説明

可変シリカ対金属酸化物比を有するシリカ被覆金属酸化物ゾル

本発明は、金属分に富むシリカ質組成物及びこの組成物を作製する方法を提供する。前記組成物は、広範囲に変動し制御し得る、シリカ対金属酸化物比、表面形態、多孔性及び表面積を有する。この方法は、ケイ酸、金属酸化物分散物、及び塩基性ヒール溶液の調製を含む。ケイ酸及び金属酸化物分散物を混合して、ブレンドを作製し、当該ブレンドを前記塩基性ヒール溶液に制御可能に添加して、コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を含むシリカ質材料を形成する。ケイ酸の種類、金属酸化物の種類と濃度、及び反応条件などの要因により、シリカ質材料の表面形態、及び多孔性を含む特性が決まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、シリカ質組成物、及び、このような組成物を製造する方法に関する。特に、本発明は、金属含量が可変で制御可能なコロイド状シリカに関する。本発明は、特に、シリカ被覆金属酸化物ゾルに関連する。
【背景技術】
【0002】
コロイド状シリカなどのコロイド状材料の調製と使用は、一般に公知である。例えば、表面を金属で被覆したコロイド状シリカが、一般に公知であり、使用されている。通常、先ず、シリカコロイドが合成される。次いでこのコロイドを金属酸化物で被覆する。この手順の間に、金属の出発材料の性質や使用した被覆方法によっては、ネガティブ及びポジティブに荷電した表面が得られる。
【0003】
シリカコロイドを含む金属は、エレクトロニクス産業における化学的機械的研磨剤、特にコーティングの利用、及び触媒処理における支持材などの多くの用途に有用である。この多用途性にもかかわらず、従来型のシリカコロイドは、様々な不利益がある。このような金属含有シリカコロイドを調製するこの方法の限界は、達成可能な金属酸化物の最高含量が、約35重量パーセント金属酸化物であることである(米国特許出願第2005−0234136A1号、その内容全体が本明細書に取り込まれている)。
【特許文献1】米国特許出願2005−0234136
【0004】
典型的には、セシウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、及び鉄などの金属の達成可能な金属酸化物含量は、アルミニウムのそれより低い。現在の方法は、ケイ酸のイオン強度と伝導性を上げて、より高い金属含量でゲル化と沈殿を引き起こす。この金属がコロイド状シリカ粒子の表面上に導入されるので、シリカ粒子に添加される金属成分の量と種類は、粒子の表面面積と形態により事実上制限される。
【0005】
さらに、従来の表面処理を行ったシリカゾルは、中性pH(例えば、pH6〜8)で不安定である。アルミノケイ酸塩コロイドで明らかなように、例えば、コロイド状粒子表面に結合していないか、又は弱い結合をしているアルミニウム種は、通常中性pH条件で加水分解する。この加水分解によって、粒子被覆材料の沈殿又は凝集のいずれかが生じ、これは、中性pHで安定である化学的機械的研磨スラリなどの材料の需要が増え続けているため、エレクトロニクス産業にとっては特に問題である。
【0006】
したがって、金属負荷が高い改良されたシリカ質コロイド状組成物が必要とされている。これに応じて、効率的で、このような組成物を生産する費用効果の高い方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、金属分に富む新規なシリカ質組成物及び当該組成物の製造方法を提供する。この組成物は、1又はそれ以上の金属酸化物及び1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子をもつ金属酸化物分散物を含む金属分に富むシリカ質材料を含む。金属酸化物分散物の少なくとも一部は、シリカ質材料の層で被覆されている。この組成物は、シリカベースで約0.01重量パーセントから約99.99重量パーセントの金属酸化物含量(すなわち、シリカに対する金属酸化物の比が、約0.01:99.99から約99.00:0.01)でシリカ対金属酸化物比が制御可能である。
【0008】
ある態様では、本発明は、金属分に富むシリカ質材料中のシリカ対金属酸化物比を制御する方法を提供する。この方法は、ケイ酸、金属酸化物分散物、及び塩基性ヒール溶液の調製を含む。既知の比率でケイ酸と金属酸化物分散物を混合することで、ブレンドを形成する。続いて、このブレンドと塩基性ヒール溶液を合わせて、1又はそれ以上のコロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を形成する。コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子中のシリカ対金属酸化物比の調整は、既知の比率、とりわけ、以下に説明する要因に依存する。選択的に、この組成物は、限外ろ過、脱イオン化、加熱、表面機能化、又はその他の適した処理によりさらに処理してもよい。
【0009】
