説明

口腔洗浄器

【課題】洗浄液の供給と清掃体とを組み合わせて、水流で落とせない歯垢を取り除き、その奥に洗浄液、とくに薬液等を効果的に供給できるとともに、衛生上やメンテナンス上の問題が解決される口腔洗浄器を提供せんとする。
【解決手段】洗浄液供給手段2と、該洗浄液供給手段2に取り付けられる洗浄液吐出管3と、該洗浄液吐出管3の先端に、該吐出管の軸方向に対して交差する方向に突設された清掃体4と、前記洗浄液吐出管3の吐出流路30に連通して前記清掃体4の根元部近傍の位置より外部に開口し、該清掃体4の突出途中部ないし先端部に向けて洗浄液を噴射する洗浄液吐出口50を有する洗浄液噴射部5とより構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔洗浄器に関し、更に詳しくは、歯間部、例えば歯間乳頭部の歯と歯の間のいわゆる鼓形空隙、歯と歯肉の境目の歯肉辺縁部、歯と歯茎との間の歯周ポケットなどに残留している歯垢や食物の残滓などを除去したり、抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液などをそれらの部位へ供給することにより効果的に殺菌、組織の炎症の抑制などを行うことができる口腔洗浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯間部、歯肉辺縁部、歯周ポケットなどの洗浄や歯茎部の歯肉のマッサージなどを行うため、各種の口腔洗浄器(オーラルイリゲータ)が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。これらの口腔洗浄器は、弾力性のあるコンテナ容器に洗浄液を収納し、該コンテナ容器を押圧することで、コンテナ容器に連通連結したノズル(洗浄液吐出管)先端の吐出口から歯間部や歯周ポケット内へ高速のジェット水流を間歇的に吐出して歯間部や歯周ポケットの洗浄や歯茎部の洗浄、殺菌、歯茎部の歯肉のマッサージなどを行うように構成されている。
【0003】
また、洗浄液吐出管をシリンジの先端開口部に連結する構造のものや(例えば、特許文献4参照。)、ポンプ機能を備えたポンプ容器に洗浄液吐出管を装着したもの(例えば、特許文献5、6等参照。)、更には、洗浄液に空気を混入させて洗浄液とともに吐出させるもの(例えば特許文献7参照。)も提案されている。更に、洗浄液吐出管を電動脈動ポンプや手動ポンプに装着したものや、パイプやホースを介して水道の蛇口に接続する構造のものなど、各種構造の口腔洗浄器が提案されている。
【0004】
ところで、これら口腔洗浄器の殆どは、洗浄液吐出管の先端部に水流ノズルを設けて、歯間部や歯周ポケット等に注入する水流の勢いにより歯垢の除去、洗浄、歯肉マッサージなどを行うものであるが、水流で落とせない歯垢があった場合には、その奥に洗浄液、とくに薬液等を供給できない問題があった。
【0005】
一方、水流ノズルの変わりに、洗浄液の供給と清掃体、とくにブラシとを組み合わせて構成したものも提案されている(例えば、特許文献5の図5)。これは、歯ブラシの頭部に薬剤等の導管を形成し、この導管から歯ブラシ毛の植毛部(毛束と毛束の間)に開口した吐出口や中空に形成されたブラシ毛の先端から外方に噴出させる構造である。これによれば、歯ブラシ毛で歯間部等の歯垢を除いた上で該ブラシ毛を通じて薬液を内部に供給することが可能となり、効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0006】
しかし、このような植毛部から洗浄液を噴出させる組み合わせ構造は、植毛部の背面側に導管を配置する構造であることから、頭部の肉厚が厚くなり、ブラシヘッド全体も背高となってしまうため口の中で使用しにくいという問題があり、中空のブラシ毛もコスト高である。また、植毛部の吐出口やブラシ先端から噴出させるものでは、ブラシ毛に歯磨きを付けて洗浄した場合など、吐出口やブラシ毛の洗浄液開口部を塞ぐとともに、とくに毛束間に開口した吐出口に付着した汚れを清掃することが容易ではなく、衛生上およびメンテナンス上の問題があった。
