説明

可撓性高屈折率ハードコート

光透過性基材と、この基材上に配置された可撓性高屈折率層であって、この高屈折率層が、架橋された有機材料中に分散した、少なくとも1.60の屈折率を有する少なくとも60重量%の無機ナノ粒子を含む、高屈折率層と、この高屈折率層に結合された低屈折率表面層と、を含む、反射防止フィルム。高屈折率層は、少なくとも2つの(at two)芳香環を含む、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む、重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含み、無機ナノ粒子は、有機材料と共重合する第1表面処理剤と、非反応性相溶化基を有する第2表面処理剤と、を含み、この第1表面処理剤及び第2表面処理剤は、少なくとも5:1のモル比で存在する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ARフィルムは、正確な光学厚さの交互の高屈折率及び低屈折率(「RI」)ポリマー層から構成される場合が多い。可視光では、この厚みは、反射される光の波長の約4分の1である。人間の目は、550nm前後の光に最も敏感である。したがって、この光の範囲の反射光の量を最小にするように(例えば、2.5%以下)、低屈折率及び高屈折率コーティング厚さを設計することが望ましい。
【0002】
米国特許第7,264,872号は、反射防止コーティング用の耐久性のある高屈折率ナノ複合材料について記載している。高屈折率ナノ複合材料は架橋された有機材料中に分散した、例えばジルコニアなどの表面改質無機ナノ粒子を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの実施形態では、反射防止フィルムが記載されている。反射防止フィルムは、架橋された有機材料中に分散した、少なくとも1.60の屈折率を有する少なくとも60重量%の無機ナノ粒子を含む、高屈折率層を含む。
【0004】
一実施形態では、約20〜200マイクロメートルの範囲の厚さを有する光透過性基材と、この基材上には配置された、約3〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有する高屈折率層と、この高屈折率層に結合された低屈折率表面層と、を含む反射防止フィルムが記載されている。高屈折率層は、6mmのマンドレルサイズを使用してISO 1519に従って試験したときに、亀裂しない。
【0005】
別の実施形態では、低屈折率層に結合された高屈折率層を含む反射防止フィルムが記載され、この高屈折率層は、少なくとも2つの芳香環を少なくとも11固形分重量%の量で含む少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーを含む、重合可能な樹脂組成物の反応生成物を含む。
【0006】
別の実施形態では、低屈折率層に結合された高屈折率層を含む反射防止フィルムが記載され、無機ナノ粒子(すなわち、高屈折率層の)は、有機材料と共重合する第1表面処理剤と、非反応性相溶化基を有する第2表面処理剤と、を含み、第1表面処理剤及び第2表面処理剤は少なくとも5:1のモル比で存在する。
【0007】
また、少なくとも1.60の屈折率を有する表面改質無機ナノ粒子、並びにこのようなナノ粒子を含む重合可能な樹脂組成物もまた記載される。ナノ粒子は第1(メタ)アクリルシラン表面処理剤及び第2非反応性シラン表面処理剤を含み、第1表面処理剤の第2表面処理剤に対するモル比は少なくとも5:1である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で記載するのは、可撓性高屈折率ハードコートを含む反射防止フィルム物品である。反射防止フィルム物品は、高屈折率ハードコート層に結合された低屈折率(例えば表面)層を含む。
【0009】
高屈折率層は、少なくとも約1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、又は1.67の屈折率を有する。高屈折率層の屈折率は、架橋された有機材料中に分散した高屈折率無機ナノ粒子を有するコーティングについては、典型的には約1.75以下である。低屈折率層は、高屈折率層を下回る屈折率を有する。高屈折率層と低屈折率層との屈折率差は典型的には少なくとも0.10、又は0.15、又は0.2以上である。低屈折率層の屈折率は、典型的には約1.5未満、より典型的には、約1.45未満、更により典型的には約1.42未満である。低屈折率層の最小屈折率は一般には少なくとも約1.35である。低屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率の平方根にほぼ等しいことが好ましい。
【0010】
反射防止フィルムは典型的には、実施例に記載されているように分光光度計で測定された450nm〜650nmにおいて3%、2%、又は1%未満の平均反射率を有する。
【0011】
耐久性のある反射防止フィルムは、比較的薄い低屈折率層と組み合わせた比較的厚い高屈折率層を含むことが好ましい。高屈折率層は、典型的には少なくとも2マイクロメートル、典型的には6マイクロメートル以下の厚さを有する。低屈折率層は、約1/4波長の光学厚さを有する。このような厚みは典型的には0.5マイクロメートル未満、より典型的には約0.2マイクロメートル未満であり、約90nm〜110nmである場合が多い。耐久性のある低屈折率層と組み合わせて、耐久性のある高屈折率層を採用する際、追加のハードコート層がない場合は、耐久性のある(例えば2層型)反射防止フィルムを設けることができる。
【0012】
更に他の実施形態では、本明細書に記載の低屈折率層及び高屈折率ハードコート層の両方が比較的薄くてもよく、各層は少なくとも約50nmであり、かつ、0.5マイクロメートル未満(例えば0.2マイクロメートル未満)である。この実施形態に関して、耐久性のある反射防止フィルム物品は、米国特許第7,323,514号に記載されているような、基材と高屈折率層との間に追加のハードコート層を含む。追加のハードコート層は、例えば米国特許第6,132,861号(Kang et al.‘861号)、同第6,238,798(B1)号(Kang et al.‘798号)、同第6,245,833(B1)号(Kang et al.‘833号)、及び同第6,299,799号(Craig et al.‘799号)に記載のような有機マトリックス中に分散した(例えば、表面改質シリカ)ナノ粒子を含有する。
【0013】
本明細書に記載の高屈折率ハードコート及び反射防止フィルムは耐久性があることが好ましい。ある1つの態様では、耐久性のある反射防止フィルムは、研削材、例えばスチールウールと繰り返し接触した後の引っかき傷を防ぐ。ひどい引っかき傷が存在していると、反射防止フィルムのヘイズ値が向上する可能性がある。1つの実施形態では、実施例の部分で更に説明されているとおり、スチールウール耐久性試験(Steel Wool Durability Test)にしたがって、3.2cmの直径のマンドレル及び1000gの質量体を用いてスチールウールで25回、50回、又は、100回拭いた後の反射防止フィルムのヘイズ値は1.0%未満である。
【0014】
可視的なひっかき傷を防ぐ表面層では、低い表面エネルギーを維持させる必要はない。好ましい実施形態では、反射防止フィルムでは、研削材、例えばスチールウールと繰り返し接触した後も、その低い表面エネルギーが維持される。好ましい実施形態では、反射防止フィルムは好ましくは、スチールウール耐久性試験に従って3.8cmの直径のマンドレル及び1000グラムの質量体を用いてスチールウールで5、10、15、20、又は25回拭いた後に少なくとも45°、50°、又は60°のヘキサデカンとの前進接触角を示す。また、3.8cmの直径のマンドレルと500gの質量体を用いてスチールウールで10回、50回、100回、200回、又は、更には300回拭いた後の反射防止フィルムの水との静的接触角は典型的には、少なくとも90°、95°、又は、100°である。
【0015】
低屈折率層及び高屈折率層はそれぞれ、フリーラジカル重合可能な物質の反応生成物を含む。本明細書では、フリーラジカル重合可能な物質については、(メタ)アクリレート物質と関連させて説明していく。ただし、当該技術分野において既知のように、その他のフリーラジカル重合可能な基を用いても、同様の結果を得ることができる。
【0016】
本明細書に記載されているハードコード組成物は、架橋された有機材料中に分散した比較的高濃度の高屈折率無機ナノ粒子を含む。架橋された高屈折率ハードコート中の無機ナノ粒子の濃度は、硬化した高屈折率ハードコートの少なくとも60、65、70、75、80固形分重量%であり得る。このように、フリーラジカル重合可能な有機構成成分(すなわち、ナノ粒子表面処理剤を含む)の濃度は、典型的に少なくとも20固形分重量%であり、かつ、40固形分重量%以下である。好ましい実施形態では、架橋された高屈折率ハードコート中の無機ナノ粒子の濃度は60〜70重量%の範囲である。
【0017】
様々な高屈折率ナノ粒子が周知であり、例えば、単体又は組み合わせで、ジルコニア(「ZrO」)、チタニア(「TiO」)、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズが挙げられる。混合金属酸化物もまた使用されてよい。このような物質は、少なくとも1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、又は更に高い屈折率を有する。
【0018】
高屈折率層中に用いるジルコニアは、Nalco Chemical Co.からは商品名「Nalco OOSSOO8」で、Buhler AG Uzwil,Switzerlandからは商品名「Buhler zirconia Z−WO sol」で、Nissan Chemical America Corporationからは商品名NanoUse ZR(商標)で、入手可能である。ジルコニアナノ粒子はまた、米国特許公開第2006/0148950号及び米国特許第6,376,590号に記載のように調製することができる。酸化アンチモン(RIおよそ1.9)によって被覆された酸化スズとジルコニアとの混合物を含むナノ粒子分散体は、商品名「HX−05M5」でNissan Chemical America Corporationから市販されている。酸化スズナノ粒子分散体(RIおよそ2.0)は、商品名「CX−S401M」でNissan Chemicals Corp.から市販されている。
【0019】
ハードコート組成物が比較的高濃度の無機ナノ粒子を含むが、好ましい実施形態では、硬化したハードコート層は可撓性である。いくつかの実施形態では、高屈折率層は十分に「可撓性」であり、そのため、6mmのマンドレルサイズを使用してISO 1519に従って試験したときに、高屈折率ハードコートの3〜5マイクロメートルの硬化した層が亀裂しない。典型的には、低屈折率層及び任意の光透過性フィルムは、少なくとも高屈折率ハードコートと同じくらい可撓性である。このような実施形態では、これらの結合された層はまた、6mmのマンドレルサイズを使用してISO 1519に従って試験されたときに亀裂しない。
【0020】
様々なフリーラジカル重合可能なモノマー、オリゴマー、ポリマー、及びこれらの混合物を高屈折率層の有機材料中に用いることができる。フリーラジカル重合可能なモノマー、オリゴマー、ポリマーは所望により、有機材料の屈折率を上昇させる目的で、硫黄又は臭素原子を含有してもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、可撓性における改善は(improvement is flexibility)、単に又は一部分において、少なくとも2つの芳香環を含む少なくとも11、12、又は13重量%のジ(メタ)アクリレート)モノマー及び/又はオリゴマーの包含によってもたらされる。いくつか実施形態では、無機ナノ粒子の、少なくとも2つの芳香環を含むジ(メタ)アクリレート)モノマー及び/又はオリゴマーに対する比率は、6.5:1以下(greater then)である。このような芳香族モノマーは典型的に、少なくとも350g/モル、400g/モル、又は450g/モルの分子量を含む。少なくとも2つの重合可能な(メタ)アクリレート基を有する芳香族モノマー又はオリゴマーは、合成されても又は購入されてもよい。芳香族モノマー又はオリゴマーは典型的に、特定の構造の主要部分、すなわち少なくとも60〜70重量%、を含有する。他の反応生成物もこのようなモノマーの合成の副生成物として典型的に存在することは、一般的に認識される。
【0022】
いくつかの実施形態では、重合可能な組成物は、以下の一般構造の主要部分を含む、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマーを含む:
【0023】
【化1】

