説明

可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置

斜板(21)の側面とレギュレータ(24)の制御スリーブ(26)との間には、変換部(31)と並進バー(33)とからなるフィードバック機構(30)を設ける。フィードバック機構(30)の変換部(31)は、斜板(21)が中立位置にあるときに初期位置(F−F)となって傾転中心(C)を通る軸線(O−O)に沿った軸方向一側に位置し、斜板(21)が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには、前記初期位置(F−F)から軸線(O−O)に沿って軸方向他側に変位することにより、斜板(21)の傾転動作を軸方向変位に変換して取出す。そして、前記並進バー(33)は、変換部(31)で取出した軸方向変位をレギュレータ(24)の制御スリーブ(26)に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えばホイールローダ、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーンまたはクローラ式の油圧ショベル、油圧クレーン等の作業車両に好適に用いられる可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置に関する。
【背景技術】
一般に、油圧ショベル等の建設機械には、タンクと共に油圧源を構成する可変容量型油圧ポンプが設けられている。そして、この可変容量型油圧ポンプは、ディーゼルエンジン等の原動機で回転軸が回転駆動されることにより、作業用油圧シリンダ、走行用または旋回用油圧モータ等の各油圧アクチュエータに向けて圧油を給排するものである。
また、この種の従来技術による可変容量型油圧ポンプ(以下、第1の従来技術という)には、傾転制御装置が設けられ、この傾転制御装置は、傾転制御圧が給排されることにより前記油圧ポンプの容量可変部を傾転駆動する傾転アクチュエータと、制御スリーブ内にスプールを有したサーボ弁からなり該傾転アクチュエータに給排する前記傾転制御圧を外部からの指令信号に従って制御するレギュレータと、前記容量可変部の傾転動作に追従して該レギュレータの制御スリーブをフィードバック制御するフィードバック機構とにより構成されている(例えば、特開2003−74461号公報)。
そして、この傾転制御装置は、外部からの指令信号に従ってレギュレータのスプールが摺動変位すると、傾転制御圧が切換制御されることにより傾転アクチュエータが作動して容量可変部を傾転駆動する。また、前記フィードバック機構は、例えばフィードバックリンクを容量可変部の傾転動作に伴って回動する。そして、前記レギュレータの制御スリーブは、フィードバックリンクの回動変位が伝達されることにより、前記スプールと同方向に摺動変位するようにフィードバック制御されるものである。
一方、第2の従来技術として、油圧閉回路に適用することを前提として構成された可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置も知られている(例えば、特開平5−39863号公報)。
ところで、上述した第1の従来技術による可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置は、油圧ポンプの容量可変部が、例えば傾転角零の中立位置を基準として一方向(例えば、正方向)にのみ傾転駆動されるもので、前記中立位置を基準として逆方向に傾転する場合を想定して設計したものではない。
このため、このような可変容量型油圧ポンプは、油圧モータ等の油圧アクチュエータに対し油圧閉回路を用いて接続しようとすると、前記中立位置を基準として容量可変部が、正方向と逆方向との双方向に傾転駆動されるように大幅な設計変更を行う必要が生じる。
しかも、油圧閉回路に適用するときには、容量可変部が正方向に傾転される場合と逆方向に傾転される場合とで、レギュレータの制御スリーブが逆向きにフィードバック(摺動変位)されることになり、レギュレータのフィードバック制御等を円滑に行うことができないという問題がある。
一方、第2の従来技術による可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置は、油圧閉回路に用いることを前提としたもので、油圧ポンプの容量可変部を傾転駆動する傾転アクチュエータと容量制御弁とが一体構造をなすように組立てられている。
そして、この場合の傾転制御装置は、傾転アクチュエータとなるレギュレータピストンの左,右両側に、それぞれメインスプールおよび圧力室等を設ける構成としているので、部品点数が増加してしまい、装置全体の構造が複雑になるという問題がある。
また、この場合の傾転制御装置は、油圧閉回路に専用の装置となってしまい、油圧開回路等にも汎用性をもって適用することができず、油圧ポンプとしての用途が制限されるという問題がある。
【発明の開示】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、容量可変部を正方向と逆方向との双方向に傾転駆動することができ、油圧閉回路への適用を可能にすると共に、レギュレータのフィードバック制御を円滑に行うことができ、構造も簡素化できるようにした可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、油圧モータ等の油圧アクチュエータに対し油圧閉回路を用いて接続できるばかりでなく、油圧開回路にも適用することができ、汎用性を高めて生産性の向上、コストの低減化等を図ることができるようにした可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置を提供することにある。
(1).上述した課題を解決するため、本発明は、容量可変部を有し回転軸が駆動源により回転駆動される可変容量型の油圧ポンプと、傾転制御圧が給排されることにより該油圧ポンプの容量可変部を傾転駆動する傾転アクチュエータと、制御スリーブ内にスプールを有したサーボ弁からなり該傾転アクチュエータに給排する前記傾転制御圧を外部からの指令信号に従って制御するレギュレータと、前記容量可変部の傾転動作に追従して該レギュレータの制御スリーブをフィードバック制御するフィードバック機構とからなる可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置に適用される。
そして、本発明が採用する構成の特徴は、前記油圧ポンプは、前記傾転アクチュエータにより容量可変部を傾転角零の中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動する構成とし、前記フィードバック機構は、前記容量可変部の傾転動作を、該容量可変部の傾転中心を通る直線に沿った長手方向変位に変換して取出す変換部と、該変換部と前記レギュレータの制御スリーブとの間に設けられ該変換部で取出した長手方向変位を前記レギュレータの制御スリーブに伝える変位伝達部とにより構成し、前記変換部は、前記容量可変部が中立位置にあるときに初期位置となって前記直線上の長手方向一側に位置し、前記容量可変部が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには前記初期位置から前記直線に沿って長手方向他側へと変位する構成としたことにある。
上述の如く、本発明によれば、油圧ポンプの容量可変部を傾転アクチュエータにより傾転角零の中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動する構成としているので、例えば容量可変部を正方向に傾転している状態では、油圧ポンプから油圧アクチュエータに対し油圧閉回路を通じて一方向に圧油を給排することができる。一方、容量可変部を逆方向に傾転したときには、油圧ポンプから油圧アクチュエータに対して他方向(逆方向)に圧油を給排することができる。また、フィードバック機構を変換部と変位伝達部とにより構成しているので、フィードバック機構の変換部は、容量可変部が中立位置にあるときに初期位置となって容量可変部の傾転中心を通る直線に沿った長手方向一側に位置し、前記容量可変部が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには、容量可変部の傾転動作を前記直線に沿った長手方向変位、即ち前記初期位置から長手方向他側に向けた変位に変換して取出すことができる。そして、変位伝達部は、このような長手方向変位をレギュレータの制御スリーブに伝えることができ、この制御スリーブをスプールと同方向に摺動変位させるようにレギュレータをフィードバック制御することができる。
従って、当該油圧ポンプを油圧アクチュエークに対し油圧閉回路を用いて接続した場合にも、容量可変部を中立位置から正方向と逆方向とにそれぞれ傾転して圧油の吐出量(流量)を両方向で制御できると共に、容量可変部が正方向と逆方向いずれの方向に傾転されるときにもレギュレータのフィードバック制御を円滑に行うことができる。そして、制御スリーブ内にスプールを有したサーボ弁によりレギュレータを構成できるので、傾転制御装置全体の構造を簡素化することができる。また、当該油圧ポンプは、所謂油圧開回路に適用しても油圧アクチュエータに圧油を給排することができるので、油圧閉回路と開回路との双方に適用でき、汎用性を高めて生産性の向上、コストの削減化等を図ることができる。
(2).この場合、本発明によると、前記直線を、前記油圧ポンプの回転軸に対して平行に延びる軸線とし、前記変換部は、前記容量可変部の傾転動作を前記回転軸に沿った軸方向変位に変換して取出す構成としてもよい。
これにより、フィードバック機構の変換部は、容量可変部の傾転動作を油圧ポンプの回転軸に沿った軸方向変位に変換して取出すことができる。そして、容量可変部が中立位置にあるときには、例えばフィードバック機構の変位伝達部を油圧ポンプの回転軸に沿った軸方向一側の初期位置に配置でき、前記容量可変部が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには、前記変位伝達部を初期位置から軸方向他側に向けて変位させることができる。
(3).また、本発明によると、前記直線を、前記油圧ポンプの回転軸に対して予め決められた角度分だけ斜めに傾いた傾斜直線とし、前記変換部は、前記容量可変部の傾転動作を前記傾斜直線に沿った長手方向変位に変換して取出す構成としてもよい。
これにより、フィードバック機構の変換部は、容量可変部の傾転動作を前記傾斜直線に沿った長手方向変位に変換して取出すことができる。そして、容量可変部が中立位置にあるときには、例えばフィードバック機構の変位伝達部を前記傾斜直線に沿った長手方向一側の初期位置に配置でき、前記容量可変部が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには、前記変位伝達部を初期位置から長手方向他側に向けて変位させることができる。
