説明

可溶性TCR分子とその使用方法

本発明は、MHC又はHLA複合体として存在するペプチド抗原を含む、細胞又は組織を検出するための組成物及び方法を開示するものである。本発明は、がん細胞を検出するための高感度な方法を提供することを含む幅広い適応を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、「可溶性TCR分子とその使用方法」の名称で2003年11月10日に出願された米国仮特許出願第60/518,790号の優先権を主張するものであり、その全てを本明細書取り込む。
【0002】
(技術分野)
本発明は、MHC又はHLA複合体として存在するペプチド抗原を含む細胞又は組織を検出するための組成物及び方法を特徴とする。本発明は、がん細胞を検出するための感度の高い方法を提供することを含む広範な適用を有する。
【0003】
(米国政府の権利に関する記載)
本発明は、米国立衛生研究所のグラント第1R43CA88615−01号及び第1R43CA105816−01号に基づき、一部米国政府の助成を受けてなされたものであり、米国政府は本発明に関して所定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
免疫療法は、がん治療のための有望な方法であるとの認識が増しており、インターロイキン2(IL−2)のようなサイトカインでの治療を含む様々な方法が提案されている。IL−2は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、リンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)及びNK細胞を含む様々な免疫細胞種に影響を与えるものである。[文献10及び40参照]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
効力を上げるために腫瘍部位にサイトカインを濃縮させることが提案されてきた。一般的な方法としては、サイトカイン又はそれをコードする遺伝子を腫瘍内へ直接注入すること、又はサイトカインを腫瘍抗原に特異的な抗体に融合させることによる標的化送達[文献20参照]があるが、これらの方法には問題がある。
【0006】
例えば、多くの直接注入法は、腫瘍が概して小さい(微小転移巣)特にがんの初期段階で使用するのが困難である。さらにこの方法は、治療の成功の見込みが殆どないにもかかわらず多大な労力を要するものである。当該方法による治療は、多くの患者にとって非実用的であり、費用の嵩むものである。
【0007】
がんを治療する一つの方法として抗体とサイトカインの融合物が用いられてきたが、抗体の結合範囲には限りがあるため、当該方法も限られたものとなっている。すなわち、抗体は特定の細胞表面の抗原を認識することしかできないからである。残念乍ら、腫瘍抗原の多くは、抗体認識に都合よく提示されるわけではないので、抗体に基づく方法の可能性については限界がある。さらに、腫瘍に特異的な抗原の多くは、細胞型に特異的なタンパク質の異常発現に由来するとの報告があるが、これらは少数の腫瘍型にのみ存在するものである。当該問題は、抗体に基づいた治療の可能性をさらに限定するものである。
【0008】
p53タンパク質は、細胞周期のG1/S期で異常細胞を拘束することにより作用することが報告されている、細胞内の腫瘍抑制因子である。そのタンパク質の過剰発現は、多くのヒト悪性腫瘍に対する重要な腫瘍マーカーであると信じられており、広い標的範囲を有する腫瘍免疫療法の良い標的であると認識されている。p53タンパク質は、通常、主要組織適合性複合体タンパク質(MHC)として、細胞表面に提示される。このタンパク質複合体は、T細胞受容体(TCRs)の結合標的であることが知られている。[文献49参照]
【0009】
ペプチドを含むMHC/ペプチド複合体を検出するために、ある種のTCRsを用いる試みがなされてきた(Epelら, 2002; Hollerら, 2003; Lebowitzら, 1999; Plaksinら, 1997; Watayaら, 2001; O'Herronら, 1997)が、これら、また、関連の方法には、重大な欠点がある。
【0010】
例えば多くの方法において、おそらくは、ペプチド抗原のペプチド抗原に対する結合を人為的に促進するために、TCR構築物を複合体化させる(すなわち、多様なTCRコピーを持つようにデザインされる)ことが必要とされている。標的(抗原提示)細胞は一般に、比較的大量のペプチド抗原を発現するように操作されているが、ペプチド抗原の密度は、場合によっては、細胞当たりの複合体数が10〜10個と高くなる(Watayaら, 2001)。ペプチド抗原の密度が高いと、TCRでの結合及び検出が容易になると考えられているが、ペプチド抗原のこのようなレベルは人為的なものであり、腫瘍関連抗原(TAAs)が存在するMHC/ペプチド複合体の通常のレベルよりは遙かに高くなっている。TAAsによっては、HLA/ペプチド複合体が一つの細胞当たり約50未満しか存在しないものもある(Pascoloら, 2001; Schirleら, 2000)。従って、従来の方法は、全てではないにしても大部分のTAAsを検出するには感度が十分であるとは言えない、との認識がある。
【0011】
ある種のTCRsを用いて特定のペプチド抗原を発現している細胞を検出する試みがなされてきたが、抗体に基づいた多くの方法と同様、これらの取り組みはペプチド抗原を検出するには感度が十分ではなかったか、又は抗原を完全には検出することができなかった。
【0012】
例えば、Hollerら(2003)は、MHC/ペプチド複合体と反応することが報告されているある種の可溶性TCRsの開発を報告した。そのTCRsは、人為的に抗原を「収容した(loaded)」細胞に於いては抗原を検出できたが、腫瘍細胞上の内因性の抗原を検出することはできなかった。Hollerらは、抗原が細胞当たり600コピー未満の低い密度でしか存在しない場合には、TCRに基づいた方法は、抗原を検出する感度や信頼性が十分ではないと結論付けた。
【0013】
TCRに基づいた特定の方法は、MHC分子としてのウィルスペプチドを検出するために用いられてきた(Stromingerらの国際公開第9618105号公報)が、これら及び関連の方法には問題がある。例えば、ウィルス感染はしばしば例外的に、一つの細胞に通常1000〜10個といった高い密度でMHC/ペプチド複合体を産生するものと一般的に認識されている。Herbertsら(2001)及びvan Elsら(2000)を参照されたい。他の多くのペプチド抗原の検出方法と同様に、これまでのTCRに基づいたウィルス抗原を検出するための方法には、比較的多数の標的抗原が用いられてきた。
【0014】
いくつかのTCRに基づいた方法は比較的大量のペプチド抗原を検出するために用いられてきたが、サイトカイン、IgG1のような免疫グロビン(immunoglobin)ドメイン、ビオチン、又はストレプトアビジンのようなその他の分子にTCRが結合した場合に、その方法が機能するかどうかは、あまり確かではない。すなわち、特に低密度のTAAを分析する必要がある場合に、その融合分子がTCRペプチド結合溝に対してどのように影響するのかは明らかではない。TCRペプチド結合溝の小さな歪曲は、比較的多くのペプチド抗原を分析する際には必ずしも問題とはならないが、TAA結合の特異性及び選択性を減少させている。TCRペプチド結合溝の機能に於けるわずかな変化でさえも、低密度のTAAしか発現していないがん細胞の検出を危うくする可能性がある。
【0015】
特に、ペプチド抗原が低密度にしか発現していない場合に、高感度で、選択性があり、再現性のあるTAAsを検出できる方法があれば、有用である。そのような方法がもし、検出可能な標識又はサイトカインに結合した分子を含む多様な可溶性TCRsを用いるものであれば、特に有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、一般に、MHC又はHLA複合体として細胞又は組織に存在しているペプチド抗原を含む細胞又は組織を検出するための方法に関する。ある態様に於いては、本発明は、以下の:
a)細胞又は組織を、存在しているペプチド抗原と可溶性TCR分子又はその断片が特異的な結合複合体を形成する条件下で、少なくとも一つの可溶性TCR分子又はその機能性断片に接触させる、
b)存在しているペプチド抗原に結合しなかったすべての可溶性TCR分子又はその断片を取り除くのに適した条件下で、細胞又は組織を洗浄する、及び
c)存在しているペプチド抗原を含む細胞又は組織の指標としての特異的な結合複合体を検出する、
工程のうち少なくとも一つ、好ましくはその全てを含む。
【0017】
好ましい実施に於いて、本発明は、細胞又は組織上のペプチド抗原の量が、約100000コピーより少ない、好ましくは約100から800コピーのような1000コピーより少ないものを検出するために利用される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の使用にはいくつかの利点があるが、例えば、本発明は、きわめて感度が高いので、内因性ペプチド、より特化すれば、操作されていない腫瘍細胞に存在する腫瘍関連ペプチド抗原を含む非常に低密度のMHC/ペプチド複合体を検出及び場合によっては定量するために利用される。一方、MHC/ペプチド複合体を検出するための従来の方法は、相対的により高密度の複合体を検出できることが報告されている。
【0019】
さらに、本発明は、例えば腫瘍組織アレイのような組織アレイに通常みられるような固定された細胞及び組織を検出及び場合によっては定量するために利用される。MHC/ペプチド複合体を検出する能力(「染色」とも言う)は、特に患者から採取された細胞、組織又は他の生物学的試料の固定化が通常行われている臨床又はその他の医学的環境に於いて有用である。一方、非共有結合ペプチドは通常、組織を処理する工程で失われてしまうので、従来のTCRに基づいた検出方法の多くは固定化された組織には適用できない。
【0020】
本発明は、更なる利点を提供する。例えば、本発明の方法は、単量体及び/又は多量体の可溶性TCR分子を使用する場合にも柔軟に適応されるものとなっている。従来の方法は残念乍ら、主に柔軟性と感度が限られている多量体のTCRsを使用するものであった。多量体のTCRsは特に、分解又は凝集能力、標的部位への到達性を欠くこと、免疫原性の増加びクリアランスのため、インビボ画像化に使用するのは難しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の態様は、細胞の表面にMHC/ペプチド複合体として提示される内因性ペプチド抗原を検出する能力を提供することによって、当該分野で長らく待ち望まれてきたニーズに応えるものである。本発明の方法は、細胞の活性、病理、及び感染をモニターする助けとなる様々な重要な使用を有する。例えば、本発明による細胞又は組織の内因性腫瘍関連のペプチド抗原の検出は、がんの存在/存在範囲を検出及び及び場合によっては定量する方法を提供する。従来の態様に於いては、がん細胞の表面にあるタンパク質性抗原を検出する診断ツールとして抗体を利用してきたが、抗体は通常、細胞膜タンパク質の検出に限られたものとなっている。さらに、抗体による検出は、抗原が遊離する(shedding)又は抗原性タンパク質が循環系に分泌されるといった障害がある。抗体は又、標的の認識に限界がある。本発明の態様は、標的ペプチド抗原を検出するために可溶性TCRs及びその断片を使用する、高感度で信頼性のある検出方法を提供することによって、これら及び他の問題を回避するものである。
【0022】
本発明のそのような使用及び利点は、インビボ(例えば、画像化又は診断法のような)又はインビトロ(例えば、組織アレイ又はFACS分析のような)を含む様々な状況に於いて、ペプチド抗原を検出するために用いることが可能である。
【0023】
本発明のその他の態様は、下記考察の通りである。
【0024】
(発明の詳細な説明)
上記考察のように、本発明は一般に、MHC複合体として細胞又は組織に提示されるペプチド抗原を含む細胞又は組織を検出するための方法を含む。ある態様では、本発明は、存在しているペプチド抗原と可溶性TCR又はその断片が特異的に結合する複合体を形成する条件下で、少なくとも一つの可溶性TCR分子又はその機能的断片と細胞又は組織を接触させること、存在しているペプチド抗原に結合しなかったすべての可溶性TCR分子又はその断片を取り除くのに適した条件下で、細胞又は組織を洗浄すること、及び存在しているペプチド抗原を含む細胞又は組織の指標としての特異的な結合複合体を検出すること、を含む。
【0025】
一般に、本可溶性TCRsは、本明細書に開示されている手順及び認識されているDNA組み換え技術を用いての調製される。例えば、プラスミドDNAの調製、制限酵素によるDNA切断、DNAの結紮、DNAの細胞内への導入、細胞の培養、並びに発現タンパク質の単離及び精製は、公知の技術である。一般的には、Sambrookらの「Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed. 1989)」;及びAusubelらの「Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons, New York(1989)」を参照されたい。
【0026】
様々な可溶性TCR構築物の一般的な構造並びに同一物の作製及び使用の方法は、係属中の米国特許出願第08/813,781号及び第08/943,086号に開示されている。
【0027】
例えば、特定の可溶性TCRは、少なくとも片方、好ましくは両方のV鎖に於いて膜貫通配列が除去されている異種二量体である。しかしながら便宜上、係属中の出願第08/813,781号及び第08/943,086号に報告されているように、一本鎖の(「sc−」)構築物を使うことが好まれる場合が多い。
【0028】
簡潔に述べると、一本鎖の(「sc−」)TCR分子は、適切なペプチドリンカー配列を介して共有結合しているV−α及びV−β鎖を含む。例えば、V−α鎖は、V−α鎖のC末端とV−β鎖のN末端に結合した適切なペプチドリンカー配列を介して、V−β鎖に共有結合できる。sc−TCR融合タンパク質のV−α及びV−β鎖は、一般にアミノ酸長が約200から400であり、好ましくはアミノ酸長が約300から350であり、天然に存在するTCRのV−α及びV−β鎖と、少なくとも90%、好ましくは100%同一である。「同一(identical)」という用語は、V−α又はV−β鎖のアミノ酸は、対応する天然に存在するTCRのV−β又はV−α鎖と100%相同(homologous)であることを意味する。
【0029】
第08/943,086号出願に開示されているように、sc−TCR分子のV−α鎖はさらに、V−β鎖のC末端に結合したC−β鎖又はその断片を含むことができる。さらに、V−α鎖は、V−α鎖のC末端及びペプチドリンカー配列のN末端に、結合したC−α鎖又はその断片を含むことができる。一般に、C−β鎖断片を含む融合タンパク質に於いて、その断片はアミノ酸長が約50から130であり、通常C−β鎖の最後のシステイン残基(マウスに於いては127位、ヒトに於いては131位)を含まない。C−α鎖を含む融合タンパク質では、その長さは、約1から90アミノ酸(すなわち、最後のシステイン残基を含まないがそこまでのC−α鎖)の間で変化してもよい。例えば、ある態様に於いては、融合タンパク質は、1番目のアミノ酸から始まり72番目までのアミノ酸長約1〜72のC−α鎖断片を含む。別の態様に於いては、C−α鎖断片は、最初のアミノ酸から始まり22番目(ロイシン)までのアミノ酸長約1〜22である。C−α鎖断片は、通常、二つのシステイン残基を含んだCα90変異体及び一つのシステイン残基を含んだCα72変異体以外は、如何なるシステイン残基も含まない。Cα及びCβ鎖長は、選択された特定のV鎖及び可溶性融合分子の使用目的を含むいくつかのパラメータを使用して選択される場合が多い。
【0030】
さらに第08/943,086号出願に開示されるように、本発明の追加のsc−TCRタンパク質は、V−α鎖のC末端とV−β鎖のN末端の間に最初のペプチドリンカー配列が結合する場合には、例えば、二つのペプチドリンカー配列を含む。V−β鎖のC末端は、C−β鎖断片のN末端に結合でき、そして2番目のペプチドリンカーは、V−β鎖又はC−β鎖断片のC末端又は、必要に応じて、以下に説明されるような標識分子に結合する。別の説明的な態様に於いては、sc−TCRタンパク質は、V−β鎖又はそのC−β鎖断片のC末端と、V−α鎖のN末端を共有結合でつなぐ、適当なペプチドリンカーを介してV−β鎖をV−α鎖に結合することによって作製することができる。
【0031】
本発明の可溶性TCRタンパク質は、一つ又はそれ以上の融合したタンパク質タグ(protain tag)を含むことができる。そのようなタグが「検出可能」である態様に於いて、可溶性TCRは、「検出可能に標識された」と言える。例えば、可溶性の融合タンパク質に関して、タンパク質タグは、sc−TCRのV−β鎖(又はC−β鎖断片)のC末端に結合可能である。必要に応じて、このような可溶性TCRタンパク質は、係属中の第08/943,086号出願によって報告されているような、また、以下の実施例に於いてさらに説明されるような、免疫グロビン鎖に結合可能である。
