説明

口内炎処置用組成物

【課題】口内炎を処置する。
【解決手段】ローヤルゼリーを有効成分とする口内炎を処置するための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内炎処置用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がん化学療法時の約30〜40%に難治性の口内炎が出現し、非血液毒性の中でも発生頻度の高い副作用である。がん化学療法時の口内炎は、その疼痛のため食事摂取量の減少やコミュニケーション機能の低下が誘発され、患者のQOLを大きく低下させる因子となっている。現在、がん化学療法時の口内炎に有効な処置剤はなく、抗炎症薬、局所麻酔薬ならびに鎮痛薬による対症療法が行なわれているが、その臨床効果には不明な点が多い。
【0003】
一方、口内炎に対する民間療法として蜂蜜が従来使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、口内炎を処置するための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の口内炎を処置するための組成物を提供するものである。
1. ローヤルゼリーを有効成分とする口内炎を処置するための組成物。
2. 口腔用組成物である、項1に記載の組成物。
3. 口内炎に適用される外用のための組成物である、項1に記載の組成物。
4. 経口接種用の組成物である、項1に記載の組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、口内炎、特に癌化学療法剤に起因する口内炎のような難治性の口内炎であっても有効に処置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ローヤルゼリーは、ミツバチの働き蜂から女王蜂に与えられる女王蜂のための特別食である。ローヤルゼリーは、ミツバチの下咽頭腺、大顎腺から分泌される乳白色糊状の物質で、その中に多くの有効成分が含まれている。主な成分はタンパク質、炭水化物、脂肪、無機物、ビタミン等である。
【0008】
本発明のローヤルゼリーとしては、女王蜂を育てるために蜜蜂が分泌するものを収集したものを用いることもでき、また一般に市販されているものを用いることもできる。本発明のローヤルゼリーとしては、ローヤルゼリーをそのまま用いても良く、或いは、ローヤルゼリーを適宜前処理して得た乾燥物を用いても良い。
【0009】
本発明の口内炎を処置するための組成物は、ローヤルゼリーを有効成分とする。
【0010】
本発明の組成物には、上記ローヤルゼリーをそのまま用いることもでき、或いは、適宜精製処理などの各種処理を行ったものを用いることもできる。
【0011】
また、本発明の組成物は、常法に従って、適宜製剤化して利用することができる。例えば、本発明の組成物は、利用目的や利用形態に応じ、トローチなどの口腔内で徐々に放出されたり口腔内にとどまる口腔用組成物であってもよく、素錠、糖衣錠などの錠剤(タブレット)、顆粒、粉末、カプセル(ハードカプセルとソフトカプセルとのいずれも含む。)、チュアブルタイプ、シロップタイプ、ドリンクタイプなどの経口摂取用の組成物、或いは、軟膏、クリーム、硬膏剤、貼付剤、ゲル剤、パッチなどのスティック状の剤形などの口内炎部位に局所適用される外用のための組成物であってもよい。
【0012】
本発明の組成物は、ローヤルゼリーを0.5〜50重量%程度、好ましくは 1〜40重量%程度、より好ましくは10〜30重量%程度含まれる。
【0013】
口内炎を処置するために有効なローヤルゼリー量としては、経口摂取する場合には1日あたり100〜1500mg程度、好ましくは400〜1000mg程度である。また、口腔用組成物或いは口内炎に適用される外用のための組成物の場合には、1日あたり10〜100mg程度、好ましくは30〜300mg程度である。
【0014】
本発明の組成物には、各種製剤を製造するのに通常使用される成分、例えば
抗菌剤、抗炎症剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、ワセリン、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤、粘着剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、糖類、pH調整剤、ビタミン類、香料、着色剤、金属イオン封鎖剤、多価アルコール、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明する。
実施例1
本実験では、ハムスターにおける5-FU誘発口内炎モデルに対する蜂蜜およびローヤルゼリー口腔軟膏の効果について検討し、併せてアズレン軟膏、デキサメタゾン軟膏の効果と比較検討した。
【0016】
実験方法(図1参照):
