説明

可動式タイヤ試験機およびそのための方法

本発明は、直線および円形路に沿って移動可能な自走式プラットフォーム(10)からなり、かつ試験されるホイール/タイヤアセンブリ(12)を試験するための機器モジュール(11)であって、このアセンブリをいかなる方向にでも回動させること、傾けること、そしてそれに垂直力を加えることが可能となった機器モジュール(11)と;サスペンションおよび駆動輪を備えた第1の操舵可能なアクスルと;記憶手段(16)と組み合わされた処理ユニット(15)と;試験サイクル、アセンブリの位置およびそれに加えられる力をモニターするための手段(21)と;を含む可動式タイヤ試験機に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用の可動式試験機ならびにそうした試験機の運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造業者は、彼らの製品であるタイヤのさまざまなパラメーター、たとえば耐衝撃性、荷重が作用している状態で路面と高速で接触した際のエロージョン、および滑りが生じている場合の変形などを試験するための試験機を保有している。
【0003】
そうした試験機は固定式であることも可動式であることもある。
【0004】
固定式試験機は特許文献1の後半部分で説明されている。この試験機においては、試験されるタイヤを備えたホイールは、フラットコンベアベルト上のスピンドルに取り付けられており、これによってタイヤは、反りおよび方向を調整可能な状態で、所定荷重のもとコンベアベルトと当接可能となっている。その結果、モーターで走行させられるコンベアベルトは、所定の路面状況を模することによって上記タイヤを試験するのに使用できる。
【0005】
可動式試験機は引用文献2で説明されている。この試験機は、トラクターユニットと、このトラクターユニットに接続された連結シャーシと、試験されるタイヤが装着されたホイールを駆動するための機構(そのスピンドルは上記シャーシに取り付けられた測定要素に接続されている)と、反力モーメントを補償するための機構と、測定要素と、記録デバイスと、上記ホイールに荷重を加えるための液圧式デバイスとを具備してなる。この試験機によって上記タイヤを実際の使用状況で試験することが可能となる。
【0006】
この試験機は、乗用車、トラックあるいはトラクターにおいて使用されるタイヤに適したものである。事実、この試験機は、それが速度、荷重あるいは滑り角に関するものであっても、タイヤのさまざまな使用状況をシミュレートするか、あるいは再現することが可能である。
【0007】
だが、そうした試験機によって、シミュレートしようとする航空機用着陸装置の主脚に配されたタイヤに関する、あらゆる使用状況を実現できるわけではない。
【0008】
現在、そうしたタイヤの製造業者は自身のタイヤを、彼らの試験機の使用限界まで試験し、そして集められた測定データを航空機製造業者に提供している。このデータは、それが実際の条件に類似した条件をより良く表すように、その後解析されるであろう。このようにして、周知のタイヤを用いた第1の測定を実施し、そしてこのタイヤを試験されるタイヤと交換することができる。第2の測定は、第1の測定の再現を試みることによって、試験されるタイヤを用いて行われるであろう。こうしたさまざまな測定値同士を比較することで、試験されるタイヤの挙動のより良い理解が可能となる。それでもやはり、全く同じ試験状況を再現するのは困難である。さらに、サイズおよびセンサーの取り付けのために、測定をタイヤごとに実施できない。それゆえ、こうした測定値は、そうしたタイヤの特性の平均の反映に過ぎない。
【0009】
自身のタイヤの使用分野の実際の状況において試験を実施するために、航空機製造業者はさらに外挿法を使用する。安全性の理由から、彼らは測定データを増加させる。そうした測定データはまた、航空機が組み立てられた際の、その挙動のシミュレーションモデルを構築するのにも使用される。そうした次元過多(over-dimensioning)は、このようにして実施される外挿法の表象性をさらに減じる。
【特許文献1】米国特許第4,238,954号明細書
【特許文献2】露国特許第2,085,891号明細書(RU 2 085 891)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が目的とするのは、タイヤ、たとえば航空機のタイヤ用の可動式試験機、およびそのための運用(実施)方法であり、これによって上記のさまざまな問題を解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はタイヤ用の可動式試験機を提案するが、このものは、直線および円形軌道をたどることができる自走式(動力内蔵型)プラットフォームからなり、これは以下の構成要素を具備してなる。