本発明の利点は、歯科用途、蛋白質分離処理、分子ふるい、ナノ多孔性膜、導波、光結晶、耐火物用途、ワインやジュースの清澄化、半導体やディスク・ドライブコンポーネントの化学的機械的平坦化、触媒担体、製紙における保水と排水の補助、充填剤、表面塗料、セラミック材料、焼流し鋳造バインダ、平坦化剤、プロパント、化粧品配合物、つやだし研磨剤、及びその他の物、などの様々な領域に有用な金属分に富むシリカ質材料を提供することである。
【0010】
本発明の別の利点は、コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を含む安定な金属酸化物ゾルを提供することである。
【0011】
本発明の更なる利点は、シリカをベースとして0.01重量パーセントから99.99重量パーセントの金属酸化物を含むコロイド状シリカ組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の利点は、金属酸化物含量が高度に可変で制御可能であるコロイド状シリカ被覆金属酸化物組成物及びこの組成物の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる利点は、広範囲のシリカ対金属酸化物比を有する金属酸化物ゾルを調製する方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる別の利点は、反応条件と使用する金属酸化物の種類に基づいて、表面形態、表面積及び多孔性が、可変であり制御可能な金属酸化物ゾルを調製する方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の利点は、シリカ表面の機能化又はその他の修飾に適した表面特性をもつ安定なコロイド状シリカ被覆金属酸化物分散物を提供することである。
【0016】
発明の詳細な説明
本明細書で用いたように、用語「コロイド」や「コロイド状」、「ゾル」、「酸ゾル」、その他を含むその他の同様の用語は、分散相と連続相をもつ2相系を意味する。本発明のコロイドは、連続的な又は実質的に連続的な液相、典型的には水溶液中に分散した又は懸濁した固相である。したがって、用語「コロイド」又は「コロイド状組成物」は、両方の相を含むが、用語「コロイド状粒子」又は「粒子」は、分散相又は固相を意味する。
【0017】
1つの態様では、本発明は、金属分に富むシリカ質組成物を提供する。このシリカ質組成物は、1又はそれ以上の金属酸化物及び1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子をもつ金属酸化物分散物を含む。ある態様では、この金属は、コロイド状シリカ粒子内で制御されて分散される。別の態様では、金属酸化物分散物の少なくとも一部がコロイド状シリカ粒子の少なくとも一部で被覆されている。
【0018】
ある態様では、本発明は、少なくとも1層のシリカ質材料で少なくとも部分的に又は全体を被覆した金属酸化物分散物を含むコロイド状組成物を提供する。このシリカ質材料は、[Si(OH)などのモノマ、[Si(OH)などの一般分子式[SiO(OH)4−2X(ここで、Xは0〜約4であり、Nは1〜約16である)をもつケイ酸モノマで構成されている1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子、及びその同等物又はその組み合わせを含むことを意図している。ある態様では、コロイド状シリカ粒子は、直径約2ナノメータ乃至約1000ナノメータをもつナノ粒子を含む。好適な態様では、このナノ粒子は、直径約4ナノメータから約250ナノメータである。
【0019】
別の態様では、このシリカ質材料は、内容積をもつ1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子を含み、金属酸化物分散物の少なくとも一部が完全に当該内容積内に存在する。換言すれば、このコロイド状シリカ粒子は、金属酸化物「コア」をもつ「外郭」を具える。代替の態様では、このコロイド状粒子は、球状、アモルファス又はその他の適した形状をとる。代替的には、この金属酸化物分散物は、1又はそれ以上の層のシリカ質材料で部分的に被覆されている。純粋な金属酸化物の表面の機能化は、大変困難である。この態様の外郭/コアのデザイン及びこのシリカの反応性は、機能化に適した表面の形態特性を提供する。代替的な態様では、この外郭は、表面機能化能を増強するためには金属酸化物(すなわち、金属酸化物上のシリカ質材料の部分的な被覆で十分である。)を完全に覆う必要ない。
【0020】
さらに、この金属酸化物ゾルは、ある種の被覆用途に用いることもできる。例えば、金属部分を、金属酸化物ゾルで被覆して、次いで加熱してその部分に耐熱性材料層を形成する。屈折率は、例えば、異なる金属酸化物を選択することによって本発明の態様に応じて調整することができる。この実施例においては、3:1のAI:SiOを用いて、金属部分を被覆する。加熱によって、この被覆をムライト又はAlSiOへ転換して、例えば、高温安定性、熱ショック耐性、低熱膨張係数、及び様々な腐食環境に対する耐性を提供する。
【0021】
