説明

可動体のアシスト装置及びハウジング

【課題】収容部の寸法誤差等の影響を回避して高い位置精度を維持する。
【解決手段】実施形態にかかるアシスト装置のハウジングは、支持体と前記支持体に相対的に第1方向にスライド移動する可動体とのいずれか一方側に形成された収容部に設けられるアシスト装置のハウジングであって、前記第1方向と交差する第2方向に突出し前記収容部の支持面上に支持される支持部と、前記支持面から離間する離間部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の可動体の動作を補助する可動体のアシスト装置及びハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸等の可動体の動作を補助するため、付勢機構や制動機構を用いて強制移動や緩衝をする可動体のアシスト装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種のアシスト装置では、例えば引き戸側にハウジングが埋設されるとともに、このハウジングにスライド可能な当接体が納められている。また、戸枠側には当接体に捕捉される当受体が設けられている。さらにハウジング内には、当接体に連結する制動機構としてのピストンダンパや付勢機構としての引張りコイルばねが保持されていて、当接体のスライド動作を緩衝及び補助するようになっている。ハウジングは例えば上面開口の筐体で構成されスライド方向に沿う細長形状を成し、引き戸の上端に形成された収容部内にはめ込まれている。一般にハウジングの下面は平坦に構成され、ハウジングの下面全体が溝の底部に支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−309088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、ハウジングの下面は平坦に構成され、ハウジングの下面全体が溝の底部に支持されるようになっているため、ハウジングの下面と収容部の支持面において高い寸法精度が要求される。気温、湿度、加工精度の影響により寸法のばらつきが発生した場合や、加工時の屑や塵が存在する場合に、収容部にハウジングを取り付けた際に高い位置精度を維持することが困難となる。
【0005】
そこで本発明は、単純な構成で高い位置精度を維持することが出来る可動体のアシスト装置及びハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態にかかるアシスト装置のハウジングは、支持体と前記支持体に相対的に第1方向にスライド移動する可動体とのいずれか一方側に形成された収容部に設けられるアシスト装置のハウジングであって、前記第1方向と交差する第2方向に突出し前記収容部の支持面上に支持される支持部と、前記支持面から離間する離間部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収容部の寸法誤差等の影響を回避して高い位置精度を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかるアシスト装置を備えた引き戸の動作を示す説明図。
【図2】本発明の一実施形態にかかるアシスト装置を備えた引き戸の動作を示す説明図。
【図3】同実施形態にかかるアシストユニットの斜視図。
【図4】同実施形態にかかるアシスト装置の側面図。
【図5】同実施形態にかかるアシストユニットの平面図。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるハウジングの説明図。
【図7】本発明の第2実施形態にかかるハウジングの説明図。
【図8】本発明の第3実施形態にかかるハウジングの説明図。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるハウジングの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態かかる可動体のアシスト装置1について、図1乃至図5を参照して説明する。各図中矢印X,Y,Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。ここでは例えばX軸はスライド方向(第1方向)に、Y軸は幅方向(第3方向)に、Z軸は上下方向(第2方向)に、それぞれ沿っている。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0010】
図1乃至図5に示すように、アシスト装置1は、可動体及び支持体のうち一方に設けられる当受体としてのストライカ10と、可動体及び支持体のうち他方に設けられるアシストユニット20と、を備えて構成される。
【0011】
本実施形態において、例えば支持体は戸枠F、可動体は引き戸Mであり、可動体としての引き戸Mにアシストユニット20が設けられ、支持体としての戸枠Fにストライカ10が設けられる場合について例示する。
【0012】
図1に示すように、戸枠Fはスライド方向に沿う引き戸溝F4が形成されており、この引き戸溝F4に引き戸Mがスライド可能に収められている。図1に示すように引き戸Mが開いて戸先側の戸枠F2に接していない状態を第1状態、図2に示すように引き戸Mが閉じて戸先側の移動終了位置に移動されきって戸枠F2に当接した状態を第2状態とする。
【0013】
引き戸Mは例えば例えば天然木材や圧縮材等の木質系で矩形の板状に構成され、その上端部には、アシストユニット20を収める収容部としての溝M1が形成されている。溝M1はハウジング21を支持する支持面となる底部Maと、側部Mbと、を有して構成される。溝M1は、スライド方向に延びる細長形状を成し、そのスライド方向一端側は解放され、他端側は円弧状に形成され閉じている。また溝M1は側面視において細長い矩形状に形成されている。この溝M1に後述するハウジング21が上方からはめ込まれ、支持面としての底部Ma上にハウジング21が支持される。
【0014】
