説明

可逆性感熱記録材料

【課題】本発明の課題は明瞭なコントラストを持つ画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能で、実用条件下での使用において付着するホコリ、油性インク、塗料、油脂(指紋等も含む)、泥等の汚染物質を簡便に除去可能で、かつ印字・消去の繰り返しに伴う表面状態の変化が少なく、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【解決手段】支持体の片面に、熱エネルギーの制御により透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層を設けた可逆性感熱記録材料において、該感熱記録層上に、フィラーを含む紫外線硬化性フッ素含有樹脂による保護層を設けることを特徴とする可逆性感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを制御することにより透明度又は色調が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一時的な画像の形成が行え、不要となった時にはその画像の消去が出来るようにした可逆性感熱記録材料が注目されている。可逆性感熱記録材料としては、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱によりこの染料前駆体を発色させ、これを再加熱して消色させる可逆性を有する顕色剤を用いた感熱記録材料(例えば、特許文献1〜3参照)、塩化ビニル−酢酸ビニル等の樹脂中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した感熱記録材料、屈折率の異なるポリマーを2種以上混合した感熱記録材料等が知られている。特に、染料前駆体と可逆性顕色剤とから構成される可逆性感熱記録材料は、高コントラストで高感度な記録画像の形成と消去が多数回に渡って可能であり、ICカードや磁気カード等の媒体において、カード内の情報を可視化する目的で広く使われるようになってきた。
【0003】
このような可逆性感熱記録材料は、実用条件下で使用された場合、可逆性感熱記録材料の表面に環境中のホコリ、油性インク、塗料、油脂(指紋等も含む)、泥等が付着して汚染され、画像の印字・消去ができなくなるという問題がある。そこで、可逆性感熱記録材料の防汚性を向上させる目的で、可逆性感熱記録材料の表面に離型剤を配合した樹脂を設けることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法では印字・消去を繰り返し行うと、度重なってかかる熱及び力(搬送力やプラテン圧による外力)によって離型剤が表面からブリードアウトし、防汚性の効果が持続しない。また、可逆性感熱記録材料の表面層の表面エネルギー(表面張力)を30dyn/cm以下と規定し、その表面層の材料としてフッ素系物質を選択した可逆性感熱記録材料の洗浄を行う画像記録方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、この方法では洗浄による汚染物質除去性は向上するものの、十分な繰り返し耐久性が得られず、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−210955号公報
【特許文献2】特開平7−179043号公報
【特許文献3】特開2000−263946号公報
【特許文献4】特開2000−347569号公報
【特許文献5】特開平6−312578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、明瞭なコントラストを持つ画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能で、実用条件下での使用において付着するホコリ、油性インク、塗料、油脂(指紋等も含む)、泥等の汚染物質を簡便に除去可能で、かつ印字・消去の繰り返しに伴う表面状態の変化が少なく、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はこれらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の発明により上記の課題が解決されることを見出した。
【0007】
支持体の片面に、熱エネルギーの制御により透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層を設けた可逆性感熱記録材料において、該感熱記録層上に、フィラーを含む紫外線硬化性フッ素含有樹脂による保護層を設けることを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【0008】
前記フィラーの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であると好ましい。
【0009】
さらに、前記フィラーがシリカであると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の可逆性感熱記録材料によって、明瞭なコントラストを持つ画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能で、実用条件下での使用において付着するホコリ、油性インク、塗料、油脂(指紋等も含む)、泥等を簡便に除去可能で、かつ印字・消去の繰り返しに伴う表面状態の変化が少なく、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の可逆性感熱記録材料について詳細に説明する。本発明の可逆性感熱記録材料は、支持体の片面に、熱エネルギーの制御により透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層を設けた可逆性感熱記録材料において、該感熱記録層上に、フィラーを含む紫外線硬化性フッ素含有樹脂による保護層を設けることを特徴とする。
【0012】
本発明において、紫外線硬化性フッ素含有樹脂を保護層に使用することにより、汚染物質除去性が良好なものとなる。紫外線硬化性フッ素含有樹脂としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有するモノマー、オリゴマーを含有している。例えば、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート系、フッ素含有エポキシ(メタ)アクリレート系、フッ素含有ポリエステル(メタ)アクリレート系、フッ素含有ポリエーテル(メタ)アクリレート、フッ素含有ビニル系、フッ素含有不飽和ポリエステル系等のオリゴマー;各種単官能、多官能のフッ素含有(メタ)アクリレート、フッ素含有ビニルエステル、フッ素含有エチレン誘導体、フッ素含有アリル化合物等のモノマー等が挙げられる。好ましくは、パーフロロアルキル基又はパーフロロアルキレン基を有するモノマー、オリゴマーであり、パーフロロアルキル基又はパーフロロアルキレン基は直鎖でも分岐していても良い。
【0013】
これら分子内に少なくとも1個フッ素原子を有するモノマー、オリゴマーは、1種単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用することもできる。
【0014】
また、本発明に係わる保護層において、可逆性感熱記録材料の耐熱性や繰り返し耐久性を向上させる目的で、必要に応じて、紫外線硬化性のフッ素非含有樹脂を併用することができる。例えば、フッ素非含有ウレタン(メタ)アクリレート系、フッ素非含有エポキシ(メタ)アクリレート系、フッ素非含有ポリエステル(メタ)アクリレート系、フッ素非含有ポリエーテル(メタ)アクリレート系、フッ素非含有ビニル系、フッ素非含有不飽和ポリエステル系等のフッ素非含有のオリゴマー;各種単官能、多官能のフッ素非含有(メタ)アクリレート、フッ素非含有ビニルエステル、フッ素非含有エチレン誘導体、フッ素非含有アリル化合物等のフッ素非含有のモノマー等が挙げられる。
