説明

可動式エネルギー源

治療用エネルギー源を治療対象領域上で移動させるための装置を提供する。該装置は治療用エネルギー源を作り出すように形成されるとともに取付け用構造に結合される少なくとも1つのエネルギー源と、該取付け用構造に接続されるとともに該取付け用構造と該取付け用構造に結合されるエネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動させるように形成される少なくとも1つの移動用ユニットを備える。加えて、毛髪の成長をほぼ抑制するための方法を提供する。該方法は、特定の範囲内の波長及び相当に小さいスポット・サイズを有する電磁エネルギーを治療領域に用いる段階を備える。これにより、毛乳頭はほぼ作用されない状態に保たれながら、毛髪のバルジ領域の少なくとも一部が相当に作用されることが可能となる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してエネルギーを利用した医療用及び美容用装置に関する。本発明は特に、エネルギー源を治療対象表面上で移動させるためのシステム、装置、並びに方法に関する。本発明はまた、毛髪の成長をほぼ抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーを利用した治療装置としては、治療対象表面上に伝達される治療用エネルギーを作り出すエネルギー源を用いた装置が知られている。例えば、レーザ・ダイオード・バーを利用して、特定のスペクトル幅を有する光としての電磁エネルギーを作り出すような装置が知られている。このような電磁エネルギーは、医療上或いは美容上の状態を処置するために用いられる。1つのダイオード・バーのスポット・サイズは小さいので、数平方ミリメートル以上の大きさの領域を治療する際に単一のダイオード・バーを用いることは実際的ではないと考えられている。広い領域に十分な処置を行うためには、1ユニット以上のダイオード・バーを用いることが望ましい。ダイオード・バーを利用した従来の治療装置は、比較的多数の、数十個(20個から140個の単位)のダイオード・バーを利用する。ダイオード・バーを束ねて用いたときに作り出される光は、単一のダイオード・バーを用いた場合の光に比べて比較的広い領域の処置を行うことが可能である。通常、束ねられたダイオード・バーは、全て一斉に短時間動作される。このようにすると、このような動作時間のそれぞれにおいて、束ねられたダイオード・バーによって作り出されるスポットのサイズとほぼ同じ大きさの領域が治療されるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つの医療的処置装置に多数のダイオード・バーを使用すると、コストが掛かる上に、非効率でもある。これは、各ダイオードのコストが高く、これらダイオードが連続的には動作されないからである。加えて、多数のダイオードを束ねて用いたときに作り出されるエネルギーは、ある種の医療的或いは美容的手順又は処置にはあまり適当ではない。例えば、従来の装置は、毛髪の成長サイクルを遅らせることのみが希望される場合にも、毛髪の構成要素を破壊したり、毛髪の成長のメカニズムを停止したりする。
【0004】
したがって、1つ若しくはかなり少数のエネルギー源を効果的に用いて、かなり広い領域を治療用エネルギーに曝すことが可能であるような、エネルギーを利用した治療装置が提供されることが望ましい。このような装置によると、格段に経済的に且つより効率的に所望の効果を得ることが可能である。加えて、生物学的過程に制御可能に作用できるような、エネルギーを利用した治療装置が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態は、治療用エネルギー源を治療対象領域上で移動させるための装置、システム、若しくは方法に関する。本発明のいくつかの実施形態によると、エネルギーを利用した治療装置は、治療用エネルギーを作り出すように形成されるとともに、取付け用構造に結合される少なくとも1つの治療用エネルギー源と、前記取付け用構造に結合されるとともに、該取付け用構造及び該取付け用構造に結合されるエネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動させるように形成される少なくとも1つの移動用ユニットを備える。
【0006】
本発明の別の実施形態は、毛髪の成長をほぼ抑制するための方法に関する。この方法のいくつかの実施形態は、電磁エネルギーを治療領域に用いる段階を備える。このような電磁エネルギーは特定範囲内の波長と相当に小さいスポット・サイズを有する。このことにより、毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジの少なくとも一部分が作用されるようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の主題は、請求の範囲において明確に示される。しかしながら以下の詳細な説明と図面を合わせて参照することによって、装置或いはシステム及び操作方法としての本発明を、その目的や特徴とともによりよく理解することができる。尚、以下の記述は本発明の範囲を限定するものではない。
【0008】
図を簡潔且つ明瞭にするために、図中の要素は、必ずしも一定の縮尺では描かれていない。例えば、明瞭に示すために、他の要素に比べて大きく描かれる要素もある。また、適切であると考えられる範囲で、複数の図において同一の番号で、対応する或いは類似の要素を示している。
【0009】
以下の詳細な説明においては、本発明を詳しく理解するために多くの具体的且つ詳細な事項が開示される。しかしながら当業者には明らかなように、本発明をこれらの詳細な事項にしたがわずに行うことが可能である。また、本発明を明瞭に説明するために、既知の方法や手順については詳細には説明されない。
【0010】
記述を明瞭にするために、本発明の実施形態のいくつかは、処置対象者の身体から除毛を行う方法を例に説明される。しかしながら、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。本発明の別の実施形態は、毛髪の成長を妨げる方法として説明されるが、これには限定されない。本発明の更に別の実施形態は、そのほかの美容或いは医療的手順について説明される。しかしながら、当業者には明らかなように、以下で述べる方法を変更して、他の様々な美容上の或いは医療的な状態を処置するための方法とすることも可能である。
【0011】
本発明の範囲を限定するものではないが、記述を明瞭にするために、本発明の実施形態のいくつかは、ダイオード・バーを備えるエネルギー源を治療対象領域上で移動させるためのエネルギーを利用した治療装置について説明される。しかしながら、当業者には明らかなように、別の形態のエネルギーを様々な波長で作り出すことが可能な、その他の治療用エネルギー源を用いて、様々な分野の様々な手順及び処置を行ってもよい。これらの手順や処置は、美容目的の或いは医療目的の手順が挙げられるが、これらには限定されない。
【0012】
特に別の記載がないかぎり、以下の記述から明らかであるように、以下の説明全体を通して、「垂直に(vertically)」、「水平に(horizontally)」、「上下(up and down)」、「左右(side to side)」及びこれに類する用語は、想像上の軸を基準としている。これらの軸は、本発明のいくつかの実施形態にしたがった装置或いはシステムの1つ若しくはそれ以上の要素の動作のベクトルにほぼ対応する。
【0013】
