説明

可変容量型斜板式液圧回転機

【課題】軸受メタル等の軸受部材を斜板支持部の傾転支持面に対し安定して接合することができ、十分な接合強度を確保することができるようにする。
【解決手段】斜板の脚部が傾転可能に摺接する斜板支持体11の傾転支持面11Aに沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受メタル14を、傾転支持面11Aに塑性流動状態で接合する。この場合、軸受メタル14は、摩擦撹拌接合用の工具16を回転しながら、その先端部16Aを傾転支持面11Aに向けて垂直方向に押圧することにより傾転支持面11Aに塑性流動状態で接合される。各接合部14Aの周囲には、傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部14Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械に設けられ、油圧ポンプまたは油圧モータとして好適に用いられる可変容量型斜板式液圧回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、可変容量型斜板式液圧回転機は、例えば油圧ショベル等の建設機械において、その油圧源を構成する油圧ポンプとして用いられる。また、油圧アクチュエータとして用いる場合には、旋回用、走行用等の油圧モータを構成するものである。
【0003】
そして、この種の従来技術による可変容量型斜板式液圧回転機は、筒状のケーシングと、該ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有したシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記各シリンダから突出する該各ピストンの突出端側に装着された複数のシューと、表面側が該各シューを摺動可能に案内する平滑面となり裏面側が前記ケーシング側の斜板支持部に傾転可能に支持される斜板と、前記ケーシングに設けられ外部から傾転制御圧が給排されることにより該斜板を傾転駆動する傾転アクチュエータとを備えている。
【0004】
また、前記斜板の裏面側には、前記回転軸を挟んで互いに離間し前記斜板支持部に向けて凸湾曲状に突出する一対の脚部を設け、前記斜板支持部には、該一対の脚部に対応して凹湾曲状に形成され該各脚部を介して前記斜板を傾転可能に支持する一対の傾転支持面を設けている。そして、これらの傾転支持面には、前記斜板の傾転動作を円滑化するためスライドブッシュとしての軸受メタルを設ける構成としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この場合、前記軸受メタルは、前記斜板の脚部が傾転可能に摺接する前記傾転支持面に沿って凹湾曲状に延びる帯状の板材を用いて形成され、該板材の長さ方向両端側には、略V字状またはL字状に屈曲して形成された折曲げ部が設けられている。これらの折曲げ部は、前記傾転支持面の長さ方向両端側で前記斜板支持部に抜止め状態で固定され、これにより、前記軸受メタルは、前記傾転支持面を外側から覆った状態で前記斜板支持部に位置決めされ固定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−1866号公報(実用新案登録第2584135号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来技術による可変容量型斜板式液圧回転機は、斜板支持部の各傾転支持面に設けた軸受メタルと斜板の各脚部との間の傾転摺動面に対して、液圧回転機の一対の給排通路のうち高圧側の給排通路から圧油を導くための導油通路を備え、該導油通路からの圧油によって前記傾転摺動面を潤滑状態に保つ構成としたものがある。しかし、前記軸受メタルは、長さ方向両端側の各折曲げ部を前記斜板支持部に対し前記傾転支持面の長さ方向両端側で抜止め状態に固定しているだけである。
【0008】
このため、前記斜板支持部の傾転支持面と軸受メタルとの間には小さな隙間が形成されることがあり、前記導油通路から傾転摺動面に供給する圧油の一部が前記傾転支持面と軸受メタルとの間の前記隙間から外部に漏出する虞れがある。そして、圧油の一部が前記隙間から外部に漏出すると、前記斜板の脚部と軸受メタルとの間の傾転摺動面に十分な量の圧油を供給することができず、前記傾転摺動面を潤滑状態に保つのが難しくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、軸受メタル等の軸受部材を斜板支持部の傾転支持面に対し安定して接合することができ、軸受部材に対する斜板の傾転動作を円滑に安定させることができるようにした可変容量型斜板式液圧回転機を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、ケーシングに設けた導油通路から斜板の脚部と軸受部材との間の傾転摺動面に安定して圧油を供給することができ、前記傾転摺動面を長期にわたって潤滑状態に保つことができるようにした可変容量型斜板式液圧回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、一側に斜板支持部が設けられ他側に一対の給排通路が設けられた筒状のケーシングと、該ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有したシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記各シリンダから突出する該各ピストンの突出端側に装着された複数のシューと、表面側が該各シューを摺動可能に案内する平滑面となり裏面側が前記斜板支持部に傾転可能に支持される斜板と、前記ケーシングに設けられ外部から傾転制御圧が給排されることにより該斜板を傾転駆動する傾転アクチュエータとを備え、前記斜板の裏面側には、前記回転軸を挟んで互いに離間し前記斜板支持部に向けて凸湾曲状に突出する一対の脚部を設け、前記斜板支持部には、該一対の脚部に対応して凹湾曲状に形成され該各脚部を介して前記斜板を傾転可能に支持する一対の傾転支持面を設けてなる可変容量型斜板式液圧回転機に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記斜板支持部の各傾転支持面のうち少なくとも一方の傾転支持面には、前記斜板の脚部が傾転可能に摺接する面に沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受部材を設け、該軸受部材は、摩擦撹拌接合用の工具を回転させながら前記斜板支持部の傾転支持面に向けて押圧することにより当該傾転支持面に塑性流動状態で接合する構成としたことにある。
【0013】
また、請求項2の発明によると、前記斜板支持部の傾転支持面と前記軸受部材との間には、両者の間に介在し前記傾転支持面に沿って凹湾曲状に延びる帯状のインサート部材を設け、前記軸受部材は、前記摩擦撹拌接合用の工具を用いて前記インサート部材と一緒に前記傾転支持面に塑性流動状態で接合する構成としている。
【0014】
一方、請求項3の発明によると、前記軸受部材には、前記摩擦撹拌接合用の工具により前記傾転支持面に接合された1個または複数個の接合部と、該接合部の周囲に位置し前記傾転支持面に対して接合されることなく前記傾転支持面を外側から覆う非接合被覆部とを設ける構成としている。
【0015】
また、請求項4の発明は、前記軸受部材を前記傾転支持面に摩擦撹拌接合する前記接合部は、前記斜板支持部に対する前記斜板の傾転方向と平行な方向、前記傾転方向に対して垂直な方向または前記傾転方向に対して斜めに傾いた方向に延びる構成としている。
【0016】
また、請求項5の発明によると、前記軸受部材の前記接合部は、その周囲に位置する前記非接合被覆部よりも凹状に窪ませて形成する構成としている。
【0017】
さらに、請求項6の発明によると、前記ケーシングには前記斜板と前記斜板支持部との間に向けて延び両者の傾転摺動面を潤滑状態に保つための導油通路を設け、前記軸受部材には、前記導油通路に連通し前記斜板との傾転摺動面に開口する連通孔を設け、前記接合部は、該連通孔の開口部周囲を取囲んで形成する構成としている。
【発明の効果】
【0018】
上述の如く、請求項1の発明によれば、斜板の脚部が傾転可能に摺接する斜板支持部の傾転支持面に沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受部材を、摩擦撹拌接合用の工具を回転させながら前記斜板支持部の傾転支持面に向けて押圧することにより、当該傾転支持面に軸受部材を塑性流動状態、即ち摩擦撹拌状態で安定して接合することができ、軸受部材の接合強度を簡便な方法で高めることができる。そして、斜板の脚部を斜板支持部の傾転支持面に対し軸受部材を介して円滑に摺接させることができ、斜板の傾転動作を安定させることができる。
【0019】
また、請求項2の発明は、斜板支持部の傾転支持面と軸受部材との間に帯状のインサート部材を介挿して設けることができ、このときに摩擦撹拌接合用の工具を用いて前記軸受部材とインサート部材とを一緒に前記傾転支持面に塑性流動状態で接合することができる。そして、インサート部材を用いることにより、軸受部材として性質を保持したままで、前記斜板支持部の傾転摺動面に対する接合強度をより一層に高めることができる。
