説明

可変抵抗流体コントローラ

流体コントローラ装置によって、クロマトグラフィシステム内の溶媒傾斜流などの流体の流れが制御される。装置は、ポンプ流体を貯蔵するための流体リザーバを有する流体勾配コントローラと、ポンプ流体を受け取るための流体リザーバに接続されたポンピングデバイスとを備えている。ポンピングデバイスは、並列に構成された第1および第2の溶媒ラインと流体連絡している。第1および第2の溶媒ラインには、それぞれ制限器エレメントおよび溶媒リザーバが含まれている。動作中、ポンピングデバイスによって、ポンプ流体が、対応する制限デバイスとの関係で、第1および第2の溶媒ラインを通って流れる。ポンプ流体によって溶媒リザーバ内の溶媒が変位する。変位した溶媒が混合され、溶媒勾配が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年1月21日出願の米国仮特許出願第60/645,802号の優先権を主張するものである。これらの出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に分析プロセスにおける流体の制御に関し、より詳細には、ナノスケールクロマトグラフィにおける溶媒勾配の形成などの流体制御に関する。
【背景技術】
【0003】
最近ナノスケールクロマトグラフィ(流量1μL/min未満)における関心から、HPLC機器の製造者はより少ない流量を吐出することができるポンプを開発しようと試みている。分析スケールクロマトグラフィ(0.1〜5mol/min)に典型的に使用される定流量開ループ分析スケールポンプは、約0.1μL/minを超える良好なフロー源ではあるが、これらの流量未満では、溶媒圧縮およびシールフィッティングまたは逆止め弁の漏れによる不正確性のため、それらの流量精度が犠牲になっており、残念なことには、典型的な分析スケールHPLCポンプ技術は、これらの低流量に対して良好にスケーリングしていない。
【0004】
HPLCには、アイソクラティック分離のため、複数の成分の移動相/溶媒混合物が日常的に使用されており、移動相/溶媒混合物の組成は一定に維持されている。この組成は、ユーザが準備することも、あるいはポンプまたは溶媒デリバリシステムによってオンデマンドで生成することも可能である。しかしながら、勾配分離の場合、分析過程の間、移動相/溶媒混合物の組成が連続的に変化する。この溶媒勾配の生成は、通常、1)移動相成分をポンプの低圧サクション側で予備混合する方法、または2)一連の高圧ポンプを使用して、必要な数の成分を高圧混合物に引き渡す方法の2つの方法のうちのいずれかによって達成される。
【0005】
低圧勾配の形成は、単一の高圧ポンプおよび一連の安価な溶媒定量弁(低圧溶媒混合の場合)を必要とする点で有利であるが、低圧勾配の形成にはいくつかの欠点がある。残念なことには、溶媒吐出率がマイクロボアスケール、毛管スケールまたはナノスケールクロマトグラフィの場合に典型的な流量(すなわち100μL/min未満)まで低下すると、高圧ポンプのポンプヘッド体積(通常、50μL未満)が総溶離体積のかなりの部分を占めることになる。これは、勾配分解能が損失する原因になっている。たとえば、10μL/minの流量が使用される典型的な毛管スケールLC勾配分離の場合、ポンプヘッド体積を50μLと仮定すると、勾配組成は、良好な勾配LC分離を達成するために必要なほぼ連続した勾配分解能ではなく、5分毎に変化することになる。したがって、より少ない流量分離を使用したアプリケーションの場合、高圧勾配混合が使用されている。
【0006】
従来のプランジャ変位ポンピングシステムは、ノーマルスケールおよびマイクロスケールの高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)レジームにおいては、安定した、正確な流れの吐出に成功している。ノーマルスケールHPLCは、約0.1〜5.0mL/minの移動相流量を使用して実行され、また、マイクロスケールHPLCは、約1〜100μL/minの移動相流量を使用して実行されるが、ナノスケールHPLCには、約50〜500nL/minのレンジの移動相流量が必要である。プランジャ変位ポンピングシステムでは、信頼性が高く、かつ、高い精度でナノスケールHPLC流量を吐出することはできない。
【0007】