【0007】
【特許文献1】米国特許第1961489号明細書
【特許文献2】米国特許第3199510号明細書
【特許文献3】米国特許第3391696号明細書
【特許文献4】米国特許第4787845号明細書
【特許文献5】特開平3−261469号公報
【特許文献6】特開平9−285477号公報
【特許文献7】実用新案登録第2594664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、洗浄液の供給と清掃体とを組み合わせて、水流で落とせない歯垢等を取り除き、その奥に洗浄液、とくに薬液等を供給できるとともに、衛生上やメンテナンス上の問題が解決される口腔洗浄器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題解決のために、洗浄液供給手段と、該洗浄液供給手段に取り付けられる洗浄液吐出管と、該洗浄液吐出管の先端に、該吐出管の軸方向に対して交差する方向に突設された清掃体と、前記洗浄液吐出管の吐出流路に連通して前記清掃体の根元部近傍の位置より外部に開口し、該清掃体の突出途中部ないし先端部に向けて洗浄液を噴射する洗浄液吐出口を有する洗浄液噴射部とより構成したことを特徴とする口腔洗浄器を構成した。
【0010】
ここで、前記洗浄液吐出管の吐出流路を前記清掃体が突設されている先端部の手前までとし、前記洗浄液噴射部を当該手前位置の外周面に設けてなるものが好ましい。
【0011】
また、前記洗浄液噴射部が、前記洗浄液吐出管の外周面に凸部を形成し、該凸部における前記清掃体の突出途中部ないし先端部に向かう方向に対し略直角な傾斜面に前記洗浄液吐出口を開口させたものが好ましい。
【0012】
前記清掃体としては、具体的には毛束を植毛したブラシ体が好適に用いられる。
【0013】
また、前記洗浄液供給手段が、内部に収容した洗浄液を前記洗浄液吐出管に供給するためのポンプ機構を備えた携帯可能なポンプ容器からなる口腔洗浄器を構成することが好ましい。
【0014】
とくに、前記洗浄液吐出管の基端部外周面に係合突起を設け、前記ポンプ容器の先端部に前記洗浄液吐出管の基端部が挿入される取付孔を形成するとともに、該取付孔の内周面に、前記係合突起を軸方向に受け入れる縦溝および受け入れた係合突起を周方向に案内するための周溝を設け、前記洗浄液吐出管の基端部を取付孔に挿入して回転させることで前記係合突起が前記周溝内に係合し、該洗浄液吐出管がポンプ容器に着脱自在に取り付けられるものが好ましい実施例である。
【0015】
ここで、前記周溝を、前記縦溝から一方向に向けて所定角度範囲に、または互いに反対方向に向けてそれぞれ所定角度範囲に形成したものが好ましく、さらに、前記周溝内に、前記係合突起を所定角度回転させた位置に係止するための係止用凸部を形成したものが好ましい。
【0016】
そして、前記洗浄液吐出管の基端側に、前記係合突起が前記周溝内に係合する状態で前記取付孔の開口部周縁部に当接する鍔部を設けるとともに、該鍔部の外周面における少なくとも前記清掃体の突出方向と反対側に平坦面を形成したものが好ましい。
【0017】
また、前記ポンプ機構として、ポンプ容器の外周面に押圧ボタンが突出する手動ポンプ機構を設けるとともに、該ポンプ機構から洗浄液収容室の底面に延びる洗浄液吸上管の先端吸上口を、当該収容室底面における前記押圧ボタンの突出方向と同じ側の縁部近傍に位置させたものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本願発明に係る口腔洗浄器によれば、水流だけでは除去できない歯垢等を清掃体で除いた後に、その奥に当該清掃体を伝って洗浄液を効果的に供給でき、鼓形空隙や歯肉辺縁部、歯周ポケットなどに抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液などを供給して殺菌、組織の炎症の抑制などを効果的に行うことができる。また、清掃体に対して内側や根元部からではなく、離れた位置から洗浄液を噴射するので、洗浄液が直接歯に当たって激しく飛び散ったりすることがなく、また口腔内の汚れを清掃する清掃体と独立に形成されているので、洗浄液の噴射部が汚れにくく衛生的であり、汚れてもメンテナンスが容易である。