【0015】
これら必要に応じて併用されるフッ素非含有のモノマー、オリゴマーは、1種単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用することもできる。
【0016】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ジイソシアネート類とポリオール類とヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタクリロイル基(CH=C(CH)CO−)と、ウレタン結合(−NHCOO−)とを有する。
【0017】
ジイソシアネート類としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート[HDI]、イソホロンジイソシアネート[IPDI]、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)[HMDI]、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート[TMHMDI]、トリレンジイソシアネート[TDI]、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート[MDI]、キシリレンジイソシアネート[XDI]等が挙げられる。
【0018】
ポリオール類としては、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられるヒドロキシアクリレート類としては、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート[HEA]、2−ヒドロキシエチルメタクリレート[HEMA]、2−ヒドロキシプロピルアクリレート[HPA]、グリシドールジメタクリレート[GDMA]、ペンタエリスリトールトリアクリレート[PETA]、ポリカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により合成される。エポキシ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物と(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンとの反応物と(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応物と(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応物と(メタ)アクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0020】
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、具体的には、無水フタル酸とプロピレングリコールと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレート、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば1,2,6−ヘキサントリオール等のポリオールを、塩基性又は酸性触媒(BF、NaOH)の存在下に、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドと反応させ、次いで、得られたポリエーテルと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより合成される。
【0022】
(メタ)アクリレート系モノマーとしては、具体的には、アクリレート、メタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0023】
本発明に係わる保護層において、紫外線を用いて硬化させる場合には、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることができる。光重合開始剤はラジカル反応型とイオン反応型に大別でき、さらに、ラジカル反応型は光開裂型と水素引抜き型とに分けられる。光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール(別名、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。光重合開始剤は、単独又は2種以上混合して使用される。
【0024】
また、光重合促進剤としては、ベンゾフェノン系やチオキサントン系等の水素引抜きタイプの光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果があるものが好ましく、例えば芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系のものがある。具体的には、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これら光重合促進剤は、単独で又は2種以上混合して使用される。
【0025】
これらの光重合開始剤及び光重合促進剤の添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0026】
本発明に係わる保護層において、紫外線硬化性フッ素含有樹脂の耐熱性や繰り返し耐久性を向上する目的で、保護層中にフィラーを用いる。フィラーとしては、有機又は無機のフィラーを単独又は混合して用いる。有機フィラーとしては、例えば、シリコン系フィラー、フッ素系フィラー、アクリル系フィラー、ポリウレタン系フィラー、ポリアミド系フィラー、エポキシ樹脂系フィラー、熱硬化樹脂系中空フィラー、ポリエチレンワックス等が挙げられる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ジルコニア、スズ、セリウム、アンチモン、チタン、インジウム等の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩等;タルク、ゼオライト、カオリン、焼成カオリン、クレー等が挙げられる。耐熱性や繰り返し耐久性の点から無機フィラーが好ましく用いられ、特に好ましくはシリカが用いられる。
【0027】
保護層中にフィラーを含有させることにより、印字・消去の繰り返しに伴い、表面の光沢度が変化する、亀裂が生じるなどが少なく、繰り返し耐久性が良好になる理由については以下のように推定している。フィラーは、保護層中で樹脂の補強材として機能しているため、印字・消去の繰り返しが向上する。また、フィラーは保護層表面を適度にマット化するために表面の光沢度の変化が抑えられる。特にフィラーとしてシリカを用いた場合には、シリカは凝集構造を有しているため、保護層樹脂の補強材としての効果が大きく、繰り返し耐久性に優れている。
【0028】
本発明に係わる保護層に好ましく用いられるシリカとしては、その製造方法により乾式法と湿式法に分類され、例えば、乾式法シリカとしては、フュームドシリカ(気相法シリカ)、溶融シリカが挙げられ、湿式法シリカとしては、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、ゾルゲル法シリカ(コロイダルシリカ)が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
本発明に係わる保護層に用いられるシリカは、シリカ表面が親水性又は疎水性にかかわらず使用することができる。表面処理が行われていないシリカ表面は通常親水性である。このような親水性表面のシリカに表面処理を行って、疎水性表面に改質することもできる。疎水性表面処理は、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、シリコーンオイル等による有機シリコーン化合物処理、ワックス処理等の方法を用いることができる。シリカの表面性を適宜調節することにより、保護層を構成する樹脂と密着性が向上し、より良好な繰り返し耐久性を得ることができる。