・試験されるホイール‐タイヤアセンブリ用の試験機器モジュールであって、このアセンブリをあらゆる方向に向けること、それを傾けること、そしてそれに垂直力を作用させることを可能とする試験機器モジュール
・サスペンションおよび駆動輪を備えた第1の旋回アクスル
・記憶手段と接続された処理ユニット
・試験サイクルの制御手段であって、上記アセンブリの向きを、それに加えられる荷重と共に制御可能とする試験サイクルの制御手段
【0012】
有利なことには、本試験機はさらに、位置決めシステムと関連付けられた捕捉・軌道制御手段と、制御ユニットとの通信を可能にする無線通信手段と、サスペンションおよび非駆動輪を備えた旋回式の第2のアクスルとを具備してなる。それはまた遠隔操縦可能である。それは輸送可能である。
【0013】
ある有利な実施形態では、各アクスルは四つの車輪を備える。上記試験機は、駆動輪を備えた八つのアクスルと、非駆動輪を備えた四つのアクスルとを具備してなる。機器モジュールは、試験されるタイヤに加えられる垂直力を発生させることを可能にする第1のアクチュエータと、それがある角度をなすことを可能にする少なくとも一つの第2のアクチュエータとを具備してなる。二つのディーゼルエンジンが少なくとも二つの液圧ポンプを駆動し、そのうちの一方はプラットフォームの左側部分のためのものであり、他方は右側部分のためのものである。各アクスルはプラットフォームの高さを調整するためのアクチュエータを備える。少なくとも一つのカメラによって本試験機の軌道を監視することが可能となり、そして少なくとも一つのカメラによって試験されるタイヤの変形を評価することが可能となる。
【0014】
上記試験機は、試験されるタイヤが装着されたホイールスピンドルと、それを保持するフォークとの接点に配置されたトラクション/圧縮センサーを具備してなる。それは、たとえば以下に挙げるようなものからなる。
・前後方向の力および垂直軸周りのモーメントを測定するための二つのセンサー
・垂直力および前後方向の軸周りのモーメントを測定するための二つのセンサー
・横力を測定するためのセンサー
・横軸周りのモーメントを測定するためのセンサー
・制動トルクを測定するためのセンサー
【0015】
本試験機は、フラッシングライト型の信号システムと、警報サイレンとを具備してなる。
【0016】
有利なことを言うと、上記機器モジュールは、固定式であってかつ/または取り外し可能なバラストによって支援されたアクチュエータを具備してなるが、このバラストは試験されるタイヤに加えられる垂直力を発生させることができる。
【0017】
本試験機は分解可能であり、かつ三つのバランス取りされたセクション、すなわち二つのプラットフォーム半体および機器モジュールによって形成され、この二つのプラットフォーム半体は自走式(動力内蔵型)のものである。
【0018】
ある有利な実施形態では、試験されるホイール‐タイヤアセンブリは、航空機用のホイール‐タイヤアセンブリである。
【0019】
本発明はまた、上記試験機の運用方法に関し、この方法は以下のステップを具備する。
・試験機を試験トラックにおける、ある位置に配置するステップと、
・試験機の理想軌道に関して、試験トラックの前後方向軸線上において低速で学習するステップと、
・一つ以上の試験ステップであって、それぞれが、
上記試験機を増速させる段階と、
試験段階であって、予めプログラムされかつ試験機にアップロードされた、試験されるタイヤの一連の滑り角が、その間に開始される試験段階と、
停止段階と、を具備する試験ステップ
【0020】
本発明の試験機は、試験されるタイヤの、垂直荷重、滑り角および速度に関する最も極端な状況を含む、全ての使用状況を再現することを可能にする。この試験機によって、このタイヤを着陸滑走路上で、寒冷なあるいは暑い天候において、また滑走路が乾燥しているかあるいは劣悪な(霜、雨、その他)状態であっても、直接試験することが可能となる。
【0021】
有利なことには、本発明の試験機は、以下のことを可能にする。
・6"(1.524m)までのサイズの航空機用タイヤの試験を可能にする。
・直線および/または円形軌道に関して、空港滑走路特有のさまざまな面上でタイヤの試験を可能にする。
・さまざまな安定化速度(90km/hの最大直線速度;29.5°/sの最大角速度)で、あるいは直線軌道における制動段階のためにタイヤを回転させることを可能にする。
・タイヤに1ないし75トンの垂直荷重を加えることが可能となる。ここで、加えられる最大荷重は当該タイヤのタイプに依存し、しかもそれは、30km/h以上の速度および円形軌道に関しては45トンまでに制限されるであろう。
・+/−90°の、軌道に対するタイヤ滑り角を与えることが可能となる(垂直荷重が45トン以上の場合には+/−30°までに制限される)。
・+/−5°の、垂直面に対するタイヤのキャンバー角を与えることが可能となる。
・タイヤに、たとえば30トンの荷重を負わせることによって、移動していない装着された航空機用タイヤを試験することが可能となる。
