説明

口腔管理装置

【課題】全ての歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを簡単に短時間で終えることができるとともに、前記清掃およびマッサージを適正かつ極めて簡便に行うことのできる口腔管理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】個人の歯型および辺縁歯肉形態に基づいて形成した装着体10と、前記装着体10に微細な振動を与える振動発生手段20とを備え、個人の歯列及び辺縁歯肉に密着して装着した状態で前記装着体10に振動発生手段20により微細振動を与えて、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを一度に、且つ適切簡便に行うことができるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人の歯列および辺縁歯肉に密着するように装着して微細な振動を与えることにより、歯面を清掃するとともに歯肉をマッサージして、歯垢の除去および歯垢の付着の予防を図るための口腔管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の口腔管理装置としては、例えば、特表2003−527191号公報に記載の口腔管理装置や特開2004−73558号公報に記載の口腔管理装置が存在する(特許文献1又は2参照)。
【特許文献1】特表2003−527191号公報(第1頁、図2)。
【特許文献2】特開2004−73558号公報(第1頁、図8)。
【0003】
前記特許文献1に記載されている口腔管理装置は、携帯可能でありいつでも容易に使用できるようにペンと同様の大きさとした歯垢を除去するための装置であって、歯垢を除去するための器具が、持ち手と、前記持ち手の一端に設置された研磨粒子を埋め込んだ弾性体と、前記持ち手の他端に取り外し可能に固定される伸長部と、研磨粒子を埋め込んだ弾性体を取り外し可能に包囲する第2キャップと有するように構成されており、前記伸長部は、開口端をもつ中空とされることにより、前記一端に対して第1キャップとして取り外し可能に固定されるように形成されている。
【0004】
また、前記特許文献2に記載されている口腔管理装置は、シリンダに気密にかつ往復動可能に嵌合したピストンを手動操作して往復動させ、圧縮した空気を空気ボンベ内に貯溜しておき、該圧縮空気(又は圧縮液体)をノズルからジェット流として吐出させて歯垢や歯間に挟まった食べ物の滓を除去し、口腔内を効果的に洗浄するように構成されており、これにより圧縮空気又は圧縮液体をノズルの先端からジェット流として口腔内に吐出させ、歯垢や歯間に挟まった食べ物の滓等を効果的に除去することができる口腔管理装置の小型を図っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の口腔管理装置は、歯垢又は歯間に挟まった食滓(以下、「歯垢等」という)を除去するには、いずれも、一つ一つの歯間について除去作業を行う必要があり、全ての歯列について歯垢等を除去するには、相当の手間と時間が掛かるものであった。
【0006】
さらに、全ての歯列について適正に歯垢等を除去するには、前記口腔管理装置の取り扱いについて技量を要するものであり、特に、手の不自由な者や介護の必要な老人等に取っては、極めて困難な作業であった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、全ての歯列の歯面を清掃するとともに歯肉のマッサージを簡単に短時間で終えることができるとともに、前記清掃およびマッサージ等を適正かつ極めて簡便に行うことのできる口腔管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の口腔管理装置は、個人の歯型および辺縁歯肉形態に基づいて形成した装着体と、前記装着体に微細な振動を与える振動発生手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の口腔管理装置にあっては、装着体が個人の歯型および辺縁歯肉形態に基づいて形成されているので、個人の歯列及び辺縁歯肉に密着して装着することができ、かかる状態で前記装着体に振動発生手段により微細振動を与えることで、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを一度に行うことができると共に、各個人に適合する装着体を使用しているため、歯間部の隅々まで適正に清掃等を行うことができ、さらに、かかる作業に技量を要しないため、極めて簡便に作業を行うことができるのである。
【0010】
請求項2に記載の口腔管理装置は、請求項1に記載の口腔管理装置において、前記装着体は、軟性シリコーン樹脂から形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の口腔管理装置にあっては、前記装着体を、歯科医師が用いる軟性シリコーン樹脂を利用して容易に製造することができるとともに、歯列および辺縁歯肉に装着感よく密着可能となる。
【0012】
請求項3に記載の口腔管理装置は、請求項1又は2に記載の口腔管理装置において、前記振動発生手段は、超音波発生装置を前記装着体に埋め込んで形成されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の口腔管理装置にあっては、前記振動発生手段を超音波発生装置としたので、極めて微細な振動を装着体に与えることができ、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを、歯列等に過大な負荷を与えず、好適に行うことができる。また、前記振動発生手段が、前記装着体内に埋め込んで形成されているので、口腔管理装置全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0014】
