説明

可変応答時間部分流トランジェントサンプリングシステムおよび方法

【課題】可変応答時間部分流トランジェントサンプリングシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】ガスサンプリングシステムの部分流ダイリューショントンネルが内燃機関からの排気に接続される。エンジンが変化した排気を発生させたときから、移動した排気がプローブ位置に到達するときまでの遅延に対処することによって、より正確なガスサンプリング結果が可能になる。このようにして、推定された時間遅延が決定され、排気がサンプリング位置に到達するまでのその推定された時間遅延に少なくとも部分的に基づき、ガスサンプリングシステムが作動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、試験用の燃焼生成物のサンプリング、より詳しくは、内燃機関からの排気を試験するためのガスサンプリングシステムの部分流ダイリューショントンネルを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部分流ダイリューショントンネル(PFDT)を利用する排気ガスサンプリングシステムは、定常状態モデル試験を許容したエンジンを開発および認可するためのフルダイリューショントンネルシステムの有効な可能な選択として、1990年代前半から使用されてきた。以前は、PFDTを利用するシステムが、より携帯に適しており、より安価であり、またPFDTを利用するシステムのフルダイリューション相手部材よりも頻繁に繰り返し使用できるという事実により、PFDTを利用するシステムを用いて、すべてのオフハイウェイエンジン、およびヨーロッパ地域の最近までのほとんどのオンハイウェイエンジンの試験および認可を実行してきた。ISO、CARB、EPAおよびEECのような規制機構のすべてが、定常状態試験サイクルの認可のためにPFDTの使用を許容する。このような1つのシステムは、本発明で権利請求する主題の発明者であるラッセル・R・グレイズ(Russell R.Graze)へ1991年10月22日に交付された同時所有される(特許文献1)に開示されている。
【0003】
さらに最近、環境保護庁は、これらのエンジンからのエミッション出力をより良く制御するために、大型のオフハイウェイディーゼルエンジンのトランジェントサイクルの規制を普及させることに関心があることを明らかにした。これらの規制は2006年までには実施されると予想される。規制すべきオフハイウェイディーゼルエンジンのサイズは、微粒子物質を含むオンハイウェイエンジンエミッションレベルを定量化するために過去二十数年間にわたって使用されてきた産業用のフルダイリューショントンネルの質量流量容量を凌駕する。さらに、開発されるオフハイウェイエンジンの評価における真の数値は、オンハイウェイエンジンの開発時に対して出される同時の規制圧力と相まって、小型エンジンについても、オフハイウェイエンジン開発に関して既存のフルダイリューショントンネルの使用をほとんど除外する。
【0004】
したがって、遷移状態下でオフハイウェイディーゼルエンジンを試験して認可するために使用することが可能であり、結果として、同様に、遷移状態下でオンハイウェイエンジンを試験するために利用することも可能であるPFDTを開発することが望ましくなってきた。このような1つのシステムは、リチャード・R・ディクソン(Richard R.Dickson)およびラッセル・R・グレイズ(Russell R.Graze)へ2003年9月9日に交付された同時所有される(特許文献2)に記載されている。このシステムでは、エンジンに供給される空気と燃料の両方の質量流が、制御装置によって連続的に監視される。変化を感知した場合、制御装置は、排気質量流量の固有の変化に対応するために、ガスサンプリングシステムの対応する変更を命令する。このシステムは、エンジンに対する空気の移動および/または燃料供給の変更に迅速に応答するので有効であると証明されているが、なお改善の余地がある。例えば、空気または燃料供給の変更が行われた後、あまりにも早く制御装置がサンプリングシステムに変更を命令した場合、排気全体を短期間で標本化してしまう可能性があり、満足のゆかないデータを得ることになる。エンジン排気の変化と、ガスサンプリングプローブに到達するエンジン排気の変化との間のタイムラグは、プローブが、典型的に、排気管の下流に、好ましくは、あらゆる排気後処理装置から下流に配置されるという事実に関連している。このタイムラグの正確な調整は、サンプリングシステムが、異なった種々のサイズのエンジンで多目的に使用されるようになった場合、より一層困難になることがある。
【0005】
