可視画像と合成ホログラムとの重ね合わせ
【解決手段】本発明は、符号化セルのアレイから形成された合成ホログラムに関しており、合成ホログラムは、符号化セルが反転したパターンを備えており、符号化セルは合成ホログラムの残りの部分に対してオフセット値分調整された位相を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視画像と合成ホログラムとの重ね合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
模倣の抑制は、産業界における主要な懸念事項である。製品の出所を保証するために、製造業者は安全な識別要素及びトレーサビリティ要素を使用しなければならない。製品の模倣を阻止するか又は更に防止するために、このような要素の設計及び取得は十分に複雑である必要がある。従って、様々な解決策がこのために開発されている。
【0003】
二次元バーコードであるデータマトリックスが使用されている。このようなデータマトリックスは、データをバイナリフォーマットで符号化することが可能な白い正方形及び黒い正方形から形成されている。データマトリックスに含まれる情報が、キーを持たない人による解読を防止する読取りコードによって保護され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7193754号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、小さな支持体上に形成された合成ホログラムが使用されている。このような合成ホログラムは、高度な製造技術に基づき形成されており、合成ホログラムの読取りのために専用の装置を必要とするので、合成ホログラムの模倣は困難である。
【0006】
米国特許第7193754号明細書では、模倣を更に困難にするために、合成ホログラムに直接視可能な画像が重ね合わせられている。合成ホログラムの書き込まれていない白い領域によって、合成ホログラムの書き込まれている領域と対比して画像、例えばポートレート又はデータマトリックスを明らかにすることが可能になる。提示されている方法の不利点は、合成ホログラムの、可視画像の下に置かれた部分が隠されるということである。しかしながら、このような合成ホログラムの一部の削除によって、解像度を下げた状態ではあるが合成ホログラムの内容を読み取ることが可能になる。解像度は、所与の鮮明度のホログラムに関するホログラム表面積に比例する。
【0007】
本発明は、合成ホログラムに含まれる情報を失うことなく、且つ合成ホログラムの鮮明度を下げることなく可視画像が重ね合わせられる合成ホログラムを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の実施形態は、複数の符号化セルのアレイから形成された合成ホログラムにおいて、前記符号化セルが反転したパターンを備えており、前記符号化セルは前記合成ホログラムの残りの部分に対してオフセット値によって調整された位相を有することを特徴とする合成ホログラムを提供する。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は一定であり、πに等しく、前記合成ホログラムの光学的な再構成が妨げられず、前記パターンは直接観察され得る。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は一定であり、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記パターンの形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行われている。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は、前記パターンの様々な領域で一定でなく、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記パターンの様々な領域の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行なわれている。
【0012】
本発明の実施形態によれば、階調画像の前記パターンは、スクリーニングセルに基づくスクリーニングにより得られ、前記スクリーニングセルの大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの整数倍である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記パターンは、黒画素及び白画素のランダムマトリックス又は半ランダムマトリックスであり、前記パターンの画素の大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの1以上の整数倍である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記合成ホログラムによって符号化された画像の有効領域が減少しており、該有効領域は、前記有効領域の長さの半分と少なくとも等しい距離だけ全体の画像の中心からオフセットされている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記画像は、前記合成ホログラムの位相分布への線形位相成分の導入によってオフセットされている。
【0016】
本発明は更に、直接視可能なパターンに重ね合わせられた合成ホログラムを製作する方法であって、
前記合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
前記パターンの画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
前記合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
前記開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
前記第1の振幅マトリックスA1及び前記第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリクスA'にまとめるステップ、
前記第1の位相マトリックスP1及び前記第2の位相マトリックスP2を単一のマトリクスP'にまとめるステップ、及び
先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
を有することを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光ビームの経路に置かれたホログラムを示す図である。
【図2】合成ホログラムの一例、及び合成ホログラムの読取りを示す図である。
【図3A】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3C】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3D】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3E】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3F】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態に従って符号化されたホログラムを示す図である。
【図4B】一部が正であり、残りが負である5×5のセルのグループを詳細に示す図である。
【図5】反転した各セルの位相シフトf0がπとは異なる場合における読取りモードを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従ってホログラムを読取るための組立体を示す図である。
【図7】走査レーザ型の書込み装置を用いた、一方のセルが正であり、他方のセルが負である2つのセルの製作の一例を示す図である。
【図8】観察されたホログラム画像(ここでは数字「38」)を示す図である。
【図9A】ホログラムの再構成の一例を示す図である。
【図9B】ホログラムの再構成の一例を示す図である。
【図10A】オフセットの方法を示す図である。
【図10B】オフセットの方法を示す図である。
【図10C】オフセットの方法を示す図である。
【図11】重ね合わせられた階調パターンを形成可能な方法を示す図である。
【図12】重ね合わせられた階調パターンがデータマトリックスタイプの画像である例を示す図である。
【図13A】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図13B】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図14A】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図14B】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図15A】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図15B】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図15C】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図16】重ね合わせられたデータマトリックスを有するデータマトリックスホログラムを示す図である。
【図17A】実験結果を示す図である。
【図17B】実験結果を示す図である。
【図17C】実験結果を示す図である。
