説明

可動体のアシスト装置

【課題】可動体のアシスト装置において、強制的に移動されて移動終了位置に至った可動体の復動操作を、できるだけスムースに行えるようにする。
【解決手段】強制移動機構1は、待機位置にあるラッチ体10に引き込み位置に向けた付勢力を作用させる第一付勢体11を備えている。待機位置に保持されたラッチ体10に所定位置でストライカ体Sが捕捉されこの捕捉を契機としたこの保持の解除による引き込み位置へのラッチ体10の相対移動により可動体Mは移動終了位置まで移動される。制動機構2は、強制移動機構1を構成するラッチ体10への当接部20を備え、ラッチ体10の引き込み位置への移動に伴なうこの当接部20の後退に抵抗を作用させる構成となっていると共に、この当接部20を前進方向に付勢する第二付勢体21を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の可動体を、その所定位置から移動終了位置まで強制的に移動させると共に、この強制的な移動に制動力を作用させる装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるピストンダンパーを利用した引き戸の動作補助及び緩衝機構(アシスト装置)として、特許文献1に示されるものがある。この機構にあっては、戸枠の上部の左右にそれぞれ備えられた当受体に対する当接体が、ピストンロッドの先端とシリンダーの後端にそれぞれ備えられていると共に、両当接体の間隔を常時狭める向きに付勢する引っ張りコイルバネを備えている。引き戸が戸枠の左側にも右側にも閉めきられていないニュートラルな位置にあるとき、両当接体はかかるバネを最も引き延ばした状態で保持体により磁力により保持されている。このニュートラルな位置から引き戸を左側に移動させると、その途中で当接体は当受体に突き当たりこれに吸着され、保持体による保持が解かれる。この保持が解かれると左側の当接体は前記バネの作用により右側に相対的に移動され、この移動寸法分引き戸は左側に強制的に移動される。このときピストンダンパーのピストンが押し込まれるのでこの移動にはピストンダンパー内の流体抵抗に基づく制動力が作用される。左側に移動されきった引き戸を開き操作すると、当受体に吸着されている当接体は前記バネを引き延ばしながら左側に相対的に移動され、保持体に再び吸着保持されると同時に、当受体の吸着捕捉を解く。これにより、引き戸の右側への移動がフリーとなる。前記ニュートラルな位置から引き戸を右側に移動させるときも、右側の当接体、当受体、保持体を介して同様の動作がなされる。
【0003】
しかるに、この従来の動作補助及び緩衝機構にあっては、戸枠の左側又は右側に閉めきられた引き戸を開くときには、前記バネを引き延ばすと共に、前記ピストンダンパー中の流体抵抗を蒙りながらこれを構成するピストンを引出方向に移動させることを要する。バネの抵抗は一様であるが、流体抵抗はピストン、つまりは、引き戸を開く速さに比例して大きくなるため、従来の動作補助及び緩衝機構は、その構造上、引き戸の開放についてはそのスムースな開放操作を妨げるように機能してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3984645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の可動体のアシスト装置において、強制的に移動されて移動終了位置に至った可動体の復動操作を、できるだけスムースに行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、可動体のアシスト装置を、支持体及びこの支持体にスライド移動可能に支持された可動体のいずれか一方に備えられると共に、これらの他方に備えられるストライカ体を、可動体が所定位置に至ったときに捕捉してこの可動体を移動終了位置まで強制的に移動させる装置であって、
強制移動機構と制動機構とを備えており、
強制移動機構は、装置基体に待機位置と引き込み位置とに亘るスライド移動可能に支持されるラッチ体と、待機位置にあるラッチ体に引き込み位置に向けた付勢力を作用させる第一付勢体とを備えており、待機位置に保持されたラッチ体に前記所定位置でストライカ体が捕捉されこの捕捉を契機としたこの保持の解除による引き込み位置へのラッチ体の移動又は相対移動により可動体は移動終了位置まで移動され、可動体の復動時は前記所定位置でラッチ体はストライカ体を解放させると共に待機位置に再び保持されるようになっており、