(4).一方、本発明によると、前記傾転アクチュエータと前記レギュレータとの間には、前記容量可変部を中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動するため前記傾転制御圧の給排方向を切換える方向切換弁を設ける構成としている。
この構成により、傾転アクチュエータとレギュレータとの間に設けた方向切換弁を切換制御することにより、前記傾転アクチュエータに対する傾転制御圧の給排方向を切換えることができ、この傾転制御圧に従って容量可変部を中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動することができる。また、これによってレギュレータを含めた傾転制御装置全体の構造を簡素化でき、生産性の向上、コストの削減化等を図ることができる。
(5).また、本発明によると、前記フィードバック機構の変位伝達部は、前記容量可変部が傾転するときに前記レギュレータの制御スリーブと一緒に前記直線の長手方向に沿って並進運動する並進部材により構成している。
この構成により、容量可変部が傾転するときに変換部により変換して取出される軸方向変位を、前記直線の長手方向に沿った並進部材の並進運動としてレギュレータの制御スリーブに伝えることができ、該制御スリーブを円滑にフィードバック制御することができる。
(6).また、本発明によると、前記フィードバック機構の変換部は、前記容量可変部の傾転中心となる位置から離間して該容量可変部の側面に設けられた係合部と、前記変位伝達部の長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部が摺動可能に係合する被係合部とにより構成している。
このように、フィードバック機構の変換部を、容量可変部の側面に設けた係合部と変位伝達部の長さ方向一側に設けた被係合部とから構成することにより、容量可変部の傾転動作を変位伝達部の並進運動(長手方向変位)に変換して取出すことができる。
(7).上記構成の場合、前記変換部の係合部は、前記容量可変部から前記直線の径方向へと突出した突起部により構成し、前記被係合部は、該突起部に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部により構成するのがよい。
このように、断面U字状のスライダ部に対して突起部を摺動可能に凹凸嵌合させることにより、変位伝達部の一端側が容量可変部に対して前記直線の長手方向で相対移動するのを規制でき、直線と直交する方向では両者が相対移動するのを許すことができ、これにより、容量可変部の傾転動作を円滑に取出すことができる。
(8).また、本発明によると、前記フィードバック機構の変換部は、前記容量可変部から前記直線の長手方向に延設され前記容量可変部と一体に傾転する傾転レバーと、前記容量可変部の傾転中心となる位置から離間して該傾転レバーに設けられた係合部と、前記変位伝達部の長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部が摺動可能に係合する被係合部とにより構成している。
これにより、容量可変部の傾転動作を傾転レバーの長さ分だけ拡大しつつ、変位伝達部の長手方向変位に変換して取出すことができ、容量可変部の傾転動作をレギュレータの制御スリーブに大なる変位として伝えることができる。
(9).この場合には、前記変換部の係合部を、前記傾転レバーから前記直線の径方向へと突出した突起部により構成し、前記被係合部は、該突起部に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部により構成するのがよい。
(10).一方、本発明によると、前記フィードバック機構の変位伝達部は、前記直線と直交する方向に延びる支持軸と、長さ方向の途中部位が該支持軸に支持され前記容量可変部が傾転するときに前記レギュレータの制御スリーブを長手方向に変位させるように前記支持軸を中心にして揺動する揺動リンクとにより構成している。
このように揺動リンクを用いた場合には、容量可変部が傾転するときに変換部により変換して取出される長手方向変位を、揺動リンクにより逆向きの変位としてレギュレータの制御スリーブに伝えることができる。そして、この場合も制御スリーブをスプールと同方向に摺動変位させるようにレギュレータをフィードバック制御することができる。また、この場合には、揺動リンクの一側と他側とが前記支持軸を中心にして互いに逆向きに変位するので、前記支持軸と揺動リンクの両端までの寸法比(距離の比率)に従って制御スリーブの変位量を拡大することができ、レギュレータの制御スリーブを十分な変位量でフィードバック制御できる。
(11).また、本発明によると、前記フィードバック機構の変換部は、前記容量可変部の傾転中心となる位置から離間して該容量可変部の側面に設けられた係合部と、前記揺動リンクの長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部が摺動可能に係合する被係合部とにより構成している。これにより、容量可変部の傾転動作を揺動リンクの揺動変位(前記直線の長手方向に沿った揺動変位)として取出すことができる。
(12).上記構成の場合も、前記変換部の係合部は、前記容量可変部から前記直線の径方向へと突出した突起部により構成し、前記被係合部は、該突起部に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部により構成すればよい。
(13).一方、本発明によると、前記レギュレータは、前記制御スリーブとスプールとが前記直線と平行に延びるように配設し、前記変位伝達部は制御スリーブに固定した状態に保持する構成としている。
これにより、例えばレギュレータの制御スリーブと容量可変部(または傾転レバー)との間に設けた並進部材を、前記直線の長手方向に沿って滑らかに変位させることができ、容量可変部の傾転動作に追従してレギュレータの制御スリーブを円滑にフィードバック制御することができる。
(14).また、本発明によると、前記油圧ポンプは、前記回転軸が回転可能に設けられる筒状のケーシングと、前記回転軸と一体に回転するように該ケーシング内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダを有したシリンダブロックと、該シリンダブロックの各シリンダに往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、該各ピストンの端部に装着されたシューが摺動する摺動面を有し前記容量可変部となってケーシング内に傾転可能に設けられた斜板とを備え、前記傾転アクチュエータは、前記回転軸の径方向に離間して前記ケーシング内に設けられ前記斜板を中立位置から正方向または逆方向に傾転駆動する傾転ピストンによって構成し、前記レギュレータは、該傾転ピストンから離間して前記ケーシングに設けられ前記制御スリーブをフィードバック機構を介して前記斜板に連結する構成とし、前記フィードバック機構の変位伝達部は、その途中部位を前記ケーシングに対し前記直線の長手方向に沿って移動可能に取付ける構成としている。
この構成により、斜板式の可変容量型油圧ポンプを油圧アクチュエータに対し油圧閉回路を用いて接続した場合でも、斜板を傾転角零の中立位置から正方向と逆方向とにそれぞれ傾転でき、圧油の吐出量(流量)を両方向で制御できると共に、斜板が正方向と逆方向いずれの方向に傾転されるときにもレギュレータのフィードバック制御を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態による可変容量型油圧ポンプが設けられた油圧閉回路を示す回路図である。
図2は、図1に示す油圧ポンプの縦断面図である。
図3は、油圧ポンプを図2中の矢示III−III方向からみた縦断面図である。
図4は、斜板が中立位置にある状態を図3中の矢示IV−IV方向からみた拡大断面図である。
図5は、斜板が正方向に傾転した状態を示す図4と同様位置での断面図である。
図6は、第1の実施の形態による斜板の傾転制御装置を示す回路構成図である。
図7は、図6中の斜板およびフィードバック機構を傾転ピストンと共に示す正面図である。
図8は、図7中の斜板を正方向に傾転した状態を示す正面図である。
図9は、図7中の斜板を逆方向に傾転した状態を示す正面図である。
図10は、第2の実施の形態による油圧ポンプを示す図3と同様位置での縦断面図である。
図11は、斜板が中立位置にある状態を図10中の矢示XI−XI方向からみた拡大断面図である。
図12は、斜板が正方向に傾転した状態を示す図11と同様位置での断面図である。
図13は、第2の実施の形態による斜板の傾転制御装置を示す回路構成図である。
図14は、図13中の斜板およびフィードバック機構を傾転ピストンと共に示す正面図である。
図15は、図14中の斜板を正方向に傾転した状態を示す正面図である。
図16は、図14中の斜板を逆方向に傾転した状態を示す正面図である。
図17は、第3の実施の形態による油圧ポンプを示す図3と同様位置での縦断面図である。
図18は、斜板が中立位置にある状態を図17中の矢示XVIII−XVIII方向からみた拡大断面図である。
図19は、斜板が正方向に傾転した状態を示す図18と同様位置での断面図である。
図20は、第3の実施の形態による斜板の傾転制御装置を示す回路構成図である。
図21は、第4の実施の形態による傾転制御装置の斜板およびフィードバック機構を傾転ピストンと共に示す正面図である。
図22は、図21中の斜板を正方向に傾転した状態を示す正面図である。
図23は、図21中の斜板を逆方向に傾転した状態を示す正面図である。
図24は、変形例による傾転制御装置の斜板およびフィードバック機構を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態による可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置を、例えばホイールローダ等のホイール式作業車両における走行用油圧回路に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1〜図23に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は可変容量型油圧ポンプとしての斜板式可変容量型油圧ポンプで、該油圧ポンプ1は、後述のケーシング11、回転軸13、シリンダブロック14、弁板19および斜板21等によって構成されるものである。
また、油圧ポンプ1は、例えば駆動源となるディーゼルエンジン等の原動機2により回転軸13が回転駆動され、図1に示す如く一対の主管路3A,3B内に圧油を流通させるものである。そして、油圧ポンプ1は、主管路3A,3Bを介して後述の油圧モータ5に接続され、所謂油圧閉回路4を構成しているものである。