従来、トランジェントエミッション試験を実行するためには、完全流ダイリューショントンネルまたはCVSシステムを使用することが必要であった。これらの装置は、大型であり、高価であり、維持が困難であり、またエンジンのサイズを限定していた。同時所有される(特許文献2)は、部分流ダイリューショントンネルが、(特許文献1)に記載されているダイリューショントンネルへの希釈空気流を急速に変化させることによって、比例したサンプリングを得ることができたことを実証したことにより、上記問題に対処した。これらのシステムは、排気システム容積に対するエンジン排気量が認識できるほどには変化しない状況において正しく作動するが、この理由は、部分流サンプリングシステムの応答時間が固定されるからである。しかし、現在の形態は、エンジンサイズが、部分流システムのサンプリングプローブ位置から上流の排気システムの容積に対して非常に小さくなっている用途に、または排気後処理の研究により、エンジンと部分流システムのサンプリングプローブ位置との間に、大きな排気システム容積を配置することが必要とされている状況には対処していない。標準温度および標準圧力における排気体積流量と、ターボ過給機の出口とサンプリング領域との間の排気管の容積との比率が、約550:1未満である比較的極端な状況においては、応答時間が300ミリ秒のシステムについて、サンプリングにわたる微粒子エミッションが加速中に生じることがある。このことには、前進した排気流の過去の割合のサンプル質量の一部が起因している。この問題に応じて、比例したサンプリングが一貫して行われることを保証するために、部分流サンプリングシステムの変更を行わなければならない。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,058,440号明細書
【特許文献2】米国特許第6,615,677号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上述の課題の1つ以上を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態では、ガスサンプリングシステムを作動させる方法は、排気がサンプリング領域に到達するまでの時間遅延を推定するステップを含む。ガスサンプリングシステム用の希釈サンプルと排気サンプルの割合は、推定された時間遅延に少なくとも部分的に基づき設定される。
【0009】
他の形態では、ガスサンプリングシステムは、排気管区分に位置決めされたサンプリングプローブを含む。制御装置が、希釈サンプルと排気サンプルの割合を制御するように作動可能に連結される。コンピュータが、制御装置に作動可能に連結され、また排気がサンプリングプローブに到達するまでの時間遅延を推定するように動作可能な制御アルゴリズムを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、試験設備10は、排気管14とガスサンプリングシステム16とに取り付けられたエンジン12を含む。設備10は、比較的大型のエンジン12または比較的小型のエンジン112に対応し、それらのエンジンのいずれかに関する正確な試験結果を提供することができる。サンプリングシステム16は、公知の種々のガスサンプリングシステム構成部材60と通信するコンピュータ32と、排気管14の排気管区分18の位置24に位置決めされたプローブ22を含むダイリューショントンネル20とを含む。ガスサンプリングシステムは従来の方法で作動するが、流量が制御された希釈空気が、公知の方法でシステム構成部材60から希釈空気供給ライン28を介してダイリューショントンネルアセンブリ20に供給されるように、コンピュータ32によって制御される。排気ガスおよび懸濁された粒子状物質の部分は、プローブ22を介してダイリューショントンネル20に吸い込まれる。その時点において、排気と希釈空気とが混合されて、フィルタ26を通過し、次に、サンプリング混合ライン30を介してガスサンプリングシステム構成部材60に従来の方法で送られる。
【0011】
所望のレベルの精巧さに応じて、コンピュータ32は、定常状態および遷移状態中に、希釈空気流量を制御して、エンジン12、112からの排気を正確に試験する。本開示によって解決される問題は、エンジン12、112が排気を発生させたときからその排気がサンプリング領域24に到達するまでの遅延に対処するためのガスサンプリングシステム16の調整作動に関する。当業者は、この遅延が、特定のエンジンに関する排気体積流量と排気管容積との比率、吸気供給のような状態を感知する際のタイムラグ、ガスサンプリングシステム16が命令変更に応答する能力におけるタイムラグ、おそらくは、さらに、ガスサンプリングシステム構成部材60および/または吸気流量決定変換器54とコンピュータ32との間の固有の通信速度制限を含む種々の要因の影響を受けていることを認識するであろう。これらの多くの時間係数は一定であり、また公知の方法を用いて、例えば試験によって決定できるが、排気体積流量とサンプリング位置24への排気の到達とに基づく時間遅延は、完全には予測できないがエンジンの1つの作動範囲にわたって様々であることができ、当然、いくつかのエンジンが実質的に異なるサイズまたは排気量である場合に、特に、エンジン毎に様々である。