・タイヤに、たとえば45トンの荷重を負わせることにより、低速で、横揺れ、着陸あるいは離陸の状況において、地面の上で航空機用タイヤを試験することが可能となる。
・タイヤに、たとえば45トンの荷重を負わせることにより、高速にて、地面の上で航空機用タイヤを試験することが可能となる。
【0022】
本試験機はまた着陸を模することができる。最後に、それは、ホイール‐タイヤアセンブリの全制動システムを試験することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示す、本発明に係るタイヤ(例えば航空機用のタイヤ)用の可動式試験機は、遠隔操縦可能な自走式(動力内蔵型)プラットフォーム10からなっており、このプラットフォーム10は直線および円形の軌道をたどることができる。プラットフォーム10は、
記憶手段16に接続された処理ユニット15であって、以下の構成要素を制御可能な処理ユニット15と、
試験されるホイール‐タイヤアセンブリ用の試験機器モジュール11であって、このアセンブリをあらゆる方向に向けること、それに角度を付けること(すなわち「キャンバー角」を与えること)、そしてそれに垂直力を加えることを可能にする試験機器モジュール11と、
駆動輪と、場合によっては非駆動輪を備えた、サスペンションを有する旋回アクスルE1・・・Enと、
(必要とあれば)遠隔位置に配置された制御ユニット18との通信を可能にする無線通信手段17と、
(必要とあれば)位置決めシステム20に接続された軌道捕捉制御手段19と、
少なくとも一つの試験サイクル用の制御手段21であって、試験される上記ホイール‐タイヤアセンブリ12の向きを、そしてまたそれに加えられる荷重を制御可能な制御手段21と、を具備してなる。
【0024】
有利なことには、この試験機は、たとえばセミトレーラによって輸送可能とすることができる。
【0025】
図2、図3および図4に示す実施形態では、上記アクスル(それぞれが、たとえばトラックの四つの車輪25を備える)には、計12個の参照符号E1ないしE12を付している。他の実施形態では、この12個のアクスルの代わりに、その全てが駆動輪である4個の航空機用車輪を使用可能である。
【0026】
たとえばこれらアクスルの少なくとも2個は、8個の参照符号E3,E4,E5,E6,E7,E8,E9およびE10を有し(装備37を備える)、かつ被駆動アクスルである。他のアクスルE1,E2,E11およびE12は非駆動アクスルである。
【0027】
機器モジュール11は、一つの第1のアクチュエータ26と少なくとも一つの第2のアクチュエータ27とを具備してなり、前者は試験されるタイヤ12に加えられる垂直力を発生させることを可能とし、一方、後者はそれを傾斜させることを可能とする。
【0028】
クラウンホイール32、ギア30および31によって、試験されるタイヤ12を全ての方向に旋回させることが可能となっている。
【0029】
2基のディーゼルエンジン35が、少なくとも2基の液圧ポンプ36を駆動する。その一方はプラットフォーム10の左側部分のためのものであり、他方は右側部分のためのものである。これは液圧式モーター37を用いて駆動アクスルに動力を伝達する。
【0030】
制御回路によって、アクチュエータ39を用いて上記アクスルE1ないしE12の向きを制御することが可能となっている。これらアクスルのそれぞれは、さらにサスペンションシステムを備え、このサスペンションシステムは、アクチュエータ40を用いてプラットフォーム10の高さを変更することが可能となっている。たとえば8個の支持輪(図示せず)を設けることも可能である。
【0031】
さまざまな、その他の構成要素、すなわち
・貯蔵状態の液圧回路流体を収容すると共に、温度緩衝器として機能する液圧流体タンク41、
・オイル冷却システム42、
・全ての制御手段に電力を供給する電力ハウジング43が、さらに図2に示されている。
【0032】
プラットフォームの中央には、試験されるタイヤ12を備えた機器モジュール11が配置されている。滑り運転中、非駆動輪は、試験されるホイール‐タイヤアセンブリによって発生する横力と対抗する横力を発生させるよう方向付けられる。
【0033】
試験されるタイヤに加えられる垂直力は、図4に示す固定式あるいは取り外し可能なバラスト44および45に支援された第1のアクチュエータ26によって創出される。
【0034】
本発明の試験機によれば、タイヤによって生じる力を、タイヤ/地面接点において測定することが可能となる。
【0035】
本試験機によって測定される値は次のようなものである。
・ホイール基準に関して試験されるホイール‐タイヤアセンブリの中心における力のトルク
・試験機の実際の軌道
・実際の滑り角
・実際のキャンバー角
・試験されるタイヤが装着されたホイールの制動トルク
・制動機構の温度
・試験されるタイヤに加えられる垂直荷重
・カメラを用いて得られた、試験されるタイヤの変形
・試験されるタイヤの圧力
【0036】
