説明

可搬式収納家具

【課題】 2以上の収納ユニットの連結パターンに応じた適切な箇所に締結具を挿着させる連結孔を形成でき、不要な連結孔の存在による据え付け後の2以上の収納ユニット全体としての美的外観の低下を防ぐことができる可搬式収納家具を提供すること。
【解決手段】 連結孔14は、2以上の収納ユニット2,2を相互に連結させるための締結具の一種であるボルトナットが挿着される貫通孔である。連結孔14を穿設する場合には、側板4、側板5又は背板6に予め凹設されている穿設用凹部11の内径と略等しい外径のドリルDRが任意の穿設用凹部11内へ向けて挿入される。かかるドリルDRが回転されると、穿設用凹部11の底部が切削されて貫通加工が施される。そして、この貫通加工によって穿設用凹部11が貫通すると、連結孔14が形成されるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の建物内に据え付け可能でかつ移設可能であって、据え付け後は建物に造り付けられた収納家具のような様相を呈する2以上の収納ユニットが連結された可搬式収納家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納家具には、建物の室内空間を仕切ったり又は壁面に設置されるなどして建物と一体的な様相で建て付けられるものが存在する。このような収納家具には、建物に直に造り付けるタイプのものと、完成した建物に後付け的に据え付けるタイプのものとがある。前者の造り付けタイプの収納家具は、建て付け後の移設が困難であったり、据え付けタイプの収納家具に比べて高価となってしまう。
【0003】
これに対して、据え付けタイプの収納家具にあっては、建物とは別体に形成された収納ユニットを並べて建物内に組立施工されるので、据え付け後の移設が容易である。例えば、実開昭54−29826号公報に記載されている収納家具によれば、複数の収納ユニットが相互に連結させて一つの収納家具を形作っている。
【0004】
また、このように複数の収納ユニットを相互に連結させる収納家具では、隣り合う収納ユニット同士を順次並べて収納家具全体を建物内に組立施工する場合に、各収納ユニット間に間隙を生じることがあり、かかる間隙の発生を回避するため、各収納ユニット同士を連結するボルトナットが挿着される貫通孔を、収納ユニットの側板に予め穿設する必要がある。
【特許文献1】実開昭54−29826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した各収納ユニットの連結パターンは収納家具が据え付けられる室内空間のレイアウトに応じて千差万別であるので、予め収納ユニットの側板に貫通孔を穿設してしまうと、そもそも他の収納ユニットが連結されない側面にも不要な貫通孔を穿設することとなって、かえって貫通孔の存在が収納家具の美的外観を損ねてしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、2以上の収納ユニットの連結パターンに応じた適切な箇所に締結具を挿着させる連結孔を形成でき、不要な連結孔の存在による据え付け後の2以上の収納ユニット全体としての美的外観の低下を防ぐことができる可搬式収納家具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の可搬式収納家具は、上面に設けられる天板、下面に設けられる地板、両側面に設けられる側板、及び、背面に設けられる背板の板材によって囲まれた収容空間を内部に有する少なくとも2以上の収納ユニットと、その2以上の収納ユニットを連結させる締結具が挿着される連結孔を穿設するため、前記側板および背板の幅方向各端部ごとに、前記側板および背板の内面の上側位置から下側位置にかけて上下方向略一列状に並ぶように予め凹設される複数の穿設用凹部とを備えており、前記2以上の収納ユニットが互いに連結されて据付場所に設置される場合、その2以上の収納ユニットの隣り合う板材同士が相互に密接され、その相互密接される板材同士の密接する部分に存在する前記穿設用凹部に貫通加工が施されて前記連結孔が穿設されることによって、1の収納ユニットの板材おける前記連結孔と他の収納ユニットの板材における前記連結孔とが互いに連通され、その互いに連通する連結孔に締結具が挿着されることによって、前記2以上の収納ユニットが連結されるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の可搬式収納家具によれば、2以上の収納ユニットが据付場所に設置される場合における各収納ユニット同士の連結パターンに応じて、その2以上の収納ユニットを連結させるのに必要な穿設用凹部を貫通させて連結孔を穿設することができるという効果がある。従って、2以上の収納ユニットには不要な連結孔が予め穿設されずに済むので、据え付け後の2以上の収納ユニット全体としての美的外観を損なわずに済むという効果がある。