【0024】
式中、Zは、独立して、−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、それぞれのQは、独立してO又はSである。Lは連結基である。Lは独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基を含んでよく、nは0〜10の範囲である。Lは好ましくは分岐鎖又は直鎖のC〜Cアルコキシ基を含む。より好ましくは、LはC又はCであり、nは0、1、2又は3である。一般的に、連結基は同一である。R1は独立して水素又はメチルである。
【0025】
いくつかの実施形態では、芳香族モノマーは、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、すなわちビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸の反応生成物である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルは一般に、より幅広く利用可能ではあるが、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどのその他のビフェノールジグリシジルエーテルもまた用いることができると考えられている。
【0026】
芳香族モノマーは、ビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートであることが好ましい。1つの代表的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから商品名「SR602」(20℃において610cpsの粘度及び2℃のガラス転移温度(Tg)を有すると報告されている)にて市販されている。別の代表的なビスフェノールAエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから商品名「SR601」(20℃において、1080cpsの粘度及び60℃のTgを有すると報告されている)にて市販されている。
【0027】
代わりに、又はそれに加えて、有機構成成分は、1種以上の(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマーを含んでよい。種々の(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマーが市販されている。例えば、(メタ)アクリレート化芳香族エポキシ(変性エポキシアクリレートとして記載される)は、Sartomer(Exton,PA)から商品名「CN118」及び「CN115」で入手可能である。(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマー(エポキシアクリレートオリゴマーとして記載される)は、Sartomerから商品名「CN2204」で入手可能である。更に、(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマー(40%トリメチロールプロパントリアクリレートとブレンドしたエポキシノボラックアクリレートとして記載される)は、Sartomerから、商品名「CN112C60」で入手可能である。1つの代表的芳香族エポキシアクリレートは、Sartomerから商品名「CN 120」(供給元によって、1.5556の屈折率、65℃において2150の粘度、及び60℃のTgを有すると報告されている)の商品名で市販されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、重合可能な樹脂組成物は、以下の一般構造を有する主要部分を含む少なくとも1種のビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーを含む:
【0029】
【化2】