従来型の試験機が抱えていた、センサーの取り付けに関するサイズの問題は、もはや存在しない。本発明に係る試験機は、センサーを設置するのに十分なスペースが存在する。
【0037】
本試験機は、図3に示す三つの部分(プラットフォーム半体50、プラットフォーム半体51および機器モジュール11)に分解可能であり、これによって輸送が容易なものとなっている。これら三つの部分は、転倒のおそれがないようにバランス取りされる。
【0038】
本発明に係る試験機の運用方法は、以下のステップを具備してなる。
・そのさまざまな部品を組み立てた後、試験トラックの、あるポジションに試験機を配置するステップ
・たとえばGPS(「グローバルポジショニングシステム」)型の位置決めシステムを用いて、この軌道のポイントを捕捉しながら、トラックの前後方向軸線に沿って低速で試験機を移動させることによって「理想的な」軌道を学習させるためのステップ
・一つまたは複数の試験ステップであって、それぞれが、
試験機を増速させる段階であって、その間に、キャンバー角および垂直荷重を試験されるタイヤに付加することが可能であり、滑り角ゼロが特定され、かつ試験機が設定速度まで加速される段階と、
試験段階であって、その間に、試験速度に達したとき、予めプログラムされかつ試験機にアップロードされた一連の滑り角が周期的に開始され、そして試験されるタイヤが装着されたホイールの制動を伴ってあるいはそれを伴わずに、所定の持続時間にわたって設定された滑り角が保持される試験段階と、
停止段階であって、液圧モーターの制動および滑り角のリセットからなる停止段階と、を具備する試験ステップ
【0039】
液圧式モーターの一つが故障した場合、試験されるタイヤが装着されたホイールも制動される。この停止段階の間、制御手段は試験機を「理想的な」軌道上に維持する。トラックから外れるリスクが制御手段または監督オペレータによって認識されたとき、安全停止装置を自動的に起動させることが可能である。
【0040】
[実施例]
上記実施形態では、本発明の試験機は、機器モジュールの両側に配置された二つのプラットフォーム半体からなる、一つの自走式プラットフォームを具備してなる。
【0041】
この試験機は、以下のように形成可能である。
【0042】
1)主要特徴
本試験機は、12個の懸架された旋回アクスルを備える。ここで各アクスルは、窒素が充填された「Michelin 245/70 R17.5 XTE2」型の四つのタイヤを備える。
【0043】
二つのプログラム可能なロジックコントローラは、軸コントローラによって、各方向ディストリビュータを制御する。ここで、測定リターンは当該アクスルに取り付けられた絶対エンコーダによって提供される。
【0044】
組み立てられた試験機は、長さ14m、幅4.5m、そして高さが5.5mである。その重量は、バラストが存在するか否か次第で、60トンから190トンの間で変化する。
【0045】
分解された上記試験機は特に以下の部分からなる。
・以下の特徴を備えた二つのプラットフォーム半体
重量<35トン
長さ:14メートル
幅 :2.4メートル
高さ<3.7メートル
・以下の特徴を備えた機器モジュール(下側部分)
重量<10トン
長さ:2.3メートル
幅 :2メートル
高さ<3メートル
・以下の特徴を備えた機器モジュール(上側部分)
重量<15トン
長さ:3メートル
幅 :3メートル
高さ<3.5メートル
・それぞれが概ね4.5トンの重量がある、スチールプレートからなる「死荷重」バラスト。各プレートは以下のような寸法を有する。高さ:0.2m、長さ:2.85m、幅:1m。こうしたプレートは27.5トンを2セット形成する(重量<55トン)。
・以下の特徴を備えた制御ユニット
重量<2トン
長さ:4.41メートル
幅 :2.44メートル
高さ<2.61メートル
【0046】
2)駆動
本試験機は、2個の液圧ポンプを作動させる2個の熱機関によって駆動される。これらのポンプは、駆動アクスルの二次調整動力トランスミッションを備えた8個の液圧式モーターを駆動する。液圧回路内の圧力は、実質的に一定の値に維持される。したがって、使用される流体の圧縮性に起因して体積が変化することはない。動力伝達減速モーターアセンブリの調波周波数は、事実上、無限大の値をとる。それゆえ、迅速かつ正確に動的速度を調整できる。
【0047】
自己調整式可変容量ピストンポンプが使用される(これは圧力を維持すると共に流れをキャンセルする)。
【0048】
上記モーターは可変容量モーターであり、これは以下のような利点を有する。それらは、単にその機能およびその制動を逆転することで、プラットフォームの前方および後方平行移動動作に関して使用される。制動段階においては、モーターの機能は逆転され、そしてポンプは機能しない。ゆえにモーターがポンプとして機能し、そしてエネルギーは圧力制限スイッチによって低減される。
【0049】
モーターの機能は速度サーボ回路によって常時調整される。設定速度は、実施される試験に適合するよう規定される。
【0050】
3)制御
本試験機は以下の三つの目的の達成を可能とする。