制動機構は、強制移動機構を構成するラッチ体への当接部を備え、ラッチ体の引き込み位置への移動に伴なうこの当接部の後退に抵抗を作用させる構成となっていると共に、この当接部を前進方向に付勢する第二付勢体を備えているものとした。
【0007】
可動体が所定位置から移動終了位置に向けて強制的に移動されるとき、ストライカ体を捕捉したラッチ体は第一付勢体の付勢により引き込み位置に相対的に移動され、これにより当接部は後退されるので、可動体のこの強制的な移動には制動機構の流体抵抗が制動力として作用される。このとき、前記当接部は後退されるところ第二付勢体はこの当接部を前進方向に付勢させることから、この第二付勢体の付勢力も可動体の強制的な移動に対する制動力として作用される。したがって、移動終了位置にある可動体は第一付勢体への蓄勢をもたらす大きさの力をもって復動させることが必要となるが、この可動体の復動時にはラッチ体が待機位置に向けて移動した分第二付勢体の付勢により当接部は前進されるので、可動体のこの復動操作には制動機構の流体抵抗が作用されることはない。
【0008】
前記強制移動機構を二つの備え、この二つの強制移動機構を、ラッチ体の後端側を向き合わせるようにして配すると共に、
この二つの強制移動機構のラッチ体の後端間に、一方の強制移動機構のラッチ体の後端に当接部を当接させ、かつ、他方の強制移動機構のラッチ体の後端にこの当接部に対向する対向部を当接又は接続させるように制動機構を介装させてなり、
この当接部と対向部との間の間隔を狭めるこの当接部の後退又は相対的な後退に制動機構の流体抵抗が作用されるようにしておくこともある。
【0009】
このようにした場合、可動体を、一方側にスライド移動させたときも、これとは反対の他方側にスライド移動させたときにも、所定位置から先では前記流体抵抗を通じて第一付勢体の付勢による強制的な移動に制動力を作用させることができる。
【0010】
前記制動機構における抵抗発生体を、ピストンの後退又は相対的な後退にシリンダー内の流体の流体抵抗を作用させるダンパーとしていると共に、このダンパーにおけるピストンロッドの突きだし端部又はこのピストンロッドの突きだし側に対向するシリンダーの外端部に当接部を形成させておくこともある。
【0011】
この場合、第二付勢体を、シリンダーの内側においてこのシリンダーの内奥部とピストンとの間、又はシリンダーの外側においてこのシリンダーとピストンロッドの突きだし端部に接続されたラッチ体との間に介在させておくこともある。
【0012】
このようにした場合、強制移動機構を構成するラッチ体のストライカ体を捕捉した後の引き込み位置への移動に伴って前記ピストンを移動させることでこの移動、さらには可動体の移動にかかるダンパーの制動力を作用させることができる。
【0013】
また、第二付勢体を前記のように介在させた場合、可動体の復動時には、かかる第二付勢体によりピストンを後退前の位置に復帰させて、待機位置に再び保持されたラッチ体の後端に制動機構の当接部を再び当接又は近接させることができる。
【0014】
前記制動機構における抵抗発生体を、ローターの回転又は相対的な回転にステーター内の流体の流体抵抗を作用させるダンパーとした場合でも、上記と同様の機能を発揮させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかる可動体のアシスト装置によれば、可動体の往動時には所定位置からこの可動体を強制的に移動させ且つこの移動に制動力を作用させることができると共に、移動終了位置からの可動体の復動操作には制動機構が作用しないようにして、この復動をできるだけスムースに行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1はアシスト装置の備えられた引き戸(可動体)がニュートラルな位置にある状態を示した正面構成図である。
【図2】図2はアシスト装置の備えられた引き戸(可動体)が図1の状態から右側の移動終了位置まで移動されきつた状態を示した正面構成図である。
【図3】図3はアシスト装置の備えられた引き戸(可動体)が図1の状態から左側の移動終了位置まで移動されきつた状態を示した正面構成図である。