ここで図1を説明する。図1は、本発明にしたがった、エネルギー源を治療対象領域上で移動させるためのエネルギーを利用した装置を表す。装置(100)は少なくとも1つのエネルギー源(102)及び移動用ユニット(106)を備える。該装置はまた、取付け用構造(104)を備えてもよい。エネルギー源(102)は取付け用構造(104)に結合されてもよい。移動用ユニット(106)は取付け用構造(104)に接続されてもよい。移動用ユニット(106)は取付け用構造(104)及び該取付け用構造に結合されるエネルギー源(102)の移動を可能にするような動作を生み出すように形成されてもよい。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によると、取付け用構造(104)は治療用エネルギー源(102)を保持するとともに、治療用エネルギー源(102)を治療用エネルギーに曝される領域上で移動させることを可能とするように形成されてもよい。例えば、取付け用構造(104)は、取付け用アームを備えてもよい。例えば、取付け用構造(104)は、エネルギー源(102)を移動用ユニット(106)の1つ若しくはそれ以上の要素に結合させるために用いられてもよい。このようにすると、取付け用構造(104)と移動用ユニット(106)が、治療用エネルギー源(102)を支持することが可能となる。また、エネルギー源(102)が治療用エネルギーに曝される領域上で移動することが可能となる。取付け用構造(104)は、エネルギー源(102)と結合するのに適切な要素を備えてもよい。これら要素としては例えば、ねじ、ボルト、接着剤、結合器などが挙げられる。
【0015】
本発明の装置のいくつかの実施形態によると、エネルギー源(102)は、少なくとも1つの電磁エネルギー源を備えてもよい。エネルギー源(102)は電磁エネルギーを作り出すように形成されてもよい。エネルギー源(102)は例えば、かなり小さいスポット・サイズを有する電磁エネルギーを作り出すように形成されてもよい。別の例では、エネルギー源は、所定の波長、或いは所定範囲内の波長を有する光を作り出すように形成されてもよい。エネルギー源(102)は、ダイオード・レーザ或いはダイオード・レーザ・バーを備えてもよい。この他の電磁エネルギー源(102)を用いることもできる。この他の電磁エネルギー源としては、単極或いは双極のRF電極、電球、レーザ、マイクロ波発生装置、及び/又はその他の適切なエネルギー源が挙げられる。エネルギー源は予め選択された性質を有する治療用エネルギーを作り出すように形成されてもよい。このような性質には、特定の波長或いはスペクトル、特定のスポット・サイズ、特定のモジュレーション(波形)などが挙げられるが、これには限定されない。エネルギー源(102)によって作り出されるエネルギーの性質は、所定の処置条件或いは処置に関するその他のパラメータにしたがって予め選択若しくは調節されてもよい。本発明の装置の別の実施形態によると、エネルギー源(102)は2つ若しくはそれ以上の別個のエネルギー源を備えてもよい。2つ若しくはそれ以上のエネルギー源は、併用しても別々に用いてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態によると、エネルギー源(102)は特定のモジュレーションで動作されてもよい。例えば、様々なパルス・モードで、様々なエネルギー・パターンを作り出すことが可能である。エネルギー源(102)は持続的モードで操作されてもよい。この場合、ほぼ持続的なエネルギー出力が行われる。エネルギー源(102)は、エネルギー源(102)が治療対象領域上を移動される間に、或いはエネルギー源(102)の移動における特定の段階で、持続的モードで動作されてもよい。例えばエネルギー源(102)は或いはエネルギー源(102)の移動の開始の直前若しくは直後に持続的モードで動作されてもよい。したがって、エネルギー源(102)によって作り出されるエネルギーに曝されうる領域は、エネルギー源(102)のスポット・サイズに比べてかなり大きくなる。エネルギー源(102)はほぼ一定スピードで治療対象領域上を移動され、且つエネルギー源(102)が移動中に持続的モードで動作されると、エネルギー源(102)は治療対象領域上にほぼ一定の放射量のエネルギーを伝達可能である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によると、移動用ユニット(106)は電気モータ(例えば正転逆転可能な電気モータ)を備えてもよい。本発明の装置の別の実施形態は、その他の適切な移動用ユニット(106)を備えてもよい。このような移動用ユニットとしては、電磁モータ、手動式移動用ユニットモータ、若しくはその他の適切な移動用ユニットが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態の一部としての装置(100)はまた、バッテリ(図示せず)などのその他の移動可能なエネルギー源を備えてもよい。このようなエネルギー源は、移動用ユニット(106)及び装置(100)のその他の要素又は部品に動力を提供する。
【0018】
図示の実施例において、装置(100)はギア・アセンブリ(108)を更に備えてもよい。ギア・アセンブリ(108)は、移動用ユニット(106)から取付け用構造(104)へ動作を伝達することが可能である。ギア・アセンブリ(108)は、各種のギア及びギア要素、又はこれらギアとギア要素を組み合わせたものを備えてもよい。これにより、ギア・アセンブリ(108)が移動用ユニット(106)によって作り出される動作を取付け用構造(104)まで伝達することが可能となる。ギア・アセンブリ(108)は、移動用ユニット(106)によって作り出される動作が取付け用構造(104)に伝達される前に、該動作の特定の形態或いはパラメータを変更するように形成されてもよい。このような変更としては、移動用ユニット(106)によって作り出される動作の速度の変更、移動用ユニット(106)によって作り出される動作の向きの変更、及び移動用ユニット(106)によって作り出される動作に関係するその他の形態若しくはパラメータの変更が挙げられるがこれらには限定されない。例えば、ギア・アセンブリ(108)が、正転逆転可能なモータによって作り出された動作の向きを変更して取付け用構造(104)がほぼ直線上を動くようにしてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態においては、本発明の装置を操作するためにはギア・アセンブリ(108)は必須要素ではない。更に、本発明の装置のいくつかの実施形態においては、移動用ユニット(106)は直接に取付け用構造(104)に噛合うようにされてもよい。つまり、ギア・アセンブリ(108)を省略することが可能である。
【0020】
本発明の別の実施形態によると、装置(100)は、1つ若しくはそれ以上のコントローラ(111)を更に備えてもよい。コントローラ(111)はデジタル・シグナル・プロセッサ(Digital Signal Processor, DSP)ユニットを備えてもよい。デジタル・シグナル・プロセッサ・ユニットは特定のソフトウェアを備えても或いは備えなくてもよい。コントローラ(111)は、装置(100)の1つ若しくはそれ以上の要素の動作に関する各種の形態又はパラメータを制御するように形成されてもよい。コントローラ(111)は装置(100)および該装置の任意の要素の動作に関する各種の形態を変更するように形成されてもよい。このような変更は、装置(100)の動作に関連した1つ若しくはそれ以上の要素に関する動作パラメータに基づいて行われる。本発明のいくつかの実施形態によると、装置(100)は2つ若しくはそれ以上のコントローラ(111)を備えてもよい。コントローラ(111)のそれぞれは、装置(100)の動作の一部分のみを制御するように形成されてもよい。2つ若しくはそれ以上のコントローラ(111)が協調的に、装置(100)の動作の1つ若しくはそれ以上の形態を制御するように動作されてもよい。コントローラ(111)の他の形態も可能である。
