説明

可燃性ガス濃縮装置

【課題】可燃性ガスを濃縮する際に、原料ガスの成分組成に変動があったとしても、原料ロスを最小限に抑え、効率的に可燃性ガスを高濃度に濃縮することができる技術を提供する。
【解決手段】可燃性ガスを吸着する吸着塔2と、原料ガスを供給する供給放出手段31と、可燃性ガスを収集する収集手段51と、原料ガスの吸着工程と脱着工程とを順次実行させる制御手段6とを備え、前記吸着工程において、前記吸着塔2から排出される可燃性ガス濃度を検出する検出手段43を設け、前記制御手段6が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記検出手段43による可燃性ガス検出濃度に基づき変更する運転条件設定部63を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスおよび空気を含有する原料ガスを吸着塔に供給して、可燃性ガスを吸着させ、濃縮する可燃性ガス濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガスを有効に利用する場合には、可燃性ガスが含まれる原料ガスから空気などのガスを分離して、適当な範囲にまで可燃性ガスを濃縮する必要がある。このような可燃性ガスを濃縮する装置や方法は種々提案されているが、例えば特許文献1では、可燃性ガスとしてのメタンガスを含有する炭鉱から発生するガス(いわゆる炭鉱ガス)を原料ガスとして、この原料ガスから吸着材を用いて空気(主に窒素、酸素、二酸化炭素が含まれる)を分離し、メタンガスを濃縮して利用する発明が提案されている。
【0003】
すなわち、上記特許文献1では、窒素に比べてメタンガスの吸着速度が非常に遅い天然ゼオライトを吸着材として用いて(換言すると、メタンガスに対して窒素、酸素、二酸化炭素を優先的に吸着する吸着材を用いて)、当該吸着材が充填された吸着塔に炭鉱ガスを圧縮機等により所定圧になるまで導入して、炭鉱ガスに含まれる酸素、窒素、二酸化炭素を先に吸着塔の手前部(下部)に吸着させ、吸着塔の奥部(上部)に吸着速度の遅いメタンガスを吸着させて、さらに当該メタンガスを吸着塔の上部から大気圧になるまで放出して、メタンガスを濃縮する装置および方法の発明が提案されている。
これにより、原料ガスとしての炭鉱ガスから、吸着材を用いて空気を分離し、メタンガスを濃縮して、当該濃縮されたメタンガスを燃料等として利用することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−198591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、炭鉱ガスを濃縮するための構成としては、
可燃性ガスを吸着する吸着材を充填した吸着塔を設け、
前記吸着塔に可燃性ガスおよび空気を含有する原料ガスを供給路を通じて供給するとともに、前記原料ガスのうち前記吸着材に吸着されなかった排ガスを放出路を通じて前記吸着塔の外部に放出する供給放出手段を設け、
前記吸着塔内を大気圧よりも減圧して前記吸着材に吸着された可燃性ガスを脱着させ、収集路を通じて収集する収集手段を設け、
前記供給放出手段により前記吸着塔へ前記原料ガスを供給するとともに、前記吸着塔から前記排ガスを放出する可燃性ガス吸着工程と、
前記収集手段により脱着される前記可燃性ガスを収集する可燃性ガス脱着工程とを
順次実行させる制御手段を設けた構成が想定される。
【0006】
このような構成において、前記吸着塔に原料ガスを導入すると、前記原料ガスは、前記吸着材と接触し、前記原料ガス中に含まれる可燃性ガスが吸着される。ここで、原料ガス中で、吸着されなかった成分は、そのまま排ガスとして放出路を通じて前記吸着塔の外部に放出される。その結果、前記吸着塔内には、原料ガス中の可燃性ガスのみが濃縮されることになる(吸着工程)。
【0007】
前記吸着材には、可燃性ガスを吸着する吸着限界に達すると、前記吸着材が破過して、排ガス中に可燃性ガスが排出され始める。そこで、排ガス中に可燃性ガスが排出され始める前に、原料ガスの供給を停止し、逆に、吸着塔を減圧して吸着塔から可燃性ガスを排出する。ここで排出された可燃性ガスは、収集路を通じて収集される。ここで収集される可燃性ガスは、前記吸着塔で選択的に吸着されたものであるから、原料ガス中の濃度より濃く濃縮されたものとなっている(脱着工程)。
【0008】
前記吸着工程・脱着工程を順次繰り返すと、濃縮された可燃性ガスが順次収集路を介して収集されることになる。
【0009】
ところで、上述の前記吸着工程・脱着工程を順次繰り返すための制御手段は、吸着工程の完了時点を、前記吸着工程のはじめから所定の吸着時間経過した時点あるいは、吸着工程における排ガス中の可燃性ガス濃度が所定濃度に達した時点を吸着完了時点とすることが考えられている。
【0010】
しかし、吸着材21の吸着能力低下、ブロアーの能力低下等の要因により、メタンガスの前記吸着材を破過する時期が変動するため、吸着完了時点における前記メタンガス濃度は変動する。
【0011】
つまり、吸着材21が劣化するなどして吸着特性が変化したような場合に、吸着材21が破過し始めてから排ガスOG中にメタンガスが急速に放出し始められるような状況や、ブロアーの能力が低下してガス流量が低下したような場合に、吸着材の破過までに時間を要する状況が想定される。そのため、例えば、吸着時間の経過により吸着完了時点を判断すると、ブロアーの能力が低下して吸着材に供給される可燃性ガス量が減少しているような場合に、吸着塔の吸着材がまだ破過に達していないのに吸着工程を完了させてしまうことになり、逆に吸着材が劣化して吸着能力が低下しているような場合に、排ガス中に大量の可燃性ガスを排出させ、ロスしてしまうことになる。また、排ガス中の可燃性ガス濃度で吸着完了時点を判断することにすると、予想される吸着完了時点と実際の吸着完了時点がおおきく異なってしまい、排ガス中の可燃性ガス濃度を必要以上に長期間モニタする必要があったり、モニタし始めたときには、すでに可燃性ガス濃度が高く、適切に吸着工程の完了時点を決める可燃性ガス濃度を検知できなかったりするのである。
