説明

口腔洗浄装置

【課題】 洗浄液が口腔内に漏れることを防止しつつ、装置を把持することなく、自動的に歯を洗浄できる口腔洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 上又は/及び下の歯肉の形に合わせて密着するように形成された柔軟な材質からなるフィッティング部を持つマウスピースであって、フィッティング部を口腔内に嵌め込んだときに歯との間に洗浄液が流入する隙間が確保されるように歯型及び歯列に合わせて形成された窪みを持つマウスピースと、マウスピースに設けられ、歯との隙間に洗浄液を供給するための噴出孔及び洗浄液を排出するための排出孔と、噴出孔から歯との間の隙間に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、歯との間の隙間に供給される洗浄液に超音波または音波振動を付与する振動発生手段と、歯との間の隙間に供給された洗浄液を排出孔から吸引して排出する洗浄液排出手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の歯を洗浄する口腔洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の健康を保つために、ブラッシングで歯垢を除去することが重要となる。近年になって、歯ブラシを電動で駆動するだけでなく、洗浄液に超音波を発生させて歯垢を効率的に除去する方法や歯ブラシ自体に給排水機能を設けたもの、もしくは歯型に合わせたマウスピース型の歯ブラシで一度に効率的なブラッシングを行うものが提案されている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−309160号公報
【特許文献2】特開2001−8736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の口腔洗浄装置はさらなる改良が望まれる。例えば、寝たきりに近い要介護者や肢体の不自由な者は、歯ブラシを把持してブラッシングすること自体が困難であり、介護者の協力を得てのブラッシングであっても口腔内の洗浄液が咽頭や鼻腔に入ることがある。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、洗浄液が口腔内に漏れることを防止しつつ、装置を把持することなく、自動的に歯を洗浄できる口腔洗浄装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 上又は/及び下の歯肉の形に合わせて密着するように形成された柔軟な材質からなるフィッティング部を持つマウスピースであって、前記フィッティング部を口腔内に嵌め込んだときに歯との間に洗浄液が流入する隙間が確保されるように歯型及び歯列に合わせて形成された窪みを持つマウスピースと、該マウスピースに設けられ、歯との隙間に洗浄液を供給するための噴出孔及び洗浄液を排出するための排出孔と、前記噴出孔から歯との間の隙間に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、歯との間の隙間に供給される洗浄液に超音波または音波振動を付与する振動発生手段と、歯との間の隙間に供給された洗浄液を前記排出孔から吸引して排出する洗浄液排出手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 上又は/及び下の歯肉の形に合わせて密着するように形成された柔軟な材質からなるフィッティング部を持つマウスピースであって、前記フィッティング部を口腔内に嵌め込んだときに歯との間に洗浄液が流入する隙間が確保されるように歯型及び歯列に合わせて形成された凹面を持つマウスピースと、該マウスピースの窪みと歯との隙間に設けれたブラシと、前記マウスピースに設けられ、歯との隙間に洗浄液を供給するための噴出孔及び洗浄液を排出するための排出孔と、前記噴出孔から歯との間の隙間に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記ブラシに超音波または音波振動を付与する振動発生手段と、歯との間の隙間に供給された洗浄液を前記排出孔から吸引して排出する洗浄液排出手段と、を備えることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の口腔洗浄装置において、前記フィッティング部には、圧力又は温度を変化させることにより歯肉との接触形状を密着させる形状と密着を解除させる形状とに変形可能な形状記憶部材を設けたことを特徴とする。
(4) (1)又は(2)の口腔洗浄装置において、供給前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給水量と前記洗浄液排出手段による排水量とを検知し、歯との間の隙間に満たされる水量を一定量に調整する調整手段と、歯との間の隙間に満たされる水量が異常に上昇したときに一括して強制的に排出させる排水バッファを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブラッシングが困難な者が使用しても口腔内に洗浄液が漏れることを防ぎつつ、歯を自動的に効率良く洗浄できる。また、マウスピースのフィッティング部が歯肉にフィットし、マウスピースを咥える形で口腔内にはめ込むことが可能であるので、装置を手で把持することなく自動的に歯を洗浄できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は装置の構成図である。図2はマウスピース部分の外観図で、図3はマウスピースの平面断面図である。図4はマウスピースを口腔内に装着した場合の断面図である。
【0008】