【図17D】実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明は、以下に述べられる合成ホログラムの特性の分析と特定の使用とに基づいている。
【0020】
図1は、ビームE の経路に置かれたホログラム1 を示している。ビームE はホログラム1 によって回折し、ビームB を生成する。このビームB は、フーリエ共役(the Fourier conjugation)を可能にするレンズ又は別の光学システム2 によって回収される。レンズの焦点面では、ホログラム1 の出力で生成されたビームB のフーリエ変換に相当する画像3 が得られる。
【0021】
合成ホログラフィは、コンピュータにより生成される画像3 を得るためにビームB を生成することが可能な技術である。
【0022】
r が動径座標の単一性ベクトルを示し、ビームE 及びビームB が以下の式により夫々表される場合、
【0023】
【数1】
【0024】
これらの式の数学的解答は、以下の式(1)によって与えられる伝達関数H の計算とみなされる。
【0025】
【数2】
【0026】
残りの説明では、ビームE が1に略等しいように波A が平面であり均一であると仮定される。実際には、式(1)を完全に満たすことは不可能である。入射波の位相及び振幅の両方を符号化することが可能な伝達要素を製作することが可能である必要がある。この制約を取り除くために、多くの方法が開発されている。
【0027】
伝達関数H のセルへの分割を備えており、1966年にブラウン(Brown )及びローマン(Lohmann )によって説明された合成ホログラム生成法「2値マスクを用いた複雑な空間フィルタリング(Complex Spatial Filtering with Binary Masks)」,応用光学(Appl. Opt.),第5版,p.967 −969 が本明細書で考慮される。セルは夫々、異なる伝達特性又は反射特性を有する2つの領域を備えている。例えば、セルは夫々不透明な部分及び透明な部分(又は反射する部分及び透明な若しくは不透明な部分)を備えている。2つの部分の相対的な大きさが振幅に相当し、セルの中心に対する中心部分のオフセットが位相に相当する。
【0028】
図2は、合成ホログラム1 、及び読取り原理を示している。合成ホログラム1 は、ステップpのセルマトリックスから形成されており、光が回折させられる開口4 を複数有している。開口4 は全て方向xに沿って並んでいる。生成されるべき波の位相が、この方向xに沿って符号化され、セルの高さの半分のオフセット(p/2)が位相シフトπに相当する。
【0029】
このようにして2つのビーム6a,6b が、回析格子の次数+1及び次数−1に対応して方向yに沿って左右に生成される。2つのビーム6a,6b は、フーリエレンズを通過した後、ビームの次数0の中心点5 に対して対称的な2つの光点を与える。
【0030】
垂直方向(方向x)に沿って、ホログラムの次数+1及び次数−1に対応して上部及び底部に2つの回折ビーム7a,7b が生成される。これらの回折ビーム7a,7b は、フーリエレンズを通過した後、所望の画像3及びこの画像3の共役体を再形成する。ホログラムサンプリングによって生成される付加画像がこれらの画像の周りに分配される。
【0031】
従って、読取りは、コヒーレントレーザタイプのビームでホログラムを照射し、フーリエレンズによって回折した波を回収し、所望の画像領域をカメラで検出することにより行われる。
【0032】
ホログラムは、
1.画像をコンピュータにより製作するステップ、
2.画像のフーリエ変換(FT)を行うステップ、
3.開口サイズのマトリックスを生成することにより前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
4.開口オフセットマトリックスを生成することにより位相を符号化するステップ、
5.先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
により製作される。
【0033】
本説明は、1966年にブラウン及びローマンによって開発された符号化の場合を考慮する。他のセル符号化法が同様に適用される。干渉縞法が使用されてもよい。
【0034】
本発明は、ホログラム読取り特性の分析に基づいている。
【0035】
既に述べられた図1は、フーリエ光学を用いたホログラムの読取りを示している。平面波E がホログラムH を照射する。フーリエレンズ2 が、ホログラムH によって生成された波のフーリエ変換を生成する。Iaで示される画像3 が得られる。物理的なホログラムを記述している透過関数H が考慮される。透過関数H は、0又は1に等しい値の分散の形態で説明され得る2値関数である。値0は不透明領域又は非反射領域に対応し、値1は透過領域又は反射領域に対応する。ホログラフィ処理は、以下の式によって数学的に説明され得る。
Ia = FT(EH) ×FT(EH)*
【0036】
回析原理に一般的なホログラムの固有の特性が、負のホログラムの回析に関連する。負のホログラムは、反転した透過部分及び不透明な部分を有するホログラムである。ホログラムの負の表示は、1−H で数学的に示され得る。セルの各々がπ位相シフトされているこのような負は、読取りモードで対応する正のホログラムの画像Iaと同一の画像Ibを与えることが示され得る。
【0037】
一般的に、正のモードにおけるホログラムの態様は(黒領域よりはるかに多い白領域を有する)明画像である一方、負のモードにおけるホログラムの態様は(白領域よりはるかに多い黒領域を有する)暗画像である。ここでは、正のモードにおけるセル及び負のモードにおけるセルを同一のホログラムに混合する。このため、負のモードにおけるセルのパターンに対応する直接視可能な画像が生成され得る。
【0038】
図3A乃至3Fは、本明細書で使用される一般的な原理を示している。図3A(画像1)は、一例として不図示の画像のホログラムの形状を示している。図3B(画像2)は、このホログラムをπ位相シフトした負の画像を示している。図3C(画像3)は、ここでは文字Aであるパターンを示しており、パターンは、可視であることが望まれており、ホログラムに重ね合わせられる。
【0039】
画像3は、図3D(画像4)に示されているように画像1から削除される。画像3は、図3E(画像5)に示されているように画像2から抽出される。図3F(画像6)に示されているように、画像4及び画像5はまとめられて画像6が与えられる。
【0040】
図示されているように、文字Aが、最初のホログラムのいかなるデータも失うことなく画像6に現われる新しいホログラムH'が得られる。
【0041】
再構成において、位相シフトされ反転されたホログラムH'によって生成された画像が、ホログラムH によって生成された画像と数学的に同一である。
【0042】
図4Aは、保持された符号化の場合における本発明の実施形態に係るホログラムを示している。図4Bは、直接視可能なパターンの輪郭における、一部が正であり、残りが負である5×5のセルのグループの詳細を示す図である。開口は、セル全体の大きさと比較して一般的に小さく、重ね合わせられた画像の非常に良好な対比が巨視的な視覚レベルで得られる。
【0043】
本発明の実施形態に係る合成ホログラムは、
1.合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
2.直接視のための画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
3.合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
4.開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
5.開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
6.開口サイズのマトリックスA と直接視のための画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
7.開口オフセットマトリックスP と直接視のための画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
8.開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と直接視のための画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
9.位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と直接視のための画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
10.第1の振幅マトリックスA1及び第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリックスA'にまとめるステップ、
11.第1の位相マトリックスP1及び第2の位相マトリックスP2を単一のマトリックスP'にまとめるステップ、
12.先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
により製作される。
【0044】
組み合わせた(正及び負の)ホログラムが最初のホログラムと同一の画像を与えるために、負のホログラムはπ位相シフトされる必要があることを既に説明している。このために、ホログラムの各セルをπ位相シフトする。他の実施形態が実施されてもよい。
【0045】
一例として、図5は、反転した各セルの位相シフトf0がπとは異なる読取りの場合を示している。この場合、重ね合わせられた画像のレベルで入射ビームに位相シフトf1を生成する遅延板8 が、蓄積された位相シフトが以下の式(2)に従うように使用される。
