説明

口唇開口器具

【課題】 簡便に開口でき、良好な口腔ケアができる口唇開口器具を提供すること。
【解決手段】 口唇を開口する口唇開口器具は、第1の把持部12及び第2の把持部22の開閉に応じて開閉する第1の鉤部13及び第2の鉤部23を有し、前記第1の鉤部13は、第1の基部14と、該第1の基部14から第1の開方向A1へ延在している第1の壁部15とを有し、前記第2の鉤部は、第2の基部24と、該第2の基部から第2の開方向A2へ延在している第2の壁部25とを有し、前記第1及び第2の鉤部13,23が前記第1の把持部12及び前記第2の把持部22の開閉に応じて開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇を開くための口唇開口器具に関する。
【背景技術】
【0002】
要介護者、幼児、障害者への口腔ケアや歯科治療では、口唇を開口させて口腔内の視野を確保することが必要となる。しかし、口腔ケアや歯科治療では、自ら口唇の開口ができない対象者又は口唇の開口を拒む対象者において、口唇を開き口腔内の視野を確保することは非常に難しい作業となる。
【0003】
関連技術としては、口腔内に挿入され口角を押し広げる一対の口角鉤と、これら一対の口角鉤にそれぞれ外方に向かって突出形成され、口腔内の奥部を押し広げる翼部と、一対の口角鉤を連結する略U字状のバネアーム部とを具備する口腔開拡装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
この口腔開拡装置では、翼部の幅寸法を縮小した後、翼部を患者の口角から口腔内に挿入させ、左右の口角鉤の外周部の凹溝内に口角の両側部を嵌め込ませる。その後、指を離すとバネアーム部が広がる方向に復帰するので、左右の口角鉤が互いに離間する方向に移動する。これにより、患者の口角が左右に押し広げられ、翼部により口腔内に押し広げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−17670号公報(公報の段落[0021]〜[0023]を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の口腔開拡装置では、左右の口角鉤の外周部を手の指で挟持し、左右の口角鉤をバネアームのバネ力に抗して内側へ押し込み、翼部の幅寸法を縮小させる作業がある。この作業の状態で翼部を患者の口角から口腔内に挿入させ、左右の口角鉤の外周部の凹溝内に口角の両側部を嵌め込ませるという作業など、複雑な作業を必要とするという問題がある。
【0007】
また、特許文献1の口腔開拡装置は、要介護者、幼児、障害者等の口腔ケアに非協力的な対象者に対する上記作業を行なうことが困難になることが懸念される。
【0008】
それ故に本発明の課題は、口唇開口の作業を効率よく簡便にでき、汎用に適した口唇開口器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の態様によれば、口唇を開口する口唇開口器具において、第1の柄部と、前記第1の柄部の一端に連設した第1の把持部と、前記第1の柄部の他端に連設した第1の鉤部と、第2の柄部と、前記第2の柄部の一端に連設した第2の把持部と、前記第2の柄部の他端に連設した第2の鉤部と、前記第1の鉤部を第1の開方向及び該第1の開方向とは逆向きの第2の開方向、前記第2の鉤部を前記第1の開方向及び前記第2の開方向へ移動可能になるよう前記第1の柄部及び前記第2の柄部を開閉可能に連結した支点部とを有し、前記第1の鉤部は、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部が前記第1の閉方向及び前記第2の閉方向へ移動して閉じた状態で、前記第1の柄部の他端から前記支点部を含む軸線に沿って延在している第1の基部と、該第1の基部から前記第1の開方向へ延在している第1の壁部とを有し、前記第2の鉤部は、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部が前記第1の閉方向及び前記第2の閉方向へ移動して閉じた状態で、前記第2の柄部の他端から前記軸線に沿って延在している第2の基部と、該第2の基部から前記第2の開方向へ延在している第2の壁部とを有し、前記第1の鉤部及び第2の鉤部が前記第1の把持部及び前記第2の把持部の開閉に応じて開閉することを特徴とする口唇開口器具が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る口唇開口器具によれば、口唇の開口作業を容易に行うことができ、そのまま開口を保持することが容易にできるので、口腔ケア時の口腔内の観察や口腔内にける手技が容易となる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る口唇開口器具によれば、実際の医療現場のみならず、介護現場や家庭においても簡便な口腔ケアの手技が可能であり、汎用に適した口唇開口器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の態様に係る口唇開口器具の正面図である。