【0032】
本発明で使用される好ましい可溶性融合タンパク質は、完全に機能的で可溶性である。「完全に機能的」という用語又は同様の用語は、融合タンパク質が特異的にリガンドに結合することを意味する。このような特異的な結合を検出するためのアッセイは、本明細書に開示されており、また、ウェスタンブロットのような標準的なイムノブロット技術を含む。このような可溶性TCRsの機能的断片は、ウェスタンブロットや表面プラズマ共鳴分析により決定される親和性で、対応する全長TCRの少なくとも70%、好ましくは約80から90%、又はそれ以上で抗原に結合することができる。
【0033】
適したTCR鎖の核酸及びタンパク質配列は、公開されている。例えば、「Fundamental Immunology,(1993)3rd Edi. W. Paul. Ed. Rsen Press Ltd. New York」;及びKabat,E.A.らの「Sequences of Proteins of Immunological Interest (5th Ed.) Public Health Services, National Institutes of Health(1991)」を参照されたい。又以下の実施例同様、係属中の第08/813,781号及び第08/943,086号出願を参照されたい。
【0034】
本発明の特定の態様に於いて、本発明の方法はさらに細胞又は組織を少なくとも一つのブロッキング試薬に接触させることを含む。接触させる工程は、可溶性のTCR又はその断片と細胞との非特異的結合を減少させるため、工程a)の前、間、又は後、を含むどの時点で実施してもよい。本発明では、過酸化物、血清蛋白質、抗体又はその抗原結合断片のような、ほとんど全ての標準的ブロッキング試薬も利用できる。
【0035】
ある態様に於いては、検出される細胞又は組織上のMHC複合体に対するTCRの結合特異性を確定ことが有用である。その場合、本発明はさらに、複合体に結合できる可溶性TCR又は断片に競合的及び特異的に結合する条件下で、特定の複合体(細胞又は組織上に存在する可溶性TCRとMHC複合体間に形成される)が、競合するMHC(又はHLA)分子若しくはその断片と接触させることを含む。様々な適応するMHC分子が公開されている。
【0036】
本発明の方法の一つの態様では、競合MHC分子又はその断片の添加により、可溶性TCR又はその断片が競合MHC分子又はその断片に結合して競合複合体を形成し、可溶性TCR又はその断片の特異的な結合が減少、若しくは実質的に解消される。本発明の方法のある特定の態様に於いては、競合MHC分子は、可溶性TCRに対する分子比率で0.01〜1000倍の濃度範囲、好ましくは1〜100倍で添加される。他の態様では、競合MHC分子は、可溶性TCRの特異的結合を減少させるのに十分な単一濃度(つまり、可溶性TCRに対する分子比率で1倍、10倍、又は100倍)で添加される。必要に応じて慣用的な方法の一つ又は何個かを組み合わせることにより、競合複合体を検出し、MHC分子又は可溶性TCRの結合特異性を決定することができる。特定のMHC分子又はその断片は一本鎖であるが、多くの場合、米国特許第5,869,270号;第6,309,645号;及び係属中の出願第09/848,164号に開示されているような、可溶性の異種二量体分子である。以下の実施例と同様、さらなる開示として国際特許出願PCT/US95/09816号を参照されたい。典型的なMHC分子又はその断片は、ペプチド抗原を収容している。
【0037】
本発明の実施に用いられるその他の可溶性TCR及びMHC分子に関連する開示として、次の公開された米国特許出願「第20020198144号;第20020091079号;第20020034513号;第20030171552号;第20030144474号;第20030082719号;及びそこに引用された参照文献」を参照されたい。
【0038】
結合特異性を確定することが望まれる典型的な方法に於いて、TCR分子又はその断片は、一つ又はそれ以上の標識で検出可能に標識される。適切な標識は、商業的に入手可能なモノクローナル抗体に特異的に結合されるEE又はmycエピトープを含む。一般に、抗体、例えばモノクローナル抗体、によって特異的に結合できる様々なエピトープが、タンパク質タグとして供給される。他の適当な合成マトリクスは、その分子を特異的に結合できる結合抗体を有するものを含む。さらなる標識は、エンテロキナーゼ、ファクターXa、蛇毒(スネークヴェノム)又はトロンビン切断部位を有するものを含む。公開された国際特許出願WO96/13593を参照されたい。
【0039】
TCR分子又はその断片を検出可能に標識するための他の適当な標識は、ビオチン、ストレプトアビジン、例えばジフテリア毒素(DT)、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、リシン、サポリン、シュードモナス外毒素(PE)、ポークウィード抗ウィルスタンパク質、又はゲロニンのような、例えば植物又は微生物を起源とする細胞毒を含む。そのような毒素の生物学的に活性な断片は当業者によく知られており、例えばDTのA鎖やリシンのA鎖を含む。さらに毒素は、例えばフォスフォリパーゼ酵素(例えばフォスフォリパーゼC)のような細胞表面で活性な試薬である。エフェクター又は標識を含むタンパク質を製造及び使用することに関連する公開として、Moskaugらの「J. Biol. Chem. 264, 15709 (1989)」; Pastan,I.らの「Cell 47, 641, 1986」; Pastanらの「Recombinant Toxins as Novel Therapeutic Agents, Ann. Rev. Biochem. 61, 331, (1992)」;「"Chimeric Toxins" Olsnes and Phil, Pharmac. Ther., 25, 355 (1982)」、「公開された国際特許出願WO 94/29350」;「公開された国際特許出願WO 94/04689」;及び「米国特許第5,620,939号」を参照されたい。ビオチン受容体の機能を有する標識の例は、Beckett,D.らの「Protein Sci. 1999 Apr; 8(4):921-9」に記載されているように、BirA標識である。以下の実施例にさらに述べられているように、BirA標識の配列は、タンパク質のビオチン化を促進するためにTCR分子に含まれうる。さらに標識は、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、アドリアマイシン、ブレオマイシン、又はシスプラチンのような化学療法剤でありうる。
【0040】
さらに標識は、診断又は画像化研究に適した、ヨウ素131、イットリウム90、レニウム188、ヨウ素123、インジウム111、テクネチウム99m、ガリウム67、タリウム201、又はビスマス212のような、放射性核種又はキレートであり得る。使用される放射性核種の中で、ガンマ放出体、陽電子放出体、X線放出体及び蛍光放出体は、局在のために適している、一方ベータ放出体やアルファ放出体も使用することができる。本発明の方法のための他の適当な放射性同位元素は、カドミウム109、アクチニウム225、アクチニウム227、アスタチン211、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素133、ジスプロジウム165、ジスプロジウム166、ビスマス212、ビスマス213、臭素77、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム101、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀107、水銀203、レニウム186、レニウム188、テルリウム99m、テルリウム121m、テルリウム122m、テルリウム125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、フッ素18、銀111、白金197、パラジウム109、銅67、リン32、リン33、イットリウム90、スカンジウム47、サマリウム153、ルテニウム177、ロジウム105、プラセオジウム142、プラセオジウム143、プロメチウム149、テルビウム161、ホルミウム166、金198、金199、コバルト57、コバルト58、クロム51、鉄59、セレン75、及びイッテルビウム169を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、放射性同位元素は、10から5000kevの範囲、より好ましくは、50から1500kev、最も好ましい場合は50から500kevで放射するであろう。
【0041】
適した陽電子放射体及び他の有用な放射性核種は、11C、13N、15O、18F、51Mn、52Fe、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、62Zn、63Zn、70As、71As、72As、76Br、82Rb、86Y、89Zr、94mTc、110In、120I、124I、122Xe、128Ba、131Ba、Be、204Bi、205Bi、206Bi、14C、36C、48Cr、51Cr、155Eu、153Gd、66Ga、72Ga、H、115mIn、189Ir、191mIr、192Ir、194Ir、55Fe、59Fe、119mOs、42K、226Ra、186Re、188Re、82mRb、46Sc、47Sc、72Se、105Ag、22Na、24Na、89Sr、35S、38S、177Ta、96Tc、201Tl、202Tl、113Sn、117mSn、121Sn、166Yb、174Yb、88Y、90Y、62Zn及び65Znを含むが、これらに限定されるものではない。
【0042】
適したキレートは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1−置換1,4,7−トリカルボキシメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン三酢酸(DO3A)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)を含むが、これらに限定されるものではない。更なるキレート配位子は、エチレンビス−(2−ヒドロキシ−フェニルグリシン)(EHPG)、及び5−C1−EHPG、5Br−EHPG、5−Me−EHPG、5t−Bu−EHPG、及び5sec−Bu−EHPGを含むその誘導体;ベンゾジエチレントリアミン五酢酸(ベンゾ−DTPA)及びジベンゾ−DTPA、フェニル−DTPA、ジフェニル−DTPA、ベンジル−DTPA、及びジベンジル−DTPAを含むその誘導体;ビス−2(ヒドロキシベンジル)−エチレンジアミン二酢酸(HBED)及びその誘導体;少なくとも3個の炭素原子、より好ましくは少なくとも6個、及び少なくとも2個のヘテロ原子(O及び/又はN)を含むマクロ環状化合物の種類であり、そのマクロ環状化合物は、単一環、又はヘテロ環要素とともに結合した、2個か3個の環、例えばベンゾ−DOTA、ジベンゾ−DOTA、及びベンゾ−NOTA(ここに於いて、NOTAは、1,4,7−トリアザシクロノナンN,N’,N”−三酢酸である)、ベンゾ−TETA、ベンゾ−DOTMA(ここに於いて、DOTMAは1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−テトラ(メチル四酢酸)である)、及びベンゾ−TETMA(ここに於いて、TETMAは、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−(メチル四酢酸)である);1,3−プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)及びトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)の誘導体;1,5,10−N,N’,N”−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)−トリカテコレート(LICAM)及び1,3,5−N,N’,N”−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)アミノメチルベンゼン(MECAM)の誘導体を含むことができる;である。
【0043】
他の適した標識は、ポリヒスチジン、蛍光標識、化学発光標識、核磁気共鳴活性標識、発色団標識、陽電子放射性断層撮影法(「PET」)による検出可能な陽電子放射性同位元素、β−ガラクトシダーゼや西洋わさびペルオキシダーゼを含むペルオキシダーゼのような酵素マーカー、ナノ粒子、常磁性金属イオン、造影剤、又は抗原性標識を含む。
【0044】
適した蛍光標識は、152Eu標識、蛍光標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、オルトフタルアルデヒド標識、テキサスレッド標識、フルオレサミン標識、ランタナイドリン標識、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)標識のような蛍光タンパク質標識、又は量子ドット標識、を含みうるが、それらに限定されるものではない。化学発光標識の例は、ルミナル標識、イソルミナル標識、芳香性アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、エクオリン標識、などを含む。
【0045】
適した常磁性金属イオンは、Mn2+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Gd3+、Eu3+、Dy3+、Pr3+、Cr3+、Co3+、Fe3+、Ti3+、Tb3+、Nd3+、Sm3+、Ho3+、Er3+、Pa4+、及びEu2+を含むが、それらに限定されるものではない。
【0046】
使用できる酵素マーカーは、あらゆる容易に検出できる酵素活性又は酵素の基質を含む。そのような酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイド異性化酵素、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセリンリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸異性化酵素、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコース酸化酵素、βガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、ルシフェラーゼ、及びDNAポリメラーゼを含む。
【0047】
適したナノ粒子は、固体のコロイド状粒子、デンドリマー、リポソーム、ミセル、セラミック粒子、アルミナカプセル、乳化蝋又はBrij72粒子、強磁性体粒子、金又は銀粒子、ポリ(ラクティック−コ−グリコリック)酸、ポリグリコリック酸、ポリD−又はL−乳酸、ポリカプロラクトン、又は血清アルブミンを含む生分解性粒子、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、又はポリ(ブチルシアノアクリレート)又はその誘導体を含む粒子、を含むが、それらに限定されるものではない。本発明のある出願に於いては、ポリエチレングリコール、多糖類、ポリペプチド、脂質、シリカ、などのような試薬で覆われたナノ粒子が、用いられうる。そのような覆われたナノ粒子は、吸収、バイオアベイラビリティ、組織分布、組織交差反応性、毒性、薬物動態/作用、又は腫瘍局在性を改善することができる。標的リガンドをナノ粒子に付着させる方法は、可溶性TCRをベースとした試薬に適用されうることが、記載されている(例えば、Nobらの「J Pharm Sci.93:1980-92(2004)」を参照されたい)。
【0048】
本発明の可溶性TCRsは、単量体及び多量体TCRsを含む。多量体TCR分子は、TCRタンパク質が多量化を誘発するポリペプチドドメイン又はタグに融合されているものを含む。そのようなドメインは、タンパク質の二量化を促進する、免疫グロビン、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックス、及びバレル・バレルモチーフを含む。このようなタグは、抗体結合エピトープ、ストレプトアビジン結合ペプチド、6xHisモチーフ、ビオチンリガーゼ標的モチーフ、及びその類似物を含む。多量体TCR分子は又、化学的にクロスリンクしている反応性アミノ酸又は多糖類を介して産生されるものを含む。このようなアミノ酸(多糖類)は、TCR分子の中に本来備わっていることもあるし、遺伝子改変によって加えられることもある。多量体TCRsは又、ここに記載されるような検出可能な標識を含んでも含まなくてもよい、他の分子(分子群)に付着することで産生されるものを含む。そのような接着分子は、ここに記載されるストレプトアビジン、ビオチン、抗体、プロテインA、又は、タンパク質、脂質及び多糖で覆われるても覆われていなくてもよいビーズ、ナノ粒子、固相表面、アレイ、マトリックスを含む足場、を含む。例えば、検出可能な標識がビオチンである様々な実施例に於いては、さらに、方法はTCR分子を多量体化するためにTCR分子とストレプトアビジンと結合することを含む。