【0030】
本発明に係わる保護層に用いられるフィラーは分散して使用されるが、その平均粒子径によって、保護層表面の耐熱性や繰り返し耐久性が変化する。平均粒子径が小さい場合には、フィラーの添加効果が現れず、耐熱性や繰り返し耐久性が得られない場合がある。また、粗大な平均粒子径である場合には、汚染物質を除去する際に、汚染物質が保護層表面の凹凸部に入り込んでしまい、除去できなくなる傾向を持っている。フィラーの平均粒子径は0.1〜20μmであるものが好ましく、特に好ましくは0.1〜10μmのものが用いられる。なお、本発明でいうフィラーの平均粒子径とは、乾式法シリカの希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して得られる値である。
【0031】
本発明に係わるフィラーの平均粒子径は、必要に応じて粉砕することにより調節することができる。粉砕は機械的な粉砕装置、例えばボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等により行うことができる。
【0032】
本発明に係わる保護層に用いられるフィラーの含有量によっても、保護層表面の耐熱性や繰り返し耐久性が変化する。含有量が少ない場合には、フィラーの添加効果が現れず、耐熱性や繰り返し耐久性が得られない。また、添加量が多い場合には、紫外線による樹脂の架橋がフィラーによって妨げられるため十分に進行せず、やはり耐熱性や繰り返し耐久性が得られない。紫外線硬化性フッ素含有樹脂の含有量とフィラーの含有量との質量比率が100:0.5〜100:50の範囲内であると好ましく、特に好ましくは100:1.0〜100:20である。
【0033】
本発明に係わる保護層の膜厚は0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。膜厚が10μmを超えると効果が飽和するばかりか、感熱記録層の感度が低下しやすい。膜厚が0.1μmより小さいと予期した耐久性が得られず、塗膜表面に傷が入りやすくなる。
【0034】
本発明に係わる感熱記録層は、熱エネルギーの制御により透明度又は色調が可逆的に変化する材料を用いる。例えば、画像の記録と消去が繰り返し可能な感熱記録材料として、染料前駆体に加熱により可逆的な色調変化を与える可逆性顕色剤を用いて、熱エネルギーを制御することにより画像形成及び消去が可能な可逆性の感熱記録材料、樹脂母材中に有機低分子を分散したもので、熱により透明状態と白濁状態を与える白濁可逆性の感熱記録材料、屈折率の異なるポリマーを2種以上混合した感熱記録材料等が挙げられる。また、これらの感熱記録層は、色調の異なる感熱記録層を複数層重ねても良い。これらの中で、染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層は、画像の視認性に優れるため好ましい。本発明に係わる染料前駆体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコ染料等が好適に挙げられる。ロイコ染料としては、フルオラン化合物、アザフタリド化合物を好適に用いることができる。以下、染料前駆体の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−アミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−iso−アミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン。
【0036】
2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−(m−トルイジノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トルイジノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−(p−トルイジノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(p−トルイジノ)−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン。
【0037】
2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン。
【0038】
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド。
【0039】
2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン。
【0040】
2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン。
【0041】
2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロロアニリノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオラン。
【0042】
4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン。
【0043】
これらの染料前駆体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、他の色調に発色する染料前駆体を混合することにより調色も行うことができる。また、異なる色調に発色する層を積層したり、平面上に並べたりすることによって、多色可逆性感熱記録材料、フルカラー可逆性感熱記録材料とすることもできる。染料前駆体は、マイクロカプセル化、樹脂被覆化、樹脂との複合粒子化等の処理がなされていても良い。
【0044】
本発明に係わる染料前駆体と可逆性顕色剤を用いて構成される感熱記録層において、可逆性顕色剤は加熱による画像形成だけでなく、記録画像の消去も考慮された顕色剤であり、可逆性顕色剤を使用した感熱記録層は繰り返し表示内容を書き換えることが可能である。通常の感熱記録材料のように、画像形成を一回だけ行う用途にも、もちろん使用可能である。可逆性顕色剤としては下記一般式(1)で示される化合物が好ましく使用される。なお、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係わる可逆性顕色剤はそれぞれ1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
【化1】

【0046】
一般式(1)において、X及びXは、それぞれ同じであっても、異なってもよい酸素原子、硫黄原子又は両末端に炭化水素原子団を含まない−CO−、−NH−、又は−SO−結合を最小構成単位とする二価の基を表す。Rは、単結合又は炭素数1から20の二価の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1から20の二価の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1から50の一価の炭化水素基を表し、好ましくは、炭素数6から36の炭化水素基である。R及びRは、主として、アルキレン基又はアルケニレン基を表し、芳香環を含んでいてもよい。Rは、主として、アルキル基又はアルケニル基を表す。nは0から4の整数を表し、nが2以上の時に繰り返されるR及びXは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