【0012】
排気管14の容積を正確に算定することによって、排気体積流量を決定することによりエンジンからの排気がサンプリング位置24に到達する時間を決定できる。状況に応じて、種々の構成部材は、排気管14の一部であるかまたはそこに位置決めすることが可能である。これらの構成部材は、タービン70、および/または排気触媒装置のような種々の排気後処理装置およびそれらに関連付けられたハードウェア72、粒子トラップ74、おそらくは、さらに、排気ガス再循環システム(図示せず)を含み得る。本開示は、本明細書に説明したように、排気時間遅延に種々の方法で対処するように、比較的粗の開ループ方式から自己補正する閉ループ方式までの範囲にありまたそれらの方式を含むガスサンプリングシステム16を作動させることを意図する。
【0013】
一実施形態では、層流要素50は、エンジン12、112から上流の吸気ライン51に位置決めされる。一対の空気圧ライン52が、空気圧信号を差圧変換器54に供給し、また情報を通信線56を介してコンピュータ32に提供し、この結果、コンピュータ32によって、吸気流量を決定できる。それにもかかわらず、当業者は、本開示の意図する範囲から逸脱することなく、アセンブリに図示した層流要素50および差圧変換器54の代わりに、吸気質量流量を決定する任意の適切な手段を代用してもよいことを理解するであろう。このようにして、種々の任意の公知の手段を利用して、コンピュータ32が、吸気質量流量を連続的および/または周期的に決定することを可能にすることができる。さらに、本開示は、エンジン12、112への燃料供給流量を監視するためのいくつかの手段を意図する。図示した実施形態において、このことは、エンジン12、112への命令された燃料供給を制御するエンジン12用の電子制御モジュール46と通信する、例えばサービスツールポートを介するコンピュータ32を載置することによって達成される。このようにして、ECM46は、現在の燃料供給状態を通信線48を介してコンピュータ32に関連させる。しかし、本開示は、従来の方法および公知の方法で、燃料供給ラインに適切に位置決めされた燃料流量計のようなエンジン12、112への瞬時燃料供給流量を決定するための他の公知の手段も意図する。このようにして、コンピュータ32は、エンジン12、112への空気と燃料が混合された質量流量を任意の所定の時間に認識できる。
【0014】
いくつかの仮定を行うことによって、また公知の計算方法を用いることによって、排気体積流量を推定できる。例えば、排気ガスが理想ガスとして作用すると仮定した場合、及びコンピュータ32が排気管14内の温度を認識するかまたは推定できた場合、周囲空気のような既知の圧力が仮定されるならば、理想ガス方程式を利用して、エンジン内への質量流量をエンジンからの排気体積流量に変換することができる。本開示のより粗の形態では、コンピュータ32は排気ガス温度を推定し、またその温度の推定から排気体積流量を決定することができる。本開示のより改良された形態では、例えば、熱電対38(温度センサ)を排気管14の適切な位置に位置決めし、また排気温度を示す値を通信線40を介してコンピュータ32に通信することによって、排気の温度が監視される。排気圧も連続的に感知することによって、例えば、排気圧センサ42を、熱電対38に密接するような排気管14の適切な位置に位置決めし、また排気圧を示す値を通信線44を介してコンピュータ32に通信することによって、排気体積流量を決定するための計算精度をより一層正確にすることができる。圧力センサおよび温度センサは、互いに密接して配置された場合に、おそらく、より優れた結果をもたらすであろう。このようにして、排気が理想ガスであったと仮定すると、このことにより、温度センサ38および圧力センサ42のそれぞれ近傍における排気体積流量の極めて正確な決定が可能になる。この決定は、排気が実際には、懸濁粒子を理想ガスより少量しか含んでいないことを認識することによってさらに正確に行うことができる。当業者は、排気体積流量の決定をさらに改善するために、排気ガス/粒子の懸濁の偏差に対処するように、周知の理想ガス方程式を調整できることを理解するであろう。このようにして、本開示は、満足な結果を生成するために必要な所望のレベルの精度を有する広範囲の方式を意図する。
【0015】
当業者は、特定のエンジンのそれぞれの作動状態に関する排気質量流量の推定を、例えば、以前の実験データを介して予め決定してもよいことを理解するであろう。このデータは、エンジン用のECMコードに内蔵されているか、おそらくは、エンジンのECMから生じる他のデータに基づきリアルタイムで車内で決定されることが可能である。例えば、エンジン速度データとエンジン吸気マニホールド内の感知されたブースト圧とを組み合わせることによって吸気質量流量を決定すると共に、ECMから生じる命令された燃料供給流量を読み取ることにより、質量流量の推定をリアルタイムで決定し得る。代わりに、排気質量流量の推定をエンジンの作動範囲にわたって単にマップして、ルックアップ表に記憶してもよい。
