説明

口腔衛生用剤

【課題】口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、口腔及び咽頭内の炎症性疾患を予防又は治療するための口腔衛生用剤に関し、衛生マスクに替わって又は衛生マスクの使用と共に、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去を目的とする口腔衛生用剤を提供する。
【解決手段】二酸化チタン粒子、及びシクロデキストリンを含有する口腔衛生用剤とする。好適には二酸化チタン粒子は、アパタイトとの複合体粒子とする。これらの作用により、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、口腔及び咽頭内の炎症を鎮める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、口腔及び咽頭内の炎症性疾患を予防又は治療するための口腔衛生用剤に関し、衛生マスクに替わって又は衛生マスクの使用と共に、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去を目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来から、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、歯肉炎、口腔創傷、舌炎等の、口腔及び咽頭における炎症性疾患の予防又は治療には、主としてステロイド系抗炎症剤や、アズレンスルホン酸ナトリウムを含有する薬剤等が用いられてきた。また、そのほかに、ビタミンE及びスクワランを含有するもの(例えば、特許文献1参照)や、スルホデヒドロアビチエン酸またはその薬学的に許容される塩を有効成分とするもの(例えば、特許文献2参照)、また、アラントインまたはその誘導体と、ビタミンBまたはその誘導体とを含有するもの(例えば、特許文献3参照)等、様々なものが開発されてきた。
【特許文献1】特開平10−298073号公報
【特許文献2】特開2003−002828号公報
【特許文献3】特開2007−008831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、二酸化チタンとシクロデキストリンの協働作用による殺菌効果を応用した口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、口腔及び咽頭における炎症性疾患の予防又は治療のための口腔衛生用剤はなかった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて、二酸化チタンとシクロデキストリンを含有し、口腔及び咽頭において優れた殺菌効果を発揮する、口腔及び咽頭における炎症性疾患の予防又は治療のための口腔衛生用剤を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、また、衛生用マスクに替わり得る機能を有し、衛生マスクに替わって若しくは衛生マスクの使用と共に、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、二酸化チタン粒子、及びシクロデキストリンを含有することを特徴とする口腔衛生用剤を提供する。
【0007】
ここで、前記二酸化チタン粒子は、アパタイトとの複合体粒子であるのが最適である。この複合体粒子は、アパタイトにより前記二酸化チタン粒子が被覆された複合体粒子であるのが好ましい。なお、このアパタイトは、フルオロアパタイトまたはハイドロキシアパタイトであるのが良い。
【0008】
さらに、前記口腔衛生用剤の剤形は、口腔内徐放剤、バッカル剤、トローチ剤、または口腔内崩壊剤の何れかであるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二酸化チタンとシクロデキストリンの作用により、口腔及び咽頭の細菌を除去し、炎症を鎮めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
本発明の口腔衛生用剤は、二酸化チタン(好適には、二酸化チタンとアパタイトの複合体)と、シクロデキストリンとを含有することを特徴とする。ここで、シクロデキストリンとは、ブドウ糖が環状構造に結合した環状オリゴ糖であり、その環状構造の内部には他の分子を包接できる程度の大きさの空孔を有する。この空孔の外側は親水性、内側は疎水性(親油性)という特異的な構造を持ち、様々な分子を空孔内に取り込んで包接複合体を形成することができる。シクロデキストリンは従来からこの包接機能を利用して、ゲスト分子(包接された分子)の安定性の増大や、悪臭・食品の異味の除去等に利用されている。
【0012】
シクロデキストリンのうち、ブドウ糖が六個のものをα−シクロデキストリン、ブドウ糖が七個のものをβ−シクロデキストリン、ブドウ糖が八個のものをγ−シクロデキストリンという。本発明で言うシクロデキストリンは、これらのα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのほか、シクロデキストリンの誘導体や類縁化合物も含むものとする。
