説明

可視光通信用照明器具及びこれを用いた可視光通信システム

【課題】可視光通信用照明器具において、電源電圧を安定化すると共に、変調用スイッチ素子がオン動作を開始したときの光源部への電流ストレスを低減する。
【解決手段】可視光通信用照明器具10は、光源部11と、光源部11を調光する電源回路部3と、光源部11へ供給される出力電流を変調させる変調用スイッチ素子Q1と、変調用スイッチ素子Q1と並列に接続された変調用抵抗Rxと、変調用スイッチ素子Q1のオンオフを制御する可視光通信信号回路部4と、可視光通信信号回路部4の非駆動時に、変調用スイッチ素子Q1をオンさせる強制オン回路部6と、を備える。この構成によれば、変調用抵抗Rxにより光源部11が無負荷とならないので、電源電圧が安定化し、また、可視光通信信号回路部4の動作開始時に変調用スイッチ素子Q1にオン信号が流れ続けるので、サージ電流の発生を抑制することができ、光源部11への電流ストレスを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させる可視光通信用照明器具及びこれを用いた可視光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明光を用いて通信信号を伝送する可視光通信機能を搭載した照明器具が知られている。この種のものとして、光源部が配設される光源部基板と、この光源部基板と電気的に接続されて光源部を点灯制御する点灯回路基板と、光源部からの出射光に通信信号を重畳する可視光通信制御基板と、を備えた照明器具がある(例えば、特許文献1参照)。この照明器具は、可視光通信制御基板を、点灯回路基板と光源部基板との間に分離可能に配置することにより、可視光通信機能の搭載器具と非搭載器具との間で設計を共通化することができる。可視光通信制御基板の制御用電源は、点灯回路基板の出力端子部から供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−34713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の照明器具においては、可視光通信制御基板における変調用のスイッチ要素がオフであるとき、光源部の固体発光素子(LED)への負荷電圧が遮断されるので、光源部への実質的な負荷が無い状態になる。商用電源ACを電源とする一般的な電源回路部には、入力電流の歪みを改善するために昇圧機能を有するPFC回路が用いられているので、光源部が無負荷状態になると、PFC回路の出力電圧付近まで電源回路部の出力端子の両端電圧が上昇する。また、電源回路部の出力端子部の両端電圧が上昇すると、可視光通信制御基板の制御用電源部への入力電圧も上昇し、回路損失の原因となる。そこで、電源回路部から光源部へ供給される出力電流を変調させる変調用スイッチ要素に対して並列に変調用抵抗を配し、変調用スイッチ要素がオフのときでも、光源部が無負荷状態にならないようにする回路構成が考えられる。
【0005】
ところが、この回路構成においては、電源回路部が定電流制御を行なっているので、変調用スイッチ要素がオン動作を開始したとき、この変調用スイッチ要素側に電流が流れ、変調用抵抗の両端が短絡することになる。このとき、図8に示すように、光源部への出力電圧が若干低下するものの、電源回路部の出力端間のインピーダンスが急減するので、光源部への出力電流にサージ電流が発生し、光源部のLEDには、瞬間的に過大な電流ストレスがかかる。一般的に、LEDの最大定格電流は、定格電流の2倍程度に設定されているが、それ未満のLEDもあり、上述したサージ電流が発生すると、LEDがダメージを受ける虞がある。変調用抵抗の抵抗値を小さくすればサージ電流の発生を抑制できるが、この場合、変調用スイッチ素子のオンオフによる変調の幅(変調率)が小さくなり、可視光通信を行なう上では好ましくない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、電源回路部の電源電圧を安定化すると共に、変調用スイッチ素子がオン動作を開始したときのサージ電流の発生を抑制し、光源部への電流ストレスを低減することができる可視光通信用照明器具及びこれを用いた可視光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させる可視光通信用照明器具であって、固体発光素子から成る光源部と、調光信号に基づいて前記光源部に流れる負荷電流を制御して前記光源部を調光する電源回