説明

可変遮熱性採光シート

【課題】夏季は近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季の低温時には近赤外線を透過して熱を取り込むことが出来、さらに夏冬通して高い採光性を有する可変遮熱性採光シートの提供。
【解決手段】本発明の可変遮熱性採光シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、前記サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する樹脂層であることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採光性に優れ、熱によって遮熱性が変化するシートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、屋内外の使用において、シート温度が低温から常温にあるときは太陽輻射に含まれる近赤外線の透過性が高く、太陽熱によってシート温度が高温になると近赤外線を遮蔽する、遮熱コントロール性を有する採光性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維基布に可撓性樹脂が被覆されてなる光透過性または半透過性のシートは、テント倉庫、イベント用大型テント、災害時用テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等、広い用途で利用されている。しかしながら、これらのシートは、太陽光線に含まれる近赤外線を遮蔽する能力が低いため、テント倉庫などの構造物においては、夏季に内部の気温が極度に上昇して、作業環境を過酷なものとしている。また日除けテントでは、まぶしさを防ぎ、紫外線を減少させるには効果的であるが、冷涼効果には乏しいのが実情である。
【0003】
この様なシートにおいて、酸化チタン等の無機白色顔料を含有する白色のシートを用いることによって、太陽輻射に含まれる近赤外線を散乱させてその透過を防ぎ、遮熱性を示すことが知られている。しかし、十分な遮熱効果を得るためには、多量の白色顔料を用いる必要があり、そのためこの様なシートを用いた構造体の内部環境が暗くなり、日中でも照明が必要となる。
【0004】
これに対して本発明者は、屈折率1.8以上、粒子径分布0.3〜3.0μm、アスペクト比1.0〜3.0不定形無機化合物粒子を用いた透光性を有する遮熱シートを提案した。(特許文献1参照)この不定形無機化合物粒子は近赤外線を選択的に散乱しながら、可視光は透過することで遮熱性と採光性を同時に得る事を可能とするものである。この遮熱シートは従来のシートに比べ表面温度が10〜15℃低く、レベルの高い遮熱性を発現し、かつ採光性も有するものであるが、曇天或いは雨天時の屋内作業性の観点から、更なる採光性の向上が望まれている。また、この遮熱シートは近赤外線を散乱して遮蔽するため、夏季の冷房効率向上には寄与するが、冬季は暖房の熱が輻射熱としてテント構造物外部に漏れるのを防ぐ効果はあるものの、太陽輻射に含まれる近赤外線を内部に取り入れることができず、日中の暖房効率はむしろ低下する場合があった。
【0005】
近年、高温時に近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、低温時には近赤外線を透過して太陽輻射に含まれる熱を取り入れる事ができるサーモクロミック材料を用いた技術が注目を集めている。サーモクロミック材料としては主に二酸化バナジウム系の材料が知られている。二酸化バナジウムは、約68℃に転移温度を有し、転移温度よりも低温側では単斜晶系で近赤外線の透過率が高く、高温側では結晶構造が正方晶系ルチル構造に変化して近赤外線の遮蔽性が大幅に向上して遮熱性を示す。この転移温度は、二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部を、他の金属に置き換えることで任意に変えることが出来る。これらの、二酸化バナジウム系材料は、そのまま用いたのでは可視光領域の一部に強い吸収を有し、採光性を損なう事があるため、窓ガラスに用いる場合には、スパッタ法などにより二酸化バナジウム系材料の薄膜を形成した上に、更に可視光反射防止薄膜を形成して採光性を向上させるなどの対策が行われている(例えば特許文献2参照)。しかし、二酸化バナジウム系材料の薄膜を形成する際には、結晶構造を整えるためにガラスに数百度の熱をかける必要があり、熱可塑性樹脂シートを基材として上述の薄膜を応用することは困難である。そのため、サーモクロミック材料からなる粒子(例えば特許文献3、4および5参照)を熱可塑性樹脂に分散してシート化する方法が採られるが、この場合可視光領域の吸収を軽減する方法は無く、夏季の遮熱性が得られるだけ十分にサーモクロミック材料を添加すると、シートの採光性が不十分となり、採光性を上げるために添加量を減らすと夏季の遮熱性が低下する問題を有していた。
【0006】
以上の様に、例えばテント構造物に用いた場合に、真夏の炎天下において内部温度が極度に上昇することを防いだり、日除けテントに用いた場合に冷涼効果を示し、冬季は太陽熱を取り入れる事ができ、しかも日中は照明無しに屋内作業が可能な採光性を併せ持ったシートは、これまで提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−055177号公報
【特許文献2】特開2004−004795号公報
【特許文献3】特開2004−346260号公報
【特許文献4】特開2004−346261号公報
【特許文献5】特開2010−031235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、夏季の炎天下においては太陽輻射に含まれる近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季の低温時には近赤外線を透過して熱を取り込むことが出来、さらに採光性に優れた、可変遮熱性採光シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討の結果、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する樹脂層を、近赤外線遮蔽層として含むことで、夏季の遮熱性と冬季の近赤外線透過性を両立し、かつ、採光性に優れたシートが得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の可変遮熱性採光シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、前記サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する樹脂層であることを特徴とする。本発明の可変遮熱性採光シートにおいて、前記近赤外線遮蔽層が、前記サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されることが好ましい。本発明の可変遮熱性採光シートは、前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含んでいてもよく、海成分が前記サーモクロミック材料を含んでいてもよい。本発明の可変遮熱性採光シートは、前記サーモクロミック材料が、以下の(1)〜(3)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含むことが好ましい。
