説明

口腔内光照射治療器

【課題】歯が部分的にない部分入れ歯または総入れ歯の患者にも簡単に自宅で歯肉の炎症を緩和することができる光照射治療器を提供する。
【解決手段】フレキシブル性を有し少なくとも一対の導電路1を設けた基板2、この基板2上に直並列に配置された複数個のLED3、これら基板2およびLED3の全体を被覆する透明樹脂4より成る患部照射部Aと、内部に配線を挿通させた患部照射部支持部Bと、スイッチ5および電源部7を包含する照射駆動部Cとを互いに連結して構成する。LEDは830nm〜890nmの赤外光を発生するものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯または歯茎の炎症を緩和又は治療する口腔内光照射治療器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光照射器はウ蝕の治療後の充填剤を硬化させるためのものであった。また、光照射器は歯周病などの口腔内除菌治療としても使用されている。
【0003】
かかる光照射器としては、特開2000−70292号公報(特許文献1)、特開2001−114658号公報(特許文献2)に示されているような構造のものが知られている。
【0004】
即ち、特開2000−70292号公報に記載の歯科用光照射装置においては、光照射器はその形状を歯列全体が挿入されるマウスピース型とし、その凹部内壁にチップ型のLEDユニットを歯列に沿って列設し、マウスピースの内部に、照射時間、照射間隔を制御するコントローラを埋設し、前面外部には照射領域を指定するスイッチ群を設け、マウスピースを上下の歯列によって咬合し、スイッチ群の所定のスイッチを押圧するように構成されものが記載されている。
【0005】
この装置においては、使用するLEDの発生光の波長は500nm以下、特に450nm乃至390nm以下の波長の紫外線を使用している。これは歯牙への充填樹脂の硬化を考慮に入れてのことである。また、LEDの赤外線波長を使用することもできる、と変更例で述べているが実際の波長の数値は記載していない。
【0006】
又、特開2001−114658号公報には、歯牙の表面、歯間空隙部及び/又は歯周部に塗布しブラッシングを行いながら所定の波長の光を当てて使用する製剤であって、酸化チタン及びリン酸カルシウム化合物をコーティングした酸化チタンを含有することを特徴とするハミガキ剤、及びブラシの間にLEDや光ファイバーを設置し、ブラシの間から光を放出できるようにした歯ブラシが記載されている。
【0007】
この引例では、はみがき剤を主発明としており、このはみがき剤の酸化チタン成分との光触媒作用を有効に発生させる目的でLEDを使用して紫外線或は青色などの波長の短い可視光を発生する歯ブラシを併用するようにしている。
【特許文献1】特開2000−70292号
【特許文献2】特開2001−114658号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、上述したように光照射器は歯牙照射を目的としたものが多いが、入れ歯をしている人は自前の歯がない人が大多数である。
更に、入れ歯をしている人、または入れ歯を作成中の人は入れ歯との噛み合いが不良で、入れ歯が歯肉にあたり炎症を起こす場合が多々あり、その治療が必要である。斯様に歯の無い患者への歯肉炎症の治療を考慮した光照射器は提案されていない。また、上述したように、照射波長も紫外領域を使用しているものが多い。
上述したように、入れ歯を使用している人は入れ歯が歯肉にあたり炎症を起こして、その都度歯科医院に通うのも面倒である。
【0009】
本発明の目的は、歯が部分的にない部分入れ歯、または、総入れ歯の患者にも簡単に自宅で歯肉の炎症を緩和することができる光照射治療器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明口腔内光照射治療器は、口腔内に挿入可能な患部照射部Aと、ほぼ口腔外に位置し、前記患部照射部に連結されてこれを駆動する照射駆動部Cとを備え、前記患部照射部Aにはフレキシブル性を有し、かつ、少なくとも一対の導電路が設けられた基板を配置し、該基板上の片面または両面に、通電により発光する半導体発光素子(LED)を、少なくとも1個、好適には多数個配置し、その上に、フレキシブル性を有し、かつ光を透過する樹脂を被覆することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、前記患部照射部および前記照射駆動部間に位置し、これら患部照射部および照射駆動部に連結された患部照射部支持部Bを更に設ける。
【0012】
前記患部照射部は板状、もしくは、半楕円形、長方形、正方形、もしくは、円形状とし、かつ前記患部照射部支持部の先端部に設けて歯ブラシ形状(棒状)とする。
【0013】
前記患部照射部は断面形状をV字状またはU字状とする。
【0014】
前記患部照射部は光(赤外領域等)を透過し、口腔内に挿入しても痛みや傷がつかない樹脂で被覆して構成する。
【0015】
前記患部照射部の半導体発光素子は赤外線の波長を発光するLEDとする。
【0016】
本発明においては、前記照射駆動部には、照射時間を設定できるタイマーを設けるとともにスイッチ部および電源部を備える。
【0017】
前記患部照射部支持部はこれを前記照射駆動部と一体化する。
【0018】
前記電源部は直流電源または交流電源とすることができる。また、前記電源部には充電機能を設けることができる。
【0019】
前記照射駆動手段は連続照射、及び、パルス照射を可能とする。
【0020】
前記患部照射部には唾液吸引手段を設ける。
【発明の効果】
【0021】