5は油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータで、該油圧モータ5は、例えば減速機6を介してホイール式作業車両の車輪7,7に連結されている。そして、油圧モータ5は、油圧ポンプ1からの圧油が主管路3A,3Bを介して給排されることにより、車輪7を回転駆動して作業車両を走行駆動するものである。
11は油圧ポンプ1の外殻となるケーシングで、該ケーシング11は、図2、図3に示すように筒状のケーシング本体11Aと、該ケーシング本体11Aの両端側を閉塞したフロントケーシング11B、リヤケーシング11Cとから構成されている。そして、リヤケーシング11Cには、一対の給排通路12A,12Bが設けられ、該給排通路12A,12Bは、図1に示す主管路3A,3Bに接続されるものである。
また、ケーシング本体11Aの外周側には、図3に示す如く後述するレギュレータ24の弁ハウジング25内と連通する開口部11Dとドレン通路11Eとが形成されている。そして、ケーシング本体11Aの開口部11D内には、後述の並進バー33がガイド部材34等を介してスライド可能に取付けられるものである。また、ケーシング11内はドレン室となって後述のタンク36に接続されている。
13はケーシング11内に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸13は、フロントケーシング11Bとリヤケーシング11Cとにそれぞれ軸受を介して回転可能に支持されている。そして、回転軸13は、フロントケーシング11Bから軸方向に突出する突出端13A側が、図1に示す原動機2により回転駆動されるものである。
14は回転軸13と一体的に回転するようにケーシング11内に設けられたシリンダブロックで、該シリンダブロック14には、その周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ15,15,…が設けられている。
16,16,…はシリンダブロック14の各シリンダ15内にそれぞれ摺動可能に挿嵌されたピストンで、該各ピストン16は、後述の斜板21が正方向または逆方向に傾転されたときに、シリンダブロック14の回転に伴ってシリンダ15内を往復動し、吸入行程と吐出行程とを繰返すものである。
また、ピストン16の一端側は、シリンダブロック14のシリンダ15から回転軸13の軸方向に突出し、該ピストン16の突出端側には、シュー17,17,…がそれぞれ揺動可能に取付けられている。
18は各シュー17を斜板21に対して保持する環状のシュー押えで、該シュー押え18は、図3ないし図4に示す如く後述する斜板21の摺動面21Aに向けてシュー17をそれぞれ押圧し、斜板21の摺動面21A上で各シュー17が環状軌跡を描くように摺動変位するのを保証するものである。
19はケーシング11内に位置してリヤケーシング11Cとシリンダブロック14との間に設けられた弁板で、該弁板19は、シリンダブロック14の端面に摺接し、シリンダブロック14を回転軸13と一緒に回転可能に支持している。また、弁板19には、図3に示す如く眉形状をなす一対の給排ポート19A,19Bが形成され、これらの給排ポート19A,19Bは、リヤケーシング11Cの給排通路12A,12Bと連通しているものである。
そして、弁板19の給排ポート19A,19Bは、シリンダブロック14の回転時に各シリンダ15と間欠的に連通し、一方の給排通路12A(または12B)側から各シリンダ15内に吸込まれた作動油をピストン16により加圧させると共に、各シリンダ15内で高圧状態となった圧油を他方の給排通路12B(または12A)から吐出させる機能を有している。
20は回転軸13の周囲に位置してフロントケーシング11Bに設けられた斜板支持体で、該斜板支持体20は、斜板21の裏面側に位置し、斜板21を傾転可能に支持するための傾転支持面20Aを有している。そして、該傾転支持面20Aは、図4に示すように凹湾曲面形状をなし、斜板21を矢示A,B方向に傾転中心Cの回りで摺動可能に案内するものである。
21はケーシング11内に斜板支持体20を介して傾転可能に設けられた容量可変部としての斜板で、該斜板21は、表面側が各シュー17に対する摺動面21Aとなり、裏面側は斜板支持体20の傾転支持面20Aに嵌合される凸湾曲状の傾転案内面21Bとなっている。
ここで、斜板21の傾転案内面21Bは、図4ないし図6に示すように傾転中心Cから半径Rの円弧面として形成され、この傾転中心Cは、回転軸13と平行に延びる軸線O−O上に配置されるものである。そして、斜板21は、図4、図7に示す傾転角零の中立位置から正方向(矢示A方向)と逆方向(矢示B方向)とに後述の傾転アクチュエータ22,23を用いて傾転駆動される。このとき、油圧ポンプ1の容量(圧油の吐出量)は、斜板21の傾転角θに応じて可変に制御されるものである。
22,23は斜板21を傾転駆動する一対の傾転アクチュエータを示す。そして、この傾転アクチュエータ22,23は、図2ないし図5に示すようにシリンダブロック14の径方向外側に位置してケーシング本体11Aに形成されたシリンダ穴22A,23Aと、該シリンダ穴22A,23A内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ穴22A,23Aとの間に液圧室22B,23Bを画成した傾転ピストン22C,23Cと、液圧室22B,23B内に配設され、該傾転ピストン22C,23Cを斜板21側に向けて常時付勢したスプリング22D,23Dとにより構成されている。
ここで、傾転アクチュエータ22,23は、ケーシング本体11Aに対しシリンダブロック14の径方向で互いに対向する位置に配設され、傾転ピストン22C,23Cによって斜板21を矢示A,B方向に傾転駆動する。即ち、傾転アクチュエータ22,23の液圧室22B,23Bは、図3、図6に示すように後述の制御管路39B,39Aに接続され、傾転制御圧が給排される。
そして、この傾転制御圧で傾転ピストン23Cが図5に示す如くシリンダ穴23A内から伸長し、傾転ピストン22Cがシリンダ穴22A内に縮小するときには、斜板21が傾転ピストン23Cによって矢示A方向(正方向)に傾転駆動される。また、傾転ピストン22Cがシリンダ穴22A内から伸長し、傾転ピストン23Cがシリンダ穴23A内へと縮小するときには、斜板21が傾転ピストン22Cによって矢示B方向(逆方向)に傾転駆動されるものである。
24はレギュレータを示し、該レギュレータ24は、傾転アクチュエータ22,23に傾転制御圧を給排する容量制御弁として機能するものである。そして、このレギュレータ24は、図3に示すようにケーシング本体11Aの外側に位置してケーシング11に設けられた弁ハウジング25と、後述の制御スリーブ26、スプール27、油圧パイロット部28および弁ばね29等とから構成されている。そして、レギュレータ24は、図6に示す如く制御スリーブ26内にスプール27を有した傾転制御用の油圧サーボ弁によって構成されるものである。
ここで、レギュレータ24の弁ハウジング25には、図3に示す如く傾転制御圧の給排ポート25A,25B等が設けられ、給排ポート25Aは後述の制御管路37Aを介してパイロットポンプ35の吐出側に接続されている。また、給排ポート25Bは後述の制御管路37Bに接続されている。そして、レギュレータ24の弁ハウジング25は、ケーシング11の外側面に液密に固定して設けられ、制御スリーブ26およびスプール27等は、回転軸13(図6に示す軸線O−O)と平行に延びるように配設されている。
26は弁ハウジング25内に摺動可能に挿嵌された筒状の制御スリーブで、該制御スリーブ26は、その軸方向一側の外周に後述の並進バー33が複数の固定ねじ等を用いて一体的に連結され、並進バー33の動き(回転軸13の軸方向に沿った並進運動)に追従して弁ハウジング25内を軸方向(図4中の矢示D,E方向)に摺動変位するものである。
27は制御スリーブ26内に摺動可能に挿嵌して設けられたスプールで、該スプール27は、制御スリーブ26の内周側で弁ハウジング25の軸方向に摺動変位することにより、給排ポート25Bを給排ポート25Aまたはドレン通路11Eに選択的に連通,遮断するものである。
28はスプール27の軸方向一側に位置して弁ハウジング25に設けられた油圧パイロット部で、該油圧パイロット部28は、後述の弁ばね29に抗してスプール27を軸方向に駆動するためのプランジャ28Aを有し、後述の指令圧管路42を介して指令圧が供給される。
そして、油圧パイロット部28のプランジャ28Aは、指令圧管路42からの指令圧をパイロット圧として受圧することにより、このパイロット圧に応じてスプール27を弁ハウジング25内で軸方向に摺動変位させ、図6に示すレギュレータ24を中立位置(Va)から切換位置(Vb),(Vc)に切換えるものである。
29はスプール27の軸方向他側と弁ハウジング25との間に配設された弁ばねを示し、該弁ばね29は、スプール27を油圧パイロット部28側に向けて常時付勢し、例えば図6に示すレギュレータ24を中立位置(Va)に復帰させるものである。
30は第1の実施の形態に係るフィードバック機構で、該フィードバック機構30は、斜板21の傾転動作に追従させてレギュレータ24をフィードバック制御するものである。ここで、フィードバック機構30は、図3、図6に示すように斜板21の側面とレギュレータ24の制御スリーブ26との間に設けられた後述の変換部31および並進バー33により構成されている。
そして、フィードバック機構30は、斜板21が中立位置から正方向または逆方向に傾転されるときに、斜板21の傾転中心Cを通る直線である回転軸13の軸線O−Oに沿って並進バー33を並進運動させるものである。
31はフィードバック機構30を構成する変換部で、該変換部31は、斜板21の傾転動作を回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位に変換して取出すものである。ここで、変換部31は、斜板21の側面から突出した状態で斜板21に固定して設けられた係合部としての突起部32と、後述の並進バー33に設けられた被係合部としてのスライダ部33Aとにより構成されている。
そして、並進バー33のスライダ部33Aは、斜板21側の突起部32と摺動可能に係合することにより、斜板21の傾転動作を後述の如く軸線O−Oに沿った長手方向変位としての軸方向変位に変換するものである。また、斜板21側の突起部32と並進バー33のスライダ部33Aとは、図3〜図9に示すように相対移動可能に連結されている。
即ち、この突起部32とスライダ部33Aとは、並進バー33が斜板21(突起部32)に対して回転軸13の軸線O−Oに沿った方向に相対移動するのを規制し、回転軸13の軸線O−Oと直交する方向に関しては、斜板21(突起部32)と並進バー33とが相対移動するのを許すものである。
この場合、突起部32は、斜板21の側面に植設されたボルトまたはピン等により円柱状に形成されている。そして、突起部32は、斜板21が図6、図7に示す如く傾転角零の中立位置となったときに、回転軸13の軸線O−Oと交差する位置に配設されている。また、突起部32は、図7に示すように斜板21の傾転中心Cから半径Raだけ離間した位置に配置され、この半径Raは、傾転案内面21Bの半径Rよりも小さい半径(Ra<R)となっている。