しかしながら、約200nL/minの流量が典型的に使用されるナノスケールLCの場合、使用される高圧ポンプの各々は、95%/5%ないし5%/95%の二進組成勾配を得るためには、10nL/min(つまり合計200nL/minの流量の5%)と少なく吐出することができなければならない。現在のポンピング技術は、プランジャの変位を測定することによって吐出流量を計量しているため、これを達成することは極端に困難である。プランジャの変位を測定することによる流量の計量は、1μL/minを超えるレジームでは可能であるが(シール/フィッティングの漏えい率は、バルク流量より数桁未満であると考えられるため)、数10nL/minのポンピングの場合は不可能である(場合によっては漏えい率がポンプの流量と同程度の大きさになることがあるため)。また、従来のプランジャ/シールポンピングシステムは、十分に小形化されていないため、現在のポンプヘッド設計の流体キャパシタンスには、変化するポンプ圧が存在することによって生成される流量の予測をさらに困難にする傾向がある。したがって、現在利用可能なフローセンサは、数10nL/minスケールの液体クロマトグラフィアプリケーションで使用するためには、その信頼性、正確性および精度は不適切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の装置によれば、有利には、任意の様々なLC流量レジームで使用することができる可変制限器を有する溶媒ラインを使用した新規な流体および勾配コントローラを提供することにより、変位計量高圧ポンプが抱えている問題が解決される。並列溶媒ライン構成により、有利には、高圧ポンプによって吐出される最終流量を制御することにより、ポンプヘッド内における溶媒圧縮および/またはポンプヘッドの漏れにもかかわらず、ナノスケールLCレジームで傾斜流を生成する能力が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、流体勾配制御装置は、ポンプ流体を貯蔵し、かつ、ポンプ供給するためのポンプ流体リザーバを備えている。ポンプ流体を受け取るためのポンプ流体リザーバには、ポンプデバイスが接続されている。第1の実例実施形態では、ポンプデバイスは、第1の溶媒ラインと流体連絡しており、第2の溶媒ラインが並列に接続されている。並列溶媒ラインの各々には、可変制限デバイスおよび溶媒リザーバが提供されている。ポンプデバイスは、ポンプ流体が対応する並列溶媒ラインを通って流れ、溶媒ラインの各々の可変制限デバイスによって提供される対応する抵抗を受けるように動作している。ポンプ流体によって、対応する個々の溶媒リザーバ内の溶媒が、対応する制限デバイスによって提供される抵抗の関数として溶媒リザーバからポンプ供給される。ポンプ供給された溶媒によって、混合ティーを介してクロマトグラフィシステムに引き渡される勾配組成が形成される。
【0010】
他の実例実施形態では、並列溶媒ライン内のインライン制限器エレメントを介して液体クロマトグラフィ(LC)システム内で流体傾斜流を実施するための方法が提供される。LCシステムは、ポンプ流体を貯蔵したポンプ流体リザーバを有する流体勾配コントローラ装置と、ポンプデバイスと、可変制限デバイスと、個々の並列溶媒ライン内の溶媒リザーバとを備えている。混合ティーによって、形成された溶媒勾配が分析コラムに引き渡される。この方法には、ポンプ流体が可変制限デバイスを通って流れるよう、ポンピングデバイスを動作させるステップと、ポンプ流体が可変制限デバイスに応答して流れるよう、少なくとも1つの可変制限デバイスを制御するステップが含まれている。溶媒流体勾配は、溶媒リザーバ内の対応する溶媒をポンプ流体が変位させることによって生成され、それにより、混合ティーを介してクロマトグラフィシステムに引き渡される溶媒勾配が形成される。
【0011】
本発明の実施形態によれば、有利には、ポンプヘッド内における溶媒圧縮の問題を解決する機構を実施することにより、ナノスケールレジームにおける勾配制御が提供される。ポンプヘッドからの漏えいの問題は、勾配システムの高圧側で解決される。
【0012】
