説明

可撓管および流体輸送構造

【課題】互いに連結された際に連結部における流体の漏洩を低減することが可能に構成されており、かつ、長期的な使用が可能で、なおかつ、安価な可撓管および流体輸送構造を提案する。
【解決手段】所定の流路面積を有した筒状の管本体10と、管本体10の端部に一体に形成された突出部12とからなり、端部の周縁に沿って環状のファスナーストリンガー21がその始端と終端が突出部12に配置されるように構成された可撓管1と、ファスナーストリンガー21,21を係合するとともに突出部12,12をクリップ14により把持することで複数の可撓管1,1を連結して構成された風管(流体輸送構造)P。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに連結することで流体の輸送を行う可撓管とこの可撓管を連結することにより構成された流体輸送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネル工事等において、切羽への送気または切羽からの排気を目的として、ビニール管等からなる可撓管を風管として坑外から切羽まで配管する場合がある。このような風管は、トンネルの掘進の進捗に応じて随時延長する必要がある。
【0003】
従来、風管を延長する方法として、可撓管の先端に予めスライドファスナー(ファスナーストリンガー)を一体に形成し、このスライドファスナーを介して可撓管同士を連結する場合があった。ところが、このスライドファスナーによる連結部分から漏風が発生することによる問題が生じていた。そして、この連結部分からの漏風は、スライドファスナーの終端と始端との間に不可避的に形成される欠損部において特に大きく生じている。
【0004】
このような可撓管同士の連結部における漏風を防止する対策として、特許文献1には、図5に示すように、可撓管110の下流側端部の内面に、スカート111を一体に形成し、このスカート111を介して継手部102からの漏風を防止する可撓風管の接続装置101が開示されている。
【0005】
この可撓風管の接続装置101のスカート111は、下流側に連結された可撓管120の内部に挿入されるように、可撓管110の下流側先端から突出する長さを有している。可撓管110,120の接続は、上流側の可撓管110のスカート111を、下流側の可撓管120に挿入した状態で行う。この状態で送風することにより、スカート111が下流側の可撓管120の内面に押付けられて、可撓管110,120同士の連結部(ファスナー)102を内側から覆うため、この連結部102からの漏風が防止される。なお、図5における符号112は、スカート111の密着性を向上させることを目的として配置された、錘材である。
【0006】
また、この他の風管からの漏風の防止策として、特許文献2には、図6(a)および(b)に示すように、風管の連結部を極力少なくすることを目的として、通常の長さ10mの可撓管の代わりに、長さ100mの長尺可撓管210を使用する風管延伸装置201が開示されている。この長尺可撓管210は、カプセル220に収縮した状態で収められたものを、トンネルの掘進に応じて順次カプセル220から引き出すことで伸長される。
【0007】
【特許文献1】特開2004−218344号公報([0006]−[0009]、図1)
【特許文献2】特開2000−345800号公報([0011]−[0015]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載の可撓風管の接続装置101は、風管内の風力が弱い場合に、スカート111の下流側の可撓管120への密着度が不完全となる場合があった。また、長年の使用により、スカート111にしわが生じて、漏風が大きくなる場合があることや、このしわの部分での風圧の圧力損失が大きくなる場合があり、トンネル延長が長い場合には、送風設備を大規模化して、風力を強める必要があるという問題点を有していた。
【0009】
また、特許文献2に記載の風管延伸装置201は、長尺可撓管210が収容されたカプセル220が大規模となるため、トンネルの坑口において、このカプセル220を配置するスペースを確保できない場合があり、当該風管延伸装置201を使用できる施工現場が限られてしまうという問題点を有していた。特に、大都市部におけるシールドトンネルでは、坑口部の作業スペースが限られており、カプセル220を配置するためのスペースを確保できないことが多い。また、長尺可撓管210を収容するために特別に製造されたカプセル220が高価であるという問題点も有していた。
【0010】
このような可撓管の連結部における漏洩の問題は、トンネル施工時の換気に使用される風管に限らず、あらゆる筒状部材同士の連結時において生じている。
