説明

可逆性感熱記録媒体、及び可逆性感熱記録部材

【課題】帯電防止、カール発生の防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止、及び優れた搬送性の全ての性能を満たした可逆性感熱記録媒体の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上、及び前記支持体の可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の少なくともいずれかに帯電防止層を有し、該帯電防止層が、球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを含み、該球状フィラーが、下記式(1)を満たす可逆性感熱記録媒体。
〔式〕
4≦球状フィラーの平均粒径/帯電防止層の厚み≦6 ・・・・・式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱記録媒体、及び可逆性感熱記録部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一時的な画像形成を行うことができ、不要となったときにはその画像の消去ができる可逆性感熱記録媒体(「熱可逆記録媒体」、「記録媒体」とも呼ばれる)が注目されている。その代表的なものとして、ポリマー中に長鎖脂肪族炭化水素基を持つ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物又はフェノール化合物のような顕色剤と、ロイコ染料のような発色剤とを分散させてなる可逆性感熱記録媒体が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような可逆性感熱記録媒体は、磁気記録層を有するPETフィルムを支持体としているものが多く、主にポイントカードとして市場で使われている。一方において、薄手の支持体上に可逆性感熱記録層を設け、その支持体の反対面に接着層を設けて、様々な基材に対して熱と圧力によりラミネートして可逆性感熱記録媒体として使用する方法も数多く提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)。
しかし、これらの提案は、光メモリ、接触式IC、非接触式IC、磁気記録と組み合わせられ、ほとんどの基材が厚く、大きさが制限されているカードであり、カード用途が制限されている。そのため、入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示には不向きであった。
【0004】
そこで、上記のような用途に使用するためには、カードサイズよりも大きなシートサイズの熱可逆記録媒体が必要となる。ここで、前記シートサイズとは、カードサイズ(54mm×85mm)よりも大きいサイズのものを意味する。
前記可逆性感熱記録媒体をシートとして使用すると、ポイントカードや厚手基材のカードと比べてサイズが大きくなるため、プリンター搬送時に可逆性感熱記録媒体同士や搬送ローラなどの接触により帯電しやすくなるという問題がある。また、接触面積が大きくなるため、可逆性感熱記録媒体に蓄積される静電気が多くなるという問題がある。その結果、作業者がプリンター排出トレイに蓄積された可逆性感熱記録媒体を取り出し、取り出した束の可逆性感熱記録媒体から静電気が蓄積された一枚の可逆性感熱記録媒体を、例えば、電子部品などの組み立てラインにおいて、検品票や作業支持票や工程管理票と呼ばれるような紙票から可逆性感熱記録媒体票に置き換えた場合、前記可逆性感熱記録媒体の静電気によって電子部品などの製品を破壊させてしまうという問題がある。また、蓄積された静電気により可逆性感熱記録媒体同士が貼り付いてプリンターの給紙トレイから搬送し難くなるという問題がある。また、熱による繰り返し印字と消去によって可逆性感熱記録媒体が収縮しカールが発生するが、そのカール度合いが大きくなって搬送不良の原因となるという問題がある。
【0005】
そこで、前記課題に対して帯電防止効果を向上させた可逆性感熱記録媒体がいくつか報告されている。
第一に、表面抵抗値が20℃−相対湿度65%の環境下で1×1013Ω/□以下であり、かつ表面の静摩擦係数が0.65以下である熱可逆記録媒体が提案されている(特許文献7参照)。
しかしながら、この提案では、低湿度環境で測定した場合の表面抵抗値が低下してしまい、特に、1×10Ω/□以下の表面抵抗値の可逆性感熱記録媒体では低湿環境では徐電が十分に図れず、低湿環境で繰り返し消去印字を行うと可逆性感熱記録媒体が帯電し、プリンター内で可逆性感熱記録媒体同士が貼り付いて搬送不良が生じてしまうという問題がある。また、繰り返し使用によりカールが大きくなり、それ自体がプリンター内での搬送不良の原因となるという問題もある。
【0006】
第二に、導電性粉末を含有させ、その導電性粉末が短径1μm以下である可逆性感熱記録媒体が提案されている(特許文献8参照)。
しかしながら、この提案によれば、可逆性感熱記録媒体へのホコリの付着は減るが可逆性感熱記録媒体の表面形状については開示も示唆もなく、可逆性感熱記録媒体を重ねてプリンターで搬送する際に給紙ローラでは搬送しにくい表面となるという問題がある。その結果、シートを分離することができず搬送不良となるという問題がある。また、この可逆性感熱記録媒体で繰り返し消去印字を行うと消去印字時の熱により可逆性感熱記録媒体にカールが発生し、プリンター内での搬送不良の原因となるという問題がある。
【0007】
第三に、導電性の金属酸化物半導体粉末を含有する層が1層以上存在し、その粉末が酸化スズで被覆された導電性顔料である可逆性感熱記録媒体が提案されている(特許文献9参照)。
しかしながら、同様に可逆性感熱記録媒体の表面形状には触れておらず、可逆性感熱記録媒体を重ねてプリンターで搬送する際に給紙ローラで搬送しにくい表面となるという問題がある。しかも、この可逆性感熱記録媒体で繰り返し消去印字を行うと消去印字時の熱により可逆性感熱記録媒体にカールが発生し、プリンター内での搬送不良の原因となるという問題がある。
【0008】
一方、熱転写受像シート(感熱記録媒体)の分野では、帯電防止効果を向上させた例がいくつか報告されている。
第一に、導電性針状結晶を含有する熱転写受像シートが提案されている(特許文献10参照)。
しかしながら、この提案では、可逆性感熱記録媒体にそのまま使用しても十分な帯電防止効果を得ることができず、帯電防止層を最表面に設ける例は報告されておらず、プリンター搬送性についても不十分となるという問題がある。しかも、この提案では繰り返し消去印字を行う過程で可逆性感熱記録媒体同士が貼り付いて重送の問題が発生するおそれがあるという問題がある。また、カール防止に対しても不十分であり、繰り返し消去印字の際の熱により可逆性感熱記録媒体のカールが進み、結果として搬送不良が発生してしまうという問題がある。
【0009】
第二に、導電性ポリマーと、球状フィラーとをバック層に含む感熱記録媒体が提案されている(特許文献11参照)。
しかしながら、この提案では、帯電防止、及び媒体同士の密着防止には効果があるが、可逆性感熱記録媒体にそのまま使用しても十分な帯電防止効果、及び媒体同士の密着防止効果を得ることができないという問題がある。しかも、この提案では、消去印字の繰り返し消去印字を行う過程において擦傷が発生し、繰り返し消去印字の際の熱により可逆性感熱記録媒体のカールが進み、結果として搬送不良が発生してしまうという問題がある。
【0010】
また、前記課題に対して、カールの発生防止効果を向上させた可逆性感熱記録媒体が報告されている。
例えば、表裏のポリマーとして紫外線硬化ポリマーを用い、保護層面と裏面の動摩擦係数が0.3以上であり、保護層面同士の動摩擦係数が0.3以下である可逆性感熱記録媒体が提案されている(特許文献12参照)。
しかしながら、この提案によれば、カールの発生防止には効果があるが、これだけでは繰り返し消去印字を行うと可逆性感熱記録媒体が帯電し、可逆性感熱記録媒体同士が貼り付いて、搬送不良が発生するという問題がある。また、繰り返し消去印字を行った時にヘッドによる熱と圧力、消去ユニットによる加熱により表面性が変化し、搬送不良が発生するという問題がある。しかも、可逆性感熱記録媒体の表裏を間違えてプリンターにセットした時に裏面同士、保護層同士の摩擦係数の値に差が生じ、搬送不良の原因となってしまうという問題がある。
【0011】
さらに、帯電防止効果、及びカールの発生防止効果を向上させた可逆性感熱記録媒体として、アンチモンドープ酸化スズで被覆された酸化チタンである針状導電性フィラーと、紫外線硬化ポリマーとをバック層に含む可逆性感熱記録媒体が提案されている(特許文献13参照)。
しかしながら、この提案によれば、帯電防止、及びカール発生防止には効果があるが、媒体間の密着防止については触れておらず、作業現場において水や油などの介在により、媒体同士が張り付いて重送の問題が発生するおそれがあるという問題がある。また、アンチモンは環境影響物質であるため、環境への負荷の少ない材料を用いた可逆性感熱記録媒体の開発が望まれている。
【0012】
したがって、上述したように帯電防止とカール発生の防止については解決する方法はあるが、帯電防止、カール発生の防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止、及び優れた搬送性の全ての性能を満たした可逆性感熱記録媒体及び関連技術については未だ提供されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、帯電防止、カール発生の防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止、及び優れた搬送性の全ての性能を満たした可逆性感熱記録媒体、及び可逆性感熱記録部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上、及び前記支持体における可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の面上の少なくともいずれかに帯電防止層とを有し、
該帯電防止層が、球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを含み、
該球状フィラーが、下記式(1)を満たすことを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
〔式〕
4≦球状フィラーの平均粒径/帯電防止層の厚み≦6 ・・・・・式(1)