33はフィードバック機構30の変位伝達部を構成する並進部材としての並進バーを示している。この並進バー33は、図3に示す如く後述のガイド部材34を介してケーシング本体11Aの開口部11D内にスライド可能に取付けられ、回転軸13の軸方向(図6に示す軸線O−O)に沿った並進運動を行うものである。そして、並進バー33は、図3に示すようにケーシング11内を回転軸13の径方向に延び、斜板21の側面と制御スリーブ26との間に配設されている。
ここで、並進バー33は、長さ方向の一側が断面U字形状をなしたスライダ部33Aとなり、該スライダ部33Aは、斜板21側の突起部32と共にフィードバック機構30の変換部31を構成するものである。そして、このスライダ部33Aは、図6ないし図9に示す如く回転軸13の軸線O−Oに対して直交する方向に延び、スライダ部33A内には斜板21側の突起部32が摺動可能に係合している。
そして、並進バー33のスライダ部33Aは、斜板21が中立位置にあるときに斜板21の突起部32と共に図7に示す初期位置に配置され、回転軸13の軸線O−Oと直交する線F−F上に位置する。このとき、並進バー33は、回転軸13の軸線O−Oに沿って図6中の矢示E方向に最も後退した位置に配置されるものである。
また、斜板21が中立位置から図5、図8に示すように矢示A方向(正方向)に傾転され、その傾転角θが角度α(θ=α)となったときには、斜板21の突起部32が軸線O−Oに対して角度αの位置まで回動される。これにより、並進バー33のスライダ部33Aは、突起部32の動きに追従して図8に示す線G−Gの位置まで平行移動(並進運動)され、初期位置の線F−Fに対して寸法aだけ回転軸13の軸方向に変位される。
一方、斜板21が中立位置から図9に示すように矢示B方向(逆方向)に傾転され、その傾転角θが角度β(θ=β)となったときには、斜板21の突起部32が軸線O−Oに対して角度βの位置まで回動される。これにより、並進バー33のスライダ部33Aは、突起部32の動きに追従して図9に示す線H−Hの位置まで平行移動され、初期位置の線F−Fに対して寸法bだけ回転軸13の軸方向に変位される。
なお、斜板21が正方向または逆方向に同一の傾転角θ(例えば、角度α,β)をもって傾転されるときには、斜板21の傾転角θに相当する角度α,βが互いに逆向きの等しい角度(α=β)となり、このときの軸方向変位に相当する前記寸法a,bは同一の値(a=b)に設定されるものである。
また、並進バー33は、図3に示す如く長さ方向の他側が制御スリーブ26の径方向に延び、その先端部は、制御スリーブ26を径方向外側から挟む二又状の固定部33Bとなっている。そして、該固定部33Bは、複数の固定ねじまたはリベット等の固定手段により制御スリーブ26の外周側に固定されている。
これにより、並進バー33は、制御スリーブ26に対して一定の角度(例えば、垂直となる90度)で固定された状態に保持されている。そして、制御スリーブ26は、図4ないし図6に示す如く回転軸13の軸線O−Oに沿った矢示D,E方向に並進バー33に追従して変位するものである。
このように、斜板21側の突起部32と並進バー33のスライダ部33Aとからなる変換部31は、斜板21が突起部32と一緒に正方向または逆方向に傾転するときに、斜板21の傾転動作を回転軸13の軸、線O−Oに沿ったスライダ部33Aの軸方向変位(例えば、寸法a,b分の変位)に変換して取出す。そして、変位伝達部となる並進バー33は、スライダ部33Aの軸方向変位を固定部33Bにより制御スリーブ26に対し同様の軸方向変位として伝えるものである。
34はケーシング11の開口部11Dを覆うように設けられたガイド部材で、該ガイド部材34は、図3に示すように並進バー33の長さ方向中間部を摺動可能に支持している。そして、ガイド部材34は、並進バー33が上,下方向(例えば、シリンダブロック14の周方向)等に揺動したり、ガタ等で振動したりするのを抑え、これによって、並進バー33が回転軸13の軸方向に滑らかに平行移動(並進運動)するのを補償するものである。
かくして、斜板21が図2中の矢示A,B方向に傾転されるときには、斜板21の傾転動作に従って図3に示す並進バー33が回転軸13の軸方向に平行移動するようになる。そして、並進バー33の平行移動は、固定部33B側でレギュレータ24の制御スリーブ26にそのまま伝えられ、これによりレギュレータ24のフィードバック制御が行われるものである。
35は傾転制御圧を発生させるパイロットポンプで、該パイロットポンプ35は、図1に示す原動機2により油圧ポンプ1と一緒に回転駆動される。そして、パイロットポンプ35は、例えば図3に示すタンク36内から作動油を吸込みつつ、制御管路37A内に傾転制御用の圧油を吐出させるものである。
この場合、パイロットポンプ35から吐出される圧油の圧力は、低圧リリーフ弁38により油圧ポンプ1の吐出圧よりも十分に低い圧力に保たれるものである。また、制御管路37Bは、レギュレータ24の給排ポート25Bと後述の前後進切換弁40との間に設けられている。
39A,39Bは傾転アクチュエータ23,22の液圧室23B,22Bに傾転制御圧を給排する他の制御管路で、該制御管路39A,39Bは、図3、図6に示すように後述の前後進切換弁40を通じて制御管路37A,37Bに切換え接続されるものである。
40は制御管路37A,37Bと制御管路39A,39Bとの間に設けられた方向切換弁としての前後進切換弁で、この前後進切換弁40は、図3、図6に示すように左,右のソレノイド部40A,40Bを有している。そして、前後進切換弁40は、例えばオペレータが運転室内の切換レバー(図示せず)を手動操作することによって、車両の停止位置(a)から前進位置(b)または後進位置(c)に切換えられるものである。
そして、前後進切換弁40を停止位置(a)から前進位置(b)に切換えた状態では、オペレータが後述の走行ペダル41Aを踏込み操作するに応じてパイロットポンプ35からの傾転制御圧が制御管路37A,39Aを通じて傾転アクチュエータ23の液圧室23Bに供給される。
また、このときに、傾転アクチュエータ22の液圧室22Bからは、傾転制御圧が制御管路39B,37B、レギュレータ24等を介してタンク36側に排出される。これにより、傾転アクチュエータ23の傾転ピストン23Cは、斜板21を図6中の矢示A方向に傾転駆動するものである。
一方、前後進切換弁40を停止位置(a)から後進位置(c)に切換えたときには、走行ペダル41Aの踏込み操作に応じてパイロットポンプ35からの傾転制御圧が制御管路37A,39Bを通じて傾転アクチュエータ22の液圧室22Bに供給される。また、傾転アクチュエータ23の液圧室23Bからは、制御管路39A,37B、レギュレータ24等を介して傾転制御圧がタンク36側に排出される。これにより、傾転アクチュエータ22の傾転ピストン22Cが斜板21を図6中の矢示B方向に傾転駆動するものである。
このように、前後進切換弁40は、レギュレータ24と傾転アクチュエータ22,23との間に設けられ、車両の停止位置(a)から前進位置(b)または後進位置(c)に切換えられる。これにより、前後進切換弁40は、傾転アクチュエータ22,23に対する傾転制御圧の給排方向を切換えると共に、この傾転制御圧に従って斜板21を中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動するものである。
41はホイール式車両の運転室側に設けられる指令手段としての走行操作弁で、該走行操作弁41には、図6に示すように車両のアクセルペダルに相当する走行ペダル41Aが付設されている。そして、車両のオペレータが走行ペダル41Aを踏込み操作したときには、走行操作弁41から指令圧管路42を通じてレギュレータ24の油圧パイロット部28に指令信号としてのパイロット圧が供給され、後述の如く車両の走行速度が可変に調整されるものである。
本実施の形態による斜板式可変容量型油圧ポンプ1を備えたホイール式作業車両の走行用油圧回路は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、図6に示す前後進切換弁40を停止位置(a)に配置した状態では、制御管路39A,39Bが共に制御管路37Aに接続される。そして、このときに傾転アクチュエータ22,23の液圧室22B,23Bは、互いに等しい圧力状態に保たれるので、斜板21は傾転角零の中立位置に保持される。
このため、原動機2により回転軸13を回転駆動してシリンダブロック14を回転させても、各ピストン16がシリンダブロック14の各シリンダ15内で往復動することはなく、油圧ポンプ1の給排通路12A,12Bは互いに同圧状態となる。これにより、図1に示す油圧モータ5は、油圧ポンプ1から主管路3A,3Bを通じて圧油が給排されることはなく、停止したままの状態となる。
次に、車両のオペレータが前後進切換弁40を停止位置(a)から前進位置(b)に切換えたときには、オペレータが走行ペダル41Aを踏込み操作するに応じてパイロットポンプ35からの傾転制御圧が制御管路37A,39Aを通じて傾転アクチュエータ23の液圧室23Bに供給される。
そして、このときには走行ペダル41Aの踏込み操作により、指令圧管路42からレギュレータ24の油圧パイロット部28に向けてパイロット圧が供給される。これにより、レギュレータ24の弁ハウジング25内では、スプール27がパイロット圧に応じて軸方向に摺動変位され、レギュレータ24は図6に示す中立位置(Va)から切換位置(Vb)に切換えられる。
このため、制御管路37Bはレギュレータ24、ケーシング11内のドレン室等を介してタンク36に接続され、傾転アクチュエータ22の液圧室22B内からは、傾転制御圧が制御管路39B、前進位置(b)の前後進切換弁40、制御管路37B、レギュレータ24等を介してタンク36側に排出される。
このとき、パイロットポンプ35からの傾転制御圧は、制御管路37A、前進位置(b)の前後進切換弁40、制御管路39Aを通じて傾転アクチュエータ23の液圧室23Bに供給されている。これにより、傾転アクチュエータ23の傾転ピストン23Cは、斜板21を図6中の矢示A方向に傾転駆動する。
そして、斜板21が矢示A方向に傾転された状態では、シリンダブロック14が回転軸13と一体に回転することにより、各ピストン16は、傾転角θに対応したストローク量(押しのけ容積)をもってシリンダブロック14の各シリンダ15内で往復動を繰返すようになる。このため油圧ポンプ1は、例えば給排通路12A側から各シリンダ15内に油液を吸込みつつ、給排通路12B側から圧油を吐出する。
これにより、図1に示す走行用の油圧閉回路4内では、主管路3A,3B内を矢示A1方向に沿って圧油が流通し、走行用の油圧モータ5を圧油の給排によって回転駆動することができる。そして、油圧モータ5の回転出力は、減速機6を介してホイール式作業車両の車輪7,7に伝達され、各車輪7を回転駆動することにより、例えば前進方向に作業車両を傾転角θに対応した速度で走行駆動できる。
