説明

口腔内ケア用ブラシ

【課題】 口腔内の粘膜に適度の刺激を与えつつ、その汚れを除去することができ、また痰や唾液の排出ケアや湿潤剤を塗布しながらのケアにも適した口腔ケア用のブラシを提供する。
【解決手段】口腔内ケア用ブラシ1は、2本の撚られた金属製の線材2らなる軸部材3と、この軸部材3上に螺旋状に並んで保持された毛材4とを具備する。軸部材3の毛材4を保持した部分は毛材4と共にほぼ環状に巻かれて口腔内に挿入可能なブラシ部5が形成される。軸部材3の毛材4のない他端側がブラシ部5から直線状に延出して柄部3bが形成される。毛材4として、500〜1330デシテックスで不規則なウェーブ付きのポリプロピレン繊維のような合成繊維が用いられる。この合成繊維は、適度な弾性と強度を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自力での口腔ケアが困難な病人の口腔内のケアに特に適した固さと形状を有するブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば寝たきり老人の口腔内をブラシを用いて洗浄するケアは、口腔内の細菌を減らす器質的口腔ケアとしての側面のほか、捕食、咀嚼、食塊形成、嚥下などの口腔機能を回復させる機能的口腔ケアとしての側面でも注目されている。このような口腔ケアに用いるためのブラシとして、例えば特許文献1に記載された洗浄ブラシが知られている。
このブラシは、2本の撚られた金属製の線材からなる軸部材と、この軸部材の先端側の線材の所定長さ部分に挟まれて螺旋状に並んで保持された毛材とを具備する。軸部材の先端側部分は、毛材と共に1巻き以上巻かれて口腔内に挿入可能なブラシ部を形成する。軸部材の毛材のない他端側は、ブラシ部から直線状に延出して柄部を形成する。ブラシ部においては、毛材の集合が概略球形状になって、各毛材が放射状に広がる。このため、口腔内のあらゆる部位に毛先を当てて粘膜を刺激し、かつ効率的に洗浄を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−229015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の洗浄ブラシにおいては、毛材が比較的太く、かつ粗いために、適用する患者の症状によっては刺激が強すぎる場合がある。また、痰のような粘液の排出ケアや湿潤剤を塗布しながらのケアには適さないという問題点がある。
したがって、この出願に係る発明は、口腔内の粘膜に対する刺激が強すぎず、また痰や唾液の排出ケアや湿潤剤を塗布しながらのケアにも適した口腔ケア用のブラシを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、2本の撚られた金属製の線材2らなる軸部材3と、この軸部材3の先端側の所定長さ部分の線材2に挟まれて螺旋状に並んで保持された毛材4とを具備した口腔内ケア用ブラシ1を提供する。軸部材3の先端側部分は毛材4と共にほぼ環状に巻かれて口腔内に挿入可能なブラシ部5が形成され、軸部材3の毛材4のない他端側がブラシ部5から直線状に延出して柄部3bが形成される。この口腔内ケア用ブラシ1においては、患者の口腔内粘膜に対する適当な刺激を確保するために、毛材4として、太さ500〜1330デシテックスで、不規則なウェーブ付きのポリプロピレン繊維のような合成繊維が用いられる。この合成繊維は、適度な弾性と強度を持ち、使用中にちぎれにくく、患者に不快感を与えることがない。
ブラシ部5は、密集して軸部材3からほぼ放射状に延出する毛材4により、わた玉のような、やや扁平な球形状を呈する。ブラシ部5内において線材2は、密集した毛材4の内部に隠蔽されるために外部に露出しない。
柄部3bは、所定長さにわたって、当該柄部3bの塑性変形を許容する弾性合成樹脂製の補強部6により被覆することができる。それによって柄部3bが繰り返し屈曲変形による破断に対して補強される。この補強部6にさらに一体に連続する弾性合成樹脂製のハンドル部7を設けることによりさらに使用勝手を向上させることができる。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明のブラシによれば、ソフトな毛材4が過敏な粘膜、出血傾向が強い粘膜のケアに適している。全周に微細な毛材4が密集した球面ブラシなので、口腔内の粘性のある汚れをその全周に効率的に絡め取ることができる。湿潤剤のような薬剤を担持させて粘膜に塗布しながらケアを行うことができる。
【0006】
柄部3bを所定長さにわたって、当該柄部3bの塑性変形を許容する弾性合成樹脂製の補強部6により被覆すれば、補強部6によって柄部3bが繰り返し屈曲変形による破断に対して補強される。柄部3bを自在に屈曲変形させることにより、口腔内の状況に容易に適合させて、ブラシ部5を所望の場所に容易に到達させることができる。
以上、添付図面の符号を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る口腔内ケア用ブラシの正面図、図2は図1の口腔内ケア用ブラシの側面図、図3は図2におけるIII−III断面図、図4は図1におけるIV−IV断面図、図5は図1の口腔内ケア用ブラシの製造過程を示す斜視図、図6は図1の口腔内ケア用ブラシの製造過程を示す正面図である。
【0008】
図において、口腔内ケア用ブラシ1は、互いに撚られた2本のステンレス鋼製の線材2(図示の例において、一端において折り返された1本)からなる軸部材3と、当該軸部材3の先端側における所定範囲の線材2の間に挟まれて螺旋状に並んで保持された毛材4とを具備する。
【0009】
図3に示すように、軸部材3の先端側の毛材4を保持した部分は、環状にほぼ180°巻き込まれ湾曲部3aを形成する。軸部材3の湾曲部3aにのみ毛材4が配され、当該部位にブラシ部5を形成する。軸部材3における毛材4のない他端側は直線状に延出した柄部3bを形成している。柄部3bの端部にはループ部3cが形成される。
【0010】