<2> 帯電防止層表面の球状フィラーによる被覆率が、2%〜10%である前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<3> 球状フィラーの平均粒径が、10μm〜20μmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<4> 帯電防止層の厚みが、1μm〜5μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<5> 帯電防止層の表面抵抗値が、1×10Ω/□以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<6> 硬化性導電性ポリマーが、紫外線硬化性導電性ポリマーである前記<1>から<5>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<7> 紫外線硬化性導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールからなる群より選ばれる少なくとも1種を主骨格とする前記<6>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<8> 可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<9> 電子受容性化合物が、炭素数8以上のアルキル鎖を有するフェノール化合物である前記<8>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<10> 電子供与性呈色化合物が、ロイコ染料である前記<8>から<9>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<11> 可逆性感熱記録媒体が、カード状及びシート状のいずれかに加工されている前記<1>から<10>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<12> 情報記録部と可逆表示部とを有し、該可逆表示部が前記<1>から<11>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を含むことを特徴とする可逆性感熱記録部材である。
<13> 情報記録部と可逆表示部とが一体化された前記<12>に記載の可逆性感熱記録部材である。
<14> 情報記録部が、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグカード、ディスク、ディスクカートリッジ及びテープカセットからなる群より選択される前記<12>から<13>のいずれかに記載の可逆性感熱記録部材である。
<15> 印刷可能部を有する前記<12>から<14>のいずれかに記載の可逆性感熱記録部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、帯電防止、カール発生の防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止、及び優れた搬送性の全ての性能を満たした可逆性感熱記録媒体、及び可逆性感熱記録部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、可逆性感熱記録媒体のバック層面側にRF−IDタグを貼り合せた状態を示す概略図である。
【図3】図3は、産業用リライタブルシート(可逆性感熱記録媒体)の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、産業用リライタブルシート(可逆性感熱記録媒体)の使用方法を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の可逆性感熱記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の可逆性感熱記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の可逆性感熱記録部材の一例(可逆性感熱記録カード)を示す概略図である。図7(A)は、表面側を示し、図7(B)は、裏面側を示す。
【図8】図8は、本発明の可逆性感熱記録部材の一例(可逆性感熱記録カード)を示す概略図である。図8(A)は、表面側を示し、図8(B)は、図8(A)のICチップ用窪み部に埋め込まれるICチップの概略図を示す。
【図9】図9は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略図である。
【図12】図12は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略図である。
【図13】図13は、本発明の画像処理装置の一例を示す概略図である。
【図14】図14は、本発明の可逆性感熱記録媒体の帯電防止層の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図15】図15は、本発明の可逆性感熱記録媒体の帯電防止層の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(可逆性感熱記録媒体)
本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体と、可逆性感熱記録層と、帯電防止層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて、保護層、バック層などのその他の層を有してなる。
【0018】
<支持体>
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記可逆性感熱記録媒体の大きさなどに応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理などにより表面改質することが好ましい。また、前記支持体には、酸化チタン等の白色顔料などを添加して白色にすることが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm〜2,000μmが好ましく、100μm〜1,000μmがより好ましい。
【0021】
<可逆性感熱記録層>
前記可逆性感熱記録層は、色調が可逆的に変化する感熱記録層であり、温度変化によって色の状態が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料を少なくとも含み、バインダーポリマー、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。該可逆性感熱記録材料は透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化の組合せにより、色の状態が変化する。
【0022】
前記可逆性感熱記録材料としては、熱により透明度や色調が可逆的に変化する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温より高い第一の温度で第一の色の状態となり、第一の温度よりも高い第二の温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となる材料が挙げられる。これらの中でも、第一の温度と第二の温度で色の状態が変化する材料が特に好ましい。
具体的には、第一の温度で透明状態となり、第二の温度で白濁状態となる材料(特開昭55−154198号公報参照)、第二の温度で発色し、第一の温度で消色する材料(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報参照)、第一の温度で白濁状態となり、第二の温度で透明状態となる材料(特開平3−169590号公報参照)、第一の温度で黒色、赤色、青色等に発色し、第二の温度で消色する材料(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報参照)などが挙げられる。これらの中でも、後述する電子供与性呈色化合物(発色剤)と、電子受容性化合物(顕色剤)を用いた系が好ましい。
【0023】
<<電子供与性呈色化合物>>
前記電子供与性呈色化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。
該ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体であり、特に制限はなく、従来公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系などのロイコ化合物が挙げられる。これらの中で、フルオラン系及びフタリド系のロイコ染料が発消色特性、色彩、保存性などの点から好ましい。該フルオラン系及びフタリド系のロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−n−メチル−N−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等の黒発色系のロイコ染料;3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド等の赤発色系のロイコ染料;クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−1−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−インドール−3−イル)フタリド等の青発色系のロイコ染料;10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド等の赤外域に吸収を持つロイコ染料などが挙げられる。これらの中でも、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン等の2−アニリノ−3−メチル−6−二置換アミノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−1−イル)−4−アザフタリドが色調、発色消色特性の点から好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。異なる色調に発色する層を積層することによってマルチカラー、フルカラーにすることもできる。
【0024】
<<電子受容性化合物>>
前記電子受容性化合物としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、(1)電子供与性呈色化合物(発色剤)を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基など)、及び(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。これらの中でも、下記一般式(1)で表わされる炭素数8以上のアルキル鎖を有するフェノール化合物を用いることが特に好ましい。
【0025】
【化1】

前記一般式(1)中、nは、1〜3の整数を示す。
は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数5以上の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。Rは、炭素数1以上14以下の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数8以上14以下の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。