【0009】
また、締結具を挿着させる連結孔が穿設可能な箇所には、複数の穿設用凹部が側板および背板に予め凹設されているので、収納ユニットの据付時に作業者が不適当な連結孔を無闇に穿孔させてしまう不具合も防止でき、連結孔の貫通加工のための目印および下穴として穿設用凹部を利用でき、見た目にも綺麗な連結孔を穿設できるという効果がある。
【0010】
請求項2記載の可搬式収納家具は、請求項1記載の可搬式収納家具において、前記2以上の収納ユニットとは別体に形成され、前記側板又は背板に対して着脱可能に形成され、その側板又は背板に取着される場合にはその側板又は背板の外面から突出され且つ前記収納ユニットの上下方向に連設される側部受材と、その側部受材に締結具を挿着させるため、前記側板又は背板の上下方向略一列状に並ぶ前記複数の穿設用凹部に対応つけて、その側部受材に貫通形成される挿着孔と、その挿着孔に対して締結具が挿着されて前記側部受材が前記側板又は背板に取着される場合に、前記側板又は背板の外面から前記収納ユニットの据付場所の壁面へ向けて延設されるようにして前記側部受材に着接されて、据付場所の壁面と前記側板又は背板との間に生じる空隙に掩覆されるフィラー部材と、そのフィラー部材が前記側部受材に着接される場合に据付場所の壁面に当接されることにより弾性変形されてその壁面に密着されるように前記フィラー部材の先端部に設けられるパッキン部材とを備えている。
【0011】
請求項2記載の可搬式収納家具によれば、請求項1又は2に記載の可搬式収納家具の奏する効果に加え、フィラー部材は、収納ユニットが据え付けられる据付場所の壁面と収納ユニットの側板又は背板との間に生じる空隙を掩覆するので、本可搬式収納家具を据付場所に造り付けられた家具のように装わせることができるという効果がある。
【0012】
また、フィラー部材が着接される側部受材は、自らに貫通形成される挿着孔が収納ユニットの穿設用凹部を貫通加工させた連結孔と連通され、互いに連通する連結孔と挿着孔とに締結具を挿着させることで、収納ユニットの側板又は背板に取着される。つまり、側部受材を収納ユニットに取着する場合には、2以上の収納ユニットを連結するための連結孔を流用できるという効果がある。
【0013】
しかも、フィラー部材の先端部はパッキン部材を介して据付場所の壁面に当接されるので、かかる壁面の損傷を防止できるという効果がある。よって、例えば、収納ユニットを後々別の据付パターンで設置し直す場合に元の据付場所の壁面の損傷を補修する手間を省くことができる。また、パッキン部材が弾性変形されて据付場所の壁面に密着されるので、フィラー部材の先端部と据付場所の壁面との間に僅かな空隙が生じることも抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の可搬式収納家具は、請求項1又は2に記載の可搬式収納家具において、据付場所の天井面へ向けて突出するように前記天板上面に立設される上部受材と、その上部受材と据付場所の天井面との間の空隙を掩覆するため、その空隙より板幅が大きく且つ前記天板上面から天井面までの幅より板幅が小さく形成され、自らの上端面が据付場所の天井面に当接される状態で前記上部受材の外面に着接される主幕板と、その主幕板下端面と前記天板上面との間から露出する前記上部受材を掩覆させるため、その露出部分より板幅が大きく、前記上部受材の突出長さより板幅が小さく、及び、前記主幕板より板幅が小さく形成され、自らの下端面が前記天板上面に当接される状態で前記主幕板の外面に着接される副幕板とを備えている。
【0015】