路部と、前記電源回路部から前記光源部へ供給される出力電流を変調させる変調用スイッチ要素と、前記変調用スイッチ要素と並列に接続された変調用インピーダンス要素と、前記変調用スイッチ要素のオンオフを制御して、前記光源部が出射する照明光に通信信号を重畳するための変調信号を出力する可視光通信信号回路部と、前記可視光通信信号回路部の非駆動時に、前記電源回路部からの給電電力により前記変調用スイッチ要素をオンさせる強制オン回路部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記可視光通信用照明器具において、前記可視光通信信号回路部へ電力を供給する制御用電源部を更に備え、前記制御用電源部の入力端の少なくとも1端が、前記変調用インピーダンス要素の1端に接続されていることが好ましい。
【0009】
上記可視光通信用照明器具において、前記可視光通信信号回路部は、前記変調用スイッチ要素のゲートに接続されたフォトカプラを介して前記変調信号を伝送することが好ましい。
【0010】
上記可視光通信用照明器具において、前記変調用インピーダンス要素と並列に接続された保護用迂回回路部を更に備え、前記保護用迂回回路部は、前記変調用インピーダンス要素の両端電圧が所定値に上昇したときに、該変調用インピーダンス要素に流れる電流を迂回させることが好ましい。
【0011】
本発明は、上記可視光通信用照明器具と、この可視光通信用照明器具から送信される通信信号を受信する受信機と、を備えることを特徴とする可視光通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変調用スイッチ要素と並列に接続されている変調用インピーダンス要素が存在しているので、光源部が無負荷状態にならず、電源回路部の電源電圧が安定化する。また、強制オン回路部により、変調用スイッチ要素のゲートにオン信号が流れ続けるので、可視光通信信号回路部によるオン動作の開始時に電源回路部の出力端間のインピーダンスは急減せず、サージ電流の発生を抑制することができ、光源部への電流ストレスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る可視光通信用照明器具の照明器具本体の上面図、(b)は側面図、(c)は下面図。
【図2】同可視光通信用照明器具に用いられる点灯回路の回路図。
【図3】(a)乃至(c)は同可視光通信用照明器具の光源部の負荷電流とこれに重畳される変調信号の動作波形例を示す図。
【図4】同可視光通信用照明器具の光源部への出力電圧と出力電流の変化を示す動作波形例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る可視光通信用照明器具に用いられる点灯回路の回路図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る可視光通信用照明器具に用いられる点灯回路の回路図。
【図7】(a)は同可視光通信用照明器具を用いた可視光通信システムを表す側面図、(b)は同システムに用いられる受信機の正面図。
【図8】本発明と対比される可視光通信用照明器具の光源部への出力電圧と出力電流の変化を示す動作波形例を示す図。
【究明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る可視光通信用照明器具について、図1乃至図4を参照して説明する。ここでは、図1(a)乃至(c)に示すように、本実施形態の可視光通信用照明器具(以下、照明器具10)の構成例として、天井等に埋め込まれるダウンライトを示す。照明器具10は、回路基板上に複数の固体発光素子(LED2)が実装された光源部11と、光源部11のLED2を点灯させる点灯回路1(後述する図2参照)を収容する本体部12と、を備える。また、天井等に形成された開口部に嵌め込まれて光源部11等を保持する枠体部13と、商用電源ACから電源供給を受けるための電源線が接続される端子台14と、枠体部13を天井等に固定するための取付バネ15と、を備える。
【0015】