一方、前後進切換弁40を停止位置(a)から後進位置(c)に切換えたときには、走行ペダル41Aの踏込み操作に応じてパイロットポンプ35からの傾転制御圧が制御管路37A,39Bを通じて傾転アクチュエータ22の液圧室22Bに供給される。また、傾転アクチュエータ23の液圧室23Bからは、制御管路39A,37B、レギュレータ24等を介して傾転制御圧がタンク36側に排出され、傾転アクチュエータ22の傾転ピストン22Cにより斜板21を図6中の矢示B方向に傾転駆動することができる。
そして、この場合には、図1に示す走行用の油圧閉回路4内で矢示B1方向に沿って圧油を流通することができ、走行用の油圧モータ5を同方向に回転駆動することができる。これにより、汕圧モータ5の回転出力を減速機6を介してホイール式作業車両の車輪7,7に伝達しつつ、例えば後進方向に作業車両を傾転角θに対応した速度で走行駆動できる。
ところで、車両が前進または後進するときの走行速度は、油圧ポンプ1による圧油の吐出量(流量)によって決められ、この吐出量は斜板21の傾転角θに応じて増減される。そして、容量制御弁であるレギュレータ24を斜板21の傾転角θに応じてフィードバック制御しない限りは、斜板21の傾転角θ(即ち、車両の走行速度)を走行ペダル41Aの踏込み操作のみにより、安定して制御することは難しい。
そこで、本実施の形態では、レギュレータ24の制御スリーブ26と斜板21の側面との間にフィードバック機構30を設けている。そして、このフィードバック機構30は、斜板21が傾転アクチュエータ22,23により傾転角零の中立位置から正方向と逆方向のいずれの方向に傾転駆動されるときにも、レギュレータ24を斜板21の傾転動作に追従させてフィードバック制御する構成としている。
そして、このフィードバック機構30は、斜板21の傾転動作を軸方向変位に変換して取出す変換部31と、該変換部31で取出した軸方向変位により傾転動作に追従して回転軸13の軸方向に平行移動する並進バー33とから構成されている。また、該並進バー33は、変換部31による軸方向変位を先端側の固定部33Bによってレギュレータ24の制御スリーブ26に伝えるものである。
この場合、変換部31は、斜板21の側面に固定して設けられたピン等からなる円形の突起部32と、該突起部32に摺動可能に凹凸嵌合するように並進バー33の長さ方向一側に設けられ回転軸13の軸線O−Oと直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部33Aとにより構成されている。そして、変換部31は、斜板21の傾転動作を軸線O−Oに沿った軸方向変位に変換して並進バー33に伝えるものである。
このため、斜板21が中立位置から図8に示すように矢示A方向(正方向)に傾転され、その傾転角θが角度α(θ=α)のときには、斜板21の突起部32が軸線O−Oに対して角度αの位置まで回動され、並進バー33のスライダ部33Aを、突起部32の動きに追従して図8に示す線G−Gの位置まで平行移動することができる。
そして、斜板21の傾転中心Cから半径Raの位置にある突起部32が角度αだけ回動するときには、並進バー33が線F−Fの初期位置から線G−Gの位置まで回転軸13の軸方向に変位するので、この軸方向変位量を下記の数1式による寸法aとして求めることができる。
a=Ra×(1−cosα) …… (1)
一方、斜板21が中立位置から図9に示すように矢示B方向(逆方向)に傾転され、その傾転角θが角度β(θ=β)となるときには、斜板21の突起部32が軸線O−Oに対して角度βの位置まで回動され、並進バー33のスライダ部33Aを、突起部32の動きに追従して図9に示す線H−Hの位置まで平行移動することができる。
そして、このときには並進バー33が線F−Fの初期位置から線H−Hの位置まで回転軸13の軸方向に変位するので、この軸方向変位量も下記の数2式による寸法bとして求めることができる。
b=Ra×(1−cosβ) …… (2)
このように、斜板21側の突起部32と並進バー33のスライダ部33Aとからなる変換部31により、斜板21の傾転動作を回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位(例えば、寸法a,b分の変位)に変換して取出すことができ、これを並進バー33により制御スリーブ26に対し固定部33B側で同様の軸方向変位として伝達することができる。
そして、このときの軸方向変位は、斜板21が矢示A方向(正方向)に傾転するときにも、矢示B方向(逆方向)に傾転するときにも、同一方向(図6に示す矢示D方向)の変位として取出すことができる。即ち、斜板21が中立位置から正方向と逆方向のいずれに傾転される場合でも、レギュレータ24の制御スリーブ26をスプール27と同方向に摺動変位させ、制御スリーブ26を円滑にフィードバック制御することができる。
従って、本実施の形態によれば、斜板式可変容量型油圧ポンプ1を油圧モータ5に対し、図1に例示した油圧閉回路4を用いて接続した場合にも、容量可変部となる斜板21を中立位置から正方向と逆方向とにそれぞれ傾転して圧油の吐出量(流量)を両方向で制御でき、車両の前進走行時または後進走行時にも斜板21の傾転角に応じた速度制御を円滑に行うことができる。
しかも、容量制御弁となるレギュレータ24については、制御スリーブ26内にスプール27を有した簡単な構造の油圧サーボ弁によって構成することができる。この結果、傾転アクチュエータ22,23、レギュレータ24およびフィードバック機構30を含めた傾転制御装置全体の構造を簡素化することができ、部品点数を減らして組立時の作業性等も向上することができる。
また、前後進切換弁40をレギュレータ24と傾転アクチュエータ22,23との間に設けている。これにより、レギュレータ24を含めた傾転制御装置全体の構造を従来技術に比較して簡素化することができ、生産性の向上、コストの削減化等を図ることができる。
また、当該油圧ポンプ1の傾転制御装置は、図1に例示した油圧閉回路4に限らず、所謂油圧開回路に適用しても油圧モータ等の油圧アクチュエータに圧油を給排することができる。これにより、当該油圧ポンプ1の傾転制御装置を、油圧閉回路と開回路との双方に適用でき、汎用性を高めることができると共に、生産性を向上することができる。
次に、図10ないし図16は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、フイードバック機構を、斜板の側面に設けられ斜板と一体に傾転される傾転レバーと、レギュレータの制御スリーブと該傾転レバーとの間に設けられる並進部材等とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は本実施の形態で採用した斜板式可変容量型油圧ポンプ、52は該油圧ポンプ51のケーシングを示し、該ケーシング52は、第1の実施の形態で述べたケーシング11とほぼ同様に構成されている。そして、ケーシング52は、筒状のケーシング本体52A、フロントケーシング52B、リヤケーシング52C、開口部52Dおよびドレン通路52E等を有している。
しかし、この場合のケーシング52は、開口部52Dとドレン通路52Eとが異なる位置に配設され、開口部52D内には、後述の並進バー63がガイド部材64等を介してスライド可能に取付けられるものである。また、ケーシング52内はドレン室となってタンク36に接続されている。
53は傾転アクチュエータ22,23に傾転制御圧を給排する容量制御弁としてのレギュレータで、該レギュレータ53は、第1の実施の形態で述べたレギュレータ24とほぼ同様に構成されている。そして、レギュレータ53は、図10に示すようにケーシング本体52Aの外側に位置してケーシング52に設けられた弁ハウジング54と、該弁ハウジング54内に設けられた制御スリーブ55、スプール56、油圧パイロット部57および弁ばね58等を有している。
そして、レギュレータ53の弁ハウジング54には、図10に示す如く傾転制御圧の給排ポート54A,54B等が設けられ、給排ポート54Aは制御管路37Aを介してパイロットポンプ35の吐出側に接続されている。また、給排ポート54Bは制御管路37Bに接続されている。そして、レギュレータ53の弁ハウジング54は、ケーシング52の外側面に液密に固定して設けられ、制御スリーブ55およびスプール56等は、回転軸13(図13に示す軸線O−O)と平行に延びるように配設されている。
しかし、この場合のレギュレータ53は、第1の実施の形態に比較して油圧パイロット部57と弁ばね58との取付け位置が左,右で反転され、制御スリーブ55およびスプール56が摺動変位する方向は、逆の方向となっている。また、油圧パイロット部57のプランジャ57Aは、指令圧管路42からの指令圧をパイロット圧として受圧する。これにより、油圧パイロット部57は、このときのパイロット圧に応じてスプール56を弁ハウジング54内で軸方向(第1の実施の形態とは逆方向)に摺動変位させ、図13に示すレギュレータ53を中立位置(Va)から切換位置(Vb),(Vc)に切換えるものである。
59は第2の実施の形態に係るフィードバック機構で、該フィードバック機構59は、斜板21の傾転動作に追従してレギュレータ53をフィードバック制御するものである。ここで、フィードバック機構59は、第1の実施の形態で述べたフィードバック機構30とほぼ同様に構成され、後述の変換部60および並進バー63等を有している。しかし、この場合のフィードバック機構59は、後述の傾転レバー61を有している点で第1の実施の形態とは異なっているものである。
60はフィードバック機構59を構成する変換部で、該変換部60は、図10に示すように後述の傾転レバー61、突起部62およびスライダ部63A等により構成されている。そして、変換部60は、斜板21の傾転動作を回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位に変換して取出すものである。
61は斜板21の側面に設けられた傾転レバーで、該傾転レバー61は、図10に示すように斜板21の側面からシリンダブロック14の外周面に沿って回転軸13と平行に延設されている。そして、傾転レバー61は、斜板21と一体に傾転され、変換部60による後述の軸方向変位(例えば、図15、図16に示す寸法a1,b1)を拡大する機能を有している。
62は傾転レバー61の先端側に固定して設けられた係合部としての突起部で、該突起部62は、傾転レバー61の先端側に植設されたボルトまたはピン等により円柱状に形成されている。そして、突起部62は、斜板21(傾転レバー61)が図13、図14に示す如く傾転角零の中立位置となったときに、回転軸13の軸線O−Oと交差する位置に配設されている。また、突起部62は、図14に示すように斜板21の傾転中心Cから距離Laだけ離間した位置に配置され、この距離Laは、傾転案内面21Bの半径Rよりも大きい寸法(La>R)となっている。
