説明

可搬式空調器具

【課題】 簡単な構成で、安価にかつ容易に快適な仮眠や睡眠を提供できるようにする。
【解決手段】 カバー体1の上部に風量調節可能および正逆転可能なファン2が設けられて可搬式空調器具3を構成する。カバー体1は、マット5上の就寝姿勢の人体6の上方および横側方と足元の奥側とを覆うように箱形状に形成し、就寝姿勢の人体6の上部とカバー体1の下面との間に所定の間隙を確保できるように構成する。ファン2はカバー体1の奥側の上方に設けるとともに、そのファン2の下方に安全カバーを設ける。可搬式空調器具3を、ベッド4に敷かれたマット5の上方に載置し、ファン2の駆動により、カバー体1内の人体6に、間隙を通して頭部側から足元側に向けて風を供給し、睡眠や仮眠を快適に行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼寝などの仮眠や夜間の睡眠を快適にできるようにするための可搬式空調器具に関する。
【背景技術】
【0002】
夏期などの暑い時期などにあって、昼寝などの仮眠や夜間の睡眠を快適に行うようにする場合、従来一般に、部屋全体を冷房するとか、扇風機を用いるなどしている。
【0003】
ところが、部屋全体を空調する場合、電力消費量が増大する欠点があり、また、住居が隣接している場合、室外機からの熱風により迷惑をかけるという問題があった。家族が多い場合、各寝室ごとに個別に冷房を使用するため、上述の問題はより大きくなっていた。
【0004】
扇風機を使用する場合には、風が拡散するために、微風状態では体全体に一様に風を供給しづらく、強い風が顔に当たって不快感を生じたり、長時間体に当たって手足や体がだるくなるといった不都合があった。また、新たに冷房装置などを設置する場合、配管工事や電気工事が必要で面倒であった。
【0005】
また、次のような従来例も知られている。
【0006】
(1)第1従来例
通気及び送風機能付きベッドであって、ベッドマットのベッド面の表面に深くて広い溝が形成され、その溝に通気口が設けられている。ベッドマットの側面に穴が形成され、ベッドマットに近接して設けられるヘッドボードに、ベッドマットの穴に対応する穴が形成され、そのヘッドボードの穴内にファンが設けられ、ファンによって発生した風が、ベッドマット内部に進入し、ベッド面の通気口から排出されるように構成されている(特許文献1参照)。
【0007】
(2)第2従来例
仮眠等を行うための睡眠カプセルであって、カプセル本体の内部が就寝空間である睡眠室に構成され、調和空気を睡眠室に供給する給気系部と、睡眠室の室内空気を吸引する還気系部と、外気を取り入れる外気系部と、排熱を放出する排熱系部とから空調系統が構成されている。
【0008】
給気系部には空調ファンユニットが設けられ、排熱系部には排熱ファンユニットが設けられ、睡眠室を冷暖房するように構成されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3092744号公報(図1、図2、図3)
【特許文献2】特開2002−357351号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来例のものでは、それぞれ次のような欠点があった。
【0010】
(1)第1従来例の欠点
ベッドマット上に人体が就寝姿勢で横たえるとともにそこに蒲団を掛けたりするために、ベッドマットの穴が塞がれたり通気抵抗が大きくなったりするなど、人体に十分に風を供給しづらい欠点があった。また、穴を塞いでしまうために、ベッドマット上にシーツを敷くことができず、実用上でも問題があった。
【0011】
(2)第2従来例の欠点
個別に睡眠室を構成するために、設備が大掛かりになって各家庭では容易に適用できない欠点があった。また、電力消費量も増大し、イニシャルコストおよびランニングコストのいずれも増大して経済性が低い欠点があった。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、簡単な構成で、安価にかつ容易に快適な仮眠や睡眠を提供できるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、安全に使用できるようにすることを目的とし、請求項3に係る発明は、寝起きを行いやすいようにすることを目的とし、請求項4に係る発明は、寝起きを行いやすくできるとともに使用者の身長や好みに良好に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明の可搬式空調器具は、上述のような目的を達成するために、