図2に示すように、点灯回路1は、調光信号に基づいてLED2から成る光源部11に流れる負荷電流を制御して光源部11を調光する回路である。点灯回路1は、調光信号に基づいて光源部11に流れる負荷電流を制御する電源回路部3と、光源部11の照明光に通信信号を重畳するための変調信号を出力する可視光通信信号回路部4と、可視光通信信号回路部4への電力を供給する制御用電源部5と、を備える。電源回路部3は、商用電源ACを入力とするAC/DCコンバータと、光源部11への負荷電流を制御する出力制御部(不図示)と、を備える。制御用電源部5は、電源回路部3の両出力間に、整流用のダイオードD1及び抵抗R1を介して接続され、また、電圧安定化のためのツェナーダイオードZD1及びコンデンサC1が並列に接続されている。制御用電源部5と可視光通信信号回路部4との間には、平滑化のためのコンデンサC2が配されている。
【0016】
また、点灯回路1は、光源部11に直列に接続されたインピーダンス要素(変調用抵抗Rx)と、電源回路部3から光源部11へ供給される出力電流を変調させるスイッチ要素(変調用スイッチ素子Q1)と、を備える。変調用スイッチ素子Q1には、例えば、nMOSFETが用いられる。変調用抵抗Rxは、変調用スイッチ素子Q1に対して並列に接続されている。また、変調用抵抗Rxの一端が、変調用スイッチ素子Q1にゲート電圧を供給するための制御用電源部5の入力端の一端に接続されている。
【0017】
更に、点灯回路1は、可視光通信信号回路部4の非駆動時に、電源回路部3からの給電電力により変調用スイッチ素子Q1をオンさせる強制オン回路部6を備える。この強制オン回路部6は、可視光通信信号回路部4と変調用スイッチ素子Q1にゲートとの間に、インバータとして機能するトランジスタQ2,3、及び抵抗R2を介して接続される。また、この経路には、制御用電源部5からの負荷電圧を調整する抵抗R3が配される。強制オン回路部6は、光源部11と並列に配された抵抗R4〜6と、電圧安定化及び電圧調整のためのツェナーダイオードZD1及び抵抗R7と、を備える。抵抗R4〜6は、変調用スイッチ素子Q1をオンさせ、且つ可視光通信信号回路部4から出力されるオフ電圧によって打ち消される程度の電圧が、この強制オン回路部6に負荷されるように適宜選択される。
【0018】
光源部11のLED2には、照明器具10における所望の光色の照明光を出射できるLED、例えば、GaN系青色LEDチップにYAG系黄色蛍光体が被覆され、青色光と黄色光とを混光させて白色光を出射する白色LEDが用いられる。なお、白色LEDに限らず、赤、緑及び緑の発光色が異なる複数のLEDが適宜に組み合わされて用いられてもよく、また、光源部に有機発光材料を用いたOLEDが用いられてもよい。
【0019】
電源回路部3の出力制御部は、汎用のマイコン等から成り、例えば、リモコン等の調光操作を入力する外部装置(不図示)から送信される調光信号に基づいてAC/DCコンバータ内のスイッチ素子をスイッチングすることで、光源部11をPWM制御により調光する。すなわち、出力制御部は、図3(a)に示すように、光源部11に負荷電流が流れる期間(オン期間T1)と、光源部11に負荷電流が流れない期間(オフ期間T2)とを交互に繰り返す。また、出力制御部は、オン期間T1及びオフ期間T2の和である周期Tに対するオン期間T1の比率(オンデューティ比)を調光信号に対応させることによって光源部11を調光制御する。なお、上記PWM制御は、主として非通信時の調光制御の例であり、後述する可視光通信時には、図3(a)に示した上記調光信号とは異なる調光制御信号に変調信号を重畳させるものであってもよい。
【0020】
可視光通信信号回路部4は、汎用のマイコン等から成り、照明器具10の外部から入力された2値の情報信号に応じて、図3(b)に示すように、光源部11の光強度を変調させて照明光に重畳する所定の変調信号を生成して変調用スイッチ素子Q1に出力する。変調信号の周波数は、調光信号の一周期内に複数の波形が含まれるように、少なくとも調光信号の周波数よりも高く設定される。制御用電源部5は、DC/DCコンバータを備え、電源回路部3からの直流電圧を、可視光通信信号回路部4に適した所定の電圧値の直流電圧に変換する。
【0021】
この構成において、可視光通信信号回路部4は、制御用電源部5からの給電を受けて、所定の通信信号に基づいて変調用スイッチ素子Q1のオンオフを制御することによって、変調用抵抗Rxが光源部11に接続されるか否かの切り替えを行なう。具体的には、変調用スイッチ素子Q1がオンのとき、光源部11には変調用抵抗Rxを介さずに負荷電流I1が流れる。一方、変調用スイッチ素子Q1がオフのとき、光源部11には変調用抵抗Rxを介して負荷電流I2が流れる。そのため、図3(c)に示すように、変調用スイッチ素子Q1がオンのときの負荷電流I1の電流値は、変調用スイッチ素子Q1がオフのときの負荷電流I2の電流値よりも大きくなる。このように、光源部11に流れる負荷電流の大きさを変化させることで、光源部11の光強度に変調を付与し、光源部11の照明光に通信信号を重畳させることができる。