f1 + f0 = ±πmodulo2π (2)
【0046】
式(2)が全ての関数定義ポイントで真のままであるならば、位相シフトf1及び位相シフトf0の分散は一定でなくてもよい。
【0047】
πとは異なる位相シフトの使用は、ホログラムの読取りが位相キーの使用を必要とする点で有利になり得る。
【0048】
ホログラムの読取りのための組立体
図6は、本発明に係るホログラムの読取りのための組立体を示している。このために、重ね合わせられる画像の付加的な結像部分を備えたフーリエ光学読取り組立体が使用されている。図6はホログラム反射読取り組立体を示している。
【0049】
空間フィルタ11を備えることが可能な伸縮式システム10によって構成されたレーザ9 が使用されている。ホログラムの大きさ程度の直径を有するビームが、半反射立方体12に達する。透過したビームは任意には遅延板8 と交差し、その後ホログラム1 を照射する。
【0050】
反射によって回折したビームは、遅延板8 と交差して戻る。遅延板8 は、この前後への移動に適した位相シフトを有する(実際には、遅延板8 によって引き起こされる位相シフトは必要な位相シフトの半分である)。その後、ビームは半反射立方体12と交差し、回折したビームの一部がフーリエ光学体2 に送られ、その後画像がアレイセンサ14上に形成される。
【0051】
入射ビームの一部がホログラム1 と交差する。光学体13が、ホログラム面とアレイセンサ15の面との結像関係を確保し、アレイセンサ15の面にホログラムと重ね合わせられた画像を形成する。コヒーレントモードの結像に固有の障害を回避するために、第2のインコヒーレント光源が、ホログラムに重ね合わせられた画像をアレイセンサ15に表示するために使用されてもよい。
【0052】
ホログラムの製作
本発明に係るホログラムの製作は特定の技術的問題を引き起こさない。ホログラムのセルは、使用されるリソグラフィツール(電子ビーム、レーザ書込み・・・)の書込み解像度に対応するサブ部分に分割される。
【0053】
図7は、走査レーザ型の書込み装置を用いた、一方のセルが正であり、他方のセルが負である2つのセルの製作の一例を示す図である。両方のセルは開口4a,4b を有する。正のセル又は負のセルに開口を形成するために、レーザは走査16中にオンオフされる。図7は、開口が隣接するセルを占めるようにオフセットされている開口の特定の場合を示している。この場合、同一の開口が、図7に示されているように負のモード及び正のモードの両方で処理され得る。
【0054】
走査ステップΛが、書込み時間と適切な開口の鮮明度とを考慮し最適であるように選択される。
【0055】
ホログラムの設計
図1によって、合成ホログラム回析処理の動作が示され得る。図8は、所望の画像3(ここでは数字38)の再構成に関する影響を詳細に示している。
【0056】
再構成された画像は、読取り波長λ、セル鮮明度ステップp 及び読取りに使用されるレンズの焦点距離f である3つのパラメータによって設定される距離D を隔てて光軸28の下方にある。距離D は、以下によって与えられる。
D = λ.f/p
【0057】
距離D は更に画像の大きさに相当する。
【0058】
ホログラムのサンプリングされた特徴によって引き起こされる複製が、中央の画像の周りに分配される。このような複製の可視性は、中央の画像への距離が増加するにつれて減少する。このような放射状の重み付け29は開口の回折効率によって決まる。
【0059】
読取り光学体の開口数による別の重み付け30が、この放射状の重み付け29に追加される。共役順序は、説明を簡略化するために図8に示されていない。
【0060】
ホログラムを最適に選択するために再構成を理解することが重要である。
【0061】
ホログラムによって乱されない照射ビームの大部分が光軸28のレベルに集中する。これがレンズ合焦点である。
【0062】
追加情報が、画像Imによって定められ重ね合わせられたパターンの形態でホログラムに追加される。ホログラムの読取りにより2つのフーリエ変換が生成される。第1のフーリエ変換はホログラムH に相当し、ホログラムの次数+1及び次数−1に分配される。第2のフーリエ変換は画像Imのフーリエ変換に相当する。フーリエ変換が設計に起因して角度を保持しないので、フーリエ変換は光軸28に集中する。
【0063】
図9Aは、その複製に囲まれた数字38を形成するホログラムH のフーリエ変換FTを示す再構成の一例を示しており、図9Bは、光軸に集中した画像のフーリエ変換FTを示す再構成の一例を示している。図9A及び図9Bの場合には、重ね合わせられた画像がデータマトリックスであり、重ね合わせられた画像のフーリエ変換FTが十字に分配される。
【0064】
図9Aは、所望の画像と重ね合わせられた画像のフーリエ変換FTとの再構成面での重ね合わせを示している。再構成はこのようにして妨げられる。この問題を解決するために、妨げられる領域の外側に所望の情報をオフセットする解決策がある。これが、図9Bに示されている。情報が再構成中心から移されるので、2つのフーリエ変換FTの重ね合わせの抑制が、画像可視性を低減して行なわれる。このようにして折衷案が採用される。
【0065】
図10A 乃至10C はオフセットの原理を示している。以下の2つの解決策が、オフセットdx及びオフセットdyを生成するために利用可能である。
− 画像の図案上で画像をオフセットする
− 計算の際にホログラムの位相上に線形位相シフトを導入する
【0066】
2つの解決策は同等であるが、第2の解決策が簡単なために好ましい。第2の解決策は、以下の式に表現されるフーリエ変換FTの固有の特性を利用している。
【0067】
【数3】
【0068】
再構成を最適化するために、画像の有効領域が、図10A 乃至10C に示されているように再構成されるべき画像に集中してもよい。
− 図10A は所望の画像を示している。
− 図10B は、ホログラムによって符号化されるべき画像を示しており、所望の画像が全体の画像の一部になる。
− 図10C は、ホログラムによって符号化されるべき画像を示しており、有効領域が再構成を容易にするために方向x及び方向yの両方でオフセットされている。
【0069】
重ね合わせられる画像の性質
図3A乃至3Fは、本明細書に述べられている方法の一般的な図を示している。図3Cは、合成ホログラムに重ね合わせられる文字を示している。この場合、白黒の画像が合成ホログラムに重ね合わせられる。
【0070】
しかしながら、重ね合わせられる画像の性質は異なってもよい。特に、様々な階調の画像が考慮されてもよい。このために、セルの2つのレベルが図11に示されているように定められてもよい。セル31がホログラム鮮明度セルである。ホログラム情報を符号化する開口4 がセル31に挿入されている。
【0071】
セル32が、重ね合わせられる画像のスクリーニング鮮明度セルである。セル32の大きさは、セル32の大きさの1以上の倍数Nによって与えられる。図示されている場合には、倍数は7に等しい。
【0072】
階調画像は、N×N画素のセル上にスクリーニングによって定められる。図面の場合には、倍数Nは7に等しく、画像は少なくとも11階調に亘って符号化され得る。
【0073】
見掛け上の階調は、暗いセル31の様々なグループの大きさによって与えられる。暗いセル31がセル32全体を覆う場合、この画像領域は黒く見える。逆に、暗いセル31がセル32に存在しない場合、この画像領域は見る人によって白いと認識される。中間では、画像が一定の距離から見られるとき、暗いセル31をセル32に入れることにより、階調の錯覚が見る人に与えられる。これがスクリーニングと呼ばれ、印刷では広く使用されている。
【0074】
本発明の適用は、データマトリックス画像の重ね合わせに関する。この場合、データマトリックスの画素は、図12に示されているようにセル32と同様である。
【0075】
データマトリックスの利点は、重ね合わせられる画像が高度に構造化されているということである。本明細書に述べられている技術を使用しない場合、基本的なホログラムの再構成は非常に困難である。
【0076】
この場合にも、位相キーの使用は特に適切である。
【0077】
見掛け上の階調は、暗いセル31の様々なグループの大きさによって与えられる。暗いセル31がセル32全体を覆う場合、この画像領域は黒く見える。逆に、暗いセル31がセル32に存在しない場合、この画像領域は見る人によって白いとして認識される。中間では、画像が一定の距離から見られるとき、暗いセル31をセル32に入れることにより、階調の錯覚が見る人に与えられる。これがスクリーニングと呼ばれ、印刷で広く使用されている。
【0078】
シミュレーション
本明細書に述べられている方法及び装置の利点を示すために、2倍のデータマトリックスの符号化の場合を以下に説明する。図13A 及び13B と図14A 及び14B とは、使用される画像及びホログラムを示している。
【0079】
図13A では、黒画素及び白画素のランダムマトリックスがシミュレートされている。データマトリックスの大きさは30×30画素である。最終的な画像の大きさは、600 ×600 画素であり、つまり、倍数Nは20に等しい。
【0080】
図13B は、図13A の画像のフーリエ変換FTの振幅を示している。上述したように、十字状の回折パターンが得られる。
【0081】