【0049】
本発明で開示されたいずれの標識も、特に目的のペプチド抗原が発現している細胞又は組織を検出するために、本発明の方法で用いられる可溶性TCRを検出可能に標識するために用いられうることは、高く評価されるであろう。
【0050】
細胞や組織を「固定」するために、十分な変性剤に接触させた細胞や組織を使用した、ペプチド抗原の検出方法を提供することは、本発明の目的である。そのような試薬の例は、当該技術分野では公知であるが、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、グルタルアルデヒド、メタノール、プロパノール等のようなアルコール、ベンゼン及びキシレンのような有機溶剤を含む。考察されるように、本発明の方法は、細胞や組織が固定されている場合に於いても、細胞上のMHC分子と同起源のペプチド抗原との相互作用を実質的に阻害しないことが見出された。このように本発明は、固定された細胞又は組織上で使用でき、このことより、構造的な完全性を保存し、本発明の方法の信頼性を高めることに役立っている。
【0051】
従って、ある態様に於いて、本発明はさらに、細胞又は組織を少なくとも一つの変性剤に接触させることを含む。このような接触は、工程a)の前や細胞又は組織を変性(固定)させるときを含むほとんどあらゆる時期に実施することができる。
【0052】
また考察されるように、本発明は、当該技術分野で組織アレイと呼ばれるもののようなアレイに於いて、細胞や組織を使用することに適している。すなわち本発明は、反復的な方法に於いて(臨床で直面するような)細胞や組織試料を選別するために必要な感度と信頼性を有している。そのようなアレイの多くは、米国特許第6,466,690号;第4,384,193号;第6,602,661号;第6,594,432号;第6,566,063号;第6,406,840号;第6,246,785号及びその参照文献に記載されているように、当該技術分野公知である。
【0053】
従って、ある態様に於いて、本発明の方法はさらに、アレイに複数の細胞や組織を搭載することを含む。好ましくは、そのような細胞又は組織は、腫瘍細胞を含む(又は、からなる)ことが知られているか又は想定されている。本発明の方法は、細胞又は組織を含むアレイのそれぞれの要素に於いて実施される。必要ならば、本発明の方法は、アレイのそれぞれの要素について実質的に同時に実施される。ある態様に於いては、本発明の方法の工程c)はさらに、アレイをスキャンすること、及び特異的な結合複合体の存在を示す画像情報を発生させることを含む。必要ならば、その工程はさらに、その情報をリアルタイムで利用者に出力すること及び画像情報の保存画像に必要に応じて見出しをつけてもよい、を含む。
【0054】
本発明は、腫瘍関連ペプチド抗原又はTAAsと呼ばれるものを含む幅広い様々なペプチド抗原を検出するために用いられる。細胞又は組織は、本発明の方法に従って、懸濁、半懸濁又は固定することができる。
【0055】
考察されるように、可溶性TCR分子又はその断片は、少なくとも一つの単一鎖TCRを含むことができる、又は膜貫通ドメインを取り除くように組み換え操作されたもののようなヘテロ二量体構築物であってもよい。以下の実施例と同様、係属中の出願第08/813,781号及び第08/943,086号を参照されたい。このような可溶性TCR分子又はその断片は、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素又はその触媒活性を有する断片、放射性核種、又は蛍光、燐光、若しくは化学発光分子で標識することを含む、本発明の概略のような一つ又はいくつかの組み合わせからなる方法によって、検出可能に標識することができる。公知の緑色(又は赤色)の蛍光タンパク質又はその断片も、その例に含まれる。
【0056】
ある態様に於いて、可溶性TCRは、その分子が少なくとも一つのサイトカインに共有結合している単一鎖のTCRである。そのようなサイトカインの例は、IL−2、GM−CSFのようなコロニー刺激因子、IFNγ、IFN−α及び類似物を含むが、それらに限定されるものではない。例として、可溶性TCR分子又はその断片は、少なくとも一つ及び好ましくはサイトカイン又はその断片に共有結合したものを含む単一鎖TCRである。
【0057】
その他の異形に於いて、可溶性TCRは、少なくとも一つの免疫グロブリン(immunoglobulin)ドメイン又はその断片に共有結合したものを含む、単一鎖TCR又はその断片である。ある態様に於いては、単一鎖TCR又はその断片は、IgG1ドメイン又はその断片を含む配列に結合している。
さらに他の態様に於いて、MHC複合体はHLA−A2限定性(restricted)である。
【0058】
例えば、可溶性TCR又はその断片とペプチド抗原を含まない細胞との如何なる結合をも検出するためには、通常、対照を用いる方法が有用である。
本発明で使用される特定のペプチド抗原は、p53(aa149〜157)又はp53(aa264〜272)を含む。
本発明の方法は、インビボ、エキソビボ、又はインビトロで実施することができる。
【0059】
例えば、HLAタイピング(例えば、A.K.Abbasの「Cellular and Molecular Immunology, page 328(W.B.Saunders Co.1991)」を参照されたい)は、本発明で実施可能である。インビボ画像化に適用するために、可溶性TCRは、望ましくはTCR若しくはその断片の結合に対して、公知の方法によりスキャンされる哺乳動物及び患者に投与できる、放射性核種(例えば、125I、32P、99Tc)又は他の検出可能な標識を含む。そのような哺乳動物の分析は、例えば、免疫系の疾患及びがんを伴う望ましくないAPCの発現を含む多くの疾患の診断及び治療に於いて助けとなるであろう。
【0060】
本発明は又、このような腫瘍を有している又はその疑いのある患者に於いて、腫瘍関連ペプチド抗原を保持している腫瘍のインビボ画像化のために用いることができる。本発明の方法の実施に於いて、腫瘍上でペプチド/MHC複合体として腫瘍関連ペプチド抗原に特異的に結合する、検出可能に標識された可溶性TCR分子又はその断片を含有する組成物が、患者に投与される。組成物は、腫瘍部位へ蓄積するのに十分な時間、インビボで投与される。蓄積された組成物は、その後、腫瘍を画像化するために検出される。
【0061】
TCRからなる組成物は、非経口(経静脈的に、経筋肉的に、皮下に、腫瘍内に、など)でその部位に、及び/又は、目的の組織、器官又は細胞に接近する経路で投与される。他の適用では、TCRを含む組成物は、鼻腔内に、経口的に、又は経皮的に投与される。
【0062】
可溶性TCRの蓄積した組成物は、様々な方法によって検出される。これらは、在来型のシンチレーションカメラ、ガンマカメラ、直線スキャナー、PETスキャナー、SPECTスキャナー、MRIスキャナー、NMRスキャナー、超音波機器、X線機器、発光画像化システム、及び蛍光画像化システムから、なる群から選択された検出器によって検出することを含む。
【0063】
本発明の画像化の方法はさらに、ある適用に於いて、腫瘍細胞又は腫瘍組織の検出を改良する可能性のある、前もって標的化する方法を包含する。この方法は、マルチステップ・プロトコールを使用する。例えば、標的のTCRはアビジン又はビオチンのどちらかに結合され、その後、例えば、目的の腫瘍に局在化するような部位への注入により、投与される。その後、ビオチン又はアビジンのいずれかは(標的化の抗体に結合しているものに依存する)、標識を保持しながら、注入され、アビジン又はビオチンそれぞれに結合することにより、一次抗体の部位へ局在化する。代わりに他の相互作用する分子のペアで、ビオチン/ストレプトアビジン分子を置換することができる。いくつかの前もって標的化する方法は、TCRに基づいた試薬を前もって標的化するために用いられる抗体(Changらの「Mol. Cancer Therap.1:553−563(2002)」を参照されたい)を開発してきた。
【0064】
本発明は又、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を含む適用で、実施可能である。FACSは、可溶性TCRs又はその断片と標的細胞の相互作用を検出するために用いられる。例えば、可溶性TCRは、標準的方法に従って、ビオチン化され、例えば、標識されたsc−TCR四量体を形成するために、ストレプトアビジン−フィコエリスリン(PE)と結合される。しかしながら、前述したように、多量体化はあまり必要とされない。FACSは、可溶性TCRと、T2細胞及び腫瘍細胞株のような適当な標的細胞との相互作用を定性的に測定するために用いられる。
【0065】
以下の実施例は、遺伝子的にヒトIL−2に結合する、p53アミノ酸残基264〜272番にわたる未変異のp53ペプチドを認識する、一本鎖の可溶性HLA−A2.1限定性のTCRを含む新規融合タンパク質の構築及び特徴を示す。分子のIL−2部分のIL−2受容体特異的な結合能や生物活性と同様に、ペプチドが収容されているHLA−A2と、分子のTCR部分のペプチド特異的な結合が検討された。実施例は、これらのタイプのTCRベースの融合タンパク質が、抗体ベースの標的化腫瘍療法に代わるものとして、又は抗体ベースの免疫サイトカインのようなその他の標的化腫瘍療法への付加的なものとして提供されることを示す。腫瘍を標的化するための分離及び識別方法が、相加的又は相乗的な抗腫瘍効果を示す可能性がある。
【0066】
実施例はさらに、HLA−A2.1としてヒトp53ペプチド(aa264〜272)を認識する、3つのドメインからなる可溶性のマウスscTCRの構築及び発現を示す。3つのドメインからなるscTCRは、ヒトIL−2に結合して、哺乳動物の細胞で高発現され分泌される可溶性264scTCR/IL−2融合タンパク質を産生する。264scTCR/IL−2融合タンパク質のTCR部分は、MHC限定性であり、ペプチド特異的抗原を結合する特性があり、IL−2部分がIL−2受容体に結合し、そして、生物学的に活性である。その上、実施例はさらに、この融合タンパク質が、標的細胞とエフェクター細胞を結合させ、マウス内で好ましい薬物動態を示し、標的腫瘍細胞に結合可能であり、抗腫瘍効果を持つことを示す。それゆえ、可溶性scTCR融合タンパク質は、抗体ベースの免疫療法では認識不可能であった、標的化免疫療法に向けての抗原のその他のレパートリーへのアクセスを提供するものである。TCRベースの治療は、抗体ベースの治療に変わるものとして、又はその他の標的化腫瘍療法に対する有用な付加的な療法となる。
【0067】
本発明には、可溶性TCRが、ペプチド抗原を良好に検出できる十分な親和性を有していることが開示されている。特に、264scTCRの親和性は、遺伝子操作されていない腫瘍細胞に結合する、また、標的細胞とエフェクター細胞を効果的に結合させるのに十分な親和性を有している。
【0068】
腫瘍を治療するためのサイトカインの全身性投与をめぐって報告された問題は、血清の半減期が短いことと、これらタンパク質の毒性である。重要なのは、本発明の264scTCR/IL−2融合タンパク質は、約3時間の見かけ上の血清半減期を有し、血液中に原型のまま残存するということである。このように264scTCR/IL−2融合タンパク質は、効果的にIL−2の半減期を増大させ、血液中に原型のまま残存させる。このことは、当該タンパク質が免疫修飾がん療法のための新しい試薬であることを示唆している。実施例で用いられたより高濃度の投与量で、本発明の融合タンパク質の血清の半減期は、増大し[文献3、25、37及び38参照]、それによりさらにその分子の腫瘍に対する効果が改善される。
【0069】
腫瘍部位に濃縮されたIL−2は、他のIL−2反応性細胞と同様に、局所T細胞を活性化し、それによりエフェクター細胞を腫瘍部位へ集めるとの認識がある。このように、腫瘍部位にIL−2を濃縮させることにより、本発明のTCR融合分子は、生来の免疫系のNK細胞又は他のメンバーの活性化と同様に、様々なT細胞クローンの活性化と増殖を含む明確な免疫応答を増強する可能性がある。そのような多面的な抗腫瘍応答は、遠隔転移と同様に初期の腫瘍の撲滅により効果的であろう。
【0070】
データは、TCR及びサイトカインを含む生物学的に活性な2機能性分子を構築することが可能であることを示す。この融合タンパク質は、腫瘍細胞に結合でき、標的細胞とエフェクター細胞の結合を仲介し、妥当な薬物動態特性を持つ。p53とは別に、アップレギュレーションされ、腫瘍又はウィルス感染細胞上にMHCとして提示されるその他の遺伝子産物も、標的として本発明のTCRベースの免疫療法に用いることができる。さらに、GM−CSF、IFNγ、又はIFNαのようなその他の免疫修飾分子は、TCRに結合され、抗腫瘍又は抗ウィルス応答のためにその他のエフェクター細胞を活性化する。これらの新規TCR融合物は、がんやウィルス感染の治療のための免疫療法の新しい分類を形成する。
【0071】
「特異的結合」という用語又は類似の用語は、本明細書に開示された分子が他の分子に結合し、それにより特異的な結合対を形成すること、を意味する。しかしながら、この分子は、例えばウェスタンブロッティング、ELISA、RIA、移動度シフトアッセイ、酵素免疫アッセイ、競合アッセイ、飽和アッセイ、又は他の当該技術部分野公知のタンパク質結合アッセイによって決定されるようなその他の分子を認識、結合しない。一般的に、例えば分子間の特異的結合を検出するための方法については、上記のAusubelらの文献、Harlow及びLaneの「Antibodies: A Laboratory Manual (1988)」及びそこに引用された参考文献を参照されたい。
【0072】
「完全に可溶性の」という用語又はその類似の用語は、TCRについて述べれば、例えば細胞の培地といった水溶性緩衝液で、低Gでの遠心分離によってで容易に沈殿しないことを意味する。さらに、sc−TCR融合タンパク質は、低濃度のアニオン性又は非イオン性の界面活性剤の存在下及び非存在下、約5〜37℃より高い温度かつ中性付近のpHで、水溶液のままでいるならば、可溶性である。これらの条件下、可溶性タンパク質はしばしば、例えば約10〜50スベドベリ単位より小さい低い沈降価を有する。本明細書で言及される水溶液は、通常pH約5〜9を確立する緩衝化合物を含み、イオン強度の範囲が約2mM〜500mMである。プロテアーゼ阻害剤又は穏やかな非イオン性界面活性剤が加えられてもよく、必要であれば、牛血清アルブミン(BSA)のようなキャリアタンパク質が、数mg/mLまで加えられてもよい。水性緩衝液の例としては、標準的なリン酸緩衝液生理食塩水、トリス緩衝液生理食塩水、又はその他の公知の緩衝液及び細胞の培地製剤を含む。
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、何ら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0073】
TCR融合タンパク質構築物の産生
ヒトIL−2に融合したp53ペプチド抗原に特異的な、3つのドメインをもつ、HLA−A2.1限定性マウスTCRを含む融合タンパク質を産生した。TCR融合タンパク質構築物として、ヒトp53ペプチド(aa264〜272)に特異的なTCRsを産生するマウスT細胞株から単離したRNAのRT−PCRによりVα及びVβ/Cβ領域(region)を産生した。TCRα鎖(Vα3)可変領域のカルボキシル末端は、TCRの抗原結合部分を産生するために、柔軟なリンカー(GS)[文献21参照]を介して、Vβ(Vβ3)のN末端に結合した。Vβドメインに直接結合するCβドメインは、一本鎖の可溶性TCR分子を産生するために、最終システイン直前のアミノ酸残基で切断して膜貫通及び細胞質ドメインを除去した(図1A及び1B)。ヒトIL−2を、短いリンカー(アミノ酸配列 VNAKTTAPSVYPLAPV;配列番号1)を介してTCR部分に融合した。EE標識(アミノ酸配列EEEEYMPME;配列番号2)[文献11参照]は、必要であれば、TCR/IL−2融合タンパク質を抗EE標識mAbによって検出可能にするために、融合分子のIL−2部分のすぐ下流に挿入した。CMVプロモータによって哺乳動物細胞の発現を駆動し、抗体の軽鎖のリーダー配列によって分泌を方向付け、G418耐性にて選別した。
【0074】
図1を、以下に、詳細に説明する。
図1Aは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のドメイン構造を模式的に示すものである。
図1Bは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のアミノ酸配列である。
融合タンパク質のそれぞれのドメインのアミノ酸番号を図中に示す。
【実施例2】
【0075】
哺乳動物細胞に於けるTCR/IL−2融合タンパク質の発現