【0012】
このような状況を防ぐためには、通常、吸着完了を余裕を持って判断するよう設定し、運転を行うことになるのであるが、余裕を持って判断することにすると、安全側で運転することになるため、原料ガスの濃縮度があまり上がらなかったり、原料ロスが大きかったり、濃縮装置全体としての運転効率が低下したりする問題があり、省エネルギー、地球温暖化等の環境問題の観点からも改善が望まれている。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可燃性ガスを濃縮する際に、原料ガスの成分組成に変動があったとしても、原料ロスを最小限に抑え、効率的に可燃性ガスを高濃度に濃縮することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔構成〕
上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、
可燃性ガスを吸着する吸着材を充填した吸着塔と、
前記吸着塔に可燃性ガスおよび空気を含有する原料ガスを供給路を通じて供給するとともに、前記原料ガスのうち前記吸着材に吸着されなかった排ガスを放出路を通じて前記吸着塔の外部に放出する供給放出手段と、
前記吸着塔内を大気圧よりも減圧して前記吸着材に吸着された可燃性ガスを脱着させ、収集路を通じて収集する収集手段と、
前記供給放出手段により前記吸着塔へ前記原料ガスを供給するとともに、前記吸着塔から前記排ガスを放出する可燃性ガス吸着工程と
前記収集手段により脱着される前記可燃性ガスを収集する可燃性ガス脱着工程とを
順次実行させる制御手段と、
を備える可燃性ガス濃縮装置であって、
前記吸着工程において、前記吸着塔から排出される可燃性ガス濃度を検出する検出手段を設け、
前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記検出手段による可燃性ガス検出濃度に基づき変更する運転条件設定部を設けた点にある。
【0015】
〔作用効果〕
つまり、本発明の構成は、上述の従来の可燃性ガス濃縮装置の吸着工程の基本構成を備えているので、前記吸着塔に可燃性ガスを吸着させるに、吸着工程と脱着工程とを順次行うことで可燃性ガスの濃縮が行える。
【0016】
ここで、前記吸着工程において、前記吸着塔から排出される可燃性ガス濃度を検出する検出手段を設けてあるから、吸着工程を行う際に、排出される排ガス中の可燃性ガス濃度を知ることが出来る。
このとき、各工程の切替は、通常、吸着完了時点を設定して吸着時間が吸着完了時点に達しているかどうかで判定する。そこで、排ガス中の可燃性ガス濃度が高いほど、吸着塔内の吸着材が充分破過に達していることになるから、吸着工程の吸着完了時点は、排ガス中の可燃性ガス濃度により判定することができる。
そして、前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記検出手段による可燃性ガス検出濃度に基づき変更する運転条件設定部を設けてあるから、排ガス中の可燃性ガス濃度に応じて、吸着完了時点が適切に設定されているのかどうかを判断することが出来、その判断に基づき、吸着完了時点を設定変更することが出来る。
【0017】
また、各工程の切替は、前記排ガス中の可燃性ガス濃度そのものの閾値によっても判定することが出来るが、この場合も、排ガス中の可燃性ガス濃度に応じて、吸着完了時点が適切に設定されているのかどうかを判断することが出来、その判断に基づき、吸着完了時点を設定変更することが出来る。
これにより、吸着完了時点を正確に設定することができるようになり、原料ロスを最小限に抑え、効率的に可燃性ガスを高濃度に濃縮することができるようになった。
【0018】
〔構成〕
また、前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記吸着塔から排出される可燃性ガス濃度の閾値に基づき判定するとともに、
前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記閾値を補正するためのガス濃度補正値との対応関係をデータベースとして記憶する記憶部を備え、前記運転条件設定部は、あらかじめ求められた前記対応関係に基づき、前記吸着完了時点を設定変更することが好ましく、
前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、吸着工程開始からの経過時間により判定するとともに、
前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記経過時間との対応関係をデータベースとして記憶する記憶部を備え、前記運転条件設定部は、あらかじめ求められた前記対応関係に基づき、前記吸着完了時点を設定変更してもよい。
【0019】
〔作用効果〕
前記検出手段によって、排ガス中の可燃性ガス濃度を検出して、前記吸着完了時点を変更する場合、どのように変更するかを決める必要がある。ところで、前記原料ガスが同じであれば、吸着工程の開始から吸着完了時点までの吸着時間は、前記吸着材の吸着能力が高いほど長く、前記原料ガスの供給量が多いほど短いという関係にあり、一概に吸着材の性状や原料ガスの供給料の変動などに基づいて決められるものではない。
【0020】
そこで、前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記閾値を補正するためのガス濃度補正値との対応関係、あるいは、前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記経過時間との対応関係をデータベースとして記憶し、そのデータベースに記憶された対応関係基づき前記吸着完了時点を設定変更するものとすれば、吸着材の性状や原料ガスの供給料の変動などを個々に把握することなく、吸着完了時点を知ることができ、前記運転条件設定部は、あらかじめ求められた対応関係に基づき、適正な吸着完了時点を設定変更することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
