説明

可逆性記録体

【課題】画像のコントラストが高く、繰り返し安定性、画像の安定性に優れる可逆性記録体を提供する。
【解決手段】支持体と、該支持体の少なくとも一面に形成された記録層とを有し、前記記録層が、表面が異なる色の領域に区分された粒子と室温で固体状態の分散媒との混合物を内包するマイクロカプセルを含有し、熱および磁場の印加によって、分散媒の融解した部分の粒子が回転することにより、画像の書き込み、消去を繰り返すことができることを特徴とする可逆性記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱とともに磁場の印加により画像を表示する可逆性記録体に係り、特に高いコントラスト、繰り返し安定性、画像の安定性に優れる可逆性記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な可逆性記録体として、塩基性染料の発色と消色の可逆特性を利用したロイコ型可逆性感熱が挙げられる。ロイコ型可逆性感熱は、主として塩基性染料であるロイコ染料と、長鎖のアルキル基を有する顕色剤から成り、サーマルヘッドからの高温の熱パルスが付与された時は、ロイコ染料と顕色剤とが分子レベルで混ざり合って発色する。発色したロイコ染料と顕色剤との複合体に、熱バーや熱スタンプから比較的低温の熱が付与されると、顕色剤同士が凝集してロイコ染料から離れ、ロイコ染料は消色する(例えば、特開平5−124360号公報(特許文献1)参照。)。
【0003】
ロイコ型可逆性感熱は、上記のように発色と消色を繰り返すことができるが、消色の時に顕色剤の凝集が不完全で消え残りが生じたり、またロイコ染料の発色が、ロイコ染料分子内の共有結合の化学的変化を伴うため、熱を繰り返しかけるとロイコ染料自身が分解していき、印字濃度が次第に低下する、といった問題が生じている。
【0004】
一方、磁性粉を利用した可逆性記録体がいくつか提案されている。磁性粉を利用した可逆性記録体は、ロイコ型可逆性感熱と比較して繰り返し安定性に優れるという利点を持つ。磁性粉、顔料、および常温で固体状態の分散媒を内包するマイクロカプセル層を形成した磁気記録体を用いて、加熱および磁場印加により磁性粉を一方の方向に偏在させて記録消去する方法も提案されている(例えば、特開平7−29415号公報(特許文献2)参照。)。
【0005】
しかしながら上記の方法は、磁場の印加の仕方によって、磁性粉が磁力線に沿って配向してしまい、思うように磁性粉を一方に偏在させることが難しい。そのため、コントラスト比が大きくなり難いといった問題がある。
【0006】
また、液体中に分散させた磁性粉をマイクロカプセル中に閉じ込めて、垂直磁場と水平磁場をかけることで磁性粉の配向を制御して画像の表示と非表示を可逆的に繰り返すことのできる可逆性記録体が提案されている。垂直磁場をかけた時は、磁性粉が垂直に配向し、マイクロカプセル部分は透明に見える。一方、水平磁場をかけた時は、磁性粉が水平に配向し、マイクロカプセル部分は磁性粉の色が反射して見える(例えば、特開平5−16578号公報(特許文献3)参照。)。
【0007】
上記の方法では、磁性粉の配向を利用しているため、特許文献2のような問題は解消される。しかしながら、上記の方法では分散媒として常温で液体のビヒクルを利用しているため、回りの環境の温度変化や外部磁場などによって画像が乱れる、という欠点を有している。
【0008】
温度変化に対する画像の乱れを解消するために、磁性粉の分散媒として常温で固体のものを用いた磁気記録体が提案されている。上記のものと同じく、磁性粉の配向によってコントラストを得るものが提案されている(例えば、特開2001−324730号公報(特許文献4)参照。)。
【0009】
上記のものは、確かに周辺環境の温度変化に対して画像の安定性は非常に良いが、いずれの方式のものも、未だに満足なコントラストが得られていない。なぜなら、磁性粉の配向を制御する方式では、やはり垂直磁場でも磁性粉の黒色が見えてしまい、十分なコントラストが得られない、という欠点を有しているからである。
【0010】
また、比重調整のために磁性粉と樹脂とを複合化し、複合化した磁性粉と室温で固体の分散媒のみからなる記録層を、単にビーズスペーサーを介してベースフィルムに挟み込んだ磁気通電感熱電子ペーパーが提案されている。このシステムは、磁性粉の移動によって画像の書き込み、消去を行っているが、磁性粉が磁力線によって配向することがないため、高いコントラスト比を実現している。また、着色した磁性粉を用いてカラー表示ができることも報告している(例えば、特開2003−302660号公報(特許文献5)、眞島修、映情学技報、VOL.28、No.9、1〜15頁、2004(非特許文献1)参照。)。
【0011】