【0013】
一方、二酸化チタンは、光触媒の代表的な物質であり、光を照射された際の酸化還元作用により有機物を分解する作用を示す。本発明の口腔衛生用剤では、アパタイト(好適には、フルオロアパタイトまたはハイドロキシアパタイト)によって被覆され複合化された二酸化チタンを用いるのが最適である。
【0014】
ここでアパタイトとは、M,Z,Xを任意の元素として、M10(ZO462の組成を有する鉱物群のことであり、例えば、Mにカルシウム、Zにリン、Xにフッ素が主成分として入ると、フッ化アパタイト(フルオロアパタイト)となる。また、Mにカルシウム、Zにリン、Xに水酸基が入ると、水酸化アパタイト(ハイドロキシアパタイト)となる。アパタイトの機能として一般によく知られているのは、有害化学物質等を吸着保持する機能である。例えば、窒素酸化物や過酸化脂質、アンモニアやアルデヒド類、細菌やウィルスを吸着することができる。
【0015】
そこで、二酸化チタンとアパタイトとを複合化することにより生まれる、アパタイトが吸着、保持した細菌等を二酸化チタンが分解するという双方の連携した作用によって、シクロデキストリンと共にその殺菌力を向上させることができる。具体的にはまず、シクロデキストリンが口腔内で細菌等を包接する。さらに、アパタイトが細菌等を吸着し、二酸化チタンに接触させる。二酸化チタンは光触媒効果によりこれらを分解して除菌する。
【0016】
ちなみに、シクロデキストリンも光触媒である二酸化チタンが分解し得る有機物であるが、二酸化チタンに一定のレベル以上の強い光を照射しない限りはシクロデキストリンがその光分解作用で分解されることはない。そのため、シクロデキストリンと二酸化チタンを共存させた状態でも、所定の条件下で保管すれば、シクロデキストリンの分解は起こらない。なお、二酸化チタン、及びシクロデキストリンは共に食品添加物としても認められている物質であり、また、アパタイトも人の歯や骨の主成分となる物質であって、人体には無害かつ安全である。
【0017】
なお、本発明の口腔衛生用剤は、唾液中で少量ずつ徐々に溶出させながら、長時間患部に作用させることを目的としている。そのため、その剤形は、口唇または頬と歯茎の間に挟んで服用する口腔内徐放剤や、バッカル剤等であることが好ましい。あるいは、トローチ剤や口腔内崩壊剤であっても良い。
【0018】
また、本発明の口腔衛生用剤には、有効成分として、二酸化チタン(好適には、二酸化チタンとアパタイトの複合体)とシクロデキストリンのほか、抗炎症剤等の各種成分がさらに添加されても良い。また、乳糖やデンプン等の賦形剤、錠剤として結合させるためのアラビアゴム等の結合剤、圧縮形成を容易にするためのステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤等が、適宜添加されても良い。
【0019】
このように、本発明によれば、二酸化チタンとシクロデキストリンの作用により、口腔及び咽頭のウィルスを含む細菌を除去し、炎症を鎮めることができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去、口腔及び咽頭内の炎症性疾患を予防又は治療するための口腔衛生用剤に関し、衛生マスクに替わって又は衛生マスクの使用と共に、口腔及び咽頭におけるウィルスを含む細菌の除去を目的とする口腔衛生用剤を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン粒子、及びシクロデキストリンを含有することを特徴とする口腔衛生用剤。
【請求項2】
前記二酸化チタン粒子が、アパタイトとの複合体粒子であることを特徴とする請求項1に記載の口腔衛生用剤。
【請求項3】
前記複合体粒子は、アパタイトにより前記二酸化チタン粒子が被覆された複合体粒子であることを特徴とする請求項2に記載の口腔衛生用剤。
【請求項4】
前記アパタイトが、フルオロアパタイトまたはハイドロキシアパタイトであることを特徴とする請求項2または3に記載の口腔衛生用剤。
【請求項5】
前記口腔衛生用剤の剤形が、口腔内徐放剤、バッカル剤、トローチ剤、または口腔内崩壊剤の何れかであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の口腔衛生用剤。

【公開番号】特開2009−209075(P2009−209075A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52825(P2008−52825)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(505425878)
【出願人】(592248835)日本エー・シー・ピー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】