したがって原料ガスの成分組成に変動があったとしても、原料ロスを最小限に抑え、効率的に可燃性ガスを高濃度に濃縮することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の可燃性ガス濃縮装置の構成を示す概略構成図
【図2】本願におけるメタンガス吸着材21aの吸着特性を示す図
【図3】第1実施形態における可燃性ガス濃縮装置の動作の示すフロー図
【図4】吸着工程の可燃性ガス濃縮装置の動作の示すフロー図
【図5】メタンガス吸着工程における排ガスOG中のメタンガス濃度の変化を、経過時間との関係で示すグラフ図
【図6】メタンガス脱着工程における濃縮後のメタンガスPG中のメタンガス濃度の変化を、経過時間との関係で示すグラフ図
【図7】メタンガス脱着工程における濃縮後のメタンガスPG中のメタンガス濃度の変化を、吸着塔2内の圧力との関係で示す表図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る可燃性ガス濃縮装置100(以下、本装置100と略称する)の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
<本装置の構成>
図1は、本装置100の概略構成を示す図である。具体的には、本装置100は、図1に示すように吸着材21を充填した吸着塔2と、原料ガスGを供給するとともに排ガスOGを放出する供給部3及び放出部4と、濃縮後の可燃性ガスPGを収集する収集部5と、供給部3、放出部4、収集部5の運転を制御する制御手段6を設けて構成してある。また、吸着塔2内に供給される原料ガスG中の可燃性ガス濃度を検出する入口側検出手段(検出手段)33、及び、吸着塔2を通過したガスを検出するための出口側検出手段(検出手段)43を備える。
【0024】
<吸着塔>
吸着塔2は、可燃性ガスを吸着することができる吸着材21が充填されており、吸着塔2に供給された原料ガスG内の可燃性ガスを選択的に吸着することができるよう構成されている。
ここで、原料ガスGは、可燃性ガスと空気とを含むガスであるが、例えばメタンガスと空気とを含む炭鉱ガスとすることもできる。また、可燃性ガスとしては、可燃性の気体であれば特に制限されないが、例えば炭鉱ガスに含まれるメタンガスとすることもできる。以下においては、原料ガスGを炭鉱ガスとし、原料ガスGには可燃性ガスとしてのメタンガスと空気とを含むものとして説明する。なお、炭鉱ガスとは炭鉱から発生するガスであり、条件により異なるが、炭鉱ガス中には、メタンガス20〜40Vol%程度、空気(主として窒素ガス、酸素ガスが含まれる)60〜80Vol%程度が含まれている。
【0025】
<吸着塔:吸着材>
吸着材21は、メタンガス等の可燃性ガスを選択的に吸着できれば、特に制限されないが、吸着材21として、MP法による平均細孔直径が4.5〜15Åで、かつ大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/g以上である活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅、シクロヘキサンジカルボン酸銅など)からなる群から選択される少なくとも一つであるメタンガス吸着材21aを用いるとよい。なお、上記平均細孔直径として好ましくは、4.5〜10Å、より好ましくは、5〜9.5Åがよく、また、上記メタンガス吸着量が好ましくは、25Nml/g以上がよい。例えば、このような活性炭は、椰子殻または椰子殻炭を窒素ガス中において600℃で完全に炭化した炭化物を粒径1〜3mmの大きさに破砕したものを炭素質材料とし、内径50mmのバッチ式流動賦活炉を用いて、水蒸気10〜15Vol%、二酸化炭素15〜20Vol%および残余が窒素である雰囲気下において、860℃で賦活することにより得られる。
【0026】
このように、吸着材21として大気圧及び298K下においてメタンガスを選択的に吸着できるメタンガス吸着材21aを用いることで、当該メタンガス吸着材21aに大気圧及び298K下でも充分にメタンガスを吸着することができる。
【0027】
すなわち、大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/gより低いと、低圧(特に大気圧程度)でのメタンガス吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスのメタンガス濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタンガス吸着材21aの増量が必要となり装置が大型化する。なお、上記メタンガス吸着量の上限は特に制限されないが、現状で得られるメタンガス吸着材21aのメタンガス吸着量は40Nml/g以下程度である。
また、MP法における平均細孔直径が4.5Åより小さいと、酸素ガス、窒素ガスの吸着量が増え、濃縮後におけるメタンガス中のメタンガス濃度が低下したり、平均細孔直径がメタンガス分子径に近くなり吸着速度が遅くなってメタンガス吸着性能が低下したり、吸着しなくなる。一方、MP法における平均細孔直径が15Åより大きいと、低圧(特に大気圧程度)でのメタンガス吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスのメタンガス濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタンガス吸着材21aの増量が必要となり装置が大型化する。
したがって、MP法による平均細孔直径が4.5〜15Åで、かつ大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/g以上である活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機金属錯体からなる群から選択される少なくとも一つであるメタンガス吸着材21aが良い。