(1)二酸化バナジウム。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、スズ、レニウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、クロム、鉄、ガリウム、亜鉛、アルミニウム、インジウム、およびチタンから選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
本発明の可変遮熱性採光シートは、前記赤外線散乱着色剤が、以下の(1)、(2)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含むことが好ましい。
(1)チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズから選ばれた金属酸化物。
(2)チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種乃至4種の成分を含む、ルチル型、またはヘマタイト型、またはスピネル型構造を有する金属複合酸化物。本発明の可変遮熱性採光シートにおいて、前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可変遮熱性採光シートは、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する樹脂層を含むことで、夏季の炎天下においては太陽輻射に含まれる近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季の低温時には太陽輻射に含まれる近赤外線を透過して熱として取り込むことが出来、さらに高い採光性を有するものである。この可変遮熱性採光シートをテント倉庫、災害時用テント、イベント用大型テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等に用いることで、夏は涼しく、冬は暖かく、高い採光性を有する膜構造物を提供する事ができる。その結果夏の冷房、冬の暖房、日中の照明などにかかるコストを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の可変遮熱性採光シートの一例を示す断面図
【図2】本発明の可変遮熱性採光シートの一例を示す断面図
【図3】本発明の可変遮熱性採光シートにおける近赤外線遮蔽層の一例を示す図
【図4】本発明の可変遮熱性採光シートにおける近赤外線遮蔽層の一例を示す図
【図5】実施例・比較例において、遮熱性および昇温性の評価に用いた小型テント を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の可変遮熱性採光シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、その形態は、樹脂シート(樹脂フィルム)、ターポリン、帆布等の防水性シート、またはメッシュシートである。このうち樹脂シートは、カレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法により製造することができ、近赤外線遮蔽層単層であっても良く、近赤外線遮蔽層を含む複数の樹脂シートを積層した積層体であっても良い。ターポリン、帆布等の防水性シート、およびメッシュシートは、近赤外線遮蔽層と繊維基布とを含む積層体であり、近赤外線遮蔽層は繊維基布の一方の面のみに形成されても良く、両面に形成されても良い。帆布やメッシュシートは、有機溶剤に可溶化した可撓性樹脂、水中で乳化重合された可撓性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは可撓性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、等を用いるディッピング加工(繊維基布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維基布への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルム又は樹脂シートを、繊維基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目状の繊維基布の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することが好ましく、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、樹脂フィルム積層の組み合わせによっても実施可能である。
【0014】
本発明の可変遮熱性採光シートは、強度、耐久性、寸法安定性などを付与するために、繊維基布を含む積層体、具体的には上述のターポリン、帆布、およびメッシュシートである事が好ましい。繊維基布に用いられる繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよい。その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用される繊維基布は、織布、編布、不織布のいずれでもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる可変遮熱性採光シートの経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大90%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
【0015】
本発明において、近赤外線遮蔽層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、可視光透過性が高く可撓性のある熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