本発明の上記および他の特徴ならびに利点は、添付の図面に照らして行う実例実施形態についての以下の詳細な説明からより深く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、その説明用として、単純な電子回路を使用してモデル化することができる。図1を参照すると、本発明による勾配コントローラ装置の基本構造が、単純な抵抗電子回路80によって示されている。システムモデルは、接地電位に接続されたDC電源82および第1の共通接続点84を備えている。実例実施形態の中で追って説明するように、DC電源82を使用して、ポンプ流体リザーバとポンプの組合せがモデル化されていることを理解されたい。第1の共通接続点84は、さらに、並列に接続され、かつ、第2の共通接続点86に接続された第1の抵抗R1および第2の抵抗R2に接続されている。以下で説明するように、第1の抵抗R1を使用して、第1の可変制限器と第1の溶媒リザーバの組合せがモデル化され、また、第2の抵抗R2を使用して、第2の可変制限器と第2の溶媒リザーバの組合せがモデル化されていることを理解されたい。第2の共通接続点86を使用して、勾配システムの混合ティーがモデル化されている。第2の共通接続点86は、第3の抵抗R3に接続されている。第3の抵抗R3は、さらに、接地電位226に接続されており、それにより回路を完成している。また、第3の抵抗R3を使用して分析コラム116がモデル化されていることを理解されたい。
【0014】
実例モデルでは、抵抗電子回路80が完成すると、DC電源82から総電流Iが流れる(従来から知られているように)。総電流Iは、図に示すように、DC電源82から第1の共通接続点84に流入し、そこで第1の抵抗電流IRIと第2の抵抗電流IR2に分割される。第1の抵抗の電流IRIは、図に示すように、第1の抵抗R1を通って流れ、第2の共通接続点86に流入している。同様に、第2の抵抗電流IR2は、図に示すように、第2の抵抗R2を通って流れ、第2の共通接続点86に流入している。第2の共通接続点86で第2の抵抗電流IR2と第1の抵抗電流IR1が結合し、第3の抵抗電流IR3が生成される。第3の抵抗電流IR3は、第3の抵抗R3を通って接地へ流れる。
【0015】
実例モデルでは、総電流Iが抵抗電子回路全体を通して一定の電流に維持される場合、第1の抵抗電流IR1および第2の抵抗電流IR2は、単純に、それぞれ第1の抵抗R1および第2の抵抗R2の値を調整することによって変化させることができる。第1の抵抗電流IR1および第2の抵抗電流IR2は、総電流Iに影響を及ぼすことなく、独立して制御することができる。同様に、電力の範囲が制限されている電源が使用される場合、第1の抵抗R1および第2の抵抗R2の値が第3の抵抗R3の値よりはるかに小さいか、あるいは式、1/(1/R1+1/R2)の値が一定の値に維持される場合、第1の抵抗R1および第2の抵抗R2を通って流れる電流は、総電流Ixを大きく変化させることなく操作することができる。この実例モデルの原理は、以下で説明する勾配コントローラシステムの実例実施態様にも適用することができる。
【0016】
次に図2を参照すると、本発明による勾配コントローラ装置100が示されている。第1の実例実施形態では、並列流体抵抗回路網102は、ポンプ流体リザーバ104、ポンプ106、第1の可変制限器108を有する第1の溶媒ライン、および第2の可変制限器110を有する第2の溶媒ラインを備えている。この実例実施形態では、第1および第2の可変制限器108、110は、ポンプ供給する流体の粘性(すなわち抵抗)を変化させるための温度変化を提供するために使用されるペルチエデバイスなどの温度制御された可変制限器である。実例ペルチエデバイスには、Melcor Peltier CP 1.4−71−045Lなどが含まれている。本発明の範囲には、当分野で知られている他の可変制限器エレメント、たとえばニードル弁制限器等を使用することができることが企図されている。
【0017】
第1の溶媒ラインでは、第1の可変制限器108は、第1の溶媒リザーバ112と流体連絡している。第2の溶媒ラインでは、第2の可変制限器110は、第2の溶媒リザーバ114と流体連絡している。動作中、ポンピング流体を貯蔵しているポンプ流体リザーバ104は、第1の溶媒ラインおよび第2の溶媒ラインにポンピング流体を引き渡すために、流体ティー118すなわちフロースプリッタと流体連絡しているポンプ106すなわち圧力源に接続される。流体ティー118は、第1の可変制限器108および第2の可変制限器110と流体連絡している第1の溶媒ライン101および第2の溶媒ライン103と流体連絡している。第1の可変制限器108は、第1の溶媒リザーバ112と流体連絡しており、第2の可変制限器110は、第2の溶媒リザーバ114と流体連絡している。第1の溶媒リザーバ112および第2の溶媒リザーバ114は、混合ティー120と流体連絡している。混合ティー120は、勾配溶媒ラインを介して分析コラム116と流体連絡している。勾配溶媒ラインは、任意選択で、システムコントローラ130と連絡している組成センサ118を備えることができる。第1および第2の可変制限器108、110は、プリセット制限を有することができ、あるいはシステムコントローラ130と連絡して、流量制限を選択的に制御し、かつ、変更することができる。