、Rの炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、R、Rの炭素数の和は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。
Xは、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、好ましくはアミド基、尿素基であり、更に好ましくは尿素基である。
【0026】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上する点で好ましい。前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(2)〜(8)で表される化合物などが好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
前記一般式(2)〜(8)において、R、R、Rは、炭素数7以上22以下の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、及び不飽和アルキル基の少なくともいずれかを表す。Rは、炭素数1〜10の2価の官能基を表す。Rは、炭素数4〜10の3価の官能基を表す。
【0029】
前記電子供与性呈色化合物(発色剤)と、前記電子受容性化合物(顕色剤)との混合割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、概ねモル比で発色剤1に対し、顕色剤が0.1〜20の範囲が好ましく、0.2〜10の範囲がより好ましい。この好適範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。
また、前記消色促進剤を添加する場合は、その割合は顕色剤に対し、0.1質量%〜300質量%が好ましく、3質量%〜100質量%がより好ましい。なお、前記発色剤と前記顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0030】
<<バインダーポリマー>>
前記バインダーポリマーとしては、支持体上に可逆性感熱記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知のポリマーの中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能なポリマーがより好ましく、イソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性ポリマーが特に好ましい。
前記熱硬化性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つポリマー;水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合したポリマーなどが挙げられる。このような熱硬化性ポリマーとしては、例えば、フェノキシポリマー、ポリビニルブチラールポリマー、セルロースアセテートプロピオネートポリマー、セルロースアセテートブチレートポリマー、アクリルポリオールポリマー、ポリエステルポリオールポリマー、ポリウレタンポリオールポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオールポリマー、ポリエステルポリオールポリマー、ポリウレタンポリオールポリマーが特に好ましい。
【0031】
前記可逆性感熱記録層中における前記発色剤とバインダーポリマーとの混合割合(質量比)は、発色剤1に対して、0.1〜10が好ましい。バインダーポリマーが少なすぎると、前記可逆性感熱記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダーポリマーが多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0032】
<<その他の成分>>
前記可逆性感熱記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0033】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイソシアネート類などが挙げられる。前記イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はこれらのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、又はブロック化イソシアネート類などが挙げられる。
【0034】
なお、前記可逆性感熱記録層を架橋させた場合、該可逆性感熱記録層のゲル分率は30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0035】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。
【0037】
−可逆性感熱記録層の形成方法−
前記可逆性感熱記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記バインダーポリマー、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶媒中に溶解又は分散させた可逆性感熱記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記バインダーポリマーのみを溶解した溶媒に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた可逆性感熱記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記バインダーポリマーと前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法などが挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の可逆性感熱記録媒体として成形することもできる。
【0038】
前記(1)又は(2)において用いる溶媒としては、前記バインダーポリマー及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類などによって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。なお、前記電子受容性化合物は、前記可逆性感熱記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0039】
前記可逆性感熱記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤などを添加してもよい。
前記可逆性感熱記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工など公知の方法で塗布する方法が挙げられる。
前記可逆性感熱記層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、温度としては、室温〜140℃程度、時間としては、10分間〜1時間程度などが挙げられる。
【0040】
この場合特に、無欠陥塗工を行うためには、塗布液は事前や送液中に通常の濾紙の他、ステンレスメッシュ、ナイロンメッシュ等の網;コットンフィルター、ファイバーカーボンフィルター等の天然又は合成繊維系フィルター;メンブランフィルター等の膜濾過などを通したり、超音波を1分〜200時間、好ましくは10分〜80時間掛けることによって異物を除いたり、泡の混入、分散物の凝集を避けることができる。
【0041】
また、前記塗布は、クラス10,000以下のクリーンルーム内で行うことが好ましい。前記乾燥には、フィルター及び除湿装置を通した空気又は窒素等の不活性ガスを熱し、これを表面から、裏面から、又は双方から吹き付けるのが好ましい。これらの中でも、コットンフィルターやメンブランフィルターによる濾過や超音波照射が好ましい。上記のような装置を適宜選択して使用することにより塗布層の均一性が向上する。
【0042】
前記可逆性感熱記層における前記バインダーポリマーを硬化させるには、加熱、紫外線照射、電子線照射などにより行うことができる。
【0043】
前記可逆性感熱記層におけるバインダーポリマーが熱硬化性ポリマーの場合には、塗布乾燥した後、更に必要に応じてキュアを行うことが好ましい。該キュアによって、熱架橋の場合は架橋を促進することができる。それ以外の場合も残留溶剤を低減させて品質安定化を図ることができる。該キュアは、恒温槽等を用いて比較的高温で短時間の熱処理、比較的低温で長時間かけての熱処理によって行ってもよい。前記キュア条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応性の面から30℃〜130℃程度の温度条件で1分〜150時間程度加温することが好ましく、40℃〜100℃の温度条件で2分〜120時間程度加温することがより好ましい。また、乾燥工程とは別に架橋工程を設けてもよい。前記架橋工程の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜100℃の温度条件で2分間〜120時間程度加温することが好ましい。
【0044】
前記紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えた装置などが挙げられる。
前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリマーを架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度などを決めればよい。
【0045】
前記電子線照射は、公知の電子線照射装置を用いて行うことができ、該電子線照射装置は、走査型(スキャンビーム)又は非走査型(エリアビーム)の2種に大別でき、その条件としては照射面積、照射線量などに応じて選択することができる。また、電子線照射条件は、ポリマーを架橋するために必要な線量に応じて、公知の方法により決定することができる。
【0046】
前記可逆性感熱記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。
前記可逆性感熱記録層の厚みが、薄すぎると発色濃度が低くなるため、画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0047】
<帯電防止層>
前記帯電防止層は、前記可逆性感熱記録層上、及び前記支持体における可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の面上の少なくともいずれかに設けられる最表層であり、球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて、他のフィラー、滑剤、着色顔料などのその他の成分を含む。
ここで、該帯電防止層は、前記可逆性感熱記録層上に設けられる場合には、後述する保護層の構成を兼ね備えていてもよく、前記支持体における可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の面上に設けられる場合には、後述するバック層の構成を兼ね備えていてもよい。