【0030】
式中、それぞれのR1は独立してH又はメチルであり、
それぞれのR2は独立してBrであり、
mは0〜4の範囲であり、
それぞれのQは独立してO又はSであり、
nは0〜10の範囲であり、
Lは1つ以上のヒドロキシル基により任意に置換されたC2〜C12のアルコキシ基であり、
zは芳香環であり、
tは独立して0又は1である。
【0031】
いくつかの態様では、Qは0であることが好ましい。Lは、独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基を含んでよく、nは0〜10の範囲である。Lは分岐鎖又は直鎖C〜Cアルコキシ基を含むことが好ましい。より好ましくは、Lは、C又はCであり、nは1、2、又は3である。一般的に連結基は同一である。R1は独立して水素又はメチルである。いくつかの実施形態では、zは、好ましくはフェニル基に縮合し、それによってビナフチルコア構造体を形成する。
【0032】
好ましくは、−Q[L−O]nC(O)C(R1)=CH基の少なくとも1つは、オルト位又はメタ位にて置換されている。より好ましくは、ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、モノマーが25℃にて液体であるように、十分な量のオルト及び/又はメタ(メタ)アクリレート置換基を含む。いくつかの実施形態では、置換基を含有するそれぞれの(メタ)アクリレート基は、オルト位又はメタ位にて芳香環基に結合している。ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、多量のオルト(メタ)アクリレート置換基(すなわち、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーの置換基)を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、置換基を含有するそれぞれの(メタ)アクリレート基は、オルト位又はメタ位にて芳香環基に結合している。メタ及び特にパラ置換基の数が増えるとともに、有機構成成分の粘度も同様に増大し得る。更に、パラ−ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、室温で固体であり、フェノキシエチルアクリレート及びテトラヒドロフルフリルアクリレート中であっても、溶解度が低い(すなわち10%未満)。
【0033】
このようなビフェニルモノマーは、公開された米国特許出願第2008/0221291号に更に詳細に記載されている。その他のビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、文献に記載されている。
【0034】
あるいは、可撓性における改善は、後で記載されるように、単に又は一部分において、表面処理剤の特定の組み合わせで、無機ナノ粒子を表面改質することによってもたらすことができる。無機ナノ粒子が表面処理剤のこのような組み合わせを含むとき、有機構成成分は全体として、3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する、1つ以上のフリーラジカル重合可能な架橋剤からなってもよい。架橋剤の濃度は、約10〜約25重量%の範囲であり得る。表面処理剤のこのような組み合わせがないとき、有機構成成分は、3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する架橋剤が実質的にないことが好ましい。いくつかの実施形態では、高屈折率層は、特定の(例えば、アルコキシル化)ジ(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーを含み、無機ナノ粒子は、表面処理剤の特定の組み合わせを含む。
【0035】
好適なフリーラジカル重合可能な架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(Exton,PAのSartomer Companyから商品名「SR351」で市販されている)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Exton,PAのSartomer Companyから商品名「SR454」で市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商品名「SR444」で市販されている)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomerから商品名「SR399」で市販されている)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商品名「SR494」で市販されている)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomerから商品名「SR368」で市販されている)が挙げられる。一部の態様では、ヒダントイン部分含有マルチ−(メタ)アクリレート化合物、例えば米国特許第4,262,072号(Wendling et al.)に記載されているものが用いられている。
【0036】
いくつかの実施形態では、無機ナノ粒子は、少なくとも1種の相溶化基を含む第1非反応性表面処理剤を含む。「非反応性」とは、相溶化基が有機成分と反応しないことを意味する。第2表面処理剤は、有機構成成分と共重合する少なくとも1種の反応基を含む。表面処理剤の組み合わせは、ナノ粒子が共重合可能な表面処理剤の主要量を含むような量で用いられる。したがって、共重合可能な表面処理剤の化学量論的(すなわち、モル)量は、非反応性相溶化表面処理剤を超える。例えば、共重合可能な表面処理剤の非反応性表面処理剤に対するモル比は、1.1:1、又は1.5:1、又は2:1、又は3:1、又は4:1であってもよい。好ましい実施形態では、共重合可能な表面処理剤の非反応性表面処理剤に対するモル比は、少なくとも5:1、6:1、又は7:1、より好ましくは、8:1、9:1、又は10:1である。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの(メタ)アクリルシランは、共重合可能な表面処理剤として用いられる。好適な(メタ)アクリルシランには、(メタ)アクリロイアルコキシシラン、例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(acryloylxypropyltrimethoxysilane)、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、及び3−(アクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシランが挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリルシランは、アクリルシランとの比較において、より良好な可撓性をもたらす傾向がある。
【0038】
他の実施形態では、共重合可能な表面処理剤は、少なくとも1つの(例えば、不揮発性)のモノカルボン酸を含む。「不揮発性酸」とは、6超の炭素原子を有するモノカルボン酸を指す。この種の表面改質剤の例は、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、及びグルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、コハク酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル、グルタル酸モノ−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルである。他のこの種の表面改質剤としては、モノ(メタ)アクリルオキシポリエチレングリコールスクシネート、又はマレイン酸若しくはグルタル酸無水物から製造された類似材料が挙げられる。
【0039】
非反応性表面処理剤は、非反応性相溶化基を含む。このような相溶化基は、好ましくは水溶性末端のような極性基(例えばポリエーテル基)を含む。このような表面処理剤は、高屈折率ナノ粒子に極性を付与することができる。
【0040】
ポリエーテル末端は、一般式−O−R−を有する、繰り返し二官能アルコキシラジカルを含む。好ましいR基は、一般式−C2n−を有し、例えば、メチレン、エチレン、及びプロピレン(n−プロピレン及びi−プロピレンを含む)、又はこれらの組み合わせを含む。R基の組み合わせは、例えば、ランダム、又はブロック型コポリマーとして提供されてよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、特に(メタ)アクリルシラン共重合可能な表面処理剤との組み合わせで、非反応性相溶化表面処理剤は好ましくは、GE Siliconeから商品名「Silquest A−1230」で市販されているような、ポリエーテル末端を有するシランである。
【0042】
いくつかの実施形態では、特に、共重合可能な(例えば不揮発性の)モノカルボン酸表面処理剤との組み合わせで、非反応性表面処理剤は、以下の式によって表わされるようなポリエーテル末端を有するモノカルボン酸(すなわち、分子当たり1つのカルボン酸基を含有する)である:
CH−[O−(CH−X−COOH
式中、
Xは二価有機連結基であり、
xは約1〜10の範囲であり、
yは約1〜4の範囲である。
【0043】
Xの代表例としては、−X−(CH−が挙げられ、式中、Xは、−O−S−、−C(O)O−、−C(O)NH−であり、nは約1〜3の範囲である。
【0044】
好ましいポリエーテルカルボン酸の例としては、化学構造CHO(CHCHO)CHCOOHを有する2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(以後MEEAA)及び化学構造CHOCHCHOCHCOOHを有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(以後MEAA)が挙げられる。MEAA及びMEEAAは、Milwaukee,Wis.のAldrich Chemical Co.から、それぞれカタログ番号40,701−1及び40,700−3として市販されている。
【0045】
ポリエーテル相溶化テールを有するその他の表面改質剤としては、一般的に脂肪族無水物とポリアルキレンオキシドモノエーテルとの反応によって調製されたものが挙げられる。この種類の表面改質剤としては、コハク酸モノ[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、マレイン酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、及びグルタル酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステルが挙げられる。
【0046】
共重合可能な表面処理剤及び/又は比較的高屈折率(例えばRIが少なくとも1.50である)を備える非反応性相溶化表面処理剤を利用することができる。フタレート基のような芳香族基を1つ以上含有する相溶化剤は、有利なことに高屈折率を有し、それゆえ、その包含は、重合可能な組成物全体の屈折率を上昇させることができる。表面改質剤分子内における硫黄原子又は臭素原子の包含はまた、屈折率を上昇させることができる。様々なフタル酸系物質は、米国特許出願公開第2007/0112097号に記載のように製造することができる。
【0047】
無機粒子のサイズは、有意な可視光線の散乱を避けるように選択される。光学又は材料特性を最適化するため、及び全組成物コストを低下させるために、複数の種類の無機酸化物粒子の混合物を用いることが望ましい場合がある。表面改質コロイド状ナノ粒子は、少なくとも1nm又は5nmの(例えば非会合の)一次粒径又は会合粒径を有する酸化物粒子であり得る。一次粒径又は会合粒径は一般に、100nm未満、75nm未満、又は50nm未満である。典型的には、一次又は会合粒径は40nm未満、30nm未満、又は20nm未満である。ナノ粒子は非会合であることが好ましい。それらの測定値は、透過電子顕微鏡(TEM)に基づくことができる。表面改質コロイドナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。
【0048】
完全凝縮ナノ粒子(シリカを例外として)の結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)は、典型的には55%を超え、好ましくは60%を超え、より好ましくは70%を超える。例えば、結晶化度は、約86%までの範囲内又はそれ以上にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性のナノ粒子(例えばジルコニアナノ粒子)は屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0049】
コロイド状分散体における粒子の表面改質は、米国特許第6,376,590号及び同第7,241,437号に記載されているような様々な既知の方法で達成することができる。
【0050】
