可動エアバランス装置
【課題】空力特性を改善するとともに簡単な構造で作動の信頼性を向上させる可動エアバランス装置を提供する。
【解決手段】車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、該エアバランス部材に連結する連結部材と、該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えた。
【解決手段】車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、該エアバランス部材に連結する連結部材と、該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空気抵抗に影響を与える車両用の可動エアバランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、普及の著しいハイブリッド車は、高速時には主にエンジンによって駆動されて燃料が多く消費される。そのため、高速時に特に燃料の消費に影響が出やすい車体の空力特性の改善が大きな効果を生じる技術として要求されている。
【0003】
従来、車両の車輪前方にフロントスポイラやスパッツを配置し、これらを車速に応じて車体の下方に出没させ、車両走行時の空気の流れを整流し、車体を路面に押し付ける力を生じさせたり、車体に対する空気抵抗を低減したりすることが公知技術として知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すようなエアーバランスパネルが知られている。これは、特許文献1の第1図及び第2図に示すように、樹脂製バンパ11の下部に蛇腹のような可撓性部13を介して一体に成形されたフロントスポイラ(エアーバランスパネル12)を駆動手段14で上下動するようになっている。
【0005】
また、特許文献2に示すようなフロントスポイラ装置が知られている。これは、特許文献2の第1図乃至第4図に示すように、バンパ5の下方に4節リンク機構3によってフロントスポイラ本体2が車体27に支持され、フロントスポイラ本体2がバンパ5の前面位置に保持されたり、バンパ5の下方位置に保持されたり、作動機構4によって上下動するようになっている。
【特許文献1】実開昭61−186688号公報(第1頁及び第2頁、第1図及び第2図)
【特許文献2】特開昭62−128888号公報(第5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示されるような駆動手段14や特許文献2に示されるような作動機構4を駆動させる作動モータ22は、機構上エアーバランスパネル12やスポイラ本体2の近傍に位置することとなるため、必然的に車両の下部に配置される。そのため、車両使用時において水溜りなどを走行した場合、水濡れによる駆動源への影響、例えば水入りによる電気ショートや故障、を回避するため、防水機構など作動の信頼性を確保する構造が必須となり、結果的に質量増加、部品点数増、部品コストアップなど様々な課題を生じていた。
【0007】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、空力特性を改善するとともに簡単な構造で作動の信頼性を向上させる可動エアバランス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、 車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、該エアバランス部材に連結する連結部材と、該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、前記エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えたことである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記連結部材はケーブルであって、該ケーブルは前記エアバランス部材の前部及び後部に連結され、前記エアバランス部材は、前記前部及び前記後部の間に配置された軸線が車両の左右方向となる回転軸を有しており、前記駆動装置は、前記ケーブルが巻回されるとともに軸線回りに回転可能に支承されたドラム機構を有し、該ドラム機構を正逆に回転させることにより前記エアバランス部材の前記前部及び前記後部を交互に出し入れすることである。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記ケーブルの一端部が弾性部材を介して前記エアバランス部材の前部に係止されていることである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記エアバランス部材は、車両の走行時における空気の流れを下方に整流する下方制御面と、側方に整流する側方制御面とを備えたことである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、エアバランス部材は必要な場合に駆動装置によって駆動されて空気整流作動位置に位置決めされ、車両の走行時における空気の流れを整流する。エアバランス部材は車輪の前方やバンパの下部に組み付けられるため、車体の下部の配置となり、雨天での走行時には水を被ったり、水没したりする。