264scTCR/IL−2融合タンパク質の性状を検討するために、264scTCR/IL−2構築物を、CHO−K1細胞に安定に形質転換した。264scTCR/IL−2融合タンパク質を分泌する安定な形質転換体は、材料と方法の欄に記載されるようにELISAアッセイを用いて選択した。これらのELISAに於ける陽性シグナルは、形質転換した細胞が、抗マウスTCR及び抗ヒトIL−2抗体両方ともに認識される264scTCR/IL−2融合タンパク質を分泌していることを示し、更に分泌された264scTCR/IL−2が形質転換した細胞内で、適切に集合し、折りたたまれていること、及び細胞から分泌されたときに原型のままで存在すること、を示唆している。
【0076】
264scTCR/IL−2融合タンパク質は、免疫親和性クロマトグラフィで上清1リットル当たり約1.8mgの収量で細胞上清から精製した。精製し融合タンパク質は、SDS−PAGE及びクーマシー染色した。還元又は非還元条件下、主として存在する染色バンドは、このタンパク質の予想分子量に一致する約60kDa(図2)に移動し、このことは融合タンパク質が細胞から分泌されるときに、予期されない分子内ジスルフィド結合を形成することなく原型のままでいることを示している。非還元ゲルに於ける大きなバンドは、融合タンパク質の2量体である。この結論は、大きなバンドは見かけ上、融合タンパク質の分子量の約2倍の分子量を有していること、そしてこのバンドは還元条件下では融合タンパク質の大きさに減少するという観察に基づいている。データは、形質転換されたCHO細胞は、予想された分子量の264scTCR/IL−2融合タンパク質を産生すること、そして適切に折りたたまれ、集合し、可溶性融合タンパク質として分泌されることを示している。
【0077】
図2を、以下に、詳細に説明する。
CHO細胞を、264scTCR/IL−2発現ベクターで安定に形質転換した。分泌された融合タンパク質は、免疫親和性クロマトグラフィで精製し、図の上部に示されるように還元又は非還元条件下で、SDS−PAGE処理した。SDS−PAGEゲルは、クーマシーブリリアントブルーで染色した。
【実施例3】
【0078】
264scTCR/IL−2融合タンパク質のTCR部分のMHC/ペプチド結合能
264scTCR/IL−2融合タンパク質のペプチドを収容したMHCへの結合能をフローサイトメトリーで測定した。p53(aa264〜272)又はp53(aa149〜157)(対照)ペプチドを収容したT2細胞を、264scTCR/IL−2融合タンパク質で染色した。p53(aa264〜272)を収容した細胞は、抗TCR CβmAb又は抗IL−2検出抗体のいずれかでの検出で、264scTCR/IL−2により陽性に染色された。p53(aa149〜157)対照ペプチドを収容した細胞は、抗TCR CβmAb又は抗IL−2検出抗体のいずれによっても染色されなかった。p53(aa149〜157)を収容したT2細胞が染色されないのは、p53(aa149〜157)ペプチドがHLA−A2に対し結合不能であるためではないことを証明するために、ペプチドを収容していないT2細胞、p53(aa149〜157)ペプチドを収容したT2細胞又はp53(aa264〜272)ペプチドを収容したT2細胞をそれぞれBB7.2αHLA−A2モノクローナル抗体で染色した。何れのp53ペプチドを収容した細胞も、ペプチドを収容しなかった細胞に比べて強く染色された。このことは、両ペプチドはHLA−A2分子に結合可能であることを示した(図3C)。また、T2細胞をIL−2受容体について調べるために染色したが、IL−2受容体を発現していないことが分かった。これらのデータは、264scTCR/IL−2融合タンパク質の結合が、融合タンパク質のTCR部分によって仲介されていることを示している。T2細胞が対照ペプチドを収容している場合に融合タンパク質によって染色されなかったこともまた、染色がTCR部分を介してなされること、及び、染色が適切なペプチドに特異的であることを示している。これらのデータは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のTCR部分がその特異的なペプチドをHLA−A2として認識することが可能であることを示している。
【0079】
図3を、以下に、詳細に説明する。p53(aa264〜272)ペプチド(灰色の線)又はp53(aa149〜157)ペプチド(黒い線)を収容したT2細胞は、
図3A)264scTCR/IL−2融合タンパク質及び抗TCR CβmAbで染色されているか、又は
図3B)264scTCR/IL−2融合タンパク質及び抗IL−2mAbで染色されているかの何れかである。
図3C)p53(aa264〜272)ペプチド(暗い灰色の線)を収容したT2細胞、p53(aa149〜157)ペプチド(明るい灰色の線)を収容したT2細胞、又はペプチドを収容していない(黒い線)T2細胞は、抗HLA−A2 BB7.2mAbで、次いでFITC標識ヤギ抗マウスIgGで染色した。影をつけたピークは、染色されていないT2細胞である。
【実施例4】
【0080】
264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分のIL−2受容体結合能
264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分のIL−2受容体結合能は、フローサイトメトリーによって検討された。マウス初代脾臓細胞を単離し、T細胞芽細胞を産生するために、rIL−2及び抗CD3で刺激した。IL−2受容体を発現する刺激した脾臓細胞は、p53(aa264〜272)を収容したHLA−A2四量体で、264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下でのみ陽性に染色された(図4A)。同様に、CTLL−2マウス細胞傷害性のTリンパ細胞は、恒常的にIL−2受容体を発現しているが、264scTCR/IL−2融合タンパク質により、陽性に染色されたが、264scTCR/κ融合タンパク質では染色されなかった(図4B)。CTLL−2細胞をα−ヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照抗体、次いで264scTCR/IL−2とインキュベートすると、細胞をブロッキング抗体とインキュベートしたときには染色は実質的に減少したが、アイソタイプの対照抗体では減少しなかった。264scTCR/マウスκ鎖融合タンパク質又はIL−2受容体ブロッキング抗体とインキュベートしたCTLL−2細胞からシグナルが欠如したことは、これらの細胞の染色が264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分によって仲介されていることを示している。これらのデータは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分が、IL−2受容体に結合できることを示唆している。
【0081】
図4を、以下に、詳細に説明する。
図4A)マウス脾臓細胞を、IL−2及び抗CD3εmAbで刺激し、その後、264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下(灰色の線)又は非存在下(黒い線)でインキュベートした。結合した融合タンパク質は、PE標識したHLA−A2p53(aa264〜272)四量体で検出された。
図4B)CTLL−2細胞を、α−ヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照抗体、次いで264scTCR/IL−2又は264scTCR/κ融合タンパク質とインキュベートした。結合した融合タンパク質は、PE標識したα−TCR−Vβ3抗体で検出した。影のついたピークは、染色されていないCTLL−2細胞である。
黒い線:264scTCR/IL−2だけで染色したCTLL−2細胞。
灰色の点線:対照抗体に次いで264scTCR/IL−2で染色したCTLL−2細胞。
明るい灰色の線:α−ヒトCD25ブロッキング抗体、次いで264scTCR/IL−2でインキュベートしたCTLL−2細胞。
暗い灰色の線:264scTCR/κ融合タンパク質で染色したCTLL−2細胞。
黒いダッシュの線:α−TCR-Vβで染色したCTLL−2細胞。
【実施例5】
【0082】
264scTCR/IL−2融合タンパク質の生物学的活性
264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分の生物学的活性を実証するため、IL−2依存性のCTLL−2細胞を、様々な濃度の264scTCR/IL−2又は組み換えIL−2のいずれかと共に培養し、細胞の生存率をWST−1を用いて評価した。図5Aに示されるように、rIL−2又は264scTCR/IL−2のCTLL−2細胞の増殖を支援する能力は、投与量依存性であり、ここに於いて、組み換えIL−2又は264scTCR/IL−2のいずれかをより高濃度にしたときに、より多くの細胞増殖がみられた。さらに、組み換えIL−2又は264scTCR/IL−2のいずれかを同等モル量を使用したとき、細胞の増殖は同様のレベルであった。特異性に対する更なる対照として、CTLL−2細胞を、α−ヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照とともに264scTCR/IL−2とインキュベートした。培養物にブロッキング抗体が含まれた場合、増殖はブロッキング抗体の濃度の減少とともに実質的に減少したが、CTLL−2細胞の増殖は、いずれの濃度の対照抗体の影響も受けなかった(図5B)。このデータは、264scTCR/IL−2のIL−2部分がインビトロで組み換えIL−2と同様な生物学的活性を有すること、及び融合タンパク質の増殖活性がその分子のIL−2部分に依存していること、を示している。
【0083】
264scTCR/IL−2の同起源のMHC/ペプチドに対する解離定数は、表面プラズモン共鳴検出法によって生理的な条件下で、約10−7Mであることが分かった。
【0084】
図5を、以下に、詳細に説明する。
図5A)CTLL−2細胞を、264scTCR/IL−2(実線)又は組み換えIL−2(点線)と共に、図の下段に示されるような様々な濃度で培養した。
図5B)CTLL−2細胞を、図の下段に示されるような264scTCR/IL−2及びα−ヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照抗体と共に、インキュベートした。細胞の生存率は、WST−1と共にインキュベートして測定し、吸光度は450nmで測定した。
Cab+5:5μg対照抗体;Cab+50:50μg対照抗体;Bab+5:5μgブロッキング抗体;Bab+50:50μgブロッキング抗体
【実施例6】
【0085】
264scTCR/IL−2融合タンパク質により仲介される細胞の結合
264scTCR/IL−2融合タンパク質の有用な特性は、そのTCR及びサイトカイン部分の各々により、標的細胞及びエフェクター細胞を結合させる能力にある。264scTCR/IL−2融合タンパク質が細胞を効果的に結合させることができることを実証するために、T2細胞を、p53(aa264〜272)又はp53(aa149〜157)ペプチドのいずれかで収容し、その後ジヒドロエチジウム(HE)で標識した。CTLL−2細胞を、カルセインAMで標識し、二つの標識された細胞集団を、264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下又は非存在下で混合し、インキュベートした。試料を、フローサイトメトリーで分析した。二つの細胞集団を264scTCR/IL−2融合タンパク質の非存在下でインキュベートした時(図6A及び6B)、又はT2細胞に対照ペプチドを収容し、CTLL−2細胞と264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下でインキュベートした時(図6C)、フローサイトメトリーヒストグラム上では、細胞群は二つの異なる集団に含まれたが、総集団の約45%が各々(図6A、6B、及び6Cの領域1及び3に)示されており、総集団の約0.46%のみが、二重染色されたセルウィンドウ(図6A、6B、及び6Cの領域2)に示された。しかしながら、T2細胞をp53(aa264〜272)ペプチドを収容し、264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下で、CTLL−2細胞とインキュベートした場合(図6D)、2重染色された細胞集団は、全集団の4.1%(図6Dの領域2、結合細胞)であり、このことは、T2細胞が264scTCR/IL−2融合タンパク質を介してCTLL−2細胞に結合していることを示唆している。
【0086】
図6を、以下に、詳細に説明する。
T2細胞を、p53(aa264〜272)(図6B及び6D)又はp53(aa149〜157)(対照)ペプチド(図6A及び6C)のいずれかで収容し、その後HEで標識した。CTLL−2細胞を、カルセインAMで標識した。標識された細胞を、264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在下(図6C及び6D)又は非存在下(図6A及び6B)で混合して、インキュベートし、次いで試料をフローサイトメトリーで分析した。収容に使用されたペプチド及び融合タンパク質の存在又は非存在といったアッセイ条件を、各ヒストグラムの下に示す。一重染色領域は、1及び3の番号で示され、2重染色された細胞集団は2番で示されている。
【実施例7】
【0087】
マウスに於ける264scTCR/IL−2の薬物速度論
264scTCR/IL−2融合タンパク質の薬物速度論は、BLAB/cマウスを用いて測定した。薬物をマウスに、経静脈的に投与し、様々な経過時点での血清試料を回収した。264scTCR/IL−2融合タンパク質の血清レベルは、ELISAを用いて測定した。ELISA検出は、融合タンパク質がインビボで修飾されているか、又は切断されているかを決定するために、抗TCRmAb捕獲/抗IL−2Ab検出(図7A)、抗TCRmAb捕獲/抗TCRmAb検出(図7B)、又は抗IL−2mAb捕獲/抗IL−2ポリクローナルAb検出(図7C)を用いて実施した。264scTCR/IL−2融合タンパク質を注入されたマウスは、毒性の兆候をまったく示さなかった。これらのアッセイに於いて、使用したELISA形式により、見かけ上の血清中半減期が1.6〜3.0時間で、最大濃度0.75〜2.5μg/mLの264scTCR/IL−2が検出された(図7)。報告されているフリーのIL−2の血清中半減期は、約5分であるので[文献6参照]、これらのデータは、融合タンパク質がインビボで切断されておらず、その代わり血液中で比較的長期間にわたり原型のまま残存することを示している。これらの検討で測定された264scTCR/IL−2の半減期に於ける小さなぶれは、多分に、ELISAアッセイの感度の違いによるものである。
【0088】
図7を、以下に、詳細に説明する。
BALB/cマウスに、264scTCR/IL−2融合タンパク質を注入し、血清試料を、注入後15、30分、1、4、8、24時間後に集めた。264scTCR/IL−2の血清濃度は、以下の形式を用いて、ELISAにより測定した。
7A)抗TCRmAb捕獲/抗IL−2Ab検出;
7B)抗TCRmAb捕獲/抗TCRmAb検出;及び
7C)抗IL−2mAb捕獲/抗IL−2Ab検出
【実施例8】
【0089】
264scTCR/IL−2による腫瘍細胞の染色
264scTCR/IL−2融合タンパク質が、標的の腫瘍細胞を認識し、結合できれば、有用である。264scTCR/IL−2が腫瘍細胞に結合することができるかどうかを試験するため、HLA−A2.1及びp53の両方を発現している、A375ヒトメラノーマ細胞を、264scTCR/IL−2又は無関係なTCR/IL−2融合タンパク質である3C8、のいずれかで染色した。融合タンパク質とインキュベートしていない細胞及び3C8とインキュベートした細胞は、H57−597検出抗体により陽性に染色されないが、264scTCR/IL−2とインキュベートした細胞は検出抗体で陽性に染色された(図8)。この結果から、264scTCR/IL−2融合タンパク質が、標的の腫瘍細胞を認識し、結合できること、そしてインビボ抗がん治療として役に立つことが示唆される。
【0090】
図8を、以下に、詳細に説明する。
A375ヒトメラノーマ細胞を、融合タンパク質なし(黒いダッシュの線)、5μgの3C8TCR/IL−2融合たんぱく質(対照)(点線)、又は5μgの264scTCR/IL−2融合タンパク質(黒い実線)とインキュベートし、次いで、H57−597mAbで染色した。染色されなかった細胞は、影のついた領域で示す。
【実施例9】
【0091】
264scTCR/IL−2融合タンパク質の抗腫瘍効果