表面改質粒子は、次いで、種々の方法によって硬化性(すなわち重合可能な)樹脂組成物に組み込むことができる。好ましい態様では、溶媒交換手順が利用され、樹脂を表面改質されたゾルに添加してから水及び共溶媒(使用する場合)を蒸発により除去することにより、粒子を重合可能な樹脂中に分散された状態にする。蒸発工程は、例えば、蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥により達成可能である。別の態様では、表面改質された粒子を水不混和性溶媒中に抽出した後、それが望ましい場合には溶媒交換を行うことができる。あるいは、表面改質されたナノ粒子を重合可能な樹脂に組み込む別の方法は、改質粒子を乾燥して粉末にした後、その中に粒子が分散された樹脂材料を添加することを伴う。この方法における乾燥工程は、例えば、オーブン乾燥又は噴霧乾燥のような、その系に好適な従来の手段によって達成することができる。
【0051】
低屈折率組成物は、少なくとも1種の、フッ素化又はシリコーン含有フリーラジカル重合可能物質を含む重合可能な低屈折率組成物の反応生成物と、表面改質無機ナノ粒子とを含む。好ましくは屈折率が低く(例えば1.50未満)、本明細書に記載のフリーラジカル重合可能なフッ素化有機物質中に分散している表面改質無機ナノ粒子。金属酸化物、金属窒化物、及び金属ハロゲン化物(例えば、フッ化物)のような各種低屈折率無機粒子が知られている。好ましい低屈折率粒子としては、コロイダルシリカ、フッ化マグネシウム、及びフッ化リチウムが挙げられる。
【0052】
低屈折率組成物内で使用するための水性コロイドシリカ分散体は、商品名「Nalco Collodial Silicas」、例えば製品1040、1042、1050、1060、2327、及び2329でNalco Chemical Co.(Naperville,IL)から、又は商品名Snowtex(商標)でNissan Chemcial America Corporation(Houston,TX)から市販されている。コロイドシリカの有機分散体は、商品名Organosilicasol(商標)でNissan Chemicalから市販されている。好適なヒュームドシリカには、例えば商品名「AerosilシリーズOX−50」、同じく商品番号−130、−150、及び−200でDeGussa AG(Hanau,Germany)から市販されている製品が挙げられる。ヒュームドシリカはまた、Cabot Corp.(Tuscola,IL)から商品名「CAB−O−SPERSE 2095」、「CAB−O−SPERSE A105」、及び「CAB−O−SIL M5」で市販されている。
【0053】
低屈折率層中の(例えば、無機)ナノ粒子の濃度は、典型的には少なくとも5体積%であり、好ましくは少なくとも15体積%である。無機粒子の濃度は典型的には約50体積%以下であり、より好ましくは40体積%以下である。
【0054】
低屈折率層のフッ素化又はシリコーン含有構成成分は、低表面エネルギーをもたらす。低屈折率コーティング組成物の表面エネルギーは、様々な方法、例えば接触角度及びインク忌避によって特徴付けることができる。硬化した低屈折率層の水との静的接触角は、典型的に少なくとも80°である。より好ましくは、接触角は少なくとも90°、最も好ましくは少なくとも100°である。あるいは、又はそれに加えて、ヘキサデカンとの前進接触角は少なくとも50°であり、より好ましくは少なくとも60°である。低表面エネルギーは、防汚特性及び染み忌避特性に適しており、並びに露出面は洗浄しやすい傾向にある。
【0055】
低屈折率の重合可能な組成物は典型的には、これまで記載されたように、少なくとも3種のフリーラジカル重合可能基を有する少なくとも1つの(例えば非フッ素化)架橋剤も含む。低屈折率は少なくとも5固形分重量%、又は10固形分重量%、又は15固形分重量%、及び一般的に約40固形分重量%以下の架橋剤を含む。
【0056】
低屈折率層は、フッ素含有率が少なくとも25重量%であるフリーラジカル重合可能な物質を1つ以上含むのが好ましい。高度にフッ素化されたモノマー、オリゴマー、及びポリマーは、低屈折率を有することによって特徴付けられる。少なくとも約25重量%のフッ素含有率を有する様々なフッ素化マルチ−及びモノ−(メタ)アクリレート物質が既知である。一部の実施形態では、重合可能な低屈折率組成物のフッ素含有率は少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、又は、少なくとも50重量%である。典型的には、高フッ素化物質の大部分は、フリーラジカル重合可能な多官能性物質である。ただし、このような物質は、フッ素化単官能性物質と組み合わせて用いることができる。
【0057】
重合可能な低屈折率コーティング組成物の調製の際には、様々なフッ素化モノ−及びマルチ−(メタ)アクリレート化合物を用いてよい。このような物質は、一般にフリーラジカル重合可能な部分を(ペル)フルオロポリエーテル部分、(ペル)フルオロアルキル部分、及び(ペル)フルオロアルキレン部分と組み合わせて含む。これらの各部類中の化学種のフッ素含有率は高い(例えば少なくとも25重量%)。25重量%未満のフッ素含有量を有する各部類中の他の種は、補助成分として使用できる。
【0058】
一部の実施形態では、このような補助的なフッ素化(メタ)アクリレートモノマーによって、反応混合物内に存在している低屈折率又はその他のフッ素化物質を相溶性化するのを助けることができる。例えば、ペルフルオロポリエーテルウレタン化合物は、公開された米国特許出願第2006/0216524号、同第2006/0216500号、及び同第2007/0286992号に記載されているような、高フッ素含有物質を相溶化するのに特に有用であることが判明した。このようなペルフルオロポリエーテルウレタン化合物には一般的に、重合可能な(例えば末端)(メタ)アクリレート部分が少なくとも1つ、及び、価数が少なくとも2価である連結基を介してウレタン又は尿素結合に結合している(ペル)フルオロポリエーテル基などの単位(任意に応じて反復型)が少なくとも1種含まれている。ウレタン及び尿素結合は典型的には−NHC(O)Xであり、式中、XはO、S、又は、NRであり、RはH又は1〜4個の炭素を有するアルキル基である。このペルフルオロポリエーテル部分が、好ましくはHFPO−部分であり、ここで、HFPOはF(CF)CF0)aCF(CF)−であり、そして、「a」は平均して2〜15である。いくつかの実施形態では、「a」は平均すると約4又は6となる。1つの代表的な高フッ素ペルフルオロポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートは、HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CHである。
【0059】
好ましい実施形態では、重合可能な低屈折率組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なフルオロポリマーを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、及び、フッ化ビニリデン(「VDF」、「VF2」)として知られている構成モノマーから形成されている。これらの構成成分のモノマー構造を以下に示す。
【0061】
TFE:CF=CF (1)
VDF:CH=CF (2)
HFP:CF=CF−CF (3)
フルオロポリマーには少なくとも2つの構成モノマー(HFP及びVDF)が含まれているのが好ましく、3つの全ての構成モノマーが様々なモル量で含まれていると更に好ましい。
【0062】
フルオロポリマーには、フリーラジカル重合可能基が含まれている。これは、ハロゲン含有硬化部位モノマー(「CSM」)及び/又はハロゲン化末端基の包含によって達成することができ、この末端基は、例えば米国特許第7,323,514号に記載のようにポリマーの中に内部重合(interpolymerized)される。これらのハロゲン基は、コーティング混合物の他の成分に対する反応性をもたらすとともに、ポリマー網の形成を促す。
【0063】
所望により、反応性ハロゲン末端基を含有するフルオロポリマー鎖末端部を生成させるハロゲン化連鎖移動剤を用いることによって、ハロゲン硬化部位をポリマー構造に組み込むことができる。このような連鎖移動剤(「CTA」)は文献で周知であり、典型例はBr−CFCF−Br、CFBr、CF、CHである。その他の典型例は、Weisgerberに付与された米国特許第4,000,356号に記載されている。
【0064】
あるいは、又はそれに加えて、フルオロポリマーは、フルオロポリマーの十分な炭素−炭素不飽和をもたらしてフルオロポリマーと炭化水素基材又は層との間の結合の増加を生じさせために、米国特許出願公開第2006/0148996号に記載のものなどのように、脱フッ化水素化(dehydrofluorination)によって反応性にすることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のフルオロポリマー含有低屈折率組成物は、好ましくは米国特許第7,323,514号に記載されているように少なくとも1種のアミノオルガノシランエステルカップリング剤又はそれらの縮合生成物を含む。好ましいアミノオルガノシランエステルカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン、2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン、2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、及び、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0066】
別の実施形態では、低屈折率層は米国特許出願公開第2007/0286993号に記載されているようにA)フルオロ(メタ)アクリレートポリマー中間体及びB)少なくとも1種のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーの反応生成物を含む。A)とB)の混合物は、放射線(例えば紫外光)の照射によって硬化させるのが好ましい。硬化済み低屈折率ポリマー組成物には、A)とB)の共重合反応生成物が含まれていると思われる。硬化済み低屈折率ポリマー組成物には、B)の重合生成物も含まれていると推定される。フルオロ(メタ)アクリレートポリマー中間体は、低屈折率コーティング組成物内の他の成分に共有結合させてよい。更には、低屈折率コーティング組成物の他の任意の成分、例えば非フッ素化架橋剤によって、物理的にエンタングルメントしているフルオロ(メタ)アクリレートポリマー中間体を重合して、それによって相互貫入網を形成させてよい。
【0067】
A)フルオロ(メタ)アクリレートポリマー中間体には、i)フッ素含有率が少なくとも25重量%である少なくとも1つのフッ素化マルチ−(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーと、ii)所望により1つ以上のフッ素化又は非フッ素化マルチ(メタ)アクリレート物質の反応生成物が含まれている。任意のマルチ−(メタ)アクリレート物質としては、マルチ−(メタ)アクリレート部分を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、表面改質無機ナノ粒子、及び、これらの物質の多種多様な混合物を挙げてよい。マルチ−(メタ)アクリレート物質の総量は一般的に、重合可能な有機組成物の固形分重量%をベースとした場合、少なくとも25重量%である。マルチ(メタ)アクリレート物質の総量は、ナノ粒子含有組成物の約30重量%〜70重量%の範囲に及ぶ場合がある。
【0068】
低屈折率組成物には、様々な単官能性及び/又は多官能性HFPO−ペルフルオロポリエーテル化合物を含めてよい。低屈折率層においてこれらの物質の少なくとも約5重量%〜約10重量%を含有することによって、水との初期静止接触角が少なくとも110°である低エネルギー表面をもたらすことができる。
【0069】
1つの好ましい高フッ素含有多機能ペルフルオロポリエーテル化合物は、供給元により屈折率が1.341であると報告されている商品名「CN4000」でSartomerから市販されているアクリレートオリゴマーである。低屈折率を考慮して、この物質のフッ素含有率は少なくとも約50重量%であると考えられる。NMR分析に基づく、CN4000の分子量(Mn)は約1300g/モルである。
【0070】
別の好ましいフリーラジカル重合可能な高フッ素含有多官能性物質は、反応性(ペル)フルオロポリエーテルマルチ−(メタ)アクリレートと2〜4個のマイケルタイプの付加水素を有するアミン化合物のマイケルタイプの付加によって調製される(ペル)フルオロポリエーテルマルチ−(メタ)アクリレート化合物である。1つの代表的な付加物は、CH=CHC(O)−OCH(CFCHO−C(O)CH=CHと4−(アミノメチル)ピぺリジンとの反応により調製される。
【0071】
好ましい高フッ素ペルフルオロアルキルマルチ(メタ)アクリレートには、以下のように表1に記載されるものが挙げられる:
【0072】
【表1】

