説明

可動接触装置の可動子受けおよびその形成方法

【課題】電子回路の回路遮断器用可動接触装置の可動子受けの成形方法において、使用する素材の導電性材料の歩留りを向上させる成形方法を提供する。
【解決手段】導体接続部2bの脚部2dにおいて、接触面2cの第1の折り曲げ線10に沿って山折りで曲げられて形成され、第1の折り曲げ線10は、接触面2cの中心線に対して所定の鋭角θを有して設けられた脚部2dに在って、中心線に垂直に設けられ、導体接続部2bは脚部2dにおいて、第2の折り曲げ線11に沿って基部2aに接し、かつ接触面2cが中心線に対して所定の間隔を有して谷折りで曲げられ、第2の折り曲げ線11は、脚部2dに在って中心線に対して所定の鋭角θを有して設けられたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力回路に用いられている回路遮断器の可動接触装置用可動子受けおよびその形成方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回路遮断器において用いられる可動子受けは、例えば、特許文献1に示されているように銅のような導電性に優れ、プレス加工などにより板材を折り曲げて形成するような加工性に優れた材料を用いて形成される。可動子受けは本体ケースに装着される基部と、この基部から直角に立ち上げられて、先端が平行に対向する一対の接続導体部と、この一対の接続導体部の一端部から相対向する方向に突出した一対の突出部とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−268697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路遮断器の通電経路の一部となる可動子受けでは、回路が閉じている際の通電容量を確保するために、所定の断面積が必要となる。その上で可動接触子と可動子受けの接続の際には、可動子受けの接続導体部を撓ませた後、可動接触子に設けられた1対の突出部に可動接触子の貫通孔に嵌装することで接続している。可動子受けの1対の接続導体部は銅の板材を折曲げることで形成しているが、接続の際に可動接触子が接続可能な程度に十分に撓むように、1対の接続導体部を十分に長くすることで撓み量を確保している。
【0005】
図4に示すように従来の可動子受けは、可動子受けの接続導体部に対して平行な山折線と谷折線を持つ方向に折り曲げを2回行うことで、接続導体部の形成を行っている。
しかし、従来の折曲げ方向による可動子受けの形成方法では、図4から判るように1対の接続導体部が長いほど可動子受けの形成前である展開した状態において必要な材料寸法が大きくなってしまうため、材料歩留まりが悪化するという問題がある。
この発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、必要な材料寸法を低減し、材料歩留まりを向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による可動接触装置の可動子受けは、可動子受けの基部につながり対向する接触面を有する接続導体部が、その脚部において、接触面が第1の折り曲げ線に沿って山折りで曲げられて形成されており、前記第1の折り曲げ線は、接触面の中心線に対して互いに離れるような所定の鋭角θを有して設けられた脚部に在って、前記中心線に対して垂直に設けられたものであり、また接続導体部は脚部において第2の折り曲げ線に沿って基部に接し、かつ接触面が中心線に対して所定の間隔を有するよう谷折りで曲げられて形成されており、前記第2の折り曲げ線は脚部に在って前記中心線に対して所定の鋭角θを有して設けられたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明による可動接触子の可動受けは、上記のような構成を有しているので、従来に比較して可動子受けの折り曲げ前の材料展開状態がコンパクトになることから、必要な材料寸法を小さくでき、かつ材料歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1の可動接触装置の要部断面を示す図である。
【図2】実施の形態1の可動子受けを示す斜視図である。
【図3】実施の形態1の可動子受け形成前の展開図である。
【図4】従来の可動子受けを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明における実施の形態1における可動接触装置の要部を断面した平面図を示す。
図2は、実施の形態1の可動子受け3の斜視図を示す。
図3は、可動子受け3の形成前の展開図を示す。
図1において合成樹脂材料で形成されたクロスバー1は、本体ケース(図示せず)に回動自在に支承されている。銅等の導電性の板を折り曲げて形成された可動子受け2は、図2に示すように、本体ケース(図示せず)に装着される基部2aと、この基部2aから直角に立ち上げられて、先端が平行に対向する一対の接続導体部2bと、この一対の接続導体部2bの一端部から相対向する方向に突出した図1に示すように一対の突出部の接触面2cとで構成されている。可動接触子3は、先端部に可動接点(図示せず)が固着され、後端部の貫通孔(図示せず)に可動子受け2の一対の突出部の接触面2cが嵌装され、可動接触子3が回動自在に保持されている。4は接圧バネであり、1対のコイルバネ部4aと、このコイルバネ部4aを連結するように延びるコの字状の腕伏せバネ部4bと、腕伏せバネ部4bとは反対方向に延長されクロスバー1の係止部1aと係合する足部4cとで形成されている。