63はフィードバッグ機構59の変位伝達部を構成する並進部材としての並進バーを示している。この並進バー63は、第1の実施の形態で述べた並進バー33とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の並進バー63は、傾転レバー61の先端側とレギュレータ53の制御スリーブ55との間に設けられるものである。
そして、並進バー63は、後述のガイド部材64を介してケーシング本体52Aの開口部52D内にスライド可能に取付けられ、回転軸13の軸方向(図13に示す軸線O−O)に沿った並進運動を後述の如く行うものである。また、並進バー63は、図10に示すようにケーシング52内を回転軸13(シリンダブロック14)の径方向に延び、傾転レバー61の先端側と制御スリーブ55との間に配設されている。
ここで、並進バー63は、長さ方向の一側が断面U字形状をなしたスライダ部63Aとなり、該スライダ部63Aが傾転レバー61側の突起部62と共に変換部60を構成している。そして、該スライダ部63Aは、図13に示す如く回転軸13の軸線O−Oに対して直交する方向に延び、傾転レバー61側の突起部62が摺動可能に係合される被係合部を構成している。
そして、並進バー63のスライダ部63Aは、斜板21が中立位置にあるときに傾転レバー61側の突起部62と共に図14に示す初期位置に配置され、回転軸13の軸線O−Oと直交する線F−F上に位置する。このとき、並進バー63は、回転軸13の軸線O−Oに沿って図13中の矢示D方向に最も後退した位置に配置されるものである。
また、斜板21が傾転レバー61と共に中立位置から図12、図15に示すように矢示A方向(正方向)に傾転され、その傾転角θが角度α(θ=α)となったときには、傾転レバー61の突起部62が軸線O−Oに対して角度αの位置まで回動される。これにより、並進バー63のスライダ部63Aは、突起部62の動きに追従して図15に示す線G−Gの位置まで平行移動(並進運動)され、初期位置の線F−Fに対して寸法a1だけ回転軸13の軸方向に変位される。
a1=La×(1−cosα) …… (3)
一方、斜板21が傾転レバー61と共に中立位置から図16に示すように矢示B方向(逆方向)に傾転され、その傾転角θが角度β(θ=β)となったときには、傾転レバー61の突起部62が軸線O−Oに対して角度βの位置まで回動される。これにより、並進バー63のスライダ部63Aは、突起部62の動きに追従して図16に示す線H−Hの位置まで平行移動され、初期位置の線F−Fに対して寸法b1だけ回転軸13の軸方向に変位される。
b1=La×(1−cosβ) …… (4)
このように、傾転レバー61側の突起部62と並進バー63のスライダ部63Aとからなる変換部60は、斜板21が傾転レバー61と共に正方向または逆方向に傾転するときの傾転動作を、回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位(例えば、寸法a1,b1分の変位)に変換して取出す。そして、並進バー63は、これを制御スリーブ55に対し同様の軸方向変位として伝えるものである。
また、並進バー63は、長さ方向の他側が制御スリーブ55の径方向に延び、その先端部は、制御スリーブ55を径方向外側から挟む二又状の固定部63Bとなっている。そして、この固定部63Bは、複数の固定ねじまたはリベット等の固定手段により制御スリーブ55の外周側に固定されている。これにより、並進バー63は、制御スリーブ55に対し一定の角度(例えば、垂直となる90度)で固定された状態に保持されされている。そして、並進バー63は、制御スリーブ55を回転軸13(軸線O−O)に沿った矢示D,E方向に変位させるものである。
64は図10に示すケーシング52の開口部52Dを覆うように設けられたガイド部材で、該ガイド部材64は、並進バー63の長さ方向中間部を摺動可能に支持している。そして、ガイド部材64は、並進バー63が上,下方向(例えば、シリンダブロック14の周方向)等に揺動したり、ガタ等で振動したりするのを抑え、これによって、並進バー63が回転軸13の軸方向に滑らかに平行移動(並進運動)するのを補償するものである。
65は制御管路37A,37Bと制御管路39A,39Bとの間に設けられた方向切換弁としての前後進切換弁で、この前後進切換弁65は、図10、図13に示すように左,右のソレノイド部65A,65Bを有している。そして、前後進切換弁65は、オペレータの手動操作等により車両の停止位置(a)から前進位置(b)または後進位置(c)に切換えられ、第1の実施の形態で述べた前後進切換弁40とほぼ同様に作動するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、斜板21が図13中の矢示A,B方向に傾転されるときには、斜板21および傾転レバー61の傾転動作に従って並進バー63が回転軸13の軸方向(矢示E方向)に平行移動するようになる。そして、並進バー63の平行移動は、固定部63Bによりレギュレータ53の制御スリーブ55にそのまま伝えられ、これによりレギュレータ53のフィードバック制御が行われ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
しかし、本実施の形態にあっては、斜板21と一体に傾転する傾転レバー61を用いている。これにより、図14に示す如く突起部62を斜板21の傾転中心Cから距離La(La>R)だけ大きく離間した位置に配置でき、前記数3,4式による寸法a1,b1(並進バー63の軸方向変位量)を、距離Laによって拡大することができる。
このため、レギュレータ53のスプール56が、走行操作弁41からのパイロット圧(指令信号)によって軸方向に大きく摺動変位されるときにも、制御スリーブ55のフィードバック制御量(軸方向変位量)も十分に大きく取ることができ、レギュレータ53の制御スリーブ55を安定してフィードバック制御することができる。
次に、図17ないし図20は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、斜板の傾転動作を揺動リンクを用いてレギュレータの制御スリーブに伝える構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、71は本実施の形態で採用した斜板式可変容量型油圧ポンプ、72は該油圧ポンプ71のケーシングを示し、該ケーシング72は、第1の実施の形態で述べたケーシング11とほぼ同様に構成されている。そして、ケーシング72は、筒状のケーシング本体72A、フロントケーシング72B、リヤケーシング72C、開口部72Dおよびドレン通路72E等を有している。
しかし、この場合のケーシング72は、図17に示すように、開口部72D内に後述の揺動リンク84が支持軸83を介して揺動可能に取付けられているものである。また、ケーシング72内はドレン室となってタンク36に接続されている。
73は傾転アクチュエータ22,23に傾転制御圧を給排する容量制御弁としてのレギュレータで、該レギュレータ73は、第1の実施の形態で述べたレギュレータ24とほぼ同様に構成されている。そして、レギュレータ73は、図17に示すようにケーシング本体72Aの外側に位置してケーシング72に設けられた弁ハウジング74と、該弁ハウジング74内に設けられた制御スリーブ75、スプール76、油圧パイロット部77および弁ばね78等を有している。
そして、レギュレータ73の弁ハウジング74には、図17に示す如く傾転制御圧の給排ポート74A,74B等が設けられ、給排ポート74Aは制御管路37Aを介してパイロットポンプ35の吐出側に接続されている。また、給排ポート74Bは制御管路37Bに接続されている。そして、レギュレータ73の弁ハウジング74は、ケーシング72の外側面に液密に固定して設けられ、制御スリーブ75およびスプール76等は、回転軸13(図20に示す軸線O−O)と平行に延びるように配設されている。
しかし、この場合のレギュレータ73は、第1の実施の形態に比較して油圧パイロット部77と弁ばね78との取付け位置が左,右で反転され、制御スリーブ75およびスプール76が摺動変位する方向は、逆の方向となっている。また、油圧パイロット部77のプランジャ77Aは、指令圧管路42からの指令圧をパイロット圧として受圧する。これにより、油圧パイロット部77は、このときのパイロット圧に応じてスプール76を弁ハウジング74内で軸方向(第1の実施の形態とは逆方向)に摺動変位させ、図17、図20に示すレギュレータ73を中立位置(Va)から切換位置(Vb),(Vc)に切換えるものである。
79は第3の実施の形態に係るフィードバック機構で、該フィードバック機構79は、斜板21の傾転動作に追従してレギュレータ73をフィードバック制御するものである。ここで、フィードバック機構79は、第1の実施の形態で述べたフィードバック機構30とほぼ同様に構成され、後述の変換部80および揺動リンク84等を有している。しかし、この場合のフィードバック機構79は、後述の支持軸83を中心にして揺動リンク84が揺動する点で第1の実施の形態とは異なっているものである。
80はフィードバック機構79を構成する変換部で、該変換部80は、斜板21の傾転動作を回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位に変換して取出すものである。そして、変換部80は、斜板21の側面に固定して設けられた係合部としての係合ピン81と、後述の揺動リンク84に設けられた被係合部としてのスライダ部84Aとにより構成され、係合ピン81の突出端側は、球形の突起部81Aとなっている。
82はフィードバック機構79の変位伝達部で、該変位伝達部82は、ケーシング72の開口部72D内に設けられ回転軸13と直交する方向に延びる支持軸83と、後述の揺動リンク84とにより構成されている。
84は支持軸83と共に変位伝達部82を構成する揺動リンクで、該揺動リンク84は、第1の実施の形態で述べた並進バー33とほぼ同様に斜板21の側面とレギュレータ73の制御スリーブ75との間に配設されている。しかし、この場合の揺動リンク84は、ケーシング72の開口部72D内に支持軸83を用いて揺動可能に取付けられている点で異なるものである。
即ち、揺動リンク84は、図17に示すようにケーシング72内を回転軸13(シリンダブロック14)の径方向に延び、斜板21の側面と制御スリーブ75との間に配設されている。そして、揺動リンク84は、ケーシング72の開口部72D内に設けた支持軸83を中心にして図20中の矢示J,K方向に回動されるものである。
ここで、揺動リンク84は、長さ方向の一側が断面U字形状をなしたスライダ部84Aとなり、該スライダ部84Aが斜板21側の突起部81Aと共に変換部80を構成するものである。そして、スライダ部84Aは、図20に示す如く回転軸13の軸線O−Oに対して直交する方向に延び、突起部81Aが摺動可能に係合される被係合部を構成している。