しかしながら上記の方法では、カラー表示体とするためには、着色した磁性粉の色ごとに記録層を塗り分ける必要がある。塗り分けるには印刷法を用いることができるが、一般的で安価な塗工方法を用いることができないといった問題がある。また、青色のバックに赤色の文字、といったカラー表示は上記の方法では難しい。
【0012】
表面が異なる色の領域に区分された粒子としては、例えば、半球が黒色、反対側の半球が白色の粒子が示される(二色粒子とも言う)。これらの二色粒子等をマイクロカプセルに内包して、各々の二色粒子を電界や磁界によって回転させて、黒表示、白表示を制御する表示方法が提案されている(例えば、特開2004−205936号公報(特許文献6)、特開2002−6346号公報(特許文献7)、特開2002−62546号公報(特許文献8)、及び特開2002−258329号公報(特許文献9)等参照。)。
これらの方法は、分散媒として潤滑性液体を用いて、二色粒子とともにマイクロカプセル化し、表示層を形成している。しかしながら上記の方法では、分散媒である潤滑性液体が室温で液体のために、表示、非表示の制御以外の外部磁場によって画像が乱れるという欠点がある。
【0013】
二色粒子と室温で固体の分散媒とを組み合わせた表示方法の提案もある(例えば、特開昭61−199993号公報(特許文献10)参照。)。表示層は、透明のエラストマー層中の空孔に、室温で固体の絶縁体と二色粒子が含有されている。この表示層を、透明電極を有する基板に挟み、表示層全体に電界をかけながら、表示したい部分に、例えばサーマルヘッドなどで加熱する。加熱された部分の絶縁体は溶融し、二色粒子の回転が許容される。加熱されていない部分は絶縁体が固体状態のままのため、表示層全体に電界がかけられているのにもかかわらず二色粒子は回転することができない。
【0014】
しかしながら上記の方法では、二色粒子の回転の駆動力として電界を用いているため、表示層の両側に電極が必要となり、さらに回転の駆動力として磁界を用いていないため、駆動用の回路が必要となり、コストが高くなってしまう。さらに最大の欠点は、表示層にマイクロカプセルを使用していないため、特許文献5と同様にカラー化が難しいことである。
【0015】
【特許文献1】特開平5−124360号公報(第2−3頁)
【特許文献2】特開平7−29415号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平5−16578号公報(第2頁)
【特許文献4】特開2001−324730号公報(第2頁)
【特許文献5】特開2003−302660号公報(第2−5頁)
【特許文献6】特開2004−205936号公報(第2頁)
【特許文献7】特開2002−6346号公報(第2頁)
【特許文献8】特開2002−62546号公報(第2頁)
【特許文献9】特開2002−258329号公報(第2頁)
【特許文献10】特開昭61−199993号公報(第1頁)
【非特許文献1】眞島修、映情学技報、VOL.28、No.9、1〜15頁、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を改良し、特にコントラストが高く、繰り返し安定性が高く、画像の安定性に優れる可逆性記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、以下の各態様を包含する。
(1)支持体と、該支持体の少なくとも一面に形成された記録層とを有し、前記記録層が、表面が異なる色の領域に区分された粒子と室温で固体状態の分散媒との混合物を内包するマイクロカプセルを含有し、熱および磁場の印加によって、分散媒の融解した部分の粒子が回転することにより、画像の書き込み、消去を繰り返すことができることを特徴とする可逆性記録体。
(2)前記粒子が、磁性粉を含む着色部分と白色の非磁性材料を含む淡色部分とを有する(1)項に記載の可逆性記録体。
(3)前記記録層が、着色部分の色が各々異なる粒子を内包し、かつ該粒子の着色部分の色ごとに異なった融点を有する分散媒を用いた、異なる色相を示す2種以上のマイクロカプセルを含有する(1)項または(2)項に記載の可逆性記録体。
(4)前記分散媒が、融点30〜130℃の有機化合物であり、かつ、各粒子の着色部分の色ごとに用いる分散媒の融点の差が5℃以上である(3)項に記載の可逆性記録体。
(5)前記支持体が、紙、プラスチックフィルム、およびこれらの積層体から選択された一種であり、かつ支持体の全厚さが30μm以上である(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の可逆性記録体。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、熱および磁場の印加によって、画像の書き込み、消去を繰り返すことのできる可逆性記録体として、高いコントラスト、繰り返し安定性、画像の安定性に優れる可逆性記録体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の可逆性記録体は、サーマルヘッドからの熱パルスをかけられた部分の分散媒が融けた状態で磁場を印加して、表面が異なる色の領域に区分された粒子を回転させることにより、画像の書き込み、消去を行うことができる。