本発明の近赤外線遮蔽層は、合成樹脂の非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成された樹脂層であり、混合する合成樹脂の組み合わせについて、非相溶であれば特に制限はない。非相溶の組合せとしては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂とスチレン系共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とビニルエステル樹脂、スチレン樹脂とポリエチレン、スチレン樹脂とポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とスチレン樹脂、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとスチレン樹脂、ポリアミドとポリプロピレンなど、非相溶の可撓性樹脂対が例示される。また、これらの非相溶の可撓性樹脂対に対して、さらに別種の可撓性樹脂を含有することもできる。
【0017】
これらの非相溶樹脂層は相分離構造を示す白濁概観の海島分散構造であることが好ましい。この海島分散構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば合成樹脂Aと合成樹脂Bからなる非相溶混合物において、合成樹脂Aと合成樹脂Bとの比率設定により、海成分を合成樹脂Aで構成し、島成分を合成樹脂Bで構成することができ、また海成分を合成樹脂Bで構成し、島成分を合成樹脂Aで構成することもできる。ここで、海島分散構造の島成分、もしくは海成分のいずれか一方が、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する可変遮熱機能を有することが望ましい。すなわち、近赤外線遮蔽層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂組成物と、このサーモクロミック材料を含まない合成樹脂組成物との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されたことで、島成分あるいは海成分の一方の側が、サーモクロミック材料を含んで可変遮熱機能を有し、夏季は太陽輻射に含まれる近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季は太陽輻射に含まれる近赤外線を透過して太陽熱を取り込むことが出来、一方、島成分あるいは海成分のもう一方の側がサーモクロミック材料を含まないことで、可視光領域の光を透過し、採光性に優れたシートが得られる。島成分を構成する合成樹脂組成物の比率は、海成分を構成する合成樹脂組成物の体積に対して3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率は2.9〜33.3体積%が好ましく、4.7〜28.6体積%がより好ましい。海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率が2.9体積%未満では、海島分散構造を有さない場合との差が無くなり、本発明の効果を十分に得る事が出来ない。即ち、海成分にサーモクロミック材料を含む場合の採光性が不足することがあり、島成分にサーモクロミック材料を含む場合には夏季の遮熱性が不足する事がある。近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率が33.3体積%を超えると、近赤外線遮蔽層の樹脂強度が低下し、得られるシートの強度や耐久性が低くなることがある。また、本発明において、海島分散構造における島成分の平均粒子径は0.4〜20μmであることが好ましい。島成分の平均粒子径がこの範囲にあることで、海成分と島成分の界面において近赤外線の屈折散乱現象を生じ、近赤外線遮蔽層中での近赤外線の散乱が増大し、サーモクロミック材料による高温時の近赤外線散乱が効率よく行われ、夏季の高い遮熱性が得られる。島成分の平均粒子径が0.4μm未満であると、界面における屈折散乱現象により可視光領域の一部で光の散乱が大きくなり、採光性が低下することがある。島成分の平均粒子径が20μmを超えると、可視光領域全域が反射され、採光性が低下することがある。また非相溶の可撓性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の可撓性樹脂Cを含有する場合、海島分散構造において島成分が可撓性樹脂Bによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよく、同様に島成分が可撓性樹脂Aによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよい。本発明において海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層の厚さは、0.03〜1.0mmが好ましく、0.05〜0.5mmがさらに好ましい。近赤外線遮蔽層の厚さが0.03mm未満では、夏季に十分な遮熱性が得られないことがあり、1.0mmを超えると、採光性が低下したり、柔軟なシートが得られなくなることがある。
【0018】
本発明においてサーモクロミック材料とは、780〜2500nmの波長領域の近赤外線に対して、特定の温度を境に可逆的に、低温側では遮蔽率が低く、高温側では遮蔽率が高くなる特性(以下、サーモクロミック特性と記すことがある)を有する物質からなる粒子、あるいは、無機粒子基材上に上述のサーモクロミック特性を有する物質を担持させた粒子(以下、担持粒子と記すことがある)を示す。このサーモクロミック材料を海成分または島成分に含み、熱によりシートの温度が上下することで、非相溶混合物からなる樹脂層の近赤外線遮蔽効果が変化する。近赤外線の遮蔽効果が変化する温度(以下、転移温度と記すことがある)は25〜70℃の範囲にある事が好ましく、30〜45℃がより好ましい。転移温度が25℃未満では、冬季であっても、太陽熱によりシートの温度がサーモクロミック材料の転移温度を超えて近赤外線遮蔽性が高くなり、冬季に近赤外線を透過して太陽熱を取り込む効果が不十分となることがある。転移温度が70℃を超える場合は、太陽熱を受けてもシートの温度がなかなか転移温度に達さず、夏季の遮熱性を得られない事がある。
【0019】
本発明で用いるサーモクロミック材料は、上述のサーモクロミック特性を有する限り特に限定されないが、下記(1)〜(3)に例示する金属酸化物がサーモクロミック特性に優れており、かつ、可視光の透過性に優れているため、これらの化合物からなる粒子、あるいは、これらの化合物を含む担持粒子から、1種または2種以上選択して用いることが好ましい。
(1)二酸化バナジウム(VO)。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、およびチタン(Ti)から選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
