説明

可撓性試料容器

本発明は、流体試料を保持するためのシステムに関する。システムは、前記流体試料を保持するための透明な可撓性チューブと、前記チューブを保持するためのチューブホルダと、第1の平坦化要素と、第2の平坦化要素とを備える。第1の平坦化要素および第2の平坦化要素は互いに対して移動することによって第1の状態から第2の状態へ前記透明な可撓性チューブを変化させることができ、前記チューブの少なくとも第1の断面寸法は、前記第1の状態におけるよりも前記第2の状態において小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体試料に対する測定に関連して用いられる可撓性の試料容器に関する。このシステムは、量が多い流体試料および量が少ない流体試料(数マイクロリットルの試料に関連してなど)を測定するのに適切である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、クラーク(Clark)およびウェルズ(Wells)は、チューブと尿試料の分析において該チューブを用いる方法を開示している。このチューブは、ガラス、プラスチック、または他の可撓性でない透明材料から製造され、円形の上端部と平らになった下端部とを備え、2つのほぼ平行な表面を提供する。下端部は、平らになった部分において沈殿物の検査用の顕微鏡の使用に適切である。チューブは、平らになった部分における沈殿物の濃度用の遠心分離機と一緒の使用に適切である。
【0003】
示唆されたチューブは、試料の検査のために顕微鏡へ挿入される試料ホルダに試料を適用する簡単な方法を提供する。しかしながら、示唆されたチューブは、ピペットなどを用いて充填される必要があり、遠心分離および沈降後、余分な流体は顕微鏡への切込の前に配置される必要がある。これは、流体(例えば、尿)が少なくとも2回は手で取扱われる必要があり、取扱者を病気の可能性に曝すとともに、試料を汚染に曝すことを示している。さらに、チューブは手で顕微鏡へ挿入される必要があるので、チューブを自動的に交換することは困難または不可能である。
【0004】
特許文献2では、ショー(Shaw)らは、V字形の凹部が形成された光学ブロックとクランプブロックとを含む光学的泡検出器を開示している。光学ブロックおよびクランプブロックは、可撓性チューブのV字形の凹部へ協同して押し付けるかまたは「挟み込み」、三角形のプリズムの断面へと変形させる。ほぼU字型の光学的な遮断要素(光エミッタおよび光センサを有する)は、光ビームが三角形のチューブ部分へ放射状に向けられるように、光学ブロックに適合する。クランプブロックは光学的遮断部からの送受光の窓となり、薄いチャネルでのみ光を透過させることを可能とする。これによって、測定中の光学的なノイズが最小化される。光学的泡検出器は、泡(例えば、食塩水中の)を検出するために利用され、測定中のチューブにおける流体のイメージングは存在しない。
【0005】
特許文献3では、チュー(Chu)は流体検出器およびアラームシステムを開示している。この発明は流体検出器に関連しており、特に、第2の流体のフェーズ用の監督システム内で第1の流体のフェーズを検出するためのシステムに関連している。最も詳細には、この発明は、危篤状態の患者における流体の静脈輸液において用いられるものなど、液体監督システムにおける空気の存在を検出するためのシステム、または空気の充填されたシステム内における液体の存在を検出するためのシステムであり、空気または液体がシステムの中に意図せずに存在する場合にアラームを発するためのシステムに関連している。
【0006】
また、特許文献4では、エミッタおよび光検出器を備える光学的泡検出器が開示されている。試料セルおよび光学センサは光屈折を利用し、試料セルを通過する泡の存在および寸法を決定する。
【0007】
さらに、特許文献5では、泡検出器が開示されている。通路に沿って流れる流体における泡を検出するために、通路の一部分は、より長い平行な側壁を有する長尺断面を有するように形成される。第1の光路は、この通路部分を通じて通過しており、通路を通過していない第2の光路は、基準として提供される。この通路部分の側壁同士の間の間隙より大
きな泡が通路部分に入るとき、第1の光路を通過する光の量は増加し、第2の基準の光路に沿って通過する光に対する第1の光路を沿って通過する光の比が所定の値を超える場合、泡は検出されたとみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,814,522号明細書
【特許文献2】米国特許第5,672,888号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/013312号