【0048】
<<球状フィラー>>
前記球状フィラーは、下記式(1)を満たす。
〔式〕
4≦球状フィラーの平均粒径/帯電防止層の厚み≦6 ・・・・・式(1)
前記帯電防止層の厚みに対する球状フィラーの平均粒径の値としては、4〜6であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4.2〜5.8がより好ましく、4.5〜5.5が特に好ましい。前記値が、4未満であると、水などが媒体表面に付着した場合、毛細管現象でフィラー間に浸透するが、塗膜面からのフィラーの凸が小さいので、水がフィラー同士の間で凸の表面張力となるため媒体同士が密着しやすくなることがあり、6を超えると、球状フィラーが脱落することがある。一方、前記値が、4〜6であると、油や水による媒体間の密着防止や擦傷防止や搬送性の点で有利である。
【0049】
前記帯電防止層表面の前記球状フィラーによる被覆率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2%〜10%が好ましく、2%〜8%がより好ましく、2%〜5%が特に好ましい。前記被覆率が、2%未満であると、プリンタの繰り返し消去印字を行う過程において擦傷が発生すること、油や水などによる密着防止効果が低下することがあり、10%を超えると、球状フィラーが脱落すること、表面が被覆されることで帯電防止効果が低減すること、毛細管現象で浸入した水分が密に存在するフィラー間で凸の表面張力となるため水などによる密着防止効果が低下することがある。一方、前記被覆率が、2%〜5%であると、擦傷防止の点で有利である。
ここで、前記帯電防止層表面の前記球状フィラーによる被覆率は、電子顕微鏡写真により測定することができる。
具体的には、予め定めた範囲内の各々の球状フィラーの直径を計測して二次元的な面積を算出し、下記式(2)によって前記被覆率を算出することができる。なお、球状フィラーが硬化性導電性ポリマーに覆われている場合は、硬化性導電性ポリマー膜の裾までをフィラー直径とする。
〔式〕
被覆率%=(全球状フィラーの面積の合計)×100 /(予め定めた範囲の面積)
・・・・・式(2)
図14に、本発明の可逆性感熱記録媒体において帯電防止層の厚み方向から平面視したときの電子顕微鏡写真を示す。図15に、本発明の可逆性感熱記録媒体の帯電防止層の一例を示す概略断面図を示す。図14中、予め定めた範囲(A)の帯電防止層上に位置する全球状フィラーの二次元的な面積の合計は、球状フィラーが露出している場合、球状フィラーの直径(d)から各々の球状フィラーの二次元的な面積を算出し、球状フィラーが硬化性導電性ポリマーに覆われている場合、硬化性導電性ポリマーの平均厚み(t)よりも厚くなる境界で仕切られる領域の直径(d)から各々の球状フィラーの二次元的な面積を算出し、各々の球状フィラーの面積を総計することにより得られる。
【0050】
前記球状フィラーの平均粒径としては、上記式(1)を満たす限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜20μmが好ましく、12μm〜18μmがより好ましく、13μm〜16μmが特に好ましい。前記平均粒径が、10μm未満であると、水などが媒体表面に付着した場合、毛細管現象でフィラー間に浸透するが、塗膜面からのフィラーにおける凸が小さいので、水が凸の表面張力となり媒体同士が密着すること、密着防止の効果が得られないことがあり、20μmを超えると、球状フィラーが脱落することがある。一方、前記平均粒径が、10μm〜20μmであると、水による媒体間の密着防止の点で有利である。
ここで、前記「平均粒径」とは、体積基準平均粒径を意味し、例えば、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法によるレーザー回折式粒度分布測定装置などの公知の方法により測定される。
【0051】
前記帯電防止層の厚みとしては、上記式(1)を満たす限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜5μmが好ましく、2μm〜4μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、可逆性感熱記録層面へのカール防止や帯電防止効果が得られないことがあり、5μmを超えると、帯電防止層面へのカール防止の効果が得られないことがある。一方、前記厚みが、1μm〜5μmであると、帯電防止やカール防止の点で有利である。
ここで、前記帯電防止層の厚みとは、前記球状フィラーなどのフィラーを除いた、前記帯電防止層のバインダーポリマーの厚みをいい、例えば、球状フィラーを含む帯電防止層用塗布液を用いて帯電防止層を形成した場合、球状フィラーが存在していない領域のバインダーポリマーの厚みとすることができる。該厚みは、触診式膜厚計などの膜厚計により測定することができる。
前記「厚み」とは、前記帯電防止層の厚みの平均をいい、10点以上の厚みの平均であることが好ましく、20点以上の厚みの平均であることがより好ましく、30点以上の厚みの平均であることが特に好ましい。
また、前記帯電防止層の厚みに加えて、その他の層において「厚み」という場合においても、前記「厚み」とは、前記厚みの平均をいい、10点以上の厚みの平均であることが好ましく、20点以上の厚みの平均であることがより好ましく、30点以上の厚みの平均であることが特に好ましい。
【0052】
前記球状フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスビーズフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、カオリン、焼成クレー、ハイドロタルイサイト等の球状の無機フィラー;ポリスチレンポリマー、ポリエチレンポリマー、ポリプロピレンポリマー、尿素−ホルマリンポリマー、シリコーンポリマー、ポリメタクリル酸メチルアクリレートポリマー、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート等の縮合ポリマー等の球状の有機フィラーなどが挙げられる。
【0053】
<<硬化性導電性ポリマー>>
前記帯電防止層は、バインダーポリマーとして前記硬化性導電性ポリマーを含む。
前記硬化性導電性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性部として、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールなどの骨格を構造の一部に有するポリマーが挙げられる。
また、前記硬化性導電性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線(UV)硬化性導電性ポリマー、熱硬化性導電性ポリマー、電子線硬化性導電性ポリマーなどが挙げられ、これらの中でも、紫外線硬化性導電性ポリマーがより好ましく、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールからなる群より選ばれる少なくとも1種を主骨格とする紫外線硬化性導電性ポリマーが特に好ましい。
【0054】
前記紫外線硬化性導電性ポリマーのモノマー又はオリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、ASRC−1(荒川化学工業)、セプルジーダHC−A04(信越ファインテック)、Denatron P−490F、Denatron P−492(ナガセケムテックス)U601LPA、U201PA60、U201PAT80(新中村化学工業)などが挙げられる。
前記熱硬化性導電性ポリマーのモノマー又はオリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。該市販品としては、例えば、UR−AS601、UR−AS625(荒川化学工業)、セプルジーダAS−D06(信越ファインテック)、Denatron P−485、Denatron P−486(ナガセケムテックス)などが挙げられる。
【0055】
また、前記紫外線硬化性導電性ポリマーのモノマー又はオリゴマーを硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤としては、光開裂型、水素引抜き型等のラジカル反応型とイオン反応型とに大別できる。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシシカルボニル)オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記光重合促進剤としては、ベンゾフェノン系やチオキサントン系などの水素引抜き型の光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果を有するものが好ましく、例えば、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系などが挙げられる。具体的には、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量としては、前記バック層の樹脂成分の全質量に対し、0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0056】
<<その他の成分>>
前記帯電防止層は、前記球状フィラー及び前記硬化性導電性ポリマーの他に、更に必要に応じて、他のフィラー、滑剤などのその他の成分を添加することができる。
【0057】
前記他のフィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性フィラーなどが挙げられる。
前記導電性フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素等に酸化スズを被覆させたものなどが挙げられる。これらの中でも、結晶成長のコントロールし易さ、安定したサイズの結晶を得ることが可能な点から、酸化チタンに酸化スズを被覆させたものが特に好ましい。また、前記酸化チタンに酸化スズを被覆させたものは、塗工液を作成する際の分散時に破壊されない強度を持ち、塗膜にした時の表面を粗し、表面強度と硬さを維持できる点からも好適である。
前記他のフィラーの前記帯電防止層における含有量は、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0058】
前記滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類などが挙げられる。
【0059】
−帯電防止層の形成方法−
前記帯電防止層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記球状フィラー、前記硬化性導電性ポリマー、前記その他の成分を、溶媒と一緒に混合してなる混合物を均一に混合分散させて調製した帯電防止層用塗液を用いて塗工する方法などが挙げられる。