【0021】
例えば、コントローラ(111)はエネルギー源(102)によって作り出されるエネルギーの放射量、流束量、及び/又はモジュレーションを、移動用ユニット(106)によって作り出される動作の速度若しくはその他の任意のパラメータと同調させるように形成されてもよい。このようにすると、コントローラ(111)によってエネルギー源(102)が治療対象領域上にほぼ一定の放射量のエネルギーを伝達することが可能となる。このとき、移動用ユニット(106)によって作り出される動作の速度、及び装置(100)の動作に関するその他全ての変化に関わらず、エネルギーの放射量はほぼ一定に保たれる。コントローラ(111)は移動用ユニット(106)の動作及び/又はギア・アセンブリ(108)の動作及び/又はエネルギー源(102)の動作に関するその他の形態或いはパラメータを制御するように形成されてもよい。当業者には明らかであるが、装置(100)の2つ若しくはそれ以上の要素の操作に関するいくつかの形態及び/又はパラメータを同調させると、装置(100)の動作形態を自在に設定できるようになり、装置(100)を様々な操作ニーズに合わせて動作させることが可能となる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によると、取付け用構造(104)は取付け用アームを備える。このアームは、エネルギー源(102)を保持する。取付け用構造(104)を可動としてもよい。こうすることにより、該構造に結合される治療用エネルギー源(102)が、エネルギー源(102)によって作り出される治療用エネルギーに曝される領域上を移動可能となる。本発明のいくつかの実施形態の一部としての装置(100)は少なくとも1つの動作ガイド(109)を備えてもよい。動作ガイド(109)は取付け用構造(104)を所望の1つ以上の方向に案内する。少なくとも1つの動作ガイド(109)としては、リニア・ガイド、軸受部、ねじ、及びその他の適切な動作ガイドが挙げられる。動作ガイド(109)またこれらを組み合わせたものであってもよい。動作ガイド(109)がコントローラ(111)とともに動作するようにしてもよい。例えば、動作ガイド(109)は、コントローラ(111)から適切な信号を受信すると、取付け用構造(104)の動作を所望の方向に案内するように形成されてもよい。少なくとも1つの動作ガイド(109)は、移動用ユニット(106)及びエネルギー源(102)に対して予め選択された位置に配置されてもよい。しかしながら、この他の適切な位置を選択してもよい。動作ガイド(109)はまた、ほぼ固定された表面(1つ若しくは複数)(113)に結合されてもよい。動作ガイド(109)の位置は、装置(100)の動作中に移動並びに調節されてもよい。このようにすると、取付け用構造(104)或いはエネルギー源(102)の動作パターンを個別に変更することが可能となる。
【0023】
図1に示す実施形態において、動作ガイド(109)は軸受部を備えてもよい。軸受部は取付け用構造(104)の基端部(117)に結合されてもよい。エネルギー源(102)は取付け用構造(104)の先端部(119)に結合されてもよい。軸受部もまた、固定表面(113)に結合されてもよい。これにより、取付け用構造(104)が軸受部を中心として回転可能となる。エネルギー源(102)(例えばダイオード・バー)はその長軸が、取付け用構造(104)の動作する表面と直角に交わるように配置されてもよい。こうすることにより、取付け用構造(104)がより広い範囲で動作可能となる。取付け用構造の動作中には、軸受部は取付け用構造(104)を、軸受部を中心として回転させる。これにより、エネルギー源(102)は大きく開いた円弧を描くように移動可能となる。
【0024】
ここで図2を説明する。図2は、本発明のいくつかの実施形態にしたがったエネルギー源を治療対象領域上で移動させるためのエネルギーを利用した治療装置を表す。この装置は、リニア・ガイドを備える。図示の実施例において、装置(200)は少なくとも1つのリニア・ガイド(202)を備えてもよい。リニア・ガイド(202)は取付け用構造(104)に結合されてもよい。リニア・ガイド(202)は固定表面(113)に接続されてもよい。リニア・ガイド(202)が、取付け用構造(104)がほぼ直線的且つ左右水平に、或いはほぼ直線的且つ前後垂直に移動可能としてもよい。リニア・ガイド(202)はまた、取付け用構造(104)がその他の方向に動くことを防止するように形成されてもよい。
【0025】
したがって、移動用ユニット(106)が動作されたときに、ギア・アセンブリ(108)が取付け用構造(104)に動作を伝達することが可能となる。これにより、取付け用構造(104)及び該構造に結合されたエネルギー源(102)が移動される。ギア・アセンブリ(108)により取付け用構造に伝達される動作の方向が、リニア・ガイドによって可能とされる動作のベクトルとほぼ対応するようにしてもよい。この方向は、垂直或いは水平のいずれの方向であってもよい。よって、移動用ユニット(106)が動作されると、ギア・アセンブリ(108)は取付け用構造(104)を移動させる。リニア・ガイド(202)はまた、取付け用構造(104)が所望の方向以外に移動することを防止する。もし、取付け用構造(104)及び該構造に結合されるエネルギー源(102)の動作パターンが予め定められると、該エネルギー源によって作り出される治療用エネルギーに曝される領域上でのエネルギー源(102)の動作を予め定めることが可能となる。
【0026】
当業者には明らかであるが、本発明の装置のいくつかの実施形態は、取付け用構造(104)及び該構造に結合されるエネルギー源(102)が2つの軸(第1軸及び第2軸)に沿って移動可能となるように形成されてもよい。装置(200)のいくつかの実施形態は、様々なパターンの2つの軸に沿った運動を可能とするように形成されてもよい。2つの軸に沿った運動の適切な形態(既知の形態、或いは今後の改良による形態)を適宜用いて、取付け用構造(104)及び該構造に結合されるエネルギー源(102)が2次元での所望の運動パターンで移動するようにしてもよい。例えば、上記の図1及び図2に示す実施形態に小さな変更を加えて、エネルギー源が、治療対象領域上で、第1軸に沿って且つ第2軸と直角に移動するようにしてもよい。
【0027】
ここで図3を説明する。図3は、本発明のいくつかの実施形態にしたがったエネルギー源を治療対象領域上で移動するための電磁治療装置を表す。この装置はデコーダを備える。図示の実施形態においては、装置(300)はデコーダ(308)を備えてもよい。デコーダ(308)はデコーダの高摩擦車輪(310)を備えてもよい。本発明のいくつかの実施形態によると、デコーダの車輪(310)及びエネルギー源(302)は支持構造(312)に結合されてもよい。本発明の一実施形態によると、支持構造(312)がハンドピースのフレームであってもよい。デコーダの車輪(310)は、該車輪に力が加えられると回転するように形成されてもよい。加えられる力としては例えば、デコーダの車輪(310)が押される或いは引っ張られるような力が挙げられる。デコーダ(308)はデコーダの車輪(310)の動作を監視するように形成されてもよい。デコーダ(308)はデコーダの車輪の動作を信号に変換するように形成されてもよい。このような信号としては、機械的、磁気的、電気的信号、或いはその他の適切な信号が挙げられる。