【0016】
今説明した方式は、閉ループ方式を用いて、センサ位置からサンプリング位置24までの排気温度の変化、おそらくは、さらに、エンジンの作動範囲にわたる排気とその理想ガス方程式との偏差の変化のような種々の要因により存在することがある追加の小さな誤差を周期的または連続的に調整することによってさらに改良できる開ループ方式を主に含む。一実施例の閉ループ方式では、トランジェントセンサ34は、排気管14において、プローブ22に対して適切な位置に位置決めされる。トランジェントセンサは、変化した排気がトランジェントセンサ位置に到達した時間を決定し、また当該タイミング情報をコンピュータ32に通信する。例えば、図示した実施形態では、トランジェントセンサは、プローブ22からすぐ上流に位置決めされたNOxセンサ34の形態をとることが可能であり、また排気管14内の排気の変化したNOx含有量をコンピュータ32に通信する。閉ループ方式では、コンピュータ32は、変化した排気がトランジェントセンサ34の位置に到達するまでの時間遅延を連続的に予測する。排気トランジェントの予想到達時間と実際の到達時間とを比較することによって、プローブ22への排気移動遅延時間をさらに微調整して、上述の開ループ計算に存在する誤差を除去することができる。公知のように、当業者は、これらの種々の決定および計算が、コンピュータ32に記憶されかつそれによって公知の方法で動作される制御アルゴリズムを反映する適切なソフトウェアプログラムによって実行されることができることを理解するであろう。
【産業上の利用可能性】
【0017】
次に、図2を参照すると、本開示の一形態による、コンピュータ32で動作するように動作可能なソフトウェア制御アルゴリズムが開示されている。長円形枠81において、ソフトウェアが開始され、また種々の動作変数を公知の方法で初期化し得る。例えば、初期時間調整遅延誤差をこの時点でゼロに設定することが可能である。長方形枠82において、排気管容積が決定される。いくつかの場合には、この値は、所定の試験装置のために一定であり得るか、または排気後処理装置を含むがそれに限定されない特定のエンジンと関連付けられた排気管の部分に起因する変動係数を有することも可能である。長方形枠84において、吸気質量流量が、上述のような種々の任意の公知の手段を介して決定される。長方形枠85において、燃料供給質量流量が、上述のような種々の任意の手段によって決定される。吸気質量流量と燃料供給質量流量とを利用することにより、長方形枠86において、エンジンへの質量流量がエンジンからの質量流量にほぼ等しいと仮定することによって排気質量流量を決定できる。長方形枠87において、排気温度が、例えば、図1に示したような温度センサ38を介して決定される。本開示の一形態では、追加のセンサは利用されず、また長方形枠90において排気質量流量と排気温度とで排気体積流量の推定を行うために、理想ガス方程式またはそれを修正したある方程式が利用される。図示した実施例では、この決定は、長方形枠88において、図1に示したような排気圧センサ42を介して排気圧を決定することによって改良される。
【0018】
長方形枠91において、排気がサンプリング位置24に到達するまでの遅延時間が決定される。例えば、この値を求める1つの方法は、排気管容積を排気体積流量で除算する方法である。長方形枠92において、決定された到達時間における希釈空気流量が計算される。当業者は、公知の教示から、希釈空気供給流量が吸気質量流量に反比例することが多いが、必ずしもそうなるとは限らないことを認識する。一般に、従来の知識または他の公知の方法から決定し得る基本量の希釈空気流量が存在する。この基本量は、エンジンがそのピーク排気流量にある場合に所定の制限以下のピークフィルタ温度を維持するために必要な最小流量である。この所定の制限は、所定の管轄の法規制に関連し得る。例えば、フィルタ26を通過する総流量を仮定すると、100標準リットル/分である。52℃のフィルタ面温度をおそらく維持できるであろう最小希釈流量値は、約85標準リットル/分である。その低い方の数が基本流量である。すなわち、実際の試験中の希釈流量は、特定の一実施例において、約85〜約100標準リットル/分の範囲にある。この範囲は、希釈空気供給流量が、一般に、エンジン排気流量に反比例するが、この特定の実施例においては、希釈流量が、決して約85標準リットル/分未満に低下せず、また決して約100標準リットル/分を超えて上昇しない範囲である。このようにして、説明してきたガスサンプリングシステム16では、図1に示したように1つまたは複数の通信線62を介してコンピュータ32に伝達されるガスサンプリングシステム計算の正確な結果を生成するために、エンジンの排気流量に対応するように希釈空気供給流量を調整すべきである。