このコロイド状組成物が、様々な金属酸化物を含むことは自明である。ある態様では、金属酸化物分散物は、1種の金属酸化物のみを含む。代替的には、この金属酸化物分散物は、複数の異なる金属酸化物を含む。代表的な金属酸化物は、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、ベーマイト結晶、又は、セシウム、チタニウム、ジルコニウム、鉄、ストロンチウム、亜鉛、セリウム、ニッケル、モリブデン、ホウ素、レニウム、バナジウム、銅の酸化物、その同等物、及びその組み合わせを含む。ある態様では、金属酸化物は、式MN+(OH)であり、ここで、「M」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一列遷移金属、第二列遷移金属、又はランタニド系元素であり;「N」は、1から約4であり;「A」は、1から約3であり;また、「B」は、0から約3である。好適な態様では、Mはアルミニウム、セシウム、チタニウム、ジルコニウム、鉄、ストロンチウム、亜鉛、又はその組み合わせである。別の好適な態様では、Mは、アルミニウム又はジルコニウムである。
【0022】
本発明は、また、金属分に富むシリカ質材料中の金属対シリカ比を制御する方法を提供する。この方法の実行に用いる合成方法は、金属分に富むシリカ質材料中で広範囲のシリカ対酸化金属比の制御を可能にする。好ましい態様では、シリカ質コロイド状粒子は、シリカベースで約0.01パーセント〜約99.99パーセントの金属酸化物(即ち、シリカ対金属酸化物比が約0.01:99.99〜約99.99〜0.01)を含む。より好適には、この粒子は、シリカベースで、0.1パーセント〜約99.9パーセントの金属酸化物(即ち、シリカ対金属酸化物比が約0.1:99.9〜約99.9:0.1)を含む。さまざまな種類と濃度の金属酸化物を、種類と濃度が既知のシリカ質材料と組み合わせると、以下の実施例で示すように、高度に制御可能で可変であるシリカ対金属比が生じる。
【0023】
1の態様では、この方法は、ケイ酸を調製するステップを具える。ケイ酸は適当な方法を用いて調製できると考えられる。その代表的な方法は、オルト酸ケイ酸ナトリウム(NaSiO)、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、ポリシリケイトナトリウム(NaSiO、ピロシリケイトナトリウム(NaSi)などのケイ酸ナトリウム、その同等物、及びその組み合わせをイオン交換樹脂で脱イオンさせるステップを具える。好適には、ケイ酸ナトリウムを、強酸イオン交換樹脂で脱イオン化させて、ケイ酸又は酸ゾルを作製する。代替的な方法は、よく知られているStober法を使用して、ケイ酸を作製する方法を含む。好適な方法は、脱イオン化である。
【0024】
ある態様では、この方法は、金属酸化物分散物を調製するステップを具える。この金属酸化物分散物は、本明細書により詳細に記載されているように様々な異なる金属を含む。金属酸化物分散物は、適当な方法を用いて調製することができる。好適な方法は、硝酸などの適した酸を用いて酸性化した溶液を調製し、その溶液に有効量の金属酸化物を添加する。例えば、10パーセントのAl分散物を調製するには、12.5グラムのベーマイトを、pH約3〜約4の硝酸溶液へ添加する。さらに詳細な実施例を以下に提供する。
【0025】
選択した金属酸化物の種類と(シリカに対する)量は、表面多孔率、表面積、及び組成物を含むコロイド状シリカ被覆金属酸化物のいくつかの要因を決定する。これらの要因と金属酸化物ゾル中の広範囲にわたるシリカ対金属酸化物比は制御することが可能であること考えられる(そして、以下の実施例で例証する)。
【0026】
ある態様では、この方法は、典型的には約10ミリグラム当量(「meq」)から約200meqの範囲で塩基性ヒール(heel)溶液を調製するステップを具える。このヒール溶液は、コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を形成する触媒として作用し、代替的に、様々な種類の塩基を含む。代表的な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、第四級化合物など、及びその組み合わせを含む。代表的な第四級化合物は、テトラエチル水酸化アンモニウム、テトラ−n−ブチル水酸化アンモニウム、テトラ−n−プロピル水酸化アンモニウム、テトラメチル水酸化アンモニウム、NNN−トリメチル−2−ブチル水酸化アンモニウム、NNN−トリメチル−プロピル水酸化アンモニウムなど及びその組み合わせを含む。
【0027】
1の態様では、本方法は、ケイ酸と金属酸化物分散物を既知の比率で混合して、ブレンドを形成するステップを具える。このような混合ステップは、温度、時間、振動、及び/又は、攪拌などの反応条件の調整をも含む。このような条件の詳細な例が以下に提供されている。好適な態様では、この混合ステップは、ケイ酸又は金属酸化物分散物を塩基性ヒール溶液に導入する前に行う。ある態様では、この順序は、金属分に富むシリカ質コロイド状粒子中のシリカ対金属酸化物比を高度に制御することができる。
【0028】