【0019】
また、洗浄液吐出管の吐出流路を清掃体が突設されている先端部の手前までとし、洗浄液噴射部を当該手前位置の外周面に設けたので、清掃体が設けられる頭部を薄く構成することができ、大臼歯の頬側面などの狭い口の中で操作しやい口腔洗浄器が提供できる。
【0020】
また、洗浄液吐出管の外周面に凸部を形成し、該凸部における清掃体の突出途中部ないし先端部に向かう方向に対し略直角な傾斜面に洗浄液吐出口を開口させて洗浄液噴射部を構成したので、成形抜きの観点から吐出口を一体成形することも容易となり、2次加工する場合にも管外周面に直接斜めの開口孔を形成する場合に比べて、傾斜面にドリルを垂直にあてて容易に加工でき、かつ切削部周辺にバリができにくい。
【0021】
また、清掃体が毛束を植毛したブラシ体であるので、洗浄液を供給したい部位の汚れの除去を確実に行うことができ、該ブラシを伝って洗浄液を内部奥まで効率よく供給することができる。
【0022】
また、洗浄液供給手段が、内部に収容した洗浄液を前記洗浄液吐出管に供給するためのポンプ機構を備えた携帯可能なポンプ容器からなるので、使い勝手が便利である。
【0023】
また、洗浄液吐出管の基端部外周面に係合突起を設け、ポンプ容器の先端部に前記洗浄液吐出管の基端部が挿入される取付孔を形成するとともに、該取付孔の内周面に、係合突起を軸方向に受け入れる縦溝および受け入れた係合突起を周方向に案内するための周溝を設け、洗浄液吐出管の基端部を取付孔に挿入して回転させることで係合突起が周溝内に係合し、該洗浄液吐出管がポンプ容器に着脱自在に取り付けられるので、吐出口の詰まりやポンプの作動により発生する洗浄液の圧力が作用しても抜けにくく、着脱容易な構造となる。
【0024】
また、縦溝から一方向に向けて所定角度範囲に、または互いに反対方向に向けてそれぞれ所定角度範囲に周溝を形成したので、使用時に吐出管を抜き差しすることなく係止角度を変更して口腔内を効率よく清掃/マッサージすることが可能となる。
【0025】
また、周溝内に、係合突起を所定角度回転させた位置に係止するための係止用凸部を形成したので、清掃体を所定の方向に安定保持させることができる。
【0026】
また、洗浄液吐出管の基端側に、係合突起が周溝内に係合する状態で前記取付孔の開口部周縁部に当接する鍔部を設けるとともに、該鍔部の外周面における少なくとも前記清掃体の突出方向と反対側に平坦面を形成したので、洗浄液吐出管とポンプ容器との着脱時に、該平坦面を指で抓んで回転させやすく、かつ洗浄液吐出管を外して平坦面を下にして洗面台等に置いたときに清掃体が上を向いた姿勢で安定し、清掃体に洗面台等の汚れが付着することを防止できる。
【0027】
前記ポンプ機構として、ポンプ容器の外周面に押圧ボタンが突出する手動ポンプ機構を設けるとともに、該ポンプ機構から洗浄液収容室の底面に延びる洗浄液吸上管の先端吸上口を、当該収容室底面における前記押圧ボタンの突出方向と同じ側の縁部近傍に位置させたので、手動により適宜、断続的に薬液等を吐出でき、洗浄液の無駄な吐出を防止できるとともに、使用時に親指で押される押圧ボタンが下側となるが、当該口腔洗浄器をほぼ水平状態に傾けて使用しても先端吸上口から残り少ない洗浄液も確実に吸上げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る口腔洗浄器の全体構成を示す図であり、図1〜10は代表的実施形態を示し、図中符号1は口腔洗浄器、2は洗浄液供給手段、3は洗浄液吐出管、4は清掃体、5は洗浄液噴射部をそれぞれ示している。
【0030】
本発明の口腔洗浄器1は、洗浄液供給手段2と、該洗浄液供給手段2に取り付けられる洗浄液吐出管3と、該洗浄液吐出管3の先端に、該吐出管の軸方向に対して交差する方向に突設された清掃体4と、前記洗浄液吐出管3の吐出流路30に連通して前記清掃体4の根元部近傍の位置より外部に開口し、該清掃体4の突出途中部ないし先端部に向けて洗浄液を噴射する洗浄液吐出口50を有する洗浄液噴射部5とより構成したことを特徴とする。