なお、上記(2)において原子%とは、バナジウムに対する置換成分の置換率を原子の個数のパーセンテージで表したものである。例えばバナジウムの一部をモリブデンで置換した化合物V0.95Mo0.05であれば、バナジウムとモリブデンを合わせて1であり、その内モリブデンが0.05であるから、バナジウムに対するモリブデンの置換率は5原子%となる。また、バナジウムの一部をタングステンとクロムで置換した化合物V0.9650.030Cr0.005の場合、置き換えたタングステン原子が3原子%、クロム原子が0.5原子%となり、合わせて3.5原子%の置換率となる。バナジウムの一部をこれらの元素で置換することで、サーモクロミック材料の転移温度を自在に調整することが可能となる。また、上記(2)において、バナジウムの一部が上記元素で置換されるとともに、酸素の一部がフッ素で置換されていてもよく、その場合酸素に対するフッ素の置換割合は0.01〜2%である事が好ましい。酸素の一部をフッ素で置換することで、サーモクロミック材料の可視光透過性が向上し、得られるシートの採光性が向上する。
【0020】
サーモクロミック材料として担持粒子を用いる場合、基材となる無機粒子としては、酸化ケイ素、シリカゲル、酸化チタン、ガラス、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物の焼成物、層状珪酸塩、および炭酸カルシウムなどから適宜選択して用いる事ができる。担持粒子を用いることで、上述のサーモクロミック化合物からなる粒子を用いるのに比べ、得られるシートの採光性が向上する。サーモクロミック特性を有する化合物の担持量は、担持粒子全体の質量に対して0.1〜50質量%が好ましい。担持量が0.1質量%未満ではサーモクロミック特性を示さないことがあり、50質量%を超えると採光性が向上しないことがある。
【0021】
本発明において、サーモクロミック材料の添加量は、海成分あるいは島成分を構成する合成樹脂組成物の質量全体に対して0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。0.1質量%未満では添加による効果が不足し、夏季の遮熱性が充分に得られないことがある。30質量%を超えて添加すると、加工性や樹脂強度が低下することがあり、また、サーモクロミック材料に由来する着色により、得られるシートの採光性が低下することがある。サーモクロミック材料の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmがより好ましい。平均粒子径が1nm未満では凝集により樹脂中への均一分散が困難となり、得られるシートの外観に斑を生じる事がある。平均粒子径が500nmを超えると、サーモクロミック特性を十分に示さないことがあり、また、得られるシートの採光性が低下することがある。
【0022】
本発明で用いるサーモクロミック材料は、酸化を防止するため、或いは、光触媒活性を抑制するために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる1種または2種以上の金属を含有する酸化物で被覆したものであることが好ましい。
【0023】
本発明において、近赤外線遮蔽層は、サーモクロミック材料を含む合成樹脂組成物と、このサーモクロミック材料を含まず赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂組成物との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されてもよい。海成分または島成分のいずれかに赤外線散乱着色剤を含むことで、可変遮熱性採光シートに任意の着色を施す事ができ、なおかつ夏季の遮熱性が向上する。また、冬季に日中取り込んだ太陽熱が遠赤外線として輻射される際に、その遠赤外線を反射することで外部に漏らし難くし、保温性を与える効果も得られる。
【0024】
本発明において赤外線散乱着色剤とは、赤外線を散乱させる特性を有する無機の着色剤であり、特に以下の(1)、(2)の金属酸化物が好ましく、これらの内から1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
(1)チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズから選ばれた金属酸化物。
(2)チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、及びケイ素(Si)の内2種乃至4種の成分を含む、ルチル型、またはヘマタイト型、またはスピネル型構造を有する金属複合酸化物。
【0025】
上記のうち(1)の金属酸化物粒子は、その表面に近赤外線領域波長に吸収が少なく、可視光領域波長に吸収を有するアゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素からなる群から選ばれた少なくとも一種を被覆したものであっても良い。また、光触媒活性を有する粒子の光触媒活性を抑制したり、樹脂への分散性を向上させたりするために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる1種または2種以上の金属を含有する酸化物、或いは、高級脂肪酸等で被覆したものを用いても良い。
【0026】
上記のうち(2)の金属複合酸化物粒子としては、具体的には、Co−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Cr−Ti、Co−Mg−Sn、Co−Ni−Ti、Co−Zn−Ni−Ti、Co−Zn−Cr−Ti、Co−Sb−Ni−Ti、Co−Nb−Ni−Ti、Nb−Ni−Ti、Co−Si、Sn−Cr−Ti、Zn−Cr−Ti、Zn−Cr−Fe、Co−Zn−Cr−Fe、Co−Ni−Cr−Fe−Si、Co−Cr−Mg−Zn−Al、Co−Mn−Cr−Fe、Co−Fe−Cr、Co−Cr−Ni、Co−Cr、Cu−Mn−Cr、Cu−Mn−Fe、Cu−Cr、Mn−Fe、Zn−Fe、Cr−Fe、Cr−Fe−Zn−Ti、Pb−Sb−Fe、Pb−Sb−Al、Ni−Sb、Fe−Zn−Ti、Fe−Al−Ti、Fe−Ti、Fe−Mo、Cr−Sb、Cr−Sb−Ti、Mn−Sb−Ti、Ti−Sb−Ni、Cr−Sn、Fe−Co−Mn−Ni、Ti−Sb−CrおよびZr−Feなどの成分からなる複合酸化物粒子を例示することができる。これらの金属複合酸化物粒子は、ルチル型、またはヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、赤外線反射性の顔料として市販されており、所望の色相を有する粒子を単独で、または2種以上併用して用いることができる。また、光触媒性の抑制や、樹脂への分散性向上のために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる1種または2種以上の金属を含有する酸化物、或いは、高級脂肪酸等で被覆したものを用いても良い。
【0027】
