を介して装着部に固定された構成とすることもできる。
【0033】
また、上記押圧部の突端は球状にしてもよい。さらにこの突端に永久磁石または鉱物(アメジスト等)を取り付けてもよい。
【0034】
そして本発明の口内刺激具は、少なくとも一部が食品から形成されていることが特に望ましい。そのような食品の特に好ましい例としては、飴、ガム、キャンディー、チュウイングキャンディー、硬質のチョコレート、せんべい、ビスケット等が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明による口内刺激具は、少なくとも歯の一部に装着される装着部と、該装着部に一体的に固定され、該装着部が歯に装着された状態で、口内から被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部とを備えてなるものであるので、ツボ等の刺激に関しては、基本的に前記特許文献1に記載された口内刺激具と同様の作用・効果を得ることができる。
【0036】
そして本発明による口内刺激具は、特に装着部が、上歯前部の表面に接する前面部と、上歯前部の裏面に接する後面部と、該後面部と前記前面部の各下端を連絡する連絡部とを有して、上歯前部に装着可能なものとされ、前記後面部に、下歯前部の先端が係合し得る係合部が形成されているものであるので、従来の口内刺激具と比べて取扱い性も良いものとなる。すなわち、後面部に上述の通りの係合部が形成されているので、使用者は口内刺激具を上歯前部に概略組み合わせた後、上歯と下歯とを普通に咬合させた状態に近い自然な状態で、該係合部に下歯前部の先端を係合させ、その状態で下歯前部を若干上方に動かせば、口内刺激具全体を上方に動かして、上歯前部への緊密な組み合わせから、ツボ等への刺激までを簡単かつ確実に行うことが可能になる。
【0037】
また、本発明の口内刺激具において、特に上記係合部が上下方向に互いに離して複数形成されている場合は、上歯と下歯とを通常に咬合させた状態に近い自然な状態で、刺激力を適切に設定することが可能になる。すなわち、それら複数の係合部のうち、より下の位置にあるものに下歯前部の先端を係合させれば、口内刺激具全体が、つまりは押圧部がより上方まで動くことになる。そこで、前述したように歯の位置からツボ等の刺激対象までの距離が比較的長い人は、上記のようにして押圧部をより上方まで動かすことにより、適切な刺激力を得ることができる。また、上記の距離に拘わらず、特に強い刺激力を得たい場合は、上記のようにして押圧部をより上方まで動かせば、強い刺激力を得ることができる。
【0038】
他方、上記複数の係合部のうち、より上の位置にあるものに下歯前部の先端を係合させれば、口内刺激具全体が、つまりは押圧部が上方に動く長さは比較的短くなる。そこで、前述したように歯の位置からツボ等の刺激対象までの距離が比較的短い子供等は、上記のようにして押圧部が上方に動く長さを短くすることにより、適切な刺激力を得ることができる。また、上記の距離に拘わらず、刺激力を弱くしたい場合は、上記のようにして押圧部が上方に動く長さを短くすれば、刺激力を弱くすることができる。
【0039】
また、上述のように係合部が上下方向に互いに離して複数形成されていれば、通常の咬合状態下で上歯前部先端と下歯前部先端との上下位置関係が人によってまちまちであっても、下歯前部先端を係合させる係合部を選択することにより、適切な刺激力を得ることができる。
【0040】
なお、上述のような複数の係合部が左右方向に延びる細長い突部からなり、該係合部の互いの間に、それらを分離する空間が形成されている場合は、各係合部の柔軟性が高くなる。そうであれば、下歯前部の先端が係合する係合部よりも下方に位置する係合部は、下歯前部が当たった際には容易に弾性変形するので、その係合部が、下歯前部による刺激操作を妨げるようなことが防止される。
【0041】
また本発明の口内刺激具において、装着部は上歯前部に装着される形状とされているので、口内刺激具全体を極めて小型に形成することが可能になり、かつ装着時の違和感を最小に抑えることができる。特に装着部と押圧部とが一体成形により形成される場合には製作も容易である。
【0042】
また本発明の口内刺激具において、特に装着部が、熱湯により軟化せしめられて歯の形状に倣って折曲げ可能とされていれば、装着部を万人の上歯前部に対応させた形状にすることができ、口内刺激具を安定に口内に装着することができる。
【0043】
また、押圧部材の突端を球状にすれば刺激を和らげることができ、押圧部材の突端に永久磁石を取り付ければ治療効果を高めることができ、押圧部材の突端にアメジスト等の鉱物を取り付ければこれら鉱物の波動効果によって治療効果を高めることができる。
【0044】