【0011】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、互いに連結された際に連結部における流体の漏洩を低減することが可能に構成されており、かつ、長期的な使用が可能で、なおかつ、安価な可撓管および流体輸送構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明は、所定の流路面積を有した筒状の管本体と、前記管本体の端部に一体に形成された突出部と、からなる可撓管であって、前記管本体の端部周縁には、環状のファスナーストリンガーが形成されており、該環状のファスナーストリンガーの始端と終端は、前記突出部に配置されていることを特徴としている。
【0013】
かかる可撓管によれば、互いの端部に形成されたファスナーストリンガーを係合することにより連結されるとともに、ファスナーストリンガーの終端と始端とが、管本体の端部に形成され突出部に配置されるように構成されているため、スライドファスナーの漏洩の主原因であるスライドファスナーの終端と始端との間の欠損部が、管本体の流路から分離されて、連結部からの漏洩が大幅に低減される。そして、このスライドファスナーの欠損部は、管本体に突出した状態で形成された突出部分に配置されるため、この突出部分を把持するなどにより、欠損部を容易に遮蔽することが可能である。そのため、連結部における漏洩を防止するための部材を別途配置する必要や特別な加工を施す必要がないため経済的である。さらに、長期的な使用により変形が生じることもない。
【0014】
また、前記突出部が、前記管本体の端部の一部を断面外方向に膨出させることにより形成された余剰部分であれば、ファスナーストリンガーを可撓管の端部に沿って形成するのみで、ファスナーストリンガーの始端と終端とが管本体の流路から突出した位置に配置されるため、可撓管の製造が容易であるとともに、製造に要する費用の削減が可能となる。
【0015】
また、前記可撓管において、前記ファスナーストリンガーが気密性ファスナー用のファスナーストリンガーであれば、スライドファスナーからの漏洩が防止されて、より機密性に優れた連結構造が形成されるため、好適である。
【0016】
また、本発明の流体輸送構造は、前記可撓管を複数連結することにより構成された流体輸送構造であって、流路方向に隣り合う前記可撓管同士は、端部に形成された互いの前記ファスナーストリンガーを係合することにより連結されるとともに、前記突出部同士が把持部材に把持されることにより前記ファスナーストリンガーの終端と始端との間に形成される欠損部が前記管本体の流路から分離されていることを特徴としている。
【0017】
かかる流体輸送構造は、スライドファスナーの係合と、把持部材による突出部の把持のみで簡易に可撓管同士の連結がなされているため、配管時等の作業性に優れている。さらに、スライドファスナーの始端と終端に不可避的に形成される欠損部は、把持部材により突出部を把持することで遮蔽(流路から分離)されるため、輸送物(流体)の漏洩が防止されていて、好適である。
【0018】
また、前記流体輸送構造において、前記突出部の内面を互いに貼り合わせることにより所定の流路断面を形成すれば、流体の輸送に対する圧力損失がなく、効率的である。また、余剰部分の内面を貼り合わせることによりスライドファスナーの欠損部に連通する部分が遮蔽されるため、連結部からの輸送物(流体)の漏洩がより効果的に低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、互いに連結された際に連結部における流体の漏洩を低減することが可能となり、かつ、長期的な使用が可能で、なおかつ、安価な可撓管および流体輸送構造を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
ここで、図1は、本実施形態に係る流体輸送構造を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。また、図2は、本実施形態に係る可撓管を示す図であって、(a)は側面図、(b)は部分斜視図である。さらに、図3は把持部材を示す斜視図である。
【0021】
本実施形態では、トンネル工事において使用される換気用の風管について、本発明の可撓管および流体輸送構造を使用する場合について説明する。
【0022】
本実施形態に係る風管(流体輸送構造)Pは、図1(a)に示すように、流路方向に隣り合う可撓管1,1の端部を突き合わせた状態で連結することにより構成されており、図示しないトンネルの坑口から切羽まで配管されている。
【0023】
風管Pは、可撓管1の端部に形成された互いのファスナーストリンガー21同士を係合するとともに、突出部12,12をクリップ(把持部材)14により把持することにより複数の可撓管1,1を連結することで構成されている。
【0024】
可撓管1は、図1(a)および(b)に示すように、所定の流路面積を有した円筒状の管体であって、端部に環状のファスナーストリンガー21が形成されていることにより、可撓管1同士の端部を突き合わせた状態での連結が可能に構成されている。なお、可撓管1の断面形状は、円形に限定されないことはいうまでもなく、例えば、矩形断面でよい。