アシスト装置1は、戸枠Fに設けられたストライカ10と、引き戸Mの溝M1に設けられたアシストユニット20と、を備える。
【0015】
アシストユニット20は、引き戸Mの上端部に設けられたハウジング21と、ハウジング21のスライド方向一方側(図1中左側)の端部に収められ待機位置と引込位置との間でスライド移動可能に支持された当接体としてのラッチ22と、ラッチ22をハウジングに対してスライド方向他方側(図1中右側)に付勢する付勢機構23と、ラッチ22に連結されラッチ22のスライド移動に抵抗力を付与して緩衝する制動機構24と、を備えている。
【0016】
戸枠Fの上端の引き戸溝F4には、左端から一定の位置にストライカ10が設けられている。ストライカ10は、上枠F1に取り付けられる板状の取付部材11と、上枠F1から下方に突出する板状の係合部材12と、を有して構成されている。この係合部材12がラッチ22に捕捉されることにより、ストライカ10がラッチ22と係合し、一体となってハウジング21に対して相対移動する。この相対移動に伴って引き戸Mが戸枠Fに対して移動する。
【0017】
図1乃至5に示すようにハウジング21は、上面開口でスライド方向に細長い箱状を成している。ハウジング21は、Y方向に対向する一対の側壁31、31と、X方向両端の第1支持部32及び第2支持部33を有し、例えば樹脂成形等により一体に形成されている。一対の側壁31,31の間にラッチ22がスライド移動可能に収まるようになっている。ハウジング21の支持部32,33の下面32a,33aは、側壁31,31の下縁31aよりも下方に突出し、支持面Maに支持される。
【0018】
一方、側壁部31,31の下縁31aは支持部32,33の下縁32a,33aよりも上方に退避して凹み形成され、支持面Maから浮いて離間する離間部35を形成している。ここでは、スライド方向中央部のZ方向の寸法h1が、スライド方向両端部のZ方向の寸法h2,h3よりも小さくなるように構成されている。
【0019】
また、図5に示すように、支持部32,33はY方向において側壁部31,31よりも幅が大きい膨大部34を形成する。すなわち、スライド方向中央部のハウジング21のY方向の寸法w1が、スライド方向両端の支持部32,33のY方向の寸法w2、w3よりも小さくなるように構成されている。この膨大部34は、薄い板状の側壁部31,31よりも剛性が高く構成されている。
【0020】
ハウジング21の側壁31,31にはスリット27が設けられている。このスリット27に係合してラッチ22がスリット27に沿ってハウジング21に移動可能に支持されている。ハウジング21の下部には付勢機構23として例えば引張りコイルばね41が設けられている。引張りコイルばね41は、一端がラッチ22に連結され、他端がハウジング21に固定され、ラッチ22をハウジング21に対してスライド方向他端側に付勢する。
【0021】
制動機構24は、ハウジング21内に設けられたピストンダンパ50を有して構成される。ピストンダンパ50は、内部に流体が封入されたシリンダ51と、シリンダ51内で往復動するピストンと、このピストンに連結されたピストンロッド52とを有している。制動機構24は、シリンダ51内に納められたピストンの動作にシリンダ51内の流体の流体対向を作用させることで、シリンダ51もしくはピストンロッド52の押し込み及び引張り動作に対して抵抗力を付与してラッチ22のハウジング21に対するスライド動作を制動する。なおシリンダ51に封入される流体としては典型的にはシリコンオイルなどの粘性流体が用いられるがこれに限られず、気体を用いてもよい。
【0022】
上記のように構成されたアシスト装置1は、図1に示すように引き戸Mがストライカ10に到達していないニュートラルな第1状態において、ラッチ22はハウジング21の端部の待機位置に保持されている。この第1状態から操作者が引き戸Mを左側の戸当りF1に向かって移動させ、引き戸Mが第1の所定位置に至ると、ラッチ22がストライカ10に当接し、ストライカ10に係合する。そして、引張コイルばね41によりハウジング21及び引き戸Mに対して右方にラッチ22が相対移動させられる。この移動に伴い支持体F及びストライカ10に対して引き戸M及びハウジング21が左側に相対的に強制移動させられる。このとき制動機構24により抵抗力が付与され、緩衝しながらゆっくり自動的に引き戸Mが閉まる方向に移動することとなる。
【0023】
一方、図2に示すように引き戸Mが左側の終了位置に移動し切った第2状態から引き戸Mを右側に移動させる操作をすると、引張コイルばね41の付勢力に抗してラッチ22がストライカ10を捕捉したまま引き戸M及びハウジング21に対して左方に相対移動しながら、引き戸Mが右側に移動する。所定位置に至ると、ラッチ22とストライカ10との係合が解除されると同時にラッチ22は再びハウジング21の端部の待機位置に保持される。この後の引き戸Mの移動は引張コイルばね41の付勢力から開放される。
【0024】
本実施形態に係るアシスト装置1によれば、ハウジング21はその一部に形成された支持部32,33において支持面である底部Maに支持されて、中央には支持面である底部Maから離間する離間部35を形成するという単純な構成により、離間部35における寸法の許容範囲を広く設定できる。このため、単純な構成で引き戸の気温、湿度、加工精度により寸法のばらつきが生じた場合や、加工の際の木屑などが底部Maに存在する場合など、M1の支持面の寸法に誤差があっても、高い位置精度でハウジング21を設置することが出来、寸法誤差の許容範囲を広く設定できる。また、薄い板状に構成され剛性の低い中央部位ではなく、剛性が高い両端部分を支持部32,33としたことにより、寸法誤差の影響を回避することができ、高い取付精度を維持することが出来る。
【0025】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。図6は本実施形態に係る支持部33を拡大した側面図であり、図7は平面図である。なお、本実施形態において、突起36を設けた点以外については、上記第1実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0026】