しかし、このエアバランス部材を駆動させる駆動装置がエアバランス部材の上方に離間して配置されているので、水溜りを走行した場合でも、例えば電気的なショート、機構上の故障といった水による駆動装置への悪影響を防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明においては、連結部材が柔軟材料であるケーブルであるため、エアバランス部材と駆動装置とを離間した配置における自由度が向上し、エアバランス部材及び駆動装置それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。またケーブルがエアバランス部材の前部及び後部に係止され、エアバランス部材の回転軸が前記前部及び前記後部の間に配されているので、力点(ケーブルがエアバランス部材に係止される点)から回転中心までの距離(モーメントアーム)が十分に取れるとともに力の配分のバランスが良く、小さな力でエアバランス部材をスムーズに可動させることができる。駆動においては、ケーブルが巻回されたドラム機構を正逆に回転させることによりケーブルに連動してエアバランス部材の前部及び後部を交互に出し入れするので、簡単な駆動装置でエアバランス部材の安定した作動を実現することができる。
【0014】
請求項3に係る発明においては、エアバランス部材の前部にケーブルの一端部が弾性部材を介して係止されている。そのため、エアバランス部材の突出する後部に障害物が衝突した場合において、エアバランス部材の後部は後方へ向かう回転を生じ同時にエアバランス部材の前部は前方へ向かう回転を生じてケーブルを衝撃的に牽引するが、弾性部材が伸びてその衝撃を緩衝するので、エアバランス部材自体の大破や駆動装置の損傷を防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る発明においては、走行時において空気の流れを下方へ整流することにより車体に対する浮力の発生と乱流の発生を防止し、同時に側方へ整流することにより、例えばホイールハウジングへの巻き込みによる乱流の発生を防止して空気抵抗の低減を効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る可動エアバランス装置を可動スパッツに使用した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は可動スパッツの構造を示す断面図であり、図2は同突出した状態を示す断面図である。
【0017】
本実施形態における可動スパッツ1は、車両の走行時に空気の整流を行うエアバランス部材3と、連結部としてのプッシュプルケーブル5と、前記エアバランス部材3の上方に離間した位置にある駆動装置7とから構成されている。
【0018】
エアバランス部材3は鋼板製又は樹脂製の略船形に形成された板材であり、図1及び図2に示すように、車輪8の前方であってバンパ10の後方に配設されている。このエアバランス部材3は、図8及び図9に示すように、車両の走行時に空気の流れを下方に整流する下方制御面3aと、空気の流れを側方に整流する側方制御面3bとを有している。エアバランス部材3の上面にはエアバランス部材3の後部から前方に突出させて延在する支持部材9が設けられ、支持部材9の前部よりの中央部には車両の左右方向に軸線を有する回転軸11が貫設固着されている。回転軸11はエアバランス部材3の側面を貫通するとともに車体に設けられた図略の軸受に回転自在に軸支され、エアバランス部材3はこの回転軸11を中心に所定の範囲で正逆回転可能になっている。支持部材9の先端部には弾性部材としてのばね部材13が一端部において係止され、ばね部材13の他端部にはプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部が係止されている。支持部材9の後部にはプッシュプルケーブル5のインナワイヤの他端部が回動可能に係止されている。プッシュプルケーブル5のインナワイヤが前記ばね部材13に係止される側のアウタチューブの一端部は、図示はしないが、前記ばね部材13の近傍において車体に固定され、同アウタチューブの他端部は前記駆動装置7の近傍の車体に固定されている。また、プッシュプルケーブル5のインナワイヤが前記支持部材9の後部に係止される側のアウタチューブの一端部は、図示はしないが、駆動装置7の近傍において車体に固定され、同アウタチューブの他端部は支持部材9の後部近傍において車体に固定されている。
【0019】
エアバランス部材3から離間した位置であってホイールハウジング14の上方には前記駆動装置7が配設され、駆動装置7のドラム機構15には前記プッシュプルケーブル5のインナワイヤの中間部が巻回されている。プッシュプルケーブル5のインナワイヤはドラム機構15にその一部が係止され、該インナワイヤとドラムの周囲面との間でずれを生じないようになっている。ドラム機構15は図略のギアを介してモータ17に連動して正逆自在に回転するように構成され、正逆回転することによりプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部及び他端部を交互に出し入れする。
【0020】