【0073】
重合可能な低及び高屈折率コーティング組成物には更に、2官能性(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1つ含めてもよい。様々な2官能性(メタ)アクリレートモノマーが、当該技術分野で知られており、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、(Mn=200g/モル、400g/モル、600g/モル)、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及び、トリプロピレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0074】
重合可能な低及び高屈折率コーティング組成物の調製には、典型的には少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を用いる。有用なフリーラジカル熱開始剤としては、例えばアゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及び、レドックス開始剤、並びに、これらの混合物が挙げられる。有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えばアクリレートポリマーのUV硬化に有用であるものとして既知のものが挙げられる。これに加えて、その他の添加剤を最終組成物に加えてもよい。この添加剤としては、樹脂性流動助剤、光安定剤、高沸点溶媒、及び、当業者に周知のその他の相溶剤が挙げられるが、これらに限らない。
【0075】
重合可能な組成物は、約1〜10固形分%という濃度で相溶性有機溶媒中にフリーラジカル重合可能な物質(単一又は複数)を溶解させることによって形成させることができる。単一の有機溶媒又は溶媒の混合物を用いることができる。用いるフリーラジカル重合可能物質によるが、好適な溶媒としては、アルコール(イソプロピルアルコール(IPA)又はエタノールなど)、ケトン(メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)など)、シクロヘキサノン又はアセトン、芳香族炭化水素(トルエンなど)、イソホロン、ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エステル(ラクテート、アセテート、例えば3Mから商品名「3M Scotchcal Thinner CGS10(「CGS10」)」で市販されているようなプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3Mから商品名「3M Scotchcal Thinner CGS50(「CGS50」)」で市販されているような2−ブトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、イソ−アルキルエステル(例えばイソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート又はその他のイソ−アルキルエステル)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0076】
様々なフッ素化溶媒を用いることができるだろうが、ある1つの態様では、フッ素化溶媒が含まれていない相溶性低屈折率コーティング組成物を調製させる。相溶性コーティング組成物は、濁っておらず、むしろ透明である。相溶性コーティングには実質的に視覚的欠陥がない。非相溶性コーティングを用いた場合に見られる場合がある視覚的欠陥としては、濁り、ポックマーク、斑点、まだら、塊、若しくは、ひどいうねり、又は、光学及びコーティング分野の精通者に既知のその他の視覚的指標が挙げられるが、これらに限らない。
【0077】
光学ディスプレイ上の反射防止コーティング又は光学ディスプレイで使用するための反射防止フィルムを形成する方法としては、光透過性基材層を提供する工程と、本明細書に記載のように、基材層の上に高屈折率ハードコート材料を提供する工程と、高屈折率層に結合される本明細書に記載の低屈折率層を提供する工程とを含んでよい。低屈折率層は、上記高屈折率物質の上記(例えば硬化済み)層の上に、上記低屈折率物質の層を適用するとともに、架橋するのに十分な紫外放射線を照射することによって提供してよい。あるいは、低屈折率コーティングは、少なくとも部分的に硬化され、かつトランスファーコーティングされた高屈折率層上に剥離ライナーに適用されてよい。更には、反射防止材料を基材に直接適用するか、代わりにトランファー可能な反射防止フィルムの剥離層に適用し、続いて、サーマルトランスファー又は輻射誘発されるトランスファーを用い剥離層から基材へトラスファーさせてもよい。好適なトランスファー方法が、公開済みの米国特許出願公開第2006/0147614号に記載されている。
【0078】
低屈折率組成物及び高屈折率組成物は、単層又は多層として高屈折率層に、又は、従来のフィルム適用技法を用いて直接基材(例えばディスプレイ表面又はフィルム)に適用することができる。有益なことに、単一の高屈折率相の上に備わっている単一の低屈折率層によって、低い反射率と優れた耐久性という組み合わせを得ることができる。
【0079】
薄いフィルムは、様々な技法、例えばディップコーティング、フォワード及びリバースロールコーティング、巻線ロッドコーティング、並びに、ダイコーティングなどを用いて適用することができる。ダイコーティング機としては、ナイフコーティング機、スロットコーティング機、スライドコーティング機、フルイドベアリングコーティング機、スライドカーテンコーティング機、ドロップダイカーテンコーティング機、及び、押出コーティング機が挙げられる。Edward Cohen及びEdgar GutoffのModern Coating and Drying Technology,VCH Publishers,NY 1992,ISBN 3−527−28246−7、並びに、Gutoff及びCohenのCoating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems,Wiley Interscience,NY ISBN 0−471−59810−0などの文献に、多くのタイプのダイコーティング機が記載されている。
【0080】
通常、基材は連続ウェブのロールの形状であるのが好都合だが、個々のシートにコーティングを塗布してよい。
【0081】
低屈折率並びに高屈折率コーティング組成物は、オーブン内で乾燥させて溶媒を除去し、次いで、例えばH型電球又は所望の波長の他のランプを用いて、好ましくは不活性雰囲気(50ppm未満の酸素)内で紫外放射線への露光によって硬化させる。この反応メカニズムを通じて、フリーラジカル重合可能な物質を架橋させる。
【0082】
光透過性基材は、ガラスのような、多種多様な非ポリマー材料、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、(例えば、ビスフェノールA)ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ(メチルメタアクリレート)のような様々な熱可塑性及び架橋されたポリマー材料、及び二軸延伸ポリプロピレンのような、ポリオレフィンのいずれかを含んでもよい、若しくはいずれかからなってもよく、これらは様々な光学デバイスに一般に使用されている。更に基材は、有機成分と無機成分との両方を有するハイブリッド材料を含んでもよい。基材、高屈折率ハードコート、並びに反射防止フィルムは典型的に、少なくとも80%、少なくとも85%、及び好ましくは少なくとも90%の透過率を有する。
【0083】
ほとんどの用途においては、基材の厚さは好ましくは約0.5mm未満、より好ましくは約20マイクロメートル〜約200マイクロメートルである。自立性高分子フィルムが好ましい。押出及び押出フィルムの任意の一軸又は二軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を使用して、ポリマー材料をフィルムへと成形することができる。この基材は、基材と隣接層との間の接着を改善するために、例えば、空気又は窒素コロナ、プラズマ、火炎、又は化学線のような化学処理、コロナ処理により処理できる。所望であれば、中間層接着を増大させるため、任意の結合層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。
【0084】
反射防止フィルムはその他の層を備えていてもよい。様々な恒久的な及び除去可能なグレード接着剤組成物が、フィルム基材の反対側に提供されてよい。感圧接着剤を使用する実施形態については、反射防止フィルム物品は典型的には除去可能な剥離ライナーを含む。ディスプレイ表面に適用する間に、反射防止フィルム物品がこのディスプレイ表面に接着することができるように剥離ライナーを取り外す。
【0085】
好適な接着剤組成物としては、(例えば水素添加)ブロックコポリマー、例えばKraton Polymers(Westhollow,TX)から市販されている商品名「Kraton G−1657」、並びにその他の(例えば類似の)熱可塑性ゴムなどが挙げられる。他の代表的な接着剤としては、アクリルベース、ウレタンベース、シリコーンベース及びエポキシベース接着剤が挙げられる。時間とともに、又は屋外曝露時に接着剤が黄色化して光学ディスプレイの表示品質を低下させないように、好ましい接着剤は十分な光学的品質及び光安定性を有するものである。トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング等の様々な既知のコーティング技術を使用して接着剤を塗布することができる。代表的な接着剤は、米国特許第7,351,470号に記載されている。このような接着剤のいくつかは、8141、8142、及び8161の商品名で、St.Paul,MNの3M Companyから市販されている。
【0086】
多層光学フィルム、ミクロ構造フィルム、例えば再帰反射シート及び輝度向上フィルム、(例えば、反射性又は吸収性)偏光フィルム、拡散性フィルムの他に、(例えば、二軸)リターダ(遅延)フィルム及びコンペンセータフィルム、例えば米国特許第7,099,083号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない、フィルム基材として使用するのに適した様々な光透過性光学フィルムが知られている。
【0087】
米国特許第6,991,695号に記載されているように、多層光学フィルムは、異なる屈折率のミクロ層を配置することによって、少なくとも部分的に、望ましい透過及び/又は反射特性をもたらす。これらのミクロ層の屈折率特性は異なっており、隣接し合うミクロ層の境界面で一部の光を反射するようになっている。フィルム体に所望の反射又は透過特性を付与するために、複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けるように、ミクロ層は十分に薄い。紫外、可視又は近赤外波長で光を反射するように設計された光学フィルムに関して、各ミクロ層は一般的に約1μm未満の光学的厚さ(即ち屈折率を乗じた物理的厚さ)を有する。しかしながら、フィルム外面の表面薄層、又はミクロ層のパケットを分離させるフィルム内に配置されている保護境界層などのより厚い層を含めることもできる。またラミネート中で多層光学フィルムの2枚以上のシートに結合するように、多層光学フィルム体に1つ以上の厚い接着剤層を含めることもできる。
【0088】
好適な多層光学フィルム及びその関連構造の更なる詳細については、米国特許第5,882,774号(Jonza et al.)、並びに、PCT公開WO 95/17303号(Ouderkirk et al.)及びPCT公開WO 99/39224号(Ouderkirk et al.)で見ることができる。ポリマー多層光学フィルム及びフィルム体には、それらの光学的特性、機械的特性、及び/又は、化学的特性に関して選択した追加的な層及びコーティングを含めることができる。米国特許第6,368,699号(Gilbert et al.)を参照されたい。またポリマーフィルム及びフィルム体には、無機層、例えば金属又は金属酸化物コーティング又は層を含めることもできる。
【0089】
反射防止フィルムには、光沢面又はマットな面を搭載してよい。マットな反射防止フィルムは典型的には、典型的な光沢フィルムよりも透過率が低く、ヘイズ値が高い。例えば、ヘイズ値は、ASTM D1003にしたがって測定した場合、概して少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。光沢表面が、60℃においてASTM D 2457−03に従って測定した場合、典型的には少なくとも130の光沢を有するのに対して、マットな表面は120未満の光沢を有する。
【0090】
マットな面をもたらすために、表面を粗面化又は非平滑化することができる。これは、低屈折率表面を1つ又は複数の下層と合わせてビードブラストされたかないしは別の方法で粗面化された好適なツールでエンボス加工することを含む当該技術分野において既知の様々な方法で、並びに米国特許第5,175,030号明細書(Lu et al.)及び同第5,183,597号明細書(Lu)に記載されているように好適な粗面化マスターに対して組成物を硬化することによって達成できる。
【0091】
更に別の態様では、マットな反射防止フィルムは、マットなフィルムの基材上に高屈折率層と低屈折率(例えば表面)層をもたらすことによって作製することができる。代表的なマットなフィルムは、U.S.A.Kimoto Tech(Cedartown,GA)から商品名「N4D2A」で市販されている。
【0092】
マットな低及び高屈折率コーティングも、適切な寸法の粒子充填物、例えばシリカ砂又はガラスビードを組成物に加えることによって作製することができる。このようなマットな粒子は典型的には、表面改質低屈折率粒子よりも実質的に大きい。例えば、その平均粒径は典型的に約1〜10マイクロメートルの範囲である。このようなマットな粒子の濃度は、少なくとも2重量%〜約10重量%以上にしてよい。2重量%未満(例えば1.8重量%、1.6重量%、1.4重量%、1.2重量%、1.0重量%、0.8重量%、0.6重量%)の濃度では、その濃度は典型的には、所望の光沢低下(これはヘイズ値の向上にも貢献する)をもたらすには不十分である。ただし、耐久性のある反射防止フィルムは、このようなマットな粒子がない状態で提供することができる。
【0093】
高屈折率層内での光学的フリンジング(fringing)を低減するか又はなくすために、反射防止フィルム基材が高屈折率層のそれに接近した屈折率を有する、即ち、0.05未満、及びより好ましくは0.02未満だけ高屈折率層と異なることが好ましい。別の方法としては、光学的フリンジングは、フィルム基材上に高屈折率プライマーを提供することによって、なくすか又は低減することができ、このプライマーは高屈折率層及び基材の屈折率と密接にマッチするように選択される。しかしながら、基材が低屈折率を有する場合、高屈折率層と基材との間の屈折率差は、約0.05〜0.10超の範囲に及び得る。この実施形態については、プライマーの屈折率を高屈折率層及び(すなわち、低屈折率)基材の両方に同時にマッチさせることは可能ではない。この実施形態では、光学的フリンジング(fringing)は低屈折率基材と高屈折率層との間に屈折率中間体(即ち、中央値(median)+/−0.02)を有するようにプライマーを配合することによって低減又はなくすことができる。
【0094】
帯電防止コーティングが、ハードコートをコーティングするのに先立って(例えば所望によりプライミングされた)基材に適用することができる。
【0095】
帯電防止層の厚さは、典型的には少なくとも20nmであり、一般的には400nm以下、300nm以下、又は200nm以下である。
【0096】
帯電防止コーティングは帯電防止剤として少なくとも1つの導電性ポリマーを含んでもよい。様々な導電性ポリマーが既知である。有用な導電性ポリマーの例には、ポリアニリン及びこれらの誘導体、ポリピロール、並びにポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。1つの特に好適なポリマーは、H.C.Starck(Newton,MA)から商品名「BAYTRON P」で市販されているポリ(スチレンスルホン酸)でドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)などのポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。
【0097】
別の実施形態では、帯電防止コーティング又はハードコート組成物は、金属又は半導体金属オキシドなどの導電性金属含有粒子を含んでよい。このような粒子はまた、1nm超過及び200nm未満の粒子サイズ又は会合粒子サイズを有するナノ粒子として記載されてもよい。様々な顆粒状の、名目上球形の、結晶性半導体金属オキシドの微粒子が既知である。このような導電性粒子は一般的に、適切なドナーへテロ原子でドープされているか又は酸素欠損である二元金属オキシドである。好適な導電性バイナリ金属酸化物は、酸化スズ、酸化インジウム、五酸化バナジウムを含んでもよい。様々な帯電防止粒子が水系及び溶媒系分散物として市販されている。使用することができる酸化アンチモンスズ(ATO)ナノ粒子分散物には、Air Productsから商品名「Nano ATO S44A」で入手可能な分散物(25固形分重量%、水)、Advanced Nano Products Co.Ltd.(ANP)から入手可能な30nm及び100nm分散物(20固形分重量%、水)、同じくANPから入手可能な30nm及び100nmATO IPAゾル(30重量%)、Keeling & Walkerから商品名「CPM10C」で入手可能な分散物(19.1固形分重量%)、及びIshihara Sangyo Kaisha,Ltdから商品名「SN−100D」で市販されている分散物(20固形分重量%)が挙げられる。更に、酸化アンチモン亜鉛(AZO)IPAゾル(20nm、20.8固形分重量%)は、Nissan Chemical America(Houston TX)から商品名「CELNAX CX−Z210IP」、「CELNAX CX−Z300H」(水中)、「CELNAX CX−Z401M」(メタノール中)、及び「CELNAX CX−Z653M−F」(メタノール中)で入手可能である。
【0098】
ナノ粒子帯電防止剤に関しては、静電気防止剤が、少なくとも20重量%の量で存在する。導電性無機オキシドナノ粒子に関しては、濃度は、屈折率改質のために80固形分重量%までであることができる。導電性ポリマー帯電防止剤が使用されるとき、可視的な領域の中での帯電防止剤の強力な吸収のために、導電性ポリマー帯電防止剤は、できる限り少ない量を使用することが一般的に好ましい。したがって、濃度は一般的に20固形分重量%以下であり、好ましくは15固形分重量%未満である。いくつかの実施形態では、導電性ポリマーの量は、乾燥している帯電防止層の2固形分重量%〜5固形分重量%の範囲である。
【0099】
本明細書に記載されているような反射防止フィルムは、光学ディスプレイ(「ディスプレイ」)に適用するのに好適である。このディスプレイは、様々な照明及び非照明ディスプレイパネルを包含する。このようなディスプレイには、マルチキャラクタ及び特にマルチラインマルチキャラクタディスプレイ、例えば液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、前面及び裏面投射型ディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、標識並びに発光管(「LED」)、信号ランプ及びスイッチなどの単一キャラクタ又は2進ディスプレイなどがある。
【0100】
この反射防止フィルムを様々な携帯式及び非携帯式情報ディスプレイ物品において使用することができる。これらの物品としては、PDA、液晶テレビ(ダイレクトライト及びエッジライトの両方)、携帯電話(PDA/携帯電話の組み合せを包含)、タッチスクリーン、リストウォッチ、カーナビゲーションシステム、グローバルポジショニング・システム、深度探知機、計算機、電子ブック、CD及びDVDプレイヤー、プロジェクションテレビ・スクリーン、コンピューターモニター、ノート型パソコンディスプレイ、機器計器、及び機器パネルカバーが挙げられるがこれらに限定されない。これらのデバイスは、平面表示面又は曲面表示面を設けることができる。
【0101】
反射防止材料は、例えばカメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、鏡、再帰反射シート材料、自動車のウィンドウ、建物のウィンドウ、列車のウィンドウ、ボートのウィンドウ、航空機のウィンドウ、車ヘッドライト及びテールライト、ディスプレイケース、眼鏡、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、腕時計カバー、並びに光学及び磁気光学記録ディスクなどの多種多様な他の物品に同様に使用されてもよい。
【0102】
反射防止フィルムはまた、各種広告宣伝、販売促進用、及び企業アイデンティティ用途に使用される(例えば、再帰反射)標識及び商業用グラフィックディスプレイフィルムを含む様々な他の物品に適用できる。
【0103】
好ましい実施形態の観点で本発明を説明してきたが、特に上記の教示を考慮すれば、当業者によって変更が行なわれると思われるため、当然ながら、本発明は好ましい実施形態に限定されないと理解すべきである。
【0104】
試験方法
ISO 1519に記載の屈曲試験(円筒形マンドレル)を用いて、フィルムの耐亀裂性を測定し、破壊マンドレルサイズ(すなわち直径)を報告した。屈曲試験は、マンドレルと接触する光透過性フィルムを用いて実施した。屈曲の後、試料は以下の基準に従って検査され、評価された:
NC−亀裂なし
LC−軽度の亀裂
C−亀裂
HC−激しい亀裂
折り畳み試験−屈曲試験と同様な方法で、可撓性はまた、1cmの金属円筒を中心としてフィルムを折り畳み、次いで、円筒の直径を中心としてフィルムを5回前進させ、戻すことによって測定された。折り畳みの後、試料は以下の基準に従って検査され、評価された:
NC−亀裂なし
LC−軽度の亀裂
C−亀裂
HC−激しい亀裂
折り畳試験は、少なくとも屈曲試験と同じくらい厳しいものであると考えられる。このように、試料は屈曲試験に従って試験されたとき亀裂せず、また、折り畳み試験にしたがって試験されたとき、亀裂しない。
【0105】
スチールウール耐久性試験
硬化した高屈折ハードコートフィルムの耐摩耗性は、フィルムの表面を横切ってスタイラスに付着したスチールウールシートを振動させることができる機械デバイスを用いてコーティング方向にクロスウェブに(垂直に)試験された。スタイラスは、210mm/秒(ワイプが3.5回/秒)の速度において60mmの掃引幅にわたって振動した(ここで「ワイプ」は、60mmの1回の移動として定義される)。スタイラスは、直径3.2cmの平らな円筒形ベース部の形状を有していた。このスタイラスは、フィルムの表面に対して垂直にスチールウールによってかかる力を増加させるためのおもりの取り付けができる設計になっていた。#0000スチールウールシートは、Hut Products(Fulton,MO)から入手可能な「Magic Sand−Sanding Sheets」であった。#0000は、600〜1200グリットサンドペーパーと同等の特定のグリットを有する。3.2cmのスチールウールディスクをサンドシートからダイカットし、3MブランドのScotch Permanent Adhesive Transferというテープで3.2cmのスタイラス基部に固定した。各実施例につき1つの試料を試験し、試験中に用いられた重量及び拭き取り動作回数は報告されている通りである。試料は次いで、以下の基準に従ってスクラッチに関して視覚的に検査され、評価された。
【0106】
NS−スクラッチなし
SS−わずかなスクラッチ
S−スクラッチ
HS−激しいスクラッチ
【0107】
【表2】