前記帯電防止層用塗液の分散に用いられる分散装置、帯電防止層の塗工方法、乾燥・硬化方法などは上述の可逆性感熱記録層で用いられた方法などの公知の方法を用いることができる。
【0060】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、アルコール、ケトン、アミド、エーテル類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステルアセテート類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、ピロリドン類などが挙げられる。これらの中でも、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく、水、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどがより好ましい。
なお、前記塗液の調製は、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミルなどの公知の塗液分散装置を用いて行うことができる。
【0061】
前記帯電防止層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工など公知の方法で塗布する。そして、塗布したシートは、引き続き、送風乾燥機の中に搬送され、30℃〜150℃にて10秒〜10分間乾燥される。
【0062】
前記帯電防止層における前記硬化性導電性ポリマーのモノマー又はオリゴマーを硬化させる方法としては、加熱、紫外線照射、電子線照射する方法などが挙げられる。例えば、上述した前記可逆性感熱記録層における前記バインダーポリマーを硬化させる方法などの公知の方法を用いることができる。
【0063】
本発明の可逆性感熱記録媒体において、帯電防止層の表面抵抗値としては、25℃−60RH%の環境下において1×1010Ω/□以下であれば十分な帯電防止効果が望めるが、25℃−60RH%の環境下において1×10Ω/□以下が好ましく、5℃−30RH%から35℃−85RH%のいずれの環境下においても1×10Ω/□以下がより好ましい。
ここで、前記表面抵抗値は、例えば、公知の表面抵抗測定装置を用いて測定することができる。
【0064】
本発明においては、前記帯電防止層が球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを含むことにより、搬送時のローラとの摩擦や可逆性感熱記録媒体同士の擦れにより発生する静電気を可逆性感熱記録媒体に溜めることなくリークすることができる。これにより、可逆性感熱記録媒体の貼り付きが抑えられると共に、消去印字時に印字不良の原因となるチリやホコリを吸着しないという効果がある。また、帯電防止層内に球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを含めることによって繰り返し消去印字を行っても熱履歴によるカール発生を抑えることができ、擦傷の発生を防止することができる。しかも、上記式(1)を満たす球状フィラーであるため、可逆性感熱記録媒体表面にフィラーが現れ、可逆性感熱記録録媒体表面に凹凸を設けることができ、搬送性が向上すると共に、使用時の水、油などの付着による密着を防止することができる。
【0065】
<その他の層>
本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記支持体と、可逆性感熱記録層と、帯電防止層の他に、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、バック層、中間層、アンダーコート層、光熱変換層、着色層、空気層、光反射層、接着層、中間層、接着剤層、粘着層などのその他の層を有していてもよい。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0066】
<<保護層>>
本発明の可逆性感熱記録媒体には、前記可逆性感熱記録層を保護する目的で該可逆性感熱記録層上に保護層を設けることができる。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0067】
前記保護層は、バインダーポリマー、その他の成分を含むことができる。該バインダーポリマーとしては、前記可逆性感熱記録層に用いるバインダーポリマーを用いることができる。また、前記保護層が前記帯電防止層である場合には、該バインダーポリマーは、前記硬化性導電性ポリマーである。
【0068】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1μm〜10.0μmが好ましい。前記保護層の厚みが、0.1μm未満であると、前記感熱層の保護効果が十分でないことがあり、10.0μmを超えると、熱感度が低下することがある。
【0069】
<<バック層>>
本発明の可逆性感熱記録媒体には、前記支持体の可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の面(裏面)にバック層を設けることができる。該バック層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層でもよく、1層以上の複数層に形成してもよい。特に、露出した最表面(最裏面)であることが好ましい。
【0070】
前記バック層は、バインダーポリマー、必要に応じて、滑剤、着色剤などのその他の成分を含むことができる。該バインダーポリマーとしては、前記可逆性感熱記録層に用いるバインダーポリマーを用いることができる。また、前記バック層が前記帯電防止層である場合には、該バインダーポリマーは、前記硬化性導電性ポリマーである。
【0071】
前記バック層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜10μmが好ましい。
【0072】
前記滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記帯電防止層に用いる滑剤を用いることができる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、染料、顔料などが挙げられる。これらの中でも、顔料が熱による繰り返し履歴への耐性の点から好ましい。前記バック層を着色することにより、可逆性感熱記録媒体の表裏の区別ができるようになる。
【0073】
本発明において、前記保護層及び前記バック層の双方が前記帯電防止層であってもよく、前記保護層及び前記バック層の一方が前記帯電防止層であってもよい。少なくとも前記バック層が前記帯電防止層であることが好ましい。
【0074】
本発明の可逆性感熱記録媒体においては、前記バック層と前記保護層、前記バック層同士、前記保護層同士の静摩擦係数の差が、それぞれ0.1以下が好ましい。これは、熱可逆記録媒体をプリンターにセットした時に、その表裏を間違えてセットしても可逆性感熱記録媒体がプリンター内で搬送不良を起こすことがないようにするためである。即ち、プリンターに可逆性感熱記録媒体をセットすると給紙ローラと分離パッドにより媒体を1枚ずつ搬送するが、このとき摩擦係数の差が0.1よりも大きくなると可逆性感熱記録媒体の間に摩擦力が生じ、1枚ずつ給紙をする際に給紙ローラと分離パッドで分離するときに可逆性感熱記録媒体同士の摩擦差があることによって分離できない現象が発生する。より理想的にはそれぞれの摩擦係数の差が0に近いほど良い。
【0075】
また、前記バック層と前記保護層、前記バック層同士、前記保護層同士の静摩擦係数の値は0.05〜0.3が好ましい。
前記静摩擦係数が、0.05未満であると、重ねた可逆性感熱記録媒体が滑りやすくなり可逆性感熱記録媒体を重ねた状態で維持することが難しくなり、扱いづらいものとなる。また、可逆性感熱記録媒体同士が動き易いために使用する前に可逆性感熱記録媒体が擦れ合い表面に傷がついてしまうという問題もある。前記静摩擦係数が、0.3を超えると可逆性感熱記録媒体同士の摩擦力が大きくなるため、給紙系における可逆性感熱記録媒体表面と給紙ローラとの摩擦力、可逆性感熱記録媒体裏面と分離パッドとの摩擦力との関係で分離パッドと裏面との摩擦力と可逆性感熱記録媒体同士の摩擦力の関係が近づく、あるいは逆転する現象が発生し、可逆性感熱記録媒体を搬送することができなくなってしまい、また、分離パッドの設計範囲が限られてしまう。
【0076】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、シート状、ロール状などに加工される。本発明では、特にカードサイズ(54mm×85mm)よりも大きいA5サイズからA4サイズのシートサイズに加工されていることが好ましい。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、さらにはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも大きなシートサイズでは印字する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書などに使用することができる。また、塵やゴミの発生が無いため、クリーンルームなどで使用することもできる。
【0077】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、複数の可逆性感熱記録層を備えてもよい。この場合、それぞれの可逆性感熱記録層の発色色調は同じでもよく、異なってもよい。また、本発明の可逆性感熱記録媒体の可逆性感熱記録層と同一面の一部もしくは全面、又は反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷、インクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に、着色層上の一部分もしくは全面に硬化性ポリマーを主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
更に、本発明の可逆性感熱記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマークなどのデザインを設けることもできる。
【0078】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、更に具体的には、以下の本発明の可逆性感熱記録部材、画像処理装置及び画像処理方法などに特に好適に使用することができる。なお、本発明において、可逆性感熱記録媒体表面とは、可逆性感熱記録層側表面のことを意味し、保護層に限ったものでなく、印刷層表面、OP層表面など印字消去の際サーマルヘッドに接触する全て又は一部の面を意味している。
【0079】
(可逆性感熱記録部材)
本発明の可逆性感熱記録部材は、少なくとも、情報記録部と可逆表示部とを有し、該可逆表示部が前記可逆性感熱記録媒体を含有してなり、更に必要に応じて、その他の部分を含む。また、本発明の可逆性感熱記録部材は、情報記録部と可逆表示部とが一体化された部材であることが好ましい。また、本発明の可逆性感熱記録部材は、印刷可能部を有することが好ましい。