【0022】
また、変調用スイッチ素子Q1がオフのときに、変調用スイッチ素子Q1と並列に接続されている変調用抵抗Rxが存在しているので、電源回路部3から光源部11への負荷電圧が遮断されない。そのため、点灯回路1の回路上で光源部11が無負荷状態にならず、電源回路部3の電源電圧が上昇することもない。また、変調用抵抗Rxの一端に制御用電源部5の入力端が接続されているので、制御用電源部5の入力端の電圧が、光源部11に流れる電流と変調用抵抗Rxによって定まる電圧に抑えられる。従って、電源回路部3の電源電圧及び制御用電源部5への入力電圧を安定化すると共に、回路損失を低減することができる。また、電源回路部3や制御用電源部5に、耐圧性の高い高価な部品や多数の部品ではなく、汎用の安価な回路部品を用いることができ、しかも回路設計が簡素なので、点灯回路1及びこれを用いた照明器具10の低コスト化及び小型化を実現することができる。
【0023】
また、可視光通信信号回路部4のマイコンが立ち上がっておらず、制御用電源部5から変調用スイッチ素子Q1への給電が無い状態においても、強制オン回路部6によって電源回路部3から変調用スイッチ素子Q1のゲートにオン信号(図2のon)が流れ続ける。つまり、可視光通信信号回路部4のマイコンが立ち上がっていない状態でも、変調用スイッチ素子Q1はオンのままであり、光源部11の電流は変調用抵抗Rxを介さずに流れる。そのため、図4に示すように、可視光通信信号回路部4のマイコンが立ち上がり、制御用電源部5からトランジスタQ2を介してオン信号の出力が開始されても、電源回路部3の出力端間のインピーダンスは変化せず、光源部11への出力電流にサージ電流は発生しない。可視光通信信号回路部4のマイコンが立ち上がってオフ信号を出力するときは、強制オン回路部6からトランジスタQ3方向へ戻り電流(図2のoff)が生じるので、強制オン回路部6による変調用スイッチ素子Q1のゲートにオン信号が打ち消される。その結果、変調用スイッチ素子Q1はオフとなり、変調用抵抗Rxに負荷電流I2が流れる。従って、上述した構成によれば、電源回路部3の電源電圧を安定化すると共に、変調用スイッチ素子Q1がオン動作を開始したときのサージ電流の発生を抑制することができ、光源部11への電流ストレスを低減することができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態に係る可視光通信用照明器具について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態の照明器具10の点灯回路1の回路構成を示す。照明器具10は、複数の照明器具本体10aと、照明器具本体10aの外部に設けられた可視光通信信号出力部30と、を備える。可視光通信信号出力部30には、可視光通信信号回路部4が設けられ、各照明器具本体10aは、可視光通信信号回路部4を除き、上記第1の実施形態の照明器具10と同様の構成を有する。なお、図例では、照明器具本体10aが2つである例を示すが、それ以上であってもよい。各照明器具本体10aと可視光通信信号出力部30とは、夫々信号線20によって接続されている。各照明器具本体10aは、変調用スイッチ要素のゲートに強制オン回路部を介して接続された変調信号駆動回路部4aを備え、この変調信号駆動回路部4aは、フォトカプラPCを介して信号線20に接続されている。また、可視光通信信号出力部30は、可視光通信信号回路部4に給電する制御用電源部51を備える。可視光通信信号出力部30の可視光通信信号回路部4は、フォトカプラ駆動回路部4bを介して信号線20に接続されている。変調信号駆動回路部4a及びフォトカプラ駆動回路部4bは、いずれも絶縁型の回路として構成されている。
【0025】
この構成によれば、照明器具10に用いられる複数の照明器具本体10aからの照明光が、可視光通信信号出力部30から出力される変調信号に基づいて変調されるので、照明光に重畳される通信信号が同期され、信号の混信を抑制することができる。すなわち、複数の照明器具本体10aを子機としたとき、可視光通信信号出力部30は、これら子機を同期させて変調する親機として機能し、親機が複数の子機の通信信号を制御する。
【0026】