【図4】図4はアシスト装置の斜視構成図である。
【図5】図5はアシスト装置の縦断面構成図であり、左右のラッチ体はいずれも待機位置にある。
【図6】図6はアシスト装置の一部破断平面構成図であり、左右のラッチ体はいずれも待機位置にある。
【図7】図7はラッチ体の一部破断斜視構成図である。
【図8】図8はストライカ体とラッチ体の斜視構成図である。
【図9】図9は装置基体の左端の要部斜視構成図である。
【図10】図10はアシスト装置の左端の横断面構成図であり、ラッチ体は待機位置にある。
【図11】図11はアシスト装置の左端の横断面構成図であり、ラッチ体は引き込み位置に向けた相対的な移動の過程にある。
【図12】図12は図1〜図11に示されるアシスト装置の構成の一部を変更した例の一部破断斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる可動体Mのアシスト装置Aは、各種の可動体Mを、その所定位置から移動終了位置まで強制的に移動させると共に、この強制的な移動に制動力を作用させるものである。すなわち、かかるアシスト装置Aは、強制移動機構1と、制動機構2とを備えている。そして、かかるアシスト装置Aは、かかる可動体Mの側、または、この可動体Mをスライド移動可能に支持する支持体Fの側に備えられ用いられる。可動体M及び支持体Fのうち、アシスト装置Aの備えられない側には、ストライカ体Sが備えられる。
【0018】
図示の例では、アシスト装置Aは、強制移動機構1と制動機構2とを、上面開口の細長いケース状をなす装置基体3に納めて構成されている。装置基体3の長さ方向は可動体Mのスライド移動方向xと一致している。この実施の形態にあっては、アシスト装置Aによって可動体Mとしての引き戸Maの移動を補助するようにした例を示している。図示の例では、可動体Mとしての引き戸Maの上端部にアシスト装置Aを備えさせている。そして、この引き戸Maの上端部を支持する支持体Fとしての戸枠Faの上部引き戸溝Fb内に前記ストライカ体Sを備えさている。
【0019】
強制移動機構1は、装置基体3に待機位置と引き込み位置とに亘るスライド移動可能に支持されるラッチ体10と、待機位置にあるラッチ体10に引き込み位置に向けた付勢力を作用させる第一付勢体11とを備えている。そして、待機位置に保持されたラッチ体10に前記所定位置でストライカ体Sが捕捉されこの捕捉を契機としたこの保持の解除による引き込み位置へのラッチ体10の第一付勢体11による相対移動により可動体Mは移動終了位置まで移動されるようになっている。それと共に、可動体Mの復動時は前記所定位置でラッチ体10はストライカ体Sを解放させると共に待機位置に再び保持されるようになっている。
【0020】
この実施の形態にあっては、可動体Mとしての引き戸Maの上端部にこの上端部に亘って溝Mbが形成されていると共に、この溝Mbの長さ方向略中程の位置に前記装置基体3を納めることにより、この引き戸Maの左右方向略中程の位置にアシスト装置Aが配置されている。
【0021】
また、この実施の形態にあっては、二つの強制移動機構1、1と、一つの制動機構2とから、アシスト装置Aを構成させている。制動機構2は、二つの強制移動機構1、1、図示の例では、左右の強制移動機構1、1の間に配されている。また、二つの強制移動機構1、1は、これを構成するラッチ体10の後端100側を向き合わせるようにして配されている。一方、ストライカ体Sは、前記上部引き戸溝Fb内に、戸枠Faの左右方向略中程の位置を挟んだ両側にそれぞれ一つづつ備えられている。戸枠Faの左右方向の寸法は、引き戸Maの略二枚分の寸法となっている。引き戸Maの右端と戸枠Faの右側の戸当たりFcとの間と、引き戸Maの左端と戸枠Faの左側の戸当たりFcとの間に、等しい間隔が開けられている状態(ニュートラルな位置に引き戸Maがある状態)では、引き戸Maは左右のストライカ体Sの間に位置され、左右の強制移動機構1のラッチ体10はいずれも待機位置に保持されている。(図1)ストライカ体Sは引き戸Maの移動により、前記溝Mbを通じてアシスト装置A内に入り込み、また、この溝Mbを通じて引き戸Maから外れ出るようになっている。
【0022】