同一のデータマトリックスがホログラムの符号化された画像を生成するために使用される。このために、データマトリックスは、大きさが600 ×600 画素である画像内で240 ×240 画素の領域を覆うためにサンプリングされる。図14A は、符号化のために使用される画像を示している。図14B は、フーリエ変換FTの振幅を示している。本例の場合には、画像の位相のスクランブル処理がフーリエピークを減少させるために使用されている。これは、合成ホログラフィの従来の技術である。シー.ビー.バークハルド(C.B.Burckhardt)著,「データマスクのフーリエ変換ホログラムの記録のためのランダム位相マスクの使用(Use of a Random PhaseMask for the Recording of Fourier Transform Holograms of Data Masks)」,応用光学(Appl.Opt.),第3版,1970年,p.695 −700 参照。フーリエ変換FTをより容易に視認するために、画像の対比が図13B 及び14B で増加している。
【0082】
その後、ホログラムの再構成が、4μm のホログラムステップでの650 nmの読取りの場合でシミュレートされている。図14A に示された画像の符号化が、193 の振幅値と80の位相値とに亘って行なわれる。
【0083】
図15A 乃至15C は、シミュレーションによって観察された結果を示している。
【0084】
図15A は、重ね合わせられた画像によって引き起こされる乱れが、反転した画素の位相シフトによって調整されている完全な読取りの場合を示している。これが本発明の場合である。図15A は、白画素で鮮明度が僅かに変化しているものの、結果が図14A の原図に非常に近いことを示している。
【0085】
図15B は、重ね合わせられた画像の画素がフーリエ変換FTの振幅値を削除している場合を示している。これが先行技術の場合である。上述したように、マトリックスの検出は妨げられているが、高度な画像処理を用いることで未だ可能である。
【0086】
図15C は、重ね合わせられた画像によって引き起こされる妨げが反転した画素の位相シフトによって調整されていない場合を示している。これは、位相キーを用いた読み取られるべきホログラムの大きさの決定に対応し、位相キー無しで読取りを行っている。この場合にはマトリックスの再構成が全く不可能であることが理解され得る。従って、本明細書の特許請求の範囲に記載されているような位相キーの使用は、模倣の抑制に非常に効果的な方法である。
【0087】
尚、シミュレーションは、回折効率の放射状の変化による重み付けの現象を考慮していない。図14A の画像は、単純化のために図10C に示されているようにオフセットされていない。
【0088】
このシミュレーションは、本明細書に提示されている方法が先行技術に対して明確な利点を導くことを明瞭に示している。
【0089】
実際的な再読取り組立体では、寄生ノイズが必然的に生じる。従って、検出される信号は変化する。そのため、図15B によって示される解決策は、符号化された画像の回復には非効率的である。
【0090】
実験結果
提示された方法の利点を明確に表すことが可能な実験結果を以下に示す。
【0091】
図16は、重ね合わせられたデータマトリックスを有するホログラムを示す図であり、図16の右上に、この図のある領域を拡大したものが示されている。データマトリックスは明瞭に示されている。写真は、化学的なエッチング前のPtOx層の照射後に顕微鏡を用いて得られている。化学的なエッチング後、対比が更に強調される。
【0092】
実証の必要性のために、4つのホログラムが図15A 乃至15C との比較のためにエッチングされている。ホログラムは、図6の組立体と同様の組立体を用いて反射で読み取られる。
【0093】
図17A は、重ね合わせられた画像がない標準的なホログラムの場合を示している。データマトリックスの検出は、スペックルノイズにもかかわらず効率的に行われているようである。
【0094】
図17B は、図15A の場合を示している。これは、本発明に従って重ね合わせられた巨視的なデータマトリックスを有するデータマトリックスホログラムであり、正のセル及び負のセルに位相補正して示されている。図17A に対する信号の変化が観察され得るが、データマトリックスの検出は、高度な画像処理を用いることで未だ可能である。図17A の結果と図17B の結果との間の変化は、負のセルにおける小さなパターンの解像度の問題による可能性がある。
【0095】
図17C は、先行技術の場合を示している。データマトリックスの画素の一部のみが示されている。データマトリックスは未だ見られ得るが、データマトリックスの画素の識別は図17B よりも困難である。
【0096】
最後に、図17D は、位相補正されていない重ね合わせられた画像の場合(図15C の場合)を示している。データマトリックスは識別され得ない。位相キーの欠如に相当するこの場合は、位相キーシステムに関連付けられた本発明の利点を示している。
【0097】
様々な変形例を備えた様々な実施形態が上述されている。尚、当業者は、いかなる進歩性も示すことなくこれらの様々な実施形態及び変形例の様々な要素を組み合わせてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視画像と合成ホログラムとの重ね合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
模倣の抑制は、産業界における主要な懸念事項である。製品の出所を保証するために、製造業者は安全な識別要素及びトレーサビリティ要素を使用しなければならない。製品の模倣を阻止するか又は更に防止するために、このような要素の設計及び取得は十分に複雑である必要がある。従って、様々な解決策がこのために開発されている。
【0003】
二次元バーコードであるデータマトリックスが使用されている。このようなデータマトリックスは、データをバイナリフォーマットで符号化することが可能な白い正方形及び黒い正方形から形成されている。データマトリックスに含まれる情報が、キーを持たない人による解読を防止する読取りコードによって保護され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7193754号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、小さな支持体上に形成された合成ホログラムが使用されている。このような合成ホログラムは、高度な製造技術に基づき形成されており、合成ホログラムの読取りのために専用の装置を必要とするので、合成ホログラムの模倣は困難である。
【0006】
米国特許第7193754号明細書では、模倣を更に困難にするために、合成ホログラムに直接視可能な画像が重ね合わせられている。合成ホログラムの書き込まれていない白い領域によって、合成ホログラムの書き込まれている領域と対比して画像、例えばポートレート又はデータマトリックスを明らかにすることが可能になる。提示されている方法の不利点は、合成ホログラムの、可視画像の下に置かれた部分が隠されるということである。しかしながら、このような合成ホログラムの一部の削除によって、解像度を下げた状態ではあるが合成ホログラムの内容を読み取ることが可能になる。解像度は、所与の鮮明度のホログラムに関するホログラム表面積に比例する。
【0007】
本発明は、合成ホログラムに含まれる情報を失うことなく、且つ合成ホログラムの鮮明度を下げることなく可視画像が重ね合わせられる合成ホログラムを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の実施形態は、複数の符号化セルのアレイから形成された合成ホログラムにおいて、前記符号化セルが反転したパターンを備えており、前記符号化セルは前記合成ホログラムの残りの部分に対してオフセット値によって調整された位相を有することを特徴とする合成ホログラムを提供する。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は一定であり、πに等しく、前記合成ホログラムの光学的な再構成が妨げられず、前記パターンは直接観察され得る。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は一定であり、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記パターンの形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行われている。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記オフセット値は、前記パターンの様々な領域で一定でなく、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記パターンの様々な領域の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行なわれている。
【0012】
本発明の実施形態によれば、階調画像の前記パターンは、スクリーニングセルに基づくスクリーニングにより得られ、前記スクリーニングセルの大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの整数倍である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記パターンは、黒画素及び白画素のランダムマトリックス又は半ランダムマトリックスであり、前記パターンの画素の大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの1以上の整数倍である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記合成ホログラムによって符号化された画像の有効領域が減少しており、該有効領域は、前記有効領域の長さの半分と少なくとも等しい距離だけ全体の画像の中心からオフセットされている。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記画像は、前記合成ホログラムの位相分布への線形位相成分の導入によってオフセットされている。
