説明

口腔刺激製品

【課題】口腔内を刺激する為に用いるものであり、バリの様な薄氷を形成し難く、取り扱い性の良い口腔刺激製品を提供することを目的とする。
【解決手段】球状のステンレス鋼製口腔内冷却刺激部材33に、合成樹脂製の取手部材32が取り付けられた口腔刺激製品30である。これを予め冷却しておき、患者の口腔内の刺激に用いる。冷凍庫で冷却しても、口腔刺激製品30にはバリ様の薄氷は形成されず、また口腔刺激製品30同士も殆どくっつかない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼機能や嚥下機能等の改善を目的として口腔内を刺激する為に用いる口腔刺激製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術や様々な障害によって長期間口腔から食物を摂取していない患者においては、口腔の咀嚼機能や嚥下機能の低下がしばしば見られることがある。この様な場合にそのまま放置していると、口腔内に各種細菌が多く繁殖することになり、口臭の原因になるだけでなく、例えば就寝中等にその唾液を飲み込んで誤って肺に入ると、肺炎を起こす可能性さえある。そこで誤飲等を極力なくす為、口腔内を氷等で刺激して咀嚼や嚥下機能の回復を図ることが試みられている。
【0003】
上記口腔内への刺激手法としては、比較的大きな綿棒を予め水に浸して凍らせておき、この凍った綿球部を口腔内に挿入し、マッサージするという方法が一般にとられている。また上記綿棒に代えて、割箸の先にワタを巻きつけて綿棒状にしたものを用いる場合もある。尚、記載すべき先行技術文献はない。各種介護施設や病院等において、本来他の用途である綿棒等を上記の如く利用して実施しているに過ぎないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記従来の手法においては、濡らした複数本の綿棒(或いは上記ワタ付の割箸)を、コップ等に立て入れたりトレイに並べたりして冷凍庫で凍らせるという方法が専らとられるが、綿棒からしみ出した水分がコップ底やトレイ底に平面的に広がり、これが凍って綿棒先端に平らな薄氷を形成することがある。この形成された薄氷はバリの様に鋭利に突出していることから、この薄氷をきちんと取り除かないと、患者の口腔粘膜を傷つける虞がある。また複数の綿棒が互いにしみ出た水分によってくっついてしまい、取り扱い辛いこともある。
【0005】
そこで本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、バリの様に突出した薄氷を形成し難く、取り扱い性の良い口腔刺激製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係る口腔刺激製品は、非透水性袋体または容器に蓄冷用材料を封入した口腔内冷却刺激部材に、取手部材が取り付けられたものであることを特徴とする。
【0007】
上記の通り口腔内冷却刺激部材は、非透水性の容器(或いは袋体)の中に、水やゲル剤等の蓄冷用材料を収容したものであるので、これを冷却することにより、口腔への刺激材として使用できる。しかも上記蓄冷用材料は容器(或いは袋体)内に収容された状態であって外部にしみ出ることがないので、従来のバリの様な薄氷を形成することがなく、また複数の口腔刺激製品を纏めて接触させた状態で冷凍庫に入れておいても、上記の通り蓄冷用材料がしみ出ないから口腔刺激製品同士がくっつくということも殆どない。加えて、従来の如く濡らした綿棒を凍らせる場合とは異なり、水に濡らすという工程が不要となるので、作業者の手間が省ける。
【0008】
上記容器や袋体としては合成樹脂製であることが好ましい。合成樹脂であれば、所望の形状に容易に成形することができ、また唾液等の水分に曝されても殆ど傷まない。更に水洗いや食器用洗剤を用いた洗浄等も可能であるから、口腔刺激製品を繰り返し使用することもできる。
【0009】
そして合成樹脂のうちでも耐水性素材が望ましい。仮に吸湿性の合成樹脂では、凍らせる際に表面に吸湿された水分によって口腔刺激製品同士がくっつく懸念があるからである。また軟質の合成樹脂やゴムであれば、口腔内に優しく接触することになるので、好ましい。
【0010】
上記合成樹脂として具体的にはポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート等が挙げられる。
【0011】