右側の強制移動機構1のラッチ体10は、待機位置において装置基体3の右端に保持されると共に、引き戸Maの右側への移動時に前記所定位置で右側のストライカ体Sを捕捉しこれを契機に引き込み位置に相対移動され、これによって引き戸Maの右端を戸枠Faの右側の戸当たりFcに突き当てさせる移動終了位置まで引き戸Maの右側への強制移動がなされるようになっている。(図1から図2)この右側の移動終了位置から引き戸Maを復動、つまり、左側に移動させると、第一付勢体11に蓄勢させながら右側の強制移動機構1のラッチ体10は待機位置に向けて相対移動され、前記所定位置で右側のストライカ体Sを解放して再び装置基体3の右端に保持される。この間、左側の強制移動機構1のラッチ体10は待機位置にあって装置基体3の左端に保持され続けている。
【0023】
また、左側の強制移動機構1のラッチ体10は、待機位置において装置基体3の左端に保持されると共に、引き戸Maの左側への移動時に前記所定位置で左側のストライカ体Sを捕捉しこれを契機に引き込み位置に相対移動され、これによって引き戸Maの左端を戸枠Faの左側の戸当たりFcに突き当てさせる移動終了位置まで引き戸Maの左側への強制移動がなされるようになっている。(図1から図3)この左側の移動終了位置から引き戸Maを復動、つまり、右側に移動させると、第一付勢体11に蓄勢させながら左側の強制移動機構1のラッチ体10は待機位置に向けて相対移動され、前記所定位置で左側のストライカ体Sを解放して再び装置基体3の左端に保持される。この間、右側の強制移動機構1のラッチ体10は待機位置にあって装置基体3の右端に保持され続けている。
【0024】
一方、制動機構2は、強制移動機構1を構成するラッチ体10への当接部20を備え、ラッチ体10の引き込み位置への移動に伴なうこの当接部20の後退に抵抗を作用させる構成となっている。それと共に、制動機構2は、この当接部20を前進方向に付勢する第二付勢体21を備えている。
【0025】
この実施の形態にあっては、前記二つの強制移動機構1、1のラッチ体10の後端100間に、一方の強制移動機構1のラッチ体10、図示の例では右側の強制移動機構1ラッチ体10の後端100に当接部20を当接させ、かつ、他方の強制移動機構1のラッチ体10、図示の例では左側の強制移動機構1のラッチ体10の後端100にこの当接部20に対向する対向部22を接続させるようにして制動機構2が介装されている。そして、この当接部20と対向部22との間の間隔を狭めるこの当接部20の後退又は相対的な後退に制動機構2の流体抵抗が作用されるようになっている。ここで相対的な後退とは、当接部20は動かずにこの当接部20に近接する向きに対向部22が移動することを意味している。
【0026】
これにより、この実施の形態にあっては、可動体Mとして引き戸Maを、一方側にスライド移動させたときも、これとは反対の他方側にスライド移動させたときにも、所定位置から先では前記流体抵抗を通じて第一付勢体11の付勢による強制的な移動に制動力を作用させることができるようになっている。
【0027】
可動体Mが所定位置から移動終了位置に向けて強制的に移動されるとき、ストライカ体Sを捕捉したラッチ体10は第一付勢体11の付勢により引き込み位置に相対的に移動され、これにより当接部20は後退されるので、可動体Mのこの強制的な移動には制動機構2の流体抵抗が制動力として作用される。このとき、前記当接部20は後退されるところ第二付勢体21はこの当接部20を前進方向に付勢させることから、この第二付勢体21の付勢力も可動体Mの強制的な移動に対する制動力として作用される。したがって、移動終了位置にある可動体Mは、第一付勢体11への蓄勢をもたらす大きさの力をもって、復動させることが必要となる。図示の例では、右側又は左側の戸当たりFcに右端又は左端を突き当てている引き戸Maは、第一付勢体11への蓄勢をもたらす大きさの力を作用させなければ、開くことができない。この実施の形態にあっては、この可動体Mの復動時にラッチ体10が待機位置に向けて移動した分、第二付勢体21の付勢により当接部20を前進させるので、この当接部20の前進を生じさせるときには可動体Mの復動操作に制動機構2の流体抵抗が作用されることはない。
【0028】
