説明

可逆変色性スクラッチ積層体

【目的】 優れた装飾効果を付与でき、スクラッチ層の不用意な擦過剥離を防止できると共に、一度スクラッチ層を剥離した後、再びスクラッチ層を偽造することが困難な可逆変色性スクラッチ積層体を提供する。
【構成】 支持体2表面の少なくとも一部にスクラッチ層5を設け、該スクラッチ層5上の一部又は全面に可逆変色層6を積層してなる可逆変色性スクラッチ積層体1。前記可逆変色層6のJIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆変色性スクラッチ積層体に関する。更に詳細には、スクラッチ前の状態で偽造等の不正を防止できる、擦過により剥離可能なスクラッチ層を備えた可逆変色性スクラッチ積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、支持体に印刷された数字や図柄を剥離可能なスクラッチ層で隠蔽してなるスクラッチ積層体がクジ等のカードやシールに広く用いられている。
また、前記スクラッチ積層体に装飾効果を付与するために、スクラッチ層上に白色や中間色の不透明インキ層を形成したり、更に前記不透明インキ層上に文字や像を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−197969号公報
【0003】
前記スクラッチ積層体は、スクラッチ層上に不透明インキ層を形成することで、スクラッチ層に装飾性を付与することや、スクラッチ層の不用意な擦過剥離を防止することができるものである。
しかしながら、前記不透明インキ層を形成したものは、単調な色彩しか与えることができないと共に、スクラッチ層を剥離して隠蔽されていた数字や図柄を確認した後、隠蔽用塗料の塗布や転写により再びスクラッチ層を設けることが可能であるため、容易に偽造される可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題を解決するものであって、優れた装飾効果を付与でき、スクラッチ層の不用意な擦過剥離を防止できると共に、一度スクラッチ層を剥離した後、再びスクラッチ層を偽造することが困難な可逆変色性スクラッチ積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支持体表面の少なくとも一部にスクラッチ層を設け、該スクラッチ層上の一部又は全面に可逆変色層を積層してなる可逆変色性スクラッチ積層体を要件とする。
更に、前記可逆変色層のJIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hであること、前記可逆変色層上にJIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hであるトップコート層を設けることを要件とする。
更には、前記可逆変色層が、可逆熱変色性材料を含有すること、前記可逆変色層が、可逆光変色性材料を含有すること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、スクラッチ層を含む積層体全体に優れた装飾効果を付与でき、スクラッチ層の不用意な擦過剥離を防止できると共に、一度スクラッチ層を剥離した後に再びスクラッチ層を偽造することが困難な、偽造防止効果に優れた可逆変色性スクラッチ積層体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の可逆変色性スクラッチ積層体は、数字や図柄等の情報を記録をした支持体や、透明性を有する支持体の表面に、擦過により剥離削除可能な隠蔽性を有するスクラッチ層を設け、該スクラッチ層上の一部又は全面に可逆変色層を積層してなる可逆変色性スクラッチ積層体である。
【0008】
前記支持体としては、紙、織布、不織布、プラスチックフィルム、合成紙等の不透明支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンイソフタレート共重合体フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、パラフィン紙、薄葉紙等の透明支持体、或いはこれらを組み合わせた複合シート等を用いることができる。
特に透明支持体は、透明性を維持するために、JISP8138に準拠した方法で測定した不透明度が40%以下であることが好ましい。
【0009】
また、前記支持体には、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の印刷、静電記録、インクジェット記録、熱転写記録等の方法を用いて文字、数字、図柄等の情報を記録することができる。
これらの情報記録面には、スクラッチ層を確実に擦過剥離するため、或いは記録部分を保護するために必要に応じて保護層を設けることができる。前記保護層には、各種離型剤、撥水剤、潤滑剤を主成分として含有することができる。
前記保護層は、紙等の支持体に文字、数字、図柄等の各種情報を記録した後に設けることや、支持体に保護層を設けた後、保護層上に各種情報を記録することができる。前記保護層は水性塗工、溶剤塗工、印刷等により設けることが可能である。
【0010】
前記支持体上に形成されるスクラッチ層は、擦過により削除可能な隠蔽性を有する層であって、支持体に記録された情報が擦過前に判別できないように設ける必要がある。
具体的には、隠蔽効果のある有機顔料、無機顔料、金属等、或いは、着色効果のある顔料、染料等を一種又は二種以上併用すると共に、これらを結着するバインダーを含有するものである。
【0011】
隠蔽効果のある有機顔料、無機顔料としては、例えば、メラミンホルマリン樹脂、有機中空顔料、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、尿素−ホルマリン樹脂等が例示できる。隠蔽効果のある金属としては、例えば、金、銀、アルミ、クロム等が例示できる。