請求項3記載の可搬式収納家具によれば、請求項1又は2に記載の可搬式収納家具の奏する効果に加え、上部受材と据付場所の天井面との間の空隙は主幕板によって掩覆され、主幕板と収納ユニットの天板の上面との間から露出する部分は副幕板によって掩覆されるので、更に、本可搬式収納家具を据付場所に造り付けられた家具のように装わせることができるという効果がある。また、主幕板および副幕板を交互に重ね合わせることで、収納ユニットの天板上面と据付場所の天井面との間の空隙を掩覆するので、かかる空隙の寸法に合わせて幕板を裁断する必要もなく、作業を簡素化できるという効果もある。
【0016】
請求項4記載の可搬式収納家具は、請求項1から3のいずれかに記載の可搬式収納家具において、前記主幕板は、前記2以上の収納ユニットが連結される場合に、その各収納ユニットごとの前記上部受材の外面にそれぞれ跨って着接され、前記副幕板は、前記2以上の収納ユニットが連結される場合に、これら2以上の収納ユニットの各天板上面と前記主幕板との間から露出する部分をまとめて掩覆するように、その主幕板に着接される。
【0017】
請求項4記載の可搬式収納家具は、請求項1から3のいずれかに記載の可搬式収納家具の奏する効果に加え、2以上の収納ユニットが連結された場合、これらの全ての収納ユニットが据付場所の天井面との間に生じる空隙を、たった一組の主幕板および副幕板によってまとめて掩覆することができるという効果がある。このため、各収納ユニット毎に幕板が途切れることがないので、連結された2以上の収納ユニットに、その据付場所に一体的に造り付けられた造り付けの収納家具のような外観を付与できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の可搬式収納家具の一実施例である組立収納家具1(図8参照)を構成する収納ユニット2,2の外観斜視図であって、図中では、収納ユニット2,2の前面に取り付けられる扉板の図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、収納ユニット2は、その上面に設けられる天板3と、その天板3の幅方向両端(図1左右両側)の下面に連設され収納ユニット2の左右両側面に設けられる左右一対の側板4,5と、その側板4,5の幅方向一端(図1奥側)に連設され収納ユニット2の背面に設けられる背板6と、その背板6及び側板4,5の下端部と連設され収納ユニット2の下面に設けられる地板7とを備えている。
【0020】
これらの天板3、側板4,5、背板6及び地板7に囲まれることによって、収納ユニット2の内部には収納空間が形成されている。天板3の上面には、その天板3の四辺の縁端より若干内側位置から天板3の四辺と略平行に4枚の上部受材8が直上へ向けて突出するように立設されている。これら4枚の上部受材8は互いの幅方向両端部にて連設されており、上面視略ロ字形の枠状体9となるように組立てられている。
【0021】
枠状体9の内周部分における四隅付近にはアジャスタ10がそれぞれ配設されている。これら4基のアジャスタ10は、それぞれ天板3の上面から直上方向に突出されており、各アジャスタ10の上端部には回動自在な円盤10a(図3参照)が設けられている。また、側板4の幅方向両端部にはそれぞれ3箇所ずつ穿設用凹部11が、その側板4の上下方向に略一列状に並ぶようにして、側板4の上側と、中間と、下側とに順に凹設されている。
【0022】
図2は、収納ユニット2の正面図であって、側板4,5における穿設用凹部11の凹設箇所のみを部分的に断面視している。図2に示すように、背板6の幅方向両端部(図2の左右両側)にもそれぞれ3箇所ずつ穿設用凹部11が、その背板6の上下方向に略一列状に並ぶようにして、背板6の上側と、中間と、下側とに順に凹設されている。
【0023】
図3は、図2のIII−III線における断面図であって、図中では扉板12が収納ユニット2の前面に取着された状態を図示している。図3に示すように、側板5の幅方向両端部(図3の左右両側)にもそれぞれ3箇所ずつ穿設用凹部11が、その側板5の上下方向に略一列状に並ぶようにして、側板5の上側と、中間と、下側とに順に凹設されている。また、天板3には各アジャスタ10の取付位置に天板3の板厚方向に貫通する貫通孔がそれぞれ形成され、この各貫通孔の内周には埋込ナット13がそれぞれ嵌挿されている。
【0024】
埋込ナット13にはアジャスタ10における軸状部である雄ねじ部10bが螺嵌されており、この雄ねじ部10bの下端にはねじ回し工具の刃先を係合可能なドライバー溝(図示せず)が凹設されている。このアジャスタ10によれば、天板3の下方からアジャスタ10の雄ねじ部10bのドライバー溝にねじ回し工具の刃先を係合させて、アジャスタ10の雄ねじ部10bを回動させると、アジャスタ10の円盤10aを上下動させて、天板10aを据付場所の天井面に圧接させることができる。