このように柔軟性のあるプッシュプルケーブルを使用することで、エアバランス部材3と駆動装置7とが離間した状態で自由に配置することができ、エアバランス部材3及び駆動装置7それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。
【0021】
次に、以上の構成の可動スパッツの作動について図面に基づき以下に説明する。まず、車両が停止している時や車両が低速で走行する時には図1,図4及び図5に示すように、エアバランス部材3の後部は車体の底部に収容され、空気整流非作動位置に位置決めされている。このようにエアバランス部材3を車体の底部に収納することで、路面に凹凸がある場合や石が転がっているような路において、路面の凸部や石との衝突でエアバランス部材3が損傷するのを防ぐことができる。また、このエアバランス部材3を駆動させる駆動装置7がエアバランス部材3の上方に離間して配置されているので、車両が水溜りを走行した場合でも、例えば電気的なショート、機構上の故障といった水による駆動装置7への悪影響を防止することができる。そのため、厳格な防水構造にしないで簡単な構造の駆動装置7とすることができる。
【0022】
次に、例えば高速道路のように路面が整備されて凹凸が少ない道路を、車両が高速で走行する時には、モータ17を駆動させ、ドラム機構を回転させてプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部が引き込まれるように作動させる。この作動によって支持部材9の先端部が牽引されることによりエアバランス部材3が回転軸11を中心に回転し、エアバランス部材3の後部が車体の下方に突出され、エアバランス部材3が空気整流作動位置に位置決めされる。なお、車両の走行中には、エアバランス部材3を突出させる方向に働く負圧が生じているので、プッシュプルケーブル5と支持部材9の先端部との間にばね部材13が介在していても、同ケーブル5を牽引の際にばね部材13だけが伸びて、エアバランス部材3が回転しないという不都合は生じない。
【0023】
この場合、エアバランス部材3は、図2,図6及び図7に示すように、車輪8の前方に突出して、車輪8の厚み方向の内側の一部を覆うように配置されている。このように車輪8の前方の全部を覆うものでなくても、側方制御面3bによって車輪8の外側へ空気の流れを整流するため、車輪8に空気の流れが当たって生じる空気抵抗やホイ―ルハウジング14に空気を巻き込んで生じる乱流の発生を低減することができる。
【0024】
次に図3に示すように、エアバランス部材3が車体の下方に突出した状態において、障害物が突出したエアバランス部材3の後部に衝突した場合、エアバランス部材3の後部は後方へ向かう回転を生じ同時にエアバランス部材3の前部は前方へ向かう回転を生じてプッシュプルケーブル5を衝撃的に牽引する。この場合においても、ばね部材13が伸びてかかる衝撃を緩衝するので、エアバランス部材3自体の大破や駆動装置7の損傷を防ぐことができる。
【0025】
次に、車両が低速で走行する場合や凹凸のある路面を走行する場合には、モータ17を駆動させて、ドラム機構を逆回転させてプッシュプルケーブル5のインナワイヤの他端部が引き込まれるように作動させる。この作動によって支持部材9の後部が牽引されてエアバランス部材3が回転軸11を中心に回転し、エアバランス部材3の後部が車体に収納され、エアバランス部材3が空気整流非作動位置に位置決めされる。
【0026】
なお、エアバランス部材は上記実施形態における形状のものに限定されず、例えば、図10及び図11に示すように、外側に下方に突出するリブ19を形成してもよい。このリブ19によって車両下方及び側方への整流効果を増加させることができる。
【0027】
また、請求項1乃至3について、本実施形態では車輪の前方に配置される可動スパッツとしたが、これに限定されず、例えば可動式のフロントスポイラのように車両の前面下部に取り付けられるものを含むものである。これにおいても車体を下方へ押し付ける力を生じさせる整流効果を生じることができ、駆動装置が上方に離間していることによって、水による駆動装置への悪影響を防ぐことができる。
【0028】
また、連結部材としてのケーブルにプッシュプルケーブルを使用したが、これに限定されず、例えばケーブルを一般的なワイヤケーブルとし、該ケーブルを曲げる必要のあるところにそれぞれローラを配する構成にしてもよい。このような構成の装置であってもワイヤケーブルの柔軟性を活かして、エアバランス部材と駆動装置とが離間した配置における自由度が向上し、エアバランス部材及び駆動装置それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。
【0029】
また、本実施形態においては一本のケーブル(プッシュプルケーブル)の中間部をドラム機構に巻回し、該ドラム機構を正逆に回転させることによりエアバランス部材を駆動させたが、これに限定するものではなく、例えば二本のケーブルの一方の一端部をエアバランス部材の前部に係止し、他方の一端部を同エアバランス部材の後部に係止し、それぞれのケーブルの他端部をドラム機構に互いに逆向になるように巻回するとともに該ドラム機構にそれぞれ係止するようにしてもよい。このように構成することによって、ドラム機構を正逆方向に回転させることで、エアバランス部材を駆動させることができる。このように半分の長さの二本のケーブルとすることによって、生産時における取扱性や組付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態における可動エアバランス装置の側面からの断面図。