【図2】図1に示した口唇開口器具の斜視図である。
【図3】図1に示した口唇開口器具を下側から見た裏面図である。
【図4】本発明の一実施の態様に係る口唇開口器具の使用方法における初期状態を口唇とともに示した平面図である。
【図5】図4に示した口唇開口器具の使用方法における次段階の操作を口唇とともに示した平面図である。
【図6】図5に示した口唇開口器具の使用方法における次段階の操作を口唇とともに示した平面図である。
【図7】図6に示した口唇開口器具の使用方法における次段階の操作によって、口唇を開口した状態を示した平面図である。
【図8】図1に示した口唇開口器具の第1及び第2の鉤部の変形例を、図1の左側から見た状態で拡大して示した左側面図である。
【図9】図1に示した口唇開口器具にロック機構を設けた変形例を示す斜視図である。
【図10】図9に示したロック機構を断面し拡大して示した一部断面図である。
【図11】図1に示した口唇開口器具の変形例を示した正面図である。
【図12】図1に示した口唇開口器具の他の変形例を示した正面図である。
【図13】図12に示した口唇開口器具の第1及び第2の鉤部を開口方向へ移動した状態を示した正面図である。
【図14】図1に示した口唇開口器具の、さらに他の変形例を示しており、図1の左側から見た状態で拡大して示した左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図3を参照して、本発明の一実施の態様に係る口唇開口器具の全体構成について説明する。
【0014】
図示の口唇開口器具は、第1の柄部11と、第1の柄部11の一端に連設されている第1の把持部12と、第1の柄部11の他端に連設されている第1の鉤部13と、第2の柄部21と、第2の柄部21の一端に連設されている第2の把持部22と、第2の柄部22の他端に連設されている第2の鉤部23とを有する。
【0015】
さらに、口唇開口器具は、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を第1の開方向A1(図1を参照)及び第2の開方向A2(図1を参照)、第1の閉方向B1(図1を参照)及び第2の閉方向B2(図1を参照)で開閉可能とするように、第1の柄部11及び第2の柄部21を相互に連結している支点部31を有する。
【0016】
ここで、第1の開方向A1は、第1の柄部11に連設されている第1の鉤部13が支点部31を支点として開方向の内の一方向へ回転移動する方向である。第2の開方向A2は、第2の柄部21に連設されている第2の鉤部23が支点部31を支点として第1の開方向A1とは逆向きに回転移動する方向である。
【0017】
第1の閉方向B1は、第1の柄部11に連設されている第1の鉤部13が支点部31を支点として、第1の開方向A1とは逆向きに回転移動する方向である。第2の閉方向B2は、第2の柄部21に連設されている第2の鉤部23が支点部31を支点として、第2の閉方向A2とは逆向きに回転移動する方向である。
【0018】
第1の柄部11及び第2の柄部21は、棒状又は帯板状に作られており、支点部31を含む軸線X(図1を参照)の両側で対称に位置している。第1の把持部12及び第2の把持部22は、支点部31を含む軸線(図1を参照)Xの両側で対称に位置している。第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、支点部31を含む軸線Xの両側で対称に位置している。なお、この実施の形態においては、第1の鉤部13と第2の鉤部23とが同じ形状である。
【0019】
第1の鉤部13は、第1の柄部11の他端に連設されている第1の基部14と、第1の基部14から第1の開方向A1へ延在している板状の第1の壁部15と、第1の壁部15と対向するように第1の基部14から第1の開方向A1へ延在している第1の相手壁部16とを有する。
【0020】
第1の基部14は、図1及び図3に示したように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が第1及び第2の閉方向B1,B2に移動して閉じた状態で、第1の柄部11の他端から略軸線Xに沿って延在するように第1の柄部11に連設されている。また、第1の基部14は、軸線X方向における中央部分が第1の開方向A1へなだらかに凹むようにドーム状に湾曲している。
【0021】
第1の壁部15の第1の開方向A1側の縁部15aは、軸線X方向における中央部分が第1の開方向A1へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲している。第1の相手壁部16の第1の開方向A1側の縁部16aは、軸線X方向における中央部分が第1の開方向A1へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲している。