【0025】
再び、図2に戻って説明すると、側板4,5及び背板6に凹設される合計18個の穿設用凹部11のうち、上側箇所の6個分は収納ユニット2下端から高さH1に、中間箇所の6個分は高さH2に、下側箇所の6個分は高さH3に、それぞれ凹設されている。この高さH1,H2,H3における収納ユニット2の横断面はいずれも同じ形状であって、後述する図4(a)に図示される。
【0026】
図4(a)は、図2のIV1−IV1線、IV2−IV2線およびIV3−IV3線における横断面のいずれにも対応する断面図である。図4(a)に示すように、穿設用凹部11は何れも側板4,5及び背板6に非貫通状態で凹設されている。ここで、穿設用凹部11は連結孔14を穿設するための箇所を示す目印となる非貫通状態の下穴であって、かかる穿設用凹部11に貫通加工が施されると連結孔14(図4(c)参照)が形成されるのである。
【0027】
図4(b)及び図4(c)は、図4(a)の部分的拡大図であって、連結孔14を穿設(穿孔)する貫通加工について説明する図である。特に、図4(b)は連結孔14の穿設前を示す部分的拡大図であり、図4(c)は連結孔14の穿設後を示す部分的拡大図である。ここで、図4(c)に示す連結孔14は、2以上の収納ユニット2,2を相互に連結させるための締結具の一種であるボルトナットが挿着される貫通孔である。
【0028】
このような連結孔14を穿設する場合には、図4(b)に示すように、側板4、側板5又は背板6に予め凹設されている穿設用凹部11の内径と略等しい外径のドリルDRが任意の穿設用凹部11内へ向けて挿入される。かかるドリルDRが回転されると、穿設用凹部11の底部が切削されて貫通加工が施される。そして、この貫通加工によって穿設用凹部11が貫通すると、図4(c)に示すように連結孔14が形成されるのである。
【0029】
なお、連結孔14は、組立収納家具1を据え付ける作業者が組立収納家具1の据付レイアウトに応じて事後的に加工するものである。つまり、組立収納家具1の各収納ユニット2にあっては全ての穿設用凹部11が未貫通の状態のままで出荷されるものであり、連結孔14の貫通加工は、建物の室内など組立収納家具1の据付現場や、各収納ユニット2の据え付けを請負った施工会社の工場などにおいて、収納ユニット2の製造工程とは異なる加工として行われる。
【0030】
図5は、連結孔14が穿設された3種類の収納ユニット2(以下「収納ユニット2A、収納ユニット2B、収納ユニット2C」ともいう。)を並べた状態を示す横断面図である。また、図6(a)は、3種類の収納ユニット2A,2B,2Cをボルトナット15を介して連結させた状態を示す横断面図である。まず、図5に示すように、収納ユニット2Aの側板5と収納ユニット2Bの側板4とは相互に密接され、これら収納ユニット2A,2Bの背板6,6と収納ユニット2Cの背板6とは相互に密接されている。
【0031】
ここで、収納ユニット2Aの側板5における全6個の穿設用凹部11および背板6における幅方向左側上下3個の穿設用凹部11、収納ユニット2Bの側板4における全6個の穿設用凹部11および背板6における幅方向右側上下3個の穿設用凹部11、並びに、収納ユニット2Cの背板における全6個の穿設用凹部11は、上記した貫通加工によって連結孔14とされている。
【0032】
そして、収納ユニット2Aの側板5における合計6個の連通孔14の各々は、収納ユニット2Bの側板4における連結孔14と1個ずつ連通され、この収納ユニット2A,2Bにおける背板6,6に穿設される合計6個の連通孔14の各々は、収納ユニット2Cの背板6における連通孔14と1個ずつ連通されている。
【0033】
そして、図6(a)に示すように、収納ユニット2A及び収納ユニット2Bにて互いに連通し合う2個一組の連結孔14,14にはそれぞれボルトナット15が挿着され、これらのボルトナット15を介して収納ユニット2A,2Bが連結される。また、収納ユニット2A,2B及び収納ユニット2Cにて互いに連通し合う2個一組の連通孔14,14にもボルトナット15が挿着され、これらのボルトナット15を介して収納ユニット2A,2B,2Cが連結される。
【0034】