【0020】
次に好ましい態様を挙げて本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、加熱および磁場の同時印加により画像を表示する可逆性記録体に係り、高いコントラスト、繰り返し安定性、画像の安定性に優れた可逆性記録体を提供することができる。
【0021】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の記録層に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図であり、図2は本発明の可逆性記録体の一実施態様(未記録状態)を表わす断面図であり、図3は本発明の可逆性記録体の一部が発色している状態を表わす断面図である。
【0022】
図4は本発明の記録層に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図であり、図1とはマイクロカプセルに内包されている粒子の数が異なる。図5は、図4のマイクロカプセルを用いた本発明の可逆性記録体の一実施態様(未記録状態)を表わす断面図であり、図6は、図5の一部が発色している状態を表わす断面図である。
【0023】
図7は本発明の記録層に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図であり、図1とは粒子の着色部分の色が異なる。図8は本発明の可逆性記録体の一実施態様(未記録状態)を示す断面図である。図9は、図8の1色のみが発色している状態を表わす断面図であり、図10は、図8の2色の混色が発色している状態を表わす断面図である。
【0024】
本発明の表面が異なる色の領域に区分された粒子において、それぞれの領域の色相については特に限定されないが、互いにコントラストの良好な表示色(着色部分)及び背景色(淡色部分)の組合わせが適宜選択される。
例えば、図1は、本発明の記録層に用いられるマイクロカプセル1を示す。マイクロカプセル1の中に、表面が異なる色の領域に区分された粒子11と、室温で固体状態にある分散媒12とが、壁剤13に包まれてマイクロカプセルとなっている。粒子11の着色部分111には、磁性粉が含まれていることが好ましく、また淡色部分112には、白色の非磁性材料が含まれていることが好ましい。
【0025】
図2は、本発明の可逆性記録体2として、マイクロカプセル1を記録層に含有する一実施態様(未記録状態)を示すものであり、その初期状態を示す断面図である。バインダー23とマイクロカプセル1を分散した塗布液を、支持体21の少なくとも一面に塗工することにより、記録層22が形成される。初期状態では、粒子11の着色部分111は支持体側に向いており、淡色部分112が全面に見える。淡色部分112に、白色の非磁性材料を用いている時は、全面が白色に見える。
【0026】
図3は、マイクロカプセル1の一部が発色している状態の断面図を示す。図3の右側3つのマイクロカプセル部分に、分散媒12が融解するような熱を、例えばサーマルヘッド等を用いて印加し、分散媒12を融解させ、さらに磁界をかける。分散媒12が融解した部分のみ、マイクロカプセル中の粒子の回転が許容される。上から磁界をかけることによって、粒子は着色部分111が上に向くように回転する。結果として、図3の右側3つのマイクロカプセルは黒に見える。分散媒12が融解していない図3の左側2つのマイクロカプセルは、磁界がかかってもマイクロカプセル中の粒子は回転することができない。したがって、図3の左から2つのマイクロカプセルは白色のままである。
【0027】
図4は、マイクロカプセル1’中に複数個の粒子11が内包されている状態を表わす断面図である。このように、一つのマイクロカプセルの中に、複数個の粒子11が内包されていてもよい。コントラストのことを考慮すると、理想的には1つのマイクロカプセルに一つの粒子が内包されている方が好ましいが、実際には、1つのマイクロカプセル中に内包される粒子11の数を正確に制御することは困難で、通常1〜10個、好ましくは1〜4個の粒子が内包される。
【0028】
図5は、本発明の可逆性記録体2として、マイクロカプセル1’を記録層に含有する一実施態様(未記録状態)を示すものであり、その初期状態を示す断面図である。また、図6は、マイクロカプセル1’の一部が発色している状態の断面図を示す。発色方法等は、図3の場合と同様である。