別の態様では、この方法は、ケイ酸と金属酸化物分散物ブレンドを塩基性ヒール溶液と組み合わせるステップを具える。このような組み合わせは、シリカベースで約0.01パーセントから約99.99パーセントの範囲で高度に制御可能な金属酸化物粒子により、1又はそれ以上のシリカ被覆金属酸化物粒子を形成する。この粒子のシリカ対金属酸化物比は、ケイ酸の種類と濃度、金属酸化物の種類と濃度、シリカと金属酸化物を混合して、ブレンドを形成する速度、ヒール溶液とブレンドを混合する速度、温度、時間、攪拌、及びその他の反応条件により異なる。この態様は、このような反応条件を決めて、調整して、所望のシリカ対金属酸化物比を得る。表面積や多孔性などのコロイド状粒子のその他の特性は、同様にこのような条件に影響される。代表的な反応条件の詳細な例を以下に提供する。
【0029】
ある態様では、本方法は、選択的に、このコロイド状シリカ被覆金属酸化物組成物をさらに処理するステップを具える。加熱、限外ろ過、脱イオン化、表面機能化、その他の組成物との混合、その同等物、及びその組み合わせなどの更なる処理を用いることもできると考えられる。このような表面の修飾は、熱安定性、膨張、及び収縮;屈折率;反応性;及びその同等物などの金属酸化物ゾルの特性をさらに決定し、調整する手段を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例
上述の記載は、以下に示す実施例を参照することにより、より理解することができるが、この実施例は、例示を意図しており、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0031】
10重量パーセントのAl分散物は、濃硝酸を数滴75mlの脱イオン水に添加して、その水のpHを3乃至4として調整した。12.5グラムの水酸化酸化アルミニウム(しばしば、ベーマイト(boehmite)と呼ばれ、南アフリカ、ヨハネスブルグ所在のサソル(Sasol)社から「Dispal 23N4−80」の商品名で入手できる。)を酸性にした水にゆっくり添加して、分散物を作製する。さらに脱イオン水を添加して、分散物の最終容量を100mlにした。
【0032】
ケイ酸ナトリウムを、強酸イオン交換樹脂で脱イオン化して、ケイ酸と酸性ゾルを製した。この分散物とケイ酸は両方とも、当然ながら酸性であり、どのような比率の混合でも適合する。この実施例ではAl分散物を表1に示すように様々な濃度でケイ酸と混合した。混合すると、その結果得られるpHは酸性であり、表1に「初期pH」として掲げた。0.1N NaOHの添加により混液のpHを約9〜約10に調整し、金属分に富むシリカコロイドの安定性を強化させ、「安定pH」を達成した。表1に、最大安定性が達成されたときに得られたpHを示す。全てのサンプルは、少なくとも数ヶ月間、引き続き安定であった。
[表1]

【実施例2】
【0033】
5重量パーセントのAlと95重量パーセントのSiOの典型的な合成ステップは、3717グラムのケイ酸ナトリウムを脱イオン化することにより、酸ゾル(比重1.0436g/ml及び7.15重量パーセントのSiO)を作製するステップと、次いで、上記の139.8グラムのAlにより10重量パーセントのアルミナ分散物(Dispal 23N4−80)を作製するステップを具える。この酸ゾルとこのアルミナ分散物を、氷上(即ち、約0℃)で連続的に攪拌して混合して、ブレンドを形成した。次いでこのブレンドを、脱イオン水200mlと50meqのNaOHを含むヒールに、80℃で3時間にわたって添加した。添加完了後さらに1時間温度を80℃に維持した。シリカ被覆酸化アルミニウムコロイドを、更に限外ろ過処理した。コロイド状シリカ被覆酸化アルミニウムの特性を、表2に示す。
[表2]

【実施例3】
【0034】
28重量パーセントのAlと72重量パーセントのSiOの典型的な合成ステップは、1630グラムのケイ酸ナトリウム(比重1.038g/mlと6.23重量パーセントのSiO)を脱イオン化して、酸ゾルを形成して、上記の360グラムのアルミナ(南アフリカ、ヨハネスブルグに所在のサソル(Sasol)社から入手できるカタパル200)を用いて10重量パーセントのアルミナ分散物を作製するステップを具える。この酸ゾルとアルミナ分散物を氷上(即ち、約0℃)で連続的に攪拌して、混合し、ブレンドを形成した。次いで、このブレンドを、300mlの脱イオン水と10グラムのAMP−95(登録商標)(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの5パーセント水;ミネソタ州、ミッドランドに所在のダウケミカルカンパニ(登録商標)社から入手できる。)含むヒール液に70℃で3時間にわって添加する。添加完了後さらに1時間温度を70℃に維持した。シリカ−被覆酸化アルミニウムコロイドを、限外ろ過により更に処理した。最終のコロイド状シリカ被覆酸化アルミニウム粒子の特性を表3に示す。
[表3]

【実施例4】
【0035】