【0028】
さらに、上記メタンガス吸着材21aが、HK法における平均細孔直径の10Å以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であるとよく、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上がよい。この場合、メタンガスを選択的に吸着することができる平均細孔直径が10Å以下である細孔容積が全細孔容積の50%以上を占めているため、大気圧下(0.1MPa程度)におけるメタンガスの吸着可能量を増大させて、大気圧下であっても充分にメタンガスを吸着することができる。すなわち、図2に示すように、上記平均細孔直径が10Å以下のメタンガス吸着材3aでは、10Åよりも平均細孔直径が大きいメタンガス吸着材3bと比較して、大気圧下(0.1MPa程度)におけるメタンガス吸着量が多く、本装置100のように、基本的に大気圧下においてメタンガスを吸着させる場合に好適に用いることができる。なお、実質的には、計測できる範囲である平均細孔直径が4Å以上10Å以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であればよい。また、より好ましくは、平均細孔直径が4.5Å以上10Å以下の細孔容積が、全細孔容積の50%以上であることがメタンガス吸着材21aとして好ましい。
【0029】
一方、上記メタンガス吸着材21aが、77K下での窒素吸着量において、HK法による10Åの平均細孔直径に対応する相対圧0.013下での窒素吸着量が、全細孔容積に対応する相対圧0.99下での窒素吸着量の50%以上であるとよく、好ましくは、70%以上、より好ましくは、80%以上がよい。この場合、相対圧0.99における吸着量は全細孔容積を、相対圧0.013における吸着量は10Å以下の細孔容積を示し、それぞれの値の比は上記と同じように10Å以下の細孔の割合が多いことを示している。その結果として、メタンガスと空気との混合ガスを原料ガスGとする場合も、大気圧付近でのメタンガスの濃縮を容易にかつ、効率よく行なうことができる。
【0030】
<供給部>
吸着塔2には、原料ガスGを供給する供給部3を連設する。前記供給部3は原料ガスGを供給する供給路30、前記供給路30に原料ガスGを送り込む送風機(ブロアー)31aが設けられる。また、前記供給路30には、前記供給路30へ原料ガスGを供給、供給停止の切替、供給量の調整を行うための切替弁(供給路切替弁)32を設けるとともに、入口側検出手段33として、供給される原料ガスG中のメタンガス濃度を測定するためのメタンガス濃度検知手段33aを設けてある。
【0031】
前記送風機31aは、供給路30上に設けられており、原料ガスGを供給路30を通じて吸着塔2に供給して、吸着塔2内のメタンガス吸着材21aに原料ガスG中のメタンガスを吸着させるものであり、原料ガスGを昇圧することなく供給できれば、特に制限されるものではない。
【0032】
また、前記供給路切替弁32は、後述する制御手段6の切替制御部64による制御により原料ガスGの供給を調整することができる。
【0033】
<放出部>
吸着塔2には供給部3から供給された原料ガスGのうち吸着材21に吸着されなかった排ガスOGを放出する放出部4を連設する。前記放出部4は、排ガスOG(メタンガス濃度の非常に低い、主に窒素ガス、酸素ガスからなるガス)を放出する放出路40が設けられる。また、前記放出路40には、前記放出路40に排ガスOGを放出、放出停止、放出量の調整を行うための切替弁(放出路切替弁)42を設けるとともに、出口側検出手段43として、放出される排ガスOG中のメタンガス濃度を測定するためのメタンガス濃度測定手段43aを設けてある。
【0034】
また、放出路切替弁42は、後述する制御手段6の切替制御部64による制御により排ガスOGの放出を調整することができる。
【0035】
本願における供給放出手段31は、前述の供給部と、放出部とから構成され、その動作上、吸着塔2に供給された原料ガスGのうちメタンガス吸着材21aに吸着されなかった排ガスOGを、放出路40を通じて吸着塔2の外部空間に放出させる手段としても機能する。
すなわち、供給放出手段31は、原料ガスGを昇圧することなく大気圧付近で吸着塔2内に送り込み、原料ガスG中のメタンガスを吸着させつつ、排ガスOGを、放出路40を通じて放出することができる。
【0036】
<収集部>
吸着塔2には供給部3から供給された原料ガスGのうち吸着材21に吸着され、濃縮後の高濃度のメタンガスPGを取出す収集部5を連設する。前記収集部5は、高濃度のメタンガスPGを取出す収集路50を設けるとともに、前記吸着塔2から前記収集路50に高濃度のメタンガスPGを取出す収集手段51を主に構成する真空ポンプ51aおよび、前記収集路50に取出された高濃度のメタンガスPGを貯蔵する貯蔵タンク54を設けて構成してある。収集路50には、濃縮後のメタンガスPGの通過を調整可能な切替弁(収集路切替弁)52が設けられ、後述する前記制御手段6の切替制御部64による制御により濃縮後のメタンガスPGの通過を調整することができる。
【0037】
貯蔵タンク54は、濃縮後の高濃度のメタンガスPGを安全に貯蔵することができるものであればよく、吸着式ガスタンクを使用するとより好ましい。
【0038】
収集手段51は、吸着塔2内のメタンガス吸着材21aに吸着されたメタンガスを、吸着塔2内の圧力を大気圧よりも低く減圧して脱着させ、この脱着された濃縮後の高濃度のメタンガスPGを収集路50を通じて収集して、貯蔵タンク54に当該高濃度のメタンガスPGを貯蔵する。
【0039】
<制御手段>
上述の供給路切替弁32、放出路切替弁42、収集路切替弁52の具体的な調整動作は、制御手段6の切替制御部64によって行われる。
【0040】
前記制御手段6は、
各メタンガス濃度検知手段33a、43aからの出力に基づきメタンガス濃度を求めるガス濃度演算部61と、