【0018】
本発明によれば、ポンプ106が一定の流体の流れを並列流体抵抗回路網102に引き渡す場合(つまりフローセンサを使用して、あるいは他の手段によって、閉ループフィードバック内のプランジャの変位または圧力源を測定することによって一定の流体の流れを引き渡している場合)、並列流体抵抗回路網102を形成している第1および第2の溶媒ラインを通る流体の流れは、第1の可変制限器106および第2の可変制限器108の大きさを変更することによって制御することができる。移動相/溶媒成分の流量は、並列流体抵抗回路網102の操作に応じて変化するため、流量の変化は、有利には、流量の変化自体が、それぞれ溶媒リザーバ112、114から引き渡される移動相/溶媒混合物中の組成変化であることを示している。したがって、この実例構成によれば、移動相/溶媒流の組成を制御し、ナノスケールLCレジームで流れを傾斜させることができる。
【0019】
図3を参照すると、説明用として、本発明による並列流体抵抗回路網102を有するデバイスの動作から得られたデータが示されている。しかしながら、この実例実施例では、第1の溶媒リザーバ112および第2の溶媒リザーバ114の代わりにSensirion(登録商標)フローセンサ(SLG1 430−0 15)を使用して、第1の可変制限器106および第2の可変制限器108を通って流れる流体が測定されている。この実施例に使用された流体は水であり、%Bエレメントは、第2の可変制限器108を通る流体の流れを第1の可変制限器106および第2の可変制限器108を通る流体の流れの合計で割った値として定義されている(つまり%B=W(IR1+IR2))。この実例実施例では、第1の可変制限器106および第2の可変制限器108は、温度を制御するための熱電コントローラMicrosemi controller EVB2816を備えた温度制御制限エレメントである。この実例実施形態では、第1の可変制限器106および/または第2の可変制限器108の温度を制御することにより、有利には、第1の可変制限器106および/または第2の可変制限器108を通って流れるポンプ供給流体の粘性を操作して可変流体抵抗を達成することができる。
【0020】
図3から分かるように、第1の可変制限器106および第2の可変制限器108を通って流れる流体の組成制御は、約10−95Cの制限器温度を使用して、約10−90%の範囲で調整することができる。したがって、10%B未満の勾配を得るためには、より高い制限器温度極限を使用するか、あるいは温度による粘性の変化がより大きいポンプ流体を使用することができることが分かる(たとえば温度による粘性の変化がはるかに大きい適切な重合体溶液を選択することができる)。本発明の範囲には、ポンプ流体は、必ずしも勾配コントローラから流出させる必要はないことが企図されている。その場合、溶媒リザーバ内のポンプ流体とLC移動相成分の間に機械的境界または拡散境界を配置することができ、また、ポンプ流体をポンプ流体リザーバ104に向けて方向転換し、かつ、貯蔵するためのポンピングを提供することができる。
【0021】
図4を参照すると、液体クロマトグラフィ(LC)システム内の流体傾斜流を制御するための方法200が示されている。この方法200には、ブロック202で示すように、流体勾配コントローラ装置100を構成するステップが含まれている。流体勾配コントローラ装置100は、上で説明したように配置され、ポンプ供給流体を貯蔵したポンプ流体リザーバ104を有している。流体勾配コントローラ装置100は、さらに、ポンピングデバイス106、第1の可変制限器108、第2の可変制限器110、第1の溶媒リザーバ112、第2の溶媒リザーバ114および分析コラム116を備えている。ポンピングデバイス106は、ブロック204で示すように、ポンプ流体がポンプ流体リザーバ104から複数の可変制限器を通って流れるように動作する。上で説明したように、ポンプ流体は、ポンピングデバイス106から第1のティー118に流入し、そこでポンプ流体の流れが第1および第2の溶媒ラインへ分割される。第1の溶媒ラインは、ポンプ流体を第1の可変制限器108へ導き、また、第2の溶媒ラインは、ポンプ流体を第2の可変制限器110へ導く。ポンプ流体は、第1および第2のフロー溶媒ラインに沿って流れるため、第1の可変制限器108および第2の可変制限器110は、ブロック206で示すように、ポンプ流体が第1の可変制限器108および第2の可変制限器110に応じた方法で流れるように制御される。