就寝姿勢の人体の上方および横側方を覆うカバー体と、
前記カバー体に設けられて、前記カバー体内の人体に風を供給する給気装置とを備えて構成する。
【0014】
カバー体としては、プラスチック材料などで箱形に成形したものとか、ビニール等を持ち運び可能な支持枠やキャスター車輪を備えた支持枠に取り付けて箱形に成形したものなど、各種の構成のものが使用できる。
【0015】
(作用・効果)
請求項1に係る発明の可搬式空調器具の構成によれば、仮眠や睡眠に際し、ベッド上のマットとか畳に敷いた蒲団などの寝具とか畳上などの就寝姿勢の人体に対して被せるようにカバー体を配置して給気装置を駆動し、これにより、就寝姿勢の人体の上部とカバー体の下面との間に所定の間隙を確保し、その間隙を通じて風を供給することができる。
【0016】
したがって、仮眠や睡眠に際して広い部屋の中で就寝する場合でも、風が流れる断面積を小さくできるから、給気装置で発生する風を微風状態にしても、部屋全体に流す場合よりも流速を速くして、小さな電力消費量でかつより静粛な状態で頭部の周囲などに効果的に風を供給でき、簡単な構成で、安価にかつ容易に快適な仮眠や睡眠を提供できる。
【0017】
また、従来の冷房装置などと異なり、配管工事や電気工事が不要で、プラグをコンセントに差し込むだけで使用することができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の位置を固定する固定機構を備えて構成する。
【0019】
固定機構としては、例えば、ベッドの両脇と足元奥側でベッドとマットなどとの間に挟み込んで蒲団などの落下を防止する簡易なアングル形状の支持具を利用してカバー体の下部を固定するような構成とか、キャスター車輪を備えたものでは、そのキャスター車輪に固定用のブレーキを備えた構成とか、ベッドの枠に着脱可能に挟持して固定する構成など、各種の構成が適用できる。
【0020】
(作用・効果)
請求項2に係る発明の可搬式空調器具の構成によれば、寝返りなどの就寝時の人体の動きによって人体がカバー体に接触しても、器具が不測に転倒したり、カバー体がベッドから落下したりすることを回避できる。
【0021】
したがって、安全に使用でき、快適な仮眠や睡眠を良好に確保できる。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1または2に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の人体の上半身側を覆う部分を、上半身の上方を開放する開放位置と上半身の上方を覆う使用位置とに変位可能に構成する。
【0023】
(作用・効果)
請求項3に係る発明の可搬式空調器具の構成によれば、寝起きに際して、カバー体の人体の上半身側を覆う部分を開放位置と使用位置とに変位させ、カバー体に邪魔されずに寝起きを行いやすくできる。
【0024】
また、請求項4に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1または2に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の人体の上半身側を覆う部分を、人体に対する覆い量を変更可能にスライド変位または伸縮可能に構成する。
【0025】
(作用・効果)
請求項4に係る発明の可搬式空調器具の構成によれば、カバー体の人体の上半身側を覆う部分の人体に対する覆い量を調節し、使用者個々の体格や好みに応じた状態にでき、また、その覆い量を大きくすることでカバー体が寝起きの邪魔にならないようにすることができる。
【0026】
したがって、寝起きを行いやすくできるとともに使用者の身長や好みに良好に対応でき、実用性に優れる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の可搬式空調器具の構成によれば、仮眠や睡眠に際し、ベッド上のマットとか畳に敷いた蒲団などの寝具とか畳上などの就寝姿勢の人体に対して被せるようにカバー体を配置して給気装置を駆動し、これにより、就寝姿勢の人体の上部とカバー体の下面との間に所定の間隙を確保し、その間隙を通じて風を供給することができ、仮眠や睡眠に際して広い部屋の中で就寝する場合でも、風が流れる断面積を小さくできるから、給気装置で発生する風を微風状態にしても、部屋全体に流す場合よりも流速を速くして、小さな電力消費量でかつより静粛な状態で頭部の周囲などに効果的に風を供給でき、簡単な構成で、安価にかつ容易に快適な仮眠や睡眠を提供できる。
【0028】