【0016】
本発明は更に、直接視可能なパターンに重ね合わせられた合成ホログラムを製作する方法であって、
前記合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
前記パターンの画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
前記合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
前記開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
前記第1の振幅マトリックスA1及び前記第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリクスA'にまとめるステップ、
前記第1の位相マトリックスP1及び前記第2の位相マトリックスP2を単一のマトリクスP'にまとめるステップ、及び
先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
を有することを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光ビームの経路に置かれたホログラムを示す図である。
【図2】合成ホログラムの一例、及び合成ホログラムの読取りを示す図である。
【図3A】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3B】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3C】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3D】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3E】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図3F】本発明の実施形態に従ってホログラムと可視画像とを重ね合わせる方法を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態に従って符号化されたホログラムを示す図である。
【図4B】一部が正であり、残りが負である5×5のセルのグループを詳細に示す図である。
【図5】反転した各セルの位相シフトf0がπとは異なる場合における読取りモードを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従ってホログラムを読取るための組立体を示す図である。
【図7】走査レーザ型の書込み装置を用いた、一方のセルが正であり、他方のセルが負である2つのセルの製作の一例を示す図である。
【図8】観察されたホログラム画像(ここでは数字「38」)を示す図である。
【図9A】ホログラムの再構成の一例を示す図である。
【図9B】ホログラムの再構成の一例を示す図である。
【図10A】オフセットの方法を示す図である。
【図10B】オフセットの方法を示す図である。
【図10C】オフセットの方法を示す図である。
【図11】重ね合わせられた階調パターンを形成可能な方法を示す図である。
【図12】重ね合わせられた階調パターンがデータマトリックスタイプの画像である例を示す図である。
【図13A】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図13B】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図14A】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図14B】ホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの両方がデータマトリックスに相当する場合におけるホログラム及び重ね合わせられた階調パターンの例を示す図である。
【図15A】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図15B】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図15C】シミュレーションによって観察された結果を示す図である。
【図16】重ね合わせられたデータマトリックスを有するデータマトリックスホログラムを示す図である。
【図17A】実験結果を示す図である。
【図17B】実験結果を示す図である。
【図17C】実験結果を示す図である。
【図17D】実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明は、以下に述べられる合成ホログラムの特性の分析と特定の使用とに基づいている。
【0020】
図1は、ビームE の経路に置かれたホログラム1 を示している。ビームE はホログラム1 によって回折し、ビームB を生成する。このビームB は、フーリエ共役(the Fourier conjugation)を可能にするレンズ又は別の光学システム2 によって回収される。レンズの焦点面では、ホログラム1 の出力で生成されたビームB のフーリエ変換に相当する画像3 が得られる。
【0021】
合成ホログラフィは、コンピュータにより生成される画像3 を得るためにビームB を生成することが可能な技術である。
【0022】
r が動径座標の単一性ベクトルを示し、ビームE 及びビームB が以下の式により夫々表される場合、
【0023】
【数1】
【0024】
これらの式の数学的解答は、以下の式(1)によって与えられる伝達関数H の計算とみなされる。
【0025】
【数2】
【0026】
残りの説明では、ビームE が1に略等しいように波A が平面であり均一であると仮定される。実際には、式(1)を完全に満たすことは不可能である。入射波の位相及び振幅の両方を符号化することが可能な伝達要素を製作することが可能である必要がある。この制約を取り除くために、多くの方法が開発されている。
【0027】
伝達関数H のセルへの分割を備えており、1966年にブラウン(Brown )及びローマン(Lohmann )によって説明された合成ホログラム生成法「2値マスクを用いた複雑な空間フィルタリング(Complex Spatial Filtering with Binary Masks)」,応用光学(Appl. Opt.),第5版,p.967 −969 が本明細書で考慮される。セルは夫々、異なる伝達特性又は反射特性を有する2つの領域を備えている。例えば、セルは夫々不透明な部分及び透明な部分(又は反射する部分及び透明な若しくは不透明な部分)を備えている。2つの部分の相対的な大きさが振幅に相当し、セルの中心に対する中心部分のオフセットが位相に相当する。
【0028】
図2は、合成ホログラム1 、及び読取り原理を示している。合成ホログラム1 は、ステップpのセルマトリックスから形成されており、光が回折させられる開口4 を複数有している。開口4 は全て方向xに沿って並んでいる。生成されるべき波の位相が、この方向xに沿って符号化され、セルの高さの半分のオフセット(p/2)が位相シフトπに相当する。
【0029】
このようにして2つのビーム6a,6b が、回析格子の次数+1及び次数−1に対応して方向yに沿って左右に生成される。2つのビーム6a,6b は、フーリエレンズを通過した後、ビームの次数0の中心点5 に対して対称的な2つの光点を与える。
【0030】
垂直方向(方向x)に沿って、ホログラムの次数+1及び次数−1に対応して上部及び底部に2つの回折ビーム7a,7b が生成される。これらの回折ビーム7a,7b は、フーリエレンズを通過した後、所望の画像3及びこの画像3の共役体を再形成する。ホログラムサンプリングによって生成される付加画像がこれらの画像の周りに分配される。
【0031】
従って、読取りは、コヒーレントレーザタイプのビームでホログラムを照射し、フーリエレンズによって回折した波を回収し、所望の画像領域をカメラで検出することにより行われる。
【0032】
ホログラムは、
1.画像をコンピュータにより製作するステップ、
2.画像のフーリエ変換(FT)を行うステップ、
3.開口サイズのマトリックスを生成することにより前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
4.開口オフセットマトリックスを生成することにより位相を符号化するステップ、
5.先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
により製作される。
【0033】
本説明は、1966年にブラウン及びローマンによって開発された符号化の場合を考慮する。他のセル符号化法が同様に適用される。干渉縞法が使用されてもよい。
【0034】
本発明は、ホログラム読取り特性の分析に基づいている。
【0035】
既に述べられた図1は、フーリエ光学を用いたホログラムの読取りを示している。平面波E がホログラムH を照射する。フーリエレンズ2 が、ホログラムH によって生成された波のフーリエ変換を生成する。Iaで示される画像3 が得られる。物理的なホログラムを記述している透過関数H が考慮される。透過関数H は、0又は1に等しい値の分散の形態で説明され得る2値関数である。値0は不透明領域又は非反射領域に対応し、値1は透過領域又は反射領域に対応する。ホログラフィ処理は、以下の式によって数学的に説明され得る。