本実施形態では、膨大部34を構成する支持部33の外面に、X方向に突出する突起36が形成されている。突起36は、例えば半球状に構成され、樹脂成型によりハウジング21に一体に形成されている。この突起36の頂部36aが、引き戸Mの溝M1の壁に当接されている。
【0027】
本実施形態に係るアシスト装置1においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに突起36を設けたことによりハウジング21を上方から溝M1内に挿入して設置する際の抵抗が小さくなるので、設置作業が容易となる。また、スライド方向においても溝M1やハウジング21の寸法誤差の影響を回避してより高精度に位置決めできるという効果が得られる。
【0028】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。図8は本実施形態に係る支持部33を拡大した側面図であり、図9は平面図である。なお、本実施形態において、突起37の構造以外については、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、共通する説明を省略する。
【0029】
本実施形態では、膨大部34を構成する支持部33の外面に、X方向に突出する突起37が形成されている。突起37は、Z方向に並ぶ3段の突条を有して構成され、樹脂成型によりハウジング21に一体に形成されている。この突起37の3段の頂部37a,37b,37cが引き戸Mの溝M1の壁に当接されている。突起37の3段の頂部37a,37b,37cは上方に偏って突出する返し部を構成している。この返し形状により、ハウジング21が上方から下方に向かって移動して溝M1に挿入される際の抵抗よりも、ハウジング21が下方から上方に向かって移動して溝M1から抜け出る際の抵抗が大きくなる。このため、ハウジング21を設置しやすく、またハウジング21が溝M1から抜け難くなっている。
【0030】
本実施形態に係るアシスト装置1においても上記第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が得られる。さらに突起37は支持面Maから離れる上方に向かって偏った頂部37a,37b,37cを有する返し形状としたことにより、溝M1内に挿入して設置する際の抵抗をより小さくするとともに、位置ずれを防止できるという効果が得られる。
【0031】
なお、上記実施形態では支持面となる底部Maを平面状としたが、支持面に段差がある場合にあっても本発明を適用できる。この場合にも支持面に接する支持部と、支持面から浮いて離間する離間部を設けることで上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0032】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。また、各部の具体的構成や材質等は上記実施形態に例示したものに限られるものではなく適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
F…戸枠(支持体)、M…引き戸(可動体)、F4…引き戸溝、M1…溝(収容部)、
Ma…底部(支持面)、Mb…側部、1…アシスト装置、10…ストライカ、
11…取付部材、12…係合部材、20…アシストユニット、21…ハウジング、
22…ラッチ、23…付勢機構、24…制動機構、27…スリット、31.31…側壁、31a…下縁、32.33…支持部、32a.33a…下面、34…膨大部、
35…離間部、36…突起、36a…頂部、37…突起、37a.37b.37c…頂部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と前記支持体に相対的に第1方向にスライド移動する可動体とのいずれか一方側に形成された収容部に設けられるアシスト装置のハウジングであって、
前記第1方向と交差する第2方向に突出し前記収容部の支持面上に支持される支持部と、前記支持面から離間する離間部と、を有することを特徴とするアシスト装置のハウジング。
【請求項2】
前記支持部は前記第1方向の両端部に設けられ、前記離間部は前記第1方向の中央部において前記支持面から離間するように凹み形成され、
前記支持部は前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に突出形成された膨大部を構成することを特徴とする請求項1記載のアシスト装置のハウジング。
【請求項3】
前記支持部は、前記離間部よりも剛性が高いことを特徴とする請求項1または2記載の可動体のアシスト装置。
【請求項4】
前記支持部の外面には第1方向において外方に突出する突起が形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のアシスト装置のハウジング。
【請求項5】
前記突起は、前記第2方向において支持面から離れる方向に向かって突出する頂部を有し、返し形状を構成することを特徴とする請求項のいずれか記載のアシスト装置のハウジング。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか記載のハウジングと、
前記支持体と前記可動体とのいずれか他方側に設けられる当受体と、
前記当受体と係合及び係合解除可能であり、前記ハウジングに対して第1位置と第2位置に至る移動経路に沿って移動可能に設けられた当接体と、を備えたことを特徴とする可動体のアシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−193491(P2012−193491A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55894(P2011−55894)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)