着色効果のある顔料、染料としては、例えば、鉄黒、カーボンブラック、黄色酸化鉄、黄鉛、カドミウムイエロー、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、モリブデートオレンジ、ピラゾロンオレンジ、べんがら、カドミウムレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、マンガンバイオレット、メチルバイオレット、ジオキサジンバイオレット、群青、紺青、コバルトブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、クロムグリーン、ジンクグリーン酸化クロム、チオインジブ、ジオキサジン、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料等の各種顔料、インジゴ染料、アゾメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、アントラキノン染料等の各種染料が例示できる。
更には、熱変色性材料や光変色性材料を添加することによって色変化を付与することもできる。
【0012】
前記バインダーとしては、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸とエチレン、スチレン等の共重合体、水溶性アクリル樹脂、変性ポリビニルアルコール、などの水溶性高分子、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体等のラテックス等が挙げられる。
【0013】
更に、必要に応じて各種添加剤を添加できる。例えば、スティッキング防止の目的で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ステアリン酸アミド、カスターワックスなどのワックス類等を用いたり、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の分散剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール化合物等の酸化防止剤、更には界面活性剤、蛍光顔料等を添加することができる。
【0014】
また、前記スクラッチ層には、支持体との剥離性を向上させる高分子層を下層に設けたり、遮蔽性を向上させる金属光沢層を上層に設けることができる。
前記高分子層には、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂等が主成分として構成される。
前記金属光沢層は、金、銀、アルミ等の金属膜を貼り合わせたり、蒸着等の方法により設けられるほか、金属、金属酸化物、パール顔料等の光輝性材料をバインダーと共に塗布することで得られる。
【0015】
次に、前記スクラッチ層上に積層される可逆変色層について説明する。
前記可逆変色層は、外的要件により可逆的に色変化する材料を前述のバインダーと共に含む層であり、可逆熱変色層や可逆光変色層が例示できる。
前記可逆変色層のうち可逆熱変色層は、層中に可逆熱変色性材料を含むものであり、前記材料は電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる反応媒体の三成分を含む組成物が好適に用いられる。具体的には、特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特開平7−186540号公報に記載されている可逆熱変色性組成物が挙げられる。
また、本出願人が提案した特公平1−29398号公報に記載した如き、温度変化による色濃度−温度曲線に関し、3℃以下のヒステリシス幅をもつ、高感度の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、変化前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要する熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、所謂、温度変化による温度−色濃度について小さいヒステリシス幅(ΔH)を示して変色するタイプである。
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報に記載されている、大きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性組成物、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色するタイプの変色材であり、低温側変色点と高温側変色点の間の常温域において、前記低温側変色点以下又は高温側変色点以上の温度で変化させた状態を記憶保持できる特徴を有する可逆熱変色性組成物も有効である。
【0016】
又、加熱発色型の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案による、電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号公報)を挙げることができる。更には、没食子酸エステル等を適用した系(特開2003−253149号公報)等を応用できる。
【0017】
前記した可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包して使用するのが好ましい。それは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定なマイクロカプセル顔料を構成でき、粒子径0.1〜100μm、好ましくは3〜30μmの範囲が実用性を満たす。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0018】