【0031】
洗浄液供給手段2は、本実施形態では、内部(収容室20)に収容した洗浄液を洗浄液吐出管3に供給するための手動式のポンプ機構21を備えた携帯可能なポンプ容器6より構成されており、ポンプ容器6に設けられた押圧ボタン22を押圧するたびに、洗浄液吐出管3内の吐出流路30を通じて前記吐出口50から洗浄液が噴出されるように構成されている。
【0032】
なお、本発明の洗浄液供給手段2はこのような手動式ポンプ機構を備えた携帯型のポンプ容器になんら限定されず、従来公知の洗浄液容器を用いることができる。例えば特開平3−261469号公報(特許文献5)、特開平9−2854477号公報(特許文献6)などに開示されているポンプ機能を有する容器や、米国特許第1961489号明細書、米国特許第3199510号明細書、米国特許第3391696号明細書(特許文献1〜3)に開示された、弾力性を有する容器からなるものであってもよい。また、電気的、機械的な自動駆動ポンプ機構を有する装置を用いてもよく、特開平7−59801号公報に開示されたような別体の貯水槽をもつものでもよく、特開平8−117254号公報に開示されたような本体に付属したタンクをもつものでもよく、更には特開平10−314189号公報に開示されたように電動歯ブラシの駆動部分を洗浄液の供給駆動としたものでもよい。また、電気駆動による洗浄液供給機能を有する装置を用いてもよい。更に、洗浄液供給手段2としては、米国特許第4787845号明細書(特許文献4)に開示されたようなシリンジを用いてもよいし、登録実用新案第2594664号公報(特許文献7)に開示された、空気混合機能を有するものを使用することもできる。また、洗浄液吐出管3を、ホースやパイプを介して水道の蛇口などに接続するようにしてもよい。
【0033】
清掃体4は、洗浄液吐出管3の先端部3aに、軸方向に対して略90度の方向に毛束を植毛したブラシ体で構成されている。具体的には、先端円錐状のワンタフトブラシが用いられている。なお、毛束を複数設けた歯ブラシ型のものでもよいし、毛束を設けること以外に、エラストマーの棒状体を突設したものや、ワイヤーとフィラメントよりなる歯間ブラシを突出したもの、舌ブラシ、スポンジ状清掃体、フェルト、綿、ガーゼ、不織布などの布素材でできた清掃体、その他、種々の清掃体を構成することが可能である。
【0034】
洗浄液吐出管3内部の吐出流路30は、図3にも示すように、清掃体4が突設されている先端部3aの手前までとし、洗浄液噴射部5が当該手前位置の外周面に設けられている。なお、洗浄液吐出管3の素材は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂及びそれらのブレンド樹脂などの合成樹脂、ガラス、ステンレスなどの金属を用いることができる。
【0035】
洗浄液吐出管3に設けられた洗浄液噴射部5は、図3に示すように、洗浄液吐出管3の外周面に凸部51が形成され、該凸部51には、清掃体4の突出途中部ないし先端部に向かう方向(噴射方向)に対して略直角な傾斜面51aが形成され、該傾斜面51aに内径0.5mm〜1.1mm程の洗浄液吐出口50が開口されている。そして、当該洗浄液吐出口50から噴出する洗浄液は清掃体4の中腹乃至先端付近へ当たるように構成されている。
【0036】
このように、本実施形態では洗浄液吐出管3の吐出流路30を先端部のブラシ植毛部の極際まで設け、その位置から斜め方向に噴射孔を開口させているため、ブラシヘッドを厚肉に構成する必要がなくなり、口を閉じてブラッシングすることが可能となり、途中で適宜液の噴射を行いながら洗浄とブラッシングができ、かつ製造方法においてもシンプルな構造の水流ブラシが提供できることとなる。
【0037】
なお、上記洗浄液噴射部5は、製造上の観点から、洗浄液吐出管3の外周面上に凸部51を設け、該凸部に吐出流路30に連通する吐出口50を開口して洗浄液を噴射させているが、このような凸部51を設けずに洗浄液吐出管3の外周面上に直接吐出口50を穿設するようにしてもよい。また、傾斜面51aを設けずに吐出口50を開口させることも勿論可能である。