また、揺動リンク84は、図20に示す如く支持軸83から突起部81Aまでの距離がL1となり、支持軸83から後述の連結ピン85までの距離がL2となるように形成されている。そして、揺動リンク84は、スライダ部84Aが後述の如く矢示D,E方向に並進運動(平行移動)するときに、連結ピン85側がスライダ部84Aとは逆向きに比率(L2/L1)をもって回転軸13の軸方向に変位するものである。
即ち、揺動リンク84のスライダ部84Aは、係合ピン81の突起部81Aが斜板21と一緒に傾転角零の中立位置から矢示A,B方向に傾転されるときに、回転軸13の軸方向(図20に示す軸線O−O)に沿った並進運動を行い、例えば矢示D方向へと軸方向変位するものである。このとき、揺動リンク84の長さ方向他側(連結ピン85側)は、図20中の矢示J方向に揺動変位する。
このように、斜板21側の突起部81Aと揺動リンク84のスライダ部84Aとからなる変換部80は、斜板21が正方向または逆方向に傾転するときの傾転動作を回転軸13の軸線O−Oに沿った軸方向変位に変換して取出す。そして、このときに揺動リンク84は、支持軸83を中心にして矢示J,K方向に揺動することにより、制御スリーブ75に対し後述の連結ピン85を介して逆向きの軸方向変位を伝えるものである。
85は揺動リンク84の揺動変位を制御スリーブ75に伝える連結ピンで、該連結ピン85は、揺動リンク84の長さ方向他側を制御スリーブ75に回動可能に連結している。そして、連結ピン85は、揺動リンク84の揺動変位に従って制御スリーブ75をレギュレータ73の軸方向に変位させるものである。
そして、このときの制御スリーブ75の変位量は、揺動リンク84の全長寸法による前述の比率(L2/L1)に従って拡大される。また、揺動リンク84の長さ方向中間部を揺動可能に支持している支持軸83は、揺動リンク84が上,下方向(例えば、シリンダブロック14の周方向)にガタ等で振動したりするのを抑え、これによって、揺動リンク84の揺動変位を滑らかにするものである。
86は制御管路37A,37Bと制御管路39A,39Bとの間に設けられた方向切換弁としての前後進切換弁で、この前後進切換弁86は、図17、図20に示すように左,右のソレノイド部86A,86Bを有している。そして、前後進切換弁86は、オペレータの手動操作等により車両の停止位置(a)から前進位置(b)または後進位置(c)に切換えられ、第1の実施の形態で述べた前後進切換弁40とほぼ同様に作動するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、斜板21が図20中の矢示A,B方向に傾転されるときには、斜板21の傾転動作に従って揺動リンク84のスライダ部84Aが回転軸13の軸方向(矢示D方向)に平行移動するようになる。
そして、このときに揺動リンク84は、支持軸83を中心にして矢示J方向に揺動され、この揺動変位が連結ピン85によりレギュレータ73の制御スリーブ75に伝えられるので、これによってレギュレータ73のフィードバック制御を行うことができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
しかし、本実施の形態にあっては、揺動リンク84を斜板21と制御スリーブ75との間に、支持軸83を中心にして揺動可能に配設している。これにより、揺動リンク84は、図20に示すように、支持軸83から突起部81Aまでの距離L1と、支持軸83から連結ピン85までの距離L2とに基づく比率(L2/L1)分だけ、斜板21の傾転変位を拡大して制御スリーブ75に伝えることができる。
このため、レギュレータ73のスプール76が、走行操作弁41からのパイロット圧(指令信号)によって軸方向に大きく摺動変位されるときにも、制御スリーブ75のフィードバック制御量(軸方向変位量)も十分に大きく取ることができ、レギュレータ73の制御スリーブ75を安定してフィードバック制御することができる。
次に、図21ないし図23は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、回転軸の軸線に対して斜めに傾いた傾斜直線に沿って並進バーを並進運動させることにより、斜板の傾転動作を前記傾斜直線に沿った長手方向変位に変換して取出す構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、91は第4の実施の形態に係るフィードバック機構で、該フィードバック機構91は、第1の実施の形態で述べたフィードバック機構30とほぼ同様に構成され、後述の変換部92と並進バー94とを有している。しかし、この場合のフィードバック機構91は、後述の並進バー94が傾斜直線O1−O1に沿って並進運動(平行移動)する点で、第1の実施の形態とは異なっているものである。
ここで、傾斜直O1−O1は、図21ないし図23に示すように斜板21の傾転中心Cを通る直線であり、かつ回転軸13の軸線O−Oに対して予め決められた角度γだけ斜めに傾いた直線からなっている。この場合、角度γは正の角度であってもよく、負の角度であってもよい。即ち、傾斜直線O1−O1は、図21に示す如く回転軸13の軸線O−Oに対して矢示B方向に角度γだけ傾いた直線に限らず、回転軸13の軸線O−Oに対して図21中の矢示A方向に角度γだけ傾いた直線であってもよいものである。
92はフィードバック機構91を構成する変換部で、該変換部92は、第1の実施の形態で述べた変換部31とほぼ同様に、後述の突起部93とスライダ部94Aとにより構成されている。しかし、この変換部92は、斜板21の傾転動作を傾斜直線O1−O1に沿った長手方向変位に変換して取出すものである。
93は斜板21の側面に固定して設けられた係合部としての突起部で、該突起部93は、第1の実施の形態で述べた突起部32とほぼ同様に構成され、斜板21の傾転中心Cから距離Raだけ離間した位置に配置されている。しかし、この突起部93は、斜板21が傾転角零の中立位置となったときに、図21に示す如く傾斜直線O1−O1と交差する位置に配置されるものである。
94はフィードバック機構91の変位伝達部を構成する並進部材としての並進バーで、該並進バー94は、第1の実施の形態で述べた並進バー33とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の並進バー94は、傾斜直線O1−O1に対しほぼ直交する方向に延びている点で、前記並進バー33とは異なるものである。
ここで、並進バー94は、長さ方向の一側が断面U字形状をなしたスライダ部94Aとなり、該スライダ部94Aが斜板21側の突起部93と共に変換部92を構成している。そして、該スライダ部94Aは、図21に示す如く傾斜直線O1−O1に対して直交する方向に延び、斜板21側の突起部93が摺動可能に係合される被係合部を構成している。
そして、並進バー94のスライダ部94Aは、斜板21が中立位置にあるときに突起部93と共に図21に示す初期位置に配置され、傾斜直線O1−O1と直交する線F1−F1上に位置する。このとき、並進バー94は、傾斜直線O1−O1に沿って図21中の矢示E1方向に最も後退した位置に配置されるものである。
また、斜板21が中立位置から矢示A方向(正方向)に傾転され、その傾転角θが角度α(θ=α)となったときには、斜板21の突起部93が図22に示すように傾斜直線O1−O1に対して角度αの位置まで回動される。これにより、並進バー94のスライダ部94Aは、突起部93の動きに追従して図22に示す線G1−G1の位置まで平行移動(並進運動)され、初期位置の線F1−F1に対して寸法a(数1式参照)だけ傾斜直線O1−O1の長手方向に変位される。
一方、斜板21が中立位置から矢示B方向(逆方向)に傾転され、その傾転角θが角度β(θ=β)となったときには、斜板21の突起部93が図23に示すように傾斜直線O1−O1に対して角度βの位置まで回動される。これにより、並進バー94のスライダ部94Aは、突起部93の動きに追従して図23に示す線H1−H1の位置まで平行移動され、初期位置の線F1−F1に対して寸法b(数2式参照)だけ傾斜直線O1−O1の長手方向に変位される。
このように、斜板21側の突起部93と並進バー94のスライダ部94Aとからなる変換部92は、斜板21が正方向または逆方向に傾転するときの傾転動作を傾斜直線O1−O1に沿った長手方向変位(例えば、寸法a,b分の変位)に変換して取出す。そして、並進バー94は、これを制御スリーブ26(図6参照)に対し同様の長手方向変位として伝えるものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、斜板21が図21中の矢示A,B方向に傾転されるときには、斜板21の傾転動作に従って並進バー94のスライダ部94Aが傾斜直線O1−O1に沿って矢示D1方向または矢示E1方向に平行移動するようになるので、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
なお、前記第4の実施の形態では、変換部92の突起部93を斜板21の側面に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図24に示す変形例のように、斜板21の側面から離れた位置にフィードバック機構91′の変換部92′を設ける構成としてもよい。
この場合、変換部92′は、斜板21の側面から傾斜直線O1−O1に沿って延設された傾転レバー61′と、該傾転レバー61′の先端側に設けられた係合部としての突起部93′と、並進バー94′に設けた被係合部としてのスライダ部94A′とにより構成されている。
そして、傾転レバー61′は、第2の実施の形態で述べた傾転レバー61とほぼ同様に構成される。しかし、この変形例による傾転レバー61′は、傾斜直線O1−O1に沿って延設している点で、第2の実施の形態による傾転レバー61とは異なるものである。
また、前記各実施の形態では、図6に例示したように外部の指令手段として走行操作弁41を用い、走行ペダル41Aの踏込み操作量に対応したパイロット圧を指令信号としてレギュレータ24(53,73)に供給する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばレギュレータ24(53,73)の油圧パイロット部28(57,77)を電磁比例ソレノイド等により構成し、外部の指令手段からは走行ペダル41Aの踏込み操作量に対応した電気信号を指令信号として出力する構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、斜板式可変容量型油圧ポンプ1(51,71)の傾転制御装置を、例えばホイールローダ等のホイール式作業車両における走行用油圧回路に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、走行用の油圧回路に限らず、例えば旋回用の油圧回路等、種々の用途の油圧閉回路にも適用できるものである。