【0028】
図示の実施例では、エネルギーを利用した装置(300)に移動用ユニット(図示せず)が組み込まれなくてもよい。デコーダの車輪(310)に外部の動力源(例えば外部モータ)からの力を加えて、このような力がデコーダの車輪を回転させるようにしてもよい。例えば、ユーザが、支持構造(312)と、デコーダの車輪(310)及び該車輪に結合されるエネルギー源(302)をともに押してもよい。支持構造(312)は例えば、ユーザによって、治療対象表面上をほぼ前方に押されてもよい。このようにすると、デコーダの車輪(310)が回転されるとともに、エネルギー源(302)は、治療対象領域上を移動される。
【0029】
デコーダ(308)は、装置(300)の動作に関連した1つ若しくはそれ以上の要素の操作の特定の形態及び/又はパラメータを同調させるように形成されてもよい。このとき、デコーダは単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい。デコーダ(308)は、例えば、エネルギー源(302)によって作り出されるエネルギーの量、モジュレーション、及び/又はパルス幅を、デコーダの車輪の回転速度にしたがって調節するように形成されてもよい。このようにして、支持構造(312)がデコーダ(308)と該デコーダに結合されるエネルギー源(302)とともに、治療対象領域上を移動される間に、デコーダ(308)がエネルギー源(302)によって作り出されるエネルギーの量を変化させるように形成されてもよい。例えばデコーダの車輪(310)の速度の変化が検知されると、このような変化が加えられるようにしてもよい。このとき、デコーダは単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい。
【0030】
エネルギー源(302)の動作に関する特定の形態はデコーダの車輪(310)の動作から推定されるようにしてもよい。デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)は、デコーダの車輪(310)の動作速度にしたがってエネルギー源(302)を持続的モードに移行させる。デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)はまた、エネルギー源(302)によって作り出されるエネルギーの、例えばパルス幅或いは流束量を変化させてもよい。当業者には明らかであるが、デコーダの車輪(310)の速度が増すと、デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)が、エネルギー源(302)にエネルギーのパルスを作り出させるようにしてもよい。このときエネルギーは、パルス間の間隔が次第に小さくなって、エネルギー源(302)が持続的モードに向かうように作り出される。例えば、デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)は、エネルギー源(302)が、該エネルギー源が0.2mm移動するごとに、パルス幅が100msのエネルギーを作り出すようにしてもよい。デコーダの車輪(310)の動作速度が、所定の閾値に等しいとき、デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)が、エネルギー源(302)を持続的モードで動作させるようにしてもよい。これにより、ほぼ持続的に治療対象領域に作用するエネルギーが作り出される。
【0031】
デコーダ(308)(単独で用いられても、コントローラ(314)とともに用いられてもよい)は装置(300)のその他の要素の動作を監視するように形成されてもよい。該デコーダはまた、装置(300)の動作に関係する上記の或いはその他の形態又はパラメータを変更するように形成されてもよい。
【0032】
ここで図4Aを説明する。図4Aは本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動させるための、エネルギーを利用した治療装置の上面図である。図4Bは本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動させるための、エネルギーを利用した治療装置を表す。装置(400)は少なくとも1つのエネルギー源(402)及び移動用ユニット(406)を備えてもよい。エネルギー源(402)は移動用ユニット(406)に結合されてもよい。
【0033】
図示の実施形態では、移動用ユニット(406)は正転逆転可能な電気モータであってもよい。モータ(406)のうちの1つの要素(例えば、モータ・シャフト)が取付け用構造(404)として用いられてもよい。取付け用構造(404)は、移動用ユニット(406)をエネルギー源(402)に結合する。電気モータ(406)が動作されると、モータ・シャフト(404)が回転するようにしてもよい。こうすることにより、該シャフトに接続されたエネルギー源(402)がほぼ環状に運動する。移動用ユニットとしては、正転逆転可能なモータに限らず、その他の適切な移動用ユニットも使用可能である。また、移動用ユニットのその他の要素を用いてエネルギー源を各種の移動用要素に結合してもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、装置(400)はエネルギー調整器(417)を更に備えてもよい。エネルギー調整器(417)はエネルギー源(402)によって作り出されるエネルギーの有する特定の形態或いはパラメータを変更するように形成されてもよい。図示の実施形態においては、エネルギー調整器(417)は、エネルギー源(402)によって作り出されるエネルギーに、回転運動がもたらす効果を相殺するように形成されてもよい。例えば、エネルギー調整器(417)は球面状の鏡を備えてもよい。この鏡によって、レーザ・バーによって作り出されるレーザ・エネルギーが収束、再収束、或いは分散される。レーザ・バーは、球面状の鏡に面しながらほぼ環状に移動する。球面状の鏡は、電磁エネルギーの方向を変更することにより、エネルギーに曝される領域(416)内の全ての点がエネルギーの照射を受けるようにしてもよい。エネルギー調整器(417)がその他の要素を備えて、エネルギー源(402)によって作り出されるエネルギーのその他の形態或いはパラメータを変更可能となるようにしてもよい。
【0035】
上述の移動用ユニット、取付け用アーム、少なくとも1つのエネルギー源、及びその他の要素は、上記以外にも多くの組み合わせ並びに形態で組み合わされてもよい。但し、エネルギー源が治療用エネルギーに曝される領域上を様々な動作パターン及び動作形態で移動することが可能となるものに限る。本発明はこのような特定の形態には全く限定されない。むしろ本発明は1つ若しくはそれ以上の移動用ユニットを組み合わせたものを用いて実施可能である。これら移動用ユニットとしては、取付け用アーム、少なくとも1つのエネルギー源が挙げられる。
【0036】