【0038】
洗浄液吐出管3とポンプ容器6との取付構造にはシール性および着脱容易性が求められるが、使用中に洗浄器の水圧によってアタッチメントが外れる虞があるため、たとえば、実公平7−7933号公報に記載されているように取り付けの嵌合力を強めに設定したり、特開2000−5198号公報に記載されているようなロック機構を設けることが考えられる。しかしながら、嵌合力を強くすると操作性が低下し、ロック機構などは構造が煩雑で部品点数が増え、コスト上昇の原因であった。
【0039】
そこで本実施形態では、図1および図4に示すように、洗浄液吐出管3の基端部3bの外周面上に係合突起31が設けられ、対するポンプ容器6の先端部6aには、基端部3bが挿入される取付孔7が形成されている。また、基端部3bの係合突起31よりも端部側には、取付孔7の内周面に密着するシール性を確保するためのOリング33が設けられている。このOリングは、ポンプ側のつなぎ口に設けた構造でもよい。
【0040】
取付孔7の内周面には、図4に示すように、前記洗浄液吐出管3の係合突起31を軸方向に受け入れる縦溝71が形成されており、さらに、該縦溝71に沿って軸方向に受け入れた係合突起31を略直角の周方向に案内するための周溝72が設けられている。これにより、洗浄液吐出管3の基端部3bを取付孔7に挿入して回転させることで係合突起31が前記周溝72内に係合し、洗浄液吐出管3がポンプ容器6に着脱自在に取り付けられる。
【0041】
本例では、図5(a)〜(c)にも示すように、係合突起31が一つのみ設けられ、周溝72が縦溝71から一方向に向けて略90度の範囲に形成されている。また、周溝72内には、係合突起31を所定角度回転させた位置に係止するための係止用凸部73が形成されている。ここでは、係止用凸部73を一つのみ形成しているが、複数設けることにより複数の位置に係止可能とし、ユーザーが使用時に係止角度を変更して口腔内を効率よく清掃/マッサージすることが可能となる構造も好ましい。
【0042】
また、図6に示すように、前記係合突起31を二つ以上設け、かつ縦溝71を各係合突起31に対応するように二つ以上設け、前記周溝72をそれぞれ各縦溝71から同じ方向に向けて所定角度範囲に形成してもよい。これにより、より強固な取り付け強度が得られるとともに、着脱作業も容易となり、また、180度反対側に取り付けることにより、清掃体の突出方向を180度反対側に設定し、ユーザーが使用時に清掃体突出方向を変更して効率よく作業することができる。また、図7に示すように、周溝72を縦溝71から互いに反対方向に向けてそれぞれ所定角度範囲に形成してもよい。これにより、ユーザーは使用時に係止角度を一方から他方に回転変更させて口腔内を効率よく清掃/マッサージすることが可能となる。
【0043】
洗浄液吐出管3の基端部3b手前の外周面には、該基端部3bが取付孔7に挿着された状態でポンプ容器上端に当接する鍔部32が設けられ、該鍔部32の外周面における少なくとも清掃体4の突出方向と反対側に平坦面32aが形成されている。本例では、清掃体4の突出方向と反対側の双方に平坦面32b,32aが形成されるとともに他は部分円周面とされており、洗浄液吐出管3とポンプ容器6との着脱時に、該平坦面32a,32bを指で抓んで回転させやすく、かつ洗浄液吐出管3を外して平坦面32aを下にして置いたときに清掃体が上を向いた姿勢で安定するように構成されている。なお、平坦面は成型加工において厚肉による「ひけ」を防止する目的から適宜凹溝などを設けた平坦面であってもよい。
【0044】
ポンプ容器6は、図1および図2に示すように、洗浄液収容室20を備えた容器部8と、ポンプ機構21を備えたポンプ部9とより構成されている。ポンプ部9のポンプ機構21は、ポンプ容器外周面6bに押圧ボタン22が突出した手動ポンプ機構であり、より詳しくは、該押圧ボタン22に連動するピストン91がシリンダー92内にコイルスプリングで外方に付勢された状態に設けられ、シリンダー92には、コイルスプリングの弾性力に抗して流路開放するボール弁93a,93bが、それぞれ洗浄液収容室20に延びる吸上管23の吸上路24に連通する流入路94、および洗浄液吐出管3の吐出流路30に連続する排出路95に設けられている。なお、押圧ボタン22の押圧面には指を安定して載置できる凹陥部が形成されている。