実験には、5-FU(60 mg/kg, ip)を2回投与した雄性シリアンハムスターを用いた。口内炎はSonisら(Sonis ST et al; An animal model for mucositis induced by cancer chemotherapy. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 69:437-43 (1990))の方法に準じ、ワイヤーブラシにより片側のチークポーチをブラッシングすることによって口内炎を作成した。口内炎の評価は、白色に変色した面積(長径×短径)を測定することにより行なった。各種軟膏は、約20mgを1日1回、口腔内の口内炎発症部位に連日塗布した。
【0017】
結果: 5-FUを投与したハムスターのチークポーチをブラッシングすることにより、その翌日に口内炎が発現した。口内炎面積の経日的な縮小は、ワセリンおよび1%アズレン軟膏塗布により影響されなかった(図2,3)。しかし、0.12%デキサメタゾン軟膏は有意(p<0.001)に悪化させた(図4)。蜂蜜軟膏(1-100%)は5-FU誘発口内炎に対して影響を示さなかったが(図5)、ローヤルゼリー軟膏(0.3-30%)は用量依存的な治癒促進効果を示しし、10と30%で有意差が認められた(図6-1、6-2)。なお、3%ローヤルゼリー軟膏はDay7(図6-1)、Day9-13(図6-2)で有意差が認められ、3%以上のローヤルゼリー含量が特に好ましい。
【0018】
今回の検討において、抗炎症作用を有するアズレンは5-FU誘発口内炎に対して何ら影響を示さなかった。さらに、通常の口内炎に繁用されているステロイド性抗消炎薬のデキサメタゾン軟膏はその免疫力低下作用によりハムスターの口内炎を著明に増悪されることが推察された。したがって、5-FUを投与したハムスターの口内炎モデルは、抗炎症薬に処置抵抗性のモデルであり、抗癌剤誘発口内炎処置薬の検索に有用であると考えられる。
【0019】
一方、ローヤルゼリー軟膏は5-FU誘発口内炎モデルに対して用量依存的な治癒促進効果を示した。
【0020】
処方例1
ローヤルゼリー 30g
ワセリン 270g
ローヤルゼリーをワセリンを上記の割合で混合することにより、本発明の組成物を得た。
【0021】
処方例2
ローヤルゼリー 40g
ジメチルイソプロピルアズレン 0.1g
ワセリン 260g
ローヤルゼリー、ジメチルイソプロピルアズレン、ワセリンを上記の割合で混合することにより、本発明の組成物を得た。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の実験方法を示す。
【図2】5-FU誘発口内炎に対するワセリンの影響(Mean±SE, n=8)
【図3】5-FU誘発口内炎に対する1% アズレン軟膏の影響(Mean±SE, n=8)
【図4】5-FU誘発口内炎に対する0.12%デキサメタゾン軟膏の影響 (Mean±SE, n=8 * p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001)
【図5】5-FU誘発口内炎に対する蜂蜜の影響(Mean±SE, n=8)
【図6−1】Hamsterにおける5-FU誘発口内炎に対するローヤルゼリー軟膏(0.3-3 %)の影響 縦軸:口内炎面積またはDay3からDay13までの口内炎総面積(AUC)、(mean ± SE, n=8)。* p<0.05 (repeated measure two-way ANOVA followed by Dunnett’s test)
【図6−2】Hamsterにおける5-FU誘発口内炎に対するローヤルゼリー軟膏(3-30 %)の影響縦軸:口内炎面積またはDay3からDay13までの口内炎総面積(AUC)、(mean ± SE, n=8)。* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001 (repeated measure two-way ANOVA or one-way ANOVA followed by Dunnett’s test)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリーを有効成分とする口内炎を処置するための組成物。
【請求項2】
口腔用組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
口内炎に適用される外用のための組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
経口接種用の組成物である、請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【公開番号】特開2008−208088(P2008−208088A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48025(P2007−48025)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 社団法人日本薬学会 刊行物名 YAKUGAKU ZASSHI 第126巻増刊号(Vol.126 Suppl.2) 生体機能と創薬シンポジウム2006要旨集 発行年月日 平成18年9月1日
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(598162665)株式会社山田養蜂場本社 (32)
【Fターム(参考)】