【0022】
また、第1の鉤部13の第1の壁部15の先端部15c(図3を参照)及び第1の相手壁部16の先端部16cは、先端側へ湾曲状に膨出している。第1の壁部15の後端部15d及び第1の相手壁部16の後端部16dは、後端側へ膨出するように湾曲している。さらに、第1の壁部15及び第1の相手壁部16は、第1の基部14から第1の開方向A1へ延在している縁部15a,16aまでの高さが同一である。
【0023】
第2の鉤部23は、第2の柄部21の他端に連設されている第2の基部24と、第2の基部24から第2の開方向A2へ延在している板状の第2の壁部25と、第2の壁部25と対向するように第2の基部24から第2の開方向A2へ延在している第2の相手壁部26とを有する。
【0024】
第2の基部24は、図1及び図3に示したように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が第1及び第2の閉方向B1,B2へ移動して閉じた状態で、第2の柄部21の他端から略軸線Xに沿って延在するように第2の柄部21に連設されている。また、第2の基部24は、軸線X方向における中央部分が第2の開方向A2へなだらかに凹むようにドーム状に湾曲している。
【0025】
第2の壁部25の第2の開方向A2側の縁部25aは、軸線X方向における中央部分が第2の開方向A2へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲している。第2の相手壁部26の第2の開方向A2側の縁部26aは、軸線X方向における中央部分が第2の開方向A2へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲している。
【0026】
また、第2の壁部25の先端部25c(図2を参照)及び第2の相手壁部26の先端部26cは、先端側へ湾曲状に膨出している。第2の鉤部23の第2の壁部25の後端部25d及び第2の相手壁部26の後端部26dは、後端側へ膨出するように湾曲している。さらに、第2の壁部25及び第2の相手壁部26は、第2の基部24から第2の開方向A2へ延在している縁部25a,26aまでの高さが同一である。
【0027】
第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、第1及び第2の閉方向B1,B2で軸線Xに最も近づいた位置で近接して対向した状態から、第1の把持部12及び第2の把持部22の開閉に応じて、第1及び第2の開方向A1,A2で軸線Xから離れるように開閉する。
【0028】
なお、第1の把持部12及び第2の把持部22は、図1乃至図3に示したように、汎用品としての鋏において手の指を差し込み把持して開閉操作ができるようなリング状の形状部分である。その他、第1の把持部12及び第2の把持部22は、汎用品としてのペンチにおいて手の指で握り開閉操作することが可能な形状部分であってもよい。
【0029】
次に、口唇開口器具を使用して口唇を開口させる操作方法を説明する。先ず、図1に示したように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が閉じられて横方向に口唇開口器具を位置させた状態として、図4に示すように、第1の鉤部13の第1の壁部15を上唇35の内側に挿入する。
【0030】
この際、第1の把持部12及び第2の把持部22を片手の指で把持する。そして、第1の鉤部13の第1の壁部15を第1及び第2の開方向A1,A2及び第1及び第2の閉方向B1,B2を含む共通の仮想平面に対して少し傾けた状態で、第1の壁部15を上唇35の内側へ挿入する。この際、第1の相手壁部16は、上唇35の外面と対向している。
【0031】
なお、第1の壁部15の第1の開方向A1側の縁部15aが、ドーム状に湾曲していることから、上唇35及び下唇36が閉じられている状態においても、上唇35及び下唇36間に第1の壁部15を容易に挿入することができる。
【0032】
さらに次段階として、図5に示すように、第1の鉤部13を上唇35の上方へ少し押し上げて上唇35を上側に少し開き、第2の鉤部23の第2の壁部25を下唇36の内側に挿入する。この際、第2の相手壁部26は、下唇36の外面と対向している。
【0033】
なお、第2の壁部25の第2の開方向A2側の縁部25aは、ドーム状に湾曲していることから、下唇36の内側に第2の壁部25を容易に挿入することができる。
【0034】
次の段階として、図6に示すように、第1の把持部12及び第2の把持部22を右手の指で把持した状態で、口唇開口器具を約90度の角度(図6では時計方向に90度の角度)に回転させる。この際、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が閉じられている状態で、第1の壁部15の先端部15c及び第2の壁部25の先端部25cが上唇35の内側に挿入されて縦方向に位置する。この際、第1の壁部15の後端部15d及び第2の壁部25の後端部25dが下唇36を下向きに押し広げるようにして下唇36に当っている。