【0020】
一方、請求項3の発明によると、摩擦撹拌接合用の工具を回転させながら軸受部材に押圧して1個または複数個の接合部を軸受部材に形成することができ、該接合部により軸受部材を傾転支持面に接合することができる。そして、軸受部材のうち前記接合部の周囲には、前記傾転支持面に対して接合されることなく前記傾転支持面を外側から覆う非接合被覆部を設けることができる。
【0021】
また、請求項4の発明によると、軸受部材の接合部を、斜板支持部に対する斜板の傾転方向と平行な方向に延ばして形成したり、前記傾転方向に対して垂直な方向に延ばして形成したり、または前記傾転方向に対して斜めに傾いた方向に延ばして形成したりすることができる。これにより、斜板の傾転動作に伴って軸受部材に働く剥離力、即ち傾転支持面から軸受部材を剥離させるような力を考慮して、前記接合部を延ばす方向を選択することができ、傾転支持面から軸受部材が剥離するのを接合部の形状によって効果的に抑え、軸受部材の耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0022】
また、請求項5の発明は、軸受部材の接合部を、その周囲に位置する非接合被覆部よりも凹状に窪ませて形成することにより、凹状の接合部内に潤滑油の一部を保持して油膜を形成することができ、斜板の脚部と軸受部材との間の傾転摺動面を前記油膜により潤滑状態に保つことができる。
【0023】
さらに、請求項6の発明では、軸受部材の裏面側で連通孔を導油通路に連通させ、軸受部材の表面側(斜板との傾転摺動面側)では前記連通孔を開口させることができ、軸受部材の接合部は、該連通孔の開口部をその周囲から取囲んだ形状に形成することができる。このため、軸受部材の非接合被覆部と斜板支持部の傾転支持面との間に仮に微小な隙間が形成されたとしても、連通孔の周囲を接合部で取囲むことにより、前記導油通路からの圧油が前記隙間内に漏洩するのを阻止することができ、斜板の脚部と軸受部材との間の傾転摺動面に十分な量の圧油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態による可変容量型斜板式油圧ポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1中の斜板を単体として示す縦断面図である。
【図3】斜板を図2中の右方向からみた右側面図である。
【図4】図1中の斜板支持体を単体として示す左側面図である。
【図5】斜板支持体を図4中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】図4の斜板支持体を斜め上方からみた斜視図である。
【図7】第2の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図8】斜板支持体を図7中の矢示VIII−VIII方向からみた断面図である。
【図9】斜板支持体を図7中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【図10】斜板支持体を図7中の矢示X−X方向からみた断面図である。
【図11】第3の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図12】斜板支持体を図11中の矢示XII−XII方向からみた断面図である。
【図13】斜板支持体を図11中の矢示XIII−XIII方向から拡大してみた部分断面図である。
【図14】図11の斜板支持体を斜め上方からみた斜視図である。
【図15】第4の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図16】斜板支持体を図15中の矢示XVI−XVI方向からみた断面図である。
【図17】第5の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図18】斜板支持体を図17中の矢示XVIII−XVIII方向からみた断面図である。
【図19】第6の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図20】第7の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図21】第8の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図22】第9の実施の形態による斜板支持体を示す図4と同様位置での左側面図である。
【図23】斜板支持体を図22中の矢示XXIII−XXIII方向からみた断面図である。
【図24】斜板支持体を図22中の矢示XXIV−XXIV方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態による可変容量型斜板式液圧回転機を、例えば油圧ポンプとして用いる場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0026】
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は可変容量型斜板式液圧回転機としての斜板式油圧ポンプで、この油圧ポンプ1は、後述のケーシング2、回転軸4、シリンダブロック5、複数のシリンダ6、ピストン7、シュー8、弁板10、斜板支持体11および斜板12等によって構成されるものである。
【0027】
2は油圧ポンプ1の外殻となる筒状のケーシングで、該ケーシング2は、図1に示すように、筒状のケーシング本体2Aと、該ケーシング本体2Aの両端側を閉塞したフロントケーシング2B、リヤケーシング2Cとから構成されている。なお、ケーシング本体2Aは、フロントケーシング2Bまたはリヤケーシング2Cのいずれか一方と一体に形成する構成としてもよいものである。
【0028】
ケーシング本体2Aの一側に位置するフロントケーシング2Bには、後述の斜板支持体11が斜板12の裏面側に対向して設けられている。また、ケーシング本体2Aの他側に位置するリヤケーシング2Cには、図1中に点線で示す一対の給排通路3A,3Bが設けられている。該給排通路3A,3Bのうち一方の給排通路3Aは、低圧側の吸込通路となってタンク(図示せず)に接続され、他方の給排通路3Bは、吐出通路となって高圧側の吐出配管(図示せず)に接続されるものである。
【0029】
4はケーシング2内に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸4は、フロントケーシング2Bとリヤケーシング2Cとにそれぞれ軸受を介して回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、フロントケーシング2Bから軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aにはエンジン等の原動機が動力伝達機構(いずれも図示せず)等を介して連結されるものである。
【0030】
5は回転軸4と一体的に回転するようにケーシング2内に設けられたシリンダブロックで、該シリンダブロック5には、その周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ6,6,…が設けられている。シリンダブロック5に設けるシリンダ6の個数は、例えば7個または9個となるように通常は奇数個である。
【0031】
7,7,…はシリンダブロック5の各シリンダ6内にそれぞれ摺動可能に挿嵌された複数のピストンで、該各ピストン7は、シリンダブロック5の回転に伴ってシリンダ6内を往復動し、吸入行程と吐出行程とを繰返すものである。
【0032】
8,8,…は各ピストン7にそれぞれ設けられた複数のシューで、該各シュー8は、シリンダブロック5のシリンダ6から回転軸4の軸方向に突出するピストン7の一端側(突出端側)にそれぞれ揺動可能に取付けられている。
【0033】
9は各シュー8を斜板12に対して保持する環状のシュー押えで、該シュー押え9は、図1に示す如く後述する斜板12の平滑面12Cに向けてシュー8をそれぞれ押圧し、斜板12の平滑面12C上で各シュー8が環状軌跡を描くように摺動変位するのを補償するものである。
【0034】
10はケーシング2内に位置してリヤケーシング2Cとシリンダブロック5との間に固定して設けられた弁板である。この弁板10は、回転軸4と一体に回転するシリンダブロック5を回転可能にリヤケーシング2Cと一緒に支持し、この状態でシリンダブロック5の端面に摺接している。また、弁板10には、眉形状をなす一対の給排ポート10A,10Bが形成され、これらの給排ポート10A,10Bは、リヤケーシング2Cの給排通路3A,3Bと連通している。
【0035】
弁板10の給排ポート10A,10Bは、シリンダブロック5の回転時に各シリンダ6と間欠的に連通する。このとき、各シリンダ6内を往復するピストン7は、その吸入行程で一方の給排通路3A側から各シリンダ6内に作動油を吸込みつつ、吐出行程では各シリンダ6内で高圧状態となった圧油を他方の給排通路3Bから吐出させる。
【0036】
11は回転軸4の周囲に位置してフロントケーシング2Bに設けられた斜板支持部としての斜板支持体で、該斜板支持体11には、図1、図4〜図6に示すように回転軸4を挟んで、例えば左,右両側となる位置に一対の傾転支持面11A,11Bが一体に形成されている。斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bは、後述の軸受メタル14,15を介して斜板12を傾転可能に支持するものである。