【0022】
一実例実施形態によれば、第1の可変制限器108および第2の可変制限器110は、温度制御された制限エレメントであるため、温度を制御することによってポンプ流体の流れを制御することができ、延いてはポンプ流体の粘性を制御することができる。ポンプ流体の温度が低くなると、ポンプ流体の粘性が高くなり、ポンプ流体の流れが遅くなる。第1の可変制限器108を通って流れるポンプ流体は、第2の可変制限器110に無関係に制御することができることを理解されたい。
【0023】
ポンプ流体が第1の可変制限器108および第2の可変制限器110を通って流れると、ブロック208で示すように、ポンプ流体によって溶媒がそれぞれ第1の溶媒リザーバ112および第2の溶媒リザーバ114から変位し、それにより、それぞれ第1および第2の可変制限を関数として流体勾配が生成される。変位した溶媒は、対応する制限エレメントによる制限に比例して、第1の流路および第2の流路から流れる。変位した溶媒は、第2の混合ティー120を介して混合され、流体勾配が形成される。この流体勾配は、次に、ブロック210で示すように、分析コラム116に導入される。本発明の範囲には、任意のクロマトグラフィシステムに流体勾配を導入することができることが企図されている。
【0024】
第1の可変制限器106および第2の可変制限器108は、温度制御された制限エレメントであるが、所望する最終目的に適した任意の様々な制限エレメントおよび/または方法を使用することができる。
【0025】
図4に示す方法の少なくとも一部は、流体勾配コントローラ装置100の内部または外部に配置されたコントローラによって処理することができる。また、図4に示す方法の少なくとも一部は、コンピュータプログラムに応答して動作するコントローラによって処理することができる。コントローラは、規定された機能および所望の処理ならびにそのための計算を実行するために(たとえば1つまたは複数の制御アルゴリズム、本明細書に記述されている制御プロセスなどを実行するために)、それらに限定されないが、1つまたは複数のプロセッサ、1つまたは複数のコンピュータメモリ、1つまたは複数の記憶レジスタ、1つまたは複数の時限割込み、1つまたは複数の通信インタフェースおよび1つまたは複数の入/出力信号インタフェース、ならびにそれらのうちの少なくとも1つを備えた組合せを備えることができる。
【0026】
本発明は、コンピュータ実施プロセスまたはコントローラ実施プロセスの形態で具体化することができる。また、本発明は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、ハードドライブなどの有形媒体、および/または他の任意のコンピュータ可読媒体の中に具体化された命令を含んだコンピュータプログラムコードの形態で具体化することも可能であり、コンピュータプログラムコードがコンピュータまたはコントローラにロードされ、かつ、実行されると、コンピュータまたはコントローラは、本発明を実践するための装置になる。また、本発明は、たとえば、記憶媒体に記憶されるものであれ、コンピュータまたはコントローラにロードされ、かつ/または実行されるものであれ、あるいは何らかの伝送媒体、たとえば電気配線またはケーブルなどを介して、もしくは光ケーブルまたは電磁放射を介して伝送されるものであれ、コンピュータプログラムコードの形態で具体化することも可能であり、コンピュータプログラムコードがコンピュータまたはコントローラにロードされ、かつ、実行されると、コンピュータまたはコントローラは、本発明を実践するための装置になる。汎用マイクロプロセッサ上で実施される場合、コンピュータプログラムコードセグメントは、特定の論理回路を生成するためのマイクロプロセッサを構成することができる。