また、可視光通信信号出力部30と各照明器具本体10aを結ぶ信号線20には、フォトカプラPCの発光ダイオードを駆動する微小な電流が流れるだけで、照明器具本体10aを変調調光するような大きな電流は流れないので、放射ノイズを低減することができる。また、フォトカプラPCを照明器具本体10aに設けているので、絶縁性が必要とされる変調信号駆動回路部4aの回路構成を簡素化でき、既存の非絶縁型の照明器具にも可視光通信システムを容易に組み込むことができる。従って、照明器具10によれば、照明光に重畳された通信信号の混信やノイズの発生を抑制して通信信号を正確に伝送することができ、通信信号の伝送箇所において絶縁性を容易に確保することができる。
【0027】
次に、本発明の第3の実施形態に係る可視光通信用照明器具について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態の照明器具10の点灯回路1の回路構成を示す。この点灯回路1は、変調用抵抗Rxと並列に接続された保護用迂回回路部7を備える。なお、図例では、可視光通信信号回路部4と変調用スイッチ素子Q1との間のスイッチ要素としてインバータ61を表記している。他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。
【0028】
可視光通信信号回路部4が立ち上がっているものの、例えば、可視光通信信号回路部4のマイコンや、可視光通信信号回路部4と変調用スイッチ素子Q1とを繋ぐインバータ61の不具合等によって、変調用スイッチ素子Q1がオフ状態となることがある。このとき、変調用抵抗Rxには断続的に電流が流れ、電源回路部3の出力電圧が異常上昇する。そこで、本実施形態においては、保護用迂回回路部7が、変調用抵抗Rxの両端電圧が所定値に上昇したときに、この変調用抵抗Rxに流れる電流を迂回させる。
【0029】
保護用迂回回路部7は、変調用抵抗Rxへの電流を迂回させる迂回用スイッチ素子Q71と、この迂回用スイッチ素子Q71のゲートにオン電流を流す経路上に設けられるサイリスタQ72、トランジスタQ73,74、及びスイッチ素子Q75と、を備える。また、保護用迂回回路部7には、これら各スイッチ要素のゲート電圧又はベース電流を夫々設定するためのツェナーダイオードZD71,72及びコンデンサC71〜73、及び各素子間の電位を調整する各種抵抗R72〜79が配される。また、保護用迂回回路部7の入力端には抵抗R71,72及び接地面に接続されたツェナーダイオードZD73〜75が配される。
【0030】
次に、保護用迂回回路部7の動作を説明する。まず、変調用スイッチ素子Q1がオフのまま光源部11の各LED2に負荷電流が流れ続けると、変調用抵抗Rxの両端電圧が上昇する。この変調用抵抗Rxの両端電圧が、ツェナーダイオードZD72によって設定されるスイッチ素子Q75(MOSFET)のゲート閾値電圧以上に上昇すると、スイッチ素子Q75がオン動作をする。このとき、トランジスタQ74が導通し、コンデンサC2が充電され、スイッチ素子Q75の動作と平行して、サイリスタQ72もオンする。これにより、トランジスタQ73のベース電流が流れる経路ができ、迂回用スイッチ素子Q71のゲートに対するオン電流がR78,79を介して流れる。このようにして、迂回用スイッチ素子Q71がオンすることにより、変調用抵抗Rxへ流れる電流を保護用迂回回路部7へ迂回させることができる。
【0031】
スイッチ素子Q1がオンした状態は、一度、電源回路部3の出力がオフされ、その電圧が低下して、サイリスタQ72がオフして、迂回用スイッチ素子Q71のゲート電圧が閾値よりも下がるまで継続する。すなわち、保護用迂回回路部7は、照明器具10の電源リセットして、電源回路部3からの電圧が解除されない限り、スイッチ素子Q1はオフしない回路構成になっている。この保護用迂回回路部7を備えた構成によれば、変調用スイッチ素子Q1がオフのままになったときに、変調用抵抗Rxに流れる電流を迂回させることにより、電源回路部3の出力電圧が異常に上昇することを防止して、点灯回路1を保護することができる。
【0032】
次に、上記実施形態に示したような照明器具10を用いた可視光通信システムの構成例について、図7を参照して説明する。可視光通信システムは、上述したような照明器具10と、照明器具10から送信される通信信号を受信する受信機40と、を備える。図7(a)に示すように、照明器具10は天井Cに埋め込まれ、光源部11から床F方向の所定範囲に照明光Lを照射する。
【0033】