【0037】
斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bは、後述する斜板12の脚部12A,12Bに対応して凹湾曲状に形成され、斜板12を図1中の矢示A,B方向に傾転(摺動)可能に案内するものである。また、斜板支持体11には、左,右の傾転支持面11A,11B間に位置して軸挿通穴11C(図4参照)が穿設され、この軸挿通穴11C内には、図1に示すように回転軸4が隙間をもって挿通される。
【0038】
12はケーシング2内に斜板支持体11を介して傾転可能に設けられた斜板である。この斜板12の裏面側には、図1ないし図3に示すように斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに向けて凸湾曲状に突出した左,右一対の脚部12A,12Bが設けられている。斜板12の脚部12A,12Bは、回転軸4を挟んで例えば左,右方向に離間し、凹湾曲状をなす斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに摺動可能に嵌合されるものである。
【0039】
一方、斜板12の表面側は、図1に示すように各シュー8を摺動可能に案内する平滑面12Cとなっている。また、斜板12には、その板厚方向に貫通して延びる貫通穴12Dが設けられ、該貫通穴12Dは、脚部12A,12B間に位置して回転軸4が隙間をもって挿通される。斜板12は、図1中に示す矢示A,B方向に後述の傾転アクチュエータ17,18を用いて傾転駆動される。そして、油圧ポンプ1の吐出容量(圧油の吐出流量)は、斜板12の傾転角に応じて可変に制御されるものである。
【0040】
13,13は斜板12の脚部12A,12Bに設けた円弧状凹溝で、該各円弧状凹溝13は、脚部12A,12Bの表面に沿って円弧状に延びる浅溝として形成されている。円弧状凹溝13は、例えば後述の導油通路19,20から圧油が導かれることにより静圧軸受として機能する。即ち、円弧状凹溝13内に供給された圧油は、傾転支持面11A,11B(後述の軸受メタル14,15)と脚部12A,12Bとの間に乖離力(油圧力)を発生させると共に、両者の接触面を潤滑状態に保持するものである。
【0041】
14,15は斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに設けられた軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル14,15は、例えば高・中炭素鋼、はだ焼鋼、焼入鋼、耐食鋼、鋳鉄、銅合金、アルミニウムまたはチタン合金等の金属板材料からなる薄肉の帯状体として形成され、斜板12の脚部12A,12Bが傾転可能に摺接する面(傾転支持面11A,11B)に沿って凹湾曲状に延びている。軸受メタル14,15は、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに対して接合部14A,15Aにより塑性流動状態で接合され、斜板12の脚部12A,12Bを傾転支持面11A,11Bに沿って円滑に摺動(傾転)変位させるためのスライドブッシュとして機能するものである。
【0042】
なお、第1の実施の形態で採用した軸受メタル14,15は、軸受部材の一つの代表例であり、例えば金属材料以外に高分子系の樹脂材料を用いて軸受部材を形成してもよいものである。この点は、後述する第2〜第9の実施の形態についても同様である。
【0043】
ここで、図4に示す軸受メタル14,15のうち一方の軸受メタル14は、摩擦撹拌接合手段を用いて形成された複数(例えば、合計6個)の接合部14Aにより、斜板支持体11の傾転支持面11Aに密着するように接合されている。即ち、一方の軸受メタル14には、図5、図6に示す摩擦撹拌接合用の工具16により合計6個の接合部14Aが円形状の接合痕として形成され、これらの各接合部14Aは、斜板12の傾転方向に延びる傾転支持面11Aに沿って一列に並べて配置されている。
【0044】
この場合、図5、図6に示す摩擦撹拌接合用の工具16は、専用の機械(図示せず)により矢示C方向に回転駆動されながら、軸受メタル14を斜板支持部11の傾転支持面11Aに向けて矢示D方向(即ち、傾転支持面11Aに対して垂直な方向)に強く押付けるように押圧する。これにより、工具16の先端部16Aが当接する軸受メタル14の当接部位は、摩擦撹拌に伴う入熱で高温となって塑性流動状態となり、この状態で傾転支持面11Aに部分的に溶け込むようにして接合される。
【0045】
このため、軸受メタル14の前記当接部位には、工具16の先端形状に対応した円形状の接合部14Aが形成される。また、軸受メタル14には、工具16の先端部16Aによる前述の如き摩擦撹拌接合作業を、傾転支持面11Aの円弧面に沿って間隔をあけて繰返すことにより、例えば合計6個の接合部14Aが互いに間隔をもって一列に並べた状態で形成されるものである。また、軸受メタル14には、各接合部14Aの周囲に位置して非接合被覆部14Bが形成され、該非接合被覆部14Bは、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく当該傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆うものである。
【0046】
一方、軸受メタル15の接合部15Aは、前述の如き摩擦撹拌接合作業を行う工具16の先端部16Aを、斜板支持体11の傾転支持面11Bに沿って徐々に移動させることにより、傾転支持面11Bに沿って細長く直線状に延びた形状に形成される。この接合部15Aは、斜板12の傾転方向(図1に示す矢示A,B方向)と平行に延びている。また、軸受メタル15には、接合部15Aの周囲に位置して非接合被覆部15Bが形成され、該非接合被覆部15Bは、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく当該傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆うものである。
【0047】
前述の如く、摩擦撹拌接合用の工具16により一方の軸受メタル14に複数の接合部14Aを形成し、他方の軸受メタル15には細長く延びる1条の接合部14Aを形成した後には、例えば研削手段、研磨手段等を用いた仕上げ加工を軸受メタル14,15の表面側に施す。これによって、軸受メタル14,15の表面(斜板12の脚部12A,12Bが傾転可能に摺接する面)は、接合部14A,15Aを含めて均一な滑面に形成されている。
【0048】
17,18は斜板12を傾転駆動する一対の傾転アクチュエータで、該傾転アクチュエータ17,18は、図1に示すようにシリンダブロック5の径方向外側に位置してケーシング本体2Aに形成されたシリンダ穴17A,18Aと、該シリンダ穴17A,18A内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ穴17A,18Aとの間に液圧室17B,18Bを画成した傾転ピストン17C,18Cと、液圧室17B,18B内に傾転制御圧を給排するためケーシング本体2Aに形成された制御圧通路17D,18Dとを含んで構成されている。
【0049】
傾転アクチュエータ17,18は、ケーシング本体2Aに対しシリンダブロック5の径方向で互いに対向する位置に配設され、傾転ピストン17C,18Cによって斜板12を矢示A,B方向に傾転駆動する。即ち、傾転アクチュエータ17,18の液圧室17B,18Bには、図1に示す制御圧通路17D,18Dを通じて外部から傾転制御圧が給排される。
【0050】
この傾転制御圧により、傾転アクチュエータ17の傾転ピストン17Cが図1に示す如くシリンダ穴17A内から伸長し、傾転アクチュエータ18の傾転ピストン18Cがシリンダ穴18A内に縮小するときには、斜板12が傾転ピストン17Cによって矢示A方向(即ち、傾転角が大きくなる正方向)に傾転駆動される。また、傾転ピストン18Cがシリンダ穴18A内から伸長し、傾転ピストン17Cがシリンダ穴17A内へと縮小するときには、斜板12が傾転ピストン18Cによって矢示B方向(即ち、傾転角が小さくなる逆方向)に傾転駆動されるものである。
【0051】
次に、19はケーシング2に設けられた第1の導油通路で、該第1の導油通路19は、図1中に点線で示すように、長さ方向の一側がリヤケーシング2C側で高圧側の給排通路3Bに接続され、長さ方向の他側(以下、導油通路19の先端側という)は、フロントケーシング2B内を斜板支持体11に向けて延びている。また、斜板支持体11には、例えば図5中に二点鎖線で示すように第2の導油通路20が形成されている。
【0052】
第2の導油通路20は、その基端側が前記第1の導油通路19の先端側に接続され、先端側は軸受メタル14,15の表面に開口するように形成されている。これにより、第1,第2の導油通路19,20は、例えば給排通路3Bから供給される圧油を軸受メタル14,15と斜板12の脚部12A,12Bとの間の傾転摺動面(例えば、図3に示す円弧状凹溝13内)に導くものである。
【0053】