【0027】
本発明による実例実施形態では、勾配を制御するための互いに並列の2つの溶媒ラインが示されているが、本発明は、1つの流体制御通路を有することができ、あるいは複数の成分を有する溶媒勾配を形成することができる多数の溶媒ラインを互いに並列に有することができることを当業者には理解されたい。同様に、本発明による勾配コントローラシステムは、システムが動作している間、1つの溶媒ラインのみを使用して、勾配制御デバイスに取り付けられた分析デバイスをフラッシングすることができることを当業者には理解されたい。混合ティー以外の構造を使用して、勾配組成を達成するための可変制限流路を選択することができることを理解されたい。
【0028】
本発明による実例実施形態では、ポンプ流体を使用して溶媒リザーバ内の溶媒を変位させているが、ダイヤフラムなどの物理的なコンポーネントによって溶媒リザーバ内の溶媒からポンプ流体を分離することも可能であることを当業者には理解されたい。同様に、可変粘性のポンプ流体を使用して溶媒リザーバ内の溶媒を変位させることも可能であることを当業者には理解されたい。さらに、ポンプ流体は、流体と固体の両方の組合せであってもよいことを理解されたい。
【0029】
以上、本発明について、実例実施形態を参照して説明したが、様々な変更、省略および/または追加が可能であり、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、実質的な等価物を本発明のエレメントの代わりに使用することができることは当業者には理解されよう。また、特定の状況または材料に適合させるために、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの改変を本発明の教示に加えることが可能である。したがって、本発明を実行するために開示した特定の実施形態に本発明を限定することではなく、本発明は、特許請求の範囲の範疇に属するあらゆる実施形態を包含することが意図されている。さらに、特に言及されていない限り、第1の、第2のなどの用語の使用は、何らかの順序または重要性を表しているのではなく、単にエレメントを互いに区別するために使用されているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一例示的実施形態による流体勾配コントローラ装置をモデル化した略線図である。
【図2】一例示的実施形態による流体勾配コントローラ装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の例示的実施形態による流体勾配コントローラ装置をモデル化したデバイスを使用した試験によって得られたサンプルデータを示すグラフである。
【図4】液体クロマトグラフィ(LC)システム内の流体傾斜流を制御するための方法を記述したブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ流体を貯蔵するためのポンプ流体リザーバと、
ポンプ流体リザーバに接続された、ポンプ流体をポンプ供給するためのポンピングデバイスと、
ポンピングデバイスに接続された少なくとも1つの可変制限デバイスであって、ポンピングデバイスが動作すると、ポンピングデバイスによってポンプ流体が少なくとも1つの可変制限デバイスを通って流れる可変制限デバイスと、
少なくとも1つの可変制限デバイスに接続された、少なくとも1つの溶媒を含有した溶媒流体を貯蔵するための少なくとも1つの溶媒流体リザーバであって、ポンプ流体によって、少なくとも1つの可変制限デバイスによって提供される制限との関係で溶媒流体が変位する溶媒流体リザーバと
を備えた流体コントローラ装置。
【請求項2】
ポンピングデバイスが流体ティーを介して少なくとも1つの可変制限デバイスに接続された、請求項1に記載の流体コントローラ装置。
【請求項3】
少なくとも1つの可変制限デバイスが、第1の溶媒ラインと結合した第1の可変制限デバイス、および第2の溶媒ラインと結合した第2の可変制限デバイスを備えた、請求項1に記載の流体コントローラ装置。
【請求項4】
少なくとも1つの溶媒流体リザーバが、第1の可変制限デバイスに接続された第1の溶媒流体リザーバ、および第2の可変制限デバイスに接続された第2の溶媒流体リザーバを備えた、請求項3に記載の流体コントローラ装置。
【請求項5】