前記可逆変色層のうち可逆光変色層は、紫外線の照射により可逆的に変色するフォトクロミック材料(フォトクロミック化合物)を層中に含むものであり、汎用のものが適用できる。
【0019】
前記フォトクロミック化合物としては、スピロピラン系化合物、フルギド系化合物、ジヒドロピレン系化合物、インジゴ系化合物、アジリジン、多環芳香族系化合物、アゾベンゼン系化合物、サリチリデンアニリン系化合物、キサンテン系化合物、スピロオキサジン系化合物、ジアリールエテン系化合物、ナフトピラン系化合物、ナフトオキサジン系化合物等が例示できる。
前記フォトクロミック化合物を前述のマイクロカプセルに内包して使用することも可能であり、特に、スピロピラン系化合物やスピロオキサジン系化合物を用いる場合、これらのフォトクロミック化合物と共に、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーを内包することが好ましい。
【0020】
前記可逆熱変色性組成物やフォトクロミック化合物又はそれらを内包したマイクロカプセル顔料をビヒクル中に分散したインキや塗料を用いて、従来より公知の方法により可逆変色層を形成できる。
【0021】
更に、前記可逆熱変色性組成物やフォトクロミック化合物又はそれらを内包したマイクロカプセル顔料と共に、汎用の染料、顔料、光輝性顔料をインキや塗料に分散して用いることもできる。
前記光輝性顔料としては、天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ等の表面に、チタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、鉄等の金属酸化物によるコーティングを施した金属光沢顔料や、コレステリック液晶型光輝性顔料等が用いられる。
更には、前記スクラッチ層に適用可能な添加剤を用いることも可能である。
【0022】
前記可逆変色層やスクラッチ層の塗工量としては、乾燥塗工量として好ましくは1.0〜40g/m、より好ましくは2.0〜25g/mの範囲である。前記範囲より少ないと下層の隠蔽や変色効果が不十分となり、前記範囲より多いと擦過により剥離し難いものとなる。
【0023】
また、前記可逆変色層は、JIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hの範囲(即ち、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H)にあることが好ましい。前記範囲内で設けることで、使用時に擦過(スクラッチ)した際、スクラッチ層と共に確実に剥離することができ、非使用時には、不用意な剥離を防止できるものとなる。
特に、前記可逆変色層の鉛筆硬度は、下層に設けられるスクラッチ層の鉛筆硬度よりも高く設定することが好ましい。そうすることで、上層の可逆変色層を擦過剥離した際に、スクラッチ層も確実に剥離することができる。
【0024】
更に、必要に応じて、前記可逆変色層の表面には、長期間の使用や擦過等による剥離や傷つきを防止する目的で、透明樹脂や着色透明樹脂等からなるトップコート層を設けることができる。
前記トップコート層には、隠蔽性の向上や光輝性を付与する目的で、前述の光輝性顔料を含有したり、耐光性を付与する目的で紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、滑剤等の添加剤を適宜配合できる。
また、前記トップコート層の乾燥塗工量は0.2〜5.0g/mの範囲が好ましい。
【0025】
前記トップコート層としては、JIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hの範囲にあることが好ましい。前記範囲内で設けることで、使用時に擦過(スクラッチ)した際、スクラッチ層、可逆変色層と共に確実に剥離することができ、非使用時には、不用意な剥離を確実に防止できるものとなる。
【0026】
本発明のスクラッチ積層体には、支持体のスクラッチ層を設けていない側の面上に粘着層を設けることができる。粘着層は感圧接着剤を主成分としており、感圧接着剤の例としては合成ゴム系エマルション型粘着剤、アクリル系エマルション型粘着剤、天然ゴム系溶剤型粘着剤、アクリル系溶剤型粘着剤、シリコン系溶剤型粘着剤が挙げられる。
【0027】
前記粘着層は、支持体に直接粘着液を塗布、乾燥して設けてもよいし、あらかじめ剥離紙に粘着液を塗布、乾燥した粘着層を支持体に張り合わせて設けてもよい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を示す。尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0029】
実施例1(図1参照)
支持体2となる厚さ250μmの白色PET製シート上にオフセット印刷機にて「当たり」の文字3を印刷し、更に印刷面の上にニス(東洋インキ社製、商品名:CKUスクラッチOPニス)を塗布して保護層4を設けてカード体とした。更に、前記保護層4上にスクラッチ用インキ(東洋インキ社製、商品名:SSロッテリーT銀)を用いてスクリーン印刷することにより、スクラッチ層5を積層して、文字3を隠蔽するスクラッチ積層体を得た。
次に、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン2部、ビスフェノールA4部、ミリスチルアルコール30部、カプリン酸ステアリル20部からなる熱変色性組成物をエポキシ樹脂/アミノ硬化剤による界面重合法により内包させた可逆熱変色性微小カプセル顔料と、エチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン/アルキド樹脂とからなるインキ組成物を、前記スクラッチ層5上に塗布することで膜厚20μmの可逆熱変色層61(可逆変色層6)を積層し、可逆変色性スクラッチ積層体1を得た。