更に上記容器や袋体の合成樹脂素材として耐薬品性に優れたものを用いることが好ましい。本発明の口腔刺激製品の使用態様としては、衛生の観点から使い捨てとすることが望ましいが、仮に複数回繰り返し使用する場合には、水洗いの他、消毒が行われることが考えられ、この様な場合に消毒剤に対して耐薬品性に優れた素材であることが要望されるからである。尚、消毒剤としては消毒用エタノール等が一般的であることから、これを勘案して消毒用エタノール等に抵抗し得る程度の耐薬品性で良いと考えられる。尤も、より優れた耐薬品性を示す素材を用いても勿論良い。
【0012】
加えて前記口腔内冷却刺激部材の形状としては、少なくとも先端が球面状であることが好ましい。この様に球面状であれば、口腔内に優しく接触させることができるからである。
【0013】
前記取手部材としては、中実の棒状物の他、パイプ状であっても良い。取手部材を中空としたものの場合は、この取手部材の中空部が、口腔内冷却刺激部材における蓄冷用材料収納空間と連通したものとしても良い。或いは取手部材の中空部と口腔内冷却刺激部材の蓄冷用材料収納空間とを連通させないものとし、蓄冷用材料が取手部材の中空部に至らない様にしても良い。
【0014】
取手部材の材料としては合成樹脂や紙、木材が挙げられ、これらの材料であれば、冷凍庫で冷やしても、該取手部材を持った際にあまり冷たく感じず、操作者にとって好ましい。
【0015】
蓄冷用材料としては上記の如く水やゲル剤等が挙げられるが、殊に水であれば、口腔内冷却刺激部材を口腔内に入れた際に、仮に誤って噛んで破っても、漏れ出るのは水であるから、比較的安全である。尚水以外の蓄冷用材料を用いる場合においても、上記観点から人体に無害な材料を用いることが推奨される。
【0016】
或いは蓄冷用材料として金属を用いても良い。この金属の形体としては、複数の小さな金属球を上記容器や袋体に封入しても良いし、一塊の金属球として封入しても良い。
【0017】
また上記蓄冷用材料を非透水性袋体または容器に封入した口腔内冷却刺激部材に換えて、球面部を有する金属製の口腔内冷却刺激部材を用いても良い。即ち、本発明に係る口腔刺激製品は、球面部を有する金属製の口腔内冷却刺激部材に、合成樹脂製の取手部材が取り付けられたものであっても良い。
【0018】
この金属製の口腔内冷却刺激部材においても上記と同様に、冷却することにより、口腔への刺激材として使用でき、従来の様な薄氷を形成することがない。また複数の口腔刺激製品を纏めて接触させた状態で冷凍庫に入れておいても、口腔刺激製品同士がくっつくということも殆どない。
【0019】
上記金属の素材としては、ステンレス鋼が挙げられる。ステンレス鋼は耐薬品性,耐食性に優れるので好ましい。
【0020】
合成樹脂製の取手部材は、冷凍庫等で冷却しても、これを手に持ったときにあまり冷たく感じないので、該取手部材を持って操作する操作者にとって好ましい。
【0021】
更に前記金属製の口腔内冷却刺激部材の表面に合成樹脂製被膜が形成されたものであっても良い。この様に合成樹脂製被膜で覆うことで、冷却された金属の感触がまろやかになる。
【発明の効果】
【0022】
以上の様に本発明に係る口腔刺激製品によれば、従来の綿棒を湿らせたときのように、バリの様な突き出た薄氷を形成するということが殆どなく、また口腔刺激製品を複数纏めた状態で冷凍しても、口腔刺激製品同士が凍ってくっつく懸念が殆どない。従って取り扱い易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る口腔刺激製品10を示す図であり、(a)は正面図で、(b)は縦方向の断面図である。
【0024】
口腔刺激製品10は、中実棒状の紙製取手部材12の先端に、口腔内冷却刺激部材11が取り付けられたものであって、この刺激部材11はポリエチレンテレフタレート製容器14の中に水(蓄冷用材料)13が密封状態で収納されたものである。
【0025】
刺激部材11の形は大凡楕円球状をしており、刺激部材11の長手方向の長さL1は20〜60mm程度、横幅Wは10〜15mm程度である。また取手部材12の長さL2は100〜140mm程度である。
【0026】
口腔刺激製品10を使用するにあたっては、予め冷凍庫等で冷凍しておく。このとき、刺激部材11の容器14は非透水性であるので、外側には内容物の水13がしみ出ることがなく、従って刺激部材11表面にバリの様な突出した薄氷を形成することがない。また複数の口腔刺激製品10を纏めた状態で冷凍庫に保管しても、口腔刺激製品10同士がくっつくということが殆どない。尚、この様に薄氷の形成や製品10同士のくっつきをなくす為にも、口腔刺激製品10の外側面を濡らさず、水滴が付着していればこれを拭き取って冷凍することが推奨される。