【0025】
可撓管1は、図2(a)および(b)に示すように、円筒状の管本体10により構成されており、管本体10の端部の一部を径方向に膨出させることにより、平面視でV字状、側面視で台形の突出部(余剰部分)12が形成されている。なお、管本体10の端部に形成される突出部12の形状は、台形状に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0026】
可撓管1の端部には、図2(b)に示すように、環状のファスナーストリンガー21が、周縁に沿って形成されており、このファスナーストリンガー21の始端21aと終端21bは、可撓管1の突出部12に配置されるように構成されている。つまり、可撓管1同士を連結した状態で、スライドファスナー20の始端21aと終端21bは、可撓管1(風管)の流路から突出する位置(連結遮蔽部11)に配置されるように構成されている(図1参照)。
【0027】
突出部12の内面には、図2(b)に示すように、ウレタンシール13,13が貼着されており、可撓管1同士を連結した際に、突出部(余剰部分)12,12を互いに貼り合わせて遮蔽することで、円形の流路断面を形成するように構成されている。なお、突出部12の貼り合わせは、ウレタンシール13によるものに限定されないことはいうまでもなく、適宜公知の接着手段から選定して行えばよい。
【0028】
ファスナーストリンガー21は、スライドファスナー20を構成するものであり、他の可撓管1の端部に形成されたファスナーストリンガー21とつき合わせた状態で、スライダー24を摺動させることにより、互いに係合する。(図1(a)参照)。
【0029】
ファスナーストリンガー21は、図2(a)に示すように、複数のファスナーエレメント22,22,…とこのファスナーエレメント22,22,…が固定されたファスナーテープ23とにより構成されている。そして、ファスナーストリンガー21の始端21aと終端21bは、図2(b)に示すように、可撓管1の端部に形成された突出部12の先端に配置されている。
【0030】
本実施形態では、スライドファスナー20として、気密性ファスナーを使用するものとし、スライドファスナー20からの漏風を防止(低減)している。なお、スライドファスナー20は、気密性ファスナーに限定されるものではなく、適宜公知のスライドファスナーが使用可能である。
【0031】
可撓管1,1は、図1(a)および(b)に示すように、スライドファスナー20を介して連結することにより、台形状の連結遮蔽部11が可撓管1,1の連結部の側面から突出した状態で形成される。連結遮蔽部11は、可撓管1,1の端部に形成された、突出部12,12が連結されることにより形成されており、スライドファスナー20の始端21aと21bが配置されている。
【0032】
連結遮蔽部11は、その根元付近であって、スライドファスナー20の始端と終端の管本体側において、クリップ14により把持されている。連結遮蔽部11が、クリップ14により把持されることで、スライドファスナー20の始端21aと終端21bとの間に形成される欠損部からの空気の漏洩が防止されている。ここで、クリップ14の形式等は限定されるものではないが、本実施形態では、図3に示すように、二つ折のトング状に形成された板材であって、一方の先端には係止孔14aが、他方の先端には係止孔14aへの係止が可能に構成された係止部材14bが形成されていて、連結遮蔽部11を把持することが可能に構成されている。
【0033】
本実施形態に係る可撓管1,1の連結は、以下の手順により行う。
連結する2本の可撓管1,1の端部を互いに突き合わせた状態で、互いの先端に形成されたファスナーストリンガー21同士を、スライダー24を摺動させることにより係合させる。なお、突出部12,12の内面には、ウレタンシール13を接着しておく。
スライドファスナー20を完全に係合すると、スライドファスナー20の始端と終端は連結遮蔽部11に配置される。この状態で連結遮蔽部11(突出部12,12)を風管の軸方向と直交する方向から押圧力を付与することにより密着させる。さらに連結遮蔽部11をクリップ14により把持することで、連結遮蔽部11を圧着し、スライドファスナー20の始端21aと終端21bとの間に形成される欠損部と風管の流路とを分離する。
【0034】
本実施形態に係る可撓管1によれば、スライドファスナー20の係合と、連結部の連結遮蔽部11をクリップ14により把持するのみで、連結部からの漏風が防止された状態で連結が可能なため、可撓管1同士の連結および取り外しを容易に行うことができ、作業性に優れている。また、可撓管1の構造が簡易なため、製造費用も安価で、経済的である。
【0035】
また、別途、漏風防止用の部材等を配置する必要がないため、可撓管1の保管スペース以外の保管スペースを確保する必要がなく、スペースの限られた大都市におけるトンネル施工においても、好適に採用することが可能である。