Ia = FT(EH) ×FT(EH)*
【0036】
回析原理に一般的なホログラムの固有の特性が、負のホログラムの回析に関連する。負のホログラムは、反転した透過部分及び不透明な部分を有するホログラムである。ホログラムの負の表示は、1−H で数学的に示され得る。セルの各々がπ位相シフトされているこのような負は、読取りモードで対応する正のホログラムの画像Iaと同一の画像Ibを与えることが示され得る。
【0037】
一般的に、正のモードにおけるホログラムの態様は(黒領域よりはるかに多い白領域を有する)明画像である一方、負のモードにおけるホログラムの態様は(白領域よりはるかに多い黒領域を有する)暗画像である。ここでは、正のモードにおけるセル及び負のモードにおけるセルを同一のホログラムに混合する。このため、負のモードにおけるセルのパターンに対応する直接視可能な画像が生成され得る。
【0038】
図3A乃至3Fは、本明細書で使用される一般的な原理を示している。図3A(画像1)は、一例として不図示の画像のホログラムの形状を示している。図3B(画像2)は、このホログラムをπ位相シフトした負の画像を示している。図3C(画像3)は、ここでは文字Aであるパターンを示しており、パターンは、可視であることが望まれており、ホログラムに重ね合わせられる。
【0039】
画像3は、図3D(画像4)に示されているように画像1から削除される。画像3は、図3E(画像5)に示されているように画像2から抽出される。図3F(画像6)に示されているように、画像4及び画像5はまとめられて画像6が与えられる。
【0040】
図示されているように、文字Aが、最初のホログラムのいかなるデータも失うことなく画像6に現われる新しいホログラムH'が得られる。
【0041】
再構成において、位相シフトされ反転されたホログラムH'によって生成された画像が、ホログラムH によって生成された画像と数学的に同一である。
【0042】
図4Aは、保持された符号化の場合における本発明の実施形態に係るホログラムを示している。図4Bは、直接視可能なパターンの輪郭における、一部が正であり、残りが負である5×5のセルのグループの詳細を示す図である。開口は、セル全体の大きさと比較して一般的に小さく、重ね合わせられた画像の非常に良好な対比が巨視的な視覚レベルで得られる。
【0043】
本発明の実施形態に係る合成ホログラムは、
1.合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
2.直接視のための画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
3.合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
4.開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
5.開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
6.開口サイズのマトリックスA と直接視のための画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
7.開口オフセットマトリックスP と直接視のための画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
8.開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と直接視のための画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
9.位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と直接視のための画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
10.第1の振幅マトリックスA1及び第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリックスA'にまとめるステップ、
11.第1の位相マトリックスP1及び第2の位相マトリックスP2を単一のマトリックスP'にまとめるステップ、
12.先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
により製作される。
【0044】
組み合わせた(正及び負の)ホログラムが最初のホログラムと同一の画像を与えるために、負のホログラムはπ位相シフトされる必要があることを既に説明している。このために、ホログラムの各セルをπ位相シフトする。他の実施形態が実施されてもよい。
【0045】
一例として、図5は、反転した各セルの位相シフトf0がπとは異なる読取りの場合を示している。この場合、重ね合わせられた画像のレベルで入射ビームに位相シフトf1を生成する遅延板8 が、蓄積された位相シフトが以下の式(2)に従うように使用される。
f1 + f0 = ±πmodulo2π (2)
【0046】
式(2)が全ての関数定義ポイントで真のままであるならば、位相シフトf1及び位相シフトf0の分散は一定でなくてもよい。
【0047】
πとは異なる位相シフトの使用は、ホログラムの読取りが位相キーの使用を必要とする点で有利になり得る。
【0048】
ホログラムの読取りのための組立体
図6は、本発明に係るホログラムの読取りのための組立体を示している。このために、重ね合わせられる画像の付加的な結像部分を備えたフーリエ光学読取り組立体が使用されている。図6はホログラム反射読取り組立体を示している。
【0049】
空間フィルタ11を備えることが可能な伸縮式システム10によって構成されたレーザ9 が使用されている。ホログラムの大きさ程度の直径を有するビームが、半反射立方体12に達する。透過したビームは任意には遅延板8 と交差し、その後ホログラム1 を照射する。
【0050】
反射によって回折したビームは、遅延板8 と交差して戻る。遅延板8 は、この前後への移動に適した位相シフトを有する(実際には、遅延板8 によって引き起こされる位相シフトは必要な位相シフトの半分である)。その後、ビームは半反射立方体12と交差し、回折したビームの一部がフーリエ光学体2 に送られ、その後画像がアレイセンサ14上に形成される。
【0051】
入射ビームの一部がホログラム1 と交差する。光学体13が、ホログラム面とアレイセンサ15の面との結像関係を確保し、アレイセンサ15の面にホログラムと重ね合わせられた画像を形成する。コヒーレントモードの結像に固有の障害を回避するために、第2のインコヒーレント光源が、ホログラムに重ね合わせられた画像をアレイセンサ15に表示するために使用されてもよい。
【0052】
ホログラムの製作
本発明に係るホログラムの製作は特定の技術的問題を引き起こさない。ホログラムのセルは、使用されるリソグラフィツール(電子ビーム、レーザ書込み・・・)の書込み解像度に対応するサブ部分に分割される。
【0053】
図7は、走査レーザ型の書込み装置を用いた、一方のセルが正であり、他方のセルが負である2つのセルの製作の一例を示す図である。両方のセルは開口4a,4b を有する。正のセル又は負のセルに開口を形成するために、レーザは走査16中にオンオフされる。図7は、開口が隣接するセルを占めるようにオフセットされている開口の特定の場合を示している。この場合、同一の開口が、図7に示されているように負のモード及び正のモードの両方で処理され得る。
【0054】
走査ステップΛが、書込み時間と適切な開口の鮮明度とを考慮し最適であるように選択される。
【0055】
ホログラムの設計
図1によって、合成ホログラム回析処理の動作が示され得る。図8は、所望の画像3(ここでは数字38)の再構成に関する影響を詳細に示している。
【0056】
再構成された画像は、読取り波長λ、セル鮮明度ステップp 及び読取りに使用されるレンズの焦点距離f である3つのパラメータによって設定される距離D を隔てて光軸28の下方にある。距離D は、以下によって与えられる。
D = λ.f/p
【0057】
距離D は更に画像の大きさに相当する。
【0058】
ホログラムのサンプリングされた特徴によって引き起こされる複製が、中央の画像の周りに分配される。このような複製の可視性は、中央の画像への距離が増加するにつれて減少する。このような放射状の重み付け29は開口の回折効率によって決まる。
【0059】
読取り光学体の開口数による別の重み付け30が、この放射状の重み付け29に追加される。共役順序は、説明を簡略化するために図8に示されていない。
【0060】
ホログラムを最適に選択するために再構成を理解することが重要である。
【0061】
ホログラムによって乱されない照射ビームの大部分が光軸28のレベルに集中する。これがレンズ合焦点である。
【0062】
追加情報が、画像Imによって定められ重ね合わせられたパターンの形態でホログラムに追加される。ホログラムの読取りにより2つのフーリエ変換が生成される。第1のフーリエ変換はホログラムH に相当し、ホログラムの次数+1及び次数−1に分配される。第2のフーリエ変換は画像Imのフーリエ変換に相当する。フーリエ変換が設計に起因して角度を保持しないので、フーリエ変換は光軸28に集中する。
【0063】
図9Aは、その複製に囲まれた数字38を形成するホログラムH のフーリエ変換FTを示す再構成の一例を示しており、図9Bは、光軸に集中した画像のフーリエ変換FTを示す再構成の一例を示している。図9A及び図9Bの場合には、重ね合わせられた画像がデータマトリックスであり、重ね合わせられた画像のフーリエ変換FTが十字に分配される。
【0064】