また、従来の冷房装置などと異なり、配管工事や電気工事が不要で、プラグをコンセントに差し込むだけで使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、この発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明に係る可搬式空調器具の実施例1を使用状態で示す正面図、図2は側面図であり、カバー体1の上部に給気装置としての風量調節可能および正逆転可能なファン2が設けられて可搬式空調器具3が構成され、その可搬式空調器具3が、ベッド4に敷かれたマット5の上方に載置されている。
【0031】
カバー体1は、マット5上の就寝姿勢の人体6の上方および横側方と足元の奥側とを覆うように箱形状に形成され、就寝姿勢の人体6の上部とカバー体1の下面との間に所定の間隙を確保できるように構成されている。奥側の一部は部分的に通気可能に構成するものでも良い。
【0032】
上記カバー体1の材料としては、薄いプラスチック板、薄い金属板、厚紙などが適用できる。耐久性、耐水性、硬度ならびにコストなどの面からプラスチック板が好適である。
【0033】
ファン2は、カバー体1の奥側の上方に設けられるとともに、そのファン2の下方に安全カバーが設けられ、カバー体1内の人体6に、間隙を通して頭部側から足元側に向けて風を供給するように構成されている。ファン2は、なるべく頭部から離れた位置に設置することが静粛な状態を実現する上で好ましい。
【0034】
カバー体1は、少なくとも人体6の肩から腰までの大部分を覆うことが快適性を高める上で好ましい。
【0035】
ベッド4の両脇と足元奥側それぞれにベッド4とマット5などとの間に挟み込んで蒲団(図示せず)の落下を防止する簡易なアングル形状の支持具7が設けられ、その支持具7を利用してカバー体1の下部が固定されている。この固定状態では、カバー体1により、掛け蒲団やタオルケットや毛布などの落下を防止することができる。この支持具7によりカバー体1をベッド4に固定する構成をして固定機構と称する。図中8は、ファン2に対する電気コードである。
【0036】
上記構成により、図3の正面図に示すように、マット5上に就寝する際に、その人体6や掛け蒲団やタオルケットや毛布などの上に、図1に示すように可搬式空調器具3を載置し、ファン2を駆動することにより、カバー体1内の下面と人体6との間に、間隙を通して頭部側から足元側に向けて風を供給し、睡眠や仮眠を快適に行うことができる。
【0037】
ファン2としては、前述の場合と逆方向に回転させ、図4(別の使用状態を示す正面図)に示すように、足元側から頭部側に向けて風を供給するようにしても良い。
【0038】
この場合、好ましい例として、ファン2の下方または上方にヒータを設け、冬期において温風を供給できるように構成しても良い。また、好ましい例として、ファン2の下方や周囲または上方に蓄冷材の収容部を設け、夏期において冷風を供給できるように構成しても良い。
【0039】
また、好ましい例として、この使用状態でファン2の上部を網などで覆うことにより、蚊などが入りにくいようにできる。
【0040】
なお、従来の空調機を弱冷房あるいは弱暖房状態で消費電力量を低減し、可搬式空調器具3を並用するようにしても良い。
【0041】
また、上記ファン2の近くでカバー体1に、持ち運び用の取っ手を設けても良い。
【0042】
また、ファン2の回転数は可変であっても良い。
【実施例2】
【0043】
図5は、本発明に係る可搬式空調器具の実施例2を使用状態で示す正面図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
【0044】
すなわち、カバー体1の人体の上半身側を覆う部分1aが、ファン2を設けた下半身側を覆う部分1bに、蝶番(図省略)を介して上下揺動可能に取り付けられている。これにより、カバー体1の人体の上半身側を覆う部分1aを、上半身の上方を開放する開放位置と上半身の上方を覆う使用位置とに変位し、可搬式空調器具3に邪魔されずに寝起きを容易に行えるように構成されている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付すことによりその説明は省略する。
【実施例3】
【0045】
図6は、本発明に係る可搬式空調器具の実施例3を使用状態で示す正面図であり、実施例1と異なるところは、次の通りである。
【0046】
