説明

可変容量真空コンデンサ用駆動システム

本発明は、真空コンデンサ(1)用機械的駆動システムに関し、駆動ネジ(2)及びナット(3)を含み、ナット(3)は、真空コンデンサ(1)のハウジング内に配置され、駆動ネジ(2)は、ナット(3)中にねじ込まれ、第1電極は、駆動ネジ(2)の一方に配置され、駆動ネジ(2)の回転により第2電極に関して移動可能であり、ナット(3)は、少なくとも部分的にプラスチック材料で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量真空コンデンサ用駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量真空コンデンサは、しばしば、第2セットの電極に関して移動可能に配置された第1セットの電極を含む。電極は、例えば、同心リングとして配置されることがある。主に、可変容量真空コンデンサでは、第1セットの同心リングは、第2セットの同心リング内へ移動することがある。このような移動により、第1同心リングの部分と第2同心リングの部分との互いに対向する面積が増加する。これにより関連するアクティブ面積が増加するため、可変容量真空コンデンサの容量が増加する。第1及び第2電極の相対的な移動は、機械的駆動システムによりなされる。このような機械的駆動システムは、駆動ネジ及びナットを含むことがある。駆動ネジは、ステンレス鋼で製造され、ナットは、鉛青銅で製造されることがある。電極及び駆動システムとは別に、可変容量真空コンデンサは、追加的なエレメントを含む。これらの追加的なエレメントは、例えば、ハウジング・ボトム、絶縁体、ハウジング・トップ及びスプリング・ベローズを含むことがある。第1セットの電極は、ハウジング・ボトム内に配置することがある。スプリング・ベローズ及び駆動システムと共に、第2セットの電極は、ハウジング・トップ内に配置することがある。駆動システムにより、第2セットの電極を定められた方向に移動することができる。絶縁体は、ハウジング・ボトムとハウジング・トップとの間に配置することがある。基本的に、真空コンデンサの真空は、一方がハウジング・トップ及びベローズの部分により、他方がハウジング・トップ、絶縁体及びハウジング・ボトムの部分により囲まれる。
【0003】
可変容量真空コンデンサは、多種多様な産業用途に使用される。このような用途には、無線放送システム、フラット・パネル・ディスプレイ製造システム、半導体製造システムその他の産業用途が含まれる。このような用途に対して、約50Aから200Aの電流、又は900A以上の電流、及び90kV以上の電圧に耐えられる可変容量真空コンデンサが必要である。可変容量真空コンデンサの可変容量の範囲は、最低値20pF、最高値5000pFとすることがある。用途に応じて、可変容量真空コンデンサは、他の可変容量の範囲を提供するように構成することがある。可変容量真空コンデンサに対する追加的な要件として、例えば、ある公称周波数、コンデンサの動作温度範囲その他の要件を含むことがある。
【0004】
可変容量真空コンデンサは、長い動作寿命を有するように構成しなければならない。したがって、可変容量コンデンサの部品は、高品質で製造しなければならない。近年、可変容量真空コンデンサの容量の可変速度に関する要件が厳しくなってきた。基本的に、可変容量真空コンデンサの容量は、駆動ネジの回転により変化する。したがって、このような回転により、可変容量真空コンデンサの容量は、それに応じて変化する。容量の可変速度の高速化が必要な場合、回転ネジの回転速度の高速化も同様に必要である。近年、所要回転速度は、約100rpmから600rpm以上に増加してきた。メーカは、これらの要求に対して駆動ネジに新しい硬化技術を導入し、かつ新しい潤滑油を導入してきた。しかし、これらの技術により達成された結果は、特に、駆動システムの耐久性に関して必要な要件を完全に満たすものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規な可変容量真空コンデンサ用駆動システムを提案することであり、この駆動システムには、従来技術の欠点がない。特に、新しい駆動システムは、可変容量真空コンデンサの異なる容量値間の許容変化速度を増加しながら、平均寿命を改善する。好ましくは、機械的駆動システムは、駆動ネジ及びナットを含み、ナットは、真空コンデンサのハウジング内に配置され、駆動ネジは、ナット中にねじ込まれ、第1電極は、駆動ネジの一方に配置され、駆動ネジの回転により、第2電極に関して移動可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、本発明に従って独立請求項の構成要素により達成される。さらなる好ましい実施形態が従属請求項及び明細書に記載されている。