264scTCR/IL−2融合タンパク質がインビボで抗腫瘍効果を持つかどうかを決定するために、実験的転移アッセイを実施した。メスの胸腺欠損ヌードマウスに、高転移性A375ヒトメラノーマサブクローンであるA375−C15Nを注入し、様々な投与量の264scTCR/IL−2又は組み換えIL−2のいずれかで処置した。腫瘍細胞注入後42日で、肺の小塊をカウントした。264scTCR/IL−2と組み換えIL−2の両方とも、投与量依存的に肺転移を減少させた(図9)が、264scTCR/IL−2融合タンパク質の方が、全ての投与量に於いて、肺転移を大きく減少させた。このことは、サイトカインを腫瘍に標的化することは、がん治療として大きな効果をもたらすものであることが示唆される。
【0092】
264scTCR/IL−2又は組み換えIL−2のいずれかで処理されたマウスは、目立った毒性の兆候を示さなかった。両治療はともに、結果的に肺転移を減少させたが、264scTCR/IL−2による治療は、全ての投与量に於いて、組み換えIL−2による治療に較べより効果的であった。
【0093】
図9を、以下に、詳細に説明する。
メスの胸腺欠損ヌードマウスに、高度に転移性のA375−C15N細胞を注入し、264scTCR/IL−2、組み換えIL−2、又はPBSで処理した。腫瘍細胞の注入の42日後、肺を摘出し、肺の小塊をカウントし、次いでPBS処理した対照群に対応する肺の小塊数の平均をプロットした。
【実施例10】
【0094】
単量体及び多量体の264scTCR融合タンパク質による、ペプチドを収容したT2細胞の染色についてのフローサイトメトリー分析
様々な264scTCR融合タンパク質の単量体や多量体を調製し、それらのT2細胞に対する結合挙動を、以下のセクション11及び12に記載される方法で、フローサイトメトリーにより分析した。その結果、図10に示されるように、264scTCR融合タンパク質は、p53(aa264〜273)を収容したT2細胞を、p53(aa149〜157)を収容した細胞より強く染色した(図10A、10B)。図中では、染色されていないT2細胞は、T2 149非染色001と表示されたヒストグラム中に示されている;第2の試薬(H57−PE)で染色した、p53(aa149〜157)及びp53(aa264〜273)を収容したT2細胞は、それぞれ「T2 149 H57.002」及び「T2 264 H57.009」と表示されたヒストグラム中に示されている;多量体の264scTCR/IgG1に次いでH57−PEで染色した、p53(aa149〜157)及びp53(aa264〜273)を収容したT2細胞は、それぞれ「T2 149 IgG H57.003」及び「T2 264 IgG H57.010」と表示されたヒストグラム中に示されている;264scTCR/IL−2に次いでH57−PEで染色したp53(aa149〜157)及びp53(aa264〜273)を収容したT2細胞は、それぞれ「T2 149 IL2 H57.004」及び「T2 264 IL2 H57.011」と表示されたヒストグラム中に示されている;単量体の264scTCR/trunIgG1に次いでH57−PEで染色したp53(aa149〜157)及びp53(aa264〜273)を収容したT2細胞は、それぞれ「T2 149 trun H57.005」及び「T2 264 trun H57.012」と表示されたヒストグラム中に示されている;そして単量体の264scTCR/BirAに次いでH57−PEで染色したp53(aa149〜157)及びp53(aa264〜273)を収容したT2細胞は、それぞれ「T2 149 birA H57.006」及び「T2 264 birA H57.013」と表示されたヒストグラム中に示されている。この結果は、観察した染色がペプチド特異的であることを確証づけた。
【0095】
単量体型264scTCRは、ある程まで度染色することができた。例えば、264scTCR/trunIgG型で染色したときの平均チャネル蛍光(MCF)は、p53(aa149〜157)を収容した細胞では10.95であるのに対し、p53(aa264〜273)を収容した細胞では55.34と増大した。同様に、264scTCR/BirA型に対するMCFは、p53(aa149〜157)を収容した細胞では13.41であったのに対し、p53(aa264〜273)を保持した細胞では95.14と増大した。多量体の264scTCRは、より顕著にペプチドを収容したT2細胞を特異的に染色できた。例えば、264scTCR/IgG1型で染色したときのMCFは、p53(aa149〜157)を収容した細胞では119であったのに対し、p53(aa264〜273)を収容した細胞では863と増大した。
【実施例11】
【0096】
264scTCR融合タンパク質による腫瘍細胞の染色
264scTCR試薬が腫瘍細胞を染色する能力もまた試験された。培養したA375細胞を、10mMのEDTAを添加したPBS(pH7.4)で接着を剥がし、洗浄用緩衝液で2回洗浄した。細胞染色は、4μgの264scTCR/IgG1融合タンパク質を用いて、23℃にて45分間実行された。細胞を一回洗浄し、3μgのFITC結合のヤギ抗ヒトIgGFcのF(ab’)断片(抗IgG−FITC)で染色した。2回洗浄した後、染色細胞を、再び縣濁し、次いでFACScanで分析した。抗IgG−FITC抗体のみで染色したA375細胞を、対照として用いた

【0097】
図11Aに示されるように、この分析の結果は、A375腫瘍細胞が264scTCR/IgG1融合タンパク質で染色できることを示している。このパネル(図11A)に於いて、抗IgG−FITCのみで、又は抗IgG−FITC/IgG1に次いで抗IgG−FITCで染色したA375細胞は、それぞれ「375−FITC.005」及び「A375−264.FITC.006」と表示されてヒストグラム内に示されている。A375腫瘍細胞を用いた付加的な実験は、さらに最適な染色条件を特徴付けるために実施された。例えば、PE結合の抗ヒトIgG抗体(抗IgG−PE)(図11B)又はPE結合のH57mAb(図11D)は、FITC結合抗体の代わりに二次試薬として用いられた。図11Bに於いて、抗IgG−PEのみ、又は264scTCR/IgG1に次いで抗IgG−PEで染色されたA375細胞は、それぞれ「A375−PE.007」及び「A375−264.PE.008」と表示されてヒストグラム内に示されている。図11Dに於いて、H57−PEのみ、又は264scTCR/IgG1に次いでH57−PEで染色されたA375細胞は、それぞれ「A375−H57PE.009」及び「A375−264.H57PE.010」と表示されてヒストグラム内に示されている。それぞれの場合に於いて、264scTCR/IgG1は、A375腫瘍細胞を染色した。ストレプトアビジン−PE(SA−PE)を用いて多量体化されたビオチン化264scTCR/BirAは又、A375細胞を染色するために用いられ(図11C)、そしてストレプトアビジン−PEのみで染色された細胞と比べて、増大した染色を示した。図11Cでは、SA−PEのみ又はSA−PEで複合体化されたビオチン化264scTCR/BirAで染色されたA375細胞は、それぞれ「A375−SAPE.001」及び「A375−264BtnSaPE.002」と表示されてヒストグラム内に示されている。
【実施例12】
【0098】
フローサイトメトリーで検出される264scTCR融合タンパク質により固定された細胞の染色
考察のように、保存又は「固定された」試料のMHC/ペプチド複合体を検出することは、特に患者から取得した細胞、組織、又は他の生物学的試料を固定するのが通常である臨床又は他の医学的環境に於いて、有用性がある。しかしながら、MHC/ペプチド複合体は3つの分離したペプチド鎖からなる細胞表面抗原であるため、通常の固定化手順の後の可溶性TCRによる検出の際に、MHC/ペプチド複合体の完全な構造が十分原型をとどめていられるかどうか定かではない。可溶性TCRの染色が、固定された細胞上で実施できたかどうかを評価するために、ペプチドを収容したT2細胞及び遺伝子操作がなされていないA375細胞を、フローサイトメトリーで分析した。培養細胞A375は、10mMのEDTAを含むPBS(pH7.4)で接着を剥がし、洗浄用緩衝液で2回洗浄した。T2細胞は、50μMのp53(aa264〜273)で3時間インキュベートし、その後洗浄用緩衝液で2回洗浄した。両方の細胞は、3.7%のホルムアルデヒドで5分間固定し、2回洗浄した。細胞染色は、4μgの264scTCR/IgG1又はCMVscTCR/IgG1融合タンパク質を用いて、20μgのHLA−A2.1/p53(aa264〜272)四量体の存在下又は非存在下、23℃で45分間実施した。細胞を一回洗浄し、3μgのFITC結合ヤギ抗ヒトIgGFcのF(ab’)断片で染色した。染色された細胞は、2回洗浄した後、再縣濁して、FACScanで分析した。
【0099】
図12Aに示されるように、その結果では、264scTCR/IgG1融合タンパク質が、ホルムアルデヒド固定A375細胞を陽性に染色した(ヒストグラムは「A375F−264.006」と表示されている)のに対して、CMVscTCR/IgG1による染色はバックグラウンドを超えて検出されない(ヒストグラムは「A375F−CMV.005」と表示されている)ことを、示していた。CMVペプチドはA375細胞上に存在しないので、CMVscTCR/IgG1対照試薬の使用で、TCR又はIgG1ドメインと腫瘍細胞間のあらゆる非特異的相互作用が測定できる。この方法は、264scTCR/IgG1融合タンパク質とCMVscTCR/IgG1対照との腫瘍細胞染色に於ける違いを測定することにより、固定された腫瘍細胞試料の表面に存在する腫瘍抗原のレベルを直接測定可能にする。
【0100】
264scTCR/IgG1融合タンパク質によるA375細胞染色がTCR特異的であることを確認するため、HLA−A2.1/p53(aa264〜272)四量体をブロッキング試薬として用いた。264scTCR/IgG1によるA375細胞の染色度は、HLA−A2.1/p53(aa264〜272)四量体ブロッキング試薬の添加により低減し(ヒストグラムは「A375F−264TET.264.008」と表示されている)、さらに264scTCR/IgG1が特異的に腫瘍細胞に結合できることを示した。予想されたように、264scTCR/IgG1で染色したA375細胞にHLA−A2.1/pCMV四量体試薬を添加しても、264scTCR/IgG1試薬の特異的な染色には何の影響も及ぼさなかった(ヒストグラムは「A375F−264TET.CMV.007」と表示されている)。同様の結果は、ペプチドを収容したT2細胞に於いても見られた(図12B)。
【0101】
これらの結果は、単量体及び多量体の可溶性TCR試薬が、MHC複合体としてペプチドを提示している細胞を特異的に染色できることを示している。さらに、可溶性TCR試薬は、MHC複合体として腫瘍抗原を提示している、固定されていない及び固定されている腫瘍細胞を特異的に染色できる。加えて、可溶性TCR試薬による細胞の特異的な染色度は、可溶性TCR試薬に結合する完全なMHC分子の添加によって低減される。対照染色反応に於いて、完全なMHC分子を、可溶性TCR試薬に対し1〜100倍モルの過剰量にて添加することは、可溶性TCR染色の非特異的な結合の構成に対して特異的な結合の構成(すなわちペプチドMHCに対する結合)を区別するのに、特に有用である。これにより、異なる細胞及び組織の染色を比較する場合に、非特異的及び特異的な可溶性TCR結合の異なった程度を示すことができる。例えば、異なる試料(細胞又は組織)間に於ける可溶性TCRの非特異的な結合のばらつきは、対照染色反応に於いて適切な完全なMHC分子を使用しないで、特異的な可溶性TCR結合の程度を決定することを極めて困難なものとする。
【実施例13】
【0102】
免疫蛍光顕微鏡により検出される264scTCR融合タンパク質による固定された細胞の染色
HLA−A2及びp53発現に於いて異なるいくつかの細胞株(すなわち、A375、HT29及びSaos2)を、分析のために選び、264scTCR/IgG1融合タンパク質又は対照の融合タンパク質CMVscTCR/IgG1のいずれかで染色した。細胞を、カバースリップ上で24時間培養し、その後3.7%のホルムアルデヒドで5分間固定し、次いで洗浄緩衝液(0.5%のBSA及び0.1%のアジ化ナトリウム入りPBS)で2回洗浄した。BSAは、非特異的なタンパク質結合を低減させるブロッキング試薬である。細胞を、5%の正常ヤギ血清(NGS)を含む200μLのPBS中の10μgの264scTCR/IgG1又はCMVscTCR/IgG1融合タンパク質で、23℃にて45分間染色した。NGSは、非特異的結合を低減させるブロッキング試薬である。細胞を2回洗浄し、3μgのFITC結合のヤギ抗ヒトIgGFcのF(ab’)断片(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)で染色した。細胞を、2回洗浄し、その後平衡化緩衝液(Molecular Probe, Eugene, OR)で1回洗浄した。カバースリップは、スライドガラス上に、グリセロール緩衝液中の色あせ防止試薬(Molecular Probe, Eugene, OR)でマウントし、ネイルオイルで密閉した。スライドを、SPOT RTカメラを有したニコン社製のエピ蛍光顕微鏡(Nikon, Tokyo, Japan)及びSPOT RTソフトウェアv3.2(Diagnostic Instrument, Sterling Heights, MI)を用いて、記録した。
【0103】
HLA−A2染色用に、固定した細胞を、10μgのBB7.2、マウス抗ヒトHLA−A2抗体により、5%の正常ヤギ血清(NGS)を含む200μLのPBS中で、23℃にて45分間染色した。細胞を2回洗浄し、4μgのFITC結合ヤギ抗マウスIgGFcのF(ab’)断片(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)で染色した。細胞を、2回洗浄し、その後平衡化緩衝液(Molecular Probe, Eugene, OR)で1回洗浄した。カバースリップはマウントされ、上記に述べられたように、記録された。
【0104】
p53染色用に、固定した細胞を、20分間0.2%のトリトンX−100で透過性にし、その後、10μgのPAb122、マウス抗p53抗体により、5%の正常ヤギ血清(NGS)を含む200μLのPBS中で、23℃にて45分間染色した。細胞を2回洗浄し、4μgのFITC結合ヤギ抗マウスIgGFcのF(ab’)断片(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)で染色した。細胞を、2回洗浄し、その後平衡化緩衝液(Molecular Probe, Eugene, OR)で1回洗浄した。カバースリップはマウントされ、上記に述べられたように、記録された。
【0105】
図13に示すように、A375細胞をHLA−A2及びp53用に陽性に染色、HT29をHLA−A2用ではなくp53用に陽性に染色、及びSaos2細胞をp53用ではなくHLA−A2用に陽性に染色した。264scTCR/IgG1を用いた免疫蛍光染色では、A375細胞だけが検出され、CMVscTCR/IgG1では、一つの細胞も陽性に染色されなかった。これらの結果は、264scTCR試薬による陽性染色にはHLA−A2及びp53抗原の存在が必要であることを確認するものである。どの腫瘍細胞株に於いても、非特異的なCMVscTCR試薬では、バックグラウンド染色は見られず、又、HLA−A2及びp53抗原が発現していない場合は、264scTCR試薬にても、バックグラウンド染色は見られなかった。
【実施例14】
【0106】
264scTCR融合タンパク質を用いた定量的染色
ペプチドを収容したT2細胞に結合できる264scTCR複合体の数が、測定された。T2細胞を、様々な量のp53(aa264〜273)と共に3時間インキュベートし、その後、洗浄用緩衝液で2回洗浄した。3.7μgの264scTCR/BirA−ストレプトアビジン−PE四量体を用いて23℃にて45分間、細胞染色を実施した。2回洗浄後、染色された細胞を、再縣濁し、FACScanで分析した。一方、3.76μgの264scTCR/IgG1融合タンパク質を用いて23℃にて45分間、細胞染色を実施した。細胞を1回洗浄し、3μgのPE結合抗ヒトIgG抗体で染色した。2回洗浄後、染色された細胞を、再縣濁し、FACScanで分析した。
【0107】
この分析結果は、264scTCR/BirA四量体については図14に、264scTCR/IgG1については図15に示されている。264scTCR/BirA四量体及び264scTCR/IgG1融合物については共に、p53ペプチドの量が増大するに連れて、染色レベルの増大が観察された。細胞を染色する複合体の数を定量するために、染色細胞の蛍光強度のレベルを、ビーズ当たり既知量のPE分子を持つ検量線用ビーズ(QuantiBRITE PEビーズ;BD Biosciences)の蛍光強度と比較した。このようにフローサイトメーターを使用した、PE−染色細胞を定量する方法が提供された。
【0108】