菱形枠93において、コンピュータシステムが、遅延時間の決定のために調整がなされる必要があるかどうかを決定する。このことは、システムを通して行われる第1のサイクルでは、noという返答がおそらく返ってくるであろう。しかし、閉ループトランジェントセンサが、その後のある時間において、遅延時間の推定が誤っていることを決定した場合、調整係数を決定して記憶し、また制御アルゴリズムのこの位置の近傍における適用のために繰り越すことができる。時間遅延の推定の調整が必要である場合、制御アルゴリズムは長方形枠94に進み、ここで、遅延時間の計算のために調整がなされて、予測の際に検出された誤差を補正する。長方形枠95において、決定された希釈空気流量を導入するための時間が決定される。長方形枠95は、ガスサンプリングシステム構成部材60およびダイリューショントンネルアセンブリ20における電空式の固有の機械的時間遅延のようなシステムの公知の特徴を考慮できる。特定のシステムに応じて、ガスサンプリングシステム構成部材およびダイリューショントンネルアセンブリは、スケジュール、予め決定された希釈空気流量および実行時間を決定して記憶することが可能である。いくつかの場合には、排気が発生されたときから排気がサンプリングプローブ位置に到達したときまでの遅延の大きさに応じて、ガスサンプリング装置16を正確に作動させて、正確な結果を生成するために、比較的長いまたは短いスケジュールを記憶する必要があり得る。長方形枠98において、対応する時間のために予定された希釈空気流量が導入される。この長方形枠では、おそらく、システムのハードウェアの固有の遅延により、変化した希釈空気流量が実際に有効になる前のある限られた時間で、変化した希釈空気流量を発生させなければならないことが認識される。
【0019】
長方形枠99において、閉ループ方式の形態が含まれる。長方形枠99において、トランジェントセンサ34における実際の到達時間が予測到達時間と比較される。菱形枠100において、予測時間が誤っており、好ましくは、ある所定のしきい値を超えている場合、時間遅延補正係数が長方形枠101で決定される。その後、フローチャートが菱形枠104に進み、ここで、試験を終了するかどうかが決定される。そうである場合、フローチャートが長円形枠105に進み、ここで、制御アルゴリズム80が終了される。そうでない場合、アルゴリズム80が長方形枠84に戻って、吸気質量流量を再計算する。その後、上述のステップが、制御アルゴリズム80により実行される。
【0020】
本開示のより粗の形態または改良形態を実装することによって、希釈空気供給をコンピュータ制御して、エンジンが、変化した排気ガスを発生させたときから、変化または移動した排気ガスがサンプリングプローブ位置に到達したときまでの時間遅延をより正確に反映するように、従来技術の公知のガスサンプリング装置を改良できる。このプロセスは、説明してきたように、開ループ方式でまたはより正確な閉ループ方式で行うことができる。例えば、最も簡単な方法は、説明してきたような部分流トランジェントシステムのソフトウェアを修正して、サンプリングシステムの応答に遅延を付与する方法である。部分制御に関する、排気管の容積、エンジンによって部分流システムに付与される排気体積流量または吸気体積流量、吸気燃料流量測定値、および排気がサンプリング領域に接近したときの瞬間的な排気温度に基づき、遅延を計算し得る。一実施形態では、遅延は、純粋な時間オフセットの形態をとることが可能であり、このオフセットは、エンジンの排気マニホールドまたはターボ過給機の出口とサンプリング領域位置24との間の排気ストリームにおけるガスサンプリングシステム16の応答時間と排気の分離部分の飛行時間との差である。
【0021】
上述の説明は、例示目的のみのために意図されており、また本開示の範囲を限定するようには決して意図されないことを理解すべきである。例えば、一代替実施形態およびより簡単な実施形態では、ガスサンプリングシステムの空気圧作動式の分岐管に容積を単に加えることによって、遅延を行うことが可能である。しかし、このことが、はっきりしたおよび正確なオフセットよりもむしろより平均的な効果を生じるという事実により、この方法はそれほど望ましくないものであると考えられるが、それにもかかわらず、本開示の意図した範囲内に含まれる。本開示は、説明してきた実施形態と同様に希釈流量を変化させることによるよりも、むしろサンプリング流量を増加または減少させることによってトランジェントに応答するシステムにも適用でき得る。このようにして、本開示は、エンジン以外のあるものであり得る燃焼源からの実際の出力を表すデータを正確に生成するために、サンプル/希釈混合物の比例を維持するための任意の手段を意図する。したがって、当業者は、図面、開示、および添付された特許請求の範囲を検討すれば、本開示の他の形態、目的および利点を得ることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本開示の一形態による部分流サンプリングシステムを含むエンジン排気試験設備の概略図である。