【0007】
前記目的は、真空コンデンサの機械的駆動システムのナットが少なくとも部分的にプラスチック材料で製造される本発明により達成される。特に、このような駆動システムには、可変容量真空コンデンサの容量の可変速度の高速化を達成し、駆動システムの耐久性を著しく改善できるという利点がある。
【0008】
実施形態の一つの変形例では、ナットは、実質的に完全にプラスチック材料で製造される。特に、このような駆動システムには、所要部品数を最小限にできるという利点がある。
【0009】
実施形態のもう一つの変形例では、駆動ネジをナットの中にねじ込むためのナット部分は、プラスチック材料で製造され、ナットを真空コンデンサのハウジング内に配置するためのナット部分は、金属材料で製造される。このような実施形態には、取り付け時にナットと接触する材料の物理的性質にナットの物理的性質を適応させることができるという利点がある。
【0010】
実施形態のさらなる変形例では、プラスチック材料は、高性能プラスチック材料を含む。このような実施形態には、機械的駆動システムの耐久性及び動作速度に関して所望の結果を達成するために、周知の物理的性質を有する高性能プラスチック材料を使用できるという利点がある。
【0011】
実施形態のもう一つの変形例では、プラスチック材料は、摩擦係数が100°Cにおいて0.1よりも小さく、高性能のかつ最大温度250°Cの高温ポリマー・プラスチック材料を含む。このような実施形態の変形例には、機械的駆動システムの耐久性及び動作速度に関して所望の結果を達成するのに周知の製品を使用してもよいという利点がある。
【0012】
実施形態のさらなる変形例では、金属材料は、ステンレス鋼を含む。このような実施形態には、耐久性及び動作速度を達成するために周知の材料を使用できるという利点がある。
【0013】
実施形態のもう一つの変形例では、駆動ネジは、ビッカース硬度が6’000HV以上のPVD(物理的気相成長法:Physical Vapor Deposition)コーティング又は類似プロセスのコーティングを含む。このような実施形態には、耐久性及び動作速度を著しく改善できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】可変容量真空コンデンサのブロック図を示す。
【図2】ナットの実施形態の第1変形例を示す。
【図3】ナットの実施形態の第2変形例を示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明する。図1−3は、実施形態を示す。図1中の参照番号1は、可変容量真空コンデンサを示す。可変容量真空コンデンサは、ハウジング及び絶縁体を含む。第1電極(図示せず)及び第2電極(図示せず)は、可変容量真空コンデンサのハウジング及び絶縁体の内部に配置される。例えば、第1電極は、図1中の参照番号2を有する駆動ネジに取り付け、第2電極は、可変容量真空コンデンサのハウジングの固定位置に第1電極に対向して配置してよい。可変容量真空コンデンサの容量は、第1電極と第2電極との間の距離の変化により調節可能である。アクティブ面積を増加するために、第1電極及び第2電極は、リング電極及びヘリカル電極を構成してよい。電極間の距離の変化は、機械的駆動システムにより行われる。図1中の参照番号3は、ナットに関連する。ナット3は、可変容量真空コンデンサのハウジングの固定位置に配置される。例えば、ナット3は、いくつかのネジによりハウジングに取り付けてよい。駆動ネジ2は、ナット中にねじ込まれる。したがって、ネジ2が一方向又は他方向に回転されると、第1電極は、ハウジングに関して移動され、第2電極に関しても同様に移動され、可変容量真空コンデンサの容量が増減する。図1中の参照番号4は、キャップを示し、参照番号5は、ボール・ベアリングを示す。キャップ4は、例えば、アルミニウムで製造されてよい。ボール・ベアリングは、標準ボール・ベアリングでよい。キャップ4及びボール・ベアリング5は、機械的駆動システムの品質を改善するかもしれない。ナット3は、プラスチック材料により構成され、駆動ネジ2と接触して、特に機械的駆動システムの耐久性及び動作速度に関する好ましい物理的性質を提供する。
【0016】