【0010】
図2の接続導体部2bは可動接触子3の板厚寸法Tよりもやや狭い間隔寸法tで平行に折り曲げられ、組込時にはこれを押し広げ撓ませることで可動接触子3が挿入される。従って、接続導体部2bは、可動接触子3の後端部3aを弾性的に挟持して、可動接触子3の両側の側面3bに摺動接触し、可動接触子3の両側の側面3bと摺動可能なように電気的に接触させて通電経路を確保している。
接圧バネ4はコイルバネ部4aの内側端面が可動接触子3を挟持した一対の接続導体部2bの外側側面と、外側の端面がクロスバー1の凹部(図示せず)の壁面の間に圧縮された状態で嵌装され、1対のコイルバネ部4aにより、1対の接続導体部2bの外側から接続導体部2bを可動接触子3の側面(図示せず)に押圧することにより、接続部の接触圧力が得られると共に、接圧バネ足部4cがクロスバー1の係止部1aに係合し、腕伏バネ部4bが可動接触子3の背面3aに掛かり、この腕伏せバネ部4bに生じるモーメントによって可動接触子3に回転モーメントを与え、これにより固定接点と可動接点の接触圧力を発生させている。
【0011】
可動子受け2は、銅等の導電性の板材を折り曲げることにより、可動接触子3との接続部分となる可動子受け2の接続導体部2bを形成しているが、図1のような可動子受け2の形状にするために、この実施の形態1では、図3の可動子受け形成前の展開図に示すように、成形前の可動子受け2eの対向する接続導体部2bの接触面2cの中心線Y−Yに対して、互いに離れるような所定の鋭角θを有して前記可動子受け2eの基部2aから、前記対向する接続導体部2bにつながる脚部2d面の前記接触面2cに在り、前記中心線Y−Yに対して垂直方向に設けられた第1の折り曲げ線10に沿って、前記接続導体部2bを山折りで折り曲げるとともに、前記脚部2d面に在り、前記中心線Y−Yに対して所定の鋭角θを有して設けられた第2の折り曲げ線11に沿って、前記基部2aに接しかつ前記接触面2cが前記中心線Y−Yに対して所定の間隔tを有して、互いに対向するよう谷折りで折り曲げて形成される。
なお、図2には接続導体部2bが基部2aに対して、直角となるような立上げ角θで折り曲げられているが、必ずしもこれに限ることなく可動接触装置の構造によっては立上げ角θが鋭角あるいは鈍角となるように折り曲げる場合であっても本実施の形態1による形成方法は適用できる。
その結果、図2のような互いに平行な1対の接続導体部2bを持った可動子受け2を形成することができる。以上から、回路遮断器における可動接触装置において、必要な通電容量を確保するための所定の断面積が確保でき、また可動接触子3の寸法ばらつきを許容した可動接触子3と可動子受け2の組立が可能となり、また可動接触子3と可動子受け2の接続を許容するための可動子受け2の撓み量を確保できる。
そして上記のような方法によって形成された構成を有しているので、可動子受け2の形成における材料の必要寸法が小さくなる。
この材料歩留り向上は、各定格容量を有する回路遮断器の可動受けの材料が10〜20%程度低減され、省資源、原材料の減量化等およびこれに起因するエネルギー消費量の削減や生産工程に於ける歩留りの向上等々の優れた効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
この発明は、電力回路に用いられている回路遮断器の可動接触装置用可動子受けに利用可能である。
【符号の説明】
【0013】
2 可動子受け、2a 基部、2b 接続導体部、2c 接触面、2d 脚部、
10 第1の折り曲げ線、11 第2の折り曲げ線、θ,θ 所定の鋭角、
θ 立上げ角、Y−Y 中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接触装置の可動子受けであって、
前記可動子受けの基部につながり対向する接触面を有する接続導体部がその脚部において、前記接触面が第1の折り曲げ線に沿って山折りで曲げられて形成されており、
前記第1の折り曲げ線は、前記接触面の中心線に対して互いに離れるような所定の鋭角θを有して設けられた前記脚部に在って、前記中心線に対して垂直に設けられたものであり、また前記接続導体部は前記脚部において第2の折り曲げ線に沿って前記基部に接し、かつ前記接触面が前記中心線に対して所定の間隔を有するよう谷折りで曲げられて形成されており、前記第2の折り曲げ線は前記脚部に在って前記中心線に対して所定の鋭角θを有して設けられたものであることを特徴とする可動接触装置の可動子受け。
【請求項2】
次のステップを有することを特徴とする可動接触装置の可動子受けの形成方法。
(1)可動子受けの基部につながり対向する接触面を有する接続導体部とその脚部において、前記接触面の中心線に対して互いに離れるような所定の鋭角θを有して設けられた前記脚部に在って、前記中心線に対して垂直に設けられた第1の折り曲げ線に沿って、前記接触面を山折りに曲げるステップ。
(2)前記接続導体部が前記脚部において、前記基部に接するとともに、前記中心線に対して所定の鋭角θを有して設けられた第2の折り曲げ線に沿って前記接触面が前記中心線に対して所定の間隔を有するように前記接続導体部を谷折りに曲げるステップ。
【請求項3】
前記可動子受けが、プレス加工によって形成されることを特徴とする請求項2に記載の可動接触装置の可動子受けの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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