【0029】
図7は、マイクロカプセル1とは色相の異なるマイクロカプセル7を示す断面図である。マイクロカプセル7に内包されている粒子71は、着色部分711の色が、図1に示した粒子11の着色部分111と異なる色を示す。
例えば、粒子11の着色部分111が黒色であるならば、粒子71の着色部分711は青色を示す。粒子71の着色部分711には磁性粉が含まれていることが好ましい。粒子71の淡色部分112は、粒子11と同様である。従って、淡色部分112には白色の非磁性材料が含まれていることが好ましい。また、本発明では、図1のマイクロカプセル1の分散媒12と、図7のマイクロカプセルの分散媒72との間に融点差があることが必要である。
【0030】
図8は、本発明の可逆性記録体2として、マイクロカプセル1とマイクロカプセル7とを記録層に含有する一実施態様(未記録状態)を示すものであり、その初期状態を示す断面図である。バインダー23と、マイクロカプセル1及びマイクロカプセル7とを分散した塗布液を、支持体21の一面に塗工することにより、記録層22が形成される。マイクロカプセル1とマイクロカプセル7は、記録層22の中ではランダムに配置されている。
【0031】
図9は、マイクロカプセル7のみが発色している状態の断面図を示す。分散媒72のみが溶融するような熱を、例えばサーマルヘッドなどから印加し、分散媒72を融解させると同時に上から磁界をかける。分散媒72が融解した部分のみ、マイクロカプセル中の粒子の回転が許容される。上から磁界をかけることによって、粒子は着色部分711が上に向くように回転する。この時、分散媒12は融解していないから、粒子11は回転することができない。結果として、粒子7の着色部分711の色のみを画像として見ることができる。
【0032】
図10は、マイクロカプセル1とマイクロカプセル7とが同時に発色している状態の断面図を示す。分散媒12、分散媒72の両方とも融解するような熱を、例えばサーマルヘッドなどから印加し、分散媒12、72の両方とも融解させる。同時に上から磁界をかけると、粒子11、71ともに回転することが可能となり、結果として、粒子11の着色部分111と、粒子7の着色部分711との両方の混色画像として見える。
【0033】
表面が異なる色の領域に区分された粒子としては、例えば図1、7のように、半球ずつ色分けされた2色の回転粒子粒子11、71が挙げられる。2色のうち、着色部分111、711は、磁界によって引き寄せられる成分を含み、例えば、磁性粉を含んでいるのが好ましい。着色されていない方は、白色の非磁性材料を含むことが好ましい。
【0034】
上記磁性粉は、磁性体単独、或いは2種以上の磁性体の混合、又は磁性体とポリマーからなる混合物などからなり、例えばマグネタイト、フェライトをはじめとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、もしくはこれらの元素を含む合金、または化合物の微粒子が挙げられる。その中でも、マグネタイトは、それ自身が黒色をしており、磁性粉単独で黒色に着色することができるので最も好ましく使用される。
【0035】
本発明の粒子の着色部分は、着色剤によって着色することもできる。着色剤は、顔料又は染料からなり、顔料単独、数種の顔料の混合物、顔料とポリマーからなる混合物、染料単独、数種の染料の混合物等として用いられる。例えば、顔料の場合には硫化亜鉛、チタン酸鉛、カドミウム赤、カドミウム黄等の無機顔料やフタロシアニン系顔料やカーボンブラックなどの有機系顔料などの微粒子(例えば、大きさは1nm〜1μmである)、また染料の場合にはアゾ染料、キノリン染料、フタロシアニン系染料等の各種公知のものを用いることができる。
【0036】
また、粒子の着色部分には、磁性粉と着色剤とを複合化した着色磁性粉を用いることもできる。着色磁性粉は、磁性粉を、顔料単独、または数種の顔料の混合物、または顔料とポリマーからなる混合物で被覆層を形成することで得ることができる。被覆層の形成方法としては、各種マイクロカプセル化技法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明の粒子の淡色部分には、着色部分とのコントラストが良好であればよく、公知の染料、もしくは顔料を用いることができ、好ましくは白色の非磁性材料が使用される。例えば、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化ジルコニウム、鉛白、等の無機顔料、あるいはナイロンフィラー、スチレン−アクリル系フィラーなどの有機フィラーなどが好ましく用いられる。これらを単独、もしくは2種類以上の混合で使用してもよい。磁性粉の色を隠蔽させる目的から屈折率の高い顔料が好ましく、酸化チタンが最も好適に利用される。