【0108】
ZrOゾル
実施例で使用したZrOゾルは、次の性質を有した(米国特許出願公開第2006/0204745号及び米国特許出願第11/078468号に記載されている、光相関分光法(PCS)、X線回折及び熱重量分析法に従って測定した場合)。
【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
ZrOゾルの調製は、米国特許出願公開第2006/0204745号及び米国特許出願第11/078468号(2005年3月11日出願)に記載されている。
【0112】
表面改質高屈折率ナノ粒子の調製
1.ZrO−MPTMS
添加漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、油槽、及び蒸留ヘッドを備えた2000mLの三つ口フラスコに47.7固形分重量%のZrO分散体500gが充填された。この分散体に、358.6gの脱イオン水と5重量%Prostab 5198(水溶液)0.54gとのプレミックスを攪拌しながら加えた。次いで、758.6gの1−メトキシ−2−プロパノールをバッチに加え、続いて63.9gの3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(MPTMS)と100gの1−メトキシ−2−プロパノールとを加えた。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。得られた混合物は粘稠で、不透明な白いスラリーだった。バッチを室温まで冷却した。真空蒸留と1782gの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。バッチを真空蒸留によって更に濃縮し、59.1固形分重量%の低粘度で半透明の分散体を得た。
【0113】
2.ZrO−3:1 MPTMS/A1230
MPTMS及びSilquest A−1230の濃度がモル比3:1に修正されたことを除いて、調製5(以下に記載される)と同じ方法で分散体が形成された。
【0114】
3.ZrO−5:1 MPTMS/A1230
MPTMS及びSilquest A−1230の濃度がモル比5:1に修正されたことを除いて、調製5と同じ方法で分散体が形成された。
【0115】
4.ZrO−7:1 MPTMS/A1230
MPTMS及びSilquest A−1230の濃度がモル比7:1に修正されたことを除いて、調製5と同じ方法で分散体が形成された。
【0116】
5.ZrO−9:1 MPTMS/A1230添加漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、油槽、及び蒸留ヘッドを備えた2000mLの三つ口フラスコに47.7固形分重量%のZrO分散体500gが充填された。この分散体に、358.6gの脱イオン水と5重量%Prostab 5198(水溶液)0.54gとのプレミックスを攪拌しながら加えた。次いで、758.6gの1−メトキシ−2−プロパノールをバッチに加え、続いて12.9gのSilquest A−1230、57.5gのMPTMS、及び100gの1−メトキシ−2−プロパノールを加えた。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。得られた混合物は不透明な白いスラリーだった。バッチを室温まで冷却した。真空蒸留と1500gの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。水の除去の後、バッチは、16.5固形分重量%の、半透明で低粘度な分散体だった。バッチを真空蒸留によって約22%固形分まで更に濃縮した。この時点で、29%の水酸化アンモニウム溶液10gをバッチに添加した。水酸化アンモニウム溶液の添加では、バッチには、目に見える外観変化はなかった。最後に真空蒸留によって、バッチを更に濃縮した。得られた分散体は58.1固形分重量%の低粘度で半透明の分散体であった。
【0117】
6.ZrO−9:1 APTMS/A1230
添加漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、油槽、及び蒸留ヘッドを備えた2000mLの三つ口フラスコに47.7固形分重量%のZrO分散体500gが充填された。この分散液に558.6gの1−メトキシ−2−プロパノールを混合しながら添加した。0.54gの5重量%のProstab 5198(水溶液)、54.25gの3(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)、及び19.3gのSilquest A−1230のプレミックスを攪拌しながら添加した。粗い、オフホワイトのスラリーが形成された。プレミックスのビーカーを、2つのアリコート(それぞれ1−メトキシ−2−プロパノール150g)ですすいだ。すすいだ1−メトキシ−2−プロパノールをバッチに添加した。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。得られた混合物は、青みがかった色合いを備えた均質で、不透明な分散体だった。バッチを室温まで冷却した。真空蒸留と400gの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。真空蒸留によって、バッチを更に濃縮した。最終的な分散体は粘度が低く、59.1固形分重量%の半透明の分散体であった。
【0118】
7.ZrO−9:1 SAC/MEEAA滴下漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、及び蒸留ヘッドを備えた500mLのフラスコに25固形分重量%のZrO分散体148.68g及び124gの1−メトキシ−2−プロパノールを充填した。次いで、0.8gのMEEAA及び8.6gのSACを急速攪拌下で添加したところ、濁っている混合物が得られた。2時間の混合後、溶媒の大半はロータリーエバポレーターを使用して取り除かれた。得られた白いペースト/ゲル様物質は、1−メトキシ−2−プロパノール/MEK(1:1)混合物200g中に再分散され、透明なゾルを形成した。1時間後、MEK及び1−メトキシ−2−プロパノールの一部の量を含む溶媒を取り除き、60固形分重量%を備える透明な分散体を得た。
【0119】
8.ZrO−9.5:0.5 SAC/5%MEEAA
ZrOゾル(40.87固形分重量%で100g)、MEEAA(0.87g)、1−メトキシ−2−プロパノール(172g)、及びSAC(1−メトキシ−2−プロパノール中50固形分%で18.8g)を三つ口1L丸底フラスコに充填した。得られる分散体が1−メトキシ−2−プロパノール中に約73.4固形分%であるように、水及びアルコールを真空蒸留を介して取り除いた。分散体の最終組成物が、1−メトキシ−2−プロパノール/2−ブタノンの1/1の混合物中に約58固形分重量%であるように、2−ブタノン(18.5g)をフラスコに充填した。
【0120】
9.SnO/ZrO/SbO−9.47:0.53 MPTMS/A1230
滴下漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、及び蒸留ヘッドを備えた250mLのフラスコに、100gのHX−305M5及び5gの0.01 NのHClを充填した。5分後、7.2gのMPTMS及び0.8gのSilquest A−1230をプレミックスし、急速攪拌下で一滴ずつ添加した。得られた混合物は次いで、還流するために12時間加熱した。室温まで冷却した後、次いで、50gの1−メトキシ−2−プロパノールを、次いで一定の攪拌下で添加した。溶液を丸底フラスコに移し、次いで、メタノール、水、及び1−メトキシ−2−プロパノールの一部の量を含む溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して除去し、67.5固形分重量%を備える粘稠な液体メトキシプロパノールゾルが得られた。
【0121】
10.SnO−9.5:0.5 MPTMS/A1230滴下漏斗、温度コントローラー、パドル攪拌機、及び蒸留ヘッドを備えた250mLのフラスコに、40gのCX−S401M、30gのメトキシプロパノール(methoxypranol)及び0.2gの水を攪拌下で充填した。5分後、3.8gのMPTMS及び0.4gのSilquest A−1230をプレミックスし、急速攪拌下で一滴ずつ添加した。得られた混合物は次いで、還流するために12時間加熱した。室温まで冷却した後、次いで、25gの−メトキシプロパノールを、次いで一定の攪拌下で添加した。溶液を丸底フラスコに移し、次いで、メタノール、水、及びメトキシプロパノールの一部の量を含む溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して除去し、59.6固形分重量%を備える粘稠な液体メトキシプロパノールゾルが得られた。
【0122】
11.ZrO−3:1 APTMS/A1230
APTMS及びSilquest A−1230の濃度がモル比3:1に修正されたことを除いて、調製6と同じ方法で分散体が形成された。
【0123】
以下の表はZrOの重量%と表面改質ZrOの重量%の関係を説明する。
【0124】
【表5】