【図2】空気整流作動位置における同断面図。
【図3】障害物の衝突時における同断面図。
【図4】エアバランス部材の収納状態(空気整流非作動位置)を示す正面図。
【図5】同側面図。
【図6】エアバランス部材の突出状態(空気整流作動位置)を示す正面図。
【図7】同側面図。
【図8】実施形態におけるエアバランス部材の正面図。
【図9】同下方からの斜視図。
【図10】他の実施形態におけるエアバランス部材の正面図。
【図11】同下方からの斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1…可動スパッツ(可動エアバランス装置)、3…エアバランス部材、5…プッシュプルケーブル(連結部材)、7…駆動装置、11…回転軸、13…ばね部材(弾性部材)、15…ドラム機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空気抵抗に影響を与える車両用の可動エアバランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、普及の著しいハイブリッド車は、高速時には主にエンジンによって駆動されて燃料が多く消費される。そのため、高速時に特に燃料の消費に影響が出やすい車体の空力特性の改善が大きな効果を生じる技術として要求されている。
【0003】
従来、車両の車輪前方にフロントスポイラやスパッツを配置し、これらを車速に応じて車体の下方に出没させ、車両走行時の空気の流れを整流し、車体を路面に押し付ける力を生じさせたり、車体に対する空気抵抗を低減したりすることが公知技術として知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すようなエアーバランスパネルが知られている。これは、特許文献1の第1図及び第2図に示すように、樹脂製バンパ11の下部に蛇腹のような可撓性部13を介して一体に成形されたフロントスポイラ(エアーバランスパネル12)を駆動手段14で上下動するようになっている。
【0005】
また、特許文献2に示すようなフロントスポイラ装置が知られている。これは、特許文献2の第1図乃至第4図に示すように、バンパ5の下方に4節リンク機構3によってフロントスポイラ本体2が車体27に支持され、フロントスポイラ本体2がバンパ5の前面位置に保持されたり、バンパ5の下方位置に保持されたり、作動機構4によって上下動するようになっている。
【特許文献1】実開昭61−186688号公報(第1頁及び第2頁、第1図及び第2図)
【特許文献2】特開昭62−128888号公報(第5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示されるような駆動手段14や特許文献2に示されるような作動機構4を駆動させる作動モータ22は、機構上エアーバランスパネル12やスポイラ本体2の近傍に位置することとなるため、必然的に車両の下部に配置される。そのため、車両使用時において水溜りなどを走行した場合、水濡れによる駆動源への影響、例えば水入りによる電気ショートや故障、を回避するため、防水機構など作動の信頼性を確保する構造が必須となり、結果的に質量増加、部品点数増、部品コストアップなど様々な課題を生じていた。
【0007】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、空力特性を改善するとともに簡単な構造で作動の信頼性を向上させる可動エアバランス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、 車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、該エアバランス部材に連結する連結部材と、該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、前記エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えたことである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記連結部材はケーブルであって、該ケーブルは前記エアバランス部材の前部及び後部に連結され、前記エアバランス部材は、前記前部及び前記後部の間に配置された軸線が車両の左右方向となる回転軸を有しており、前記駆動装置は、前記ケーブルが巻回されるとともに軸線回りに回転可能に支承されたドラム機構を有し、該ドラム機構を正逆に回転させることにより前記エアバランス部材の前記前部及び前記後部を交互に出し入れすることである。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記ケーブルの一端部が弾性部材を介して前記エアバランス部材の前部に係止されていることである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記エアバランス部材は、車両の走行時における空気の流れを下方に整流する下方制御面と、側方に整流する側方制御面とを備えたことである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明においては、エアバランス部材は必要な場合に駆動装置によって駆動されて空気整流作動位置に位置決めされ、車両の走行時における空気の流れを整流する。