・運転されるプラットフォームおよびその稼働に関する全ての情報の供給(アラーム、警報、その他)
・人員による監督および自動制御下で実施される完全自律試験サイクル
・試験中の人員および設備の安全性
【0051】
ゆえに、本試験機は、オペレータ人員が搭乗しないことを特徴とする。試験中、本システムは、2基の搭載型のプログラム可能なロジックコントローラによって駆動され、そして「理想的」軌道をたどる。制御ユニット内で遠く離れて位置しているので、オペレータには、動作モードの選択を可能とする運転コンソールと、二つの平行移動/方向軸を備えたアナログジョイスティックと、試験を開始および停止のための二つの押しボタンが与えられる。
【0052】
制御ユニットとプラットフォームとの間の通信は独自の無線接続による。これは以下のことを可能にする。
・ビデオ伝送チャンネルを含む運転および測定伝達
・安全な伝送(優先指令)
【0053】
プラットフォームのアクスルは、三つのアクスルからなる四つのグループに、すなわち左前グループ、右前グループ、左後グループおよび右後グループ分類される。
【0054】
直線軌道に関して、同一グループのアクスルは連結ロッドによって機械的に連結される。その結果、それらは同じ方向指令を受け、これは独立した作動値の平均である。
【0055】
理想的軌道のための学習試験は、トラックの前後方向軸線上で低速にて、活動に係る各試験の開始時に実施される。DGPSシステム(「ディファレンシャルグローバル位置決めシステム」)によって、この軌道のポイントを獲得することが、そしてトラックのコースの判定が可能となる。
【0056】
直線試験中、プログラム可能なロジックコントローラは、DGPS測定値および速度計測定値を用いて、実際の軌道および、たどられたコースを識別する。学習試験の測定値との比較によって、制御装置は、試験機を理想的な軌道上に位置させるために、アクスルの群の個々に付与される修正角度を自動的に特定する。
【0057】
本試験機によって着陸シミュレーションの実施も可能となる。その目的は、試験されるタイヤを、55km/h以上のプラットフォーム平行移動速度および約3m/sの垂直衝撃速度に関して地面と接触させることである。
【0058】
特定の試験のシーケンスは次の三つの段階に分けることができる。
・試験機の増速の段階。この間、キャンバー角はゼロに設定される。垂直荷重は試験されるタイヤに加えられない。そして試験機は設定速度まで加速される。
・試験段階。この間に、試験速度に達したとき、+/−10°に制限された範囲内で、試験されるタイヤに滑り角を与えることができる。試験されるタイヤが装着されたホイールは3m/sの垂直速度で地面と接触させられる。予めプログラムされかつ試験機にアップロードされた一連の滑り角が、続いて段階的に開始され(発生させられ)、設定滑り角は設定持続時間にわたって維持される。車輪は制動されてもされなくてもよい。
・停止段階。これは液圧モーターを制動すること、および滑り角のリセットからなる。
【0059】
試験されるホイール‐タイヤアセンブリは、航空機の既存の制動デバイスを備え、これによって当該デバイスを、特にアンチロックシステムを試験することが可能となる。
【0060】
4)試験の監視
試験開始時、試験シーケンスのデータを再読するためのスクリーン(プラットフォームの運動学、スキッドスタート指令、その他)によって、制御ユニット内の試験監督者が、試験の実施前に、(彼の経験または以前の出来事を考慮して)このシーケンスを確認することが可能となる。そうしたシミュレーションによって、確認者は、試験トラックを用いてシーケンスの適合性を見ることができる。
【0061】
試験シーケンスはその後、二つのプラットフォーム半体のそれぞれのプログラム可能なロジックコントローラに無線伝送によってアップロードされる。プログラム可能なロジックコントローラの一方が「マスター」であり、他方が「スレーブ」であると見なされる。オペレータは、スタート押しボタンを押すことによって試験を開始する。プログラム可能な「マスター」ロジックコントローラが一連の試験シーケンスを実施する。動的軌道制御装置は、試験されるタイヤが装着されたホイールの滑り配向によって生じる横力に抗するようプラットフォームホイールの操舵角に直接働きかける。それは、このようにして、オペレータによって課された軌道の追従を、定格出力がそれを可能とするならば一定速度を維持することによって最適化する(別の状況では速度が持続されることになる)。
【0062】
全試験シーケンス中、オペレータは試験機に搭載されたカメラで、たどられる軌道を観測する。カメラがさらに試験機に配置されており、これによって試験されるタイヤの変形を評価することができる。軌道から逸れた場合、オペレータは制御ユニットからジョイスティックを用いて、この軌道を修正できる。特有のビデオリンクによって、搭載されたビデオシステムと制御ユニットに設置されたビデオユニットとの間の通信が可能となる。オペレータは、一つ以上のカメラからの画像を、自身のスクリーンに表示できる。したがって、試験機の後に続く「トラッキング車両」を必要としない。