【0035】
なお、第1の把持部12及び第2の把持部22を左手の指で把持した場合には、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を横方向で約180度の角度で逆向きにして、第1の把持部12及び第2の把持部22を左手の指で把持し、口唇開口器具を約90度の角度(反時計方向に90度の角度)に回転させると、図6に示した状態となる。
【0036】
最後に、第1の把持部12及び第2の把持部22を第1及び第2の閉方向B1,B2へ閉じると、図7に示すように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が第1及び第2の開方向A1,A2へ大きく開くので、口唇を大きく開口させることができる。
【0037】
このように、口唇開口器具は、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を閉じた状態で口唇に挿入したあと回転して、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を開くという簡便な操作により口唇を開くことができ、上唇35及び上唇36や口腔内を傷つけることなく口唇の開口が可能となる。
【0038】
なお、第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、上唇35及び上唇36や口腔内を傷つけることを避けるために、鋭角もしくは直角な角部分がないように曲面に形成して作る。
【0039】
また、第1の鉤部13の第1の基部14及び第2の鉤部23の第2の基部24、第1の柄部11及び第2の柄部21のいずれか、又はそれらすべてを、可撓性を有する材料で作ると、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が互いに平行な方向へ弓なりに曲がり易くなり、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を傾かせることができる。
【0040】
即ち、第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、上唇35及び下唇36の口角で押圧されると、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が、互いに平行となる方向へ弓なりに傾かせることができる。
【0041】
さらに、第1の鉤部13の第1の壁部15の先端部15cが第1の相手壁部16の先端部16cよりも少し前方へ膨出させた湾曲形状としてもよい。同様に、第2の鉤部23の第2の壁部25の先端部25cが第2の相手壁部26の先端部26cよりも少し前方へ膨出させた形状としてもよい。
【0042】
口唇開口器具は、金属材を加工することによって製作するほかに、プラスチック、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂により製作することができる。
【0043】
また、第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、第1の壁部15及び第1の相手壁部16間に隙間がある形状であり、第2の壁部25及び第2の相手壁部26間に隙間がある形状であるが、隙間がない形状であってもよい。さらに、第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、第1の壁部15及び第1の相手壁部16、第2の壁部25及び第2の相手壁部26を有するが、少なくとも第1の鉤部13に1つの第1の壁部15を、第2の鉤部23に1つの第2の壁部25を有する形状であってもよい。
【0044】
図8は、図1乃至図3に示した口唇開口器具の第1の鉤部13及び第2の鉤部23の変形例を示しており、図1の左側から見た状態で拡大して示した図である。なお、図8に示した口唇開口器具の説明では、図1乃至図3によって説明した口唇開口器具と同じ機能部分を、図1乃至図3の口唇開口器具の参照番号を引用して説明する。
【0045】
図8を参照して第1の鉤部13の第1の相手壁部16´は、第1の基部14から第1の開方向A1へ延在している縁部16a´が第1の壁部15の縁部15aよりも低く延在している形状である。同様に、第2の鉤部23の第2の相手壁部26´は、第2の基部24から第2の開方向A2へ延在している縁部26a´が第2の壁部25の縁部25aよりも低く延在している形状である。
【0046】
このような、第1の鉤部13及び第2の鉤部23の形状であっても、前述した口唇開口器具を使用して口唇を開口させる使用方法を採用することによって、口唇を開く操作を行なうことができる。
【0047】