【特許文献4】国際公開第2002/084256号
【特許文献5】国際公開第1989/001796号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の開示のいずれにおいても、光学走査機器がチューブ内の流体を画像化するために利用されてはいない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、従来技術において開示されているようなチューブの欠点のうちの1つ以上を克服するためのシステムおよび方法を提供する。詳細には、本発明の1つの目的は、流体試料を保持するためのシステムを提供することであり、このシステムは好適には使用が簡単である。このシステムは、流体試料を保持するための透明な可撓性チューブと、該チューブを保持するためのチューブホルダとを備える。さらに、このシステムは第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を備える。第1の平坦化要素および第2の平坦化要素は互いに対して移動することによって第1の状態から第2の状態へ前記透明な可撓性チューブを変化させることができる。前記チューブの少なくとも第1の断面寸法は、前記第1の状態におけるよりも前記第2の状態において小さい。
【0011】
本発明の第2の目的は、光学走査機器に流体試料を提供する方法を提供することであり、これによって、好適には、走査によって高品質な像が、好適には高速かつ単純な方式で得られる。この方法は、可撓性チューブをチューブホルダに配置する工程と、光学走査機器に関連して該チューブホルダを配置する工程とを備える。この方法は、可撓性チューブに流体を提供する工程と、第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を互いに対して移動させることによって、前記透明な可撓性チューブを第1の状態から第2の状態へ変化させる工程と、さらに備える。該チューブの少なくとも第1の断面寸法は、第1の状態におけるよりも第2の状態において小さい。
【0012】
これらの目的のうちの1つ以上は、特許請求の範囲において規定され以下に記載される本発明および実施形態によって解決される。本願の文脈において、用語「可撓性(flexible)」は、チューブの物理的な性質の一態様を説明するために用いられる。可撓性チューブは、曲げ、伸縮、平坦化、圧迫などによって、破損や漏れを生じることなく一時的に変形され得る。また、変形から解放されると、可撓性チューブは、その変形される前の形状にほぼ戻る。可撓性チューブは、シリコーンまたは同様の材料から製造され得る。
【0013】
本願の文脈において、用語「可撓性チューブ」、「チューブ」、「試料容器」は、同じ部品を表すために用いられる場合がある。第1の状態において、チューブの断面はほぼ円形の形状であってもよく、ほぼ楕円形または類似の形状であってもよい。
【0014】
光学分野において、透明とは、光を変質させることなく物質をほぼ通過させることを可
能とする物理的性質である。本発明において利用される可撓性チューブはほぼ透明な材料から製造されるか、透明な窓部を備えることが好適である。
【0015】
本願の文脈において、用語「流体」は、チューブに浮かぶまたはチューブを通じて送り込まれることを可能とするのに十分に低い粘度を有する物質を説明するために用いられる。流体は、水、尿、血液、乳、および同様の液体または物質や、それらを含む溶液を含んでよい。以下はwordnetweb.princeton.eduからの引用である:「流体とは、流動し、その容器の外形に従う傾向のある連続的な無定形の物質である」。
【0016】
クランプは、本発明では、止血クランプなど、チューブの壁同士を押しつけ合うことによって、管(vessel)またはチューブにおける流体の流れを阻止するために用いられ得るデバイスとして理解される。
【0017】