請求項4に記載の口腔管理装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の口腔管理装置において、前記装着体は、前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面にゲル状又は液状剤を注入できる注入手段を設けてなることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の口腔管理装置にあっては、前記注入手段により歯磨剤等を、装着した状態で注入することができ、より効果的な全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の口腔管理装置は、請求項1乃至4の何れかに記載の口腔管理装置において、前記振動発生手段により発生する振動が前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面全域に及ぶように振動伝播手段をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の口腔管理装置にあっては、前記振動発生手段により発生する振動を、前記装着体の全体に亘って好適に伝播することができ、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージをより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の口腔管理装置は、個人の歯型および辺縁歯肉形態に基づいて形成した装着体と、前記装着体に微細な振動を与える振動発生手段とを備えているので、個人の歯列及び辺縁歯肉に密着して装着することができ、かかる状態で前記装着体に振動発生手段により微細振動を与えることで、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを一度に行うことができると共に、各個人に適合する装着体を使用しているため、歯間部の隅々まで、適正に清掃等を行うことができ、さらに、かかる作業に技量を要しないため、極めて簡便に作業を行うことができる。
【0019】
請求項2に記載の口腔管理装置は、請求項1に記載の口腔管理装置において、前記装着体は、軟性シリコーン樹脂から形成されているので、前記装着体を、歯科医師が用いる軟性シリコーン樹脂を利用して容易に製造することができるとともに、歯列および辺縁歯肉に対して装着性がよいものとなる。
【0020】
請求項3に記載の口腔管理装置は、請求項1又は2に記載の口腔管理装置において、前記振動発生手段は、超音波発生装置を前記装着体に埋め込んで形成されているので、極めて微細な振動を 装着体に与えることができ、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを、歯列等に過大な負荷を与えず、好適に行うことができる。また、前記振動発生手段が前記装着体内に埋め込んで形成されているので、口腔管理装置全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0021】
請求項4に記載の口腔管理装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の口腔管理装置において、前記装着体は、前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面にゲル状又は液状剤を注入できる注入手段を設けているので、前記注入手段により、例えば歯磨剤等を、前記装着体を歯列等に装着した状態で注入することができ、より効果的な全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを行うことができる。
【0022】
請求項5に記載の口腔管理装置は、請求項1乃至4の何れかに記載の口腔管理装置において、前記振動発生手段により発生する振動が前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面全域に及ぶように振動伝播手段をさらに備えるているので、前記振動発生手段により発生する振動を、前記装着体の全体に亘って好適に伝播することができ、全歯列および辺縁歯肉の清掃およびマッサージを効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る口腔管理装置を実施するための最良の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
【0025】
本発明に係る第1の実施の形態の口腔管理装置を、図1乃至図3に示す。図1(a)は第1の実施の形態の口腔管理装置の上方からの斜視図であり、(b)は、(a)に示す装着体の下方からの斜視図である。図2は、装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。図3は装着状態の中央縦断面図である。
【0026】
図1乃至図3において、10は、軟性シリコーン樹脂から形成されたマウスピース形状の装着体であり、各人の歯型および辺縁歯肉形態から、後述する方法等により成型されている。該装着体10は、上歯列弓SDAおよびその辺縁歯肉GUMと密接に適合するように平面視弓状に形成された上歯列装着部11と、下歯列弓IDAおよびその辺縁歯肉GUMと密接に適合するように平面視弓状に形成された下歯列装着部12とが一体的となるように成型されており、さらに、口腔内方に向けて、超音波振動子20を埋め込むための膨出部13が一体的に成型されている。
【0027】
前記装着体10の装着面には、外部から歯磨剤等を注入するための注入用チューブ16が連通されている。該注入用チューブ16の一端側は、前記上歯列装着部11に挿通する上歯列側チューブ14と、前記下歯列装着部12に挿通する下歯列側チューブ15とに分岐されており、他端側は、着脱自在のキャップ17を有する歯磨剤等を収容する容器18に連通している。
【0028】
なお、前記装着体10の成型は、例えば次のような方法により行われる。先ず、歯科医師により全歯列および辺縁歯肉形態(以下、「歯列等」という。)の印象を採取し、採取した印象に石膏を流し込んで歯列等の模型を作製する。次に、この模型に基づいて軟質シリコーン樹脂を用いてマウスピース形状に成型する。この際、前記超音波振動子20を予め所定の位置に配置しておき、前記装着体10を成型する際に、同時に、前記装着体10の中に埋め込んで一体的に成形するのである。なお、前記装着体10の成型に用いられる素材としては、上述の軟質シリコーン樹脂に限らず、レジン等の軟質裏装材やドラッグリテーナー等に用いられるポリエチレンシート材、エチレンビニルアセテートのシート材等の適宜の素材を使用してもよい。
【0029】
前記超音波振動子20は、ケーブル40を介して操作部30に電気的に接続されており、該操作部30は、前記ケーブル40と接続して前記超音波振動子20の制御を行う電子回路31と、前記超音波振動子20のON/OFFを行うスイッチ32と、前記超音波振動子20の振動周波数の調整を行う可変器33と、タイマー34と、充電可能な電源35と、該電源35を外部DC電源PWに接続する接続端子36とを含んでいる。
