説明

可視光通信システム及び可視光通信装置

【課題】単一光源方式で、双方向通信を確実に実現できる可視光通信装置を提供することにある。
【解決手段】単一光源13を有する可視光送受信装置10と、再帰反射装置25を有する携帯端末20との間で双方向可視光通信を行なう色多重通信機能を用いた単一光源方式の可視光通信システムである。携帯端末20は、可視光送受信装置10から送信データで変調された可視光100Bを抽出する光フィルタ21Bと、無変調で再帰反射光として利用される可視光100Rを抽出する光フィルタ21Rとを有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光を利用した双方向通信を実現する可視光通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子(以下、LEDと表記する場合がある)などを使用する光源からの可視光を利用した可視光通信技術の開発が推進されている。可視光を利用した双方通信を実現する場合、送信側と受信側の双方に光源を有する方式以外に、可視光通信に赤外線通信や電波通信を組み合わせるハイブリッド方式が提案されている。
【0003】
しかしながら、ハイブリッド方式は、人の目で見える光が届いている範囲でのみ通信が可能であるという可視光通信の特長を十分に発揮できない場合がある。また、送信側と受信側の双方に光源を有する方式は、それぞれに光源用の電力が必要となる。このため、可視光通信装置として、特に消費電力量の制限がある携帯端末などに適用することは困難である。
【0004】
そこで、一方の通信装置側の光源から発光された可視光を受光する他方の通信装置側が、その反射光を利用してデータを送信する単一光源方式が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この単一光源方式では、他方の通信装置側として、光源用の電力が不要になるため、低消費電力特性が要求される携帯端末などに適用することが可能である。
【特許文献1】特開2004−221747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単一光源方式により、低消費電力特性が要求される携帯端末などを通信装置とする双方向可視光通信の実現が可能になっている。しかしながら、単一光源方式では、送信側から発光された可視光には送信データが重畳されているため、単にその反射光を利用してデータを送信することはできず、送信データが重畳されていない時間帯の可視光を選択して通信を行なうな等の制約が必要となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、単一光源方式で、双方向通信を確実に実現できる可視光通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点は、再帰反射機能と色多重通信機能を用いた単一光源方式の双方向可視光通信システムを実現する可視光通信装置である。
【0008】
本発明の観点に従った可視光通信装置は、第1の送信データで変調された第1の発光色の可視光、及び前記第1の発光色とは異なる第2の発光色の可視光を受光する受光手段と、前記第1の発光色の可視光を抽出する第1の光フィルタ手段と、前記第2の発光色の可視光を抽出する第2の光フィルタ手段と、前記第1の光フィルタ手段により抽出された可視光から前記第1の送信データを復調する復調手段と、前記第2の光フィルタ手段により抽出された可視光の反射光を、第2の送信データで変調し送信する送信手段とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単一光源方式で、双方向通信を確実に実現できる可視光通信装置を提供することができる。特に、例えば携帯端末などを通信装置とする双方向可視光通信システムを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(可視光通信システムの構成)
図1は、本実施形態に関する可視光通信システムの構成を説明するためのブロック図である。図1に示すように、本実施形態の可視光通信システムは、一方の可視光通信装置10と他方の可視光通信装置20とを有し、可視光を利用した双方向通信を行なうように構成されている。本実施形態では、一方の可視光通信装置10は、例えば建物内の天井などに固定されている照明機器に組み込まれた通信装置であり、便宜的に可視光送受信装置10と表記する。他方の可視光通信装置20は、例えば携帯電話などに組み込まれた通信装置であり、便宜的に携帯端末20と表記する。
【0012】
可視光送受信装置10は、データ送信部11と、データ受信部12と、光源13と、受光部14とを有する。可視光送受信装置10は、図3に示すように、ネットワーク30に接続されており、このネットワーク30を介して図示しないサーバなどから伝送される送信データTDを受信する。データ送信部11は、送信データTDを変調した変調データを光源13に出力する。