【0036】
また、スライドファスナー20の欠損部は、突出部12,12を接着することにより密閉するとともに、クリップ14で把持することで2重に遮蔽しているため、風管(可撓管1)の内空の挿通する空気(流体物)が欠損部から流出することを確実の防止している。また、このスライドファスナー20の欠損部の遮蔽は、風管の流路面積の外部において行うため、流量が低減されることや、圧力損失が生じることなどの弊害がなく、好適である。
【0037】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、トンネル施工時の換気用の風管に本発明の連結構造を採用する場合について説明したが、本発明の連結構造は、風管の連結に限定されるものではなく、あらゆる流体物を輸送する管体の連結に適用可能であることはいうまでもない。
【0038】
また、前記実施形態では、管本体10の端部の断面積を大きくすることにより、突出部12を形成するものとしたが、突出部12の形成方法は、限定されるものではない。例えば、図4に示すように、管本体10の端部に、余剰布12’を貼り付けて、この余剰布12’,12’にファスナーストリンガー21の始端21aと終端21bを配置してもよい。
【0039】
また、連結遮蔽部(突出部)を把持する把持部材として、トング状のクリップを使用するものとしたが、突出部を把持する部材の構成が限定されないことはいうまでもない。
【0040】
また、突出部の内部に、欠損部と内空(流路)とを遮断することが可能であれば、必ずしもウレタンシールとクリップとの2重構造により遮蔽する必要はなく、いずれか一方のみを配置するものとしてもよい。
【0041】
また、突出部を張り合わせるためにウレタンシールを使用するものとしたが、単にスポンジゴム当の弾性体を挟み込んで、遮蔽する方法としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る可撓管の連結状況を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図2】本実施形態に係る可撓管を示す図であって、(a)は側面図、(b)は部分斜視図である。
【図3】把持部材を示す斜視図である。
【図4】可撓管の変形例を示す部分斜視図である。
【図5】従来の可撓管の連結構造を示す断面図である。
【図6】従来の可撓管の伸長構造を示す図であって、(a)は収縮時、(b)は伸長時を示している。
【符号の説明】
【0043】
1 可撓管
10 管本体
11 連結遮蔽部
12 突出部
13 ウレタンシール
14 クリップ
20 スライドファスナー
21 ファスナーストリンガー
21a 始端
21b 終端
P 風管(流体輸送構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流路面積を有した筒状の管本体と、
前記管本体の端部に一体に形成された突出部と、からなる可撓管であって、
前記管本体の端部周縁には、環状のファスナーストリンガーが形成されており、
該環状のファスナーストリンガーの始端と終端は、前記突出部に配置されていることを特徴とする、可撓管。
【請求項2】
前記突出部が、前記管本体の端部の一部を断面外方向に膨出させることにより形成された余剰部分であることを特徴とする、請求項1に記載の可撓管。
【請求項3】
前記ファスナーストリンガーが気密性ファスナー用のファスナーストリンガーであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の可撓管。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の可撓管を複数連結することにより構成された流体輸送構造であって、
流路方向に隣り合う前記可撓管同士は、端部に形成された互いの前記ファスナーストリンガーを係合することにより連結されるとともに、前記突出部同士が把持部材に把持されることにより前記ファスナーストリンガーの終端と始端との間に形成される欠損部が前記管本体の流路から分離されていることを特徴とする、流体輸送構造。
【請求項5】
前記突出部の内面を互いに貼り合わせることにより所定の流路断面を形成することを特徴とする、請求項4に記載の流体輸送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−315079(P2007−315079A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146887(P2006−146887)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(591075630)株式会社アクティオ (33)
【出願人】(000149930)株式会社谷沢製作所 (48)
【Fターム(参考)】