なお、軸受メタル14,15の素材として自己潤滑性を有する材料(例えば、銅系材料)用いる場合には、斜板12の脚部12A,12Bと軸受メタル14,15との間に潤滑油を必ずしも供給する必要はない。そこで、このような場合には、ケーシング2に設ける第1の導油通路19と斜板支持体11に設ける第2の導油通路20とを省略する構成としてもよいものである。
【0054】
本実施の形態による可変容量型の斜板式油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0055】
まず、油圧ポンプ1の吐出容量を増大させるときには、傾転アクチュエータ17の液圧室17Bに制御圧通路17Dを通じて外部から傾転制御圧を供給し、傾転アクチュエータ18の液圧室18Bからは制御圧通路18Dを通じて外部に傾転制御圧を排出する。これにより、傾転アクチュエータ17の傾転ピストン17Cがシリンダ穴17A内から伸長し、傾転アクチュエータ18の傾転ピストン18Cがシリンダ穴18A内に縮小するため、斜板12は傾転角が大きくなるように図1中の矢示A方向に傾転駆動される。
【0056】
また、油圧ポンプ1の吐出容量を小さく減少させるときには、傾転アクチュエータ18の液圧室18Bに制御圧通路18Dを通じて外部から傾転制御圧を供給し、傾転アクチュエータ17の液圧室17Bからは制御圧通路17Dを通じて外部に傾転制御圧を排出する。これにより、傾転アクチュエータ18の傾転ピストン18Cがシリンダ穴18A内から伸長し、傾転アクチュエータ17の傾転ピストン17Cがシリンダ穴17A内へと縮小するため、斜板12は傾転角が小さくなるように図1中の矢示B方向に傾転駆動される。
【0057】
このように斜板12が傾転アクチュエータ17,18により矢示A,B方向に傾転駆動されるときには、斜板12の脚部12A,12Bが斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに沿って軸受メタル14,15上を摺動変位するように傾転する。しかし、斜板12の傾転動作に伴って軸受メタル14,15には、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bから軸受メタル14,15を剥離させるような力が働き、この剥離力により軸受メタル14,15が傾転支持面11A,11Bから脱落する虞れがある。
【0058】
そこで、第1の実施の形態では、斜板12の脚部12A,12Bが傾転可能に摺接する斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受メタル14,15を、摩擦撹拌接合用の工具16を回転させながら、その先端部16Aを傾転支持面11A,11Bに向けて垂直方向に押圧することにより当該傾転支持面11A,11Bに塑性流動状態で接合する構成としている。
【0059】
この場合、軸受メタル14,15のうち一方の軸受メタル14には、摩擦撹拌接合用の工具16により斜板支持体11の傾転支持面11Aに接合される複数の接合部14Aを、一列に並べて形成することができ、各接合部14Aの周囲には傾転支持面11Aに対して接合されることなく当該傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部14Bを形成することができる。
【0060】
また、他方の軸受メタル15には、前記工具16により斜板支持体11の傾転支持面11Bに接合される接合部15Aを、傾転支持面11Bに沿って細長く直線状に延びた形状に形成することができ、該接合部15Aの周囲には傾転支持面11Bに対して接合されることなく当該傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部15Bを形成することができる。
【0061】
これにより、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対しては一方の軸受メタル14を摩擦撹拌による塑性流動状態で安定して接合することができ、傾転支持面11Bに対しては他方の軸受メタル15を塑性流動状態で安定して接合することができる。この結果、斜板12の傾転動作に伴って軸受メタル14,15が斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bから剥離されるのを長期にわたって防止することができ、軸受メタル14,15の耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0062】
従って、本実施の形態によれば、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受メタル14,15を、傾転支持面11A,11Bに接合するときに摩擦撹拌接合手段を用いることにより、小規模な設備で短時間の接合が可能となり、傾転支持面11A,11Bに対する軸受メタル14,15の接合強度を簡便な方法で高めることができる。
【0063】
しかも、斜板12の脚部12A,12Bを斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに対し軸受メタル14,15を介して円滑に摺接させることができ、斜板12の傾転動作を安定させることができる。この結果、可変容量型の斜板式油圧ポンプ1としての信頼性を向上することができ、その耐久性、寿命を高めることができる。
【0064】
なお、前記第1の実施の形態では、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bのうち一方の傾転支持面11A側に軸受メタル14を接合して設け、他方の傾転支持面11B側には軸受メタル15を接合して設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1個の接合部15Aを有する軸受メタル15を一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には複数の接合部14Aを有する軸受メタル14を設ける構成としてもよい。
【0065】
即ち、傾転支持面11A,11Bのうちいずれの傾転支持面に、軸受メタル14,15のいずれを接合するか、軸受メタル14,15に形成する接合部14A,15Aの形状、個数等は、斜板12の脚部12A,12Bから斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに向けて付加される荷重(即ち、各シリンダ6内に発生する油圧力)、斜板12を傾転駆動するときの摺動抵抗、捩り力等に応じて、適宜に選択する構成とすればよいものである。
【0066】
次に、図7ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、斜板支持部の傾転支持面と軸受部材との間に帯状のインサート部材を介挿して設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0067】
図中、31,32は第2の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル31,32は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル31,32は、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bとの間に後述のインサートメタル33,34が介挿されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0068】
このため、軸受メタル31,32の各接合部31A,32Aは、図8、図10に示すように後述のインサートメタル33,34と一緒に斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに対して塑性流動状態で接合されている。即ち、一方の軸受メタル31には、図8に示す摩擦撹拌接合用の工具16により合計6個の接合部31Aが円形状の接合痕として形成され、これらの各接合部31Aは、斜板12の傾転方向に延びる傾転支持面11Aに沿って一列に並べて配置されている。また、各接合部31Aの周囲には、後述のインサートメタル33、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなくインサートメタル33と一緒に傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部31Bが形成されている。
【0069】
他方の軸受メタル32には、2本の接合部32Aが傾転支持面11Bに沿って互いに平行に細長く直線状に延びた形状に形成されている。但し、この場合の接合部32Aを形成する摩擦撹拌接合用の工具には、図8に示す工具16の先端部16Aよりも細い形状のものが使用され、このために各接合部32Aは、その幅寸法が細く形成されている。また、軸受メタル32には、接合部32Aの周囲に位置して非接合被覆部32Bが形成され、該非接合被覆部32Bは、後述のインサートメタル34、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく、インサートメタル33と一緒に傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆っている。
【0070】