【0045】
そして、使用の際、押圧ボタン22を押下することで、シリンダー92内に圧力が生じ、ボール弁93bを押し開いてシリンダー92内の洗浄液が排出路95側に排出され、押圧ボタン22を離して戻すことで、シリンダー92内に生じた負圧によりボール弁93aが開き、吸上管23を通じて収容室20の洗浄液が流入路94を介してシリンダー92内に吸上げられ、次の排出に備えられる。この押圧ボタン22を連続して操作することにより、上記工程が繰り返され、清掃体4により口腔内を清掃/マッサージしながら、適宜、洗浄液吐出口50から清掃体4に向けて洗浄液を噴射させることができるのである。なお、本発明はこのようなピストン構造を有するポンプ容器を構成するものに何ら限定されず、たとえば蛇腹状の弾力性を有するゴム状構造体などを使用してピストン構造を省略したダイヤフラム式ポンプなど、種々のポンプ機構を採用できる。
【0046】
容器部8の収容室20と上記ポンプ機構21との隔壁は、後述する挿入端部9bとともに別部材で分割構成されており、ポンプ機構21を組み込んだ後にポンプ部9の下端側に凹凸嵌合される。図中符号99aが凸部、99bが隔壁側の凹部であり、凸部99aの先端は稜線部を面落としされ、これら凹凸部が周方向に複数箇所設けられている。収容室20内の洗浄液の減少による負圧を逃がす外気取込み弁96および通孔96aが設けられており、負圧が生じると傘状の外気取込み弁96が開き、通孔96aを通じて押圧ボタン22の隙間から外気が取り込まれて負圧をなくし、吸上管23からの洗浄液の吸上げをスムーズに行えるように構成されている。この外気取込み弁96は通常時には通孔96aを閉鎖し、洗浄液の漏れを防止している。なお、この外気取込み弁は、コイルスプリングを付したボール弁構造としても良い。
【0047】
ポンプ機構21から洗浄液収容室20の底面20cに延びる洗浄液吸上管23は、先端吸上口23aが底面20cにおける押圧ボタン22が突出している側の縁部近傍に位置させるように屈曲構成されている。また、ポンプ部9と容器部8は、洗浄液を補給する際に互いに取り外しできるように着脱自在に嵌合されており、図8に示すように、ポンプ部9の下端側に容器部8上端の開口部80に挿着される挿入端部9bが設けられ、該挿入端部に形成された凹溝97内に前記開口部80内面に突設された係合片81を係合させることにより両者が取付けられる。なお、凹溝97の開放端には傾斜壁97aが形成されており、ポンプ部9から容器部8を外す際には、係合片81が傾斜壁97aに当接して該傾斜壁97aに沿って斜めに押出されることにより互いに離れる方向に力が作用し、逆に取り付ける際には、開口が広いので位置合わせがし易く、かつ係合片81が傾斜壁97aに沿って互いに近づく方向に案内され、着脱操作をより確実かつ容易に行うことが可能である。符号82は容器部8内面に突設された洗浄液補充上限レベルを示すマーク部であり、符号98は収容室20からの液漏れ防止のOリングを示している。
【0048】
洗浄液は、特に限定はなく、血流アップや歯周病の予防、治療などに有効な抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液であってもよいし、単なる水であってもよい。抗菌剤としては、例えば、塩酸塩やグルコン酸塩のクロルヘキシジン塩類等のビスビグアニド系抗菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム等の4級アンモニウム塩抗菌剤、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−アルギニンエチル塩等のアミノ酸系抗菌剤、トリクロサン等のハロゲン化ジフェニルエーテル、チモール、イソプロピルメチルフェノール(1−ヒドロキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、パラオキシ安息香酸塩及びそのエステル類、カルバクロール、レゾルシノール等のフェノール化合物、メトロニタゾール、ヘキセチジン等の窒素原子を含む複素環化合物抗菌剤、1,8−シネオール、油溶性甘草エキス等の天然抽出物抗菌剤、ヨード、ヨードグリセリン等のハロゲン化合物等が挙げられる。