図示の例とは別に、支持体Fとしての戸枠Fa側にアシスト装置Aを設ける場合には、可動体Mとしての引き戸Maの上端部の左右にストライカ体Sを備えさせることになる。そして、この場合、引き戸Maを右側に閉めきるときは引き戸Maの左側のストライカ体Sをアシスト装置Aの左側のラッチ体10が所定位置で捕捉してこのラッチ体10の右側への第一付勢体11による付勢移動により、引き戸Maが右側に強制的に移動されるようになる。また、引き戸Maを左側に閉めきるときは引き戸Maの右側のストライカ体Sをアシスト装置Aの右側のラッチ体10が所定位置で捕捉してこのラッチ体10の左側への第一付勢体11による付勢移動により、引き戸Maが左側に強制的に移動されるようになる。
【0029】
図示の例では、強制移動機構1を構成するラッチ体10は、ラッチベース101と、キャッチャー102と、プランジャー103とを備えている。右側の強制移動機構1のラッチ体10と左側の強制移動機構1のラッチ体10とは、その各構成要素を実質的に同一としている。そこで、図7、図8、図10及び図11においては、左側のラッチ体10のみを表して、右側のラッチ体10の図示を省略している。
【0030】
図示の例では、装置基体3は、その上下方向略中程の位置に形成された仕切り部30によって、この仕切り部30を底面とする上部室31と、この仕切り部30を天面とする下部室32とに区分されている。上部室31の左右両端はそれぞれ外方に開放されている。これにより、ストライカ体Sは引き戸Maの上端部に形成された前記溝Mbを通って前記所定位置において上部室31内に入り込み待機位置にあるラッチ体10、具体的には、前記キャッチャー102に捕捉されるようになっている。ラッチベース101は、この装置基体3の上部室31を形成する一対の側壁33、33(ラッチ体10のスライド移動方向に直交する向きにある側壁33)間に隙間少なく納まる幅を備えている。また、ラッチベース101は、その長さ方向略中程の位置から前側(右側の強制移動機構1のラッチ体10であれば装置基体3の右端に位置される側、左側の強制移動機構1のラッチ体10であれば装置基体3の左端に位置される側)をキャッチャー102及びプランジャー103の組み込み部101aとしている。
【0031】
前記仕切り部30には、ラッチ体10の移動中心線yに沿った割溝30aが形成されている。一方、ラッチベース101にはこの割溝30aを通じて下部室32内に入り込む取付部101bが備えられている。図示の例では、右側の強制移動機構1のラッチ体10を構成するラッチベース101の取付部101bと、左側の強制移動機構1のラッチ体10を構成するラッチベース101の取付部101bとを、下部室32内に納められた引っ張りコイルバネ110を介して連繋させている。(図5)この引っ張りコイルバネ110により、右側の強制移動機構1のラッチ体10はストライカ体Sの捕捉を契機として待機位置での保持が解かれると左側の強制移動機構1のラッチ体10に近づく向きに相対的に移動され、また、左側の強制移動機構1のラッチ体10はストライカ体Sの捕捉を契機として待機位置での保持が解かれると右側の強制移動機構1のラッチ体10に近づく向きに相対的に移動されるようになっている。すなわち、図示の例では、かかる引っ張りコイルバネ110が前記第一付勢体11として機能するようになっている。
【0032】
また、図示の例では、キャッチャー102は、ラッチベース101の前端に回動可能に組み合わされた一対の挟持片102a、102aから構成されている。一対の挟持片102a、102aはそれぞれ、ラッチ体10のスライド移動方向、つまり可動体Mのスライド移動方向xに長い板状をなすように構成されると共に、ラッチベース101の前端にその長さ方向略中程の位置において縦向きの軸102bをもって回動可能に組み合わされている。
【0033】
一方、プランジャー103は、一対の挟持片102a、102aの間において前後動可能に前記組み込み部101aに支持されている。プランジャー103はその前後端間に、前記一対の挟持片102a、102aにおける回動中心よりも後方に位置される箇所に形成された被係当部102cに対する係当部103aを備えている。そして、かかるプランジャー103は前記組み込み部101aに納められた圧縮コイルバネ104により常時前方に向けた付勢力を蒙るようになっている。また、かかるプランジャー103における係当部103aより前方に位置される箇所(前端103b)は、一対の挟持片102a、102aにおける回動中心を通過して、この一対の挟持片102a、102aの前端部間に常時位置されるようになっている。(図10、図11)