得られた可逆変色性スクラッチ積層体1の可逆熱変色層61の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づく方法で試験したところ5Bであり、適度な擦過強度を有するものであった。
前記可逆変色性スクラッチ積層体1は25℃以下では黒色を呈し、25℃以上になると銀色に変化し、再び25℃以下に下げると黒色に復色する可逆的な熱変色性能を示した。
更に、前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、爪により可逆熱変色層61及びスクラッチ層5を擦過することにより、両層は確実に剥離でき、PET製シートに印刷された「当たり」の文字3を視認できるものであった。
【0030】
実施例2(図1参照)
支持体2となる厚さ250μmの白色合成紙上にオフセット印刷機にて「当たり」の文字3を印刷し、更に印刷面上にニス(東洋インキ社製、商品名:CKUスクラッチOPニス)を塗布して保護層4を設けてカード体とした。更に、前記保護層4上にスクラッチ用インキ(東洋インキ社製、商品名:SSロッテリーT銀)を用いてスクリーン印刷することにより、スクラッチ層5を積層して文字を隠蔽することでスクラッチ積層体を得た。
次に、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3重量部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティクA5、重量平均分子量317〕30重量部中に均一に加温溶解させて得られるフォトクロミック材料をエポキシ樹脂/アミン硬化剤による界面重合法により内包させた可逆光変色性微小カプセル顔料と、エチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン/アルキド樹脂とからなるインキ組成物を、前記スクラッチ層5上に塗布することで膜厚20μmの可逆光変色層62(可逆変色層6)を積層し、可逆変色性スクラッチ積層体1を得た。
得られた可逆変色性スクラッチ積層体1の可逆光変色層62の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づく方法で試験したところ5Bであり、適度な擦過強度を有するものであった。
前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、太陽光に晒す前は銀色であったが、太陽光に曝露したところ紫に変色した。変色後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の銀色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、爪により可逆光変色層62及びスクラッチ層5を擦過することにより、両層は確実に剥離でき、合成紙に印刷された「当たり」の文字3を視認できるものであった。
【0031】
実施例3(図2参照)
支持体2となる厚さ250μmの白色合成紙上にオフセット印刷機にて「当たり」の文字3を印刷し、更に印刷面上にニス(東洋インキ社製、商品名:CKUスクラッチOPニス)を塗布して保護層4を設けてカード体とした。更に、前記保護層4上にスクラッチ用インキ(東洋インキ社製、商品名:SSロッテリーT銀)を用いてスクリーン印刷することにより、スクラッチ層5を積層して文字を隠蔽することでスクラッチ積層体を得た。
次に、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン2部、ビスフェノールA4部、ミリスチルアルコール30部、カプリン酸ステアリル20部からなる熱変色性組成物をエポキシ樹脂/アミノ硬化剤による界面重合法により内包させた可逆熱変色性微小カプセル顔料と、赤色一般顔料と、エチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン/アルキド樹脂とからなるインキ組成物を、前記スクラッチ層5上に塗布することで膜厚20μmの可逆熱変色層61(可逆変色層6)を積層し、更に、可逆熱変色層61上に油溶性ポリスチレン樹脂からなるトップコート層7を膜厚20μmで設けることにより可逆変色性スクラッチ積層体1を得た。
得られた可逆変色性スクラッチ積層体1の可逆熱変色層61及びトップコート層7の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づく方法で試験したところHBであり、適度な擦過強度を有するものであった。
前記可逆変色性スクラッチ積層体1は25℃以下では黒色を呈し、25℃以上になると赤に変化し、再び25℃以下に下げると黒色に復色し可逆的な熱変色性能を示した。
更に、前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、爪によりトップコート層7、可逆熱変色層61及びスクラッチ層5を擦過することにより、三層は確実に剥離でき、合成紙に印刷された「当たり」の文字3を視認できるものであった。
【0032】
実施例4(図2参照)
支持体2となる厚さ250μmの白色PET製シート上にオフセット印刷機にて「当たり」の文字3を印刷し、更に印刷面上にニス(東洋インキ社製、商品名:CKUスクラッチOPニス)を塗布して保護層4を設けてカード体とした。更に、前記保護層4上にスクラッチ用インキ(東洋インキ社製、商品名:SSロッテリーT銀)を用いてスクリーン印刷することにより、スクラッチ層5を積層して文字を隠蔽することでスクラッチ積層体を得た。