受信機40は、例えば、図7(b)に示すような携帯端末から成り、照明器具10から照射される照明光を受光するフォトダイオード等から成る受光部41を備える。また、受信機40は、例えば、液晶ディスプレイ等から成る表示部42と、操作部43と、受光部41で受光しか照明光Lの光強度に基づいて通信信号を読み取る信号処理回路(不図示)とを備える。なお、表示部42にタッチパネル機能を有するディスプレイを用いれば、操作部43の機能をこの表示部42において実現することができる。また、受光部41は、CMOSセンサから成るカメラであってもよい。すなわち、受信機40には、一般的な携帯電話に、通信信号を読み取る信号処理用のソフトウェアをインストールしたものを用いることができる。なお、受信機40は上記携帯端末に限定されず、他の構成から成る受信機であってもよい。
【0034】
この構成によれば、図7(a)に示したように、ユーザUは、受信機40を用いれば、照明器具10の照明範囲内において照明器具10からの照明光に重畳された通信信号を受信することができる。通信信号には、位置情報、画像情報及び音声情報等が含まれ、ユーザUは、受信機40を用いてこれら通信信号に含まれる情報を表示部42に表示させる等により得ることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、制御用電源部5には、2次電池、及びAC/DCコンバータ31の出力により2次電池を充電させる充電回路から成るバックアップ電源(不図示)が設けられてもよい。また、インピーダンス要素として、変調用抵抗Rxに加えてLEDが用いられてもよく、このLEDを、例えば、上記バックアップ電源からの給電により点灯させれば、災害時等により停電が発生して商用電源ACを喪失したときの補助光源として機能させることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 照明器具(可視光通信用照明器具)
11 光源部
2 LED(固体発光素子)
20 受信機
3 電源回路部
4 可視光通信信号回路部
5 制御用電源部
6 強制オン回路部
7 保護用迂回回路部
PC フォトカプラ
Q1 変調用スイッチ素子(変調用スイッチ要素、MOSFET)
Rx 変調用抵抗(変調用インピーダンス要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させる可視光通信用照明器具であって、
固体発光素子から成る光源部と、
調光信号に基づいて前記光源部に流れる負荷電流を制御して前記光源部を調光する電源回路部と、
前記電源回路部から前記光源部へ供給される出力電流を変調させる変調用スイッチ要素と、
前記変調用スイッチ要素と並列に接続された変調用インピーダンス要素と、
前記変調用スイッチ要素のオンオフを制御して、前記光源部が出射する照明光に通信信号を重畳するための変調信号を出力する可視光通信信号回路部と、
前記可視光通信信号回路部の非駆動時に、前記電源回路部からの給電電力により前記変調用スイッチ要素をオンさせる強制オン回路部と、を備えることを特徴とする可視光通信用照明器具。
【請求項2】
前記可視光通信信号回路部へ電力を供給する制御用電源部を更に備え、
前記制御用電源部の入力端の少なくとも1端が、前記変調用インピーダンス要素の1端に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の可視光通信用照明器具。
【請求項3】
前記可視光通信信号回路部は、前記変調用スイッチ要素のゲートに接続されたフォトカプラを介して前記変調信号を伝送することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可視光通信用照明器具。
【請求項4】
前記変調用インピーダンス要素と並列に接続された保護用迂回回路部を更に備え、
前記保護用迂回回路部は、前記変調用インピーダンス要素の両端電圧が所定値に上昇したときに、該変調用インピーダンス要素に流れる電流を迂回させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の可視光通信用照明器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の可視光通信用照明器具と、この可視光通信用照明器具から送信される通信信号を受信する受信機と、を備えることを特徴とする可視光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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