本発明において、赤外線散乱着色剤は、海成分または島成分を構成する合成樹脂組成物に対して0.05〜20質量%含まれる事が好ましく、0.1〜10質量%である事がより好ましい。0.05質量%未満では添加による効果が不足し、遮熱性が向上しないことがある。20質量%を超えて添加すると、加工性や樹脂強度が低下し、得られるシートの採光性が低下することがある。用いる赤外線散乱着色剤の粒径は、樹脂への分散性、シートの加工性などを勘案して、平均粒子径1〜3000nmの粒子から適宜選択して用いることができる。特に近赤外線領域波長の散乱を高め、可視光領域波長の散乱を抑える(透過を高める)ためには、平均粒子径350〜2000nmの粒子が好ましく、400〜1600nmであることがより好ましい。また、可視光領域波長の透過を高め、かつ透視性のある近赤外線遮蔽層を得るには、平均粒子径20〜100nmの粒子が好ましく用いられる。
【0028】
本発明の可変遮熱性採光シートは、その特性を長期間に亘って維持するため、可撓性シート最外表面に防汚層を有することが好ましい。防汚層としては、遮熱性及び採光性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものである限り、その形成方法及び素材に特に限定はないが、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択することができる。
【0029】
本発明の可変遮熱性採光シートにおいて、上記防汚層の他に必要に応じて、防汚層の接着性を向上させるための接着層、防汚層が光触媒層である場合に光触媒による樹脂の分解を妨げるための保護層、近赤外線遮蔽層および/またはその他の樹脂層に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等が形成されていてもよい。また、本発明の可変遮熱性採光シートの、防汚層が形成された面とは反対の面に、防汚層との高周波加熱融着性及び熱風融着性を付与するための裏面接着層が形成されていてもよい。あるいは、可変遮熱性採光シートをロール状に巻き取って保管している間に、裏面側の樹脂層に含まれる添加剤が、防汚層上に移行して防汚性が低下するのを防ぐために、裏面側(防汚層とは反対の面)に添加剤移行防止層が形成されていても良い。
【0030】
本発明の可変遮熱性採光シートにおいて、近赤外線遮蔽層はこの他に、海成分と島成分それぞれ独立して、必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、有機顔料、無機顔料、などが例示される。
【実施例】
【0031】
本発明を下記実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
下記実施例・比較例において、採光性、遮熱性、昇温性は、以下の方法により評価した。
(I)採光性(光線透過率)
実施例および比較例で作成したシートそれぞれについてJIS Z8722.5.4(条件g)に従
い、可視光領域の光線透過率を、ミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて測定し
た。光線透過率が高いものが、採光性に優れるものと判断した。
(II)可視光および近赤外線透過の温度依存性
実施例および比較例で作成したシートそれぞれについて、温度コントロール装置付きの
分光光度計(日本分光(株)製V−670)を用いて、シート温度10℃と70℃の時
の、可視光(550nm)と、近赤外線(1500nm)の透過率を測定した。
(III)遮熱性および昇温性
試験環境:実施例および比較例で作成したシート(11)について、おもて面を外側と
して、屋根部および側壁部を覆った小型テント(10:図5参照)を作成し、周辺に
高い建物の無い3階建てのビル屋上(コンクリート床面)にテント屋根部の傾斜面の
一方を真南に向けて、外部との空気の流通が無い状態に設置し、冬季(1月)および
夏季(8月)のテント内温度変化を継続的に測定した。得られた測定データから、快
晴が二日続いた二日目の日の出前(5時)、日中(12時)、日没後(20時)の温
度を抽出して冬季の昇温性(太陽熱を取り入れて内部を暖める効果)と夏季の遮熱性
を評価した。なお、テント設置と同じビルの屋上において、床面から1.2mの高さ
に百葉箱を設置し、上記測定時の外気温も継続的に測定した。
テントサイズ:
床面から軒先までの高さ 50cm
底面 たて×よこ 50cm×50cm
屋根部 傾斜角20° 床面から主棟までの高さ 59cm
温度測定位置 テント内中央部床面から、高さ30cmの位置で測定
【0033】
[実施例1]
下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合2のサーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物1を得た。配合2のサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をタングステンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.990.01粒子(置換割合:1原子%、転移温度:41℃)を用いた。この非相溶樹脂混合物1を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの近赤外線遮蔽層用フィルム1−1を成型した。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム1−2を成型した。次いで、得られたフィルム1−1とフィルム1−2の中間に下記基布1を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が近赤外線遮蔽層であるターポリン状のシートを得た。フィルム1−1からなる近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、サーモクロミック材料含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.2μmであった。次いで、フィルム1−1を積層した側に、下記配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で1分間乾燥した。これによって近赤外線遮蔽層に塗布量:5g/mの防汚層が形成された、実施例1のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部

<配合2>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
0.990.01:平均粒子径100nm 5質量部

<配合3>
商標:アクリプレン ペレットHBS001(三菱レイヨン(株)製) 20質量部