エアバランス部材は車輪の前方やバンパの下部に組み付けられるため、車体の下部の配置となり、雨天での走行時には水を被ったり、水没したりする。しかし、このエアバランス部材を駆動させる駆動装置がエアバランス部材の上方に離間して配置されているので、水溜りを走行した場合でも、例えば電気的なショート、機構上の故障といった水による駆動装置への悪影響を防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明においては、連結部材が柔軟材料であるケーブルであるため、エアバランス部材と駆動装置とを離間した配置における自由度が向上し、エアバランス部材及び駆動装置それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。またケーブルがエアバランス部材の前部及び後部に係止され、エアバランス部材の回転軸が前記前部及び前記後部の間に配されているので、力点(ケーブルがエアバランス部材に係止される点)から回転中心までの距離(モーメントアーム)が十分に取れるとともに力の配分のバランスが良く、小さな力でエアバランス部材をスムーズに可動させることができる。駆動においては、ケーブルが巻回されたドラム機構を正逆に回転させることによりケーブルに連動してエアバランス部材の前部及び後部を交互に出し入れするので、簡単な駆動装置でエアバランス部材の安定した作動を実現することができる。
【0014】
請求項3に係る発明においては、エアバランス部材の前部にケーブルの一端部が弾性部材を介して係止されている。そのため、エアバランス部材の突出する後部に障害物が衝突した場合において、エアバランス部材の後部は後方へ向かう回転を生じ同時にエアバランス部材の前部は前方へ向かう回転を生じてケーブルを衝撃的に牽引するが、弾性部材が伸びてその衝撃を緩衝するので、エアバランス部材自体の大破や駆動装置の損傷を防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る発明においては、走行時において空気の流れを下方へ整流することにより車体に対する浮力の発生と乱流の発生を防止し、同時に側方へ整流することにより、例えばホイールハウジングへの巻き込みによる乱流の発生を防止して空気抵抗の低減を効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る可動エアバランス装置を可動スパッツに使用した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は可動スパッツの構造を示す断面図であり、図2は同突出した状態を示す断面図である。
【0017】
本実施形態における可動スパッツ1は、車両の走行時に空気の整流を行うエアバランス部材3と、連結部としてのプッシュプルケーブル5と、前記エアバランス部材3の上方に離間した位置にある駆動装置7とから構成されている。
【0018】
エアバランス部材3は鋼板製又は樹脂製の略船形に形成された板材であり、図1及び図2に示すように、車輪8の前方であってバンパ10の後方に配設されている。このエアバランス部材3は、図8及び図9に示すように、車両の走行時に空気の流れを下方に整流する下方制御面3aと、空気の流れを側方に整流する側方制御面3bとを有している。エアバランス部材3の上面にはエアバランス部材3の後部から前方に突出させて延在する支持部材9が設けられ、支持部材9の前部よりの中央部には車両の左右方向に軸線を有する回転軸11が貫設固着されている。回転軸11はエアバランス部材3の側面を貫通するとともに車体に設けられた図略の軸受に回転自在に軸支され、エアバランス部材3はこの回転軸11を中心に所定の範囲で正逆回転可能になっている。支持部材9の先端部には弾性部材としてのばね部材13が一端部において係止され、ばね部材13の他端部にはプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部が係止されている。支持部材9の後部にはプッシュプルケーブル5のインナワイヤの他端部が回動可能に係止されている。プッシュプルケーブル5のインナワイヤが前記ばね部材13に係止される側のアウタチューブの一端部は、図示はしないが、前記ばね部材13の近傍において車体に固定され、同アウタチューブの他端部は前記駆動装置7の近傍の車体に固定されている。また、プッシュプルケーブル5のインナワイヤが前記支持部材9の後部に係止される側のアウタチューブの一端部は、図示はしないが、駆動装置7の近傍において車体に固定され、同アウタチューブの他端部は支持部材9の後部近傍において車体に固定されている。
【0019】
エアバランス部材3から離間した位置であってホイールハウジング14の上方には前記駆動装置7が配設され、駆動装置7のドラム機構15には前記プッシュプルケーブル5のインナワイヤの中間部が巻回されている。プッシュプルケーブル5のインナワイヤはドラム機構15にその一部が係止され、該インナワイヤとドラムの周囲面との間でずれを生じないようになっている。ドラム機構15は図略のギアを介してモータ17に連動して正逆自在に回転するように構成され、正逆回転することによりプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部及び他端部を交互に出し入れする。