当業者には明らかなように、本発明の装置或いはシステムのいくつかの実施形態は、あらゆる分野におけるあらゆる目的を有する、従来の或いは今後考案される手順を実施するために好適に使用可能である。このような手順は、美容上及び/又は医療的処置並びに手順には限定されない。それぞれの処置若しくは手順毎に、その処置もしくは手順に固有のパラメータ群、或いは特定の操作プロトコルにしたがって、本発明の装置は操作可能である。
【0037】
例えば、除毛を行うためには、治療対象領域全体が15J/cmの流束量のエネルギーに曝されなければならない。レーザ・ダイオード・バーのスポット・サイズは幅a=0.2cm、長さb=1cmであってもよい。したがってレーザ・ダイオードのスポット・サイズは0.2cmであってもよい。単一のダイオード・バーが作り出しうる電力の量は、30ワット程度と考えられる。また、エネルギー源は持続的に1秒間移動並びに動作されるものと仮定する。エネルギー源が移動を停止する時間は組織ごとの条件によって決定してもよい。当業者には明らかであるが、このような典型的な装置のエネルギー源が持続的モードで動作されるとともに、2cm/秒の一定速度で移動されるとき、流束量がおよそ15J/cmのエネルギーが、治療用エネルギーに曝される領域に対してほぼ均一に伝達される。
【0038】
このことは数学的には以下のように表される。
Tをエネルギーに曝される時間、Pをレーザの出力、Aをダイオード・レーザのスポット・サイズ、Eをダイオード・レーザのエネルギー流束量とすると、次のような関係式が成り立つ。
【0039】
【数1】

【0040】
上記のパラメータにしたがって動作される装置のエネルギー流束量は以下のように計算できる。
【0041】
【数2】

【0042】
単一の本発明による典型的な可動式ダイオード・バー装置によって作り出される電磁エネルギーに曝される領域の総量は、エネルギーに曝される領域上でのレーザ・ダイオードの移動速度と、スポットの長さ、レーザ・ダイオードが動作並びに移動される時間の長さを掛け合わせたものに等しいといえる。上記のパラメータにしたがって典型的な装置の動作について考えると、レーザ・ダイオードによって作り出される電磁エネルギーに曝される領域は2cmである。
【0043】
本発明による典型的な装置を上記の動作パラメータにしたがって動作させると、従来の複数のレーザ・ダイオード・バーを利用した除毛装置の流束量と同様の流束量を有するエネルギーが作り出される。しかしながら、治療対象領域上を移動される間、本発明の典型的な装置のダイオードが、ほぼ持続的モードで操作されるのに対して、従来の除毛装置では、治療対象領域上で、複数のダイオードからなる束の全てが同時に且つ短時間動作される。
【0044】
通常、除毛の目的では、複数あるレーザ・ダイオード・バーのスポット・サイズの合計とほぼ等しいサイズ(約1cmから2cm)の領域に対して、複数のダイオード・バーはおよそ0.1秒(100ms)動作される。いくつかの実施形態では本発明の装置が、治療対象領域を、単一のダイオード・バー(或いは相当少ない数のダイオード)によって、同程度の出力されたエネルギーに曝すようにしてもよい。この場合従来のエネルギー治療装置のいくつかに見られるように多数のダイオード・バーを用いる必要はない。
【0045】
いくつかの実施形態において本発明の装置は、他のエネルギーを利用した従来の治療装置に基づいて形成されてもよい。このような従来の装置は本発明の装置と同様の状態或いは不調を治療可能な装置とする。このような治療には、ほぼ永久的な除毛、毛髪の成長サイクルの抑制が挙げられる。別の実施形態においては本発明の装置は、従来のエネルギー治療装置に基づいて将来的に開発される様々な手順又は処置を行うために用いられてもよい。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によると、毛髪の成長を抑制する方法が提供される。毛髪の成長を抑制するための方法のいくつかの実施形態は、治療対象領域に電磁エネルギーを用いる段階を備えてもよい。このときの電磁エネルギーは、特定の範囲内の波長及びかなり小さなスポット・サイズを有する。これにより、毛乳頭はほぼ作用されない状態に保たれながら、バルジの少なくとも一部分に相当な作用がもたらされる。
【0047】
当業者には明らかであるが、エネルギー源によって作り出されるとともに出力されるエネルギーの有する様々な形態は、エネルギーと、治療対象組織及び周辺組織との相互作用に影響を与える。特定の範囲内の波長を有する電磁エネルギーを用いると、周辺組織への影響を最小限にとどめながら、対象組織に対して所望の効果を上げることが容易になる。但し、このような対象組織は組織内の所定の深度に位置するものとする。
【0048】
電磁エネルギーのスポット・サイズもまた、皮膚の様々な深度におけるエネルギーの流束量に影響を及ぼすことがある。組織に対して用いられる電磁エネルギーのスポット・サイズは、組織の様々な深度におけるエネルギーの流束量に影響を与えることが知られている。組織の様々な深度におけるエネルギーの流束量に対してエネルギーのスポット・サイズが与える影響に関連すると考えられる1つの要素は、エネルギー要素(例えば、フォトン)同士、或いはエネルギー要素と周辺組織との間の相互作用である。出力されたエネルギーのスポット・サイズが相当に大きい場合、粒子間の相互作用は、相当に高い頻度で起こる。よって、このような相互作用が、組織の特定の深度におけるエネルギーの流束量に及ぼす影響は、より大きく或いはより強くなる。結果として、スポット・サイズが小さくなるにしたがって、特定の深度より深い場所にある組織での流束量は小さくなる。深さについてのこのような閾値は出力されるエネルギーのスポット・サイズに関連付けられてもよい。治療対象表面を照射するために出力されたエネルギーのスポット・サイズが相当に小さいと、有効な流束量を有するエネルギーは所定の深度より浅い組織にのみ伝達される。つまり、同様に、エネルギーはこれらの特定の深度に位置する組織にのみ吸収される。したがって、エネルギーの効果は、これら特定の深度に位置する組織のみが作用されるように制御可能となる。このようにして、より深い位置にあるその他の組織に不要な影響を与えることが防止できる。
【0049】
ここで図5を説明する。図5は皮膚に用いられるエネルギーのスポット・サイズがかなり大きい場合の、皮膚組織の様々な深度における電磁エネルギーの流束量を表す概略図である。また、図6は皮膚に用いられるエネルギーのスポット・サイズがかなり小さい場合の、皮膚組織の様々な深度における電磁エネルギーの流束量を表す概略図である。
【0050】
したがって、治療領域に用いられる電磁エネルギーの波長及びスポット・サイズを制御或いは選択することによって、特定の深度の組織におけるエネルギーの流束量を制御可能である。このような制御を行うことにより、毛乳頭はほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジの少なくとも一部分に相当な作用を及ぼすことが可能となる。
【0051】