マウスピース1は、各個人の歯型、歯列に合わせて型どられたものであるが、歯とマウスピースの間にはある程度の隙間が空けられている。マウスピース1は上顎全歯清掃部1aと上顎フィッティング部1bおよび下顎全歯清掃部1cと下顎フィッティング部1dとからなる。上顎フィッティング部1bと下顎フィッティング部1dは、柔軟性に富んだ樹脂、例えばシリコン等でできており、歯肉に密着する形状に形成されている。上顎フィッティング部1bと一体的に形成された上顎全歯清掃部1a、及び下顎フィッティング部1dに一体的に形成された下顎全歯清掃部1cは、それぞれ歯及び歯列に合わせて多少余裕のある凹面形状の窪み12が設けられている。また、マウスピース1の上顎全歯清掃部1a及び下顎全歯清掃部1cには、それぞれ水等の噴出孔14や排出孔15が埋設されている。さらに、上顎フィッティング部1bと下顎フィッティング部1dには、それぞれプレート13が歯の表側と裏側に埋設されており、形状変化を促す電圧を印加するためのコード21が接続されている。プレート13は形状記憶合金、弾性合金および熱電素子を張り合わせた3層構造を持つ細長い板状のもので、歯の表側部分と裏側部分をそれぞれ覆うように埋設されている。プレート13は装置本体のスイッチが入ることによってが歯肉に密着するように形状を変化させ、スイッチを切るとその密着状況が解かれる機能を持っている。上顎全歯清掃部1aと下顎全歯清掃部1cも柔軟性に跳んだ樹脂でできており、噴出孔14や、排出孔15が埋設されている。また、マウスピース1には給水管22と排水管23が張り巡らされており、供給口5と排出口6をそれぞれ介して外部の管と接続されている。水は給水管22を通して噴出孔14へと配水され、排出孔15を通して排水管23から排出される。
【0009】
次にその動作を説明する。マウスピース1を咥えるかたちで口腔内にはめ込んだ後、図示されない手動または自動スイッチで作動を始める。マウスピース1を咥え込むことで洗浄装置を把持することなく、口腔洗浄が行える。プレート13に電圧源20からの電圧が印加され、上下のフィッティング部がそれぞれ歯肉に密着することによって、マウスピース内側と歯との間を閉じた系にし、水が口腔内に漏出することを防ぐ。プレート13に電圧源20からの電圧が印加されるとプレート13の熱電素子の温度が上昇し、形状記憶合金に予め記憶させておいた歯肉にフィットするプレート形状へとプレート13が変形し、それに伴って、フィッティング部1bとフィッティング部1dがそれぞれの歯肉に密着する。スイッチが切られるとプレート13に対する電圧源20からの電圧印加がなくなり、形状記憶合金の記憶形状への復元力が減少するため、弾性合金の復元力によってプレート13は歯肉への密着から離れる方向へとその形状を変形させ、マウスピース1の歯肉への密着が解かれる。フィッティング部の表側に埋設されたプレート13は電圧の印加によって縮み、歯肉を表側から締め付けることによって密着度を高める。同様に、フィッティング部の裏側に埋設されたプレート13は電圧の印加によって拡がり、裏側から歯肉を押すことによって密着度を高める。したがって、フィッティング部の表側に埋設するプレート13の形状記憶合金は表側の歯肉にフィットする形状を予め記憶させておき、フィッティング部の裏側に埋設するプレート13の形状記憶合金は裏側の歯肉にフィットする形状に予め記憶させておく。弾性金属は装置本体のスイッチが入っていない時にマウスピース1が口腔内にはめ込み易いように上下のフィッティング部が開いてある程度余裕のある状態にする。弾性金属はそれぞれの上下のフィッティング部の開いた状態に合う形状になっている。以上のように予め閉じた形状を記憶させた形状記憶合金と、開いた形状にしている弾性金属と温度を発生させる熱電素子を張り合わせることによって、温度により上下それぞれのフィッティング部を開いた状態と閉じた状態を制御することができる。熱電素子で発生する熱は口腔内の温度より高く、人体に悪影響のない温度範囲、例えば40〜60℃程度とする。本実施例では、フィッティング部に温度により形状を変化させて歯肉との密着度を高めるプレート13を用いたがこれに限るものではない。プレート13の代わりに弾性に富んだ管を埋設し、外部から液体や気体を注入、排出することでフィッティング部の形状を圧力で変化させ、密着度を高める方法にすることもできる。
【0010】
給水装置2は給水タンク3に接続され、水を超音波発生装置4へとポンプ等で送る。超音波発生装置4で水に超音波振動エネルギーが付加される。超音波発生装置4は上顎フィッティング部1bと下顎フィッティング部1dの対応する各々の供給口5a、5bに接続されており、水をそこへと送る。マウスピース1内側で利用された水は排水となり、上顎全歯清掃部1aと下顎全歯清掃部1cに対応する各々の排出口6a,6bがあり、そこに接続された管から排水される。排水は排水バッファ7をとおり、水はポンプ等を備える排水装置8により吸引され、排水装置8と接続された排水タンク9へと流れ込む。マウスピース1内側における流入量と排水量また各々の水圧は給水装置2と排水装置8のセンサでそれぞれ計測され、その情報は制御装置10へと渡される。制御装置10には記憶装置11が接続されており、マウスピース1内の水量の適正範囲が予め記憶されている。制御装置10は給水装置2と排水装置8からの水量や圧力の情報を基にマウスピース1内側の水量を一定範囲内に保つ制御を行う。排水バッファ7は制御装置10と接続されており、マウスピース1内側の総水量が異常に上昇した場合にマウスピース1内側の水を一括で強制排出し、口腔内に水が漏出することを防ぐ安全装置として働く。
【0011】