各切替弁32,42,52を切替操作してからの経過時間を計時するタイマ部62と、
各切替弁32,42,52を切替操作する切替条件を設定する運転条件設定部63と、
前記運転条件設定部63により設定された各設定時間に基づき、各切替弁を切替制御する切替制御部64と、
原料ガスG中のメタンガス濃度と、吸着塔2に原料ガスGを供給する吸着時間との関係を示す入口側制御データ65aや、排ガスOG中のメタンガス濃度と、吸着塔に原料ガスGを供給する吸着時間の補正量を示す出口側制御データ65bをデータベースとして記憶する記憶部65と、
を備え、
それぞれ、メモリ等からなる記憶媒体、CPU、入出力部を備えたマイクロコンピュータ及び、そのコンピュータにより実行可能なプログラム、もしくはこれらの組み合わせより機能するように構成される。そして、このコンピュータが所定のプログラムを実行することにより、ガス濃度演算部61、タイマ部62、運転条件設定部63、切替制御部64が機能して、供給放出手段31、収集手段51、供給路切替弁32、放出路切替弁42、収集路切替弁52などを運転制御することができる。
【0041】
入口側検出手段33としてのメタンガス濃度検知手段33aは、具体的には、半導体式のガス検知素子を備え、原料ガスG中のメタンガス濃度の変動を検出するガスセンサからなり、原料ガスG中のメタンガスを検知するとともに、その濃度出力を前記制御手段6に伝送する。これを受けた前記制御手段6は、運転条件設定部63により、前記記憶部65に記憶された入口側制御データ65aのデータベースを参照して、前記濃度出力からメタンガス濃度、前記吸着塔2にメタンガスを吸着させたときに吸着材21が破過するまでの吸着時間をもとめ、原料ガスGの供給開始から吸着時間の経過する吸着完了時点を設定する。これにより、前記制御手段6は、タイマ部62により前記運転条件設定部63に設定された吸着完了時点を参照して、吸着工程の完了動作を行う時期を判断することが出来るようになる。
【0042】
出口側検出手段43としてのメタンガス濃度検知手段43aは、具体的には、半導体式のガス検知素子を備え、原料ガスG中のメタンガス濃度の変動を検出するガスセンサからなり、原料ガスG中のメタンガスを検知するとともに、その濃度出力を前記制御手段6に伝送する。これを受けた前記制御手段6は、前記記憶部65に記憶された出口側制御データ65bのデータベースを参照して、運転条件設定部63により前記濃度出力から前記吸着塔2にメタンガスを吸着させる吸着時間の補正量をもとめ、原料ガスGの供給開始から吸着時間の経過する吸着完了時点を補正して、運転条件設定部63により設定される吸着完了時点を変更する。これにより、吸着工程の次のサイクルでは、より適切な吸着完了時点を設定することができるようになる。
【0043】
<運転制御>
次に、図3、4を用いて、具体的に、本装置100によりメタンガスを濃縮する動作について説明する。本装置100は、概略すると、メタンガスの吸着工程(#A)、脱着工程(#B)、昇圧工程(#C)を実行する。
【0044】
<吸着工程>
図4に示すように、まず、切替制御部64は、供給路切替弁32、放出路切替弁42、収集路切替弁52を閉じておいた状態から、供給路切替弁32、放出路切替弁42を開く(#1)。
【0045】
そして、送風機31aにより、原料ガスGを供給路30を通じて吸着塔2内に供給する。これにより、メタンガスをメタンガス吸着材21aに吸着させ、吸着塔2内に供給された原料ガスGのうちメタンガス吸着材21aに吸着されなかった排ガスOGを、放出路40を通じて吸着塔2の外部空間に放出する(#2)。
【0046】
また、これにより、制御手段6のタイマ部62が計時を開始する。さらに、前記入口側検出手段33としてのメタンガス濃度検知手段33aは、供給される原料ガスG中のメタンガス濃度を測定し(#3)、メタンガス濃度が正常範囲内であれば、前記記憶部65の入口側制御データ65aを参照してそのメタンガス濃度に応じた吸着時間をもとめ、運転条件設定部63の吸着完了時点を設定する(#4)。
【0047】
以後、出口側検出手段43としてのメタンガス濃度検知手段43aにより、排ガスOG中のメタンガス濃度をモニタする(#5)。また、タイマ部62により、時刻が設定された吸着完了時点に達したかどうかを判断する計時を続ける(#6)。
【0048】
メタンガス濃度検知手段43aにより、放出路40に放出された排ガスOG中のメタンガス濃度を検出するとともに、タイマ部62による計時を続ける。検出されたメタンガス濃度が所定の濃度(メタンガス濃度設定閾値)以上になる(#5a)か、タイマ部62の計時する時刻が吸着完了時点に達する(吸着時間が吸着時間設定閾値に達する)か(#6b)した場合には、吸着工程の完了動作に移行する。検出されたメタンガス濃度が所定の濃度以下(#5b)で、時刻が吸着完了時点に達していない(#6a)場合は、タイマ部62による計時及び出口側検出手段43によるメタンガス濃度のモニタを継続する。尚、それぞれの閾値は、前記制御手段6に設けられる運転条件設定部63に格納される制御パラメータとして記憶されており、吸着工程の1サイクルごとに更新設定される。
【0049】
吸着工程の完了動作に移ると、完了動作に移行した時点のメタンガス濃度検知手段43aのメタンガス濃度出力に基づいて、運転条件設定部63が前記記憶部62の出口側制御データ65bを参照して吸着完了時点を求め、吸着完了時点の補正が行われる(#7)。そして、タイマ部62の計時を終了し、原料ガスGの供給を停止して吸着工程を完了させる(#8)。
【0050】
これにより、原料ガスGを大気圧下で吸着塔2内に供給して、メタンガスを吸着材21aに選択的に吸着させつつ、排ガスOG内に貴重なメタンガスが流出するのを防止することができる。すなわち、所定の時間が経過するまでは、ほぼ完全にメタンガスが吸着されて吸着塔2の外部に流出することはなく、排ガスOG中のメタンガス濃度は非常に低いため、爆発範囲外の濃度となっている。
【0051】