本発明の可逆性感熱記録部材は、前記可逆性感熱記録媒体を含む可逆表示可能な可逆表示部と情報記録部とを、同一のカードに設け(一体化させ)、該情報記録部の記録情報の一部を可逆表示部に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記録部の内容を書き換えた時には可逆表示部の表示を書き換えることで、可逆性感熱記録部材を繰り返し何度も使用することができる。
【0080】
前記情報記録部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気記録層や磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが挙げられる。特にカードサイズよりも大きなサイズのシート媒体では、ICメモリー、RF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグ(RF−IDインレット)はICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0081】
本発明の可逆性感熱記録部材は、前記可逆性感熱記録媒体を含む可逆表示可能な可逆表示部と情報記録部とを有し、該情報記録部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。図1は、RF−IDタグ85の概略図を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記録部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導等により起電力が発生する。これによりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、図2に示すように、RF−IDタグ85を本発明の前記可逆性感熱記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグ85は可逆性感熱記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが望ましい。RF−IDタグと可逆性感熱記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
【0082】
図3は、可逆性感熱記録媒体を産業用リライタブルシート(可逆性感熱記録部材)90に適用した例を示し、図3(A)に示すように、可逆性感熱記録層側には書き換え可能な可逆表示部が設けられており、裏面(バック層)には、図3(B)に示すようにRF−IDタグを貼り合わせなくてもよく、図2に示すようにRF−IDタグを貼り付けてもよいが、利便性が向上する点でRF−IDタグを有するものが好ましい。
図4に、本発明の前記可逆性感熱記録媒体(リライタブルシート)とRF−IDタグを組み合わせた産業用リライタブルシートの使い方の例を示す。まず、納品された原材料に対して物品名と数量などの情報をシートとRF−IDタグに記録し、通い箱等に添付し検品される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、リライタブルシートとRF−IDタグに情報が記録され加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が記録されたリライタブルシートとRF−IDタグが添付され、商品出荷後にリライタブルシートを回収し出荷情報を読み取り、再度納品書として使われる。
【0083】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、例えば、図5に示すように、支持体11上に、可逆性感熱記録層13、及び保護層15を設け、支持体11の裏面にバック層16を設けてなるフィルム、図6に示すように、支持体11上に、可逆性感熱記録層13、中間層14、及び保護層15を設け、支持体11の裏面にバック層16を設けてなるフィルムなどの態様をとることができる。ここで、保護層及びバック層の少なくともいずれかは、前記球状フィラー及び前記硬化性導電性ポリマーを含む前記帯電防止層としての構成を兼ね備えている。
これら各態様のフィルム(可逆性感熱記録媒体)は、例えば、図2に示すRF−IDタグ85を設けたシート状の各種産業用リライタブルシートなどに好適に使用することができる。また、例えば、図7(A)に示すように、印刷可能部23を有する可逆性感熱記録カード21に加工した形態として使用することができる。なお、カードの裏面側は磁気記録層(図示せず)と、図7(B)に示すように該磁気記録部の上にバック層24が形成されている。
【0084】
また、図8(A)に示す可逆性感熱記録部材(カード)は、支持体上に、可逆性感熱記録層、保護層を設けてなるフィルムを含む可逆表示部26がラベル加工されるとともに、カード状に加工され、カードの裏面側には所定箇所にICチップ埋め込み用窪み部25が形成されている。この窪み部25に、図8(B)に示すようにICチップ27が組込まれて固定される。ICチップ27は、ウエハ基板232上に、集積回路233が設けられると共に、集積回路233に電気的に接続されている複数の接触端子234がウエハ基板232に設けられる。この接触端子234はウエハ基板232の裏面側に露出しており、専用のプリンタ(リーダライタ)が、接触端子234に電気的に接触して所定の情報を読み出したり書き換えたりできるように形成されている。
【0085】
本発明の可逆性感熱記録部材によると、帯電防止、カール発生の防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止ができ、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止を図れ、優れた搬送性を有する本発明の前記可逆性感熱記録媒体を用いているので、帯電防止及びカール発生の防止と共に、密着防止及び擦傷発生防止を図れ、搬送性を著しく向上させることができ、所望の画像が所望のタイミングで形成され消去される。そして、コントラスト、視認性などに優れた画像が形成される。一方、前記情報記録部では磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグカード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセットなどの種類に応じた記録方式により、文字情報、画像情報、音楽情報、映像情報などの所望の諸情報が記録され消去される。
【0086】
本発明の前記可逆性感熱記録ラベル及び前記可逆性感熱記録部材の少なくともいずれかは、特に制限はなく、各種画像処理方法及び画像処理装置により、画像処理することができるが、後述する本発明の画像処理装置を用いて好適に画像の形成及び消去を行うことができる。
【0087】
(画像処理装置及び画像処理方法)
本発明の画像処理装置は、画像形成手段及び画像消去手段の少なくともいずれかを有し、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、搬送手段、制御手段等を有してなる。また、本発明の画像処理方法は、画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、搬送工程、制御工程等を含む。
【0088】
本発明の画像処理方法は、本発明の画像処理装置により好適に実施することができ、前記画像形成工程及び前記画像消去工程はそれぞれ前記画像形成手段及び前記画像消去手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0089】
<画像形成手段及び画像形成工程>
前記画像形成手段は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を形成する手段である。また、前記画像形成工程は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を形成する工程である。
前記画像形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーマルヘッド、レーザー照射装置などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
<画像消去手段及び画像消去工程>
前記画像消去手段は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を消去する手段である。また、前記画像消去工程は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を消去する工程である。
前記画像消去手段としては、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を消去する手段であり、例えば、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、ヒートブロック、熱風、サーマルヘッド、レーザー照射装置などが挙げられる。これらの中で、セラミックヒータ、サーマルヘッドなどが好適である。
【0091】
前記セラミックヒータを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。前記セラミックヒータの設定温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、110℃以上が好ましく、112℃以上がより好ましく、115℃以上が特に好ましい。
前記サーマルヘッドを用いることにより、更に小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。また、前記画像の記録及び消去を兼ねて一つのサーマルヘッドとすることができ、この場合は、更に小型化が可能となる。一つのサーマルヘッドで記録と消去とを行う場合、一旦前画像を全部消去した後、改めて新しい画像を記録してもよいし、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を記録していくオーバーライト方式も可能である。該オーバーライト方式においては、前記画像の記録及び消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。
前記可逆表示部と情報記録部とを有する可逆性感熱記録部材(カード)を用いる場合、上記装置には、情報記録部の記録を読み取る手段と書き換える手段なども含まれる。
【0092】
−搬送手段及び搬送工程−
前記搬送手段は、前記可逆性感熱記録媒体を順次搬送する機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ベルト、搬送ローラ、搬送ベルトと搬送ローラとの組合せなどが挙げられる。
【0093】
−制御手段及び制御工程−
前記制御手段は、前記各手段を制御する機能を有する限り特に制限はなく、各手段の制御を行うことができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