図9及び図10は、第1の鉤部13及びと第2の鉤部23が第1及び第2の開方向A1,A2へ開いた位置で正面略V字状に姿勢を保つようにロックするロック機構を口唇開口器具に備えた具体例を示している。
【0048】
以下、口唇開口器具のロック機構を説明する。支点部31と第1の把持部12及び第2の把持部22の間に位置している第1の柄部11及び第2の柄部21は、第1の柄部11及び第2の柄部21を第1及び第2の閉方向B1,B2へ閉じる際に、所定位置でロック状態とするロック機構41を有する。
【0049】
ロック機構41は、第2の柄部21から第1の柄部11側へ延びている長板形状のロック部42と、第1の柄部11から第2の柄部21側へ延びてロック部42と係合する長板形状の被ロック部43とを有する。
【0050】
ロック部42には、一面に複数の係合溝42aが形成されており、被ロック部43には、複数の係合溝42aのいずれかに係合する突状の係合部43aが形成されている。
【0051】
ロック部42及び被ロック部43は、樹脂材によって成形加工することによって弾性を有するものであることが好ましい。なお、ロック部42及び被ロック部43は、第1の柄部11及び第2の柄部21と同じ樹脂材料を用い、第1の柄部11及び第2の柄部21と同時に成形加工するようにしてもよい。
【0052】
第1の柄部11及び第2の柄部21を第1及び第2の閉方向B1,B2へ閉じたときには、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が開方向A1,A2へ開く。この状態で、ロック機構41は、第1の柄部11及び第2の柄部21が回転移動しないように保持する。
【0053】
ロック機構41の複数の係合溝42aと係合部43aとの係合の組み合わせにより、第1及び第2の開方向A1,A2の開く角度を所望する複数段階の角度でロックすることができる。
【0054】
このように、ロック機構41の係合箇所を選択してロックができるので、口唇の開口度合いを選択でき、必要とする口唇の開口度合いで第1の鉤部13及び第2の鉤部23の第1及び第2の開方向A1,A2の位置を保持できる。
【0055】
図11は、図1によって説明した口唇開口器具の変形例を示している。なお、図7において説明した口唇開口器具では、第1の柄部11及び第2の柄部21を支点部31から正面略V字状に開くようにしている。したがって、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が支点部31を支点軸として傾斜した状態に位置している。
【0056】
図11に示した口唇開口器具では、支点部31から第1の柄部11´及び第2の柄部21´を略U字状に開くようにすることで、正面から見た場合に第1の鉤部13及び第2の鉤部23が軸線Xに対して互いに略平行に位置するようになっている。このように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を略平行に位置させることで、下唇36(図7を参照)側をより広く開口させることができる。
【0057】
なお、第1の鉤部13及び第2の鉤部23は、第1の柄部11´及び第2の柄部21´を第1及び第2の閉方向B1,B2へ閉じたときに、図1に示した第1の鉤部13及び第2の鉤部23と同様に、軸線Xに最も近い位置で互いに略平行に位置させることができる。第1の鉤部13及び第2の鉤部23を、軸線Xに最も近い位置で互いに略平行に位置させるようにするには、第1の柄部11´及び第2の柄部21´の形状を考慮し設計すれば可能である。
【0058】
図12及び図13は、図1に示した口唇開口器具のさらに他の変形例を示している。なお、図12及び図13に示した口唇開口器具の説明において、図1乃至図3に示した口唇開口器具と同じ部分については、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0059】
図12及び図13を参照して、第1の柄部111は、略クランク形状に作られている。第2の柄部121は、軸線Xを中心線として第1の柄部111とは対象な略クランク形状に作られている。
【0060】
第1の柄部111の一端には、第1の把持部12が連設されている。第2の柄部121の一端には、第2の把持部22が連設されている。第1の柄部111の他端には、第1の鉤部13が連設されている。第2の柄部121の他端には、第2の鉤部23が連設されている。
【0061】
第1の柄部111は、軸線Xと直交する方向に長い第1の中間部111aを有する。第1の中間部111aには、支点部131が設けられている。第2の柄部121は、軸線Xと直交する方向に長い第2の中間部121aを有する。第2の中間部121aには、支点部131にスライド可能に係合している長孔形状の係合部121bが形成されている。
【0062】