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 80質量部

(基布1)
ポリエステル833dtexマルチフィラメントを用いた粗目状平織布
密度 たて(経糸) 19本/インチ よこ(緯糸) 20本/インチ

【0034】
[実施例2]
下記配合4のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合5のスチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物2を得た。配合4のサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をタングステンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.990.01粒子(置換割合:1原子%、転移温度:41℃)を用いた。この非相溶樹脂混合物2を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの近赤外線遮蔽層用フィルム2−1を成型した。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム2−2を成型した。次いで、得られたフィルム2−1とフィルム2−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が近赤外線遮蔽層であるターポリン状のシートを得た。フィルム2−1からなる近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、サーモクロミック材料含有塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。次いで、フィルム2−1を積層した側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、実施例2のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合4>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
0.990.012:平均粒子径100nm 1.5質量部

<配合5>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)

【0035】
[実施例3]
配合5の代りに下記配合6を用いた以外は、実施例2と同様にして、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有する実施例3のターポリン状のシートを得た。配合6には赤外線散乱着色剤として、平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子(表面を酸化ケイ素で被覆:酸化チタン92質量%、酸化ケイ素8質量%)を用いた。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合6>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
酸化チタン:平均粒子径1000nm 3質量部

【0036】
[実施例4]
配合5の代りに下記配合7を用いた以外は、実施例2と同様にして、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有する実施例4のターポリン状のシートを得た。配合7には赤外線散乱着色剤として、平均粒子径20nmのスズドープ酸化インジウム(ITO)粒子を用いた。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合7>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
ITO:平均粒子径20nm 3質量部
【0037】
[実施例5]
配合2の代わりに下記配合8を用いた以外は実施例1と同様にして、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有する実施例5のターポリン状のシートを得た。配合8にはサーモクロミック材料として、バナジウムの一部をモリブデンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.965Mo0.035粒子(置換割合:3.5原子%、転移温度:30℃)を用いた。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合8>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
0.965Mo0.0352:平均粒子径100nm 5質量部

【0038】
実施例1〜5のシートは、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造の近赤外線遮蔽層を有するシートである。海島分散構造の海成分および島成分のいずれか一方が、サーモクロミック材料を含んで可変遮熱機能を有し、温度の高低にかかわらず可視光の透過率にはほとんど差が無かったが、近赤外線遮蔽効果は熱により変化し、低温時は近赤外線の透過率が高く、高温時に低い特性を示した。その結果採光性に優れ、夏季の遮熱性に優れ、冬季は太陽輻射に含まれる近赤外線を取り込む昇温性を有するシートであった。島成分にサーモクロミック材料を含む実施例1と、海成分にサーモクロミック材料を含む実施例2を比較すると、実施例1の方が採光性に優れており、実施例2は夏季の遮熱性がやや優れていた。島成分に赤外線散乱着色剤として酸化チタン粒子を含み、海成分にサーモクロミック材料を含む実施例3は、実施例2と比較して採光性は低下するものの、夏季の遮熱性に優れており、また、実施例1及び2に比べて冬季の日没後の温度低下が少ない保温性を有していた。島成分に赤外線散乱着色剤としてスズドープ酸化インジウム粒子を含み、海成分にサーモクロミック材料を含む実施例4も、実施例3と同様の特性を示したが、実施例3よりも採光性に優れ、冬季の昇温性も優れていた。実施例5は実施例1よりも転移温度の低いサーモクロミック材料を用いた(実施例1の41℃に対して実施例5は30℃)構成であり、実施例1に比べて冬季の昇温性がやや低いものの、夏季の遮熱性は優っていた。
【0039】
[実施例6]