図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。図6(b)に示すように、ボルトナット15は、フランジ部が一端側に周設される筒状体であって内周に雌ねじが螺刻される埋込ナット15aと、雄ねじが外周に螺刻された軸状体の一端に皿状の頭部を有するボルト15bとから構成される締結具である。このボルトナット15によれば収納ユニット2A,2B,2Cを相互に連結させる場合、埋込ナット15aは相互に連通する一対の連結孔14,14の一方に挿入されて、埋込ナット15aのフランジ部は連結孔14の縁部に係合される。一方、一対の連結孔14,14の他方にはボルト15bの軸部が挿入されて、かかる軸状体の雄ねじは埋込ナット15aの雌ねじに螺嵌され、ボルト15bの頭部は連結孔14の縁部に係合される。
【0035】
図7は、上記のように連結された収納ユニット2A,2B,2Cから構成される組立収納家具1の分解状態を示す正面図である。図7に示すように、組立収納家具1は、上述した収納ユニット2の他に、主幕板16と、副幕板17と、側部受材18と、フィラー部材19とを備えている。主幕板16は横方向に長尺な正面視矩形状の化粧板であって、その縦方向の板幅が副幕板17に比べて大きく形成されている。また、副幕板17は、主幕板16と横方向に略等しい長さの正面視矩形状の化粧板である。更に、フィラー部材19は縦方向に長尺な正面視略矩形状の化粧板である。
【0036】
そして、主幕板16及び副幕板17は組立収納家具1の天板3上面と据付場所の天井面CFとの間に生じる幅W1の空隙を、フィラー部材19は収納ユニット2Bの側板5と据付場所の壁面WFとの間に生じる幅W2の空隙を、それぞれ掩覆する化粧板である。なお、図7では、収納ユニット2Bの側板5と壁面WFとの間に生じる空隙を掩覆するためにフィラー部材19を使用したが、かかるフィラー部材19は、例えば、側板4又は背板6と壁面WFとの間に空隙が生じる場合にも、かかる空隙を掩覆させるために使用できる。
【0037】
組立収納家具1を据付場所に据え付ける場合、まず、収納ユニット2A,2B,2Cの各アジャスタ10が天井面CFへ向けて突出され、その天井面CFに円盤10aの上面が圧接されて、収納ユニット2A,2B,2Cが据付場所に固定される。このアジャスタ10が天井面CFに圧接された状態では、収納ユニット2A,2B,2Cの上部受材8の上端と天井面CFとの間には幅W1より小さい幅W3の空隙が生じている(W1>W3)。
【0038】
ここで、主幕板16は、その板幅が上記した幅W1の空隙より小さく且つ幅W3の空隙より大きく形成されるので、上部受材8と天井面CFとの間に生じる幅W3の空隙を掩覆することができる。具体的には、主幕板16の上端が天井面CFに当接され且つ主幕板16の下端が天板3の上面から僅かに幅W4だけ上方に離間した状態で、上部受材8の外面に重ね合わせられる。この状態で、釘打ち機から射出される図示しないピン又は釘が主幕板16の外面からその主幕板16を貫通させるようにして上部受材8に打ち込まれると、この主幕板16は上部受材8の外面に着接されて、幅W3の空隙が掩覆される。
【0039】
そして、主幕板16が上部受材8に着接されると、主幕板16の下端と各天板3上面との間には幅W4の空隙が生じて上部受材8が露出される。この上部受材8を露出させる空隙は副幕板17によって掩覆される。ここで、副幕板17は、その板幅が上記した幅W4より大きく、上部受材8の天板3上面からの突出長さより小さく、及び、主幕板16の板幅より小さく形成される。
【0040】
よって、副幕板17の下端が天板3の上面に当接されると、この副幕板17の上端部分が主幕板16の下端部分の外面に重なり合わさった状態で、副幕板17は、上部受材8が露出される幅W4の空隙を掩覆する。この状態で、釘打ち機から射出される図示しないピン又は釘が主幕板16と副幕板17との重畳部分に副幕板17の外面側からその幕板16,17を貫通させるようにして上部受材8に打ち込まれると、この副幕板17は主幕板16の外面に着接される。
【0041】
図8は、据え付け完成状態における組立収納家具1の正面図であり、図9は、図8のIX−IX線における縦断面図である。図8に示すように、上記のようにして主幕板16は、左右に連結された収納ユニット2A,2Bの天板3,3の前面側から立設される上部受材8,8の外面にそれぞれ跨った状態で着接される。そして、副幕板17は、左右に連結された収納ユニット2A,2Bの天板3,3の上面と主幕板16の下端との間からの露出部分をまとめて掩覆するように主幕板16の外面に着接される。