【0063】
移動中、駆動アクチュエータおよびセンサーの状態に関する情報は制御ユニットに伝達され、これによって監督者は測定される値の変化をモニターできる。
【0064】
プログラム可能な「マスター」ロジックコントローラは、信号のリセットによる安全リンクのロス(起こり得るマイクロカットアウトを抑制するための0.5ないし4秒の間で調整可能な遅延)の通知を受けることが可能であり、その後、事前に規定された条件に従って試験機を停止させるためのプロシージャーを起動させることが可能である。
【0065】
試験のキャンセルおよび試験機を停止させるためのプロシージャーを、停止押しボタンを用いて制御ユニットからオペレータが発し、そして安全システムによって伝達することも可能である。
【0066】
自動安全プロシージャーがプログラム可能なロジックコントローラによって利用され、試験中の危険な状況が制限され、特に、その速度に適合させるためにプラットフォーム車輪の滑り角の制限、粗雑な軌道修正の制限、および試験されるタイヤが装着されたホイールの大きな滑り角に関する試験持続時間の制限が行われる。
【0067】
試験されるタイヤの相対的測定に加えて、試験機の動的制御および制御ユニット内での試験の監督を可能とするために、以下のような、さまざまな値が測定される。
・試験機の移動速度
・その移動距離
・その前後方向および横方向加速度
・プラットフォームのトリム(ピッチングおよび揺れ)
・プラットフォームの高さ
・プラットフォームの実際の軌道
・プラットフォームの経路
【0068】
5)操作/運転モード
以下のような、さまざまな動作/運転モードが規定されている。
・分離モード。このモードでは、各プラットフォーム半体は自力で走行し、しかもプログラム可能なロジックコントローラを有する。組み立て/分解段階では、二つのプラットフォーム半体は分離させられ、かつローカル制御パネルによって独立して操縦される。このモードでは、平行移動および方向動作のみが低速で許される。組み立て段階において、二つのプラットフォーム半体が機器モジュールの周りでいったん組み立てられると、連結ケーブルが接続され、装置は組み立てられたものと見なされる。その後、分離モードとなることはできなくなり、プログラム可能な「マスター」ロジックコントローラの制御パネルのみが使用できる。
・局所マニュアルモード。このモードでは、プログラム可能な「マスター」ロジックコントローラに接続された制御パネルは、試験機によってなされるであろう全ての動作にアクセスできる。制御パネルは可動式であり、かつ概ね3mのケーブルによって電気キャビネットに接続されている。それによって、(プラットフォームアクスルの回転角、プラットフォームの高さ調整および試験されるタイヤが装着されたホイールの表示と共に)試験機を動作状態あるいは隔離状態とすることが、前方/後方平行移動させることが、左側/右側方向転回させることが可能となる。平行移動および方向動作は低速時にのみ制限される。
・遠隔マニュアルモード。これは先のものと類似のモードであるが、制御ユニットから直接操縦されるモードである。
・自動モード。これは、試験されるタイヤに関する試験を実施するための試験機の動作モードである。
【0069】
6)マン/マシンインターフェース
制御ユニットに関して、オペレータは、操縦インターフェースを提供するPC(「パーソナルコンピューター」)型コンピューター端末を有し、これは以下のことを可能にする。
・パラメーターの設定および試験概要の監視
・運転/駆動モードの選択
・駆動アクチュエータおよびセンサーの状態および数値のパネルへの表示
・故障の報告およびアラーム
【0070】
オペレータはまた、測定インターフェースをもたらすPC型コンピューター端末を有し、これは以下のことを可能にする。
・試験機で得られたデータの保管。ただし、あるデータは、実施可能な試験のリアルタイム監視を行うため、無線によって制御ユニットに送信可能である。
・コンピューターサポートで集められたデータの、試験終了時点での記憶
【0071】
ビデオベイによって以下の機能がもたらされる。
・搭載カメラから無線通信によって送信された画像の獲得
・カラースクリーン上での表示あるいは一つ以上の画像
・各カメラのズーム調整、位置および向きの制御
【0072】
7)計測
試験されるタイヤによって生じる力のトルクは、試験されるタイヤが装着されたホイールの中心に限りなく近接して配置された特別な計測器によって測定される。ここでトルクが計算される。トラクション/圧縮センサーは、試験されるタイヤを備えたホイールのスピンドルと、このホイールを保持するフォークとの接点に配置される。このセンサーとしては例えば以下のようなものが挙げられる。
・前後方向の力および垂直軸周りのモーメント(セルフアライメントトルク)を測定するための二つのセンサー
・垂直力および前後方向の軸周りのモーメントを測定するための二つのセンサー