図9Aは、所望の画像と重ね合わせられた画像のフーリエ変換FTとの再構成面での重ね合わせを示している。再構成はこのようにして妨げられる。この問題を解決するために、妨げられる領域の外側に所望の情報をオフセットする解決策がある。これが、図9Bに示されている。情報が再構成中心から移されるので、2つのフーリエ変換FTの重ね合わせの抑制が、画像可視性を低減して行なわれる。このようにして折衷案が採用される。
【0065】
図10A 乃至10C はオフセットの原理を示している。以下の2つの解決策が、オフセットdx及びオフセットdyを生成するために利用可能である。
− 画像の図案上で画像をオフセットする
− 計算の際にホログラムの位相上に線形位相シフトを導入する
【0066】
2つの解決策は同等であるが、第2の解決策が簡単なために好ましい。第2の解決策は、以下の式に表現されるフーリエ変換FTの固有の特性を利用している。
【0067】
【数3】
【0068】
再構成を最適化するために、画像の有効領域が、図10A 乃至10C に示されているように再構成されるべき画像に集中してもよい。
− 図10A は所望の画像を示している。
− 図10B は、ホログラムによって符号化されるべき画像を示しており、所望の画像が全体の画像の一部になる。
− 図10C は、ホログラムによって符号化されるべき画像を示しており、有効領域が再構成を容易にするために方向x及び方向yの両方でオフセットされている。
【0069】
重ね合わせられる画像の性質
図3A乃至3Fは、本明細書に述べられている方法の一般的な図を示している。図3Cは、合成ホログラムに重ね合わせられる文字を示している。この場合、白黒の画像が合成ホログラムに重ね合わせられる。
【0070】
しかしながら、重ね合わせられる画像の性質は異なってもよい。特に、様々な階調の画像が考慮されてもよい。このために、セルの2つのレベルが図11に示されているように定められてもよい。セル31がホログラム鮮明度セルである。ホログラム情報を符号化する開口4 がセル31に挿入されている。
【0071】
セル32が、重ね合わせられる画像のスクリーニング鮮明度セルである。セル32の大きさは、セル32の大きさの1以上の倍数Nによって与えられる。図示されている場合には、倍数は7に等しい。
【0072】
階調画像は、N×N画素のセル上にスクリーニングによって定められる。図面の場合には、倍数Nは7に等しく、画像は少なくとも11階調に亘って符号化され得る。
【0073】
見掛け上の階調は、暗いセル31の様々なグループの大きさによって与えられる。暗いセル31がセル32全体を覆う場合、この画像領域は黒く見える。逆に、暗いセル31がセル32に存在しない場合、この画像領域は見る人によって白いと認識される。中間では、画像が一定の距離から見られるとき、暗いセル31をセル32に入れることにより、階調の錯覚が見る人に与えられる。これがスクリーニングと呼ばれ、印刷では広く使用されている。
【0074】
本発明の適用は、データマトリックス画像の重ね合わせに関する。この場合、データマトリックスの画素は、図12に示されているようにセル32と同様である。
【0075】
データマトリックスの利点は、重ね合わせられる画像が高度に構造化されているということである。本明細書に述べられている技術を使用しない場合、基本的なホログラムの再構成は非常に困難である。
【0076】
この場合にも、位相キーの使用は特に適切である。
【0077】
見掛け上の階調は、暗いセル31の様々なグループの大きさによって与えられる。暗いセル31がセル32全体を覆う場合、この画像領域は黒く見える。逆に、暗いセル31がセル32に存在しない場合、この画像領域は見る人によって白いとして認識される。中間では、画像が一定の距離から見られるとき、暗いセル31をセル32に入れることにより、階調の錯覚が見る人に与えられる。これがスクリーニングと呼ばれ、印刷で広く使用されている。
【0078】
シミュレーション
本明細書に述べられている方法及び装置の利点を示すために、2倍のデータマトリックスの符号化の場合を以下に説明する。図13A 及び13B と図14A 及び14B とは、使用される画像及びホログラムを示している。
【0079】
図13A では、黒画素及び白画素のランダムマトリックスがシミュレートされている。データマトリックスの大きさは30×30画素である。最終的な画像の大きさは、600 ×600 画素であり、つまり、倍数Nは20に等しい。
【0080】
図13B は、図13A の画像のフーリエ変換FTの振幅を示している。上述したように、十字状の回折パターンが得られる。
【0081】
同一のデータマトリックスがホログラムの符号化された画像を生成するために使用される。このために、データマトリックスは、大きさが600 ×600 画素である画像内で240 ×240 画素の領域を覆うためにサンプリングされる。図14A は、符号化のために使用される画像を示している。図14B は、フーリエ変換FTの振幅を示している。本例の場合には、画像の位相のスクランブル処理がフーリエピークを減少させるために使用されている。これは、合成ホログラフィの従来の技術である。シー.ビー.バークハルド(C.B.Burckhardt)著,「データマスクのフーリエ変換ホログラムの記録のためのランダム位相マスクの使用(Use of a Random PhaseMask for the Recording of Fourier Transform Holograms of Data Masks)」,応用光学(Appl.Opt.),第3版,1970年,p.695 −700 参照。フーリエ変換FTをより容易に視認するために、画像の対比が図13B 及び14B で増加している。
【0082】
その後、ホログラムの再構成が、4μm のホログラムステップでの650 nmの読取りの場合でシミュレートされている。図14A に示された画像の符号化が、193 の振幅値と80の位相値とに亘って行なわれる。
【0083】
図15A 乃至15C は、シミュレーションによって観察された結果を示している。
【0084】
図15A は、重ね合わせられた画像によって引き起こされる乱れが、反転した画素の位相シフトによって調整されている完全な読取りの場合を示している。これが本発明の場合である。図15A は、白画素で鮮明度が僅かに変化しているものの、結果が図14A の原図に非常に近いことを示している。
【0085】
図15B は、重ね合わせられた画像の画素がフーリエ変換FTの振幅値を削除している場合を示している。これが先行技術の場合である。上述したように、マトリックスの検出は妨げられているが、高度な画像処理を用いることで未だ可能である。
【0086】
図15C は、重ね合わせられた画像によって引き起こされる妨げが反転した画素の位相シフトによって調整されていない場合を示している。これは、位相キーを用いた読み取られるべきホログラムの大きさの決定に対応し、位相キー無しで読取りを行っている。この場合にはマトリックスの再構成が全く不可能であることが理解され得る。従って、本明細書の特許請求の範囲に記載されているような位相キーの使用は、模倣の抑制に非常に効果的な方法である。
【0087】
尚、シミュレーションは、回折効率の放射状の変化による重み付けの現象を考慮していない。図14A の画像は、単純化のために図10C に示されているようにオフセットされていない。
【0088】
このシミュレーションは、本明細書に提示されている方法が先行技術に対して明確な利点を導くことを明瞭に示している。
【0089】
実際的な再読取り組立体では、寄生ノイズが必然的に生じる。従って、検出される信号は変化する。そのため、図15B によって示される解決策は、符号化された画像の回復には非効率的である。
【0090】
実験結果
提示された方法の利点を明確に表すことが可能な実験結果を以下に示す。
【0091】
図16は、重ね合わせられたデータマトリックスを有するホログラムを示す図であり、図16の右上に、この図のある領域を拡大したものが示されている。データマトリックスは明瞭に示されている。写真は、化学的なエッチング前のPtOx層の照射後に顕微鏡を用いて得られている。化学的なエッチング後、対比が更に強調される。
【0092】
実証の必要性のために、4つのホログラムが図15A 乃至15C との比較のためにエッチングされている。ホログラムは、図6の組立体と同様の組立体を用いて反射で読み取られる。
【0093】
図17A は、重ね合わせられた画像がない標準的なホログラムの場合を示している。データマトリックスの検出は、スペックルノイズにもかかわらず効率的に行われているようである。
【0094】
図17B は、図15A の場合を示している。これは、本発明に従って重ね合わせられた巨視的なデータマトリックスを有するデータマトリックスホログラムであり、正のセル及び負のセルに位相補正して示されている。図17A に対する信号の変化が観察され得るが、データマトリックスの検出は、高度な画像処理を用いることで未だ可能である。図17A の結果と図17B の結果との間の変化は、負のセルにおける小さなパターンの解像度の問題による可能性がある。
【0095】
図17C は、先行技術の場合を示している。データマトリックスの画素の一部のみが示されている。データマトリックスは未だ見られ得るが、データマトリックスの画素の識別は図17B よりも困難である。
【0096】
最後に、図17D は、位相補正されていない重ね合わせられた画像の場合(図15C の場合)を示している。データマトリックスは識別され得ない。位相キーの欠如に相当するこの場合は、位相キーシステムに関連付けられた本発明の利点を示している。
【0097】