264scTCR/BirA四量体及び264scTCR/IgG1融合物について様々な濃度のペプチドとの複合体/細胞を算出した数が、図16にプロットされている。その結果は、400scTCR複合体と同じ位少ない結合が染色細胞上に検出できることを示している。加えて、264scTCR/IgG1融合物に次いでPE結合抗ヒトIgG抗体を用いた染色は、264scTCR/BirA四量体を用いたときに見られる染色に比べて、約4〜10倍強い染色度を示した。この増加はおそらく、同じ264scTCR/IgG1融合物と反応する抗体及び/又は多様性抗体群に対するPEの結合がより高いレベルであることの結果である。
【0109】
これまでの考察から、定量的にTCR結合を検出するための上記方法は、珍しい抗原の検出を最適化するのに有用である。その方法は、腫瘍細胞に結合する264scTCR試薬を検出することに適用された。細胞を記載のように調製し、様々な量の264scTCR/BirA−ストレプトアビジン−PE四量体で、23℃にて45分間染色した。2回洗浄後、染色された細胞を、再縣濁し、次いでFACScanで分析した。一方、細胞染色は、様々な量の264scTCR/IgG1融合タンパク質を用いて、23℃にて45分間実施した。細胞を1回洗浄し、2.5μgのPE結合H57抗体で染色した。2回洗浄後、染色された細胞を、再縣濁し、次いでFACScanで分析した。
【0110】
各場合に於いて、染色された細胞上の蛍光強度のレベルを、ビーズ当たり既知量のPE分子を持つ検量線用ビーズの蛍光強度と比較することにより、細胞を染色する複合体の数を測定した。図17A及び17Bは、264scTCR試薬量を増加したときのA375腫瘍細胞の染色度を示す。図18及び19はそれぞれ、3つの腫瘍細胞株(A375、HT29及びSaos2)に於いて、264scTCR/BirA及び264scTCR/IgG1試薬量を増加したときに観察された、定量的な染色度を示す。HLA−A2/p53陽性のA375腫瘍細胞株は、両試薬で染色され、HT29(HLA−A2陰性)及びSaoa2(p53陰性)細胞株に比べて、264scTCR試薬に対し2.5倍多く結合した。さらに、264scTCR試薬の量が増えるにつれて、A375細胞の特異的な染色度が増大した。500程度に少ない染色複合体の差異の検出は、A375細胞の染色を他の腫瘍細胞株のそれと比較することによって測定した。定量的染色についての検討の結果は、264scTCR試薬の細胞当たり300〜500程度に少ないHLA−A2/ペプチド複合体に対する特異的な結合を容易に検出できることを示している。加えて、これらの染色反応の感度は、異なるTCR及び二次試薬の使用により増強され、最適化される。
【実施例15】
【0111】
264scTCR融合タンパク質による操作されていない腫瘍組織の免疫組織化学染色
皮下腫瘍を産生するために、A375ヒトメラノーマ細胞(1x10)を、ヌードマウスの左肩に皮下注入した。腫瘍を、500mmまで成長させ、マウスは人道的に犠牲にした。腫瘍を、覆っている皮膚とともに摘出し、中性緩衝液ホルマリン中で一晩固定させた。転移性の肺小塊を産生するために、MDA−MB−231細胞(1x10)を、ヌードマウスの側部尾静脈に注入し、転移性の肺小塊を発達させた。18日後、マウスを人道的に犠牲にして、肺を取り出し、次いで中性緩衝液ホルマリン中で固定した。固定された組織を、70%、90%、95%、100%(2回)エタノール中で連続的に30分のインキュベーションし、次いでキシレン中で30分間のインキュベーションを2回行い、脱水した。その後組織を、パラフィン中に包埋して、5μm切片を調製し、そして顕微鏡スライド上にマウントした。
【0112】
免疫組織化学染色のために、切片をキシレン中でそれぞれ5分間のリンスを2回行い、次いで100%(2回)、95%及び85%のエタノール中でそれぞれ2分間、連続的にインキュベートし、再度水和した。PBSで5分間の洗浄を2回及び蒸留水による5分間の洗浄を1回行い、スライドを内因性のペルオキシダーゼを失活させるために3%の過酸化水素で5分間インキュベートし、その後蒸留水で5分間のインキュベートを1回行った。スライドを、抗原回復溶液(Dako)中に置き、97℃にて20分間加熱した。スライドを、抗原回復溶液中で20分間、室温になるまで冷やし、その後、PBSで5分間の洗浄を2回行った。
【0113】
非HRPで標識された二次試薬を用いる場合は、スライドをアビジン/ビオチンブロッキング溶液中でインキュベートし(それぞれの溶液で10分)、次いでPBS中で5分間の洗浄を2回行う。スライドを、1%正常ヤギ血清(NGS)を含むPBS中で室温にて30分間ブロッキングした。このブロッキング工程は、二次ヤギ抗体試薬の非特異的な相互作用によるバックグラウンド染色度を低減するために必要である。スライドはその後、10μg(1%NGS中100μL当たり)の264scTCR/IgG1融合タンパク質又は対照のCMVscTCR/IgG1融合タンパク質の存在下、又は非存在下で、室温にて45分間インキュベートした。PBS中で5分間の洗浄を2回行った後、スライドを、1.6μg(1%NGS中200μL当たり)のHRP標識されたヤギ抗ヒトIgGFcγのF(ab’)断片にて、室温で45分間インキュベートした。スライドを、それぞれ5分間PBSで2回洗浄した。スライドを、DAB溶液(Dako)中でうすいバックグラウンドが現れるまで、インキュベートした。スライドを水道水でリンスし、ヘマトキシリンで15秒間対比染色した。スライドを、水道水で洗浄後、100%エタノールバスで3回、キシレンバスで3回、それぞれ3分間リンスし、その後パーマウント(Fisher)でマウントした。組織染色度のレベルを、光学顕微鏡で評価し、SPOT RTカメラ及びSPOT RTソフトウェアv3.2(Diagnostic Instrument, Sterling Heights, MI)で記録した。
【0114】
A375腫瘍切片を用いた典型的な免疫組織化学分析結果は、図20及び21に示される。その結果では、CMVscTCR/IgG1融合タンパク質又は二次抗体のみと比較して、264scTCR/IgG1融合タンパク質でインキュベートしたとき、A375組織切片は、より強く染色される(すなわち、より濃い色がついて見える)ことが示された。CMVscTCR/IgG1融合タンパク質を用いて観察されたバックグラウンド染色は、ヒトIgG1抗体に次いでHRP標識された抗ヒトIgG抗体でインキュベートされたときに見えるものと同程度であり、このことはバックグラウンド染色がIgG1ドメインの組織切片との相互作用によるものらしいことを示している。さらに、264scTCR/IgG1融合タンパク質によるマウス間質組織の染色は、A375腫瘍組織の同じ切片に見られる染色よりかなり弱かった。これらの結果は、264scTCR試薬が、ヒト腫瘍試料を特定化するために通常使用される免疫組織化学的方法で、固定されたヒト組織切片を、特異的に染色できることを示している。
【実施例16】
【0115】
264scTCR融合タンパク質による腫瘍組織アレイの免疫組織化学的染色
ヒト腫瘍組織アレイは、商業的な供給元又はティッシュアレイリサーチプログラム(Tissue Array Research Program:NCI)から得られる。染色のために、組織アレイのスライドを、それぞれキシレン中で5分間のリンスを2回行い、次いで100%(2回)、95%、及び85%エタノールでそれぞれ2分間、連続的なインキュベーションにより、再度水和した。PBSによる5分間2回及び蒸留水による5分間1回の洗浄後、内因性のペルオキシダーゼを失活させるためにスライドを、3%の過酸化水素中で5分間インキュベートし、次いで蒸留水で5分間の洗浄を1回行った。スライドを、抗原回復溶液(Dako)中に置き、97℃にて20分間加熱した。スライドを、抗原回復溶液中で20分間室温まで冷却し、その後、PBSで5分間の洗浄を2回行った。非HRPで標識された二次試薬を用いる場合は、スライドをアビジン/ビオチンブロッキング溶液中でインキュベートし(それぞれの溶液で10分)、次いでPBS中で5分間の洗浄を2回する。スライドを、1%の正常ヤギ血清(NGS)を含むPBS中で室温にて30分間ブロッキングし、その後、264scTCR/IgG1融合タンパク質又はCMVscTCR/IgG1融合タンパク質(又は他の非結合scTCR試薬)の存在下、又は非存在下で室温にて45分間インキュベートする。PBS中で5分間の洗浄を2回行った後、スライドを、二次試薬(HRP標識されたヤギ抗ヒトIgG又はビオチン化された抗TCRCβ抗体のいずれか)中、室温にて45分間インキュベートする。スライドは、それぞれPBSで5分間の洗浄を2回行う。
【0116】
非HRP二次試薬を用いる場合は、スライドをストレプトアビジン・ペルオキシダーゼ溶液中で室温にて15分間インキュベートし、次いでPBS中で5分間の洗浄を2回行う。一方、scTCR/BirA−ストレプトアビジン・ペルオキシダーゼ試薬を、上記の試薬の代わりに染色試薬として用いてもよい。
【0117】
スライドは、DAB溶液(Dako)中でうすいバックグラウンドが現れるまで、インキュベートする。スライドは、水道水でリンスし、ヘマトキシリンで15秒間、対比染色する。水道水で洗浄後、スライドを100%エタノールで3回、キシレンで3回リンスし、その後パーマウント(Fisher)でマウントする。組織染色のレベルは、光学顕微鏡で評価し、例えばSPOT RTカメラ及びSPOT RTソフトウェアv3.2(Diagnostic Instrument, Sterling Heights, MI)で写真撮影する。
【0118】
HLA−A2及びp53を発現する腫瘍は、CMVscTCR融合タンパク質と比較して、264scTCR融合タンパク質でインキュベートされた場合、異なって染色されることが期待できる。組織アレイを融合タンパク質無しでインキュベートする場合、ほとんど又は全く染色されないことが予期される。さらに、HLA−A2及び/又はp53に対して陰性の腫瘍組織は、HLA−A2/p53陽性の腫瘍組織と比べて、264scTCR融合タンパク質により低減した染色度を示すことが期待される。これは、264scTCR融合タンパク質により認識される腫瘍の型、その相対的な比率、についての有用な情報を与え、264scTCRベースの治療により所定の型の腫瘍を治療する妥当性を決定する助けとなる。
【実施例17】
【0119】
蛍光TCR試薬によるインビボ腫瘍の画像化
発現ベクターは、GFP(緑色蛍光タンパク質)又はLuc(ホタル・ルシフェラーゼ)に融合した264scTCRを産生するために構築される。これらのベクターは、本明細書記載の264scTCR/IgG1発現ベクターから、IgG1遺伝子断片をGFP又はLucをコードする配列に置き換えることにより、産生できる。これらのコード配列は、商業的に入手可能である(例えば、GFP遺伝子に対してはpEGFP−C1(Clontech)、Luc遺伝子に対してはpSP−Luc(Promega))。ベクターは、標準的なPCR法により適切なDNA配列を単離するための鋳型として用いられる。対照TCR(すなわちCMVscTCR)のGFP及びLucへの融合物の発現ベクターは、同じ方法で産生可能である。ある適用では、これらの発現ベクターは、CHO細胞のような形質転換細胞に使用できる。そして結果として発現するタンパク質は、本明細書に記載されているようにして精製される。
【0120】
これらの精製タンパク質は、インビボに於ける腫瘍の画像化に用いられる。HLA−A2及びp53発現に関して様々であるヒトの腫瘍細胞を、皮下又は静脈内のいずれかに注入し、腫瘍又は転移性の肺小塊は、上記実施例15に記載されるように発達させる。scTCR/Luc融合物に関しては、マウスに、scTCR/Luc融合タンパク質の増加した量を経静脈的に注入する。融合タンパク質が全身に循環するのに必要な時間が経過した後に、マウスに、腹腔内にルシフェラーゼの基質であるD−ルシフェリン2.0 mg(100μLのPBS溶液)を注入し、その後、体重20g当たりキシラジン(3mg/mL)及びケタミン(7mg/mL)のPBS溶液120μLで麻酔する。scTCR/GFP融合のために、マウスに、経静脈的にscTCR/Luc融合タンパク質の増加した量を注入する。融合タンパク質が全身に循環するのに必要な時間が経過した後に、マウスを、上記のようにキシラジン(3mg/mL)及びケタミン(7mg/mL)のPBS溶液で麻酔する。
【0121】
インビボでの腫瘍の検出に関して、麻酔されたマウスは、NightOwl LB981 Molecular Light Imagerの内に置く。画像化は、2段階の工程手順とWinLightソフトウェア(Berthold Technologies, Oak Ridge, TN)を使用して行う。はじめに、白黒の写真画像を、15msの照射で得、次いで5分間のフォトン積算期のバックグラウンドの差し引きをして発光画像を入手する。発光画像は、発光強度を色づけするためにソフトウェアにより加工し、その後、提示用に白黒の写真画像の上に重ねる。マウスを犠牲にし、病理学的な評価を、腫瘍の大きさ、場所及び性質(すなわち、抗原陽性又は陰性)を決定するために実施する場合もある。
HLA−A2/p53陽性の腫瘍細胞を保持する腫瘍部位に於ける264scTCR/Luc又は264scTCR/GFP試薬の、他の組織と比較して異なる検出を明らかにする画像化検討から得られる結果は、scTCR試薬が、インビボに於いて腫瘍を特異的に検出できることを示している。
【0122】
さらに、HLA−A2/p53陽性の腫瘍細胞を保持する腫瘍部位に於ける264scTCR/Luc又は264scTCR/GFPの、CMVscTCR/Luc又はCMVscTCR/GFP(対照)試薬の検出と比較して、異なる検出を明らかにする結果は、それらのscTCR試薬がインビボに於いて腫瘍をより特異的に検出できることを示している。HLA−A2/p53陽性の腫瘍細胞を保持する腫瘍部位に於ける264scTCR/Luc又は264scTCR/GFPの、HLA−A2陰性又はp53陰性の腫瘍細胞を保持している腫瘍部位の結果と比較して、差別化された検出を明らかにする画像化の結果は、さらにそれらのscTCR試薬がインビボに於いて腫瘍を特異的に検出できることを示している。
【実施例18】
【0123】
放射標識TCRによるインビボ腫瘍の画像化
別の態様に於いて、264scTCR融合タンパク質は、例えば、131Iによる直接のヨード化によって放射線標識される。ヨード化は、標準的な方法により実施される。HLA−A2及びp53発現に関して様々であるヒトの腫瘍細胞を、皮下又は静脈内のいずれかに注入し、腫瘍又は転移性の肺小塊を、記載されたように発達させる。マウスに放射線標識された264scTCR融合タンパク質を経静脈又は腹腔内投与し、放射線標識された264scTCR融合タンパク質を注入して、例えば、1、2、4、8、及び12時間後、そして1から14日後に、画像化する。全身スキャンするために、マウスを、ペントバルビタールナトリウム(100mg/kg)で麻酔して、例えばマイクロコンピュータと連結した、4mmピンホールのコリメーターを有した大きな視野のSopha DSXカメラで、画像化する。腫瘍部位に於ける放射線核種で標識された264scTCR試薬の、他の組織との比較により、差別化された検出を実践する画像化の検討から得られた結果は、それらの放射線標識されたscTCR試薬がインビボに於いて腫瘍を特異的に検出するために有用であることを示唆するものである。
以下の材料及び方法は、実施例に概説された実験を実施するために必要に応じて用いられた。
【0124】
1.材料
A2.1 264CTLクローン#5は、HLA−A2.1トランスジェニックマウス[文献49参照]に於いて産生されたヒトp53 264〜272ペプチドに特異的なCTLラインから限界希釈法[文献50参照]により得られた。CHO.K1チャイニーズハムスター卵巣、JurkatヒトTリンパ球、CTLL−2マウス細胞傷害性Tリンパ球、T2ヒトリンパ芽球、A375ヒトメラノーマ、H57−597ハイブリドーマ、及びBB7.2ハイブリドーマ細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC:Rockville, MD)から得られた。T2ヒトリンパ芽球細胞は、HLA−A2.1に対し陽性であるが、外来性ペプチドを収容することができる空のMHC分子を提示するための、TAP1及び2タンパク質が欠損している[文献2参照]。A375ヒトメラノーマ細胞株は、本発明者らの研究室でHLA−A2.1及びp53に関して試験されて、両方の抗原に関して陽性であることが見出された。H57−597ハイブリドーマは、マウスのTCRβ定常領域に於けるエピトープを認識するモノクローナル抗体を産生し、BB7.2ハイブリドーマは、HLA−A2のα2ドメイン上のエピトープを特異的に認識するBB7.2モノクローナル抗体を産生する。ヒトメラノーマ細胞株A375の高度に転移性のサブクローン、A375−C15Nは、インビボに於ける転移性検討にしか使われないものであるが、以前に報告されたように維持された[文献53参照]。薬物速度論検討に於けるELISAに使用される、組み換えヒトIL−2及びビオチン化抗ヒトIL−2ポリクローナル抗体は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis, MN)から購入された。抗TCR CβmAbH57−597、抗マウスTCR Vβ3mAb、抗マウスCD3εmAb、抗ヒトIL−2mAb、抗ヒトCD25ブロッキング抗体及びアイソタイプの対照抗体、及びFITC標識されたヤギ抗マウスIgGは、Pharmingen(San Diego, CA)から得られた。すべての細胞培養培地及び添加物は、CellGro(Herndon, VA)から購入され、他に記されない限り、すべての細胞培養材料は、Nunc(Rochester, NY)から購入された。すべてのマウスは、Harlan Labs(Indianapolis, IN)から購入された。