そして本発明の口内刺激具の少なくとも一部が、菓子類等の食品から形成されている場合は、口内刺激に使用した後、そのまま全部あるいは一部を食品として摂取できるので、口の中に指を入れて口内刺激具を取り出す必要が無く、あるいは口の中に指を少しだけ入れれば残ったものを簡単に取り出せることになり、口内衛生の面で好ましい。なお、口内衛生の観点からは、口内刺激具の全部を食品から形成するのがより好ましい。また、食品の中でも特に菓子類から口内刺激具を形成した場合は、子供たちがそれを用いて口内刺激を行う動機付けを高めることができる。さらに、口内刺激具を菓子やガムなどから形成した場合は、口内刺激具を口に入れる違和感をなくし、外出中に使用するのにも適したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態による口内刺激具を示す斜視図
【図2】図1の口内刺激具の正面図
【図3】図1の口内刺激具の後面図
【図4】図1の口内刺激具の装着状態を示す一部破断側面図
【図5】本発明の第2の実施形態による口内刺激具を示す斜視図
【図6】図5の口内刺激具の正面図
【図7】図5の口内刺激具の後面図
【図8】従来の口内刺激具の一例を示す正面図および断面図
【図9】図8の口内刺激具の装着状態を示す概略正面図
【図10】「迎香」、「鼻流」、「散笑」、「巨りょう」と呼ばれるツボの位置を示す図
【図11】「金津」、「玉液」と呼ばれるツボの位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0047】
図1、2および3はそれぞれ、本発明の第1の実施形態による口内刺激具20の斜視形状、正面形状および後面形状を示すものである。図示の通りこの口内刺激具20は、後述するように人間の口内に装着されたときに上歯前部の表面に接する前面部21と、上歯前部の裏面に接する後面部23と、該後面部23と前記前面部21の各下端を連絡する連絡部24とを有している。以上の部分21、23および24は、全体で丸みを帯びた概略「レ」字形の側面形状を有して、上歯前部に装着される装着部を構成している。また、各部分21、23および24の外縁部分は丸みを帯びた形状とされて、口内に装着された際に、痛みや傷を与えないようにされている。
【0048】
前面部21は図2に明確に示されるように、概略逆台形の上部中央がV字形に切り込まれ、こうして分かれた2つの部分の各々に、柔軟性を高めるための開口22がそれぞれ設けられた形状とされている。この前面部21の2つに別れた上端近傍部分は、被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部21aとなっている。
【0049】
一方後面部23は、図3に示されるように全体として台形に形成され、その表面には一例として4つの係合部25が形成されている。これらの係合部25は、下方側(連絡部24側)を向いて立ち上がった面を有する細長い突部からなるものであり、4つのうち下側の3つはV字形の側面形状を有し、残りの最上位のものはそのまま後面部23の上端に連なる形状とされている。上記4つの係合部25の互いの間には、それらを分離する空間26が形成され、また最下位の係合部25の下側にも上記と同様の空間26が形成されている。
【0050】
以上説明した部分21、23および24は、例えばポリエチレン、シリコーン等の弾性を有する材料から形成されるが、それらに限らず、硬質プラスチック材等から形成されても構わない。また上記部分21、23および24は、一例として前面部21の最大横幅が50mm、その高さが30mm、連絡部24の横幅が40mm、後面部23の上端部の幅が15mm、その高さが18mm程度の大きさに形成されている。
【0051】
本実施形態の口内刺激具20は、図4に示すようにして人間の口内に装着される。すなわち、使用者はまず、この口内刺激具20を指先で保持してその前面部21が上歯前部30およびその歯茎31の前側に、そして後面部23がそれらの後側に位置する状態にして、該口内刺激具20を上歯前部30および歯茎31に概略組み合わせる。なお、前面部21、後面部23および連絡部24は弾性のある材料を用いて、前述のように概略「レ」字形の側面形状を有する形とされているので、口内刺激具20は上歯前部30および歯茎31を前後から緩く弾力的に挟み付けるようになる。
【0052】
次いで使用者は、後面部23に形成されている4つの係合部25のうちのいずれか(図4では下から2番目のもの)に下歯前部32の先端を係合させ、その状態で下歯を上方に移動させる。それにより口内刺激具20は上歯前部30および歯茎31に緊密に組み合うとともに、押圧部21aが所定の高さ位置に到達する状態になる。
【0053】
こうすることにより、押圧部21aの突端が「迎香」と呼ばれる経穴(ツボ)C,C(図10参照)を上唇の内側から上方へ押圧して、刺激するようになる。なお、そのまま下歯を噛み合わせ動作のように動かせば、刺激の強弱が繰り返されるようになる。
【0054】
このように本実施形態の口内刺激具20は、極めて簡単な構成で「迎香」を刺激することができ、また装着時の違和感も少ない利点がある。嗅覚に異常が生じたり、風邪あるいは花粉症によって鼻水が止まらなかったり、鼻づまりが生じたとき、この口内刺激具20を上歯前部30に装着すると、上記症状を解消することができる。