様々な変形例を備えた様々な実施形態が上述されている。尚、当業者は、いかなる進歩性も示すことなくこれらの様々な実施形態及び変形例の様々な要素を組み合わせてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明部分及び暗部分を夫々有している複数の符号化セルのアレイから形成された第1の画像の合成ホログラムにおいて、
該合成ホログラムに重ね合わせられ、前記合成ホログラムの一部に形成された第2の可視画像を備えており、該第2の可視画像では、前記合成ホログラムの明部分及び暗部分が反転しており、前記第1の画像の合成ホログラムの残りの部分に対してオフセット値によって調整された位相を有することを特徴とする合成ホログラム。
【請求項2】
前記オフセット値は一定であり、πに等しく、前記合成ホログラムの光学的な再構成が妨げられず、前記第2の可視画像は直接観察され得ることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項3】
前記オフセット値は一定であり、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記第2の可視画像の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行われていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項4】
前記オフセット値は、前記第2の可視画像の様々な領域で一定でなく、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記第2の可視画像の様々な領域の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行なわれていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項5】
前記第2の可視画像は、スクリーニングセルに基づくスクリーニングにより得られた階調画像であり、前記スクリーニングセルの大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項6】
前記第2の可視画像は、黒画素及び白画素のランダムマトリックス又は半ランダムマトリックスであり、前記第2の可視画像の画素の大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの1以上の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項7】
前記合成ホログラムによって符号化された第1の画像の有効領域が減少しており、該有効領域は、前記有効領域の幅の半分と少なくとも等しい距離だけ全体の画像の中心からオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項8】
前記第1の画像は、前記合成ホログラムの位相分布への線形位相成分の導入によってオフセットされていることを特徴とする請求項7に記載の合成ホログラム。
【請求項9】
直接視可能なパターンに重ね合わせられた合成ホログラムを製作する方法であって、
前記合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
前記パターンの画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
前記合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
前記開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
前記第1の振幅マトリックスA1及び前記第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリクスA'にまとめるステップ、
前記第1の位相マトリックスP1及び前記第2の位相マトリックスP2を単一のマトリクスP'にまとめるステップ、及び
先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
を有することを特徴とする方法。
【請求項1】
明部分及び暗部分を夫々有している複数の符号化セルのアレイから形成された第1の画像の合成ホログラムにおいて、
該合成ホログラムに重ね合わせられ、前記合成ホログラムの一部に形成された第2の可視画像を備えており、該第2の可視画像では、前記合成ホログラムの明部分及び暗部分が反転しており、前記第1の画像の合成ホログラムの残りの部分に対してオフセット値によって調整された位相を有することを特徴とする合成ホログラム。
【請求項2】
前記オフセット値は一定であり、πに等しく、前記合成ホログラムの光学的な再構成が妨げられず、前記第2の可視画像は直接観察され得ることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項3】
前記オフセット値は一定であり、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記第2の可視画像の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行われていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項4】
前記オフセット値は、前記第2の可視画像の様々な領域で一定でなく、πとは異なり、前記合成ホログラムの光学的な再構成が、前記第2の可視画像の様々な領域の形状に応じて前記オフセット値のπを相補する位相シフトを導入する位相キーを用いて行なわれていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項5】
前記第2の可視画像は、スクリーニングセルに基づくスクリーニングにより得られた階調画像であり、前記スクリーニングセルの大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項6】
前記第2の可視画像は、黒画素及び白画素のランダムマトリックス又は半ランダムマトリックスであり、前記第2の可視画像の画素の大きさは、前記合成ホログラムのセルの大きさの1以上の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項7】
前記合成ホログラムによって符号化された第1の画像の有効領域が減少しており、該有効領域は、前記有効領域の幅の半分と少なくとも等しい距離だけ全体の画像の中心からオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の合成ホログラム。
【請求項8】
前記第1の画像は、前記合成ホログラムの位相分布への線形位相成分の導入によってオフセットされていることを特徴とする請求項7に記載の合成ホログラム。
【請求項9】
直接視可能なパターンに重ね合わせられた合成ホログラムを製作する方法であって、
前記合成ホログラムのための画像Ihをコンピュータにより製作するステップ、
前記パターンの画像Imをコンピュータにより製作するステップ、
前記合成ホログラムのための画像Ihのフーリエ変換(FT)を行うステップ、
開口サイズのマトリックスA の生成により前記フーリエ変換(FT)の振幅を符号化するステップ、
開口オフセットマトリックスP の生成により前記フーリエ変換(FT)の位相を符号化するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の振幅マトリックスA1を生成するステップ、
前記開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imとの交差に対応する第1の位相マトリックスP1を生成するステップ、
前記開口サイズのマトリックスA の反転した表示つまり負の表示と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の振幅マトリックスA2を生成するステップ、
位相シフトf0が行われた開口オフセットマトリックスP と前記パターンの画像Imの相補形との交差に対応する第2の位相マトリックスP2を生成するステップ、
前記第1の振幅マトリックスA1及び前記第2の振幅マトリックスA2を単一のマトリクスA'にまとめるステップ、
前記第1の位相マトリックスP1及び前記第2の位相マトリックスP2を単一のマトリクスP'にまとめるステップ、及び
先の2つのマトリックスによって定められた大きさ及び位置を有する開口のマトリックスを生成して基板のリソグラフィを行うステップ
を有することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A−4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A−4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【公表番号】特表2013−506880(P2013−506880A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532649(P2012−532649)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052088
【国際公開番号】WO2011/042649
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052088
【国際公開番号】WO2011/042649
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】
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