・横力を測定するための一つのセンサー
・横軸周りのモーメントを測定するための一つのセンサー
・制動トルクを測定するための一つのセンサー
【0073】
エンコーダが、試験機の動的制御を可能にする、さまざまな値(方向付けアクチュエータの作動量、プラットフォーム車輪の速度など)を測定するために、試験機のさまざまな部分において使用される。
【0074】
実施される試験シーケンスによれば、試験されるタイヤによって発生する力を可能な限り正確に測定するために、互換性のあるセンサーの列が利用可能とされる。
【0075】
8)装置の組み立て
機器モジュールは以下の二つの特有の構成要素からなる。
・試験されるタイヤが装着されたホイールを、異なる角度形態で位置決めすることを可能にするフォーク。これには、測定される力用のセンサーが配置されており、滑り角方向付けクラウンホールがこのフォークに連結されている。
・上記フォーク上に配置された円筒形状部分。これはアクチュエータからなっており、このアクチュエータは、フォークの高さを調整すること、および垂直力を加えることを可能とする。
【0076】
このモジュールおよび二つのプラットフォーム半体のハンドリングおよび組み立てにはクレーンが必要である。
【0077】
上記機器モジュールは続いて二つの自走式プラットフォーム半体によって包囲される。二つのプラットフォーム半体はまず、試験機の全長に沿って一つにボルト留めされる。続いて、それらは上記モジュールに対してボルト留めされる。
【0078】
上記クレーンはまた、プラットフォーム上で使用されるバラストのハンドリングにも必要である。搭載されるバラストの量は、選択された試験シーケンスに依存する。
【0079】
9)信号‐ライティング
本試験機は、それが稼動中であることを示すフラッシングライト型の信号システム、および、場合によってはサイレンを備えている。
【0080】
本試験機は、二つの300Wランプおよび電気キャビネット内の蛍光管を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の試験機の概略図である。
【図2】本発明の試験機の概略側面図である。
【図3】本発明の試験機の概略平面図である。
【図4】図3に示す切り口AAに沿った本発明の試験機の概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 自走式プラットフォーム
11 機器モジュール
12 ホイール‐タイヤアセンブリ
15 処理ユニット
16 記憶手段
17 無線通信手段
18 制御ユニット
19 軌道捕捉制御手段
20 位置決めシステム
21 制御手段
25 車輪
26 第1のアクチュエータ
27 第2のアクチュエータ
30,31 ギア
32 クラウンホイール
35 ディーゼルエンジン
36 液圧ポンプ
37 液圧式モーター
39,40 アクチュエータ
41 液圧流体タンク
42 オイル冷却システム
43 電力ハウジング
44,45 バラスト
50,51 プラットフォーム半体
E1〜E12 アクスル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用の可動式試験機であって、直線および円形の軌道をたどることができる自走式プラットフォーム(10)からなり、
試験されるホイール‐タイヤアセンブリ(12)を試験するための機器モジュール(11)であって、前記アセンブリをあらゆる方向に向け、それを傾け、それに対して垂直力を作用させることを可能にする機器モジュール(11)と、
サスペンションおよび駆動輪を備えた第1の旋回アクスルと、
記憶手段(16)に接続された処理ユニット(15)と、
前記アセンブリの向き、およびそれに対して加えられる荷重の制御を可能とする、試験サイクルを制御するための手段(21)と、を具備してなることを特徴とする可動式試験機。
【請求項2】
位置決めシステム(20)に接続された捕捉および軌道制御手段を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項3】
遠隔操縦が可能とされた請求項1または請求項2に記載の試験機。
【請求項4】
制御ユニット(18)との通信を可能にする無線通信手段(17)を具備してなることを特徴とする請求項3に記載の試験機。
【請求項5】
輸送可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項6】
サスペンションおよび被駆動輪を備えた、第2の旋回アクスルを具備してなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の試験機。
【請求項7】
各アクスルは四つの車輪を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の試験機。
【請求項8】
駆動輪(E3〜E10)を備えた八つのアクスルと、非駆動輪(E1,E2,E11,E12)を備えた四つのアクスルと、を具備してなることを特徴とする請求項7に記載の試験機。