本発明光照射治療器によれば、赤外領域の波長を使用し、タイマーを設けることにより、長時間の赤外線照射による歯肉へのダメージを防ぐことができ、歯科医院に通院することなく自宅で簡単に治療を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明口腔内光照射治療器は患部照射部Aと、患部照射部支持部Bと、照射駆動部Cとを互いに連結することによって構成する。
患部照射部Aはフレキシブル性を有して口腔内に挿入可能とするとともに少なくとも一対の導電路を設けた基板を設け、該基板の片面、または、両面に少なくとも1個の半導体発光素子(LED)を配置し、更にその上にフレキシブル性を有し、かつ光を透過する樹脂を被覆して構成する。
【0023】
また、患部照射部支持部Bは前記患部照射部に連結され、これを支持するとともにその内部には前記患部照射部の半導体発光素子に接続するための配線を挿通させる。
【0024】
更に、照射駆動部Cはスイッチおよび電源部によって構成し、前記患部照射部支持部に連結され、患部照射部の半導体発光素子に電流を供給し得るようにする。
【実施例1】
【0025】
図面につき本発明口腔内光照射治療器の実施例を説明する。
図1に本発明口腔内光照射治療器として、歯ブラシ形状の光照射治療器について説明する。
図1に示すように、本発明口腔内光照射治療器は患部照射部Aと、患部照射部支持部Bと、照射駆動部Cとを互いに連結して構成する。
【0026】
患部照射部Aは導電路1を配線したフレキシブル性の基板2の片面または両面に、直列接続の複数個の半導体発光素子(LED)3より成る列を複数列並列に配置し、その上全体に亘って、フレキシブル性を有し、かつ、透光性のある樹脂4を塗布して両側から挟みこむように構成する。
【0027】
この際、基板2は、その大きさを歯ブラシのヘッド部分の大きさとし、長方形の他、正方形、円形の形に形成することができる。
【0028】
また、半導体発光素子(LED)3は赤外領域の波長、例えば1064nm、920〜960nm、830〜890nm等、好適には830〜890nmの光を発生するものを使用する。830nm?890nmの範囲の波長の赤外線が好適な理由は患部を温めて生体刺激治癒効果を発揮するに最適な波長がこの範囲の波長だからである。
【0029】
図1に示すように、患部照射部Aの後方には患部照射部支持部Bを連結して固着する。この患部照射部支持部Bは内部に導線(図示せず)を挿通し、その後方に照射駆動部Cを連結し、固着する。
【0030】
この照射駆動部Cは前記患部照射部Aに設けられた半導体発光素子(LED)3の発光をON/OFFさせるスイッチ5と、その発光時間を調整するタイマー6と、電源7とを設ける。
【0031】
このタイマー6によって、赤外線の照射時間を調整し、赤外線照射が長時間行われないようにする。
赤外線照射の効果は約15分位までが適切であり、それ以上の長時間照射は歯肉へのダメージが大きくなるので、好ましくない。
【0032】
また、電源7は直流電源(乾電池、充電式電池)、交流電源(コンバータ付き)の何れも使用することができる。
【0033】
本発明によれば光照射治療器を歯ブラシ形状とすることによって口腔内の炎症部位を集中的に照射することができ、しかも口腔内粘膜にできる口内炎の治療にも使用することができる。
【0034】
更に、患部照射部Aはこれにフレキシブル性を持たせることによって、歯肉形状や口腔内粘膜に好適にフィットさせることができる。
また、患部照射部Aのフレキシブル基板の両側にLED3を配置させることによって一回の照射で上下双方の治療を同時に行うことができる利点もある。
【実施例2】
【0035】
本例口腔内光照射治療器は、図2に示すように、患部照射部AをV字状または開きぎみのU字状とすること以外は実施例1の場合と同様であるので同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
本例の口腔内光照射治療器によれば、部分入れ歯の歯茎を照射するのに特に好適である。
【0036】
上述した2例における患部照射部Aの拡大斜視図およびそのI-I線上の断面図を図3aおよび図3bに夫々示す。
【0037】
図面から明らかなように、導電路1を有する基板2およびその上に設けられたLED3はその全面が透明な樹脂4で被覆されており、全体を支持体5の上側に載置固着して構成する。従って、口腔内に入れても傷や痛みを与えることはない。
【0038】
本発明の例では、図3bに示すように、この支持体5の下側にも導電路1、基板2、LED3を上述した所と同様に設け、従って、支持体5の両側に設けて上顎の歯茎および下顎の歯茎の両方を同時に治療することもできる。
【0039】
また、図面では基板2の両側にLED3を設けたが、基板2の片側にのみLED3を設けることができることは勿論である。
【実施例3】
【0040】
本例では光照射治療器を半楕円形状とする。図4aには上顎用の光照射治療器(Ta)を示し、図4bには下顎用の光照射治療器(Tb)を示す。特に上顎用の光照射治療器(Ta)は歯茎接触部分だけでなく、上蓋接触部にもLED3を敷き詰めるようにして、歯茎および上蓋全体の炎症を緩和または治療し得るようにする。これらLED3にも上記実施例の歯ブラシ形状につき説明したところと同様に電気配線を施し、スイッチおよび電源をも設けることができるが、本例ではこれを便宜上詳細には図示していない。しかし、これらは例えば図4aおよび図4bの把持部に設けられ、照射駆動部Cと同様の働きをし得るようにする。
上顎もしくは下顎を一度に照射して治療するためには光照射治療器の患部照射部を半楕円形状(トレー形状)とするのが有効である。
【実施例4】
【0041】