また、前記各実施の形態では、斜板式可変容量型油圧ポンプ1(51,71)の傾転制御装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明の適用対象は、斜板式可変容量型油圧ポンプに限らず、例えば斜軸式の可変容量型油圧ポンプであってもよく、この場合には、例えば弁板等が容量可変部を構成するものである。
また、本発明の適用される作業車両としてはホイールローダに限らず、例えばホイール式油圧ショベル、ホイール式油圧クレーン、ブルドーザ、またはリフトトラックと呼ばれる作業車両、またはクローラ式油圧ショベル等の作業車両にも適用できるものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量可変部(21)を有し回転軸(13)が駆動源(2)により回転駆動される可変容量型の油圧ポンプ(1,51,71)と、傾転制御圧が給排されることにより該油圧ポンプ(1,51,71)の容量可変部(21)を傾転駆動する傾転アクチュエータ(22,23)と、制御スリーブ(26,55,75)内にスプール(27,56,76)を有したサーボ弁からなり該傾転アクチュエータ(22,23)に給排する前記傾転制御圧を外部からの指令信号に従って制御するレギュレータ(24,53,73)と、前記容量可変部(21)の傾転動作に追従して該レギュレータ(24,53,73)の制御スリーブ(26,55,75)をフィードバック制御するフィードバック機構(30,59,79,91,91′)とからなる可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置において、
前記油圧ポンプ(1,51,71)は、前記傾転アクチュエータ(22,23)により容量可変部(21)を傾転角零の中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動する構成とし、
前記フィードバック機構(30,59,79,91,91′)は、前記容量可変部(21)の傾転動作を、該容量可変部(21)の傾転中心(C)を通る直線に沿った長手方向変位に変換して取出す変換部(31,60,80,92,92′)と、該変換部(31,60,80,92,92′)と前記レギュレータ(24,53,73)の制御スリーブ(26,55,75)との間に設けられ該変換部(31,60,80,92,92′)で取出した長手方向変位を前記レギュレータ(24,53,73)の制御スリーブ(26,55,75)に伝える変位伝達部(33,63,82,94,94′)とにより構成し、
前記変換部(31,60,80,92,92′)は、前記容量可変部(21)が中立位置にあるときに初期位置(F−F,F1−F1)となって前記直線上の長手方向一側に位置し、前記容量可変部(21)が正方向または逆方向に傾転駆動されるときには前記初期位置(F−F,F1−F1)から前記直線に沿って長手方向他側へと変位する構成としたことを特徴とする可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項2】
前記直線は、前記油圧ポンプ(1,51,71)の回転軸(13)に対して平行に延びる軸線(O−O)であり、前記変換部(31,60,80)は、前記容量可変部(21)の傾転動作を前記回転軸(13)の軸線(O−O)に沿った軸方向変位に変換して取出す構成としてなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項3】
前記直線は、前記油圧ポンプ(1,51,71)の回転軸(13)に対して予め決められた角度分だけ斜めに傾いた傾斜直線(O1−O1)であり、前記変換部(92,92′)は、前記容量可変部(21)の傾転動作を前記傾斜直線(O1−O1)に沿った長手方向変位に変換して取出す構成としてなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項4】
前記傾転アクチュエータ(22,23)と前記レギュレータ(24,53,73)との間には、前記容量可変部(21)を中立位置から正方向と逆方向とに傾転駆動するために、前記傾転制御圧の給排方向を切換える方向切換弁(40,65,86)を設けてなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項5】
前記フィードバック機構(30,59,91,91′)の変位伝達部は、前記容量可変部(21)が傾転するときに前記レギュレータ(24,53)の制御スリーブ(26,55)と一緒に前記直線の長手方向に沿って並進運動する並進部材(33,63,94,94′)により構成してなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項6】
前記フィードバック機構(30,91)の変換部(31,92)は、前記容量可変部(21)の傾転中心(C)となる位置から離間して該容量可変部(21)の側面に設けられた係合部(32,93)と、前記変位伝達部(33,94)の長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部(32,93)が摺動可能に係合する被係合部(33A,94A)とにより構成してなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項7】
前記変換部(31,92)の係合部は、前記容量可変部(21)から前記直線の径方向へと突出した突起部(32,93)により構成し、前記被係合部は、該突起部(32,93)に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部(33A,94A)により構成してなる請求項6に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項8】
前記フィードバック機構(59,91′)の変換部(60,92′)は、前記容量可変部(21)から前記直線の長手方向に延設され前記容量可変部(21)と一体に傾転する傾転レバー(61,61′)と、前記容量可変部(21)の傾転中心(C)となる位置から離間して該傾転レバー(61,61′)に設けられた係合部(62,93′)と、前記変位伝達部(63,94′)の長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部(62,93′)が摺動可能に係合する被係合部(63A,94A′)とにより構成してなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項9】
前記変換部(60,92′)の係合部は、前記傾転レバー(61,61′)から前記直線の径方向へと突出した突起部(62,93′)により構成し、前記被係合部は、該突起部(62,93′)に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部(63A,94A′)により構成してなる請求項8に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項10】
前記フィードバック機構(79)の変位伝達部(82)は、前記直線と直交する方向に延びる支持軸(83)と、長さ方向の途中部位が該支持軸(83)に支持され前記容量可変部(21)が傾転するときに前記レギュレータ(73)の制御スリーブ(75)を長手方向に変位させるように前記支持軸(83)を中心にして揺動する揺動リンク(84)とにより構成してなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項11】
前記フィードバック機構(79)の変換部(80)は、前記容量可変部(21)の傾転中心(C)となる位置から離間して該容量可変部(21)の側面に設けられた係合部(81)と、前記揺動リンク(84)の長さ方向一側に設けられ前記直線と直交する方向に延びて該係合部(81)が摺動可能に係合する被係合部(84A)とにより構成してなる請求項10に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項12】
前記変換部(80)の係合部(81)は、前記容量可変部(21)から前記直線の径方向へと突出した突起部(81A)により構成し、前記被係合部は、該突起部(81A)に対して摺動可能に凹凸嵌合し前記直線と直交する方向に延びた断面U字状のスライダ部(84A)により構成してなる請求項11に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項13】
前記レギュレータ(24,53)は、前記制御スリーブ(26,55)とスプール(27,56)とが前記直線と平行に延びるように配設し、前記変位伝達部(33,63)は制御スリーブ(26,55)に固定した状態に保持する構成としてなる請求項1に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。
【請求項14】
前記油圧ポンプ(1,51,71)は、前記回転軸(13)が回転可能に設けられる筒状のケーシング(11,52,72)と、前記回転軸(13)と一体に回転するように該ケーシング(11,52,72)内に設けられ周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ(15)を有したシリンダブロック(14)と、該シリンダブロック(14)の各シリンダ(15)に往復動可能に挿嵌された複数のピストン(16)と、該各ピストン(16)の端部に装着されたシュー(17)が摺動する摺動面(21A)を有し前記容量可変部となってケーシング(11,52,72)内に傾転可能に設けられた斜板(21)とを備え、
前記傾転アクチュエータ(22,23)は、前記回転軸(13)の径方向に離間して前記ケーシング(11,52,72)内に設けられ前記斜板(21)を中立位置から正方向または逆方向に傾転駆動する傾転ピストン(22C,23C)によって構成し、
前記レギュレータ(24,53,73)は、該傾転ピストン(22C,23C)から離間して前記ケーシング(11,52,72)に設けられ前記制御スリーブ(26,55,75)を前記フィードバック機構(30,59,79,91,91′)を介して前記斜板(21)に連結される構成とし、
前記フィードバック機構(30,59,79,91,91′)の変位伝達部(33,63,82,94,94′)は、その途中部位を前記ケーシング(11,52,72)に対し前記直線の長手方向に沿って移動可能に取付ける構成としてなる請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12または13に記載の可変容量型油圧ポンプの傾転制御装置。

【国際公開番号】WO2005/066490
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516812(P2005−516812)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017642
【国際出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】