【0034】
装置基体3の左右両端部にはそれぞれ、上部室31の両側壁33、33にそれぞれ一対の挟持片102a、102aの前端部の納まる窓穴34が形成されている。それと共に、装置基体3の左右両端部においてはそれぞれ、前記割溝30aが拡幅となっており、この拡幅部30bによりラッチ体10のスライド移動方向に直交する向きの掛合部30cがこのラッチ体10の移動中心線yを挟んだ両側にそれぞれ形成されている。
【0035】
そして、図示の例では、ラッチ体10が待機位置にある状態においては、前記のように常時付勢されるプランジャー103の係当部103aに被係当部102cを後方から押されて、キャッチャー102を構成する一対の挟持片102a、102aはその前端部を窓穴34に納めてその前端に向かうに連れて一対の挟持片102a、102a間の間隔を広げ、且つ、その後端に向かうに連れて一対の挟持片102a、102a間の間隔を狭める姿勢に保持される。(図11)また、この状態においては、一対の挟持片102a、102aの前端に形成された被掛合部102eが前記掛合部30cの前方に位置して前記第一付勢体11の付勢によりこれに引っかかるようになっている。これにより、ラッチ体10が待機位置にある状態が保持されるようになっている。
【0036】
そして、このようにラッチ体10が待機位置にある状態から、可動体Mとしての引き戸Maを前記所定位置まで移動させると、つまり、引き戸Maが右側に移動されてアシスト装置Aの右側において待機位置に保持されているラッチ体10に右側に設置されているストライカ体Sが捕捉されるようになるか、または、引き戸Maが左側に移動されてアシスト装置Aの左側において待機位置に保持されているラッチ体10に左側に設置されているストライカ体Sが捕捉されるようになると、キャッチャー102を構成する一対の挟持片102a、102a間に可動体Mの移動方向に板面を沿わせるように形成された板状をなすストライカ体Sが入り込み、プランジャー103の前端103bを押圧するようになっている。そして、この押圧によりプランジャー103は前記圧縮コイルバネ104に蓄勢させながら後退すると共に、このように後退されるプランジャー103の当接部20によって一対の挟持片102a、102aの後端側が押され、一対の挟持片102a、102aは両挟持片102a、102a間の前端側を閉じる向きに回動される。(図10から図11)図示の例では、一対の挟持片102a、102aの前端の内側にはフック部102dが形成されていると共に、ストライカ体Sにはこのフック部102dが入り込み引っかかる穴部Saが形成されており、このように一対の挟持片102a、102aの前端側が閉じられたときにこの一対の挟持片102a、102aの前端側間に入り込んだストライカ体Sの穴部Saに挟持片102aのフック部102dが掛合されるようになっている。これにより前記所定位置においてラッチ体10にストライカ体Sが捕捉されるようになっている。
【0037】
図示の例では、このようにラッチ体10にストライカ体Sが捕捉されると、一対の挟持片102a、102aの前端に形成された被掛合部102eがそれぞれラッチ体10の移動中心線y上に移動されて、被掛合部102eは前記割溝30aに入り込む位置に至るようになっている。(図11)これにより、前記掛合部30cと被掛合部102eとの掛合が解かれ、つまり、待機位置におけるラッチ体10の保持が解かれるようになっている。前記被掛合部102eが前記割溝30aに入り込む位置に至ると、前記第一付勢体11の付勢によりラッチ体10は引き込み位置まで相対的に移動され、かつ、一対の挟持片102a、102aは装置基体3の上部室31の側壁33間に挟まれてその前端側を閉じた状態に保たれ、一対の挟持片102a、102aはこの移動寸法分引き戸Maが往動されて移動終了位置に至るようになっている。
【0038】
移動終了位置に至った引き戸Maを復動させると、ストライカ体Sを捕捉しているラッチ体10は第一付勢体11に蓄勢させながら待機位置に向けて相対的に移動される。この復動により引き戸Maが所定位置に再び至ると、ストライカ体Sは一対の挟持片102a、102a間から抜け出す向きの力の作用を受けているので、前記圧縮コイルバネ110の付勢によるプランジャー103の前進が許容され、このプランジャー103の前進によってキャッチャー102を構成する一対の挟持片102a、102aはその前端部を窓穴34に納めてこの前端側を開き、ストライカ体Sを解放すると共に、再び被掛合部102eを前記掛合部30cに引っかけて待機位置に保持される。(図11から図10)