【0038】
表面が異なる色の領域に区分された粒子の製造方法としては、色の異なる2種類の溶融ワックスを結合させて粒子化する方法(例えば、特開平6−226875号公報参照。)、表裏で色の異なる2つの組成物を貼合し、粒子になるように加工する方法(例えば、特開2002−99005号公報参照。)、色の異なる液滴を空気中で接触させて一つの液滴とし、反応液によって瞬時に固める方法(例えば、特開2004−184804号公報参照。)などの公知の方法を用いることができる。
【0039】
本発明の粒子を構成する材料としては、画像の書き込み、消去を行うときに、サーマルヘッド、熱スタンプ、磁気ヘッド、磁石、プラテンロールなどから受ける圧力に耐えうるものであれば特に限定されることなく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリウレア系樹脂、アクリルアミド系樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体、キチン・キトサンおよびそれらの誘導体、アルギン酸系樹脂などを使用することができる。
【0040】
粒子の粒子径は、10〜200μmが好ましく、より好ましくは20〜100μm、さらに好ましくは20〜80μmである。粒子径が10μmよい小さいと、着色部分と、淡色部分との区別がつきにくくなり、十分なコントラストが得られないことがある。一方、粒子径が200μmより大きいと、粒子をマイクロカプセルに内包することが困難となることがある。
【0041】
また、粒子の形状について、磁界によってマイクロカプセル内でのスムースな回転運動をするためには、我々が種々検討した結果では、粒子のアスペクト比は1〜1.5が好ましく、可能な限り球形(アスペクト比:1)に近い方がより好ましい。
【0042】
マイクロカプセルに含まれる分散媒としては、常温(約10〜35℃の範囲)で固体のもの(固相状態を示す)で、かつ常温以上の温度(約40〜150℃の範囲)に加熱されると流動状態になるものであればよく、上記条件を満たす一般に公知の化合物が用いられ、例えばパラフィンワックス、カルナバワックスなどの天然或いは合成ワックス、天然或いは合成樹脂、またはカルボン酸エステル等が挙げられ、単独、或いは混合して適宜使用することができる。
【0043】
分散媒の融点としては、30℃から130℃が好ましく、より好ましくは35℃から100℃である。融点が30℃より低いと、常温で流動状態になってしまい、画像が乱れてしまうおそれがある。逆に融点が130℃より高いと、分散媒が印加した熱によって融けることができず、例え融けたとしても溶融粘度が高過ぎて粒子が回転できないことがある。
【0044】
例えば、図9、図10のような2色以上の表示を可能とするためには、異なる色相を示すマイクロカプセルの色ごとに用いる分散媒の融点を変えなければならない。色ごとに用いる分散媒の融点差は5℃以上が好ましく、10℃以上100℃以下がより好ましい。融点差が5℃より小さいと、融点の低い分散媒を用いた方の色を表示させたい時、融点の高い分散媒を用いた方の色が混合して、彩度が落ちてしまうことがある。
【0045】
さらに、3色以上の表示をするためには、それぞれの色のマイクロカプセルに用いる分散媒の融点差を5℃以上とするのが好ましい。例えば、マイクロカプセルAが黄色(分散媒Aを含有)、マイクロカプセルBが赤色(分散媒Bを含有)、マイクロカプセルCが黒色(分散媒Cを含有)とすると、分散媒Aと分散媒Bの融点の差、および分散媒Bと分散媒Cの融点の差が、何れも5℃以上であることが好ましい。さらに、分散媒Aの融点<分散媒Bの融点<分散媒Cの融点、の関係を満たすことが好ましい。この様な構成にすることにより、マイクロカプセルA単色の画像、マイクロカプセルA,Bの混色、あるいはマイクロカプセルA,B,C全ての混色、の3種の色を出すことができる。4色以上の色を出す場合も、同様な原理を用いることができる。
【0046】
本発明においてマイクロカプセルの製造法としては、天然ゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースのブレンド物によってカプセルを形成するコアセルベーション法、尿素とホルムアルデヒドとを、水−油混合反応系で、in situで重合させるin situ重合法、油相のジアミン化合物と水相のジカルボン酸とを水−油の界面で重合させる界面重合法など、様々な方法が考えられるが、これらの方法に限定されるものではない。重合反応中の攪拌羽の回転数によって容易にマイクロカプセルの平均粒径を制御できることから、好適にはコアセルベーション法が用いられる。
【0047】