33,34は斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との間に設けられたインサート部材としてのインサートメタルである。このインサートメタル33,34は、例えば鉄とニッケルの合金、銅合金等からなる薄い金属板(例えば、アルミ箔等のように薄い金属箔、金属シートも含む)により形成されている。即ち、インサートメタル33,34は、傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との接合性を改善する元素を含有し、両者の接合性を高めるものである。インサートメタル33,34は、傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との間に介在し、傾転支持面11A,11Bに沿って凹湾曲状に延びる帯状シートとして形成されている。
【0071】
ここで、一方のインサートメタル33は、図8に示すように摩擦撹拌接合用の工具16を用いて軸受メタル31に各接合部31Aを形成するときに、軸受メタル31と一緒に斜板支持体11の傾転支持面11Aに塑性流動状態で接合されている。また、他方のインサートメタル34は、図8に示す工具16と同様な工具(図示せず)を用いて軸受メタル32に各接合部32Aを形成するときに、軸受メタル32と一緒に斜板支持体11の傾転支持面11Bに塑性流動状態で接合されている。
【0072】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル31,32を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態は、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との間にインサートメタル33,34を介挿する構成としている。
【0073】
このため、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bには、摩擦撹拌接合用の工具16等を用いて軸受メタル31,32とインサートメタル33,34とを一緒に塑性流動状態で接合することができ、インサートメタル33,34により傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との接合性を高めることができる。このように、インサートメタル33,34を用いることにより、軸受メタル31,32として性質を保持したままで、傾転支持面11A,11Bに対する接合強度をより一層に高めることができる。また、接合部31A,32Aを形成するときの作業性を向上することができる。
【0074】
なお、前記第2の実施の形態で述べた軸受メタル31,32についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば2本の接合部32Aを有する軸受メタル32を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、複数の接合部31Aを有する軸受メタル31を設ける構成としてもよい。
【0075】
次に、図11ないし図14は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する各接合部を、周囲の非接合被覆部よりも凹状に窪ませて形成する構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0076】
図中、41,42は第3の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル41,42は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル41,42は、後述の接合部41A,42Aが周囲の非接合被覆部41B,42Bよりも凹状に窪ませて形成されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0077】
即ち、一方の軸受メタル41には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により合計4個の接合部41Aが、斜板12の傾転方向(即ち、傾転支持面11Aに沿った方向)に対し垂直な方向に細長く延びた長円形状に形成されている。但し、この場合の接合部41Aを形成する摩擦撹拌接合用の工具には、図8に示す工具16の先端部16Aよりも細い形状のものが使用され、このために各接合部41Aは、その幅寸法が細く形成されている。
【0078】
一方の軸受メタル41には、前述の如く長円形状をなす各接合部41Aが、傾転支持面11Aに沿った方向に互いに間隔をあけて配置されている。また、各接合部41Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部41Bが形成されている。
【0079】
この上で、図12、図14に示すように、各接合部41Aは、その周囲の非接合被覆部41Bよりも凹状に窪ませて形成され、これにより、各接合部41Aの表面側には、周囲の非接合被覆部41Bに対して凹状に窪んだ凹部41Cがそれぞれ形成されている。これらの凹部41Cは、例えば斜板支持体11に形成した導油通路20を介して供給される圧油を、潤滑油として保持する機能を有している。
【0080】
また、他方の軸受メタル42には、図8に例示した摩擦撹拌接合用の工具16と同様な工具(図示せず)により合計5個の接合部42Aが円形状の接合痕として形成され、これらの各接合部42Aは、斜板12の傾転方向に延びる傾転支持面11Bに沿って一列に並べて配置されている。また、軸受メタル42には、各接合部42Aの周囲に位置して非接合被覆部42Bが形成され、該非接合被覆部42Bは、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく、傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆っている。
【0081】
この上で、図13、図14に示すように、各接合部42Aは、その周囲の非接合被覆部42Bよりも凹状に窪ませて形成され、これにより、各接合部42Aの表面側には、周囲の非接合被覆部42Bに対して凹状に窪んだ凹部42Cがそれぞれ形成されている。これらの凹部42Cは、例えば斜板支持体11に形成した導油通路20を介して供給される圧油を、潤滑油として保持する機能を有している。
【0082】
さらに、第3の実施の形態にあっても、前述の如く摩擦撹拌接合用の工具を用いて一方の軸受メタル41に複数の接合部41A、凹部41Cを形成し、他方の軸受メタル42にも複数の接合部42A、凹部42Cを形成した後には、例えば研削手段、研磨手段等を用いた仕上げ加工を軸受メタル41,42の表面側に施す。これによって、軸受メタル41,42の表面(斜板12の脚部12A,12Bが傾転可能に摺接する面)は、各凹部41C,42Cを残して均一な滑面に形成されている。
【0083】
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル41,42を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、軸受メタル41,42の各接合部41A,42Aを周囲の非接合被覆部41B,42Bよりも凹状に窪ませて凹部41C,42Cを形成する構成としている。
【0084】
このため、各接合部41A,42Aの凹部41C,42C内には、例えば図12に二点鎖線で示した導油通路20等を通じて供給される潤滑油一部を、斜板12の傾転動作等に応じて導くことができ、この潤滑油を凹部41C,42C内に保持して油膜を形成できると共に、斜板12の脚部12A,12Bと軸受メタル41,42との間の傾転摺動面を前記油膜により潤滑状態に保つことができる。
【0085】
なお、前記第3の実施の形態で述べた軸受メタル41,42についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば複数の接合部42Aを有する軸受メタル42を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、複数の接合部41Aを有する軸受メタル41を設ける構成としてもよい。
【0086】
次に、図15および図16は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する各接合部を、斜板の傾転方向に対し斜めに傾いた方向に延ばして形成する構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0087】
図中、51,52は第4の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル51,52は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル51,52は、後述の各接合部51A,52Aが斜め傾いて延びるように形成されている点で、前記第1の実施の形態とは異なっている。
【0088】
即ち、一方の軸受メタル51には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により合計5個の接合部51Aが、斜板12の傾転方向(即ち、傾転支持面11Aに沿った方向)に対し斜めに傾いた方向に細長く延びて長円形状に形成されている。そして、長円形状をなす各接合部51Aは、互いに平行に間隔をあけて配置されている。また、各接合部51Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部51Bが形成されている。