【0020】
このように柔軟性のあるプッシュプルケーブルを使用することで、エアバランス部材3と駆動装置7とが離間した状態で自由に配置することができ、エアバランス部材3及び駆動装置7それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。
【0021】
次に、以上の構成の可動スパッツの作動について図面に基づき以下に説明する。まず、車両が停止している時や車両が低速で走行する時には図1,図4及び図5に示すように、エアバランス部材3の後部は車体の底部に収容され、空気整流非作動位置に位置決めされている。このようにエアバランス部材3を車体の底部に収納することで、路面に凹凸がある場合や石が転がっているような路において、路面の凸部や石との衝突でエアバランス部材3が損傷するのを防ぐことができる。また、このエアバランス部材3を駆動させる駆動装置7がエアバランス部材3の上方に離間して配置されているので、車両が水溜りを走行した場合でも、例えば電気的なショート、機構上の故障といった水による駆動装置7への悪影響を防止することができる。そのため、厳格な防水構造にしないで簡単な構造の駆動装置7とすることができる。
【0022】
次に、例えば高速道路のように路面が整備されて凹凸が少ない道路を、車両が高速で走行する時には、モータ17を駆動させ、ドラム機構を回転させてプッシュプルケーブル5のインナワイヤの一端部が引き込まれるように作動させる。この作動によって支持部材9の先端部が牽引されることによりエアバランス部材3が回転軸11を中心に回転し、エアバランス部材3の後部が車体の下方に突出され、エアバランス部材3が空気整流作動位置に位置決めされる。なお、車両の走行中には、エアバランス部材3を突出させる方向に働く負圧が生じているので、プッシュプルケーブル5と支持部材9の先端部との間にばね部材13が介在していても、同ケーブル5を牽引の際にばね部材13だけが伸びて、エアバランス部材3が回転しないという不都合は生じない。
【0023】
この場合、エアバランス部材3は、図2,図6及び図7に示すように、車輪8の前方に突出して、車輪8の厚み方向の内側の一部を覆うように配置されている。このように車輪8の前方の全部を覆うものでなくても、側方制御面3bによって車輪8の外側へ空気の流れを整流するため、車輪8に空気の流れが当たって生じる空気抵抗やホイ―ルハウジング14に空気を巻き込んで生じる乱流の発生を低減することができる。
【0024】
次に図3に示すように、エアバランス部材3が車体の下方に突出した状態において、障害物が突出したエアバランス部材3の後部に衝突した場合、エアバランス部材3の後部は後方へ向かう回転を生じ同時にエアバランス部材3の前部は前方へ向かう回転を生じてプッシュプルケーブル5を衝撃的に牽引する。この場合においても、ばね部材13が伸びてかかる衝撃を緩衝するので、エアバランス部材3自体の大破や駆動装置7の損傷を防ぐことができる。
【0025】
次に、車両が低速で走行する場合や凹凸のある路面を走行する場合には、モータ17を駆動させて、ドラム機構を逆回転させてプッシュプルケーブル5のインナワイヤの他端部が引き込まれるように作動させる。この作動によって支持部材9の後部が牽引されてエアバランス部材3が回転軸11を中心に回転し、エアバランス部材3の後部が車体に収納され、エアバランス部材3が空気整流非作動位置に位置決めされる。
【0026】
なお、エアバランス部材は上記実施形態における形状のものに限定されず、例えば、図10及び図11に示すように、外側に下方に突出するリブ19を形成してもよい。このリブ19によって車両下方及び側方への整流効果を増加させることができる。
【0027】
また、請求項1乃至3について、本実施形態では車輪の前方に配置される可動スパッツとしたが、これに限定されず、例えば可動式のフロントスポイラのように車両の前面下部に取り付けられるものを含むものである。これにおいても車体を下方へ押し付ける力を生じさせる整流効果を生じることができ、駆動装置が上方に離間していることによって、水による駆動装置への悪影響を防ぐことができる。
【0028】
また、連結部材としてのケーブルにプッシュプルケーブルを使用したが、これに限定されず、例えばケーブルを一般的なワイヤケーブルとし、該ケーブルを曲げる必要のあるところにそれぞれローラを配する構成にしてもよい。このような構成の装置であってもワイヤケーブルの柔軟性を活かして、エアバランス部材と駆動装置とが離間した配置における自由度が向上し、エアバランス部材及び駆動装置それぞれについて組み付け易さを考慮した配置が可能となる。
【0029】