【0027】
実際の使用にあたっては、取手部材12を持って、刺激部材11を患者の口腔内に挿入し、マッサージする様にして刺激を与える。このとき、刺激部材11の形状に丸みがあるから、口腔粘膜に対して優しく接触させることができる。また刺激部材11を仮に噛み破ったとしても、中の蓄冷用材料は水(氷)13であるから、殆ど支障がない。また取手部材12は紙製であるから、これを患者が噛む様なことがあっても、ひしゃげる様になるだけであり、折れるということがなく、比較的安全である。また紙製の取手部材12の部分は冷凍庫で冷やしておいても、手に持ったときに冷たい感じがあまりしないので、操作者に不快感を殆ど与えない。
【0028】
加えて、湿らせた綿棒を凍らせたものの場合では、口腔内への挿入によって水分が融けて水滴を生じ、この水滴が誤嚥される懸念もあるが、口腔刺激製品10によれば、容器14内の水13が外にしみ出るということがないので、上記の様な水滴誤嚥の虞もない。尤も刺激部材11と外気温との温度差により容器14表面に水滴が生じる懸念があるので、これをぬぐって使用することが推奨される。
【0029】
そして上記の如く使用した後、口腔刺激製品10を廃棄する。或いはこの様に使い捨てとはせずに、水洗いや台所洗剤による洗浄、或いは消毒用エタノールでの消毒等を行い、再使用する様にしても良い。尤も取手部材12が紙製の場合は、水洗い等において強度が低下する懸念があるので、頻回に再使用することは推奨されない。尚、取手部材12を合成樹脂製とすることにより、耐水性に優れたものとすることができ、水洗い等を行っても強度が低下せずに何度も繰り返し使用することができるので、この観点からは合成樹脂製の取手部材とすることが推奨される。なお刺激部材11についてはポリエチレンテレフタレート製で耐水性に優れるから、水洗い等を行うことが可能である。
【0030】
<実施形態2>
図2は本発明の実施形態2に係る口腔刺激製品20を示す縦方向の断面図である。
【0031】
この口腔刺激製品20は中空棒状のポリエチレン製取手部材22と球状のポリエチレン製口腔内冷却刺激部材21が一体成形により形成されたものである。そして取手部材22の中空部23と刺激部材21の蓄冷用材料収納空間25が連通し、水13が密封状態で収納されている。尚内容物の水13は充密したもの(満タン)ではなく、中空部23内に或る程度の空気26部分が存在する。
【0032】
本実施形態2においても上記と同様に、刺激部材21,取手部材22からは内容物の水13がしみ出ることがないので、バリの様な薄氷を形成したり、口腔刺激製品20同士が凍ってくっついたりということが殆どない。また口腔への使用時においても、水13が外にしみ出るということがないので、凍らせた綿棒のように水滴を生じず、よって水滴誤嚥の虞がない。
【0033】
また取手部材22を上にして凍らせることにより、取手部材22の中空部23は大部分が空気26となり、水(氷)13が殆ど存在しないこととなるので、取手部材22を持ってもあまり冷たく感じることはない。
【0034】
<実施形態3>
図3は本発明の実施形態3に係る口腔刺激製品30を示す縦方向の断面図である。
【0035】
口腔刺激製品30は、中実棒状のポリアミド製取手部材32の先端に、ステンレス鋼製の口腔内冷却刺激部材33が取り付けられたものである。
【0036】
刺激部材33は球状で、その大きさは直径(L3)10〜30mm程度である。取手部材32の長さL2は100〜140mm程度である。
【0037】
上記と同様に、使用にあたっては、予め口腔刺激製品30を冷凍庫等で冷やしておく。このとき口腔刺激製品30にはバリ様の薄氷は形成されず、また口腔刺激製品30同士も殆どくっつかない。
【0038】
そして取手部材32を持って、刺激部材33を患者の口腔内に挿入し、マッサージする様にして刺激を与える。このとき刺激部材33が球状で丸みがあるから、口腔粘膜に対して優しく接触させることができる。また刺激部材33は金属製であるから、噛んでも壊れない。加えて従来の凍らせた綿棒のように水滴を生じず、よって水滴誤嚥の虞がない。
【0039】
ポリアミド製の取手部分32は、手に持ったときにあまり冷たい感じがしないので、操作者に殆ど不快感を与えない。
【0040】