【0055】
そして、この口内刺激具20を前述のように上歯前部30に装着させて使用する際には、上歯と下歯とを普通に咬合させた状態に近い自然な状態で、係合部25に下歯前部32の先端を係合させ、その状態で下歯前部32を上方に動かすだけで、口内刺激具20の全体を上方に動かして、上歯前部30への緊密な組み合わせから、ツボ等への刺激までを簡単かつ確実に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態の口内刺激具20においては、係合部25が上下方向に互いに離して4つ形成されているので、上歯と下歯とを通常に咬合させた状態に近い自然な状態で、刺激力を適切に設定することが可能になる。すなわち、それら4つの係合部のうち、より下の位置にあるものに下歯前部32の先端を係合させれば、口内刺激具20の全体が、つまりは押圧部21aがより上方まで動くことになる。そこで、歯の位置からツボ等の刺激対象までの距離が比較的長い人は、上記のようにして押圧部21aをより上方まで動かすことにより、適切な刺激力を得ることができる。また、上記の距離に拘わらず、特に強い刺激力を得たい場合は、上記のようにして押圧部21aをより上方まで動かせば、強い刺激力を得ることができる。
【0057】
他方、上記4つの係合部25のうち、より上の位置にあるものに下歯前部32の先端を係合させれば、口内刺激具20の全体が、つまりは押圧部21aが上方に動く長さは比較的短くなる。そこで、歯の位置からツボ等の刺激対象までの距離が比較的短い子供等は、上記のようにして押圧部21aが上方に動く長さを短くすることにより、適切な刺激力を得ることができる。また、上記の距離に拘わらず、刺激力を弱くしたい場合は、上記のようにして押圧部21aが上方に動く長さを短くすれば、刺激力を弱くすることができる。
【0058】
なお、本実施形態において、4つの係合部25は左右方向に延びる細長い突部からなり、該係合部25の互いの間に、それらを分離する空間26が形成されているので、各係合部25の柔軟性が高くなる。そうであれば、下歯前部32の先端が係合する係合部25よりも下方に位置する係合部25(図4では最下位のもの)は、下歯前部32が当たった際には図4に示す通り容易に弾性変形するので、その係合部25が、下歯前部32による刺激操作を妨げるようなことが防止される。
【0059】
またこの口内刺激具20において、装着部は上歯前部30に装着される形状とされているので、全体を極めて小型に形成することが可能になり、かつ装着時の違和感を最小に抑えることができる。特にこの口内刺激具20は、全体が一体成形により形成されるので、製作も容易である。
【0060】
なお、上記前面部20、後面部23および連絡部24からなる装着部は、熱湯により軟化せしめられて歯の形状に倣って折曲げ可能とされてもよい。そうする場合は、装着部を万人の上歯前部に対応させた形状にすることができ、口内刺激具を安定に口内に装着することができる。
【0061】
そして上記前面部20、後面部23および連絡部24の少なくとも一部は、飴、ガム、キャンディー、チュウイングキャンディー、硬質のチョコレート、せんべい、ビスケット等の食品から形成されてもよい。そのような食品として特に好ましいものとしては、ガムベースや水飴に乳化剤、ゼラチン、糊料、ミントなどの香料等を混入させたものが挙げられる。
【0062】
そのようにする場合は、口内刺激具20を口内刺激に使用した後、そのまま全部あるいは一部を食品として摂取できるので、口の中に指を入れて口内刺激具を取り出す必要が無く、あるいは口の中に指を少しだけ入れれば残ったものを簡単に取り出せることになり、口内衛生の面で好ましい。なお、口内衛生の観点からは、前面部20、後面部23および連絡部24の全部を食品から形成するのがより好ましい。また、食品の中でも特に菓子類から口内刺激具を形成した場合は、子供たちがそれを用いて口内刺激を行う動機付けを高めることができる。さらに、前面部20、後面部23および連絡部24の全部を菓子やガムなどから形成した場合は、口内刺激具20を口に入れる違和感をなくし、外出中に使用するのにも適したものとすることができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5、6および7はそれぞれ、本発明の第2の実施形態による口内刺激具40の斜視形状、正面形状および後面形状を示すものである。図示の通りこの口内刺激具40は、上歯前部の表面に接する前面部41と、上歯前部の裏面に接する後面部43と、該後面部43と前面部41の各下端を連絡する連絡部44とを有している。
【0064】
以上の部分41、43および44は、全体で丸みを帯びた概略「レ」字形の側面形状を有して、上歯前部に装着される装着部を構成している。また、各部分41、43および44の外縁部分は丸みを帯びた形状とされて、口内に装着された際に、痛みや傷を与えないようにされている。
【0065】