また、本実施形態においては一本のケーブル(プッシュプルケーブル)の中間部をドラム機構に巻回し、該ドラム機構を正逆に回転させることによりエアバランス部材を駆動させたが、これに限定するものではなく、例えば二本のケーブルの一方の一端部をエアバランス部材の前部に係止し、他方の一端部を同エアバランス部材の後部に係止し、それぞれのケーブルの他端部をドラム機構に互いに逆向になるように巻回するとともに該ドラム機構にそれぞれ係止するようにしてもよい。このように構成することによって、ドラム機構を正逆方向に回転させることで、エアバランス部材を駆動させることができる。このように半分の長さの二本のケーブルとすることによって、生産時における取扱性や組付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態における可動エアバランス装置の側面からの断面図。
【図2】空気整流作動位置における同断面図。
【図3】障害物の衝突時における同断面図。
【図4】エアバランス部材の収納状態(空気整流非作動位置)を示す正面図。
【図5】同側面図。
【図6】エアバランス部材の突出状態(空気整流作動位置)を示す正面図。
【図7】同側面図。
【図8】実施形態におけるエアバランス部材の正面図。
【図9】同下方からの斜視図。
【図10】他の実施形態におけるエアバランス部材の正面図。
【図11】同下方からの斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1…可動スパッツ(可動エアバランス装置)、3…エアバランス部材、5…プッシュプルケーブル(連結部材)、7…駆動装置、11…回転軸、13…ばね部材(弾性部材)、15…ドラム機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、
車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、
該エアバランス部材に連結する連結部材と、
該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、前記エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えたことを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項2】
請求項1において、前記連結部材はケーブルであって、該ケーブルは前記エアバランス部材の前部及び後部に連結され、
前記エアバランス部材は、前記前部及び前記後部の間に配置された軸線が車両の左右方向となる回転軸を有しており、
前記駆動装置は、前記ケーブルが巻回されるとともに軸線回りに回転可能に支承されたドラム機構を有し、該ドラム機構を正逆に回転させることにより前記エアバランス部材の前記前部及び前記後部を交互に出し入れすることを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ケーブルの一端部が弾性部材を介して前記エアバランス部材の前部に係止されていることを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記エアバランス部材は、車両の走行時における空気の流れを下方に整流する下方制御面と、側方に整流する側方制御面とを備えたことを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項1】
車両走行時に車両に対する空気の流れを整流するためのエアバランス装置において、
車両の車輪の前方に或いは車体の前面下部に装着され、車両走行時に車両に当たる空気の流れを整流するエアバランス部材と、
該エアバランス部材に連結する連結部材と、
該連結部材に連結して前記エアバランス部材を空気整流作動位置と空気整流非作動位置との間を駆動させる駆動装置であって、前記エアバランス部材より上方に離間して配置される駆動装置とを備えたことを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項2】
請求項1において、前記連結部材はケーブルであって、該ケーブルは前記エアバランス部材の前部及び後部に連結され、
前記エアバランス部材は、前記前部及び前記後部の間に配置された軸線が車両の左右方向となる回転軸を有しており、
前記駆動装置は、前記ケーブルが巻回されるとともに軸線回りに回転可能に支承されたドラム機構を有し、該ドラム機構を正逆に回転させることにより前記エアバランス部材の前記前部及び前記後部を交互に出し入れすることを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ケーブルの一端部が弾性部材を介して前記エアバランス部材の前部に係止されていることを特徴とする可動エアバランス装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記エアバランス部材は、車両の走行時における空気の流れを下方に整流する下方制御面と、側方に整流する側方制御面とを備えたことを特徴とする可動エアバランス装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−22149(P2007−22149A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203280(P2005−203280)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
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