【0013】
光源13は、青色LED(B)15B、赤色LED(R)15R、緑色LED(G)15Gの各LEDチップが一体化されたLEDパッケージ(3in oneパッケージ)15及びLEDドライバ(図示せず)から構成されている。LEDドライバは、図3に示すように、LEDパッケージ15を駆動して、照明光として可視光100を発光する。ここで、LEDパッケージ15では、LED(B)15Bは、LEDドライバにより、データ送信部11からの変調データに応じて駆動されて、青色の可視光100Bを発光する。またLED(B)15Bと同時に、LEDパッケージ15では、LED(R)15R及びLED(G)15Gは、LEDドライバにより無変調で駆動されて、それぞれ赤色の可視光100R及び緑色の可視光100Gを発光する。
【0014】
受光部14は、後述するように、携帯端末20からの可視光から赤色の可視光200Rのみを通過(抽出)させる光フィルタ(R)16、及び当該赤色の可視光200Rを電気信号に変換する光電変換部17を含む。データ受信部12は、光電変換部17からの電気信号から、赤色の可視光200Rに重畳されているデータ(後述する応答データ)RDを復調する。
【0015】
一方、携帯端末20は、図3に示すように、受光部と反射部を含む光入出力部27を有する。携帯端末20は、図1に示すように、光入出力部27には、青色の可視光100Bのみを通過(抽出)させる光フィルタ(B)21B、及び赤色の可視光100Rのみを通過(抽出)させる光フィルタ(R)21Rを有する。さらに、携帯端末20は、光入出力部27には、再帰反射装置(以下、CCRと表記する場合がある)25を有する。
【0016】
CCR25は、図2に示すように、コーナーキューブ・レフレクタ(corner-cube reflector)を構成するプリズム25A、及び液晶シャッタで構成される光シャッタ部25Bを有する。CCR25は、光フィルタ(R)21Rを通過する赤色の可視光100Rを入光し、光シャッタ部25Bで変化する反射率に応じて、当該可視光100Rの再帰反射光を出力する。
【0017】
さらに、携帯端末20は、光電変換部22、データ受信部23、データ送信部24及び制御部26を有する。光電変換部22は、光フィルタ(B)21Bにより抽出された青色の可視光100Bを電気信号に変換する。データ受信部23は、光電変換部22からの電気信号から、青色の可視光100Bに重畳されている送信データTDを復調する。
【0018】
本実施形態の制御部26は、データ受信部23で復調された送信データTDを解析し、当該送信データTDに応じた応答データRDを生成する機能を有する。制御部26は、生成した応答データRDを送信用データとして、データ送信部24に送出する。データ送信部24は、応答データRDを変調した変調信号を出力し、この変調信号によりCCR25の光シャッタ部25Bを制御する。CCR25は、変調信号に応じて変化する再帰反射率に基づいて、応答データRDで変調された可視光100Rの再帰反射光を出力する。
【0019】
(可視光通信システムの動作)
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態のシステムの動作を説明する。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、可視光送受信装置10は、携帯端末20を操作するユーザに対して、例えばID情報などを問い合わせるための質問データとして生成された送信データTDを、ネットワーク30を介して受信する(ステップS1)。データ送信部11は、送信データTDを変調した変調データを光源13のLEDドライバに出力する。LEDドライバは、当該変調データに応じてLED(B)15Bを駆動する(ステップS3)。これにより、LED(B)15Bは、送信データTD(変調データ)を重畳した青色の可視光100Bを発光する(ステップS4)。
【0021】
また、光源13のLEDドライバは、LED(B)15Bの駆動と同時に、LED(R)15R及びLED(G)15Gのそれぞれを、無変調で駆動する(ステップS5)。これにより、LED(R)15Rは、赤色の可視光100Rを発光する(ステップS6)。また、LED(G)15Gは、緑色の可視光100Gを発光する(ステップS7)。これらの可視光100B、100R、100Gは、照明光としても利用される。
【0022】
携帯端末20は、図3に示す光入出力部27により、可視光送受信装置10の光源13から発光された可視光100B、100R、100Gを受光する。携帯端末20は、受光した可視光から、光フィルタ(B)21Bにより青色の可視光100Bを抽出する(ステップS10)。即ち、光フィルタ(B)21Bは、青色の可視光100Bのみを通過させて、他の可視光100R、100Gを通過させない。
【0023】