すなわち、カバー体1の人体6の上半身側を覆う部分1aが、ファン2を設けた下半身側を覆う部分1bに、長手方向にスライド可能に外嵌されている。これにより、使用者の身長に合わせて長さを調節したり、使用者の好みに応じて人体6の上半身側に対する覆い量を調節したり、更には、寝起きを容易に行えるように構成されている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を付すことによりその説明は省略する。
【0047】
この実施例3において、上半身側を覆う部分1aを、下半身側を覆う部分1bに、長手方向にスライド可能に内嵌するように構成しても良い。
【0048】
本発明の実施例としては、図示しないが、次のように構成しても良い。
【0049】
(1)下半身側を覆う部分1bの上部に長手方向にスライド可能に挿入したU字状のパイプに、それをカーテンレールとして人体6の上方と両横側方を覆うビニール製などの布材あるいはプリーツ状の伸縮部材を取り付け、これによってカバー体1の人体6の上半身側を覆う部分1aを構成する。
【0050】
これにより、スライド式のカーテンのように構成したり伸縮可能に構成したりして、使用者の身長に合わせて長さを調節したり、使用者の好みに応じて人体6の上半身側に対する覆い量を調節したり、更には、寝起きを容易に行えるようにできる。
【0051】
(2)カバー体1を、固定機構としてのブレーキを付設したキャスター車輪を備えた台車に設け、容易に搬送できるように構成する。このような構成にすれば、病院とか介護施設などで使用する場合に、ベッド間の移動を容易に行えて便利である。
【0052】
(3)カバー体1を折り畳み可能に構成するとともにファン2の部分をカバー体1に着脱可能に構成して、コンパクトに収納できるようにする。
【0053】
(4)カバー体1へのファン2の取り付け箇所に防振部材を設け、ファン2の回転に伴って振動による騒音が生じることを抑制できるようにする。
【0054】
(5)カバー体1の下端側を伸縮可能に構成するとともにカバー体1の上部の固定位置を高さ調節可能に構成し、使用者の体格や好みに応じて人体6とカバー体1の下向き面との間の間隙の幅を適宜調節できるようにする。
【0055】
(6)カバー体1内に、人体6の動きを感知可能に赤外線センサを設けるとともに、ファン2として回転数を連続的に変更可能なインバータ式ファンなどを用いる。赤外線センサとファン2とをコントローラに接続し、そのコントローラにおいて、赤外線センサで感知した人体6の動きに基づいて動き量を算出し、その算出された動き量に基づいて、動き量が多いほどファン2の回転数が多くなるように制御する。これにより、夏期などで、寝苦しくて寝返りするなどに伴って、人体6に供給する冷風量を自動的に多くでき、快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る可搬式空調器具の実施例1を使用状態で示す正面図である。
【図2】実施例1の側面図である。
【図3】就寝姿勢の人体を示す正面図である。
【図4】別の使用状態を示す正面図である。
【図5】本発明に係る可搬式空調器具の実施例2を使用状態で示す正面図である。
【図6】本発明に係る可搬式空調器具の実施例3を使用状態で示す正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…カバー体
1a…カバー体の人体の上半身側を覆う部分
2…ファン(給気装置)
3…可搬式空調器具
6…人体
7…支持具(固定機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝姿勢の人体の上方および横側方を覆うカバー体と、
前記カバー体に設けられて、前記カバー体内の人体に風を供給する給気装置と、
を備えたことを特徴とする可搬式空調器具。
【請求項2】
請求項1に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の位置を固定する固定機構を備えてある可搬式空調器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の人体の上半身側を覆う部分を、上半身の上方を開放する開放位置と上半身の上方を覆う使用位置とに変位可能に構成してある可搬式空調器具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の可搬式空調器具において、
カバー体の人体の上半身側を覆う部分を、人体に対する覆い量を変更可能にスライド変位または伸縮可能に構成してある可搬式空調器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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