次に、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3重量部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティクA5、重量平均分子量317〕30重量部中に均一に加温溶解させて得られるフォトクロミック材料を、エポキシ樹脂/アミン硬化剤による界面重合法により内包させた可逆光変色性微小カプセル顔料と、エチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン/アルキド樹脂とからなるインキ組成物を、前記スクラッチ層5上に塗布することで膜厚20μmの可逆光変色層62(可逆変色層6)を積層し、更に、可逆光変色層62上に油溶性ウレタン樹脂及びアクリル樹脂からなるトップコート層を膜厚20μmで設けることにより可逆変色性スクラッチ積層体1を得た。
得られた可逆変色性スクラッチ積層体1の可逆光変色層62及びトップコート層7の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づく方法で試験したところHBであり、適度な擦過強度を有するものであった。
前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、太陽光に晒す前は銀色であったが、太陽光に曝露したところ紫に変色した。変色後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の銀色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、爪によりトップコート層7、可逆光変色層62及びスクラッチ層5を擦過することにより、三層は確実に剥離でき、PET製シートに印刷された「当たり」の文字3を視認できるものであった。
【0033】
比較例1(図1参照)
支持体2となる厚さ250μmの白色PET製シート上にオフセット印刷機にて「当たり」の文字3を印刷し、更に印刷面上にニス(東洋インキ社製、商品名:CKUスクラッチOPニス)を塗布して保護層4を設けてカード体とした。更に、前記保護層上にスクラッチ用インキ(東洋インキ社製、商品名:SSロッテリーT銀)を用いてスクリーン印刷することにより、スクラッチ層5を積層して文字を隠蔽することでスクラッチ積層体を得た。
次に、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン3重量部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティクA5、重量平均分子量317〕30重量部中に均一に加温溶解させて得られるフォトクロミック材料を、エポキシ樹脂/アミン硬化剤による界面重合法により内包させた可逆光変色性微小カプセル顔料と、エポキシ樹脂/アミン硬化剤とからなるインキ組成物を、前記スクラッチ層5上に塗布することで膜厚20μmの可逆光変色層62(可逆変色層6)を積層し、可逆変色性スクラッチ積層体1を得た。
得られた可逆変色性スクラッチ積層体1の可逆光変色層62の鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に基づく方法で試験したところ3Hであった。
前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、太陽光に晒す前は銀色であったが、太陽光に曝露したところ紫に変色した。変色後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の銀色となった。この色変化は繰り返し行うことができた。
更に、前記可逆変色性スクラッチ積層体1は、爪及びコインにより可逆光変色層62及びスクラッチ層5を擦過したが、両層はいずれも剥離することができず、実用性を満たすものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の可逆変色性スクラッチ積層体の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の可逆変色性スクラッチ積層体の他の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 可逆変色性スクラッチ積層体
2 支持体
3 印刷文字
4 保護層
5 スクラッチ層
6 可逆変色層
61 可逆熱変色層
62 可逆光変色層
7 トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体表面の少なくとも一部にスクラッチ層を設け、該スクラッチ層上の一部又は全面に可逆変色層を積層してなることを特徴とする可逆変色性スクラッチ積層体。
【請求項2】
前記可逆変色層のJIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hであることを特徴とする請求項1記載の可逆変色性スクラッチ積層体。
【請求項3】
前記可逆変色層上にJIS K5600−5−4に基づく試験方法による鉛筆硬度が6B〜Hであるトップコート層を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆変色性スクラッチ積層体。
【請求項4】
前記可逆変色層が、可逆熱変色性材料を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆変色性スクラッチ積層体。
【請求項5】
前記可逆変色層が、可逆光変色性材料を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可逆変色性スクラッチ積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−248169(P2006−248169A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71439(P2005−71439)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】