【0039】
図1〜図11に示される例では、制動機構2における抵抗発生体23は、図示しないピストンの後退又は相対的な後退にシリンダー230a内の流体の流体抵抗を作用させるダンパー230としている。かかるダンパー230はピストンダンパーなどと称される。かかる流体としては、典型的にはシリンコンオイルなどの粘性流体が用いられるが、これは気体としても構わない。かかるピストンはラッチ体10の移動中心線y上を往復動するようにシリンダー230a内に納められている。このピストンにはピストンロッド230bが接続されている。そして、この例では、このダンパーにおけるピストンロッド230bの突きだし側に対向するシリンダー230aの外端部が、二つの強制移動機構1、1のうちの一方のラッチ体10(図5における右側のラッチ体10)の後端100への当接部20となるようにしてある。また、この例では、ピストンロッド230bの先端は二つの強制移動機構1、1のうちの他方のラッチ体10(図5における左側のラッチ体10)の後端に接続された対向部22となっていいる。
【0040】
これにより、この例にあっては、二つの強制移動機構1、1のうちの一方のラッチ体10のストライカ体Sを捕捉した後の引き込み位置への移動に伴って前記ピストンを移動させることでこの移動、さらには可動体Mの移動にかかるダンパー230の制動力を作用させることができる。
【0041】
また、この例にあっては、前記第二付勢体21を、シリンダー230aの外側においてこのシリンダー230aとピストンロッド230bの突きだし端部に接続されたラッチ体10との間に介在させている。この例にあっては、かかる第二付勢体21は、バネ一端をシリンダー230aにおけるピストンロッド230bの突きだし側の外端部に突き当て、かつ、内側にピストンロッド230bを通してバネ他端を図5における左側に位置されるラッチ体10のラッチベース101の長さ方向略中程の位置に形成させた段差部101cに突き当てさせた圧縮コイルバネ21aとなっている。
【0042】
これにより、この例にあっては、可動体Mの復動時には、かかる第二付勢体21によりピストンを後退前の位置に復帰させて、待機位置に再び保持されたラッチ体10の後端100に制動機構2の当接部20を再び当接又は近接させることができる。
【0043】
図示の例とは別に、前記第二付勢体21は、シリンダー230aの内側においてこのシリンダー230aの内奥部とピストンとの間に配された圧縮コイルバネとすることもできる。
【0044】
図12に示される例では、制動機構2における抵抗発生体23を、図示しないローターの回転又は相対的な回転にステーター231a内の流体の流体抵抗を作用させるダンパー231としている。かかるダンパー231はロータリーダンパーなどと称される。この例では、制動機構2は、前端を二つの強制移動機構1、1のうちの一方のラッチ体10(図12における右側のラッチ体10)の後端100への当接部20とした細長い第一部材24と、前端を二つの強制移動機構1、1のうちの他方のラッチ体10(図12における左側のラッチ体10)の後端に接続された対向部22とした第二部材25とを備えている。両部材24、25はラッチ体10の移動中心線yに沿った移動可能に装置基体3内に納められている。この例では、第一部材24の後端24aと二つの強制移動機構1、1のうちの他方のラッチ体10の後端100との間に前記第二付勢体21となる圧縮コイルバネ21aが介装されている。また、第二部材25の後端にローターの回転軸を前記移動中心線yに直交させる向きで且つ横向きに配させるようにして、前記ダンパー231のステーター231aが固定されている。ローターの外端にはピニオン231bが設けられている。一方、第一部材24の前端と後端24aとの間には、このピニオン231bの下端に噛み合うラック24bが形成されている。