次に洗浄動作について説明する。図4に示すように、上歯24aには上顎フィッティング部1bが密着し、下歯24bには下顎フィッティング部1dが密着することによって清掃部部分を閉じた系として口腔内に水が漏出することを防いでいる。噴出孔14は歯の根元部分、先端部分、両者の中間部分にそれぞれ配置される。また、噴出孔14は各々の歯の側面の平坦部分や歯と歯の間に向けられてそれぞれ配置される。排出孔15は廃水を回収しやすいようにマウスピース1と歯の間にできた閉じた空間の底部分に設けられる。噴出孔14より超音波振動エネルギーが付加された水が噴出し、効率的に歯垢を除去する。洗浄に利用された水は排出孔15をとおてマウスピース1から排出される。給水と排水を同時に行うことによって、迅速に洗浄が行える。噴出孔14にはねじ切り状の口を設けて、渦巻状の水流を放出できるようにしてより洗浄効果が上がるようにしてもよい。
【0012】
また、給水と排水を同時に行わなくとも、給水によってマウスピース1内側に水を充たした状態で噴出孔14を介して超音波エネルギーを付加することにより歯を超音波洗浄し、洗浄後に一括して排水する洗浄方法にすることもできる。
【0013】
以上の実施形態では、超音波エネルギーを水に付加しているが、超音波に限るものではないく、音波であってもよい。また、水を供給や洗浄に使っているが、殺菌効果や歯垢分解効果のある口腔洗浄用の液体を用いてもよい。図では噴出孔14は閉じた空間の上側に、排出孔15は下側に設置されているが、これに限るものではない。図4は図の下方向に重力がある場合を想定した配置にしており、例えば、横になった状態で使用することが多い場合は重力のかかる方向に合わせて噴出孔14と排出孔15を自由に設置できる。マウスピース1を各個人の歯型、歯列に合わせてカスタムメイドする際に、予期される使用状況に合わせて噴出孔、排出孔も任意の位置に配置することができる。
【0014】
また、上記実施形態では水による超音波洗浄であったが、これに限るものではなく、マウスピース1の窪み12と歯の隙間にブラシ(図示を略す)を設け、このブラシに超音波発生装置4で超音波や音波の振動を付与する構成とし、歯をブラッシングすることによって口腔内を洗浄する方法でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】装置の構成図である。
【図2】マウスピース部分の外観図である。
【図3】マウスピースの平面断面図である。
【図4】マウスピースを口腔内に装着した場合の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 マウスピース
1a 上顎全歯清掃部
1b 上顎フィッティング部
1c 下顎全歯清掃部
1d 下顎ふぃッティング部
4 超音波発生装置
7 排水バッファ
10 制御部
12 窪み
13 プレート
14 噴出孔
15 排出孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上又は/及び下の歯肉の形に合わせて密着するように形成された柔軟な材質からなるフィッティング部を持つマウスピースであって、前記フィッティング部を口腔内に嵌め込んだときに歯との間に洗浄液が流入する隙間が確保されるように歯型及び歯列に合わせて形成された窪みを持つマウスピースと、該マウスピースに設けられ、歯との隙間に洗浄液を供給するための噴出孔及び洗浄液を排出するための排出孔と、前記噴出孔から歯との間の隙間に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、歯との間の隙間に供給される洗浄液に超音波または音波振動を付与する振動発生手段と、歯との間の隙間に供給された洗浄液を前記排出孔から吸引して排出する洗浄液排出手段と、を備えることを特徴とする口腔洗浄装置。
【請求項2】
上又は/及び下の歯肉の形に合わせて密着するように形成された柔軟な材質からなるフィッティング部を持つマウスピースであって、前記フィッティング部を口腔内に嵌め込んだときに歯との間に洗浄液が流入する隙間が確保されるように歯型及び歯列に合わせて形成された凹面を持つマウスピースと、該マウスピースの窪みと歯との隙間に設けれたブラシと、前記マウスピースに設けられ、歯との隙間に洗浄液を供給するための噴出孔及び洗浄液を排出するための排出孔と、前記噴出孔から歯との間の隙間に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記ブラシに超音波または音波振動を付与する振動発生手段と、歯との間の隙間に供給された洗浄液を前記排出孔から吸引して排出する洗浄液排出手段と、を備えることを特徴とする口腔洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の口腔洗浄装置において、前記フィッティング部には、圧力又は温度を変化させることにより歯肉との接触形状を密着させる形状と密着を解除させる形状とに変形可能な形状記憶部材を設けたことを特徴とする口腔洗浄装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の口腔洗浄装置において、供給前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給水量と前記洗浄液排出手段による排水量とを検知し、歯との間の隙間に満たされる水量を一定量に調整する調整手段と、歯との間の隙間に満たされる水量が異常に上昇したときに一括して強制的に排出させる排水バッファを設けたことを特徴とする口腔洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−101941(P2006−101941A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289375(P2004−289375)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】