治療の条件にしたがって、具体的な波長或いは波長についての範囲、及びスポット・サイズが選択されてもよい。治療条件としては、皮膚の色素沈着、皮膚の特定領域における毛包(バルジ及び毛母を含む)の長さ、及びその他の要素が挙げられる。このような治療条件のうちのいくつかが変わると、皮膚のその特定の深度における電磁エネルギーの流束量が影響されることがある。電磁エネルギーの波長及び/又はスポット・サイズを調節することによって、皮膚のその特定の深度における電磁エネルギーの流束量を制御可能である。このような制御を行うことで、毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジの少なくとも一部分に相当な作用を及ぼすことが可能となる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によると、皮膚に用いられるエネルギーの波長は、500nmから1100nmの範囲としてもよい。また、このようなエネルギーのスポット・サイズは、縦100ミクロン、横数mmから数十mmの長方形によって定められる大きさより小さいものとする。これらの範囲は限定的なものではなく、波長或いはスポット・サイズについてのこの他のパラメータも、毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジの少なくとも一部分に相当な作用を与えるのに適している。加えて、各種の治療条件(例えば、毛包の具体的な長さ(深さ))によって波長及び/又はスポット・サイズについてのパラメータの範囲が更に制限されることがある。このようなパラメータは毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジの少なくとも一部分に相当な作用を及ぼすのに適したものとする。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によると、治療に使用されるエネルギーの波長を600nmから900nmの範囲内として、エネルギー源のスポット・サイズを縦5ミクロン、横数ミリメートルの長方形によって定められる大きさとほぼ等しいものとしてもよい。例えば、通常の治療条件下では、上記のような波長及びスポット・サイズを有する電磁エネルギーを治療対象表面に使用するとき、約2mmより深い位置の組織での該エネルギーの流束量は、このような深度にある組織に相当な影響を与えるのに十分なものとはならない。一方で、皮膚表面から約1.5mmよりも浅い場所の組織での該エネルギーの流束量は、このような深度の組織に相当な影響を与えるのに十分なものとなる。よって、バルジの少なくとも一部分が約1.5mmの深度に位置して、且つ毛乳頭及び毛母が皮膚表面から約2mmより深い深度に位置すると仮定すると、上記の波長及びスポット・サイズについてのパラメータを用いれば、毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながら、バルジに相当な作用を及ぼすことが可能である。
【0054】
上記のような波長の範囲及びスポット・サイズの寸法はこれらに限定されるものではなく、むしろ例として示されたに過ぎない。これらの波長及びスポット・サイズは、現在市販されているレーザ・ダイオード・バーの標準的な波長及びスポット・サイズのパラメータに基づく。
【0055】
当業者には明らかなように、必須の毛髪成長領域が活性である限り、人間の毛包における毛髪成長サイクルは維持される。つまり、毛髪のバルジ領域(普通、毛包の皮膚表面より下にある部分のうち上部3分の1に位置する)及び毛乳頭領域(普通、毛包の皮膚表面より下にある部分のうち下部3分の1に位置する)がほぼ損傷していない状態であれば、毛髪の成長サイクルは維持される。バルジ及び毛乳頭の両方が損傷すると、毛髪の成長はほぼ永久に停止する。毛髪の成長に必要な領域のうち一方のみが破壊されるか或いは相当な作用を受けると、成長サイクルは阻害若しくは中断される。したがってバルジ或いは毛乳頭のいずれかが破壊されるか若しくは崩壊すると、通常の毛髪の成長サイクルが中断或いは阻害される。しかしながら、毛髪の成長に必要な領域のうち一方(すなわちバルジ或いは毛乳頭のいずれか)が破壊されるか、或いは少なくとも相当な作用を受けても、毛髪の成長サイクルは完全には停止しない可能性がある。つまり、時間の経過とともに成長サイクルが回復することがある。すなわち、皮膚表面下での電磁エネルギーの分配を制御することにより、毛乳頭をほぼ作用されない状態に保ちながらバルジを破壊するか或いは崩壊させることが可能となる。具体的には、例えば、毛包の皮膚表面下にある部分のうち上部3分の1の長さ(バルジが位置する場所)が位置する深度で、電磁エネルギーが、この深度の組織に対して相当な作用を及ぼすようにする一方で、毛包の下部3分の2が位置する深度もしくはこれより深い場所では、電磁エネルギーが、この深度の組織に対して実質的に作用しないようにすることによって、このようなことが可能になる。結果として、毛髪の成長サイクルを遅延させることができる。
【0056】
特定の範囲内の波長及びかなり小さいスポット・サイズを有する電磁エネルギーを治療対象領域に用いるのに加えて、このエネルギーの有する波長及びスポット・サイズについてのパラメータを制御或いは選択することにより、毛乳頭を作用されない状態に保ちながらバルジに相当な作用を及ぼすことが可能となる。これにより、毛髪の成長サイクルは抑制可能となる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態にしたがった、毛髪の成長をほぼ抑制する方法は様々な装置を用いて適切に実施できる。例えば、図1に示す実施形態で説明した装置と同様の装置を用いて、波長及びスポット・サイズについて適切なパラメータを有するエネルギーを作り出すことが可能である。図1を参照して説明した装置によると、エネルギー源を治療対象領域上で移動させることが可能である。したがって、このエネルギー源によって作り出されるエネルギーが照射可能な領域は、このエネルギー源のスポット・サイズよりかなり大きいものとなる。但し、上記で説明したような選択的な熱分解を可能とするのに必要な波長及びスポット・サイズを確保しなければならない。しかしながら、現在入手可能なエネルギーを利用した装置、或いは今後考案されるエネルギーを利用した装置を用いて、本発明の別の実施形態を実施可能である。このようなエネルギーを利用した装置は、波長及びスポット・サイズについて適切なパラメータを有するエネルギーを作り出すように形成された様々なエネルギー源を備え、上記のような深度にしたがった選択的な熱分解を可能とすることにより、毛髪の成長を抑制する。
【0058】
ここでは本発明のいくつかの特徴を説明してきたが、多くの変更、代替、改変および類似のものが当業者には想到できるであろう。よって、本発明の要旨を逸脱することなく可能なこのような変更及び改変は、以下の請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のいくつかの実施形態にしたがったエネルギーを利用した治療装置を表すブロック線図である。該治療装置はエネルギー源を該エネルギー源が作り出す治療用エネルギーに曝される領域上で移動させる。
【図2】本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギーを利用した治療装置を表すブロック線図である。該治療装置はエネルギー源を該エネルギー源が作り出す治療用エネルギーに曝される領域上で移動させる。該治療装置はまたリニア・ガイドを備える。
【図3】本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギーを利用した治療装置を表すブロック線図である。エネルギー源を該エネルギー源が作り出す治療用エネルギーに曝される領域上で移動させる。該治療装置はまた、デコーダの高摩擦車輪を備える。
【図4A】本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギーを利用した治療装置を表す上面図である。該治療装置は、エネルギー源を該エネルギー源が作り出す治療用エネルギーに曝される領域上で移動させる。