一般式(1)中のX、Xは両末端に炭化水素原子団を含まない−CO−、−NH−、又は−SO−結合を最小構成単位とする二価の基を含むが、その具体例としては、アミド(−CONH−、−NHCO−)、尿素(−NHCONH−)、ジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)、シュウ酸ジアミド(−NHCOCONH−)、アシル尿素(−CONHCONH−、−NHCONHCO−)、セミカルバジド(−NHCONHNH−、−NHNHCONH−)、アシルセミカルバジド(−CONHNHCONH−、−NHCONHNHCO−)、3−アシルカルバジン酸エステル(−CONHNHCOO−、−OCONHNHCO−)、スルホンアミド(−NHSO−、−SONH−)、スルホニルヒドラジド(−SONHNHCO−、−NHCOCOSO−)等の基が挙げられるが、好ましくはアミド、尿素、ジアシルヒドラジン、シュウ酸ジアミド、アシルセミカルバジドである。
【0048】
以下に、一般式(1)で表される可逆性顕色剤の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
N−p−ヒドロキシフェニル−N′−オクタデシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−ヘンイコシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−ドコシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−ペンタコシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−ヘキサコシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−ノナコシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−トリアコンチル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−4−オキサオクタデシル尿素、N−p−ヒドロキシフェニル−N′−12−チアトリアコンチル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−オクタデシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−ヘンイコシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−ドコシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−ヘプタコシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−ヘキサコシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−トリアコンチル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−4−オキサオクタデシル尿素、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−N′−12−チアトリアコンチル尿素。
【0050】
N−(p−ヒドロキシフェニル)ドコサンアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)ヘプタコサンアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサコサンアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)ノナコサンアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)トリアコンタンアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)−12−チアトリアコンタンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ドコサンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ヘプタコサンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ヘキサコサンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ノナコサンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]トリアコンタンアミド、N−[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]−12−チアトリアコンタンアミド。
【0051】
N−ドコシル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−ヘプタコシル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−ヘキサコシル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−ノナコシル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−トリアコンチル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−4−オキサオクタデシル−p−ヒドロキシベンズアミド、N−ドコシル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−へプタコシル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−ヘキサコシル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−ノナコシル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−トリアコンチル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−4−オキサオクタデシル−(p−ヒドロキシフェニル)アセトアミド、N−ドコシル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド、N−ヘプタサコシル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド、N−ヘキサコシル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド、N−ノナコシル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド、N−トリアコンチル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド、N−4−オキサオクタデシル−[3−(p−ヒドロキシフェニル)]プロピオンアミド。
【0052】
N−(p−ヒドロキシベンゾイル)−N′−オクタデカノヒドラジド、N−(p−ヒドロキシベンゾイル)−N′−ドコサノヒドラジド、N−(p−ヒドロキシベンゾイル)−N′−ヘキサコシノヒドラジド、N−(p−ヒドロキシベンゾイル)−N′−トリアコンタノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−オクタデカノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−ドコサノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−ヘキサコシノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−トリアコンタノヒドラジド、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−12−チアトリアコンタノヒドラジド。
【0053】
さらに、本発明に係わる可逆性顕色剤の具体的な例としては、以下の構造式(1−1)から構造式(3−9)に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