第1の中間部111a及び第2の中間部121aは、軸線Xと直交する方向に長いスライド部材150に沿って軸線Xと直交する方向へスライド自在となっている。スライド部材150は、第1の中間部111a及び第2の中間部121aを軸線Xと直交する方向へガイドするレールの役目を果たす。
【0063】
図12に示したように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が閉じられている状態では、第1の把持部12及び第2の把持部22が第1及び第2の開方向A1´,A2´へ開いた状態となっている。この状態で、図13に示したように、第1の把持部12及び第2の把持部22を第1及び第2の閉方向B1´,B2´へ閉じたときには、支点部131を軸として第1の中間部111a及び第2の中間部121aがスライド部材150をガイドとして平行移動し、支点部131が係合部121bをスライドする。
【0064】
このように、第1の把持部12及び第2の把持部22を第1及び第2の閉方向B1´,B2´へ閉じると、第1の鉤部13及び第2の鉤部23が互いに平行に移動し、第1及び第2の開方向A1´,A2´へ移動して開く。
【0065】
このとき、口唇開口器具は支点部131から第1の柄部111及び第2の柄部121を略U字状に開くようにすることができるので、図13に示したように正面から見た場合に第1の鉤部13及び第2の鉤部23が軸線Xに対して互いに平行に位置する。
【0066】
このように、第1の鉤部13及び第2の鉤部23を平行に位置させることで、下唇36(図7を参照)側を広く開口させることができる。
【0067】
なお、図12及び図13に示した口唇開口器具を使用して口唇を開口させる操作は、図4乃至図7によって説明した口唇開口器具の操作と同様であるため説明を省略する。
【0068】
図14は、図1乃至図3に示した口唇開口器具の第1の鉤部13及び第2の鉤部23の変形例を示しており、図1の左側から見た状態で拡大して示した図である。なお、図14に示した口唇開口器具の説明では、図1乃至図3に示した口唇開口器具と同じ部分について、同じ参照番号を付して説明する。また、口唇開口器具を使用して口唇を開口させる操作は、図4乃至図7によって説明した口唇開口器具の操作と同様であるため説明を省略する。
【0069】
図14に示した第1の鉤部113及び第2の鉤部123は、円弧板の形状を呈している。第1の鉤部113は、第1の柄部11(図1を参照)の一端に連設され、第1の柄部11の他端から延在している第1の基部114と、第1の基部114から互いに対向するように第1の開方向A1へ延在している第1の壁部115及び第1の相手壁部116とを有する。
【0070】
第2の鉤部123は、第2の柄部21(図1を参照)の一端に連設され、第2の柄部21の他端から延在している第2の基部124と、第2の基部124から互いに対向するように第2の開方向A2へ延在している第2の壁部125及び第2の相手壁部126とを有する。
【0071】
第1の基部114、第1の壁部115及び第1の相手壁部116は、これらの外面が連続した円弧状の湾曲面となっている。第2の基部124、第2の壁部125及び第2の相手壁部126は、これらの外面が連続した円弧状の湾曲面となっている。ここで述べた第1の基部114の外面、第1の壁部115の外面及び第1の相手壁部116の外面は、第1の壁部115及び第1の相手壁部116が対向している内面と、これらの内面に連続している第1の基部114の内面に対して外側となる面である。また、第2の基部124の外面、第2の壁部125の外面及び第2の相手壁部126の外面は、第2の壁部125及び第2の相手壁部126が対向している内面と、これらの内面に連続している第2の基部124の内面に対して外側となる面である。
【0072】
第1の基部114は、軸線X方向における中央部分が第1の開方向A1へなだらかに凹むようにドーム状に湾曲させ、第1の壁部115及び第1の相手壁部116の第1の開方向A1側の縁部115a、116aを軸線X方向における中央部分が第1の開方向A1へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲させてもよい。
【0073】
また、第1の鉤部113の第1の壁部115及び第1の相手壁部116の先端部15c,16c(図2を参照)を、先端側へ膨出するように湾曲状に膨出するようにし、さらに、第1の鉤部113の第1の壁部115の後端部及び第1の相手壁部116の後端部を後端側へ湾曲状に膨出するようにしてもよい。
【0074】
同様に、第2の基部124は、軸線X方向における中央部分が第2の開方向A2へなだらかに凹むようにドーム状に湾曲させ、第2の壁部125及び第2の相手壁部126の第2の開方向A2側の縁部125a、126aを軸線X方向における中央部分が第2の開方向A2へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲させてもよい。
【0075】