【0094】
本発明の画像処理装置により本発明の画像処理方法を実施する一の態様について、図9〜図11を参照しながら説明する。図9に示すように、画像処理装置100は、ヒートローラ96と、サーマルヘッド95、及び搬送ローラを備えている。この画像処理装置においては、ヒートローラ96にて可逆性感熱記録層に記録された画像を加熱消去する。次いで、処理された新しい情報がサーマルヘッド95により可逆性感熱記録層に記録される。
【0095】
また、可逆性感熱記録媒体がRF−IDタグを有している場合には、図10及び図11に示すように、更に、RF−ID読み取り装置99を備えている。この場合、図11に示すような並列タイプの画像処理装置の態様もある。
図10及び図11に示すように、この画像処理装置100においては、最初、可逆性感熱記録媒体に貼り付けられたRF−IDタグの情報をRF−IDリーダライタ99により読み取り、新しい情報をRF−IDに入力した後に、ヒートローラ96にて可逆性感熱記録層に記録された画像を加熱消去する。更に、RF−IDリーダライタによって読み取り書き換えた情報を基にして、サーマルヘッドにより処理された新しい情報が可逆性感熱記録層に記録される。
なお、RF−IDリーダライタの代わりにバーコード読み取り装置や、磁気ヘッドなどを用いても良い。バーコード読み取り装置の場合には可逆性感熱記録層に既に記録されているバーコード情報を読み取った後、ヒートローラにより可逆性感熱記録層に記録されたバーコード及びその他の可視化情報を消去し、バーコードから読み取った情報を基に処理された新しい情報がバーコード及びその他の可視化情報としてサーマルヘッドにより可逆性感熱記録層に記録される。
図9又は図10に示す画像処理装置については、可逆性感熱記録媒体をスタックしておく給紙トレイ97があり、ここから可逆性感熱記録媒体がフリクションパッド方式等の給紙方法により1枚ずつピックアップされる。搬送された可逆性感熱記録媒体は搬送ローラにより搬送され、RF−IDリーダライタ部分へと送られ、ここでデータの読み書きが行われる。更に、搬送ローラにより消去ユニットであるヒートローラ部へ可逆性感熱記録媒体が搬送され、可逆性感熱記録媒体に記録されている可視化情報が消去される。その後、サーマルヘッド部へと搬送され、可逆性感熱記録媒体に新しい情報を記録する。その後、搬送ローラにより可逆性感熱記録媒体が搬送され、上部の排紙部より可逆性感熱記録媒体が搬出される。
ここで、ヒートローラの表面温度は、可逆性感熱記録媒体の消去温度にマッチングさせる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃〜190℃が好ましく、110℃〜180℃がより好ましく、115℃〜170℃が更に好ましい。
【0096】
更に、図12を参照しながら説明する。図12に示す画像処理装置は、前記加熱処理手段としてのサーマルヘッド53と、セラミックヒータ38と、磁気ヘッド34と、搬送ローラ31、40及び47とを備えている。
図12に示すように、この画像処理装置においては、最初、可逆性感熱記録媒体の磁気記録層に記録された情報を磁気ヘッドで読み取る。次に、セラミックヒータで可逆性感熱記録層に記録された画像を加熱消去する。更に、磁気ヘッドで読み取られた情報をもとにして、処理された新たな情報がサーマルヘッドにより、可逆性感熱記録層に記録される。その後、磁気記録層の情報も新たな情報に書き替えられる。
図12に示す画像処理装置においては、可逆性感熱記録層の反対側に磁気記録層を設けた可逆性感熱記録媒体1は往復の矢印で図示されている搬送路に沿って搬送され、或いは搬送路に沿って装置内を逆方向に搬送される。可逆性感熱記録媒体1は、磁気ヘッド34及び搬送ローラ31間で磁気記録層に磁気記録又は磁気消去され、セラミックヒータ38及び搬送ローラ40間で画像消去のため加熱処理され、サーマルヘッド53及び領域搬送ローラ47間で画像形成される。その後、画像処理装置外に搬出される。ただし、磁気記録の書替えはセラミックヒータによる画像消去の前であってもよいし、後であってもよい。また、所望により、セラミックヒータ38及び搬送ローラ40間を通過後、又はサーマルヘッド53及び搬送ローラ47間を通過後、搬送路を逆方向に搬送される。セラミックヒータ38よる再度の熱処理、サーマルヘッド53による再度の印字処理を施すことができる。
【0097】
図13の画像処理装置においては、出入口30から挿入された可逆性感熱記録媒体1は、一点破線で図示されている搬送路50に沿って進行し、或いは搬送路50に沿って装置内を逆方向に進行する。出入口30から挿入された可逆性感熱記録媒体1は、搬送ローラ31及びガイドローラ32により画像処理装置内を搬送される。搬送路50の所定位置に到達するとセンサ33により制御手段34cを介してその存在を認識され、磁気ヘッド34とプラテンローラ35との間で磁気記録層に磁気記録又は記録消去され、ガイドローラ36及び搬送ローラ37間を通過し、ガイドローラ39及び搬送ローラ40間を通過し、センサ43により、セラミックヒータ制御手段38cを介してその存在を認識して作動するセラミックヒータ38とプラテンローラ44との間で画像消去のため加熱処理され、搬送ローラ45、46及び47により搬送路50内を搬送され、所定位置にてセンサ51により、サーマルヘッド制御手段53cを介してその存在を認識して作動するサーマルヘッド53及びプラテンローラ52間で画像形成され、搬送路56aから搬送ローラ59及びガイドローラ60により出口61を経て画像処理装置外に搬出される。
【0098】
また、所望により、搬送路切換手段55aを切り替えることにより搬送路56bに導き、可逆性感熱記録媒体1の押圧により入力するリミットスイッチ57aの作動により逆方向に動く搬送ベルト58によって、可逆性感熱記録媒体1を再度、サーマルヘッド53及びプラテンローラ52間で熱処理した後、搬送路切換手段55bを切り替えることにより通じる搬送路49b、リミットスイッチ57b、搬送ベルト48を介して順方向に搬送し、搬送路56aから搬送ローラ59及びガイドローラ60により出口61を経て画像処理装置外に搬出することができる。更に、このような分岐した搬送路及び搬送切換手段は、セラミックヒータ38の両側に設けることもできる。その場合には、センサ43aを、プラテンローラ44と搬送ローラ45との間に設けることが望ましい。
【0099】
本発明の画像処理装置及び画像処理方法によると、帯電防止、使用時の油、水などの付着による媒体同士の密着防止、消去印字の繰り返しによる擦傷の発生防止を図れ、カール発生の防止ができ、優れた搬送性を有する本発明の前記可逆性感熱記録媒体を用いているので、印字と消去を繰り返してもカールの発生がなく、可逆性感熱記録媒体が重送や紙詰まりなどの搬送不良となることが防止でき、高速で処理可能であり、高コントラストな画像を形成することができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0101】
(実施例1)
下記の手順により、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
(1)支持体
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン社製テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0102】
(2)感熱層(可逆性感熱記録層)
−感熱層用塗布液の調製−
下記構造式で表される顕色剤3質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、LR327)9質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmまでなるように粉砕分散した。
【化3】

次に、この顕色剤を粉砕分散させた分散液に、2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)3質量部を加え、良く撹拌させて感熱層用塗布液を調製した。
次に、得られた感熱層用塗布液を前記支持体上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分で乾燥後、60℃にて24時間キュアーを行って膜厚約11μmの感熱層を形成した。
【0103】
(3)中間層
−中間層用塗布液の調製−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、良く攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記感熱層塗布済み支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃にて1分の加熱乾燥後、60℃にて2時間加熱し、膜厚約2μmの中間層を形成した。
【0104】
(4)保護層
−保護層用塗布液の調製−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュアI−184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにて良く攪拌して平均粒径が約3μmまでになるように分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記感熱層、及び中間層を塗布済み支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃にて1分の加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、膜厚約4μmの保護層を形成した。
【0105】
(5)帯電防止層
−帯電防止層用塗布液の調製−
紫外線硬化性導電性ポリマー(信越ファインテック社製セプルジーダHC−A04)100重量部、開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュアI−184)0.6重量部、平均粒径15μ球状フィラー(綜研化学社製MX1500)0.95重量部を、ボールミルにて良く攪拌して帯電防止層用塗布液を調製した。
次に、前記感熱層、中間層、及び保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に、帯電防止層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、110℃にて2分の加熱乾燥後、80W/cm、10m/min、3パスの紫外線ランプで架橋させて帯電防止層を形成した。
以上により、実施例1の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0106】
作製した実施例1の可逆性感熱記録媒体について、以下の通り、帯電防止層の厚みを測定した。
平均粒径15μ球状フィラーを除いた前記帯電防止層用塗布液を、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン社製テトロンフィルムU2L98W)に直径0.15のワイヤーバーにて塗布し、110℃にて2分の加熱乾燥後、80W/cm、10m/min、2パスの紫外線ランプで架橋させて形成した帯電防止層の厚みを触診式膜厚計にて計測したところ2.6μmであることがわかった。