【0125】
2.細胞培養
すべての細胞株は、10%熱不活性化FBS、2mMのL−グルタミン、及び1 mg/mLのG418(形質転換されたCHO細胞についてのみ)を添加されたIMDMを含む完全な培養培地中で、37℃にて5%のCO下で維持された。CTLL−2細胞は、9U/mLの組み換えヒトIL−2を添加した同じ培地中で維持された。A375−C15N細胞は、10%熱不活性化FBS、ペニシリン及びストレプトマイシン(Life Technologies)を含むRPMI−1640中で維持された。
【0126】
マウス脾臓細胞は、BLAB/cマウスから無菌的に解剖された脾臓を押しつぶして、ナイロンメッシュのスクリーンを通し、そして培養培地で洗浄することにより単離された。赤血球はGey溶液で2分間溶解され、次いで溶解を停止するための培養培地が添加された。単一細胞のペレットは2回洗浄されて、培養培地中のmL当たり2.5x10細胞に再縣濁され、そして50μMの2−ME、100IU/mLの組み換えヒトIL−2、及び50ng/mLの抗マウスCD3εmAbを含む完全な培養培地で培養された。
【0127】
3.構築物
プライマー−オリゴヌクレオチドプライマーは、マウスT細胞受容体及びヒトIL−2遺伝子に適合する又は相補する配列から合成された:
KC228:5’−GAGGTGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGTCAGTGACGCAGC−3’;(配列番号3)
KC229:5’−GAGGTGACTAGTGTCTGGCTTTATAATTAG−3’;(配列番号4)
PRIB4:5’−GGGGGGCTCGAGCAATTCAAAAGTCATTCAGACTC−3’;(配列番号5)
KC176:5’−GAGGTGGAGCCCGGGGTCTGCTCGGCCCCAGGC−3’;(配列番号6)
ET−TCRF1:5’−CCCACCGGTCAGTCAGTGACGCAGCCC−3’;(配列番号7)
KC−170:5’−GTGGAGTTCGAAAAGGTGACTTACGTTTGTCTGCTCGGCCCCAG−3’;(配列番号8)
KC231:5’CGATAAGTGTACTTACGTTTTCATTATTCCATCGGCATGTACTCTTCTTCCTCTCG−3’;(配列番号9)
KC208:5’GTGGAGATCGATAAGTGTACTTACGTTTTCATTATCGCGATCCGGAGTTAACGTCTGCTCGGCCCCAG−3’;(配列番号10)
KC327B:5’−TAGGTGTCCGGAGCACCTACTTCAAGTTCTAC−3’;(配列番号11)
KC328B:5’−TAGGTGTCGCGAAGTTAGTGTTGAGATGATG−3’;(配列番号12)
AP2:5’−ACTCACTATAGGGCTCGAGCGGC−3’;(配列番号13)
CαHYB:5’GCTGTCCTGAGACCGAGGATCTTTTAACTG3’;(配列番号14)
CβHYB:5’−TTGTTTGTTTGCAATCTGTGCTTTTGATGG−3’;(配列番号15)
【0128】
TCR遺伝子は、T細胞クローンA2.1 264#5からクローン化された。本発明者らは、このT細胞クローン264scTCRから得られた一本鎖のTCRを指定する。ポリ(A)RNAは、MicroFast Trackキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて細胞から抽出され、二本鎖cDNAが調製され、Marathon cDNA Amplificationキット(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて二本鎖のアダプターオリゴヌクレオチドに結合された。Vα及びVβセグメント(segment)を同定するために、A2.1 264#5 cDNA調製物、上記リストのAP2プライマー(アダプターDNAに特異的)、及びCαHYB(α鎖の定常ドメインに特異的)又はCβHYB(β鎖の定常ドメインに特異的)を用いて、5’−RACE PCRが実施された。PCR断片は、TAクローニングキット(Invitrogen)を用いて、pCR2.1ベクターにクローン化され、その配列は、M13フォワード及びリバースプライマーを用いて決定された。T細胞受容体Vα鎖は、SfiI/SpeI断片を産生するためにKC228及びKC229プライマーを用いて増幅され、VβCβ鎖は、XhoI/XmaI断片を産生するためにPRIB4及びKC176プライマーを用いて増幅された。Cβ鎖は、全長Cβ鎖の127番目のアミノ酸残基システインの直前で切断された。SfiI/SpeI Vα鎖断片は、無関係なTCRをコードするE.Coli発現ベクターであるpKC60のSfiI/SpeIで消化されたものに、元来のTCRインサートを置き換えることにより、サブクローン化された。XhoI/XmaI VβCβ断片は、その後、このベクターのXhoI/XmaI消化物に結合され、可溶性の3つのドメインの264scTCRをコードするベクターを産生した。この構築物由来の3ドメインT細胞受容体は、ET−TCRF1及びKC170プライマーを用いてAgeI/ClaI DNA断片を産生するために増幅され、その断片はその後AgeI/HpaI断片を産生するために、KC231及びKC208プライマーを用いたPCRの鋳型として用いられた。
【0129】
ヒトIL−2をコードする配列は、Mini Total RNAキット(Qiagen, Valencia CA)及びQiashredder(Qiagen, Valencia CA)を用いて、Jurkat細胞から単離された全RNAから、RT−PCRによりクローン化された。逆転写は、KC328Bプライマーを用いて行われ、PCRはBspEI/NruIヒトIL−2断片を産生するために、KC327B及びKC328Bプライマーを用いて実施された。BspEI/NruI IL−2断片は、無関係なTCR/抗体融合タンパク質をコードするクローニングベクターであるBspEI/NruIで消化されたp149B1SPに、融合タンパク質の抗体部分を置き換えた。IL−2修飾ベクターは、AgeI及びHpaIにより消化され、上述のAgeI/HpaI264scTCR断片はそれに結合された。最後に、AgeI/ClaI264scTCR/IL−2融合タンパク質断片は、AgeI/BstBIで消化された、scTCR/マウスκ融合ベクターであるpSUN27内にクローン化され、元来クローン化されていた無関係なTCRを置き換え、264scTCR/IL−2融合タンパク質発現ベクターであるpSUN38を産生した。フローサイトメトリー分析のいくつかに関して、陰性対照として用いられた264scTCR/κ融合物は、AgeI/BstBI264scTCR断片をAgeI/BstBIで消化されたpSUN27にクローン化して、元来のTCRを置き換えることで産生された。
【0130】
哺乳動物細胞で融合タンパク質を産生することに関して、CHO.K1細胞は、Bio−Rad・Gene・Pulserを用いてエレクトロポレーションされ、次いで限界希釈法によりクローン化されて、1mg/mLのG418を含む培地中で選択された。
【0131】
4.タンパク質精製
264scTCR/IL−2は、抗マウスTCRモノクローナル抗体H57−597を用いた免疫親和性クロマトグラフィにより、細胞培養物の上清液から精製された。なお、この抗マウスTCRモノクローナル抗体H57−597は、TCRβ鎖の不変領域にあるエピトープを認識して、セファロース4Bカラム(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)に結合している。精製された試料は、その後、30kDaの分子量でカットオフする膜(Millipore, Bedford, MA)を有したUltrafree−15遠心性フィルターを用いて、濃縮され、PBSに緩衝液交換された。TCR融合タンパク質試料は、2〜8℃(短期間)又は−80℃(長期間)で生化学的及び機能的分析のために保存された。SDS−PAGEが、還元条件又は非還元条件のいずれかで、4〜12%のNu−PAGEポリアクリルアミドゲル(Novex, San Diego, CA)及びNovex EX−Cell IIシステムを用いて実施された。SDS−PAGEゲルは、クーマシーブルーで染色された。
【0132】
5.ELISA
すべてのELISAは、100〜200ng/wellの抗ヒトIL−2mAb又は抗マウスTCR Vβ3mAbでコートされたMaxisorb96ウェルプレート(Nunc, Rochester, NY)を用いて行われた。融合タンパク質は、ビオチン化された抗マウスTCRH57mAb、抗マウスTCRVβ3mAb、又は抗IL−2ポリクローナル抗体、次いでストレプトアビジン−HRP(Kirkegaard and Perry Laboratories, Gaithersburg, MD)、TMB基質、及び反応を停止させるための0.18MのHSO(BioFx, Owings Mills, MD)で検出された。吸光度は、96ウェルプレートリーダー(Bio-Tek Instruments, Inc., Winooski, VT)を用いて、450nmで測定された。
【0133】
6.TCR融合タンパク質による細胞染色
p53(aa149〜157)又はp53(aa264〜272)ペプチドのいずれかでパルスされたT2細胞は、1%のFBSを含むPBS中で、0.5μgの264scTCR/IL−2融合タンパク質と室温にて30分間インキュベートされた。細胞はその後、0.5μgの抗IL−2Ab又は0.5μgのビオチン化抗TCRH57−597mAbと、室温にて30分間インキュベートされ、次いで1μgの抗マウスκPE又は5ngのストレプトアビジン−PE(両方とも、Becton Dickenson, Franklin Lakes, NJ)とそれぞれインキュベートされた。試料は、FACScan分析(Becton Dickenson, Franklin Lakes, NJ)の前に1%のFBSを含むPBS中で、洗浄された。両p53ペプチドがHLA−A2に同様に結合するかどうかを決定するため、ペプチドを収容した細胞は、BB7.2を用いて室温にて30分間染色され、次いでFITCで標識されたヤギ抗マウスIgGで染色され、そしてFACScan機器で分析された。
【0134】
CTLL−2細胞は、0.5μgの融合タンパク質と室温にて30分間インキュベートされた。結合した融合タンパク質を検出するために、0.5μgのビオチン化抗TCR Vβ3mAbが添加され、室温にて30分間インキュベートされ、次いで、5ngのストレプトアビジン−PEでインキュベートされた、又は0.5μgのPEで標識されたHLA−A2.1 p53(aa264〜272)四量体を30分間用いることにより、そのタンパク質は検出された。p53ペプチドで収容され結合したHLA−A2四量体は、以前に述べられたように、産生された[文献1参照]。試料は、FACScan分析の前に1%のFBSを含むPBS中で洗浄された。IL−2受容体ブロッキング実験に関しては、CTLL−2細胞は、264scTCR/IL−2又は264scTCR/κ融合タンパク質とインキュベートされる前に、αヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照抗体と30分間インキュベートされた。BALB/cマウスの脾臓細胞染色に関しては、結合した融合タンパク質を検出するために、HLA−A2.1 p53(aa264〜272)四量体を用いて、CTLL−2細胞に関して記載されたように染色を実施した。
【0135】
A375細胞は、無酵素細胞解離緩衝液(Sigma, St. Louis, Mo)で回収された。5x10細胞の試料は、1%のFBSを含むPBS中で洗浄され、融合タンパク質無し、5μgの3C8(無関係なTCR/IL−2融合タンパク質)、又は5μgの264scTCR/ IL−2と共に室温にて30分間インキュベートされ、次いで、1μgのビオチン化H57−597mAbでインキュベートされた。細胞はその後、PE標識されたストレプトアビジンと室温にて15分間インキュベートされ、洗浄され、そしてFACScanにより分析された。
【0136】
7.細胞結合
p53(aa264〜272)ペプチド又はp53(aa149〜157)ペプチドのいずれかでパルスされたT2細胞は、7.88ng/mlのジヒドロエチジウム(HE)(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)で標識され、CTLL−2細胞は、50ng/mlのカルセインAM(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)で標識された。洗浄後、標識された細胞の二つの集団は、1対1の比率で、2μgの264scTCR/IL−2融合タンパク質の存在又は非存在下で、室温にて20分間一緒に混合された。細胞はその後、FACScanにより分析された。
【0137】
8.バイオアッセイ
CTLL−2細胞は、様々な濃度の組み換えIL−2又は264scTCR/IL−2のいずれかを含む100μLの培養培地中に、1ウェル当たり4x10細胞で撒かれ、37℃にて21時間、5%CO下でインキュベートされた。特異性についての対照として、CTLL−2細胞は、5又は50μgの抗ヒトCD25ブロッキング抗体又はアイソタイプの対照抗体の存在又は非存在下で、264scTCR/IL−2と37℃にて21時間、5%CO下でインキュベートされた。細胞増殖試薬WST−1(Roche Inc., Indianapolis, IN)が、1ウェル当たり20μL添加され、37℃にて4時間、5%CO下でインキュベートされた。吸光度は、96ウェルプレートリーダー上450nmで測定された。
【0138】
9.マウスに於ける薬物速度論
動物に関するすべての実験に於いて、適用可能なところでは、特定の国内法令と同様、研究室に於ける動物配慮の原則(NIH発行 No.85〜23,1985年改訂)に従った。メスのBALB/cマウスは、経静脈的に側部尾静脈を介して、100μLになるようにPBSで希釈した、32μgの264scTCR/IL−2融合タンパク質を注入した。血清は、バックグラウンドレベルを確立するために、264scTCR/IL−2を注入されていない一つのマウス集団から採取された。血清は、注入された集団から、15分、30分、1、2、4、8、及び24時間後に、尾の出血で採取された。血液試料は、14,000xgにて、4℃で10分間遠心され、血清は回収され、そして使用されるまで−80℃に保存された。264scTCR/IL−2濃度は、捕獲のため抗TCRVβ3又は抗IL−2モノクローナル抗体、及びビオチン化抗TCRH57モノクローナル又は抗IL−2モノクローナル抗体のいずれか、次いで、検出のためにストレプトアビジンHRPを用いて、ELISAにより決定された。
【0139】
10.インビボ研究
メスの胸腺欠損ヌードマウス(nu/nu)は、5.0x10のA375−C15N細胞を側部尾静脈を介して、注入された。動物は、様々な濃度の264scTCR/IL−2(全量100μlに32、10、3、1、又は0.1μg)又は組み換えヒトIL−2(全量100μlに8、2.5、0.75、0.25、又は0.025μg)を、腫瘍細胞投与後1、2、3、4、7、10、14、17、21、28、及び35日に注入された。腫瘍細胞注入後42日に、すべての動物は人道的に犠牲にされ、肺が取り出され、Bouin溶液中で固定され、肺表面腫瘍小塊が数えられた。それぞれの肺の腫瘍小塊は、二人の観察者によって数えられ、平均数が記録された。
【0140】
11.IgG及びBirA標識配列を含むTCR構築物及び融合タンパク質
TCR遺伝子は、記載されたようにT細胞クローンA2.1 264#5からクローン化された。このT細胞クローンから得られた一本鎖のTCRは、264scTCRと指定された。3ドメインの一本鎖264scTCRは、264scTCR/IL−2融合タンパク質構築物を鋳型として用いて、増幅された。264scTCR/IgG1発現構築物を産生するために、一本鎖のTCR断片は、抗体重鎖発現ベクターに結紮されて、抗体の可変領域を置き換え、一本鎖のTCRをヒトIgG1重鎖領域に結合させた。264scTCR/trunIgG1を産生するために、ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域の前で切り取られたIgG1重鎖ドメインを含む発現ベクターに、TCR断片が結紮された。
【0141】
264scTCR/BirA発現構築物を産生するために、標識配列が264scTCR分子のC末端での構造に発現されるような、BirA標識配列(Beckett, D.ら Protein Sci. 1999 April; 8(4):921-9)を含む発現ベクターに、一本鎖のTCR断片が結紮された。