【図2】図1の部分流サンプリングシステムに用いるための制御アルゴリズム用のソフトウェアフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
10 試験設備
12 エンジン
14 排気管
16 ガスサンプリングシステム
18 排気管区分
20 ダイリューショントンネルアセンブリ
22 ガスサンプリングプローブ
24 ガスサンプリング位置
26 フィルタ
28 希釈空気供給ライン
30 サンプル混合ライン
32 コンピュータ
34 NOxセンサ
36 通信線
38 温度センサ
40 通信線
42 圧力センサ
44 通信線
46 エンジン制御モジュール
48 通信線
50 層流要素
52 空気圧ライン
51 エンジン吸気供給部
54 差圧変換器
56 通信線
60 ガスサンプリングシステム構成部材
62 1つまたは複数の通信線
70 タービン
72 触媒装置およびハードウェア
74 粒子トラップ
80 制御アルゴリズム
81 開始
82 排気管容積の決定
84 吸気質量流量の決定
85 燃料供給質量流量の決定
86 排気質量流量の決定
87 排気温度の決定
88 排気圧の決定
90 排気体積流量の決定
91 サンプリング位置に到達するまでの時間遅延の決定
92 到達時間における希釈空気流量の決定
93 時間遅延の調整に関する質問
94 時間遅延の調整計算
95 希釈空気流量の導入の決定
97 希釈空気流量および実行時間のスケジュールの記憶
98 現在の時間のために予定された希釈空気スケジュールの実行
99 実際の到達時間と予測到達時間との比較
100 予測時間誤差に関する質問
101 時間遅延補正係数の再調整
104 試験および質問
105 終了
112 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分ガスサンプリングシステムを作動させる方法であって、
排気が排気管のサンプリング領域に到達するまでの時間遅延を推定するステップと、
推定された時間遅延に少なくとも部分的に基づき、部分ガスサンプリングシステム用の希釈サンプルと排気サンプルの割合を設定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
作動方法が、排気管内の排気質量流量の変化に応答して希釈空気流量を変化させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
推定ステップが、排気管容積を決定するステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
推定ステップが、
排気温度を決定するステップと、
決定された排気温度に少なくとも部分的に基づき排気体積流量を決定するステップとを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
推定された時間遅延に少なくとも部分的に基づき、排気の一部が排気管内の所定の位置に到達するまでの予想時間を決定するステップと、
所定の位置における実際の到達時間を決定するステップとを含む請求項2に記載の方法。
【請求項6】
エンジントランジェントを検出するステップと、
エンジントランジェントに関する推定された時間遅延に対応したときに希釈空気流量を変化させるステップとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ガスサンプリングシステムであって、
排気管区分と、
排気管区分に位置決めされたサンプリングプローブと、
希釈サンプルと排気サンプルの割合を制御するように作動可能に連結された制御装置と、
制御装置と制御通信を行うコンピュータであって、排気がサンプリングプローブに到達するまでの遅延時間を決定するように動作可能な時間遅延推定アルゴリズムを含む制御アルゴリズムを含むコンピュータと、
を備えるガスサンプリングシステム。
【請求項8】
排気管区分内の温度を感知するように作動可能に連結されかつコンピュータと通信する温度センサを含む請求項7に記載のガスサンプリングシステム。
【請求項9】
制御装置が、希釈空気流量を調整するための手段を含む請求項7に記載のガスサンプリングシステム。
【請求項10】
制御アルゴリズムが、排気体積流量を決定するための手段を含む請求項7に記載のガスサンプリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−10660(P2007−10660A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177080(P2006−177080)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】