前面部41は図6に明確に示されるように、概略逆台形の上部中央がV字形に切り込まれ、こうして分かれた2つの部分の各々に、柔軟性を高めるための開口42がそれぞれ設けられた形状とされている。この前面部41の2つに別れた上端近傍部分は、被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部41aとなっている。
【0066】
一方後面部43は全体として台形に形成され、その表面には一例として2つの係合部45が形成されている。これらの係合部45は、下方側(連絡部44側)を向いて立ち上がった面を有する細長い突部からなるものであり、2つのうち下側のものはV字形の側面形状を有し、上側のものはそのまま後面部43の上端に連なる形状とされている。上記2つの係合部45の互いの間には、それらを分離する空間46が形成され、また下側の係合部45の下方位置にも上記と同様の空間46が形成されている。
【0067】
上記構成を有する本実施形態の口内刺激具40は、係合部45の個数が異なる以外、基本的に第1の実施形態の口内刺激具20と同様に形成されている。したがってこの口内刺激具40においても、第1の実施形態の口内刺激具20が奏する効果と同様の効果が得られる。
【0068】
以上説明した通り、本発明の口内刺激具において、後面部に設けられる係合部の個数は特に限定されるものではなく、適宜の数とすることができる。
【0069】
また、以上説明した2つの実施形態では複数の係合部が設けられているが、係合部は1つだけ設けられてもよい。その場合は、先に述べたように下歯前部を係合させる係合部を選ぶことにより、刺激力を調整することは不可能になる。しかしその場合も、上歯と下歯とを普通に咬合させた状態に近い自然な状態で、装着からツボ等の刺激までを、簡単かつ確実に行えるという効果は、複数の係合部を設ける場合と同様に得られるものである。
【0070】
さらに、前述した押圧部21aや41aの突端は、球状にすると刺激を和らげることができる。また、その突端内に永久磁石あるいはアメジスト等の鉱物を埋設すれば、その鉱物の波動効果によって治療効果を高めることができる。
【0071】
また、以上は、押圧部が「迎香」と呼ばれる経穴(ツボ)C,C(図10参照)を上唇の内側から上方へ押圧して、刺激するように構成された実施形態について説明したが、本発明の口内刺激具は上記ツボ以外のツボや、さらには顎関節部を刺激するように構成することも可能であり、その場合も先に説明した効果を同様に奏するものである。
【0072】
そして押圧部の形状も、第1の実施形態や第2の実施形態におけるものに限らず、上記ツボや顎関節部を刺激し得るものであれば、あらゆる形状が採用可能である。
【0073】
また装着部の形状も、第1の実施形態や第2の実施形態におけるものに限らず、前面部と後面部によって上歯前部に装着可能な形状であれば、あらゆる形状が採用可能である。例えばこの装着部は、マウスピースの形状に形成されてもよい。その場合は、口内刺激具を顎全体で支持することができるから、支持の安定性が向上する。そして、上下の歯の咬みしめ方や舌の出し入れ運動を加減することによって、刺激度を調節することができる。
【符号の説明】
【0074】
10、20、40 口内刺激具
10B 口内刺激具の底部
21、42 前面部
21a、41a 押圧部
22、42 開口
23、43 後面部
24、44 連絡部
25、45 係合部
26、46 空間
30 上歯前部
31 歯茎
32 下歯前部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも歯の一部に装着される装着部と、該装着部に一体的に固定され、該装着部が歯に装着された状態で、口内から被押圧治療部としての顔面のツボを押圧し得る押圧部とを備えてなる口内刺激具において、
前記装着部が、上歯前部の表面に接する前面部、上歯前部の裏面に接する後面部、および該後面部と前記前面部の各下端を連絡する連絡部を有して、上歯前部に装着可能なものとされ、
前記後面部に、下歯前部の先端が係合し得る係合部が形成されていることを特徴とする口内刺激具。
【請求項2】
前記係合部が、上下方向に互いに離して複数形成されていることを特徴とする請求項1記載の口内刺激具。
【請求項3】
前記複数の係合部が左右方向に延びる細長い突部からなり、該係合部の互いの間に、それらを分離する空間が形成されていることを特徴とする請求項2記載の口内刺激具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−83420(P2011−83420A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238311(P2009−238311)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(309000853)株式会社自然治癒力活性医学研究所 (1)
【Fターム(参考)】