毛材4は合成繊維、好ましくはポリプロピレンの繊維で、太さ500〜1330デシテックス、長さは15mm〜20mm程度であり、不規則なウェーブ付き(不規則に縮れている)である。例えば、三菱レイヨン株式会社製のポリプロピレン繊維「ダクリス(登録商標)」、太さ890デシテックスが好適である。口腔内への挿入、洗浄作業に適する寸法である。図において、毛材4は模式的に示したものであり、実際の形状を示したものではない。ポリプロピレン繊維は、適度の弾性と靱性を持ち、口腔内でのケア作業中にちぎれにくく、切断片が口腔中に残る不都合を生じにくい。
【0011】
ブラシ部5の毛材4は、軸部材3の周りに螺旋状に保持されているが、軸部材3から一部が絡み合いながら密集して広がっているため、外側から螺旋状の整列は見えず、実質的に、軸部材3の湾曲部3aの中心から四方にほぼ均等に、わた玉状に広がる外観を呈する。各毛材4の先端部はすべてほぼ半径方向外側に向いていて、適度の弾性と靱性を持つので、口腔内の唾液や、洗浄用の水に濡れても、互いに密着して一方向へ倒れることなく、ほぼ放射状に広がる基本的形態を維持する。
【0012】
ほぼ放射状に広がる毛材4の先端部が、口腔内であらゆる部位にほぼ均等な圧力で接触し、効率的に口腔内の汚れを落とすと共に、粘膜に刺激を与え、血行を促す。粘性のある痰や唾液を玉状のブラシ部5に絡めて容易に排出できる。脱脂綿やガーゼは、唾液や洗浄水で濡れると、繊維が密着して粘膜と平行に寝てしまうため、上記の機能が期待できない。軸部材3の先端部3dはブラシ部5の内側に巻き込まれていて外側へ突出していないので口腔内を傷つけるおそれがなく安全である。洗浄、消毒等をすれば繰り返し使用することもできる。
【0013】
軸部材3の柄部3bは、所定長さにわたって、当該柄部3bの塑性変形を許容するポリエチレンのような弾性合成樹脂製の筒状補強部6により被覆することができる。補強部6によって、柄部3bが繰り返し屈曲変形による破断に対して補強される。ハンドル部7が、補強部6に一体に連続して延びる。
【0014】
口腔内ケア用ブラシ1は、例えば、以下のように製作される。図5において、1本のステンレス鋼製の線材2が、中央においてスタッド21に掛けられて折り曲げられ、一対の脚片2aが形成される。一対の脚片2aの間には、所定範囲にわたって毛材4が挟み込まれる。毛材4を挟持した状態の線材2は、両端において回転装置のチャック22に把持される。チャック22が回転すると、線材2の一対の脚片2aが撚られ、図6に示すように、一端側にループ部3cと柄部3bを有する軸部材3が形成される。軸部材3は、他端側において毛材4の端から先端部3dを突出させた所定位置で切断される。毛材4は、脚片2aの撚りに従って軸部材3上に螺旋状に並んで保持される。不規則に縮れた微細なポリプロピレン繊維で構成される毛材4は、個々が密集して絡み合いながら、軸部材3の周りに放射状に広がるので、全体としてほぼ丸棒状となる。図6に示す状態の軸部材3の柄部3bの周りに、インサート成形によりポリエチレン製の筒状補強部6とハンドル部7が形成される。その後、軸部材3の毛材4を保持した部分が、環状にほぼ180°巻き込まれ湾曲部3aが形成される。その結果、図1ないし3に示すように、湾曲部3aの周りに、毛材4が密集した、ほぼ玉状のブラシ部5が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る口腔内ケア用ブラシの正面図である。
【図2】図1の口腔内ケア用ブラシの側面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面図である。
【図5】図1の口腔内ケア用ブラシの製造過程を示す斜視図である。
【図6】図1の口腔内ケア用ブラシの次の製造過程を示す正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 ブラシ
2 線材
2a 脚片
3 軸部材
3a 湾曲部
3b 柄部
3c ループ部
3d 先端部
4 毛材
5 ブラシ部
6 筒状補強部
7 ハンドル部
21 スタッド
22 チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の撚られた金属製の線材からなる軸部材と、この軸部材の先端側の所定長さ部分の線材に挟まれて螺旋状に並んで保持された毛材とを具備し、前記軸部材の毛材を保持した部分は毛材と共にほぼ環状に巻かれて口腔内に挿入可能なブラシ部を形成し、前記軸部材の毛材のない他端側はブラシ部から直線状に延出して柄部を形成するものにおいて、
前記毛材は、太さ500〜1330デシテックスで、ウェーブ付きの合成繊維からなることを特徴とする口腔内ケア用ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ部が、前記軸部材から密集して放射状に延出する前記毛材により、全体としてやや扁平な球形状を呈し、ブラシ部内の軸部材が、密集した毛材の内部に隠蔽されることを特徴とする請求項1に記載の口腔内ケア用ブラシ。
【請求項3】
前記毛材が、ポリプロピレンの繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の口腔内ケア用ブラシ。
【請求項4】
前記柄部が、所定長さにわたって、当該柄部の塑性変形を許容する弾性合成樹脂製の補強部により被覆され、それによって軸部材の柄部が繰り返し屈曲変形による破断に対して補強されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の口腔内ケア用ブラシ。
【請求項5】
前記補強部に一体に連続する弾性合成樹脂製のハンドル部をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の口腔内ケア用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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