【0125】
高屈折率層のコーティング及び硬化
高屈折率コーティング配合物のそれぞれを1−メトキシ−2−プロパノールとMEKの1:1のブレンドで45固形分重量%に希釈した。希釈されたコーティングを次いで、ワイヤー巻回されたMayerコーティングロッド(3マイクロメートルのコーティング用#7ロッド、4.5マイクロメートルのコーティング用#10ロッド、及び7マイクロメートルのコーティング用#14ロッド)を使用して、125マイクロメートル(5ミル)のPETフィルム(商品名「Melinex 618」でDupontから入手)の下塗りされていない表面の上にコーティングした。それぞれのコーティングは次いで、オーブン内で100℃にて2分間乾燥させた。乾燥したコーティングを次いで、窒素下で、Light Hammer 6 UV光源(Fusion UV Systems,Inc.(Gaithersburg,Maryland))を用いて、100%Hバルブで、1回目の通過を914.4cm/分(30fpm)及び2回目の通過を304.8cm/分(10fpm)で光硬化させた。
【0126】
高屈折率コーティング実施例1〜4の調製
MPTMS(調製1による)で表面改質された85重量%のZrOを、以下の表に示された13重量%の重合可能な樹脂及び2重量%のIrgacure 184光開始剤と混合した。この組成物を前述のようにコーティングし、硬化させた。試験結果は以下のように説明される:
【0127】
【表6】