【0089】
また、他方の軸受メタル52には、これと同様に斜めに傾いた長円形状の各接合部52Aと、該各接合部52Aの周囲に位置する非接合被覆部52Bとが設けられている。但し、軸受メタル51の各接合部51Aと軸受メタル52の各接合部52Aとは、図15に示すように斜板支持体11の軸挿通穴11Cを挟んで左,右対称なる位置関係に配列されている。
【0090】
かくして、このように構成される第4の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル51,52を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態では、軸受メタル51,52の各接合部51A,52Aを斜板12の傾転方向に対して斜めに傾いた方向に延ばして形成することができる。
【0091】
これによって、斜板12の傾転動作に伴って軸受メタル51,52に働く剥離力、即ち傾転支持面11A,11Bから軸受メタル51,52を剥離させるような力を考慮して、各接合部51A,52Aが延びる傾斜方向を適宜に選択することができる。この結果、傾転支持面11A,11Bから軸受メタル51,52が剥離したりするのを、各接合部51A,52Aの形状等を選択することにより抑えることができ、軸受メタル51,52としての耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0092】
次に、図17および図18は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する接合部を、斜板の傾転方向と平行な方向に延ばして形成する構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0093】
図中、61,62は第5の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル61,62は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル61,62は、後述の接合部61A,62Aが斜板12の傾転方向と平行な方向に延びて形成されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0094】
即ち、一方の軸受メタル61には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により1本の接合部61Aが、斜板12の傾転方向(即ち、傾転支持面11Aに沿った方向)に細長く延びて形成されている。また、1本の接合部61Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部61Bが形成されている。
【0095】
また、他方の軸受メタル62には、2本の接合部62Aが斜板12の傾転方向と平行に、かつ同方向に位置をずらして形成されている。また、各接合部62Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部62Bが形成されている。
【0096】
かくして、このように構成される第5の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル61,62を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態では、軸受メタル61,62の接合部61A,62Aを斜板12の傾転方向と平行な方向に延ばして形成することができる。
【0097】
これによって、斜板12の脚部12A,12Bを接合部61A,62Aの伸長方向で傾転駆動することができ、このときの傾転動作を滑らかに行うことができる。この結果、傾転支持面11A,11Bから軸受メタル61,62が剥離したりするのを、各接合部61A,62Aの形状等を選択することにより抑えることができ、軸受メタル61,62としての耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0098】
なお、前記第5の実施の形態で述べた軸受メタル61,62についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば接合部62Aを有する軸受メタル62を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、接合部61Aを有する軸受メタル61を設ける構成としてもよい。
【0099】
次に、図19は本発明の第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する接合部を、斜板の傾転方向に対して垂直な方向に延ばして形成する構成としたことにある。なお、第6の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0100】
図中、71,72は第6の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル71,72は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル71,72は、後述の各接合部71A,72Aが斜板12の傾転方向と垂直な方向に延びる長円形状に形成されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0101】
即ち、一方の軸受メタル71には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により3本の接合部71Aが、斜板12の傾転方向(即ち、傾転支持面11Aに沿った方向)と垂直な方向に細長く延びて形成され、各接合部71Aは、傾転支持面11Aに沿った方向で互いに間隔をもって配置されている。また、各接合部71Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部71Bが形成されている。
【0102】
また、他方の軸受メタル72には、斜板12の傾転方向と垂直な方向に細長く延びる複数(例えば、合計4本)の接合部72Aが形成され、該各接合部72Aも斜板12の傾転方向に互いに離間して配置されている。また、各接合部72Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部72Bが形成されている。
【0103】
かくして、このように構成される第6の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル71,72を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第6の実施の形態では、軸受メタル71,72の接合部71A,72Aを斜板12の傾転方向と垂直な方向に延ばして形成することができる。
【0104】
なお、前記第6の実施の形態で述べた軸受メタル71,72についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば接合部72Aを有する軸受メタル72を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、接合部71Aを有する軸受メタル71を設ける構成としてもよい。
【0105】
次に、図20は本発明の第7の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する複数個の接合部を、例えば円形のスポット状に形成する構成としたことにある。なお、第7の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0106】
図中、81,82は第7の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル81,82は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル81,82は、後述の各接合部81A,81B,82Aが円形のスポット状をなして形成されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0107】
即ち、一方の軸受メタル81には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により合計4個の接合部81Aと合計4個の接合部81Bとが、それぞれ斜板12の傾転方向(即ち、傾転支持面11Aに沿った方向)で一列に並べて、かつ互いに間隔をもって配置され、各接合部81Aと各接合部81Bとは、斜板12の傾転方向と垂直な方向で互いに離間して配置されている。
【0108】
ここで、各接合部81Aと各接合部81Bとは、互いに異なった径寸法で円形状に形成され、全体としてはスポット状に配置されている。また、各接合部81A,81Bの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに対して接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部81Cが形成されている。