下記配合9のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合10の赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液6を得た。配合9において、サーモクロミック材料として、バナジウムの一部をタングステンで置き換え、表面を酸化ケイ素で被覆(サーモクロミック材料94質量%、酸化ケイ素6質量%)した、平均粒子径100nmのV0.990.01粒子(置換割合:1原子%、転移温度:41℃)を用い、配合10には赤外線散乱着色剤として平均粒子径600nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色:ルチル型)粒子を用いた。この樹脂混合物液6の液バス中に下記基布2を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布2の両面への付着、および内部含浸した状態で、非相溶樹脂混合物液6が320g/m付着して、海島構造を有する近赤外線遮蔽層が形成された帆布状のシートを得た。この近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂が黄色の島成分を構成しており、サーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は8.5μmであった。このシートの、鏡面エンボス処理を施した平滑な側の近赤外線遮蔽層上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で1分間乾燥した。これによって片面に塗布量:5g/mの防汚層が形成された実施例6のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合9>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
0.990.01:平均粒子径100nm 1.5質量部
<配合10>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
Cr−Sb−Tiの複合酸化物:平均粒子径600nm 3質量部

(基布2)
ポリエステル295.3dtex(20番手)短繊維紡績糸を用いた非粗目状平織布
密度 たて(経糸) 55本/インチ よこ(緯糸) 48本/インチ
【0040】
実施例6は短繊維紡績糸からなる非粗目状平織布を基布として用い、基布両面への付着、および内部含浸した状態で黄色に彩色した近赤外線遮蔽層を有するシートである。採光性は、実施例1〜5(粗目状平織布を基布として用い近赤外線遮蔽層に彩色していない)に及ばないものの、テント倉庫に用いた場合、日中であれば照明無しで作業するのに十分な光線透過率を有しており、夏季の遮熱性に優れ、冬季は太陽輻射に含まれる近赤外線を取り込む昇温性を有するシートであった。
【0041】
[比較例1]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比1を成型し、基布1の両面に熱圧着により積層して、ターポリン状のシートを得た。次に、シートの一方の側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、比較例1のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
比較例1のシートは、サーモクロミック材料を含む樹脂層を有さないため、採光性は非常に高いが、夏季の遮熱性を示さないシートであった。
【0043】
[比較例2]
配合4のサーモクロミック材料含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比2−1を成型した。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比2−2を成型した。次いで、得られたフィルム比2−1とフィルム比2−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状のシートを得た。次に、フィルム比2−1を積層した側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、比較例2のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
比較例2のシートは、フィルム比2−1にサーモクロミック材料を含み、低温時に比べて高温時の近赤外線透過率が低い特性を示し、夏季の遮熱性を有し、冬季は昇温性を示すシートであった。しかし、フィルム比2−1が海島構造を有さず、フィルム全体にサーモクロミック材料を含むため、実施例1や実施例2のシートに比べて、採光性の劣るシートであった。
【0045】
[比較例3]
配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合7の赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量部加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物比3を得た。この非相溶樹脂混合物比3を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比3−1を成型した。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比3−2を成型した。次いで、得られたフィルム比3−1とフィルム比3−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状のシートを得た。フィルム3−1を顕微鏡観察すると、赤外線散乱着色剤スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は6.1μmであった。次いで、フィルム比3−1を積層した側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、比較例3のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
比較例3のシートは、実施例4の海成分からサーモクロミック材料を省略した構成である。フィルム比3−1が海島構造を有し、島成分に赤外線散乱着色剤を含むが、海成分にサーモクロミック材料を含まないため、熱による近赤外線遮蔽効果の変化はみられず、夏季の遮熱性は実施例4に比べて大きく劣っていた。
【0047】
[比較例4]
下記配合11の赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比4−1を成型した。配合11には赤外線散乱着色剤として、平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子(表面を酸化ケイ素で被覆:酸化チタン92質量%、酸化ケイ素8質量%)を用いた。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比4−2を成型した。次いで、得られたフィルム比4−1とフィルム比4−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状のシートを得た。次に、フィルム比4−1を積層した側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、比較例4のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合11>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