本出願の文脈において、用語「ほぼ静止」は、不均一な液体試料における粒子の運動によって試料のパラメータ(試料における粒子のパラメータなど)の決定に影響が与えられない状況を言う。一実施形態では、ほぼ静止とは、さらに、空間的に離れた複数の像からなるシーケンスにおける2つの隣接した像の捕捉の間において経過する時間における粒子の運動が、それらの隣接した2つの像の間の距離より有意に小さい(その距離の10分の1など)状況を言う。一実施形態では、ほぼ静止とは、複数の像のうちの少なくとも一部の捕捉中に液体試料の質量流量がない状況を言う。細胞およびその内容物の画像化のための一実施形態では、細胞の運動がある程度までに限定されることによって、充分にシャープな細胞の像を取得可能であるので、例えば、核に関する詳細を決定することが可能である。細胞に関するパラメータを決定することに適合した複数の実施形態では、用語「ほぼ静止」は、したがって、像の捕捉中の細胞の運動が被写界深度(DOF)またはDOFの何分の一(DOFの1000分の1など、DOFの100分の1など、DOFの10分の1など、DOFの5分の1など、DOFの3分の1など)に限定されてよいことを意味する場合がある。DOFは、0.1マイクロメートル〜200マイクロメートルの範囲であってよい。液体試料における静止した粒子の運動は、したがって、秒速0.01マイクロメートル未満、秒速0.1マイクロメートル未満、秒速1マイクロメートル未満など、0.001マイクロメートル/秒未満であってよい。粒子パラメータは、この実施形態では、核の数および寸法、または細胞中の核間の距離であってよい。
【0018】
粒子を数えるためのものなど、粒子の詳細に関する関心がより低い一実施形態では、粒子運動に対する制限は、粒子の計数が運動によって影響を受けないようなものである。数えられる粒子の運動は、したがって、秒速0.1マイクロメートル未満など、秒速1マイクロメートル未満など、秒速10マイクロメートル未満など、秒速100マイクロメートル未満など、秒速1ミリメートル未満など、0.01マイクロメートル/秒未満であってよい。
【0019】
一実施形態では、システムは、第1の状態、第2の状態、またはその両方における透明な可撓性チューブにおいて流体試料から1つ以上の像を取得するための光学走査機器をさらに備える。ここは、流体試料は静止状態にある。
【0020】
一実施形態では、このシステムでは、光学走査機器が、流体試料に関係するパラメータを算出し、パラメータから可撓性チューブの新たな状態を判定するように適合されている。
【0021】
一実施形態では、第1の状態における透明な可撓性チューブの内径は、約20mm未満など、約15mm未満など、約10mm未満など、約5mm未満など、約3mm未満など、約2mm未満など、約1.5mm未満など、約1mm未満など、約25mm未満である

【0022】
一実施形態では、可撓性チューブはチューブへ流体を導入するための入口を有する。この入口は、ホースまたは他の種類の出口に接続されてもよく、パイプまたはカテーテルや同様のものに対するドレインとして機能してもよい。
【0023】
一実施形態では、可撓性チューブは、チューブに存在する流体を除去するために利用される出口を有する。この出口は、廃棄容器または同様のものに直に流体を向けるドレインとして機能してもよい。
【0024】
一実施形態では、可撓性チューブは入口および出口の両方を有する。入口および出口は、両方とも同じパイプまたはカテーテルに接続されてよい。このようにすると、チューブはパイプまたはカテーテルに対するシャントとして機能する。この出口はドレインとして機能し、廃棄容器または同様のものに直に流体を向けてもよい。
【0025】
一実施形態では、システムは、入口を介してチューブへ流体を送り込むのに適合したチューブポンプを備える。チューブの入口とチューブの出口とが同じパイプまたはカテーテルに接続される場合、チューブへ流体を送り込むためにまたはチューブに存在する流体を除去して流体を新たな試料によって置換するために、チューブポンプを作動させることが必要な場合がある。様々な種類のチューブポンプが一般に本技術分野において知られており、任意の種類のチューブポンプが本発明のシステムにおいて用いられてよいことが認識される。チューブポンプは、電子的に作動されてもよく、手動で作動されてもよい。
【0026】
一実施形態では、システムは、チューブを留めるための少なくとも第1のクランプを備える。チューブがクランプによって留められるとき、チューブを通じる流体の流れが停止される。チューブが留められていないとき、流体はチューブを自由に流れることができる。様々な種類のクランプが本技術分野において知られており、チューブにおける流れをほぼ停止する限り、本発明のシステムにおいて任意の種類のクランプが利用されてよい。
【0027】
平坦化要素は、金属またはプラスチックなど、任意の適切な材料から構成され得る。一実施形態では、平坦化要素のうちの1つ以上は、ほぼ透明な領域を有する。この透明な領域は、平坦化要素と平坦化要素同士の間に配置されたチューブとを通じて電磁波を透過させるために利用されてよい。平坦化要素の透明な領域は、ガラスまたは透明プラスチックなど、ほぼ透明な材料から構成され得る。
【0028】