<吸着工程:吸着完了時点の設定>
工程#4における吸着完了時点の設定は、たとえば、下記のように行われる。
【0052】
入口側検出手段33としてのメタンガス濃度検知手段33aが原料ガスG中に含まれるメタンガスを検知すると、そのガス検知出力は濃度出力として制御手段6に渡される。前記制御手段6は、この出力を受け、ガス濃度演算部61においてメタンガス濃度を求める。一方、前記記憶部65には、原料ガスG中のメタンガス濃度と、吸着工程の吸着時間(吸着工程開始から吸着塔2の吸着材21が破過するまでの時間)との関係を、吸着材21の種類、原料ガスGの設定流量毎に決定する入口側制御データ65aをデータベースとし記憶する。前記運転条件設定部63は、前記記憶部65に記憶された入口側制御データ65aから、現在の運転条件及び原料ガスG中のメタンガス濃度に対応する吸着時間を求める。
【0053】
例えば、容量0.333Lの円筒状吸着塔に、下記吸着性能の活性炭を206.7g充填し、原料ガスGを1000Nm3/hの流量で流通させて吸着工程を運転する場合、メタンガス濃度C(%)と吸着時間T(秒)との関係は、ほぼ、
T=−1.8935*C+143.61
となることが見出され、表1のように吸着時間がデータベース化されている。
そのため、前記入力側検出手段33の検出した濃度出力がメタンガス濃度換算で23%であったとすると、吸着完了時点は、吸着開始から100秒後に設定される。したがって、吸着工程は、この例では100秒を吸着完了時点として実行される。
【0054】
活性炭:
材質:椰子殻活性炭
細孔直径、:8.5Å(MP法による平均細孔直径)
細孔容積、:0.45ml/g(HK法により測定した容積)
全細孔容積に対する平均細孔直径の10Å以下の細孔容積の割合:83%(相対圧0.013下での窒素吸着量割合は同じ)
比表面積:1025m2/g(BET法により測定した比表面積)
大気圧298Kにおけるメタンガス吸着容量:27Nml/g
【0055】
【表1】

【0056】
<吸着工程:吸着完了時点の補正>
工程#7における吸着完了時点の補正(次のサイクルに用いる吸着完了時点の設定)は、たとえば、下記のように行われる。
【0057】
出口側検出手段43としてのメタンガス濃度検知手段43aが排ガスOG中のメタンガス濃度を求めるとともに、その出力を前記制御手段6に伝送する。前記制御手段6は、この出力を受け、ガス濃度演算部61においてメタンガス濃度を求める。一方、吸着材21の吸着能力低下、ブロアーの能力低下等の要因により、メタンガスの前記吸着材を破過する時期が変動するため、吸着完了時点における前記メタンガス濃度は変動する。そこで、前記記憶部65には、吸着工程完了時の排ガスOG中に含まれるメタンガス濃度と、工程#5,#6で閾値として用いられる吸着時間、ガス濃度の閾値との関係を、吸着材21の種類、原料ガスGの設定流量毎に、現在の排ガスOG中のメタンガス濃度に対応した値に補正するための補正値となる出口側制御データ65bをデータベースとして記憶する。前記運転条件設定部63は、前記記憶部65に記憶された各制御データ65a,65bから、吸着時間、ガス濃度の閾値を現在の排ガスOG中のメタンガス濃度に対応した値に補正するための吸着時間、ガス濃度の補正値を求めて設定する。そして、吸着工程の次のサイクルに新たな吸着時間、ガス濃度の閾値を用いて、より適正な吸着工程を行うことができるようになる。
【0058】
例えば、上述の吸着塔を同様の条件で運転する場合、現状の吸着時間の閾値が110秒、メタンガス濃度の閾値が2.5%である場合、表2のように吸着工程の次のサイクルに用いる新たな吸着時間、ガス濃度の閾値を補正する。そのため、たとえば吸着工程の完了時に、排ガスOG中のメタンガス濃度が2.0%になっていたとすると、次回の吸着工程は、初期設定を吸着時間112秒、メタンガス濃度の閾値を2.6%と補正して行うことにより、より適切に排ガスOG中のメタンガス濃度を抑制しつつ効率の良い吸着工程が行えるようになる。
【0059】
【表2】

【0060】
<脱着工程>
次に、図1に示すように、吸着塔2内への原料ガスGの供給を停止した後、前記制御手段6の切替制御部64は、供給路切替弁32および放出路切替弁42を閉じて、収集路切替弁52を開く。そして、真空ポンプ51aにより、吸着塔2内を大気圧よりも低く減圧して、吸着されたメタンガスを吸着材21aから脱着させつつ、この濃縮後の高濃度のメタンガスPGの収集路50を通じた収集を開始し、貯蔵タンク54に貯蔵する。吸着塔2内を所定の圧力まで減圧すると、濃縮後のメタンガスPGの収集を停止して、収集路切替弁52を閉じる。これらのステップがメタンガス脱着工程である。
【0061】
これにより、吸着材21aにメタンガスを吸着させて、排ガスOG中のメタンガス濃度を低減させつつ、メタンガスを高濃度に濃縮することができ、排ガスOGおよび濃縮後のメタンガスPGが爆発範囲内の濃度となることを防止できる。
すなわち、図6に示すように、メタンガス脱着工程の開始からメタンガス脱着工程の終了までにおいては、時間が経過するにつれ、濃縮後のメタンガスPG中のメタンガス濃度が上昇している。これと同様に、図7に示すように、上記時間が経過するにつれ、吸着塔2内の圧力が大気圧から徐々に真空付近まで減圧され、これに伴い濃縮後のメタンガスPG中のメタンガス濃度が上昇している。換言すると、メタンガス脱着工程において減圧を行い、ある程度時間が経過して吸着塔2内が真空に近づいていくと、これにつれて収集される濃縮後のメタンガスPGのメタンガス濃度は上昇していく事がわかる。したがって、濃縮後のメタンガスPG中のメタンガス濃度は、非常に濃い状態となり、爆発範囲内の濃度となることを防止できることとなる。なお、排ガスOGについても、上述のとおり、メタンガス濃度は低濃度に保たれており、爆発範囲内の濃度となることを防止できる。
【0062】
<昇圧工程>
次に、前記制御手段6の切替制御部64は、放出路切替弁42を開いて、吸着塔2内に放出路40を通じて空気を供給し、その後放出路切替弁42を閉じる。
【0063】