酸化チタン:平均粒子径1000nm 0.5質量部
【0048】
比較例4のシートは、フィルム比4−1に赤外線散乱着色剤として酸化チタン粒子を含むシートである。面積あたりの酸化チタン含有量は実施例3と同等であるが、サーモクロミック材料を含まないことから、熱による近赤外線遮蔽効果の変化がなく、夏季の遮熱性は実施例3より劣っていた。
【0049】
[比較例5]
下記配合12の赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−1を成型した。配合12には赤外線散乱着色剤として、平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子(表面を酸化ケイ素で被覆:酸化チタン92質量%、酸化ケイ素8質量%)を用いた。一方、配合1の軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−2を成型した。次いで、得られたフィルム比5−1とフィルム比5−2の中間に基布1を挿入し、熱圧着により積層して、ターポリン状のシートを得た。次に、フィルム比5−1を積層した側に、実施例1と同様にして防汚層を形成して、比較例5のシートを得た。このシートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合12>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
酸化チタン:平均粒子径1000nm 10質量部

【0050】
比較例5のシートは、比較例4と同様フィルム比5−1に赤外線散乱着色剤として酸化チタン粒子を含むシートである。酸化チタン粒子の含有量を大幅に増したことで、夏季の遮熱性は実施例3と同等となったが、実施例3に比べて採光性は大幅に劣り、また、フィルム比5−1が海島構造を有さず、サーミクロミック材料も含まないため、熱による近赤外線遮蔽効果の変化がなく、冬季の昇温性も大幅に劣っていた。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の可変遮熱性採光シートは、夏季の炎天下においては太陽輻射に含まれる近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季の低温時には近赤外線を透過して熱を取り込むことが出来、さらに夏冬通して日中は照明無しに作業する事が可能な採光性を有すため、テント倉庫、イベント用大型テント、災害時用テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:可変遮熱性採光シート
2:海島構造を有する近赤外線遮蔽層
3:島成分
3−1:サーモクロミック材料を含む島成分
3−2:サーモクロミックを含まない島成分
3−3:サーモクロミックを含まず赤外線散乱着色剤を含む島成分
4:海成分
4−1:サーモクロミック材料を含む海成分
4−2:サーモクロミックを含まない海成分
4−3:サーモクロミックを含まず赤外線散乱着色剤を含む海成分
5:防汚層
6:繊維基布
7:海島構造を有さない樹脂層
8:サーモクロミック材料
9:赤外線散乱着色剤
10:小型テント
11:実施例・比較例で作成したシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、前記サーモクロミック材料を含まない合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成され、かつ、熱で近赤外線遮蔽効果が変化する樹脂層であることを特徴とする、可変遮熱性採光シート。
【請求項2】
前記近赤外線遮蔽層が、前記サーモクロミック材料を含む合成樹脂と、赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との非相溶混合体からなる海島分散構造によって形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の可変遮熱性採光シート。
【請求項3】
前記海島分散構造において、島成分が前記サーモクロミック材料を含んでいる、請求項1または2に記載の可変遮熱性採光シート。
【請求項4】
前記海島分散構造において、海成分が前記サーモクロミック材料を含んでいる、請求項1または2に記載の可変遮熱性採光シート。
【請求項5】
前記サーモクロミック材料が、以下の(1)〜(3)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含む、請求項1から4いずれか1項に記載の可変遮熱性採光シート。
(1)二酸化バナジウム。
(2)二酸化バナジウム結晶のバナジウム原子の一部が、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、スズ、レニウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、銅、クロム、鉄、ガリウム、亜鉛、アルミニウム、インジウム、およびチタンから選ばれた1種または2種以上の原子により置換率0.3〜10原子%で置換された二酸化バナジウム。
(3)TiOx(1.8≦x<2)で表される不定比酸化チタン。
【請求項6】
前記赤外線散乱着色剤が、以下の(1)、(2)の金属酸化物から選ばれた1種または2種以上を含む、請求項2から5いずれか1項に記載の可変遮熱性採光シート。
(1)チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズから選ばれた金属酸化物。
(2)チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種乃至4種の成分を含む、ルチル型、またはヘマタイト型、またはスピネル型構造を有する金属複合酸化物。
【請求項7】
前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体である、請求項1から6いずれか1項に記載の可変遮熱性採光シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141353(P2012−141353A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292220(P2010−292220)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】