【0109】
また、他方の軸受メタル82には、斜板12の傾転方向と垂直な方向に並べた複数個(例えば、合計3個)で1組の接合部82Aが形成され、これらの1組の各接合部82Aは、斜板12の傾転方向で複数組(例えば、4組)互いに間隔をもって配置されている。また、各接合部82Aの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Bに対して接合されることなく傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部82Bが形成されている。
【0110】
かくして、このように構成される第7の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル81,82を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第7の実施の形態では、一方の軸受メタル81にそれぞれ複数の接合部81A,81Bを互いに間隔をもってスポット状に配置して形成することができ、他方の軸受メタル82にも、複数の列をなした各接合部82Aを互いに間隔をもってスポット状に配置して形成することができる。
【0111】
なお、前記第7の実施の形態で述べた軸受メタル81,82についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば接合部82Aを有する軸受メタル82を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、接合部81A,81Bを有する軸受メタル81を設ける構成としてもよい。
【0112】
次に、図21は本発明の第8の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する接合部を、例えば四角形の枠形状をなして形成する構成としたことにある。なお、第8の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0113】
図中、91,92は第8の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル91,92は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル91,92は、後述の各接合部91A,92A等が四角形の枠形状をなして形成されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0114】
即ち、一方の軸受メタル91には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により四角形の枠形状をなす接合部91Aと、該接合部91Aの内側に位置して斜板12の傾転方向と垂直に延びた細幅な合計2本の接合部91Bと、該各接合部91Bの間に位置して円形のスポット形状をなす1個の接合部91Cとが形成されている。また、接合部91Aの内側と外側には、各接合部91B,91Cの周囲に位置して斜板支持体11の傾転支持面11Aに接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部91Dが形成されている。
【0115】
また、他方の軸受メタル92には、四角形の枠形状をなす接合部92Aと、該接合部92Aの内側に位置して斜板12の傾転方向と垂直に延びた細幅な合計3本の接合部92Bとが形成されている。また、接合部92Aの内側と外側には、各接合部92Bの周囲に位置して斜板支持体11の傾転支持面11Bに接合されることなく傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部92Cが形成されている。
【0116】
かくして、このように構成される第8の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル91,92を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第8の実施の形態では、一方の軸受メタル91に、四角形の枠形状をなす接合部91Aと、該接合部91Aの内側に位置して斜板12の傾転方向と垂直に延びた細幅な接合部91Bと、小さな円形のスポット形状をなす接合部91Cとを形成することができる。
【0117】
また、他方の軸受メタル92にも、四角形の枠形状をなす接合部92Aと、該接合部92Aの内側に位置して斜板12の傾転方向と垂直に延びた細幅な接合部92Bとを容易に形成することができる。これにより、斜板12の脚部12A,12Bを接合部91A,92Aの伸長方向で傾転駆動することができ、このときの傾転動作を滑らかに行うことができる。また、傾転支持面11A,11Bから軸受メタル91,92が剥離したりするのを、各接合部の形状等を選択することにより抑えることができ、軸受メタル91,92としての耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0118】
なお、前記第8の実施の形態で述べた軸受メタル91,92についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば接合部92A,92Bを有する軸受メタル92を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、接合部91A,91B,91Cを有する軸受メタル91を設ける構成としてもよい。
【0119】
次に、図22ないし図24は本発明の第9の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、軸受部材に形成する接合部によって導油通路の開口側を外側から取囲む構成としたことにある。なお、第9の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0120】
図中、101,102は第9の実施の形態で採用した軸受部材としての軸受メタルで、該軸受メタル101,102は、第1の実施の形態で述べた軸受メタル14,15とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の軸受メタル101,102は、後述する接合部101A,101B,102A,102B等の形状が前記第1の実施の形態とは相違している。
【0121】
即ち、一方の軸受メタル101には、摩擦撹拌接合用の工具(図示せず)により斜板12の傾転方向と平行な方向に延びた細幅な合計2本の接合部101Aと、該各接合部101A間の中間位置に配置され後述の連通孔103Bを外側から取囲む小径な円筒状の接合部101Bとが形成されている。また、各接合部101A,101Bの周囲には、斜板支持体11の傾転支持面11Aに接合されることなく傾転支持面11Aを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部101Cが形成されている。
【0122】
また、他方の軸受メタル102には、四角形の枠形状をなす接合部102Aと、該接合部102Aの内側に位置して斜板12の傾転方向と垂直に延びた細幅な合計3本の接合部102Bとが形成されている。また、接合部102Aの内側と外側には、各接合部102Bの周囲に位置して斜板支持体11の傾転支持面11Bに接合されることなく傾転支持面11Bを外側から面接触状態で覆う非接合被覆部102Cが形成されている。
【0123】
103,104は斜板支持体11に形成した導油通路で、該導油通路103,104は、第1の実施の形態で述べた第2の導油通路20(図5中に二点鎖線で図示)とほぼ同様に形成され、その基端側が第1の導油通路19(図1参照)の先端側に連通する接続端103A,104Aとなっている。なお、導油通路103,104は、例えば接続端103A,104A間を1本の通路で互いに連通させる構成としてもよく、互いに別々に第1の導油通路19に接続する構成であってもよい。
【0124】
また、導油通路103の先端側は、図23に示すように軸受メタル101の表面に開口するように、軸受メタル101に形成された連通孔103Bとなっている。この連通孔103Bは、図22に示す如く軸受メタル101の接合部101Bにより周囲が取囲まれている。このため、導油通路103内を流れる圧油(潤滑油)が、斜板支持体11の傾転支持面11Aと軸受メタル101の非接合被覆部101Cとの間の重合せ面(接触面)から漏洩するのを、小径な筒状の接合部101Bにより阻止できるものである。
【0125】
一方、導油通路104の先端側は、図24に示すように軸受メタル102の表面に開口するように、軸受メタル102に形成された連通孔104Bとなっている。この連通孔104Bは、図22に示す如く軸受メタル102の接合部102Aと2本の接合部102Bとにより周囲が取囲まれている。このため、導油通路104内を流れる圧油(潤滑油)が、斜板支持体11の傾転支持面11Bと軸受メタル102の非接合被覆部102Cとの間の重合せ面(接触面)から漏洩するのを、接合部102A,102Bとにより阻止できるものである。
【0126】