一実施形態では、平坦化要素の透明な領域は内面と外面とを有する。内面はチューブに対向する表面であり、外面は平坦化要素の反対側の表面であるとして理解される。一実施形態では、内面はほぼ平坦である。別の実施形態では、内面は案内溝を備える。案内溝は、チューブを光学顕微鏡の光学距離に関係する好適な位置に配置するために利用され得る。案内溝は「Vの字」状に形成されてもよく、弧状に形成されてもよく、中央の平坦なエリアと境界を形成する各側の持ち上がったエリアとを備える形状とされてもよい。当業者には、多くの様々な形状が案内溝として用いられることができ、本明細書に言及される形状は単にそれらの例であるとのみ見なされることが認められる。
【0029】
一実施形態では、透明な領域は1つ以上の光学要素を含む。光学要素は、レンズ、ウェッジ(楔)、偏光子、アパーチャ、カラーフィルタ、密度部分、および格子から構成されてよい。本技術分野において知られている他の光学要素も利用され得る。透明な領域に含まれる光学要素は、光学顕微鏡の光学距離の一部をなしてもよい。
【0030】
一実施形態では、第1の平坦化要素および第2の平坦化要素は、ステッピングモーター
を利用することによって、または圧電モータまたは同様のものによって、互いに対し相対的に動かされる。実際のところ、当業者には、微小機構に適切な任意の種類のモータまたはアクチュエータを用いて平坦化要素同士を互いに対し相対的に動かせることが認められる。
【0031】
一実施形態では、第1の平坦化要素および第2の平坦化要素は、要素の縁同士の間の距離が一様に変化するように互いに対し相対的に動かされる。一実施形態では、要素の縁同士の間の距離は、第2の縁のエリアに対して第1の縁のエリアにおける距離の変化が大きくなるように、変化する。この効果は、ウェッジ状の形状とされた平坦化要素を用いても達成され得る。このウェッジ効果は、チューブの長手方向(チューブの長さに沿った方向)において利用されてもよく、チューブの横断方向(チューブの長さに垂直な方向)において利用されてもよく、それらの組み合わせにおいて利用されてもよい。
【0032】
一実施形態では、平坦化要素は2以上の段を有する場合がある。可撓性チューブを平らにするために利用されるとき、各段は異なる測定空間を提供し得る。このことは、流体中の粒子に関する2つ以上の異なるパラメータを測定するための光学走査デバイスに関連して可撓性チューブを用いるときに利用され得る。パラメータは、例えば、血中の血小板の数、血中の白血球の数であってよい。血中の血小板の数を決定するには、薄い測定空間を有することが有利であるが、白血球の計数は、比較的厚い測定空間において行われることが有利であり得る。2つの段を有する平坦化要素を利用して、1回の測定でそれらのパラメータを測定し得る。
【0033】
一実施形態では、第2の状態におけるチューブの形状は、第1の平坦化要素に接触しているチューブの一部の内壁と第2の平坦化要素に接触しているチューブの一部の内壁との間の距離が、約20mm未満など、約15mm未満など、約10mm未満など、約5mm未満など、約3mm未満など、約2mm未満など、約1.0mm未満など、約0.5mm未満など、約0.25mm未満など、約0.1mm未満など、約0.05mm未満など、約25mm未満であるようなものである。
【0034】
本発明の方法は、光学顕微鏡に流体試料を提供する工程を備える。この方法は、可撓性チューブをチューブホルダに配置する工程と、光学顕微鏡に関連して該チューブホルダを配置する工程とを備える。可撓性チューブは、可撓性チューブをチューブホルダに取り付けることによって、チューブホルダ内に配置されてよく、チューブホルダは光学顕微鏡に取り付けられてよい。この方法は、可撓性チューブに流体を提供する工程と、第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を互いに対して移動させることによって第1の状態から第2の状態へ透明な可撓性チューブを変化させる工程とをさらに備え、チューブの少なくとも第1の断面寸法は、第1の状態におけるよりも第2の状態において小さい。
【0035】
本発明の可撓性チューブと共に用いられる光学走査機器と、可撓性チューブ中に含まれる流体試料の像を捕捉するための像捕捉デバイスを含んでよい。さらに、像を解析して流体に含まれる粒子を記述する1つ以上のパラメータを決定するために、光学走査デバイスおよび像捕捉デバイスに関連した像解析ユニットが存在してもよい。パラメータは、粒子の計数、粒子の濃度、粒子のモルフォロジ、流体の濁度、または粒子の平均寸法を含んでよい。実際のところ、流体または流体内の粒子を特徴付けるべく、多数のパラメータが決定されてよい。
【0036】