光電変換部22は、光フィルタ(B)21Bにより抽出された青色の可視光100Bを電気信号に変換し、データ受信部23に出力する(ステップS11)。データ受信部23は、光電変換部22から出力される電気信号から、青色の可視光100Bに重畳されている送信データ(ここでは質問データ)TDを復調し、制御部26に出力する(ステップS12,S13)。
【0024】
制御部26は、データ受信部23で復調された送信データ(質問データ)TDを解析し、例えばユーザのID情報を問い合わせる質問データとして認識する。制御部26は、諮問データに対する応答データ(ここではID情報)を生成し、データ送信部24に出力する(ステップS14,S15)。データ送信部24は、応答データ(ID情報)を変調し、変調信号をCCR25に出力する(ステップS16)。
【0025】
携帯端末20は、図3に示す光入出力部27で受光した可視光から、光フィルタ(R)21Rにより赤色の可視光100Rを抽出する(ステップS17)。即ち、光フィルタ(R)21Rは、赤色の可視光100Rのみを通過させて、他の可視光100B、100Gを通過させない。CCR25は、光フィルタ(R)21Rを通過する赤色の可視光100Rのみを入光する。CCR25は、データ送信部24からの応答データ(ID情報)の変調信号に応じて光シャッタ部25Bの反射率が変化し、この反射率に応じて変調される可視光100Rの再帰反射光200Rを出力する(ステップS18)。
【0026】
可視光送受信装置10の受光部14は、携帯端末20からの再帰反射光200Rを受光する。受光部14は、受光した可視光から、光フィルタ(R)16により赤色の可視光200Rを抽出する(ステップS20)。即ち、応答データ(ID情報)で変調された可視光200Rのみが、光フィルタ(R)16を通過して光電変換部17に送られる。光電変換部17は、当該赤色の可視光200Rを電気信号に変換してデータ受信部12に出力する(ステップS21)。データ受信部12は、光電変換部17から出力される電気信号から、赤色の可視光200Rに重畳されている応答データ(ここではID情報)を復調し、受信データRDとしてネットワーク30に出力する(ステップS22,S23)。
【0027】
以上のようにして本実施形態の可視光通信システムであれば、例えば固定された照明機器に組み込まれた可視光送受信装置10の単一光源13から発光される可視光を利用して、移動可能な携帯端末20との間で、双方向の可視光通信を行なうことができる。即ち、光を正確に光源に向けて反射させる再帰反射装置(CCR)25、光学フィルタ系、及び発光色による多重通信を利用して、単一光源でかつ確実な可視光双方向通信を実現することができる。
【0028】
本実施形態のシステムであれば、単一光源13を有する一方の通信装置10に対して、他方の通信装置20として、消費電力量が制限されている携帯端末を適用できる。即ち、携帯端末20は、電力を消費する光源を必要とすることなく、他方の通信装置として可視光通信を行なうことができる。この場合、CCRと光学フィルタを使用した発光色による多重通信を実現することにより、双方向通信における各可視光間で混信するような通信障害の発生を招くことなく、確実な可視光双方向通信を実現できる。また、CCRを使用することにより、再帰反射の特長である光源に対する正確な反射を実現できるため、通信を行う際の位置合わせや、光軸合わせなどの作業が不要である。
【0029】
本実施形態では、CCR25として、プリズム25Aを使用する構成について説明したが、これに限ることなく、再帰反射する反射鏡または球体透明ビーズを使用する構成でもよい。あるいは、多数並べた再帰反射板を使用する構成でもよい。
【0030】
本実施形態では、単一光源として、青色LED(B)15B、赤色LED(R)15R、緑色LED(G)15Gの各LEDチップが一体化されたLEDパッケージ(3in oneパッケージ)15を使用する構成について説明したが、これに限ることはない。即ち、少なくとも2色の発光色の可視光を発光する光源であればよく、例えば青色LEDと赤色LEDのそれぞれが独立して駆動制御される構成であればよい。また、当然ながら、発光色は青色と赤色の組合せ以外でもよい。但し、各発光色の可視光に対応する光フィルタが必要となる。
【0031】
また、本実施形態では、一方の通信装置として、照明機器に組み込まれた可視光送受信装置10を想定したが、これに限ることなく、例えば道路上や建物の外部に設置された通信専用の装置でも良い。また、他方の通信装置として、携帯電話などの携帯端末20に組み込まれた装置を想定したが、これに限ることなく、通信専用の装置でも良い。但し、携帯可能で、消費電力量に制限されている装置に適用することが有効である。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に関する可視光通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態に関する再帰反射装置の一例を説明するための図。