これにより、吸着塔2内の圧力を大気圧付近にまで昇圧して、後に実行されるメタンガス吸着工程において、メタンガスを吸着し易くすることができる。
【0064】
以上説明してきた実施形態では、大気圧下において、原料ガスG中のメタンガス濃度が変動したとしても、その原料ガスGからメタンガスをメタンガス吸着材21aに効率よく吸着させ、製品ガスとしての濃縮後のメタンガスPGを高濃度に、効率良くかつ安全に精製することができる。また、吸着塔の吸着能力が変動するなどにより排ガスOG中のメタンガス濃度が変動するなどしてもメタンガス吸着材21aへのメタンガス吸着動作を効率よく行い、排ガスOGが爆発範囲内の濃度となることを防止できる。
【0065】
[第2実施形態]
先の実施の形態では、吸着工程を行う場合に、吸着完了時点を原料ガスG供給開始時に一度設定を行うのみとしたが、複数回繰り返し行うこともできる。つまり、供給される原料ガスG中のメタンガス濃度が大きく変化したような場合に、吸着完了時点がおおきくずれることが見込まれるので、工程#3および工程#4を複数回繰り返すことにより、そのずれをさらに補正して再設定することができる。
【0066】
このような場合の入口側検出手段33による吸着完了時点の再設定は、たとえば、以下のように行う。
【0067】
ガス濃度演算部において、原料ガスG中のメタンガス濃度を求め、この濃度が、吸着工程開始時から所定時間経過時に大きくずれた場合、メタンガス濃度がおおきくずれた時点における前記吸着塔2へのメタンガス予想吸着量を演算する。このメタンガス予想吸着量と、破過するまでに前記吸着塔2が吸着可能であるメタンガス量としての予想全吸着容量とを求めて、この差を予想残吸着容量とする。予想残吸着容量の吸着塔2に、大きくずれたメタンガス濃度の原料ガスGを吸着させるとき、その吸着塔2が破過するまでの補正吸着時間を演算して求める。そしてメタンガス濃度がおおきくずれた時点から前記補正吸着時間経過時点を新たな吸着完了時点として、運転条件設定部により再設定する。
【0068】
この再設定を、きめ細かく行えば、供給される原料ガスGの性状変化に応じて、リアルタイムに吸着完了時点を適切に維持することができる。
【0069】
また、原料ガスG中のメタンガス濃度を検出する場合、原料ガスGを供給し始めてからの経過時間を設定して、その設定時間におけるメタンガス濃度出力を得ればよいが、上記の場合、所定時間毎にメタンガス濃度出力を得てモニタしておくことで実現することが出来る。尚前記メタンガス濃度出力としては、上述のように、所定時間経過時点におけるセンサ出力を用いても良いし、所定期間のセンサ出力の平均を用いても良い。
【0070】
[第3実施形態]
先の実施の形態では、吸着完了時点の排ガスOG中のメタンガス濃度出力に基づいて、その次のサイクルに用いる吸着完了時点を補正するものとしたが、排ガスOG中にメタンガスが破過し始めて所定時間後のメタンガス濃度出力に基づいて、そのサイクルにおける吸着完了時点を補正することも出来る。つまり、吸着材21が劣化するなどして吸着特性が低下したような場合に、吸着材21が破過し始めてから排ガスOG中にメタンガスが急速に放出し始められるような状況や、ブロアーの能力が低下してガス流量が低下したような場合に、吸着材の破過までに時間を要する状況が想定されるが、このような場合に、大量のメタンガスが放出されたり、運転効率が低下したりするおそれを是正することが出来る。
【0071】
このような場合の出口側検出手段43による吸着完了時点の再設定は、たとえば、以下のように行う。
【0072】
ガス濃度演算部において、排ガスOG中のメタンガス濃度を求め、この濃度が、吸着材21が破過した後所定時間経過時に、どの程度上昇しているかを測定する。この値が、現在設定されている吸着完了時点で所定のメタンガス濃度に達するものであるかどうかを、前記制御手段は運転条件設定部において判断する。そして、メタンガス濃度が高いと判断された場合には、吸着完了時点を早めて再設定し、低いと判断された場合には、吸着完了時点を遅らせて再設定する。
【0073】
この再設定を、きめ細かく行えば、排ガスOG中のメタンガス濃度に応じて、リアルタイムに吸着完了時点を適切に調整することができる。
【0074】
また、排ガスOG中のメタンガス濃度を検出する場合、メタンガスが破過し始めてからの経過時間を設定して、その設定時間におけるメタンガス濃度出力を得ればよいが、上記の場合、所定時間毎にメタンガス濃度出力を得てモニタしておくことで実現することが出来る。また、運転条件設定部におけるメタンガス濃度の判断は、メタンガス濃度の絶対値あるいはメタンガス濃度出力そのものの絶対値を参照することによって行うことが出来るが、その変化度をもって判断することも出来る。
【0075】
[その他の実施形態]
(1)上記第1〜第3実施形態において、供給される原料ガスG中の水分を除去して、吸着材21に可燃性ガスを適切に吸着できるようにするため、除湿機を設置することができる。具体的には、供給路30上に除湿機を設置することで、原料ガスG中の水分を除去することができる。また、吸着塔2内に水分を選択的に吸着可能な水分用吸着材を充填して、水分による可燃性ガスの吸着性能の低下を防止することもできる。
【0076】
(2)上記第1〜第3実施形態においては、吸着塔2に吸着材21が充填されているが、この吸着材21は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0077】
(3)前記吸着工程を完了した吸着塔2に対して、製品ガスPGを供給して、なおも塔内に残存する空気などの雜ガスを排気するパージ工程を行っても良い。パージ工程を行うには、前記吸着塔2に対して、前記貯蔵タンクから製品ガスPGを供給するパージ路を設けるとともに、パージにより排出された排ガスOGを、貯蔵する貯蔵部や、原料側に再循環させるための循環路を設ければよい。これにより、吸着塔2から得られる製品ガスPGの純度をさらに高めることが出来る。
【0078】