【図4B】本発明のいくつかの実施形態にしたがった、エネルギーを利用した治療装置を表すブロック線図である。該治療装置はエネルギー源を該エネルギー源が作り出す治療用エネルギーに曝される領域上で移動させる。
【図5】皮膚に用いられるエネルギーの有するスポット・サイズが相当に大きいときの、皮膚組織の様々な深度における電磁エネルギーの影響を表すコンピュータによって作成された概略的グラフィック図である。
【図6】皮膚に用いられるエネルギーの有するスポット・サイズが相当に小さいときの、皮膚組織の様々な深度における電磁エネルギーの影響を表すコンピュータによって作成された概略的グラフィック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用エネルギー源を治療対象領域上で移動させるための装置であって、該装置が、
治療用エネルギーを作り出すように形成されるとともに取付け用構造に結合される少なくとも1つの治療用エネルギー源と、
該取付け用構造に操作可能に接続されるとともに、該取付け用構造と該取付け用構造に結合される前記エネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動可能となるように形成される少なくとも1つの移動用ユニットを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源が少なくとも1つの電磁エネルギー源を備えることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源が、1つの電磁エネルギー源からなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記1つの治療用エネルギー源が、レーザ・ダイオード・バーからなることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記治療用エネルギー源が所定のパルス・パターンを作り出すように調節されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記治療用エネルギー源が、持続的モードで動作してほぼ持続的にエネルギー出力を行うように形成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
エネルギーに曝される領域上で前記治療用エネルギー源が移動される間の少なくとも1区間において、前記治療用エネルギー源が前記持続的モードで動作されることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記治療用エネルギー源が、ほぼ一定の速度で、エネルギーに曝される領域上を移動されることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記移動用ユニットが電気モーターであることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記移動用ユニットが手動で推進されることを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項11】
ギア・アセンブリを更に備え、
該ギア・アセンブリが前記移動用ユニットから前記取付け用構造及び該取付け用構造に結合される前記治療用エネルギー源に動作を伝達することを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記ギア・アセンブリが、前記移動用ユニットの動作の1つ若しくはそれ以上のパラメータを変更するように形成されることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
コントローラを更に備え、
該コントローラが前記装置の動作に関係する1つ若しくはそれ以上の形態を制御するように形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラが、前記治療用エネルギー源の動作のいくつかの形態を前記移動用ユニットの速度と同調させるように形成され、
これにより、前記エネルギーに曝される領域内のほぼ全ての点において、該点に伝達されるエネルギーの放射量が所定範囲内となることを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラが前記治療用エネルギー源の動作のいくつかの形態を前記移動用ユニットの速度と同調させるように形成され、
これによりエネルギーに曝される領域内のほぼ全ての点において、該点に伝達されるエネルギーの放射量がほぼ一定となることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの移動用ユニットが前記取付け用構造と該取付け用構造に結合される前記治療用エネルギー源を移動させるように形成され、前記取付け用構造と該取付け用構造に結合される前記治療用エネルギー源が、治療用エネルギーに曝される領域の第1軸及び第2軸上を移動されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項17】
治療用エネルギー源を治療対象領域上で移動するための装置であって、該装置が、
治療用エネルギーを作り出すように形成される少なくとも1つの治療用エネルギー源と、
デコーダの車輪の動作を示す信号を作り出すように形成されるデコーダを備え、
前記デコーダの車輪の前記動作が前記少なくとも1つの治療用エネルギー源の動作と関連付けられ、
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源によって作り出されるエネルギーが、前記デコーダの車輪の動作の種類を示す前記デコーダからの信号に応じて調節されることを特徴とする装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源及び前記デコーダの車輪のそれぞれが支持構造に結合されることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記支持構造の動作が、前記デコーダの車輪と前記少なくとも1つの治療用エネルギー源のそれぞれが、治療用エネルギーに曝される領域上を移動可能となるように調節されることを特徴とする請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記支持構造が治療用エネルギーに曝される領域にユーザにより手動で推進されることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項21】
前記デコーダの車輪の動作速度の変動に応じて、前記デコーダが前記信号を作り出すように形成されることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源の動作が、前記デコーダの車輪の速度の変動を示す前記デコーダからの信号に応じて調節されることを特徴とする請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源の動作が、エネルギーに曝される領域内のほぼ全ての点がほぼ一定の放射量のエネルギーに曝されることを可能とするように調節されることを特徴とする請求項22記載の装置。
【請求項24】
治療用エネルギー源によって作り出されるエネルギーのスポットよりも大きな領域に作用するための装置であって、該装置が、
治療用エネルギーを作り出すように形成されるとともに、取付け用構造に結合される少なくとも1つの治療用エネルギー源と、