また、第2の鉤部123の第2の壁部125及び第2の相手壁部126の先端部25c,26c(図2を参照)を先端側へ膨出するように湾曲状に形成し、第2の鉤部123の第2の壁部125,126の後端部25d,26dを後端側へ膨出するように湾曲状に形成してもよい。
【0076】
さらに、実施の形態により説明した第1の鉤部13,113、第2の鉤部23,123は、ラクビーボールの表面ような湾曲面をもつ形状であってもよい。即ち、第1及び第2の壁部15,25、第1及び第2の相手壁部16,26の外面の中央面を外向きに少し湾曲させた形状であってもよい。
【0077】
なお、第1の鉤部113の第1の相手壁部116は、第1の基部114から第1の開方向A1へ延在している縁部116aが第1の壁部115の縁部115aよりも低く延在している形状であってもよい。同様に、第2の鉤部23の第2の相手壁部126´は、第2の基部124から第2の開方向A2へ延在している縁部126a´が第2の壁部125の縁部125aよりも低く延在している形状であってもよい。
【0078】
さらに、実施の形態例においては、第1の柄部11,11´が第1の把持部12と連設され、第2の柄部21,21´が第2の把持部22と連設されているが、第1の柄部11,11´を第2の把持部22と連設し、第2の柄部21,21´を第1の把持部12と連設して、支点部31によって回動可能に支持するようにしてもよい。
【0079】
以上、実施形態を参照して本発明の口唇開口器具を説明したが、本発明は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の構成は、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、口腔内の診査、口腔内の治療、口腔内の撮影時における口唇開口器具として、また歯磨き時における口唇開口器具として用いる。
【符号の説明】
【0081】
11,11´,111 第1の柄部
12 第1の把持部
13,113 第1の鉤部
14,114 第1の基部
15,115 第1の壁部
15a,115a 第1の壁部の縁部
15c 第1の壁部の先端部
15d 第1の壁部の後端部
16,16´,116 第1の相手壁部
16a,16a´,116a 第1の相手壁部の縁部
16c 第1の相手壁部の先端部
16d 第1の相手壁部の後端部
21,21´,121 第2の柄部
22 第2の把持部
23,123 第2の鉤部
24,124 第2の基部
25,125 第2の壁部
25a,125a 第2の壁部の縁部
25c 第2の壁部の先端部
25d 第2の壁部の後端部
26,26´,126 第2の相手壁部
26a,26a´,126a 第2の相手壁部の縁部
26c 第2の相手壁部の先端部
26d 第2の相手壁部の後端部
31,131 支点部
41 ロック機構
42 ロック部
42a 係合溝
43 被ロック部
43a 係合部
111a 第1の中間部
121a 第2の中間部
121b 係合部
150 スライド部材
A1,A1´ 第1の開方向
A2,A2´ 第2の開方向
B1,B1´ 第1の閉方向
B2,B2´ 第2の閉方向
X 軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口唇を開口する口唇開口器具において、
第1の柄部と、前記第1の柄部の一端に連設した第1の把持部と、前記第1の柄部の他端に連設した第1の鉤部と、第2の柄部と、前記第2の柄部の一端に連設した第2の把持部と、前記第2の柄部の他端に連設した第2の鉤部と、前記第1の鉤部を第1の開方向及び該第1の開方向とは逆向きの第2の開方向、前記第2の鉤部を前記第1の開方向及び前記第2の開方向へ移動可能になるよう前記第1の柄部及び前記第2の柄部を開閉可能に連結した支点部とを有し、
前記第1の鉤部は、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部が前記第1の閉方向及び前記第2の閉方向へ移動して閉じた状態で、前記第1の柄部の他端から前記支点部を含む軸線に沿って延在している第1の基部と、該第1の基部から前記第1の開方向へ延在している第1の壁部とを有し、
前記第2の鉤部は、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部が前記第1の閉方向及び前記第2の閉方向へ移動して閉じた状態で、前記第2の柄部の他端から前記軸線に沿って延在している第2の基部と、該第2の基部から前記第2の開方向へ延在している第2の壁部とを有し、
前記第1の鉤部及び第2の鉤部が前記第1の把持部及び前記第2の把持部の開閉に応じて開閉することを特徴とする口唇開口器具。
【請求項2】