85重量パーセントのAlと15重量パーセントのSiOの典型的な合成ステップは、143グラムのケイ酸ナトリウム(比重1.038g/ml、6.23重量パーセントのSiO)を脱イオン化して、酸ゾルを形成し、上記の399グラムのアルミナ(Dispal 14N4−80)を用いて12.66パーセントのアルミナ分散物を上記のように作製するステップを具える。次いで、この酸ゾルとアルミナ分散物を、氷上(すなわち、約0℃)で持続的に攪拌して混合し、ブレンドを形成した。このブレンドを、次いで脱イオン水200mlとAMP−95(登録商標)2グラムを含むヒール液に、57℃で3時間にわたって添加した。添加完了後さらに2時間温度を57℃に維持した。シリカ被覆酸化アルミニウムを、限外ろ過によりさらに処理をした。このコロイド状シリカ被覆酸化アルミニウムの特性を表4に示す。
[表4]

【実施例5】
【0036】
79重量パーセントAlと21重量パーセントのSiOの典型的な合成ステップは、581グラムのアルミナ(Dispal 23N4−80、南アフリカ、ヨハネスブルグ所在のサソル(Sasol)社より入手できる)で、上記のように、10重量パーセントのアルミナ分散物を作製するステップを具える。6.85重量パーセントのケイ酸150グラムを含む酸ゾル、及びアルミナ分散物を、氷上(即ち、約0℃)で約3時間にわたって連続的に攪拌し混合して、ブレンドを形成した。このブレンドに、23グラムのテトラメチル水酸化アンモニウムを添加した。シリカ被覆酸化アルミニウムコロイドを、更に限外ろ過処理した。コロイド状シリカ被覆酸化アルミニウムの特性を、表5に示す。
[表5]

【実施例6】
【0037】
50重量パーセントのZrOと50重量パーセントのSiOの典型的な合成ステップは、111グラムのケイ酸ナトリウム(比重1.044g/ml、7.7重量パーセントのSiO)(NJ州、Parsippanyに所在のDegussaコーポレーション社(登録商標)から入手できる)を脱イオン化して、酸ゾルを形成し、上記のように620グラムのヒュームドジルコニアで10重量パーセントのジルコニア分散物を作製するステップを具える。酸ゾル及びジルコニア分散物は、氷上(即ち、約0℃)で連続的に混合して、ブレンドを形成した。次いで、このブレンドを、70℃で3時間にわたって、300mlの脱イオン水と50meqのNaOHを含むヒールに添加した。添加完了後さらに1時間70℃に温度を保った。シリカ被覆酸化アルミニウムコロイドをさらに、限外ろ過で処理した。最終のコロイド状シリカ被覆酸化ジルコニウムの特性を表6に示す。
[表6]

【実施例7】
【0038】
表7は、SiO対Alの様々な比について測定したゼータ電位を示す。これらの測定値は、アルミナが実際にシリカ層で被覆されていることを確認するものである。
[表7]

【実施例8】
【0039】
表8は、SiO対Al比の変動を示す。コラム1は、意図した最終の酸化アルミニウム濃度を示す。コラム2には、本発明のシリカ被覆金属酸化物を得るために用いることのできる様々な塩基を例示する。コラム6は、X線蛍光分光法(「XRF」)で測定した実際の最終の酸化アルミニウム濃度である。コラム7は、シアーズ法を用いた表面滴定により得た表面積を提供する。この方法は、アルミナの存在により影響され、人為的に大きい数が付与される。コラム8は、BET法により測定した表面積を掲げており、これは、組成物により影響を受けず、常にやや低い表面積を示す。コラム9と10の多孔性の値は、アルミナ結晶とシリカ充填の違いにより変動する。
[表8]

【0040】
本明細書で記載したこの好ましい態様に対する様々な改変や変更は、当業者にとって自明の範囲内であると考えるべきである。このような改変や変更は、本発明の精神と範囲からはずれることなく又は意図する利点を減ずることなく、行うことができる。したがって、このような改変や変更は、添付した特許請求の範囲に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又はそれ以上の金属酸化物と1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子を含むシリカ質材料を含む金属酸化物分散物を含む金属分に富むシリカ質組成物において、少なくとも前記金属酸化物分散物の一部が、前記シリカ質材料で被覆されていることを特徴とする金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物分散物の少なくとも一部が、1又はそれ以上のコロイド状シリカ粒子で被覆されている請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物分散物の少なくとも一部が、少なくとも1層の前記シリカ質材料で完全に被覆されている請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物分散物が複数の異なる金属酸化物を含む請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物分散物が、シリカベースで、約0.01重量パーセント乃至約99.99重量パーセントである請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項6】
前記シリカ質材料が、分子式[SiO(OH)4−2X(ここで、Xは0乃至約4であり、Nは、1乃至約16である)をもつ、ケイ酸モノマを含む請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項7】