取付け用構造に接続される少なくとも1つの移動用ユニットを備え、
該移動用ユニットが、前記取り付け用構造と前記取付け用構造に結合される前記治療用エネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動可能となるように形成されることを特徴とする装置。
【請求項25】
治療用エネルギー源を治療対象領域上で移動させるための装置であって、該装置が、
治療用エネルギーを作り出すように形成される少なくとも1つの治療用エネルギー源と、
少なくとも1つの移動用ユニットと、
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源を前記少なくとも1つの移動用ユニット上に取り付けるための手段を備え、
前記移動用ユニットが前記エネルギー源を治療用エネルギーに曝される領域上で移動可能となるように形成されることを特徴とする装置。
【請求項26】
少なくとも1つの治療用エネルギー源を治療対象者の身体の治療対象領域の第1部分上に配置する段階と、
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源を治療対象者の身体の治療対象領域の少なくとも1つの第2部分上で移動させる段階と、
治療対象者の身体の治療対象領域の前記少なくとも1つの第2部分上で前記治療用エネルギー源が移動される間の少なくとも1区間において、前記少なくとも1つの治療用エネルギー源を動作させる段階からなることを特徴とする治療対象者の身体の1領域を治療するための方法。
【請求項27】
前記動作させる段階が、少なくとも1つの電磁エネルギー源を動作させる段階を備えることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記移動させる段階が、前記少なくとも1つのエネルギー源をほぼ一定速度で治療対象者の身体の治療対象領域の前記第2部分上で移動させる段階を備えることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記動作させる段階が、前記少なくとも1つのエネルギー源の持続的モードを動作させ、
これにより治療対象者の身体の治療対象領域上で前記少なくとも1つのエネルギー源が移動される間の少なくとも1区間において、該エネルギー源によってほぼ持続的なエネルギー出力が行われる段階を更に備えることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
所定範囲内の放射量のエネルギーを治療対象者の身体の治療対象領域のほぼ全ての点に伝達する段階を更に備えることを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
ほぼ一定の放射量のエネルギーを治療対象者の身体の治療対象領域のほぼ全ての点に伝達する段階を更に備えることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記動作させる段階が、前記少なくとも1つの治療用エネルギー源が作り出すエネルギーに関する1つ若しくはそれ以上のパラメータと、前記移動用ユニットの動作に関する1つ若しくはそれ以上のパラメータを同調させる段階を更に備えることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記同調させる段階が、前記移動用ユニットの動作速度を変更する段階を更に備えることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記同調させる段階が、前記少なくとも1つのエネルギー源が作り出すエネルギーの量を変更する段階からなることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記同調させる段階が、前記少なくとも1つのエネルギー源が作り出すエネルギーのパルス幅を変更する段階からなることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項36】
治療用エネルギー源によって作り出されるエネルギーのスポットよりもかなり大きい領域に作用するための方法であって、該方法が、
少なくとも1つの治療用エネルギー源を治療対象者の身体組織の1領域内の第1部分上に配置する段階と、
前記少なくとも1つの治療用エネルギー源を該治療対象者の該領域内の第2部分上で移動させる段階と、
該治療対象者の身体の該領域の前記第2部分上で前記治療用エネルギー源が移動される間の少なくとも1区間において、前記少なくとも1つの治療用エネルギー源を動作させる段階からなることを特徴とする方法。
【請求項37】
特定の範囲内の波長と小径のスポットを形成する電磁エネルギーを治療対象領域に用いる段階からなり、これにより、毛乳頭はほぼ作用されない状態に保たれながら、バルジの少なくとも一部が作用されることが可能となることを特徴とする毛髪の成長をほぼ妨げる方法。
【請求項38】
前記電磁エネルギーの波長が500nmから1100nmの範囲内であり、前記電磁エネルギーのスポット・サイズが、縦数十ミクロン、横100ミリメートルである長方形の大きさより小さいことを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記電磁エネルギーを用いる段階が、600nmから900nmの波長を有する電磁エネルギーを治療対象領域に用いる段階からなることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記電磁エネルギーを用いる段階が、縦5ミクロン、横数十ミリメートルである長方形とほぼ同じ大きさのスポット・サイズを有する電磁エネルギーを治療対象表面に用いる段階を更に備えることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
約2mm以上の深度の組織におけるエネルギーの流束量が、該深度の組織に作用するのに十分なものではなく、一方で、約1.5mmの深度における該流束量が、該深度より浅い深度に位置する組織の少なくとも一部に作用するのに十分なものであることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記電磁エネルギーを用いる段階が、治療用エネルギーを作り出すように形成されたエネルギー源を治療対象領域上で移動させる段階を更に備えることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項43】
前記移動させる段階が、治療対象者の皮膚の1領域上で前記エネルギー源が移動される間の少なくとも1区間において、前記エネルギー源をほぼ持続的なモードで動作させる段階を更に備えることを特徴とする請求項42記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−518433(P2007−518433A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502629(P2006−502629)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000101
【国際公開番号】WO2004/069325
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(502272398)ルメニス・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】