作製した実施例1の可逆性感熱記録媒体の特性として、帯電防止層の厚み、帯電防止層の厚みに対する球状フィラーの平均粒径、帯電防止層表面の球状フィラーによる被覆率、及び帯電防止層の表面抵抗値を調査した結果を表1に示す。
【0107】
<評価方法>
作製した実施例1の可逆性感熱記録媒体について、以下のように評価した。
<<評価1:表面抵抗値>>
可逆性感熱記録媒体の帯電防止層表面に表面抵抗測定器(シムコ表面抵抗計ワークサーフェイステスターST−3)を静置し、測定環境25℃−60%RH下で抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
<<評価2:カール特性>>
リライタブルプリンター(神鋼電機製RP−K)に可逆性感熱記録媒体を30回繰り返して消去印字を行い、30分後に水平な机上に可逆性感熱記録層を上面に静置して4隅の可逆性感熱記録媒体と机の間の距離を測定した。次に、帯電防止層を上面に静置して4隅の可逆性感熱記録媒体と机の間の距離を測定した。結果を表1に示す。
◎:カールが2mm未満である。
○:カールが2mm以上5mm未満である。
△:カールが5mm以上10mm未満である。
×:カールが10mm以上である。
<<評価3:貼付き特性>>
可逆性感熱記録媒体の保護層面に蒸留水を50cc垂らし、その上に、予めパンチで貫通孔を設けた可逆性感熱記録媒体の帯電防止層面で挟み込む。蒸留水を介在した2枚の可逆性感熱記録媒体の上からゴムロールで荷重をかけながら蒸留水がはみ出てこなくなるまで往復させる。貫通孔に棒型テンションゲージのフック部を差し込んで、2つの可逆性感熱記録媒体が引き剥がされるまで水平に引張る。その引き剥がす時の最大力(gf)を測定した。結果を表1に示す。
◎:1,000gf未満
○:1,000gf以上1,500gf未満
△:1,500gf以上3,000gf未満
×:3,000gf以上
<<評価4:擦傷特性>>
リライタブルプリンター(神鋼電機製RP−K)に可逆性感熱記録媒体を30回繰り返して消去印字を行い、帯電防止層面に発生したキズを評価した。結果を表1に示す。
◎:全くキズがつかない。
○:1〜2本程度のキズが発生した。
△:3〜4本程度のキズが発生した。
×:全面に多数のキズが発生した。
<<評価5:搬送特性>>
リライタブルプリンター(神鋼電機製RP−K)に可逆性感熱記録媒体を30回繰り返して消去印字を行い、搬送性を評価した。結果を表1に示す。
◎:搬送不良(重送、ジャム)で装置が停止することが無かった。
○:搬送不良(重送、ジャム)で1回程度の装置停止が発生した。
△:搬送不良(重送、ジャム)で2〜3回程度の装置停止が発生した。
×:搬送不良(重送、ジャム)で4回以上の装置停止が発生した。
<<評価6:フィラー脱落特性>>
可逆性感熱記録媒体の帯電防止層面を爪で複数回擦り、その上に透明粘着テープを貼り付けて剥がし、それを黒色用紙上に貼り付けてフィラー脱落性を評価した。結果を表1に示す。
◎:白色粉末を視認できなかった。
○:少量の白色粉末を視認できた。
△:多量の白色粉末を視認できた。
×:爪で擦った時点で白色粉末を視認できた。
【0108】
(実施例2〜11)
実施例1の帯電防止層用塗布液を、表1及び2に示す組成の帯電防止層用塗布液に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜11の可逆性感熱記録を作製し、上記評価を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0109】
(比較例1〜4)
実施例1の帯電防止層用塗布液を、表2に示す組成の帯電防止層用塗布液に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜4の可逆性感熱記録を作製し、上記評価を実施した。結果を表2に示す。
【0110】
(比較例5)
実施例1の帯電防止層用塗布液を、特開2006−240199号公報の実施例13に記載されたバック層液(E液)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録を作製し、上記評価を実施した。結果を表2に示す。
[E液:バック層液]
α−エチル(トリメチルアンモニウム)アルカノイルエステル
(日本純薬、SAT−5) 39部
メタノール 60部
架橋ポリスチレン粒子(綜研化学、SGP50C 平均粒径10μm)
1部
【0111】
(比較例6)
実施例1の帯電防止層用塗布液を、特開2006−240199号公報の実施例14に記載されたバック層液(F液)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録を作製し、上記評価を実施した。この時、バック層に存在するフィラーの数は約700個/mであった。結果を表2に示す。
[F液:バック層液]
α−エチル(トリメチルアンモニウム)アルカノイルエステル
(日本純薬、SAT−5) 37部
メタノール 60部
架橋PMMA粒子(綜研化学、MX1000 平均粒径10μm)
3部
【0112】
(比較例7)
実施例1において、帯電防止層用塗布液を塗布せず、帯電防止層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、可逆性感熱記録を作製し、上記評価を実施した。結果を表2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【符号の説明】
【0115】
1 可逆性感熱記録媒体
10 可逆性感熱記録部材
11 支持体
13 可逆性感熱記録層
14 中間層
15 保護層
16 バック層
21 可逆性感熱記録カード(可逆性感熱記録部材)
22 可逆表示部
23 印刷可能部
24 バック層
25 窪み部
26 可逆表示部
27 ICチップ
30 出入口
31 搬送ローラ
32 ガイドローラ
33 センサ
34 磁気ヘッド
34c 制御手段
35 プラテンローラ
36 ガイドローラ
37 搬送ローラ
38 セラミックヒータ
38c セラミックヒータ制御手段
39 ガイドローラ
40 搬送ローラ
43 センサ
43a センサ
44 プラテンローラ
45 搬送ローラ
46 搬送ローラ
47 搬送ローラ
48 搬送ベルト
49b 搬送路
50 搬送路
51 センサ
52 プラテンローラ
53 サーマルヘッド
53c サーマルヘッド制御手段
55a 搬送路切換手段
55b 搬送路切換手段
56a 搬送路
56b 搬送路
57a リミットスイッチ
57b リミットスイッチ
58 搬送ベルト
59 搬送ローラ
60 ガイドローラ
61 出口
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
90 産業用リライタブルシート(可逆性感熱記録部材)
94 セラミックヒータ
95 サーマルヘッド
96 ヒートローラ
97 給紙トレイ
98 熱可逆記録媒体(リライタブルシート)
99 RF−IDリーダライタ
100 画像処理装置
232 ウエハ基板
233 集積回路
234 接触端子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【特許文献1】特開平5−124360号公報
【特許文献2】特開平6−210954号公報
【特許文献3】特開2000−094866号公報
【特許文献4】特開2000−251042号公報
【特許文献5】特開2001−063228号公報
【特許文献6】特開2002−103654号公報
【特許文献7】特開平11−254822号公報
【特許文献8】特開平10−250239号公報
【特許文献9】特開平11−091243号公報
【特許文献10】特開平11−078255号公報
【特許文献11】特開2006−240199号公報
【特許文献12】特開平8−187941号公報
【特許文献13】特開2005−193564号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上、及び前記支持体における可逆性感熱記録層を設ける面と反対側の面上の少なくともいずれかに帯電防止層とを有し、
該帯電防止層が、球状フィラー及び硬化性導電性ポリマーを含み、
該球状フィラーが、下記式(1)を満たすことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
〔式〕
4≦球状フィラーの平均粒径/帯電防止層の厚み≦6 ・・・・・式(1)
【請求項2】
帯電防止層表面の球状フィラーによる被覆率が、2%〜10%である請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
球状フィラーの平均粒径が、10μm〜20μmである請求項1から2のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
帯電防止層の厚みが、1μm〜5μmである請求項1から3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
帯電防止層の表面抵抗値が、1×10Ω/□以下である請求項1から4のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
硬化性導電性ポリマーが、紫外線硬化性導電性ポリマーである請求項1から5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
紫外線硬化性導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロールからなる群より選ばれる少なくとも1種を主骨格とする請求項6に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含む請求項1から7のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
可逆性感熱記録媒体が、カード状及びシート状のいずれかに加工されている請求項1から8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
情報記録部と可逆表示部とを有し、該可逆表示部が請求項1から9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を含むことを特徴とする可逆性感熱記録部材。
【請求項11】
情報記録部と可逆表示部とが一体化された請求項10に記載の可逆性感熱記録部材。
【請求項12】
印刷可能部を有する請求項10から11のいずれかに記載の可逆性感熱記録部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−51185(P2012−51185A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194615(P2010−194615)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】