請求項1記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部は、前記支点部を含む前記軸線の両側で対称に位置していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部は、前記第1の壁部と対向している第1の相手壁部を有し、前記第1の壁部及び前記第1の相手壁部は、前記第1の基部から互いに対向するように前記第1の開方向へ延在しており、前記第2の鉤部は、前記第2の壁部と対向している第2の相手壁部を有し、前記第2の壁部及び前記第2の相手壁部は、前記第2の基部から互いに対向するように前記第2の開方向へ延在していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項4】
請求項3記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部の前記第1の壁部及び前記第1の相手壁部は、前記第1の基部から前記第1の開方向へ延在している縁部までの高さが同一であり、前記第2の鉤部の前記第2の壁部及び前記第2の相手壁部は、前記第2の基部から前記第2の開方向へ延在している縁部までの高さが同一であることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項5】
請求項3記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部の前記第1の相手壁部は、前記第1の基部から前記第1の開方向へ延在している縁部が前記第1の壁部の縁部よりも低く延在している形状であり、前記第2の鉤部の前記第2の相手壁部は、前記第2の基部から前記第2の開方向へ延在している縁部が前記第2の壁部の縁部よりも低く延在している形状であることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の壁部の前記第1の開方向側の縁部及び前記第1の相手壁部の前記第1の開方向側の縁部は、前記軸線方向における中央部分が前記第1の開方向へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲しており、前記第2の壁部の前記第1の開方向側の縁部及び前記第2の相手壁部の前記第2の開方向側の縁部は、前記軸線方向における中央部分が前記第2の開方向へなだらかに膨出するようにドーム状に湾曲していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部の前記第1の壁部の先端部及び前記第1の鉤部の前記第1の相手壁部の先端部は先端側へ湾曲状に膨出しており、前記第2の鉤部の前記第2の壁部の先端部及び前記第2の鉤部の前記第2の相手壁部の先端部は先端側へ湾曲状に膨出していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部の前記第1の壁部の後端部及び前記第1の鉤部の前記第1の相手壁部の後端部は、後端側へ湾曲状に膨出しており、前記第2の鉤部の前記第2の壁部の後端部及び前記第2の鉤部の前記第2の相手壁部の後端部は、後端側へ湾曲状に膨出していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の把持部及び前記第2の把持部、若しくは前記第1の把持部及び前記第2の把持部側の前記第1の柄部及び前記第2の柄部には、前記第1の把持部及び前記第2の把持部、若しくは前記第1の柄部及び前記第2の柄部を前記第1及び第2の閉方向へ閉じたときにロック状態とするロック機構を有していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項10】
請求項9に記載の口唇開口器具において、前記ロック機構は、前記第2の柄部から前記第1の柄部側へ延びているロック部と、前記第1の柄部から前記第2の柄部側へ延びて前記ロック部と係合する被ロック部とを有していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部は、前記第1の把持部及び前記第2の把持部を前記第1及び第2の閉方向へ移動した際に、略V字状に傾斜して位置していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の鉤部及び前記第2の鉤部は、前記第1の把持部及び前記第2の把持部を前記第1及び第2の閉方向へ移動した際に、互いに略平行に位置していることを特徴とする口唇開口器具。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の口唇開口器具において、前記第1の壁部及び前記第1の相手壁部が対向している内面と、これらの内面に連続している前記第1の基部の内面に対して外側となる外面が円弧板の形状を呈しており、前記第2の壁部及び前記第2の相手壁部が対向している内面と、これらの内面に連続している前記第2の基部の内面とに対して外側となる外面が円弧板の形状を呈していることを特徴とする口唇開口器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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