【化2】

【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
本発明に係わる可逆性顕色剤は、それぞれ1種で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。染料前駆体に対する使用量は5〜5000質量%、好ましくは10〜3000質量%である。
【0058】
本発明に係わる染料前駆体と可逆性顕色剤を用いて構成される感熱記録層は、支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも染料前駆体と可逆性顕色剤を含有する感熱記録層塗液を塗工・製膜することによって形成される。染料前駆体及び可逆性顕色剤を感熱記録層塗液に含有させるための方法としては、各々の化合物を単独で溶媒に溶解もしくは分散媒に分散してから混合する方法、各々の化合物を混ぜ合わせてから溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法、各々の化合物を加熱溶解し均一化した後冷却し、溶媒に溶解もしくは分散媒に分散する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。分散時には必要なら分散剤を用いてもよい。水を分散媒として使う場合の分散剤としてはポリビニルアルコール等の水溶性高分子や各種の界面活性剤が利用できる。水系の分散の際は、エタノール等の水溶性有機溶媒を混合してもよい。この他に炭化水素類に代表される有機溶媒が分散媒の場合は、レシチンや燐酸エステル類等を分散剤に用いてもよい。
【0059】
本発明に係わる感熱記録層の強度を向上する等の目的でバインダーを感熱記録層中に添加することも可能である。バインダーの具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール等が挙げられる。これらのバインダーの役割は、組成物の各素材が印字、消去の熱印加によって片寄ることなく均一に分散した状態を保つことにある。従って、バインダー樹脂には耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましい。耐熱性、耐水性、さらには接着性といった高耐久品が要求に対しては、硬化性樹脂は特に好ましい。
【0060】
硬化性樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を適用する場合は架橋剤を含む液を塗工・成膜した後に熱により架橋させて用いる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリオール樹脂等が挙げられる。またこれらの熱硬化性樹脂に使用される硬化剤は、有機酸類、アミン類、イソシアネート類、エポキシ類、フェノール類等が挙げられるが、熱硬化性樹脂の種類により好適な反応性のものを選定すれば良い。特にこれらの中で、特開平10−230680号公報や同11−58963号公報に記載の、ポリオール樹脂をイソシアネート化合物で熱硬化して得られる架橋樹脂であることが好ましい。電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂に用いられるオリゴマー、モノマーとしては、前記保護層で例示した化合物を使用することができる。
【0061】
本発明に係る感熱記録層におけるバインダーの使用量としては、該感熱記録層全質量に対する該バインダー成分の質量百分率が35%以上65%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲より大きくなると著しく発色濃度が低下し、逆にこの範囲より小さくなると、感熱記録層の耐熱性や機械的強度が低下し、層の変形や発色濃度の低下が起きる。感熱記録層における該バインダー成分の質量百分率は40%以上60%以下がより好ましく、45%以上55%以下が特に好ましい。
【0062】
本発明に係る感熱記録層の膜厚は該感熱記録層の組成と所望発色濃度により決定されるものであり、具体的には、0.5〜20μmの範囲が好ましく、3〜15μmがより好ましい。さらに、該記録層の形成に際しては、染料前駆体や可逆性顕色剤等の組成物を熱硬化性樹脂及び硬化剤と共に混合した分散液を支持体上に塗工するが、必要に応じて、熱硬化性樹脂及び硬化剤と非反応性の溶剤で希釈して使用することもできる。使用できる溶媒としては、バインダー樹脂を溶解し、かつ染料前駆体や可逆性顕色剤等の組成物を分散・溶解させるものが好ましい。
【0063】
感熱記録層の発色感度及び消色温度を調節するための添加剤として、熱可融性物質を感熱記録層に含有させることができる。60℃〜200℃の融点を有するものが好ましく、特に、80℃〜180℃の融点を有するものが好ましい。一般の感熱記録紙に用いられている増感剤を使用することもできる。例えば、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等のワックス類、2−ベンジルオキシナフタレン等のナフトール誘導体、p−ベンジルビフェニル、4−アリルオキシビフェニル等のビフェニル誘導体、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、2,2′−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル等のポリエーテル化合物、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(p−メチルベンジル)エステル等の炭酸又はシュウ酸ジエステル誘導体等が挙げられる。これら化合物を併用して添加することもできる。
【0064】
本発明に係わる感熱記録層には、顔料等も本発明の目的を妨げない範囲で添加可能であり、保護層で例示した顔料を使用可能である。また、滑剤としてステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩を使用することができる。
【0065】
本発明において、耐候性改良等を目的に、感熱記録層と保護層の間に中間層を設けたり、発色感度向上等を目的にアンダーコート層を設けたり、光反射層や空気層を設けてもよい。中間層は、紫外線吸収剤や酸化防止剤を含有してもよい。また、支持体の片面のみに感熱記録層が設けられている場合、もう一方の面にバックコート層を設けたり、磁気的に情報記録可能な層を設けても良く、さらに粘着加工等を行い、別の基材と貼り合わせたり、別の基材との間に電気的、光学的に情報記録可能な材料を内在させてもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サルチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤等を挙げることができる。アンダーコート層は、中空粒子を含有してもよい。これらの層は、単層でも、2層又は3層以上の複数の層から構成されていてもよい。また、これらの層は熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含有していることが好ましい。また、可逆性感熱記録材料中の任意の層及び/又は支持体にUVインキ等による印刷等を行ってもよい。
【0066】
本発明において、支持体上に設けられた保護層、中間層、アンダーコート層、バックコート層等には、必要に応じて、レベリング剤、分散剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、硬膜剤、防腐剤、着色染顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、pH調節剤、消泡剤、滑剤、帯電防止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0067】