前記ケイ酸モノマで構成され、直径約2乃至約1000ナノメータの1又はそれ以上のコロイド状シリカナノ粒子を含む、請求項7に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項8】
前記シリカ質材料の少なくとも一部が内容積を有し、前記金属酸化物分散物の少なくとも一部が完全に当該内容積内に存在する、請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物分散物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一列遷移金属、第二列遷移金属、又はランタニド系列元素、及びその組み合わせ、からなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項10】
前記金属酸化物が、式MN+(OH)を有し(ここで、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一列遷移金属、第二列遷移金属、又はランタニド系元素を含み;「N」は、1から約4であり、「A」は、1から約3であり;「B」は、0から約3である)、請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項11】
前記金属酸化物分散物が、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、又はベーマイト結晶を含む、請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項12】
前記金属酸化物分散物が、ヒュームドジルコニアを含む、請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の金属分に富むシリカ質組成物を含む、工業用途に使用する材料。
【請求項14】
前記工業用途が、歯科用途、タンパク質分離処理、分子ふるい、ナノ多孔性膜、導波、光結晶、耐火材用途、ワインやジュースの清澄化、半導体やディスク・ドライブコンポーネントの化学的機械的平坦化、触媒担体、製紙における保水と排水の補助、充填剤、表面コーティング材、セラミック材料、焼流し鋳造バインダ、平坦化剤、プロパント、化粧品配合物、及びつやだし研磨剤からなる群から選択される、請求項15に記載の材料。
【請求項15】
金属分に富むシリカ質材料を含む組成物中のシリカ対金属酸化物比を制御する方法において;
(a)ケイ酸、金属酸化物分散物、及び塩基性ヒール溶液を作製するステップと;
(b)既知の比率で、前記ケイ酸と前記金属酸化物分散物を混合して、ブレンドを形成するステップと;
(c)前記ブレンドを前記塩基性ヒール溶液と併せて、金属対シリカ比を調整でき、当該比が前記既知の比率に依存する、1又はそれ以上のコロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を形成するステップと;
(d)選択的に、前記コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を含む組成物をさらに処理するステップと;
を具える方法。
【請求項16】
ケイ酸ナトリウムをイオン交換樹脂で脱イオン化して、前記ケイ酸を作製するステップを具える、請求項17に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基性ヒール溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、第四級化合物及びその組み合わせからなる群から選択される塩基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
制御された速度で、前記ブレンドを前記塩基性ヒール溶液に併せて、前記コロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を形成するステップを具える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物のさらなる処理が、限外ろ過、脱イオン化、加熱、及び表面機能化からなる群から選択される1又はそれ以上の処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
シリカベースで約0.01重量パーセント乃至約99.99重量パーセントの金属酸化物含量をもつ1又はそれ以上のコロイド状シリカ被覆金属酸化物粒子を形成するステップを具える、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505731(P2010−505731A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531556(P2009−531556)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/080177
【国際公開番号】WO2008/060768
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】