マイクロカプセルの平均粒径は、粒子がマイクロカプセル内で回転運動をすることを考慮すると、10〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは30〜300μmである。マイクロカプセルの平均粒径が10μmより小さいと、粒子がマイクロカプセル内で回転することができなくなる。また、平均粒径が500μmより大きいと、マイクロカプセルの層が厚くなり過ぎて、製膜が難しくなることや、また分散媒を融解させるのに必要な印加エネルギーが大きくなり過ぎることがあり、好ましくない。
【0048】
可逆性記録体の支持体としては、磁石に対する感受性のない材料、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン,ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂類、天然樹脂、紙、合成紙、金属、セラッミクスなどを単独または組み合わせた複合体として用いることができる。またその形状もカード状あるいはシート状、フィルム状など用途に応じて選択でき、さらに用途に応じて要求される物性、例えば強度、剛性、隠蔽性、光不透過性等を考慮し、上記材料から適宜選択することができる。
【0049】
支持体の厚さは、30μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上である。支持体の厚さが30μmより薄いと、マイクロカプセル層との厚さのバランスが悪くなることや、また記録紙としての質感も悪くなることがある。支持体の厚さの上限については、用途によっても異なり一概には言えないが、例えばカード等の場合には3mm程度が上限である。
【0050】
また、マイクロカプセルを分散するバインダーとしては、水系バインダー、溶剤系バインダー、エマルジョン系バインダー等が適宜用いられる。好ましくは水系バインダー、さらに水系バインダーの中でも、製膜性、塗膜の表面強度等が良好なポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダーが好適に用いられる。
【0051】
マイクロカプセルをバインダー中に分散させた塗工液を、非磁性材料からなる支持体21上に塗工するには、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、リップコーター、およびスライドビードコーター等、各種公知の塗工装置が利用できる。
【0052】
発色または消去させたい部分の分散媒を溶融させる手段としては、サーマルヘッド、熱スタンプ、熱バーなど、公知の手段が使用でき、限定されるものではないが、解像度、経済性、といった観点からサーマルヘッドが好適に用いられる。分散媒を溶融させた後、磁場によって粒子を回転させて画像の発色・消色を行うが、加熱してから磁場を印加するまでの時間は、0〜2秒が好ましく、より好ましくは0〜1秒である。分散媒として、例えばワックスを使用している場合には、溶融してから2秒以上放置されても、ワックスの潜熱の大きさから固化してしまうことはないが、溶融粘度が増加して粒子の回転性が悪くなったり、プリント速度が遅くなることがあり、磁場を印加するまでの時間として、2秒以上は好ましくない。一方、加熱後、磁場を印加するまでの時間が短くなることについては、何ら問題は発生しない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。これらの例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り、すべて「質量%」及び「質量部」である。
【0054】
<粒子aの製造>
磁性粉(商品名:BL−100、チタン工業製、平均粒径0.4μm)10部、純水90部、分散剤0.05部(商品名:SNスパース5045、サンノプコ製)を混合したものを、ホモミキサーによって混合分散した。この分散液100部に対して、2.9%アルギン酸ナトリウム(和光純薬特級)水溶液を100部混合し、スリーワンモーターにて攪拌した。この液をA液とする。
次に、酸化チタン(商品名:TITANIX JRNC、テイカ製、平均粒径0.3μm)10部、純水90部、分散剤0.05部(商品名:SNスパース5045、サンノプコ製)を混合したものを、ホモミキサーによって混合分散した。この分散液100部に対して、2.9%アルギン酸ナトリウム(和光純薬特級試薬)水溶液を100部混合し、スリーワンモーターにて攪拌した。この液をB液とする。
A液、B液を各々シリンジに採取し、空気中でそれぞれの液滴を接触させて、3%塩化カルシウム(和光純薬特級試薬)水溶液中に落下させた。アルギン酸ナトリウムが、カルシウムイオンと反応することによりゲル化し、粒子径約200μmの粒子となった。この粒子をデカンテーションにより回収し、水洗した後、メタノールで洗浄し、一昼夜以上風乾させた。風乾後の粒子の粒子径は約50μmであった。こうして、着色部分が黒色である粒子aを得た。