また、口腔内光照射治療器を15分位使用すると、唾液が分泌され、この唾液の分泌によって赤外線の効力が低下するようになる場合がある。これを防ぐためには半楕円形状トレーに唾液吸引装置を設けるのが有効である。かかる例を図5に示す。
【0042】
本例では、図5aおよび5bに示すように、LED3(図示せず)が夫々埋設された上顎用半楕円形状トレーTaおよび下顎用半楕円形状トレーTbを設け、これらトレーTaおよびTbをゴムまたは樹脂ホース10を介してバキューム器11に連結する。このバキューム器11には内部にバキュームタンク(図示せず)、電源(図示せず)、赤外光発生装置(図示せず)を装備し、上側に連続光−パルス光発生用スイッチ12、照射時間を調整するタイマー13、電源スイッチ14およびホース連結口15を設ける。
【0043】
また、上記上顎用半楕円形状トレーTaおよび上記下顎用半楕円形状トレーTbには唾液排出口16aおよび16bをそれぞれ設ける。これらトレーTaおよびTbには複数個の唾液吸引孔17aおよび17bを夫々設ける。
【0044】
かかる構成の唾液吸引装置を設けることにより、唾液の分泌によって赤外線の効力が下がるのを防ぐことができる。
【0045】
さらに、本発明によれば、使用するLEDを赤外領域の波長の光を発生する素子と、紫外領域の波長の光を発生する素子との2種類のLEDを設け、赤外線発生素子同士は夫々同一の他のスイッチにより同時に発光させ、紫外線発生素子同士も夫々同一のスイッチにより同時に発光させ、たとえば、紫外線で殺菌を行い、その後赤外線の温熱治療を行うようにし得ることも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明口腔内光照射治療器の第1実施例の構成を示す平面図である。
【図2】本発明口腔内光照射治療器の第2実施例の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)は本発明口腔内光照射治療器の主要部の構成を示す斜視図および(b)はそのI−I線上の断面図である。
【図4】本発明口腔内光照射治療器の第3実施例の構成を示す夫々示す平面図である。
【図5】(a)は本発明口腔内光照射治療器の第4実施例の構成を示す斜視図であり、(b)はそのA-A´線上の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 導電路
2 基板
3 半導体発光素子(LED)
4 樹脂
5 スイッチ
6 タイマー
7 電源
10 ホース
11 バキューム器
12 光発生用スイッチ
13 タイマー
14 電源スイッチ
15 ホース連結口
16a 唾液排出口
16b 唾液排出口
17a 唾液吸引孔
17b 唾液吸引孔
A 患部照射部
B 患部照射部支持部
C 照射駆動部
Ta 上顎用光照射治療器
Tb 下顎用光照射治療器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に挿入可能な患部照射部Aと、ほぼ口腔外に位置し、前記患部照射部に連結されてこれを駆動する照射駆動部Cとを備え、前記患部照射部Aにはフレキシブル性を有し、かつ、少なくとも一対の導電路が設けられた基板を配置し、該基板上の片面または両面に、通電により発光する半導体発光素子(LED)を、少なくとも1個、好適には多数個配置し、その上に、フレキシブル性を有し、かつ光を透過する樹脂を被覆することを特徴とする口腔内光照射治療器。
【請求項2】
前記患部照射部および前記照射駆動部間に位置し、これら患部照射部および照射駆動部に連結された患部照射部支持部Bを更に設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項3】
前記患部照射部Aは板状、もしくは、半楕円形、長方形、正方形、もしくは、円形状とし、かつ前記患部照射部支持部の先端部に設けて歯ブラシ形状(棒状)とすることを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項4】
前記患部照射部Aは断面形状をV字状またはU字状とすることを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項5】
前記患部照射部Aは光(赤外領域等)を透過し、口腔内に挿入しても痛みや傷がつかない樹脂で被覆して構成することを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項6】
前記患部照射部AのLEDは赤外領域の波長を発光するLEDおよび紫外領域の波長を発光するLEDとし、これら両領域の波長を発光するLEDは夫々個別に発光させて使用することを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項7】
前記患部照射部AのLEDは、まず最初、紫外領域の波長を発光する光で殺菌を行い、その後、赤外領域の波長を発光する光で温熱治療を行うようにすることを特徴とする請求項6に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項8】
前記照射駆動部Cは連続照射、及び、パルス照射を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。
【請求項9】
前記患部照射部Aには唾液吸引手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の口腔内光照射治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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