図2は、ナットの第1の実施形態を示す。図2中の参照番号1は、ナットのプラスチック・シリンダを示し、参照番号2は、ナットの金属シリンダを示す。プラスチック・シリンダ1は、金属シリンダ2の内側に配置される。プラスチック・シリンダ1の外径は、金属シリンダ2の内径よりも少し、例えば、1/10mm大きくてよい。プラスチック・シリンダ1は、金属シリンダ2内へプレスしてよい。プラスチック・シリンダ1は、ネジ山を含み、駆動ネジを収容するように構成される。金属シリンダ2は、ナットを可変容量真空コンデンサのハウジング内に配置するための手段、例えば、ネジを収容する孔を含んでよい。
【0017】
図3に、ナットの第2の実施形態が示されている。図3中の参照番号1は、ナットのプラスチック・コンポーネントを示し、参照番号2は、ナットの金属部分を示す。ナットの金属部分2は、ナットが可変容量真空コンデンサのハウジング内に配置される時にネジにより加えられる力からナットのプラスチック部分1を保護するように構成されてよい。
【0018】
機械的駆動システムが取り付けられる時、駆動ネジとナットとの間の摩擦がさらに低減されるように、駆動ネジに潤滑油を塗布してよい。このような潤滑油は、合成油を含んでよい。
【0019】
駆動ネジは、PVD(物理的気相成長法)コーティングを含み、このコーティングは、周知の方法及び手順により製造してよい。
【0020】
プラスチック材料は、可変容量真空コンデンサが約0°Cから約125°Cまでの温度範囲内で動作できるように製造してよい。例えば、プラスチック材料は、高性能かつ高温度ポリマー・プラスチック材料を含み、下記の性質を有してよい。メンテナンス・フリー(maintenance free)、耐摩耗性、低摩擦、耐衝撃性、耐振動性、低価格、処理(例えば、チッピング:chipping、グラインディング:grinding、バーニシング:burnishing)容易性、接着性(adapted to be glued)又は溶接性、付着防止性(anti−adhesive)。プラスチック材料は、下記の特徴を含んでよい。−50°Cから140°Cまでの温度範囲内で使用可能、最大許容温度250°C、動的摩擦係数<0.1(100°Cの温度におけるドライ・ラン(dry run)に対して)、摩耗係数<0.15mm/100km。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ネジ(2)及びナット(3)を含む真空コンデンサ(1)用機械的駆動システムであって、
前記ナット(3)は、前記真空コンデンサ(1)のハウジング内に配置され、
前記駆動ネジ(2)は、前記ナット(3)中にねじ込まれ、
前記第1電極は、前記駆動ネジ(2)の一方に配置され、前記駆動ネジ(2)の回転により第2電極に関して移動可能である機械的駆動システムにおいて、
前記ナット(3)は、少なくとも部分的にプラスチック材料で製造される機械的駆動システム。
【請求項2】
請求項1記載の機械的駆動システムにおいて、前記ナット(3)は、実質的に完全にプラスチック材料で製造される機械的駆動システム。
【請求項3】
請求項1記載の機械的駆動システムにおいて、前記駆動ネジ(2)を前記ナット(3)の中にねじ込むためのナット部分は、プラスチック材料で製造され、前記ナットを前記真空コンデンサ(1)のハウジング内に配置するためのナット部分は、金属材料で製造される機械的駆動システム。
【請求項4】
請求項1から3の一つの請求項に記載の機械的駆動システムにおいて、前記プラスチック材料は、高性能プラスチック材料を含む機械的駆動システム。
【請求項5】
請求項1から4の一つの請求項に記載の機械的駆動システムにおいて、前記プラスチック材料は、100°Cにおける摩擦係数が0.1よりも小さく、高性能のかつ最大温度250°Cの高温ポリマー・プラスチック材料を含む機械的駆動システム。
【請求項6】
請求項3から4の一つの請求項に記載の機械的駆動システムにおいて、前記金属材料は、ステンレス鋼を含む機械的駆動システム。
【請求項7】
請求項1から5の一つの請求項に記載の機械的駆動システムにおいて、前記駆動ネジは、ビッカース硬度が6’000HV以上のPVD(物理的気相成長法)コーティング又は類似プロセスのコーティングを含む機械的駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538480(P2010−538480A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523281(P2010−523281)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059236
【国際公開番号】WO2009/030271
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504133822)コメット アクチェンゲゼルシャフト (3)