【0055】
<粒子bの製造>
磁性粉(商品名:BL−100、チタン工業製、平均粒径0.4μm)5部、フタロシアニンブルー(商品名:T−22S、山陽色素製)5部、純水90部、分散剤0.05部(商品名:SNスパース5045、サンノプコ製)を混合したものを、ホモミキサーによって攪拌した。この分散液100部に対して、2.9%アルギン酸ナトリウム(和光純薬特級)水溶液を100部混合し、スリーワンモーターにて攪拌した。この液をC液とする。
C液と、粒子aの製造で用いたB液を各々シリンジにとり、空気中でそれぞれの液滴を接触させて、3%塩化カルシウム(和光純薬特級試薬)水溶液中に落下させた。アルギン酸ナトリウムが、カルシウムイオンと反応することによりゲル化し、粒子径約200μmの粒子となった。この粒子をデカンテーションにより回収し、水洗した後、メタノールで洗浄し、一昼夜以上風乾させた。風乾後の粒子の粒子径は約50μmであった。こうして、着色部分が青色である粒子bを得た。
【0056】
<粒子cの製造>
磁性粉(商品名:BL−100、チタン工業製、平均粒径0.4μm)5部、フタロシアニンブルー(商品名:T−22S、山陽色素製)5部、40%アクリルエマルジョン水溶液6.25部、純水8.75部、分散剤(商品名:SNスパース5045、サンノプコ製)0.05部を混合し、分散液を調製した。この液を、温度75℃、流量20m/分の温風中に霧状に吹き込んだ。5〜10分間温風中で処理した後、着色された磁性粉を回収し、一昼夜以上風乾燥させた後、粒子径約2μmの青色に着色された磁性粉を得た。
【0057】
上記の着色された磁性粉10部、純水90部、分散剤0.05部(商品名:SNスパース5045、サンノプコ製)を混合したものを、ホモミキサーによって攪拌した。この分散液100部に対して、2.9%アルギン酸ナトリウム(和光純薬特級)水溶液を100部混合し、スリーワンモーターにて攪拌した。この液をD液とする。
D液と、粒子aの製造で用いたB液を各々シリンジにとり、空気中でそれぞれの液滴を接触させて、3%塩化カルシウム(和光純薬特級試薬)水溶液中に落下させた。アルギン酸ナトリウムが、カルシウムイオンと反応することによりゲル化し、粒子径約200μmの粒子となった。この粒子をデカンテーションにより回収し、水洗した後、メタノールで洗浄し、一昼夜以上風乾させた後、着色部分が青色である粒子cを得た。なお、風乾後の粒子の粒子径は約50μmであった。
【0058】
<マイクロカプセルAの製造>
粒子a1部を、60℃で溶融させたパラフィンワックス(関東化学製、融点52℃)8部の中に均一に分散させた。この分散液を、60℃のままで超音波処理を5分間行った。この分散液を、予め60℃に温めた1%ゼラチン水溶液30部の中に、2000rpmで攪拌しながら添加した。5から10分間攪拌した後、10%アラビアゴム水溶液を30部、純水を100部添加し、液の温度を40℃とした。ここでpHが4.0になるように10%酢酸水溶液で調整し、その後、液の温度を5℃まで冷却し、37%ホルマリン水溶液を10部添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整した。その後一度50℃まで昇温した。50℃にしてから10分後に、ゼラチン−アラビアゴム系マイクロカプセルが生成し、平均粒径200μmのマイクロカプセルAが得られた。このマイクロカプセルを200倍程度の倍率の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロカプセル1個あたり、粒子aが1〜4個入っていた。
【0059】
<マイクロカプセルBの製造>
粒子a1部を、70℃で溶融させたパラフィンワックス(商品名:PARAFFINWAX−140、日本精蝋製、融点61.1℃)8部の中に均一に分散させた。この分散液を、70℃のままで超音波処理を5分間行った。この分散液を、予め70℃に温めた1%ゼラチン水溶液30部の中に、2000rpmで攪拌しながら添加した。5から10分間攪拌した後、10%アラビアゴム水溶液を30部、純水を100部添加し、液の温度を40℃とした。ここでpHが4.0になるように10%酢酸水溶液で調整し、その後、液の温度を5℃まで冷却し、37%ホルマリン水溶液を10部添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整した。その後一度50℃まで昇温した。50℃にしてから10分後に、ゼラチン−アラビアゴム系マイクロカプセルが生成し、平均粒径200μmのマイクロカプセルBが得られた。このマイクロカプセルを200倍程度の倍率の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロカプセル1個あたり、粒子aが1〜4個入っていた。