また、抗炎症剤としては、例えば、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトロラック、インドメタシン等の非ステロイド系消炎剤、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン等のステロイド系消炎剤、アズレン、アズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸及びその塩類、グリチルレチン酸及びその塩類、トウキ軟エキス、塩化ナトリウム、酢酸やニコチン酸のトコフェロールエステル類、塩酸ピリドキシン、塩化リゾチーム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン類、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン等が挙げられる。
【0049】
口腔洗浄器1の使用は、図9に示すように、先端の清掃体4で口腔内の汚れを清掃しつつ、適宜、押圧ボタン22を操作して吐出口から清掃体4に向けて洗浄液を供給する。清掃体4は、洗浄液吐出管3に対して交差する方向に突設されているので、口腔内奥の歯間や歯周ポケット等を効率よく清掃/マッサージでき、洗浄液を供給することが可能である。たとえば、口腔内の歯周ポケットの入口部に沿って清掃体4を動かし、該歯周ポケットや鼓形空隙の歯垢等を除去してその奥に洗浄液を供給することができる。
【0050】
すなわち、図10(a),(b)に示すように、隣接する歯Tと歯Tとの歯間と歯茎Gとの間の鼓形空隙S1を清掃体4で清掃しつつ、その状態で清掃体4に洗浄液を吐出することにより、該清掃体4を通じて洗浄液が鼓形空隙S1の隙間内へ供給され、抗菌剤や抗炎症剤などを含む薬液であれば、殺菌、組織の炎症の抑制などを行うことができる。
【0051】
また、図10(c)に示すように、清掃体4で歯周ポケットS2を清掃しつつ、その状態で清掃体4に洗浄液を吐出することにより、該清掃体4を通じて洗浄液が歯周ポケットS2内へ供給され、歯周ポケットS2内を洗浄、殺菌することができる。このように、本発明の口腔洗浄器1は、歯間と歯茎との間の鼓形空隙や、歯肉辺縁部、歯周ポケットなどに対して歯垢等を落とした上で洗浄液を供給し、効果的に洗浄、殺菌等を行うことができ、また抗菌剤や抗炎症剤などを含有させた薬液などを供給することにより、薬効成分を効果的に作用させ、虫歯や歯周病などの予防に大いに寄与することができる。また、清掃体4が歯肉や歯間乳頭部にあたることにより適宜刺激を受けマッサージ効果を生み出すことができる。
【0052】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の代表的実施形態に係る口腔洗浄器を示す縦断面図。
【図2】同じく清掃体の突出側からみた正面図。
【図3】清掃体と洗浄液噴射部の構造を示す要部の断面図。
【図4】洗浄液吐出管の取付構造を示す要部の斜視図。
【図5】(a)は同じく取付構造を示す要部の断面図、(b)は基端側からみた洗浄液吐出管の底面図、(c),(d)は同じく取付構造を示す断面図。
【図6】(a)〜(d)は、同じく取付構造の変形例を示す説明図。
【図7】(a)〜(c)は、同じく取付構造の他の変形例を示す説明図。
【図8】ポンプ部と容器部の嵌合構造を示す要部の説明図。
【図9】同じく口腔洗浄器の使用状態を示す斜視図。
【図10】(a)〜(c)は、同じく使用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0054】