【図3】本実施形態に関する可視光送受信装置の一例を説明するための図。
【図4】本実施形態に関するシステムの動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0034】
10…可視光送受信装置、11…データ送信部、12…データ受信部、13…光源、
14…受光部、15…LEDパッケージ、15B…青色LED(B)、
15R…赤色LED(R)、15G…緑色LED(G)、16…光フィルタ(R)、
17…光電変換部、20…携帯端末、21B…光フィルタ(B)、
21R…光フィルタ(R)、22…光電変換部、23…データ受信部、
24…データ送信部、25…、再帰反射装置(CCR)、26…制御部、
27…光入出力部、30…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信データで変調された第1の発光色の可視光、及び前記第1の発光色とは異なる第2の発光色の可視光を受光する受光手段と、
前記第1の発光色の可視光を抽出する第1の光フィルタ手段と、
前記第2の発光色の可視光を抽出する第2の光フィルタ手段と、
前記第1の光フィルタ手段により抽出された可視光から前記第1の送信データを復調する復調手段と、
前記第2の光フィルタ手段により抽出された可視光の反射光を、第2の送信データで変調し送信する送信手段と
を有することを特徴とする可視光通信装置。
【請求項2】
前記反射光は、コーナーキューブ・レフレクタ等の再帰反射手段から構成されることを特徴とする請求項1に記載の可視光通信装置。
【請求項3】
前記変調は、前記第2の送信データに応じて前記再帰反射手段の再帰反射率を変化させる光シャッタ手段を含む変調手段により変調されることを特徴とする請求項2に記載の可視光通信装置。
【請求項4】
第1の発光色及び第1の発光色とは異なる第2の発光色の各可視光を発光する光源を有し、第1の送信データで変調した前記第1の発光色の可視光と無変調の前記第2の発光色の可視光とを前記光源から同時に発光させる可視光データ送信装置と、
前記光源から発光された可視光を受光して、前記第1の送信データを復調する可視光通信装置とを有する可視光通信システムにおいて、
前記可視光通信装置は、
前記第1の発光色の可視光を抽出する第1の光フィルタ手段と、
前記第2の発光色の可視光を抽出する第2の光フィルタ手段と、
前記第1の光フィルタ手段により抽出された可視光から前記第1の送信データを復調する復調手段と、
前記第2の光フィルタ手段により抽出された可視光の反射光を、第2の送信データで変調し送信する送信手段と
を有する構成であることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項5】
前記可視光通信装置から送信された前記第2の送信データを受信する可視光データ受信装置を更に有し、
前記可視光データ受信装置は、
前記送信手段からの反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された反射光から前記第2の発光色の可視光を抽出する光フィルタ手段と、
前記光フィルタ手段により抽出された可視光から前記第2の送信データを復調する復調手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の可視光通信システム。
【請求項6】
前記送信手段は、
前記復調手段により復調された前記第1の送信データに応じた前記第2のデータを生成する手段と、
前記第2の光フィルタ手段により抽出された可視光を再帰反射させて、前記第2の発光色の可視光を発光するための再帰反射手段と、
前記第2の送信データで、前記再帰反射手段により再帰反射させる可視光を変調する変調手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の可視光通信システム。
【請求項7】
前記光源は、前記第1の発光色の発光ダイオード素子及び前記第2の発光色の発光ダイオード素子をそれぞれ含み、当該各発光ダイオード素子毎に駆動が可能なLEDパッケージから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の可視光通信システム。
【請求項8】
請求項1又は請求項4のいずれか1項に記載の前記可視光通信装置が組み込まれて、
前記復調手段により復調された前記第1の送信データを記憶する記憶手段と、
前記第2の送信データを生成するためのデータ処理手段と
を有する構成であることを特徴とする携帯型端末。
【請求項9】
請求項4に記載の可視光データ送信装置と、請求項5に記載の前記可視光データ受信装置とが組み込まれた構成であることを特徴とする照明機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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