【0042】
また、収納ユニット2Aの天板3の左側から立設される上部受材8の外面にも主幕板16が着接され且つ主幕板16の外面に副幕板17が着接されている。更に、図9に示すように、収納ユニット2Cの天板3前面側から立設される上部受材8の外面にも主幕板16が着接され且つ主幕板16の外面に副幕板17が着接されている。これによって、収納ユニット2A,2B,2Cにおける天板3,3,3の上面と天井面CFとの間に生じる幅W1の空隙が掩覆されるので、もともと可搬式の収納ユニット2A,2B,2Cであっても建物に既設される収納家具のように据付場所の天井面CFと一体化されたような外観を装うことができる。
【0043】
ところで、天井面CFを形成する天井材は野縁(図示せず)に取着されており、この野縁は釣木などの吊下げ部材(図示せず)を介して建物内に吊下げられているので、天井面CFは、完全な水平面とはならずに僅かに波打ったような凹凸面状となってしまう。このため、天井面CFに主幕板16の上端が当接される場合には、ごく僅かな空隙(例えば略1mm以下の空隙)が天井面CFと主幕板16との間に部分的に生じてしまうことがある。このようなごく僅かな空隙は、決して主幕板16と天井面CFとの間の顕著な隙間として視覚されるものではないものの、かかる空隙によって主幕板16が天井面CFの凹凸に沿って波打つように見えてしまう。
【0044】
ところが、本実施例では、主幕板16の前面には横方向に細長い副幕板17が当着されているので、かかる副幕板17の外観によって、波打って見える主幕板16の外観であっても視覚的に副幕板17に沿って水平に延設されるような外観となるように補正することができる。このため、波打って見える主幕板16の外観を修正するため、主幕板16の上端を天井面CFの凹凸に適合するように加工する必要もない。
【0045】
図7に戻って説明する。収納ユニット2Bの側板5における外面には、側部受材18が取着されている。この側部受材18は、フィラー部材19を収納ユニット2の側板4、側板5、又は背板6に取り付けるための部材であって、図7では収納ユニット2Bの側板5の外面に取着されている。側部受材18はもともと収納ユニット2とは別体に形成される角材であり、側部受材18にはその幅方向に貫通する挿着孔18aが3箇所に形成されている。
【0046】
この3箇所の挿着孔18aは、ボルトナット15を挿着させるための貫通孔であって、側板4、側板5又は背板6に上下略一列状に並んだ3箇所一組の穿設用凹部11に対応つけて側部受材18の上側、中間、及び下側の順に形成されている。また、収納ユニット2Bの側板5前面側端部(図7手前側)の上中下3箇所に凹設される穿設用凹部11には貫通加工が施されており、収納ユニット2Bの側板5には上中下3箇所に連結孔14が穿設されている。
【0047】
この各連結孔14は、側部受材18における挿着孔18aと1個ずつ連通されており、互いに連通する連結孔14及び挿着孔18aにはそれぞれボルトナット15が挿着されて、側部受材18が収納ユニット2Bの側板5に着脱可能に取着されている。このように取着された側部受材18は、収納ユニット2Bの側板5の外面から壁面WF側(図7右側)へ向けて突出され、更に、収納ユニット2Bの下端から天板3の上面にまでかけて上下方向に連設された状態となる。なお、ボルトナット15の挿着状態については、後述する図10に示す具体的構成が図示されており、その説明については上記した図6(b)についての説明と同様であるので省略する。
【0048】
側部受材18は、組立収納家具1のうち据付場所の壁面WFと対向する収納ユニット2A,2B,2Cの側面又は背面に取着されるものであって、図7では壁面WFと対向する収納ユニット2Bの側板5に取着される。そして、収納ユニット2A,2B,2Cは、据付場所に据え付けられる場合に、側部受材18と壁面WFとの間に幅W11の空隙ができるように設置され、かかる空隙がフィラー部材19によって掩覆される。
【0049】
フィラー部材19は、天井面CFから床面FFまで達する長尺状の化粧板であって、その板幅が幅W2より若干小さく形成されている。このフィラー部材19には、壁面WF下端に添設される巾木Zに合致するように切欠される切欠部19aを除いて、フィラー部材19の一方の長辺全体にパッキン部材20が取着されている。このパッキン部材20は、弾性変形可能な合成樹脂で形成されており、フィラー部材19が側部受材18に取着される場合にフィラー部材19と壁面WFとの間に介在して壁面WFの損傷を防止する機能を有している。