本発明の可逆性感熱記録材料に用いられる支持体としては、紙、各種不織布、織布、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートした紙、合成紙、金属箔、ガラス等、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではなく、これらは不透明、半透明あるいは透明のいずれであってもよい。地肌を白色その他の特定の色に見せるために、白色顔料や有色染顔料や気泡を支持体中又は表面に含有させてもよい。特に、フィルム類等に水性塗工を行う場合で、支持体の親水性が小さく、感熱記録層の塗工が困難な場合は、コロナ放電等による表面の親水化処理やバインダーと同様の水溶性高分子類を支持体表面に塗工する等の易接着処理をしてもよい。
【0068】
本発明の可逆性感熱記録材料においては、レーザー光による印字・消去を行うために、可逆性感熱記録材料中の任意の層及び/又は支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0069】
本発明における各層を支持体上に積層し可逆性感熱記録材料を形成する方法は特に制限されるものではなく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアロール及びトランスファロールコーター、ロールコーター、Uコンマコーター、AKKUコーター、スムージングコーター、マイクログラビアコーター、リバースロールコーター、4本あるいは5本ロールコーター、ディップコーター、ロッドコーター、キスコーター、ゲートロールコーター、スクイズコーター、スライドコーター、ダイコーター等の塗抹装置、平版、凸版、凹版、フレキソ、グラビア、スクリーン、ホットメルト等の方式による各種印刷機等を用いる方法により形成することができる。本発明においては、保護層を形成する時に、通常の乾燥工程の他、紫外線照射を行う。また、保護層以外の各層においても、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂を使用した場合、紫外線照射又は電子線照射を行う。これらの方法により、1層ずつあるいは多層同時に塗工、印刷することができる。
【0070】
本発明に係わる感熱記録層として好ましい形態である、染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層において、感熱記録層の発色記録画像を形成するためには、加熱に引き続き急速な冷却が起これば良く、記録画像の消色を行うためには、加熱後の冷却速度が遅ければ良い。例えば、適当な方法で加熱した後、低温の金属ブロック等を押し当てる等して急速に冷却することにより、発色状態を発現させることができる。また、サーマルヘッド、レーザー光等を用いて極めて短い時間だけ加熱すると、加熱終了後に直ちに冷却するため、発色状態を保持させることができる。一方、適当な熱源(サーマルヘッド、レーザー光、熱ロール、熱スタンプ、高周波加熱、電熱ヒーター、及びタングステンランプやハロゲンランプ等の光源等からの輻射熱、熱風等)で比較的長い時間加熱すると、感熱記録層だけでなく支持体等も加熱されるために、熱源を除いても冷却する速度が遅いため、消色状態になる。従って、同じ加熱温度、同じ熱源を用いても、冷却速度を制御することにより、発色状態及び消色状態を任意に発現させることができる。
【0071】
また、感熱記録層が樹脂母材中に有機低分子を分散したタイプの場合では、加熱温度の違いにより、加熱・冷却後の感熱記録層の透明状態、白濁状態を任意に形成するものである。例えば、ある一定の温度範囲に加熱すると感熱記録層は透明となり、この状態で常温に戻しても透明のままとなる。前記温度範囲より高温の温度範囲に加熱すると感熱記録層は半透明状態になり、この状態から常温に戻すと白濁状態に変化する。加熱・冷却手段は、前記の染料前駆体、可逆性顕色剤を含有した感熱記録層で例示した加熱・冷却手段を使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数は質量基準である。
【0073】
(実施例1)
(A)感熱記録層塗液の調製
染料前駆体として、2−(p−トルイジノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン20部、可逆性顕色剤として、N−[3−(p−ヒドロキシフェニル)プロピオノ]−N′−ドコサノヒドラジドを100部、ポリエステルポリオール(DIC(株)製、商品名:バーノック11−408、有効成分:70質量%)100部、メチルエチルケトン950部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間分散し、分散液を得た。こうして得た分散液に、イソシアネート化合物(三井化学(株)製、商品名:タケネートD−110N、有効成分:75質量%)130部とメチルエチルケトン62部とを加え、よく混合し、感熱記録層用塗液を調製した。
【0074】
(B)感熱記録層塗液の塗工
(A)で得た感熱記録層塗液を、厚さ250μmの白色ポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、乾燥塗工量が10g/mとなるように塗工した後、100℃で1分間乾燥した後、さらに50℃で24時間加熱処理して硬化させ、感熱記録層を形成した。
【0075】
(C)中間層塗液の調製
紫外線吸収剤(チバ・ジャパン(株)製、商品名:チヌビン328)50部、ポリエステルポリオール(DIC(株)製、商品名:バーノック11−408、有効成分70質量%)100部、メチルエチルケトン800部の混合物をガラスビーズと共にペイントシェーカーで5時間分散し、分散液を得た。こうして得た分散液に、イソシアネート化合物(三井化学(株)製、商品名:タケネートD−110N、有効成分75質量%)140部、メチルエチルケトン50部とを加えよく混合し、中間層塗液を調製した。
【0076】
(D)中間層塗液の塗工
(B)で作製した塗工シートの感熱記録層塗工面上に、(C)で得た中間層塗液を乾燥塗工量が2g/mになるように塗工し、100℃で1分間乾燥した後、さらに50℃で24時間加熱処理して硬化させ、中間層を設けた。
【0077】
(E)保護層塗液の調製
紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部、酢酸ブチル5部を混合した。こうして得られた混合液をビーズミルで処理し、湿式法シリカの平均粒子径を3.0μmに調節し、保護層塗液を調製した。
【0078】
(F)保護層塗液の塗工
(D)で作製した塗工シートの中間層塗工面上に、(E)で得た保護層塗液を乾燥塗工量が3g/mになるように塗工し、120℃で1分間乾燥した後、照射エネルギー120W/cmの紫外線ランプ下を10m/分の搬送速度で通して硬化させて保護層を設け、実施例1の可逆性感熱記録材料を得た。
【0079】
(実施例2)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシールX−40)3.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例2の可逆性感熱記録材料を得た。
【0080】
(実施例3)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ(富士シリシア化学(株)製、商品名:サイリシア310P)2.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例3の可逆性感熱記録材料を得た。
【0081】
(実施例4)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ(AGCエスアイテック(株)製、商品名:サンラブリーC)5.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を5.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例4の可逆性感熱記録材料を得た。
【0082】