かくして、このように構成される第9の実施の形態でも、摩擦撹拌接合手段を用いて軸受メタル101,102を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに接合することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0127】
特に、第9の実施の形態では、一方の軸受メタル101に穿設した導油通路103の連通孔103Bを小径な筒状の接合部101Bで取囲むことにより、導油通路103からの潤滑油が傾転支持面11Aと軸受メタル101との間に浸入、漏洩するのを防止できる。また、他方の軸受メタル102側でも、導油通路104の連通孔104Bを接合部102Aと2本の接合部102Bとで外側から取囲むことにより、導油通路104からの潤滑油が傾転支持面11Bと軸受メタル102との間に浸入、漏洩するのを防止できる。
【0128】
この結果、軸受メタル101,102の非接合被覆部101C,102Cと斜板支持部11の傾転支持面11A,11Bとの間に仮に微小な隙間が形成されたとしても、連通孔103B,104Bの周囲を接合部で取囲むことにより、導油通路103,104からの圧油が前記隙間内に漏洩するのを阻止でき、斜板12の脚部12A,12Bと軸受メタル101,102との間の傾転摺動面に十分な量の圧油(潤滑油)を供給することができる。また、傾転支持面11A,11Bから軸受メタル101,102が剥離したりするのを、各接合部の形状等を選択することにより抑えることができ、軸受メタル101,102としての耐久性、寿命、信頼性を向上することができる。
【0129】
なお、前記第9の実施の形態で述べた軸受メタル101,102についても、前述した第1の実施の形態の変更と同様に、例えば接合部102A,102Bを有する軸受メタル102を斜板支持体11の一方の傾転支持面11A側に設け、他方の傾転支持面11B側には、接合部101A,101Bを有する軸受メタル101を設ける構成としてもよい。
【0130】
また、前記第1の実施の形態では、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに軸受メタル14,15を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば高分子系の樹脂材料から帯状体として形成された軸受部材を、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bに対して塑性流動状態で接合する構成としてもよい。そして、この点は、第2〜第9の実施の形態についても同様である。
【0131】
また、前記第2の実施の形態では、斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との間にインサートメタル33,34を介挿する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば樹脂材料から帯状体として形成されたインサート部材を斜板支持体11の傾転支持面11A,11Bと軸受メタル31,32との間に介挿して設ける構成としてもよい。なお、前記第1,第3〜第9の実施の形態についても、インサートメタル33,34等のインサート部材を介挿して設ける構成としてもよいものである。
【0132】
また、前記第1,第2,第4〜第9の実施の形態については、前記第3の実施の形態で述べた接合部41A,42Aと周囲の非接合被覆部41B,42Bと同様に、接合部を周囲の非接合被覆部よりも凹状に窪ませて形成する構成としてもよいものである。
【0133】
また、前記第1の実施の形態では、ケーシング2に設けられた第1の導油通路19一側をリヤケーシング2C側で高圧側の給排通路3Bに接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば低圧のパイロットポンプを含む他の油圧ポンプに導油通路19の一側を接続し、これらのポンプから供給される圧油により斜板12の傾転摺動面を潤滑する構成としてもよい。この点は、第2〜第9の実施の形態についても同様である。
【0134】
さらに、前記各実施の形態では、可変容量型斜板式液圧回転機を斜板式油圧ポンプ1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の適用対象は、可変容量型の斜板式油圧ポンプに限るものではなく、例えば斜板式油圧モータ等の可変容量型斜板式液圧回転機に適用してもよいものである。
【符号の説明】
【0135】
1 油圧ポンプ(可変容量型斜板式液圧回転機)
2 ケーシング
3A,3B 給排通路
4 回転軸
5 シリンダブロック
6 シリンダ
7 ピストン
8 シュー
10 弁板
11 斜板支持体(斜板支持部)
11A,11B 傾転支持面
12 斜板
12A,12B 脚部
12C 平滑面
12D 貫通穴
14,15,31,32,41,42,51,52,61,62,71,72,81,82,91,92,101,102 軸受メタル(軸受部材)
14A,15A,31A,32A,41A,42A,51A,52A,61A,62A,71A,72A,81A,81B,82A,91A,91B,91C,92A,92B,101A,101B,102A,102B 接合部
14B,15B,31B,32B,41B,42B,51B,52B,61B,62B,71B,72B,81C,82B,91D,92C,101C,102C 非接合被覆部
16 摩擦撹拌接合用の工具
17,18 傾転アクチュエータ
17B,18B 液圧室
17C,18C 傾転ピストン
19 第1の導油通路
20 第2の導油通路
33,34 インサートメタル(インサート部材)
41C,42C 凹部
103,104 導油通路
103B,104B 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に斜板支持部が設けられ他側に一対の給排通路が設けられた筒状のケーシングと、該ケーシングに回転可能に設けられた回転軸と、該回転軸と一体に回転するように前記ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有したシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記各シリンダから突出する該各ピストンの突出端側に装着された複数のシューと、表面側が該各シューを摺動可能に案内する平滑面となり裏面側が前記斜板支持部に傾転可能に支持される斜板と、前記ケーシングに設けられ外部から傾転制御圧が給排されることにより該斜板を傾転駆動する傾転アクチュエータとを備え、
前記斜板の裏面側には、前記回転軸を挟んで互いに離間し前記斜板支持部に向けて凸湾曲状に突出する一対の脚部を設け、前記斜板支持部には、該一対の脚部に対応して凹湾曲状に形成され該各脚部を介して前記斜板を傾転可能に支持する一対の傾転支持面を設けてなる可変容量型斜板式液圧回転機において、
前記斜板支持部の各傾転支持面のうち少なくとも一方の傾転支持面には、前記斜板の脚部が傾転可能に摺接する面に沿って凹湾曲状に延びた帯状体からなる軸受部材を設け、
該軸受部材は、摩擦撹拌接合用の工具を回転させながら前記斜板支持部の傾転支持面に向けて押圧することにより当該傾転支持面に塑性流動状態で接合する構成としたことを特徴とする可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項2】
前記斜板支持部の傾転支持面と前記軸受部材との間には、両者の間に介在し前記傾転支持面に沿って凹湾曲状に延びる帯状のインサート部材を設け、前記軸受部材は、前記摩擦撹拌接合用の工具を用いて前記インサート部材と一緒に前記傾転支持面に塑性流動状態で接合する構成としてなる請求項1に記載の可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項3】
前記軸受部材には、前記摩擦撹拌接合用の工具により前記傾転支持面に接合された1個または複数個の接合部と、該接合部の周囲に位置し前記傾転支持面に対して接合されることなく前記傾転支持面を外側から覆う非接合被覆部とを設ける構成としてなる請求項1または2に記載の可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項4】
前記軸受部材を前記傾転支持面に摩擦撹拌接合する前記接合部は、前記斜板支持部に対する前記斜板の傾転方向と平行な方向、前記傾転方向に対して垂直な方向または前記傾転方向に対して斜めに傾いた方向に延びる構成としてなる請求項3に記載の可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項5】
前記軸受部材の前記接合部は、その周囲に位置する前記非接合被覆部よりも凹状に窪ませて形成する構成としてなる請求項3または4に記載の可変容量型斜板式液圧回転機。
【請求項6】
前記ケーシングには前記斜板と前記斜板支持部との間に向けて延び両者の傾転摺動面を潤滑状態に保つための導油通路を設け、前記軸受部材には、前記導油通路に連通し前記斜板との傾転摺動面に開口する連通孔を設け、前記接合部は、該連通孔の開口部周囲を取囲んで形成する構成としてなる請求項3,4または5に記載の可変容量型斜板式液圧回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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