【0050】
図10は、図8のX−X線における部分的な横断面図である。図10に示すように、フィラー部材19を収納ユニット2Bに取着する場合、そのフィラー部材19の左端が収納ユニット2Bにおける側板5の外面に当接され、パッキン部材20が壁面WFに当接され、フィラー部材19が壁面WFへ向けて延設されるようにして、かかるフィラー部材19が側部受材18の前面に重ね合わせられる。
【0051】
この状態で、釘打ち機から射出される図示しないピン又は釘がフィラー部材19を貫通して側部受材18に打ち込まれると、このフィラー部材19は側部受材18の外面に着接されて、幅W11の空隙がフィラー部材19によって掩覆される。ここで、パッキン部材20は弾性変形された状態で壁面WFに当接されるので、この弾性変形に伴うパッキン部材20の弾性復元力によってへ壁面WFにパッキン部材20が密着させられる。この密着によって、壁面WFとフィラー部材19との接触面間に僅かな隙間が生じることも回避されるのである。
【0052】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
例えば、本実施例では、図6(a)に示すように、収納ユニット2Aの側板5と収納ユニット2Bの側板4とを密接させてボルトナット15で連結すると共に、収納ユニット2A,2Bの背板6,6と収納ユニット2Cの背板6とを密接させてボルトナット15で連結することによって、収納ユニット2A,2B,2Cを連結した。しかしながら、これら収納ユニット2A,2B,2Cの連結パターンは必ずしもこれに限定されるものではなく、必要に応じて好みのレイアウトに変更することができる。
【0054】
また、例えば、本実施例では、パッキン部材20が当接される壁面WFの上端部は、当該壁面WFと天井面CFと接合部分が略直角状に交差するものであった(図7及び図8参照)。しかしながら、パッキン部材20が当接される壁面WFの上端部と天井面CFとの接合部分の形状は、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図10(b)に示すように、壁面WFの上端部に目透かしが形成されていても良い。
【0055】
具体的には、壁面WFの上端部に目透かしが設けられる場合、当該壁面WFの上端部には断面視略コ字形の凹部CCが形成されることとなる。そこで、かかる場合には、パッキン部材20における凹部CCの下縁に対応する部分(図10(b)中の矢印Pの箇所)に水平な切れ目を入れることによって、パッキン部材20の上端部20aを、壁面WFの凹部CCに嵌合させれば、かかる目透かしによる凹部CCすらも隙間なく閉塞させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例である組立収納家具を構成する2つの収納ユニットの外観斜視図である。
【図2】収納ユニットの正面図であって、収納ユニットの側板における穿設用凹部の凹設箇所のみを部分的に断面視した図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図であって、収納ユニットの前面に扉板が取着された状態を示した図である。
【図4】(a)は、図2のIV1−IV1線、IV2−IV2線およびIV3−IV3線における横断面のいずれにも対応する断面図であり、(b)及び(c)は、連結孔を穿設するための貫通加工について説明する図である。
【図5】連結孔が穿設された3種類の収納ユニットを並べた状態を示す横断面図である。
【図6】(a)は、3種類の収納ユニットを連結させた状態を示す横断面図であり、(b)は、(a)の一部拡大図である。
【図7】組立収納家具の分解状態を示す正面図である。
【図8】据え付け完成状態における組立収納家具1の正面図である。
【図9】図8のIX−IX線における縦断面図である。
【図10】図8のX−X線における部分的な横断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 組立収納家具(可搬式収納家具)
2,2A,2B,2C 収納ユニット
3 天板
4,5 側板
6 背板
7 地板