流体コントローラ装置が、少なくとも1つのクロマトグラフィコラムに溶媒勾配を提供する、請求項4に記載の流体コントローラ装置。
【請求項6】
第1の可変制限デバイスおよび第1の溶媒流体リザーバが、第2の可変制限デバイスおよび第2の溶媒流体リザーバに並列に接続された、請求項4に記載の流体コントローラ装置。
【請求項7】
第1の可変制限デバイスおよび第2の可変制限デバイスが機械的な制限エレメントである、請求項3に記載の流体コントローラ装置。
【請求項8】
少なくとも1つの可変制限デバイスのうちの少なくとも1つが、温度制御された制限エレメントを備えた、請求項1に記載の流体コントローラ装置。
【請求項9】
液体クロマトグラフィシステム内で流体勾配を形成するための方法であって、
少なくとも第1の溶媒を貯蔵している第1の溶媒リザーバと連絡している第1の可変制限デバイス、および少なくとも第2の溶媒を貯蔵している第2の溶媒リザーバと連絡している第2の可変制限デバイスを備えた流体勾配コントローラ装置を提供するステップと、
第1および第2の可変制限デバイスを介して少なくとも1つのポンプ流体をポンプ供給するステップであって、それにより第1および第2の溶媒が変位するステップと、
変位した第1および第2の溶媒の勾配を調停するために、それぞれ第1の可変制限デバイスおよび第2の可変制限デバイスによって提供される第1の流量制限および第2の流量制限を変更するステップと
を含む方法。
【請求項10】
第1の可変制限デバイスが、第1の溶媒リザーバから分離され、かつ、第1の溶媒リザーバに接続され、また、第2の可変制限デバイスが、第2の溶媒リザーバから分離され、かつ、第2の溶媒リザーバに接続された、請求項9に記載の流体勾配を制御するための方法。
【請求項11】
第1の可変制限デバイスおよび第1の溶媒リザーバが、第2の可変制限デバイスおよび第2の溶媒リザーバに並列に接続された、請求項9に記載の流体勾配を制御するための方法。
【請求項12】
変位した第1および第2の溶媒を結合するステップと、結合した溶媒を分析コラムを通して流すステップとをさらに含む、請求項9に記載の流体勾配を制御するための方法。
【請求項13】
液体クロマトグラフィ装置であって、
第1の流路を変更可能に制限するための手段と、
第2の流路を変更可能に制限するための手段と、
第1の流路を変更可能に制限するための手段に応答して第1の溶媒を変位させるための手段と、
第2の流路を変更可能に制限するための手段に応答して第2の溶媒を変位させるための手段と、
変位した第1および第2の溶媒を結合するための手段と、
結合した第1および第2の溶媒をクロマトグラフィコラムに引き渡すための手段と
を備えた装置。
【請求項14】
第1の流路を変更可能に制限するための手段にポンプ流体を引き渡すための手段をさらに備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ポンプ流体を引き渡すための手段がポンプを備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
第1の流路を変更可能に制限するための手段が、温度の変化に応じて制限を変更する可変制限コンポーネントを備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項17】
第1の溶媒を変位させるための手段が、第1の流路を通って流れるポンプ流体を備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項18】
変位させるための手段が、少なくとも若干の第1の溶媒を貯蔵したリザーバをさらに備えた、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
結合するための手段が混合ティーを備えた、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−528970(P2008−528970A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552209(P2007−552209)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/001563
【国際公開番号】WO2006/078633
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)