口腔刺激製品30はステンレス鋼製の刺激部材33とポリアミド製の取手部材32により構成され、耐水性,耐薬品性に優れているから、洗浄,消毒が可能であり、繰り返し使用することができる。
【0041】
以上の様に例を挙げて本発明をより具体的に説明したが、本発明はもとより上記例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
例えば口腔内冷却刺激部材の形状としては、上記実施形態での口腔内冷却刺激部材11,21,33の形状の如く楕円球状や球状のものに限らず、いずれの形状であっても良い。尤も口腔粘膜を傷つけない様に丸みのある形状とすることが望ましく、例えば金平糖状や立方体状とした場合であっても、角部は丸く構成するのがよい。
【0043】
また実施形態3において刺激部材33の部分のみを金属(ステンレス鋼)製にしたものを示したが、図4(本発明の実施形態4に係る口腔刺激製品40を示す縦方向の断面図)に示す如く、楕円状(球状等であっても良い)の口腔内冷却刺激部材43と取手部材下端部分41を連続して金属で構成し、これに合成樹脂製の取手部材42を接続したもの等であっても良い。
【0044】
加えて図5(本発明の実施形態5に係る口腔刺激製品50を示す縦方向の断面図)に示す様に、金属製の口腔内冷却刺激部材33の表面に合成樹脂製被膜51を形成したものであっても良い。
【0045】
また上記実施形態において取手部材の材料として紙、ポリエチレン、ポリアミドを用いたが、これに限るものではなく、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等でも良い。
【0046】
加えて上記実施形態1,2では、口腔内冷却刺激部材の容器の素材としてポリエチレンテレフタレートやポリエチレンを挙げたが、これに限らず、ポリプロピレン等の他の合成樹脂素材であっても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1に係る口腔刺激製品を示す図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る口腔刺激製品を示す縦方向の断面図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る口腔刺激製品を示す縦方向の断面図である。
【図4】本発明の実施形態4に係る口腔刺激製品を示す縦方向の断面図である。
【図5】本発明の実施形態5に係る口腔刺激製品を示す縦方向の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40,50 口腔刺激製品
11,21,33,43 口腔内冷却刺激部材
12,22,32,42 取手部材
13 水(氷)
14 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非透水性袋体または容器に蓄冷用材料を封入した口腔内冷却刺激部材に、取手部材が取り付けられたものであることを特徴とする口腔刺激製品。
【請求項2】
前記非透水性袋体または容器が合成樹脂製である請求項1に記載の口腔刺激製品。
【請求項3】
前記口腔内冷却刺激部材の少なくとも先端が球面状である請求項1または2に記載の口腔刺激製品。
【請求項4】
前記蓄冷用材料が水である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔刺激製品。
【請求項5】
前記蓄冷用材料が金属である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔刺激製品。
【請求項6】
球面部を有する金属製の口腔内冷却刺激部材に、合成樹脂製の取手部材が取り付けられたものであることを特徴とする口腔刺激製品。
【請求項7】
前記金属製の口腔内冷却刺激部材の表面に合成樹脂製被膜が形成されたものである請求項6に記載の口腔刺激製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−172007(P2009−172007A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10810(P2008−10810)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(593148804)川本産業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】