【0030】
以上のように構成された第1の実施の形態の口腔管理装置を使用して歯列等を清掃等するには、図3および図8の使用状態を示す概略図に示すように、先ず、前記容器18に歯磨剤等を入れておき、注入用チューブ16を介して前記装着体10の装着面に、予め歯磨剤等を注入し装着面全体に塗布する。次に、前記装着体10を歯列に装着して、前記超音波振動子20のスイッチ32を入れるのである。前記スイッチ32のON動作により、前記超音波振動子20は、振動を開始するが、前記超音波振動子20は、前記装着体10に埋め込まれているので、前記装着体10全体が微細振動を生じ、前記装着面と歯面および歯肉との摩擦により全歯列の歯面の清掃および辺縁歯肉のマッサージを一度に行うことができる。なお、振動の強弱は前記可変器33を調整することに依り行うことができ、また、タイマー34を設定することにより、所望の時間の設定が可能となる。また、使用していない場合は、載置台50に載置しておく。なお、前記載置台50には、外部DC電源に接続可能なコード等、および接続端子が設けられており、前記口腔管理装置に充電可能に構成されている。
【0031】
(第2の実施の態様)
【0032】
本発明に係る第2の実施の形態の口腔管理装置を、図4および図5に示す。図4は、装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。図5は装着状態の中央縦断面図である。なお、図4および図5において図1乃至図3と共通する部分には同一符合を付して、重複する説明は省略する。
【0033】
図4および図5において、130は膨出部であるが、第2の実施の形態の口腔管理装置においては、該膨出部130は、口腔外方に向けて突出して成型している。このように、前記超音波振動子20を埋め込んだ前記膨出部130を外方に突出成型することにより、図5に示すように、装着状態(使用状態)において、前記膨出部130を唇で押さえ込むことができ、その結果、前記超音波振動子20の振動を前記膨出部130に逃がすことなく、歯列等に効率よく伝播することができるのである。
【0034】
(第3の実施の態様)
【0035】
本発明に係る第3の実施の形態の口腔管理装置を、図6および図7に示す。図6は、装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。図7は装着状態の中央縦断面図である。なお、図6および図7において図1乃至図3と共通する部分には同一符合を付して、重複する説明は省略する。
【0036】
図6および図7において、60は硬質の合成樹脂板から形成される振動伝播板であり、前記上歯列装着部11と下歯列装着部12に沿うように、かつ、前記超音波振動子20に当接するように、前記装着体10内に埋め込まれている。該振動伝播板60は、前記装着体10よりも硬度の高い素材で形成されていればよく、金属板等で形成しても良い。前記振動伝播板60は、前記超音波振動子20に当接しており、かつ、前記上歯列装着部11と下歯列装着部12に沿って埋め込まれているため、前記超音波振動子20が発生する振動を前記上歯列装着部11および下歯列装着部12の全域に亘って伝播するので、全歯列等の清掃等を漏れなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は第1の実施の形態の口腔管理装置の上方からの斜視図であり、(b)は、(a)に示す装着体の下方からの斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の口腔管理装置の装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。
【図3】第1の実施の形態の口腔管理装置の装着状態の中央縦断面図である。
【図4】第2の実施の形態の口腔管理装置の装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。
【図5】第2の実施の形態の口腔管理装置の装着状態の中央縦断面図である。
【図6】第3の実施の形態の口腔管理装置の装着時の部分断面図であり、(a)は上顎方向を示し、(b)は下顎方向を示す。
【図7】第3の実施の形態の口腔管理装置の装着状態の中央縦断面図である。
【図8】使用状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
10 装着体
16 注入用チューブ
20 振動発生手段(超音波振動子)
30 操作部
60 振動伝播板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の歯型および辺縁歯肉形態に基づいて形成した装着体と、前記装着体に微細な振動を与える振動発生手段とを備えることを特徴とする口腔管理装置。
【請求項2】
前記装着体は、軟性シリコーン樹脂から形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の口腔管理装置。
【請求項3】
前記振動発生手段は、超音波発生装置を前記装着体に埋め込んで形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の口腔管理装置。
【請求項4】
前記装着体は、前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面にゲル状又は液状剤を注入できる注入手段を設けてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の口腔管理装置。
【請求項5】
前記振動発生手段により発生する振動が前記装着体と歯列又は/および辺縁歯肉との装着面全域に及ぶように振動伝播手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の口腔管理装置。
































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−105190(P2007−105190A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298243(P2005−298243)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(305036687)
【Fターム(参考)】