光学走査機器は、デジタルカメラを含む一般的な光学顕微鏡であってもよく、試料容器に含まれる流体の一連の像スタックを捕捉すること専用のより特殊な光学走査機器であってもよい。本発明と同じ発明者によって出願された国際特許出願PCT/DK/2009/050321号では、傾斜した走査経路を含む走査機器が開示されている。この走査機
器は、本発明に関連して用いられることに非常によく適合している。
【0037】
本発明のシステムおよび方法は、各像捕捉後にチューブの厚さを変化させるように適合されていてもよい。像が取得され、像解析デバイスが流体およびその流体の中身を記述するパラメータを決定するべく起動されるとき、そのパラメータが、次の測定用の新たな最適チューブ厚を決定するために用いられてもよい。
【0038】
一実施形態では、方法は、光学顕微鏡から1つ以上の像を取得する工程と、像から流体に関する1つ以上のパラメータを決定する工程と、そのパラメータから新たな最適チューブ厚を決定する工程と、チューブが新たな最適チューブ厚まで平坦化されるまで、第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を互いに対し動かす工程と、をさらに備える。
【0039】
一実施形態では、パラメータは流体における粒子の濃度に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】可撓性チューブを示す図。
【図2】圧縮した状態の可撓性チューブを示す図。
【図3】様々な型の配置溝を示す図。
【図4】送水管に関連する可撓性チューブを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面は概略的なものであり、明瞭さのために単純化されている場合がある。全体を通じて、同じ参照符号が同一または対応する部分に用いられる。
図1には、本発明によるシステムにおいて用いられ得る可撓性チューブを示す。チューブは、外径102、内径101、およびチューブ長さ103を有する。このチューブは、光学グレードのシリコーンなど可撓性材料から製造され得る。
【0042】
図2には、第1の平坦化要素201および第2の平坦化要素202を備える平坦化要素200へ挿入された可撓性チューブ100を示す。2つの平坦化要素は、ガラスなどの透明材料から製造される。可撓性チューブ100が平坦化要素200へ挿入された後、2つの平坦化要素201,202は、可撓性チューブ100を平らにするように互いに押し付けられる。チューブ100の平坦化は、チューブ100の形状を円形から2つの平行な平らな表面を有する楕円形状に変化させる。第1の境界211および第2の境界212を含む測定空間210は、可撓性チューブ100内において2つの平行な表面の間に形成される。この2つの平行な平らな表面の間の距離は、平坦化要素200によって加えられる力に応じて異なる。第1の境界211および第2の境界212の位置は、この平行な表面の間の距離に依存しない。したがって、測定空間の寸法は平行な表面の距離とともに変化する。距離が小さい場合、測定空間210は小さく、距離が大きい場合、それに対応して測定空間210は大きい。測定空間210は、したがって、所望の測定パラメータに適合するように調節され得る。
【0043】
図2に示す実施形態では、光学顕微鏡に近い第1の平坦化要素201は平坦であるが、ウェッジまたはレンズなど、他の形状も利用され得る。また、偏光フィルタ、密度フィルタ、または波長フィルタなど、他の光学要素が平坦化要素に含まれてもよい。
【0044】
第2の平坦化要素202は平坦であるが、第2の平坦化要素が光学的にはチューブ100を照射するためにのみ用いられる実施形態においてなど、他の形状を有してもよい。図3には、様々な種類の平坦化要素202を示す。図3Aには標準的な平坦な平坦化要素202を示すが、図3B−3Eには配置溝203を含む平坦化要素202を示す。図3Bでは、円形の形状とされた配置溝が示されている。図3Cでは、V字形の配置溝が示されて
おり、図3Dでは配置溝は平坦化要素202における凹部として形成されている。配置溝の目的は、平坦化されたチューブを光学顕微鏡の測定位置に正確に配置するのを支援することである。配置溝は、レンズ、ウェッジ、偏光フィルタ、密度フィルタ、波長フィルタ、または図3Eに示すようなアパーチャなど、光学要素と組み合わせられてよい。配置溝と光学要素との組み合わせは、例えば、レンズ形状(凹面か凸面の)を配置溝および外壁が有するように、平坦化要素の内壁を選択することによって行われ得る。さらに、平坦化要素の製造される材料がフィルタ機能を有してもよい。
【0045】