(4)上記第1〜第3実施形態においては、単数の吸着塔2を用いたが、複数の吸着塔2,2,2を用いることもできる。例えば2塔用いる場合、可燃性ガス濃縮装置は、第1の吸着塔2を、A:可燃性ガス吸着工程、B:可燃性ガス脱着工程、C:均圧工程の順に動作させ、これに対応して、第2の吸着塔2を、A:可燃性ガス脱着工程、B:可燃性ガス吸着工程、C:均圧工程の順に動作させて、連続的に可燃性ガスの濃縮を行なうことができる。
【0079】
ここで、均圧工程とは、内部圧力の高い吸着塔2からの排気を、内部圧力の低い吸着塔2に導入することによって、エネルギーロスを生じにくい状態で効率良く圧力調整を行うものである。すなわち、脱着工程を終了した吸着塔2に吸着工程を終了した吸着塔2からの排気を導入することによって、減圧状態にある吸着塔2に昇圧状態にある吸着塔2からの排気を導入することになり、両吸着塔2の圧力均衡を図ると同時に、吸着塔2からの排気に含まれる可燃性ガスを、均圧工程において回収することができ、また、脱着工程開始時の脱離可燃性ガス濃度を高く設定できるため、製品ガスPGの純度を高めるのにも寄与することが出来る。
【0080】
(5)上記第1〜第3実施形態においては、原料ガスGとして炭鉱ガスを用い、可燃性ガスとしてメタンガスを用いたが、原料ガスGとしては可燃性ガスと空気とを含むガスであれば特に制限されず、また、可燃性ガスとしては可燃性の気体であれば特に制限されない。そして、可燃性ガスの種類に応じて、吸着材21の物性を適宜変更することができ、例えば、このような吸着材21の平均細孔直径としては可燃性ガスの平均分子径の1.2倍〜2倍程度のものを選択すると、可燃性ガスを選択的に吸着することができる。
【0081】
(6)上記昇圧工程において前記吸着塔2に空気を供給したが、これに限らず、例えば、炭鉱内採掘時に坑内への通気によって大気中に放出される通気メタンガス(ベンチレーションエアメタンガス、通常メタンガス濃度0.5%)を使用してもよい。これにより、ベンチレーションエアメタンガス中に含まれるメタンガスを回収でき、従来放出していた通気メタンガスを有効に回収できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る可燃性ガス濃縮装置は、可燃性ガスを濃縮する際に、原料ガスGの成分組成に変動があったとしても、原料ロスを最小限に抑え、効率的に可燃性ガスを高濃度に濃縮できる技術として有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
100:可燃性ガス濃縮装置(本装置)
2 :吸着塔
21 :吸着材
21a:メタンガス吸着材
3 :供給部
30 :供給路
31 :供給放出手段
31a:ブロアー
32 :切替弁(供給路切替弁)
33 :入口側検出手段(検出手段)
33a:メタンガス濃度検知手段
4 :放出部
40 :放出路
42 :切替弁(放出路切替弁)
43 :出口側検出手段(検出手段)
43a:メタンガス濃度検知手段
5 :収集部
50 :収集路
51 :収集手段
51a:真空ポンプ
52 :切替弁(収集路切替弁)
54 :貯蔵タンク
6 :制御手段
61 :ガス濃度演算部
62 :タイマ部
63 :運転条件設定部
64 :切替制御部
65 :記憶部
65a:入口側制御データ
65b:出口側制御データ
G :原料ガス(炭鉱ガス、可燃性ガス)
PG :高濃度の可燃性ガス(製品ガス)
OG :排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスを吸着する吸着材を充填した吸着塔と、
前記吸着塔に可燃性ガスおよび空気を含有する原料ガスを供給路を通じて供給するとともに、前記原料ガスのうち前記吸着材に吸着されなかった排ガスを放出路を通じて前記吸着塔の外部に放出する供給放出手段と、
前記吸着塔内を大気圧よりも減圧して前記吸着材に吸着された可燃性ガスを脱着させ、収集路を通じて収集する収集手段と、
前記供給放出手段により前記吸着塔へ前記原料ガスを供給するとともに、前記吸着塔から前記排ガスを放出する可燃性ガス吸着工程と
前記収集手段により脱着される前記可燃性ガスを収集する可燃性ガス脱着工程とを
順次実行させる制御手段と、
を備える可燃性ガス濃縮装置であって、
前記吸着工程において、前記吸着塔から排出される可燃性ガス濃度を検出する検出手段を設け、
前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記検出手段による可燃性ガス検出濃度に基づき変更する運転条件設定部を設けた可燃性ガス濃縮装置。
【請求項2】
前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、前記吸着塔から排出される可燃性ガス濃度の閾値に基づき判定するとともに、
前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記閾値を補正するためのガス濃度補正値との対応関係をデータベースとして記憶する記憶部を備え、前記運転条件設定部は、あらかじめ求められた前記対応関係に基づき、前記吸着完了時点を設定変更する請求項1に記載の可燃性ガス濃縮装置。
【請求項3】
前記制御手段が前記吸着工程を完了させる吸着完了時点を、吸着工程開始からの経過時間により判定するとともに、
前記検出手段により検出される可燃性ガス濃度と前記経過時間との対応関係をデータベースとして記憶する記憶部を備え、前記運転条件設定部は、あらかじめ求められた前記対応関係に基づき、前記吸着完了時点を設定変更する請求項1または2に記載の可燃性ガス濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−153183(P2011−153183A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14533(P2010−14533)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】