(実施例5)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ(扶桑化学工業(株)製、商品名:クォートロンSP−1B)2.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を1.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例5の可逆性感熱記録材料を得た。
【0083】
(実施例6)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、表面処理湿式法シリカ(富士シリシア化学(株)製、商品名:サイロホービック200)3.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を1.5μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例6の可逆性感熱記録材料を得た。
【0084】
(実施例7)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、表面処理湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールSS−50B)3.0部を用いて、表面処理湿式法シリカの平均粒子径を1.5μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例7の可逆性感熱記録材料を得た。
【0085】
(実施例8)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、乾式法シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL300)2.0部を用いて、乾式法シリカの平均粒子径を1.5μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例8の可逆性感熱記録材料を得た。
【0086】
(実施例9)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、乾式法シリカ((株)トクヤマ製、商品名:レオロシールQS−30)2.0部を用いて、乾式法シリカの平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例9の可逆性感熱記録材料を得た。
【0087】
(実施例10)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、表面処理乾式法シリカ((株)トクヤマ製、商品名:レオロシールDM−30)3.0部を用いて、表面処理乾式法シリカの平均粒子径を1.5μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例10の可逆性感熱記録材料を得た。
【0088】
(実施例11)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、架橋アクリル微粒子(綜研化学(株)製、商品名:ケミスノーMX−300)2.0部を用いて、架橋アクリル微粒子の平均粒子径を3.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例11の可逆性感熱記録材料を得た。
【0089】
(実施例12)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、シリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名:トスパール120)2.0部を用いて、シリコーン微粒子の平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例12の可逆性感熱記録材料を得た。
【0090】
(実施例13)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、シリコーンゴム弾性体微粒子(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:トレフィルE−606)2.0部を用いて、シリコーンゴム弾性体微粒子の平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例13の可逆性感熱記録材料を得た。
【0091】
(実施例14)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、架橋アクリル微粒子(根上工業(株)製、商品名:アートパールJ−4P)2.0部を用いて、架橋アクリル微粒子の平均粒子径を2.0μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例14の可逆性感熱記録材料を得た。
【0092】
(実施例15)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:LP−166、有効成分:50質量%)20部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例15の可逆性感熱記録材料を得た。
【0093】
(実施例16)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:LP−178、有効成分:60質量%)18部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例16の可逆性感熱記録材料を得た。
【0094】
(実施例17)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(DIC(株)製、商品名:ディフェンサFH−800ME、有効成分:90質量%)12部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例17の可逆性感熱記録材料を得た。
【0095】
(実施例18)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(DIC(株)製、商品名:ディフェンサFH−900、有効成分:90質量%)12部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例18の可逆性感熱記録材料を得た。
【0096】
(実施例19)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(共栄社化学(株)製、商品名:HX−700UV、有効成分:53質量%)18部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例19の可逆性感熱記録材料を得た。
【0097】
(実施例20)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(富士化成工業(株)製、商品名:ZX−201、有効成分:50質量%)20部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例20の可逆性感熱記録材料を得た。
【0098】
(実施例21)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ(富士シリシア化学(株)製、商品名:サイリシア470)3.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を11.5μmとした以外は実施例1と同様にして、実施例21の可逆性感熱記録材料を得た。
【0099】
(実施例22)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、湿式法シリカ(扶桑化学工業(株)製、商品名:クォートロンPL−3)5.0部を用いて、湿式法シリカの平均粒子径を70nmとした以外は実施例1と同様にして、実施例22の可逆性感熱記録材料を得た。