図4では、可撓性チューブ100が、槽水中の細菌のオンラインモニタリング用に設定されているのを示す。この設定は、水道からの水を含む管500を含む。分流器510は、可撓性チューブ100、チューブポンプ400、第1のクランプ521、および第2のクランプ522を含む。平坦化要素200を含むチューブホルダ410は、入口530および出口540を介して管500に接続されている。第1のクランプ521は平坦化要素200に対して上流に位置し、第2のクランプ522は平坦化要素200に対して下流に位置している。第1のクランプ521および/または第2のクランプ522は、2つのクランプ間の槽内の空間が可能な限り小さくなるように、平坦化要素に対して実際に可能である限り近くに配置されてよい。これによって、流体が流れを停止して測定の準備が完了する時間を減少させる。
【0046】
チューブポンプ400は、入口530において管500から水を吸い込み柔軟なチューブ100を通じ出口540にやるまで作動させられる。チューブポンプの作動中、第1のクランプ521および第2のクランプ522は開かれている。所定期間に渡るチューブポンプ400の作動後、チューブ100は管500からの水で充填され、チューブポンプ400の作動が停止される。チューブ100中の水は測定中に静止していることが好適であり、これを保証するために、第1のクランプ521および第2のクランプ522はチューブ中の水の流れを停止させるように作動される。
【0047】
平坦化要素200は、ここで、チューブの内壁同士の間に必要な距離が得られるまで、可撓性チューブ100を平らにするように作動させられる。これが達成されると、測定手続が開始される。測定手続は、測定空間を光学的に区分することを含み得る。
【0048】
一部の用途では、平坦化要素はポンプの作動前または作動中に作動させられてよい。平坦化要素は、手順中、ほぼ一定のチューブ厚を提供するように配置されてもよく、ここで、複数の測定が実行される。
【0049】
測定手続中、測定手続を最適化するようにチューブの内壁同士の間の距離を変化させる必要があることが決定されてもよい。例えば、槽水中の細菌濃度が非常に低いと判定される場合、より大きな体積を測定することができる。したがって、チューブの壁同士の間の距離は大きくなる。測定間において濃度が増加した場合、より低い細菌計数を得るように測定空間を減少させることが所望され得る。
【0050】
内壁距離を変化させた後、測定手続が続行される。測定手続が完了した後、可撓性チューブ100中の水は新たな試料で置換される。これは、まず、平坦化からチューブを解放するために平坦化要素200の作動を停止させ、次いで、クランプ521,522を開いてチューブポンプ400を作動させることによって行われる。一定の期間の後、可撓性チューブ100中の水は新たな水試料で完全に置換され、チューブポンプ400の作動が停止され、2つのクランプ521,522は、可撓性チューブ100を通じて水の流れを停止するように作動させられる。
【0051】
幾つかの異なる種類のチューブポンプが存在する。チューブポンプが、ポンプの差動が
停止されると流体が完全に流れを停止する種類である場合、2つのクランプ521,522は省略されてよい。
【0052】
可撓性チューブ100からの出口540は、入口530と同じ管に接続され得る。この場合、可撓性チューブにおいて流体試料を置換するためにチューブポンプが必要な場合がある。出口が別の管またはドレインもしくは同様のものに接続される場合、出口の流体圧力に比べ入口の流体圧力は新たな試料をチューブに押し込み既にある試料を置換するのに十分に高いので、チューブポンプは必要ではないことがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料を保持するためのシステムであって、
前記流体試料を保持するための透明な可撓性チューブと、
前記チューブを保持するためのチューブホルダと、
第1の平坦化要素と、
第2の平坦化要素と、を備え、
第1の平坦化要素および第2の平坦化要素は互いに対して移動することによって第1の状態から第2の状態へ前記透明な可撓性チューブを変化させることが可能であり、前記チューブの少なくとも第1の断面寸法は、前記第1の状態におけるよりも前記第2の状態において小さい、システム。
【請求項2】
前記第1の状態、前記第2の状態、またはその両方における前記透明な可撓性チューブにおいて前記流体試料から1つ以上の像を取得するための光学走査機器をさらに備え、前記流体試料は、ほぼ静止している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光学走査機器は、前記流体試料に関係するパラメータを算出し、前記パラメータから前記可撓性チューブの新たな状態を判定するように適合されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