【請求項9】
前記機器モジュール(11)は、試験されるタイヤに加えられる垂直力を発生させることが可能な一つの第1のアクチュエータ(26)と、前記タイヤを傾けることを可能にする少なくとも一つの第2のアクチュエータ(27)と、を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項10】
少なくとも二つの液圧ポンプ(36)を駆動する二つのディーゼルエンジン(35)を具備してなり、その一方は前記プラットフォームの左側部分のためのものであり、もう一方は右側部分のためのものであることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項11】
各アクスルは、前記プラットフォームの高さを調整するためのアクチュエータ(40)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の試験機。
【請求項12】
軌道をモニターすることを可能にする少なくとも一つのカメラと、試験されるタイヤの変形を評価することを可能にする少なくとも一つのカメラと、を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項13】
試験されるタイヤが装着されたホイールのスピンドルと、それを保持するフォークとの接点に配置されたトラクション/圧縮センサーを具備してなることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項14】
前後方向の力および垂直軸周りのモーメントを測定するための二つのセンサーと、
垂直力および前後方向の軸周りのモーメントを測定するための二つのセンサーと、
横力を測定するための一つのセンサーと、
横方向の軸周りのモーメントを測定するための一つのセンサーと、
制動トルクを測定するための一つのセンサーと、を具備してなることを特徴とする請求項8に記載の試験機。
【請求項15】
フラッシングライト型の信号システム、およびサイレンを具備してなることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項16】
前記機器モジュール(11)は前記プラットフォームの中心に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項17】
前記機器モジュールは、固定されかつ/または取り外し可能なバラスト(44,45)によってアシストされたアクチュエータ(26)を具備してなり、前記バラストは、試験されるタイヤに加えられる垂直力を発生させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の試験機。
【請求項18】
分解可能であって、かつ三つのバランス取りされた部分、すなわち二つのプラットフォーム半体(50,51)および機器モジュール(11)から形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の試験機。
【請求項19】
前記二つのプラットフォーム半体(50,51)は自走式のものであることを特徴とする請求項18に記載の試験機。
【請求項20】
試験される前記ホイール‐タイヤアセンブリ(12)は、航空機用のホイール‐タイヤアセンブリであることを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の試験機。
【請求項21】
請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載の試験機の運用方法であって、
前記試験機を試験トラックにおける、ある位置に配置するステップと、
前記位置決めシステムを用いてこの軌道のポイントを捕捉しながら、前記トラックの前後方向軸線に沿って低速で前記試験機を移動させることによって理想軌道を学習させるステップと、
一つ以上の試験ステップと、を具備することを特徴とする運用方法。
【請求項22】
前記試験の各ステップは、
前記試験機を増速させる段階と、
試験段階であって、予めプログラムされかつ試験機にアップロードされた、試験されるタイヤの一連の滑り角が、その間に開始される試験段階と、
停止段階と、を具備することを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−522467(P2007−522467A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552670(P2006−552670)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050080
【国際公開番号】WO2005/078407
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)