【0100】
(実施例23)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を用いる代わりに、架橋アクリル微粒子(綜研化学(株)製、商品名:ケミスノーMX−1500H)5.0部を用いて、架橋アクリル微粒子の平均粒子径を15μmとした以外は実施例1と同様にして比較例4の可逆性感熱記録材料を得た。
【0101】
(比較例1)
実施例1(E)で、湿式法シリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:ニップシールE220A)1.0部を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の可逆性感熱記録材料を得た。
【0102】
(比較例2)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(DIC(株)製、商品名:ユニディック17−813、有効成分:80質量%)12.5部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の可逆性感熱記録材料を得た。
【0103】
(比較例3)
実施例1(E)で、紫外線硬化性フッ素含有樹脂(中国塗料(株)製、商品名:オーレックスLP−133、有効成分:50質量%)20部を用いる代わりに、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂(DIC(株)製、商品名:ユニディック17−813、有効成分:80質量%)12.5部を用い、フッ素系表面改質剤(DIC(株)製、商品名:メガファックF−472、有効成分:20質量%)3.0部を添加した以外は実施例1と同様にして、比較例3の可逆性感熱記録材料を得た。
【0104】
(試験1)繰り返し耐久性
繰り返し耐久性の評価方法については、上記実施例及び比較例にて得られた可逆性感熱記録材料をクレジットカード状に打ち抜き、カードプリンター(パナソニックコミュニケーションズ(株)製、商品名:KU−R−28152V)にて消去印字モードで印字を行った。消去印字とは、カードを挿してから1往復して再びカードが出てくるまでに画像が書き換えられるもので、消去はセラミックヒーター(イレーズバー)、引き続き印字はサーマルヘッドで行う。条件としては、印字エネルギーは約0.45mJ/dotとし、セラミックヒーターの消去エネルギーはエネルギー不足による消え残りがなく、かつオーバーエネルギーによるカブリがない領域の中心値に設定した。この条件で、消去印字を2分間隔で200回繰り返した。
【0105】
印字濃度は、1回目及び200回目の印字濃度を印字部の濃度をマクベス濃度計RD914の黒濃度にて測定した。また、消去濃度は、1回目及び200回目の印字物を消去のみ行い、印字濃度と同様にして濃度を測定した。
【0106】
印字部の状態は、200回目の状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。
◎:印字部は全く痛んでおらず、きれいな画像が形成されている。
○:きれいな画像が形成されているものの、保護層に1mm未満の亀裂が生じている。
△:印字画像に欠落がないものの、保護層に1mm以上の亀裂が生じている。
×:感熱記録層が損傷を受け、印字画像に欠落が生じている。
【0107】
印字痕は、200回目の印字物を消去し、印字面に対して60°の角度から目視で観察して印字部と非印字部の外観の差を評価し、以下の基準で判定した。
◎:印字部と非印字部の外観の差が視認できない。
○:印字部が非印字部に比べて光沢が高くなっている。
△:印字部に剥がれはないが、表面が荒れて劣化が視認できる。
×:印字部に剥がれが生じている。
【0108】
(試験2)汚染除去性
汚染除去性の評価方法については、上記実施例及び比較例にて得られた可逆性感熱記録材料の塗膜表面を黒色及び赤色の油性マーカー(寺西化学工業(株)製、商品名:マジックインキNo.500)で汚し、その1分後にウエスで乾拭きをする、この操作を同一箇所にて繰り返し行い、その表面を目視で観察して油性マーカーの跡が残るまでの回数を以下の基準で判定した。
【0109】
◎:30回以上油性マーカーの拭き取りができる。
○:21〜30回の間で油性マーカーの跡が残る。
△:2〜20回の間で油性マーカーの跡が残る。
×:1回で油性マーカーの跡が残る。
【0110】
試験1及び試験2の試験結果を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
表1から明らかなように、実施例1〜23の可逆性感熱記録材料は、印字濃度が高く、かつ、印字・消去の繰り返しに伴う印字濃度低下が少なかった。さらに印字・消去の繰り返しに伴う画像の劣化がなく、印字痕もつき難く、良好な繰り返し耐久性を示した。また、汚染除去性においても、油性マーカーが良好に拭き取ることができた。
【0113】
フィラーがシリカである実施例1〜10及び15〜22の感熱記録材料と、フィラーが有機フィラーである実施例11〜14及び23の可逆性感熱記録材料の比較では、実施例1〜10及び実施例15〜22の方が、繰り返し耐久性及び汚染除去性ともに良好な結果を示した。
【0114】
表1から明らかなように、フィラーの平均粒子径が0.1μm未満の実施例22の可逆性感熱記録材料は、実施例1〜21、23の可逆性感熱記録材料と比較して、印字・消去の繰り返しに伴う印字濃度低下が大きく、さらに、印字・消去の繰り返しに伴う画像の劣化が起こりやすく、印字痕もつきやすかった。また、フィラーの平均粒子径が10μmを超える実施例21及び23の可逆性感熱記録材料は、印字・消去の繰り返しに伴う画像の欠落はないものの、実施例1〜20、22の可逆性感熱記録材料に比べて印字濃度が低めであり、さらに油性マーカーのインクが保護層表面の凸凹に落ち込んでしまうために、汚染除去性が劣る結果となった。
【0115】
一方、フィラーを添加しなかった比較例1の可逆性感熱記録材料は、実施例の可逆性感熱記録材料と比較して、印字・消去の繰り返しに伴う印字濃度低下がさらに大きく、印字・消去の繰り返しに伴う画像の劣化が大きく、印字部に剥がれが生じた。紫外線硬化樹脂がフッ素非含有である比較例2の可逆性感熱記録材料では、汚染除去性が全く得られない。紫外線硬化樹脂がフッ素非含有であるが、フッ素系表面改質剤を添加した比較例3の可逆性感熱記録材料では、初期には汚染除去性は得られるものの、繰り返しの汚染に対して、添加したフッ素系表面改質剤も拭き取られてしまい、汚染除去性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の可逆性感熱記録材料は、明瞭なコントラストを持つ画像の形成・消去が可能で、日常生活の環境下で経時的に安定な画像を保持可能で、実用条件下での使用において付着するホコリ、油性インク、塗料、油脂(指紋等も含む)、泥等を簡便に除去可能で、かつ印字・消去の繰り返しに伴う表面状態の変化が少なく、繰り返し耐久性が良好な可逆性感熱記録材料として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、熱エネルギーの制御により透明度又は色調が可逆的に変化する感熱記録層を設けた可逆性感熱記録材料において、該感熱記録層上に、フィラーを含む紫外線硬化性フッ素含有樹脂による保護層を設けることを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項2】
前記フィラーの平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項3】
前記フィラーがシリカである請求項1又は2記載の可逆性感熱記録材料。

【公開番号】特開2011−56734(P2011−56734A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207727(P2009−207727)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】