8 上部受材
9 枠状体
10 アジャスタ
11 穿設用凹部
12 扉板
13 埋込ナット
14 連結孔
15 ボルトナット(締結具)
16 主幕板
17 副幕板
18 側部受材
19 フィラー部材
20 パッキン部材
CF 天井面
WF 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に設けられる天板、下面に設けられる地板、両側面に設けられる側板、及び、背面に設けられる背板の板材によって囲まれた収容空間を内部に有する少なくとも2以上の収納ユニットと、
その2以上の収納ユニットを連結させる締結具が挿着される連結孔を穿設するため、前記側板および背板の幅方向各端部ごとに、前記側板および背板の内面の上側位置から下側位置にかけて上下方向略一列状に並ぶように予め凹設される複数の穿設用凹部とを備えており、
前記2以上の収納ユニットが互いに連結されて据付場所に設置される場合、
その2以上の収納ユニットの隣り合う板材同士が相互に密接され、
その相互密接される板材同士の密接する部分に存在する前記穿設用凹部に貫通加工が施されて前記連結孔が穿設されることによって、1の収納ユニットの板材おける前記連結孔と他の収納ユニットの板材における前記連結孔とが互いに連通され、
その互いに連通する連結孔に締結具が挿着されることによって、前記2以上の収納ユニットが連結されるものであることを特徴とする可搬式収納家具。
【請求項2】
前記2以上の収納ユニットとは別体に形成され、前記側板又は背板に対して着脱可能に形成され、その側板又は背板に取着される場合にはその側板又は背板の外面から突出され且つ前記収納ユニットの上下方向に連設される側部受材と、
その側部受材に締結具を挿着させるため、前記側板又は背板の上下方向略一列状に並ぶ前記複数の穿設用凹部に対応つけて、その側部受材に貫通形成される挿着孔と、
その挿着孔に対して締結具が挿着されて前記側部受材が前記側板又は背板に取着される場合に、前記側板又は背板の外面から前記収納ユニットの据付場所の壁面へ向けて延設されるようにして前記側部受材に着接されて、据付場所の壁面と前記側板又は背板との間に生じる空隙に掩覆されるフィラー部材と、
そのフィラー部材が前記側部受材に着接される場合に据付場所の壁面に当接されることにより弾性変形されてその壁面に密着されるように前記フィラー部材の先端部に設けられるパッキン部材とを備えていることを特徴とする請求項1記載の可搬式収納家具。
【請求項3】
据付場所の天井面へ向けて突出するように前記天板上面に立設される上部受材と、
その上部受材と据付場所の天井面との間の空隙を掩覆するため、その空隙より板幅が大きく且つ前記天板上面から天井面までの幅より板幅が小さく形成され、自らの上端面が据付場所の天井面に当接される状態で前記上部受材の外面に着接される主幕板と、
その主幕板下端面と前記天板上面との間から露出する前記上部受材を掩覆させるため、その露出部分より板幅が大きく、前記上部受材の突出長さより板幅が小さく、及び、前記主幕板より板幅が小さく形成され、自らの下端面が前記天板上面に当接される状態で前記主幕板の外面に着接される副幕板とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可搬式収納家具。
【請求項4】
前記主幕板は、前記2以上の収納ユニットが連結される場合に、その各収納ユニットごとの前記上部受材の外面にそれぞれ跨って着接され、
前記副幕板は、前記2以上の収納ユニットが連結される場合に、これら2以上の収納ユニットの各天板上面と前記主幕板との間から露出する部分をまとめて掩覆するように、その主幕板に着接されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の可搬式収納家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−167365(P2006−167365A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367904(P2004−367904)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(591221400)ニューハウス工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】