第1の状態における前記透明な可撓性チューブの内径は、約20mm未満など、約15mm未満など、約10mm未満など、約5mm未満など、約3mm未満など、約2mm未満など、約1.5mm未満など、約1mm未満など、約25mm未満である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記可撓性チューブは、入口、出口、またはその両方を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
入口を介して前記チューブへ流体を送り込むのに適合したチューブポンプをさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記チューブを留めるための少なくとも第1のクランプをさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記平坦化要素のうちの少なくとも一方は透明な領域を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記透明な領域は内面と外面とを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記内面は、ほぼ平坦である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記内面は案内溝を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記透明な領域は、レンズ、ウェッジ、偏光子、アパーチャ、フィルタ、および格子から選択される1つ以上の光学要素を含む、請求項8乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記平坦化要素は、平坦化されたチューブの内壁間の距離が、約20mm未満など、約15mm未満など、約10mm未満など、約5mm未満など、約3mm未満など、約2mm未満など、約1.0mm未満など、約0.5mm未満など、約0.25mm未満など、
約0.1mm未満など、約0.05mm未満など、約25mm未満であるように作動される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
光学走査機器に流体試料を提供する方法であって、
透明な可撓性チューブをチューブホルダに配置する工程と、
前記光学走査機器に関連して前記チューブホルダを配置する工程と、
前記チューブに流体を提供する工程と、
第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を互いに対して移動させることによって、前記透明な可撓性チューブを第1の状態から第2の状態へ変化させる工程と、を備え、
前記チューブの少なくとも第1の断面寸法は、第1の状態におけるよりも第2の状態において小さい、方法。
【請求項15】
前記光学走査機器から1つ以上の像を取得する工程と、
前記像から前記流体に関する1つ以上のパラメータを決定する工程と、
前記1つ以上のパラメータから新たなチューブ厚を決定する工程と、
第1の平坦化要素および第2の平坦化要素を互いに対して移動させることによって、前記透明な可撓性チューブを第3の状態へ変化させる工程と、をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のパラメータは前記流体における粒子の濃度に関係する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
光学機器は光学走査機器であり、該光学走査機器は、前記チューブの少なくとも一部を通じて像平面を走査して該光学走査機器に配置された試料の複数の像を得るように適合されている、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−521477(P2013−521477A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555295(P2012−555295)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/DK2011/050064
【国際公開番号】WO2011/107102
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512145022)
【氏名又は名称原語表記】UNISENSOR A/S
【Fターム(参考)】