1 口腔洗浄器 2 洗浄液供給手段
3 洗浄液吐出管 3a 先端部
3b 基端部 4 清掃体
5 洗浄液噴射部 6 ポンプ容器
6a 先端部 6b 外周面
7 取付孔 8 容器部
9 ポンプ部 9b 挿入端部
20 収容室 20c 底面
21 ポンプ機構 22 押圧ボタン
23 吸上管 23a 先端吸上口
24 吸上路 30 吐出流路
31 係合突起 32 鍔部
32a,32b 平坦面 33 リング
50 吐出口 51 凸部
51a 傾斜面 71 縦溝
72 周溝 73 係止用凸部
80 開口部 81 係合片
82 マーク部 91 ピストン
92 シリンダー 93a,93b ボール弁
94 流入路 95 排出路
96 外気取込み弁 96a 通孔
97 凹溝 97a 傾斜壁
S1 鼓形空隙 S2 歯周ポケット
T 歯 G 歯茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液供給手段と、該洗浄液供給手段に取り付けられる洗浄液吐出管と、該洗浄液吐出管の先端に、該吐出管の軸方向に対して交差する方向に突設された清掃体と、前記洗浄液吐出管の吐出流路に連通して前記清掃体の根元部近傍の位置より外部に開口し、該清掃体の突出途中部ないし先端部に向けて洗浄液を噴射する洗浄液吐出口を有する洗浄液噴射部とより構成したことを特徴とする口腔洗浄器。
【請求項2】
前記洗浄液吐出管の吐出流路を前記清掃体が突設されている先端部の手前までとし、前記洗浄液噴射部を当該手前位置の外周面に設けてなる請求項1記載の口腔洗浄器。
【請求項3】
前記洗浄液噴射部が、前記洗浄液吐出管の外周面に凸部を形成し、該凸部における前記清掃体の突出途中部ないし先端部に向かう方向に対し略直角な傾斜面に前記洗浄液吐出口を開口させてなる請求項1又は2記載の口腔洗浄器。
【請求項4】
前記清掃体が、毛束を植毛したブラシ体である請求項1〜3の何れか1項に記載の口腔洗浄器。
【請求項5】
前記洗浄液供給手段が、内部に収容した洗浄液を前記洗浄液吐出管に供給するためのポンプ機構を備えた携帯可能なポンプ容器からなる請求項1〜4の何れか1項に記載の口腔洗浄器。
【請求項6】
前記洗浄液吐出管の基端部外周面に係合突起を設け、前記ポンプ容器の先端部に前記洗浄液吐出管の基端部が挿入される取付孔を形成するとともに、該取付孔の内周面に、前記係合突起を軸方向に受け入れる縦溝および受け入れた係合突起を周方向に案内するための周溝を設け、前記洗浄液吐出管の基端部を取付孔に挿入して回転させることで前記係合突起が前記周溝内に係合し、該洗浄液吐出管がポンプ容器に着脱自在に取り付けられる請求項5記載の口腔洗浄器。
【請求項7】
前記周溝を、前記縦溝から一方向に向けて所定角度範囲に、または互いに反対方向に向けてそれぞれ所定角度範囲に形成してなる請求項6記載の口腔洗浄器。
【請求項8】
前記周溝内に、前記係合突起を所定角度回転させた位置に係止するための係止用凸部を形成してなる請求項6又は7記載の口腔洗浄器。
【請求項9】
前記洗浄液吐出管の基端側に、前記係合突起が前記周溝内に係合する状態で前記取付孔の開口部周縁部に当接する鍔部を設けるとともに、該鍔部の外周面における少なくとも前記清掃体の突出方向と反対側に平坦面を形成してなる請求項5〜8の何れか1項に記載の口腔洗浄器。
【請求項10】
前記ポンプ機構として、ポンプ容器の外周面に押圧ボタンが突出する手動ポンプ機構を設けるとともに、該ポンプ機構から洗浄液収容室の底面に延びる洗浄液吸上管の先端吸上口を、当該収容室底面における前記押圧ボタンの突出方向と同じ側の縁部近傍に位置させてなる請求項5〜9の何れか1項に記載の口腔洗浄器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−132099(P2008−132099A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319546(P2006−319546)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】