二つの強制移動機構1、1のうちの一方のラッチ体10(図12における右側のラッチ体10)が引き込み位置に相対的に移動するときは、待機位置に保持されている他方のラッチ体10(図12における左側のラッチ体10)は移動しないので、この一方のラッチ体10の図12における左側への相対的な移動、つまり、可動体Mの図12における右側への往動にダンパー231の制動力が作用される。移動終了位置にある可動体Mを図12における左側に向けて復動させると、第一付勢体11に蓄勢させながらラッチ体10は図12における右側に相対的に移動され、このとき第二付勢体21の付勢力により第一部材24も図12の右側に移動される。以上の図12における右側のラッチ体10の動作と向きを逆にする同様の動作を、二つの強制移動機構1、1のうちの他方のラッチ体10(図12における左側のラッチ体10)は、可動体Mの図12における左側への往動時及び移動終了位置からの復動時に行うこととなる。
【符号の説明】
【0045】
1 強制移動機構
10 ラッチ体
11 第一付勢体
S ストライカ体
M 可動体
2 制動機構
20 当接部
21 第二付勢体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及びこの支持体にスライド移動可能に支持された可動体のいずれか一方に備えられると共に、これらの他方に備えられるストライカ体を、可動体が所定位置に至ったときに捕捉してこの可動体を移動終了位置まで強制的に移動させる装置であって、
強制移動機構と制動機構とを備えており、
強制移動機構は、装置基体に待機位置と引き込み位置とに亘るスライド移動可能に支持されるラッチ体と、待機位置にあるラッチ体に引き込み位置に向けた付勢力を作用させる第一付勢体とを備えており、待機位置に保持されたラッチ体に前記所定位置でストライカ体が捕捉されこの捕捉を契機としたこの保持の解除による引き込み位置へのラッチ体の移動又は相対移動により可動体は移動終了位置まで移動され、可動体の復動時は前記所定位置でラッチ体はストライカ体を解放させると共に待機位置に再び保持されるようになっており、
制動機構は、強制移動機構を構成するラッチ体への当接部を備え、ラッチ体の引き込み位置への移動に伴なうこの当接部の後退に抵抗を作用させる構成となっていると共に、この当接部を前進方向に付勢する第二付勢体を備えていることを特徴とする可動体のアシスト装置。
【請求項2】
二つの強制移動機構を、ラッチ体の後端側を向き合わせるようにして配すると共に、
この二つの強制移動機構のラッチ体の後端間に、一方の強制移動機構のラッチ体の後端に当接部を当接させ、かつ、他方の強制移動機構のラッチ体の後端にこの当接部に対向する対向部を当接又は接続させるように制動機構を介装させてなり、
この当接部と対向部との間の間隔を狭めるこの当接部の後退又は相対的な後退に制動機構の流体抵抗が作用されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の可動体のアシスト装置。
【請求項3】
制動機構における抵抗発生体を、ピストンの後退又は相対的な後退にシリンダー内の流体の流体抵抗を作用させるダンパーとしていると共に、このダンパーにおけるピストンロッドの突きだし端部又はこのピストンロッドの突きだし側に対向するシリンダーの外端部に当接部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動体のアシスト装置。
【請求項4】
第二付勢体を、シリンダーの内側においてこのシリンダーの内奥部とピストンとの間、又はシリンダーの外側においてこのシリンダーとピストンロッドの突きだし端部に接続されたラッチ体との間に介在させていることを特徴とする請求項3に記載の可動体のアシスト装置。
【請求項5】
制動機構における抵抗発生体を、ローターの回転又は相対的な回転にステーター内の流体の流体抵抗を作用させるダンパーとしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動体のアシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−21414(P2011−21414A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168474(P2009−168474)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)