【0128】
この結果は、高屈折率ナノ粒子がMPTMSだけで表面改質されたとき、SR602又はSR602を含む組成物は、CN120、並びにSR399及びSR499の1:1のブレンドに対して、改善された可撓性を呈したことを示している。
【0129】
比較用高屈折率コーティング及び実施例5〜7の調製
比較用組成物は、モル比3:1でMPTMS及びSilquest A1230で表面改質されたZrOを含有した。表面改質されたZrOを、48%のSR295、35%のCN120、17%のSR339、及び1重量%のIrgacure 184と、米国特許第7,264,872号(Walker et al.)の実施例15に記載されたように混合した。
【0130】
ZrOを、調製2〜5に従って、MPTMS及びSilquest A1230で表面改質し、組成物が70重量%のZrO(すなわち、比較用と同じ濃度)を含有するようにSR601及び1重量%のIrgacure 184と混合した。
【0131】
この組成物を前述のようにコーティングし、硬化させた。試験結果は以下のとおりである:
【0132】
【表7】

【0133】
この結果は、比較用が3マイクロメートル、4.5マイクロメートル、7マイクロメートルで亀裂を呈したのに対して、実施例5〜7の組成物は、より良好な可撓性を呈した、すなわち、より大きな厚さで亀裂を呈していない、ということを示している。
【0134】
【表8】

【0135】
この結果は、スチールウール耐久性に関しては、7:1の比率のものが、5:1の比率のものよりも良好であったことを示している。
【0136】
高屈折率コーティング実施例8〜9の調製
調製5及び6に従って表面改質された85重量%のZrOを、13重量%のCN120及び2重量%のIrgacure 184光開始剤と混合した。この組成物を前述のようにコーティングし、硬化させた。試験結果は以下のように説明される:
【0137】
【表9】

【0138】
実施例8を実施例2と比較することにより、重合可能な表面処理剤を、非反応性相溶化基を含む第2表面処理剤と共に用いることは、用いられた重合可能な樹脂の種類に関わらず、硬化したハードコートの可撓制を改善するということが明らかである。実施例8と9を比較することによって、MPTMSの(メタ)アクリル官能基はAPTMSのアクリル官能基よりも、良好な可撓性をもたらすということが明らかである。
【0139】
高屈折率コーティング実施例10〜12の調製
調製5に従って表面改質されたZrOナノ粒子を、以下の表に示された、5重量%の重合可能な樹脂及び2重量%のIrgacure 184光開始剤と混合した。この組成物を前述のようにコーティングし、硬化させた。試験結果は以下のように説明される:
【0140】
【表10】

【0141】
結果は、70重量%のZrOナノ粒子の濃度で、より高いモル比の重合可能な表面処理剤と組み合わせて、SR601又はSR602を選択することによって可撓性ハードコートが達成できるということを示している。
【0142】
高屈折率コーティング実施例13〜18の調製
調製7〜10に従って表面改質された85重量%のZrOを、以下の表に示された、13重量%又は8重量%の重合可能な樹脂及び2重量%のIrgacure 184光開始剤と混合した。この組成物を前述のようにコーティングし、硬化させた。試験結果は以下のように説明される:
【0143】
【表11】

【0144】
【表12】

【0145】
実施例13〜16は、可撓性高屈折率ハードコートが、他の種類の共重合可能な表面処理剤(例えばSACなど)を非反応性相溶化表面処理剤(例えばMEEAAなど)と組み合わせて用いることによっても得ることができる、ということを示している。実施例17〜20は、可撓性高屈折率ハードコートが、共重合可能かつ非反応性相溶化表面処理剤を、他の種類の高屈折率粒子(例えば酸化スズを含むもの)と組み合わせて用いることによっても得ることができる、ということを示している。
【0146】
【表13】

【0147】
実施例21及び22を比較用3:1と比較することにより、CN120の濃度を上昇させることはまた、特に4マイクロメートルを下回る厚さに関しても可撓性を改善するということが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約20〜200マイクロメートルの範囲の厚さを有する光透過性基材と、
前記基材上に配置された、約3〜5マイクロメートルの範囲の厚さを有する高屈折率層であって、前記高屈折率層が、架橋された有機材料中に分散した、少なくとも1.60の屈折率を有する少なくとも60重量%の無機ナノ粒子を含む、高屈折率層と、
前記高屈折率層に結合された低屈折率表面層と、を含む、反射防止フィルムであって、
前記高屈折率層が、6mmのマンドレルサイズを使用してISO 1519に従って試験したときに、亀裂しない、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記架橋された有機材料が、少なくとも2つの芳香環及び前記2つの環のそれぞれに結合されたアルコキシル化(メタ)アクリレート基を含む、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む、重合可能な樹脂組成物の反応生成物である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記モノマー又はオリゴマーが以下の構造:
【化1】

を有し、式中、Zは独立して、−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、
Qは独立してO又はSであり、
Lは独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基であり、
nは0〜10の範囲であり、
R1は独立してH又はメチルである、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
nが1〜3の範囲であり、Lが分岐鎖又は直鎖C〜Cアルコキシ基である、請求項3に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記モノマー又はオリゴマーが以下の構造:
【化2】

を有し、式中、それぞれのR1は独立してH又はメチルであり、
それぞれのR2は独立してBrであり、
mは0〜4の範囲であり、
それぞれのQは独立して、O又はSであり、
nは0〜10の範囲であり、
Lは独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基であり、
zは芳香環であり、
tは独立して0又は1である、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
nが1〜3の範囲であり、Lが分岐鎖又は直鎖C〜Cアルコキシ基である、請求項5に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記無機ナノ粒子が、前記有機材料と共重合する第1表面処理剤と、非反応性相溶化基を有する第2表面処理剤と、を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記第1表面処理剤が(メタ)アクリルシランを含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記第1表面処理剤が(メタ)アクリルオキシアルコキシシランを含む、請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記第1表面処理剤が、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、及びこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記第1表面処理剤が不揮発性モノカルボン酸を含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記非反応性相溶化基がポリエーテル末端を含む、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記第2表面処理剤が、ポリエーテル末端を含むモノカルボン酸又はシランである、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記第1表面処理剤及び前記第2表面処理剤が、少なくとも3:1のモル比で存在する、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記第1表面処理剤及び前記第2表面処理剤が、少なくとも5:1のモル比で存在する、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
前記第1表面処理剤及び第2表面処理剤が、少なくとも9:1のモル比で存在する、請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項17】
前記架橋された有機材料が、重合可能な樹脂組成物と、少なくとも3つの重合可能な(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1つの架橋剤との反応生成物を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項18】
前記光透過性基材が、0.10mm〜0.15mm(4〜6ミル)の範囲の厚さを有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項19】
前記低屈折率層が、少なくとも1つのフッ素化フリーラジカル重合可能なフルオロポリマーを含む重合樹脂組成物と、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1つの架橋剤との反応生成物を含む、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項20】
請求項1に記載の反射防止フィルムを含む光学デバイス。
【請求項21】
低屈折率表面層と、
前記低屈折率層に結合された高屈折率層と、を含む反射防止フィルムであって、前記高屈折率層が、少なくとも2つの芳香環を少なくとも11固形分重量%の量で含む少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含む、重合可能な樹脂組成物の反応生成物中に分散した、少なくとも1.60の屈折率を有する少なくとも60重量%の無機ナノ粒子を含む、反射防止フィルム。
【請求項22】
前記モノマーが以下の構造:
【化3】

を有し、式中、Zは独立して、−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、
Qは独立してO又はSであり、
Lは独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基であり、
nは0〜10の範囲であり、
R1は独立してH又はメチルである、請求項21に記載の反射防止フィルム。
【請求項23】
nが1〜3の範囲であり、Lは分岐鎖又は直鎖C〜Cアルコキシ基である、請求項22に記載の反射防止フィルム。
【請求項24】
前記モノマーが以下の構造:
【化4】

を有し、式中、それぞれのR1は独立してH又はメチルであり、
それぞれのR2は独立してBrであり、
mは0〜4の範囲であり、
それぞれのQは独立してO又はSであり、
nは0〜10の範囲であり、
Lは独立して、分岐鎖又は直鎖C〜C12アルキル基又はアルコキシ基であり、
zは芳香環であり、
tは独立して0又は1である、請求項21に記載の反射防止フィルム。
【請求項25】
nは1〜3の範囲であり、Lは分岐鎖又は直鎖C〜Cアルコキシ基である、請求項24に記載の反射防止フィルム。
【請求項26】
前記重合可能な樹脂組成物が、少なくとも3つの重合可能な(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1つの架橋剤を更に含む、請求項21に記載の反射防止フィルム。
【請求項27】
低屈折率表面層と、
前記低屈折率層に結合された高屈折率層と、を含む反射防止フィルムであって、前記高屈折率層は、架橋された有機材料中に分散した、少なくとも1.60の屈折率を有する、少なくとも60重量%の無機ナノ粒子を含み、前記無機ナノ粒子は、前記有機材料と共重合する第1表面処理剤と、非反応性相溶化基を有する第2表面処理剤と、を含み、前記第1表面処理剤及び第2表面処理剤が少なくとも5:1のモル比で存在する、反射防止フィルム。
【請求項28】
前記有機材料が、少なくとも3つの重合可能な(メタ)アクリレート基を有する1つ以上の架橋剤からなる、請求項27に記載の反射防止フィルム。
【請求項29】
第1(メタ)アクリルシラン表面処理剤及び第2非反応性シラン表面処理剤で表面処理された、少なくとも1.60の屈折率を有する表面改質無機ナノ粒子であって、前記第1表面処理剤及び第2表面処理剤が少なくとも5:1のモル比で存在する、表面改質無機ナノ粒子。
【請求項30】
請求項29に記載の表面改質ナノ粒子を含む、重合可能な樹脂組成物。

【公表番号】特表2011−527027(P2011−527027A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516423(P2011−516423)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/046979
【国際公開番号】WO2010/002562
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】