【0142】
サイトメガロウィルス一本鎖のTCR(CMVscTCR)が、HLA−A2限定性CMV−pp65ペプチドで刺激されたCTLsからクローン化された。IgG1断片は、CMVscTCR/IgG1構築物を作るために、264scTCR/IgG1 DNAから増幅された。
【0143】
哺乳動物細胞に於ける融合タンパク質の産生のため、CHO.K1細胞は、Bio−Rad Gene Pulserにより、エレクトロポレーションされ、次いで、限界希釈法によりクローン化され、そして1mg/mlのG418を含む培養培地中で選択された。
【0144】
タンパク質精製は、以下のように実施された。264scTCR/IgG1、264scTCR/BirA及び264scTCR/trunIgG1は、セファロース4Bカラム(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)に結合されたH57−597モノクローナル抗体を用いた、免疫親和性クロマトグラフィにより、細胞培養上清から精製された。CMVscTCR/IgG1は、セファロース4Bカラム(Amersham Pharmacia, Piscataway, NJ)に結合されたBF1モノクローナル抗体を用いた、免疫親和性クロマトグラフィにより、細胞培養上清から精製された。264scTCR/BirAは、業者により推奨された条件下で、ビオチン−タンパク質リガーゼ(Avidity)によりビオチン化された。
【0145】
12.フローサイトメトリーを用いた264scTCR試薬による細胞染色の検出
264scTCR試薬が固定された及び固定されていない細胞を染色する能力は、いくつかの検討で特徴付けられた。細胞染色方法は、様々な検出可能ドメインを保持している264scTCR融合物の利用、及び様々な蛍光標識プローブでこれらの融合物の細胞レベルの相互作用を検出すること、を含む。いくつかの対照は、特異的な染色を評価するために用いられた。対照は、p53(aa264〜273)抗原を欠損している細胞を264scTCR試薬で染色すること、p53陽性細胞をCMVscTCR試薬で染色すること、p53陽性細胞を二次染色試薬だけで染色すること、及びp53陽性細胞を可溶性HLA−A2/p53多量体のような競合的ブロッキング試薬の存在下及び非存在下に於いて264scTCR試薬で染色すること、を含んでいる。
【0146】
単量体又は多量体型264scTCRの細胞は、特異的に染色する能力について試験された。T2細胞は、37℃、2.5時間で100μg/mlのp53(aa264〜273)又はp53(aa149〜157)を収容した。過剰なペプチドを取り除く洗浄工程後、細胞は125pMの264scTCR/IL−2、264scTCR/IgG1、264scTCR/trIgG1又は264scTCR/BirA(ビオチン化無しで)と、30〜45分間インキュベートされた。還元及び非還元試料のSDS−PAGE分析は、264scTCR/trunIgG1及び264scTCR/BirAタンパク質が単量体であること、及び264scTCR/IgG1タンパク質が二量体であることを示していた。更に一回の洗浄工程の後、細胞は2.5μgのPE結合H57mAb(H57−PE)と共に30分間インキュベートされた。細胞は洗浄され、FACScanフローサイトメトリー装置(BD Sciences, San Jose, CA)で、CellQuestソフトウェア(BD Sciences, San Jose, CA)を用いて分析された。非染色及びH57−PEで染色されたT2細胞はまた、バックグラウンド染色を確認するために分析された。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1A〜Bは、264scTCR/IL−2融合タンパク質の模式的な構造(1A)とアミノ酸配列(1B)を示す図である。
【図2】図2は、形質転換したCHO細胞に於ける264scTCR/IL−2融合タンパク質の産生を示すサイズゲルを示すものである。
【図3】図3A〜Cは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のTCR部分のMHC/ペプチド結合能力を示すグラフである。
【図4】図4A〜Bは、264scTCR/IL−2融合タンパク質のIL−2部分のIL−2受容体結合能力を示すグラフである。
【図5】図5A〜Bは、264scTCR/IL−2融合タンパク質の生物学的活性を示すグラフである。
【図6】図6A〜Dは、264scTCR/IL−2融合タンパク質により仲介されるペプチドを収容したT2細胞とCTLL−2細胞の結合を示すグラフである。
【図7】図7A〜Cは、264scTCR/IL−2融合タンパク質の血清半減期を示すグラフである。
【図8】図8は、264scTCR/IL−2融合タンパク質を用いた腫瘍細胞染色を示すグラフである。
【図9】図9は、264scTCR/IL−2融合タンパク質の抗腫瘍効果を示すグラフである。
【図10】図10A〜Bは、264scTCR試薬による、非特異的なp53ペプチド(10A)又は特異的なp53ペプチド(10B)を収容したT2細胞の染色を示すグラフである。
【図11】図11A〜Dは、様々な264scTCR試薬及び二次試薬による、腫瘍細胞の染色を示すグラフである。
【図12】図12A〜Bは、競合する可溶性ペプチドMHC分子(264−TET標識される)の添加あり及び無しで、264scTCR/IgG1及びCMVscTCR/IgG1(対照)試薬を用いて、固定されたA375(図12A)又はT2細胞(図12B)を染色したものを示すグラフである。
【図13】図13は、固定された腫瘍細胞型(A375、HT29及びSaos2)の、A2及びp53抗原に関する、及び264scTCR/IgG1及びCMVscTCR/IgG1融合タンパク質を用いた、染色パターンを示す連続的な顕微鏡写真である。
【図14】図14は、264scTCR/BirA四量体と反応させたT2細胞の定量的染色を示すグラフである。
【図15】図15は、264scTCR/IgG1融合タンパク質と反応させたT2細胞の定量的染色を示すグラフである。
【図16】図16は、264scTCR/BirA四量体又は264scTCR/IgG融合物と反応させた細胞に関して、収容されたp53ペプチドの増加する量と細胞あたりの複合体の数を示すグラフである。
【図17】図17A〜Bは、264scTCR/BirA四量体(図17A)又は264scTCR/IgG1融合タンパク質(図17B)と反応させたA375腫瘍細胞の定量的染色を示すグラフである。
【図18】図18は、264scTCR/BirA四量体と反応させた3つの腫瘍細胞株の定量的染色(細胞あたりの複合体の数)を示すグラフである。
【図19】図19は、図18と同様に、264scTCR/IgG1融合タンパク質と反応させた3つの腫瘍細胞株の定量的染色を示すグラフである。
【図20】図20は、二次抗体、CVMscTCR/IgG1(対照)又は264TCR/IgG1融合タンパク質で染色されたA375腫瘍の固定された切片を示す3枚の倍率200倍の顕微鏡写真である。
【図21】図21は、図20と同様に、腫瘍切片を示す3枚の高倍率(400倍)の顕微鏡写真である。
【0148】
参考文献
次の文献は、本発明の開示の全体を通して、(以下に示される番号によって)参照される。その各々は、参照して本明細書に取り込む。
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【0149】
ここに開示されたすべての参考文献は、参照して本明細書に取り込む。本発明は、それらのより好ましい態様を参照して記載するものである。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮の上、本発明の精神と範囲内で、修飾及び改良を加えることができるものと理解されたい。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞又は組織を、存在しているペプチド抗原と可溶性TCR分子又はその断片が特異的な結合複合体を形成する条件下で、少なくとも一つの可溶性TCR分子又はその機能性断片に接触させる、
b)存在しているペプチド抗原に結合しなかったすべての可溶性TCR分子又はその断片を取り除くのに適した条件下で、細胞又は組織を洗浄する、及び
c)存在しているペプチド抗原を含む細胞又は組織の指標としての特異的な結合複合体を検出する、
工程を含む、MHC複合体として細胞又は組織上に存在しているペプチド抗原を含む細胞又は組織を検出するための方法。
【請求項2】
細胞又は組織をさらに、少なくとも一つのブロッキング試薬と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可溶性TCR又はその断片と細胞との非特異的結合を減少させるために、工程aの前に細胞又は組織をブロッキング試薬と接触させることを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブロッキング試薬が過酸化物、血清蛋白質、抗体又はその断片である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
複合体に結合できる可溶性TCR又はその断片に競合的及び特異的に結合する条件下で、前記複合体を競合MHC分子又はその断片と接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
競合複合体を形成するために、実質的にすべての可溶性TCR又はその断片が競合MHC分子又はその断片に結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
競合複合体を検出すること及びMHC分子又は可溶性TCRの結合特異性を決定することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
MHC分子又はその断片が一本鎖である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
MHC分子又はその断片がペプチド抗原を収容している、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
細胞又は組織を少なくとも一つの変性試薬と接触させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程aの前に、細胞又は組織を変性試薬と接触させ、細胞又は組織を変性させる(固定させる)ことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の細胞又は組織をアレイに搭載することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
細胞又は組織を搭載したアレイのそれぞれの要素に於いて実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アレイのそれぞれの要素に於いて実質的に同時に実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程cが、アレイをスキャンすること、及び特異的な結合複合体の存在を示す画像情報を発生させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
工程cが、リアルタイムに情報を利用者に出力すること、及び必要に応じて画像情報の保存画像に見出しをつけることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞上に存在しているペプチド抗原の量が、約100,000コピーより少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
細胞上に存在しているペプチド抗原の量が、約400コピーより少ない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペプチド抗原が、腫瘍関連ペプチド抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
細胞又は組織が懸濁されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
可溶性TCR分子又はその断片が、一本鎖のTCRを少なくとも一つ含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
可溶性TCR分子又はその断片が検出可能に標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
検出可能な標識が、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素又はその触媒活性を有する断片、放射性核種、ナノ粒子、常磁性金属イオン、又は、蛍光、りん光若しくは化学発光分子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
一本鎖のTCR又はその断片が、少なくとも一つの共有結合したサイトカインを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
可溶性TCR分子又はその断片が、共有結合したサイトカイン又はその断片を含む一本鎖のTCRである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
一本鎖のTCR又はその断片が、インターロイキン2(IL−2)をコードする配列を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
一本鎖のTCR又はその断片が、少なくとも一つの共有結合した免疫グロビンドメインを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
可溶性TCR分子又はその断片が、共有結合した免疫グロビンドメイン又はその断片を含む一本鎖のTCRである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
一本鎖のTCR又はその断片がIgG1ドメイン又はその断片をコードする配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
MHC複合体がHLA−A2限定性である、請求項1の方法。
【請求項31】
ペプチド抗原を含まない細胞と可溶性TCR又はその断片の如何なる結合をも検出するための対照を用いることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
存在しているペプチド抗原が、p53(aa149〜157)又はp53(aa264〜272)である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
インビボ、エキソビボ、又はインビトロで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
細胞又は組織が腫瘍細胞又は腫瘍組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
細胞又は組織が、MHC複合体として細胞又は組織上に存在している腫瘍関連ペプチド抗原を含み、
a)存在しているペプチド抗原と可溶性TCR分子又はその断片が特異的な結合複合体を形成する条件下で、可溶性TCR分子又はその機能性断片を患者に投与すること、及び
b)存在している腫瘍関連ペプチド抗原を含む腫瘍細胞又は腫瘍組織の指標として、特異的な結合複合体を検出すること、
を含む患者の腫瘍細胞又は腫瘍組織を検出する方法。
【請求項36】
可溶性TCR分子又はその断片が一本鎖のTCRを少なくとも一つ含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
可溶性TCR分子又はその断片が検出可能に標識されている、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
検出可能な標識が、ビオチン、ストレプトアビジン、酵素又はその触媒活性を有する断片、放射性核種、ナノ粒子、常磁性金属イオン、又は蛍光、りん光若しくは化学発光分子である、請求項37に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2007−513326(P2007−513326A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539829(P2006−539829)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037569
【国際公開番号】WO2005/046449
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504090190)アルター・バイオサイエンス・コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】