【0060】
<マイクロカプセルCの製造>
粒子b1部を、60℃で溶融させたパラフィンワックス(商品名:PARAFFINWAX−120、日本精蝋製、融点49.9℃)8部の中に均一に分散させた。この分散液を、60℃のままで超音波処理を5分間行った。この分散液を、予め60℃に温めた1%ゼラチン水溶液30部の中に、2000rpmで攪拌しながら添加した。5から10分間攪拌した後、10%アラビアゴム水溶液を30部、純水を100部添加し、液の温度を40℃とした。ここでpHが4.0になるように10%酢酸水溶液で調整し、その後、液の温度を5℃まで冷却し、37%ホルマリン水溶液を10部添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整した。その後一度50℃まで昇温した。50℃にしてから10分後に、ゼラチン−アラビアゴム系マイクロカプセルが生成し、平均粒径200μmのマイクロカプセルCが得られた。このマイクロカプセルを200倍程度の倍率の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロカプセル1個あたり、粒子bが1〜4個入っていた。
【0061】
<マイクロカプセルDの製造>
マイクロカプセルCの製造において、粒子bの代わりに粒子cを用いた以外は、マイクロカプセルCと同様の方法でマイクロカプセルDを製造した。マイクロカプセルDの平均粒径は200μmであった。このマイクロカプセルを200倍程度の倍率の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロカプセル1個あたり、粒子cが1〜4個入っていた。
【0062】
<マイクロカプセルEの製造>
マイクロカプセルAの製造において、パラフィンワックス(関東化学製、融点52℃)の代わりに、シリコーンオイル(商品名:TSF−451−0.65、GE東芝シリコーン製、融点−59℃)を用いた以外は、マイクロカプセルAの同様の方法で、マイクロカプセルEを製造した。マイクロカプセルEの平均粒径は200μmであった。このマイクロカプセルを200倍程度の倍率の光学顕微鏡で観察した結果、マイクロカプセル1個あたり、粒子aが1〜4個入っていた。
【0063】
<マイクロカプセルFの製造>
フレーク状磁性粉(四三酸化鉄、関東化学製鹿1級試薬、平均粒径4μm)1部、酸化チタン(商品名:TITANIX JRNC、テイカ製、平均粒径0.3μm)5部を、乳鉢等で物理的に混合し、60℃で溶融させたパラフィンワックス(関東化学製、融点52℃)8部の中に均一に分散させた。この分散液を、60℃のままで超音波処理を5分間行なった。この分散液を、予め60℃に温めた1%ゼラチン水溶液30部の中に、2000rpmで攪拌しながら添加した。5から10分間攪拌した後、10%アラビアゴム水溶液を30部、純水を100部添加し、液の温度を40℃とした。ここでpHが4.0になるように10%酢酸水溶液で調整し、その後、液の温度を5℃まで冷却し、37%ホルマリン水溶液を10部添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを9.0に調整した。その後、50℃まで昇温した後、10分後、ゼラチン−アラビアゴム系マイクロカプセルが生成し、平均粒径200μmのマイクロカプセルFが得られた。
【0064】
実施例1
絶乾換算でマイクロカプセルA10部、ポリウレタンバインダー(商品名:NeoRez R−9679、Avecia社製)1部を混合した塗工液を調製した。塗工液の濃度は約30%であった。支持体として、紙をポリプロピレン系フィルムで挟んだ3層貼合紙(厚さ300μm)を用い、その上に、塗工液をアプリケーターで塗工し、60℃、30分間乾燥させて記録紙を得た。最終的な塗工層(記録層)の厚さは250μmであった。
得られた記録紙を、120℃の熱スタンプを記録面に当てて、記録面の反対側から磁石を走査させ、可逆性記録体を得た。
【0065】
実施例2
実施例1において、マイクロカプセルA10部の代わりに、マイクロカプセルA5部、およびマイクロカプセルC5部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で2色可逆性記録体を得た。
【0066】
実施例3
実施例2において、マイクロカプセルCの代わりに、マイクロカプセルDを用いた以外は、実施例2と同様の方法で2色可逆性記録体を得た。
【0067】
実施例4
実施例3において、マイクロカプセルAの代わりに、マイクロカプセルBを用いた以外は、実施例3と同様の方法で2色可逆性記録体を得た。
【0068】
比較例1
実施例1において、マイクロカプセルAの代わりに、マイクロカプセルEを用いた以外は、実施例1と同様の方法で可逆性記録体を得た。
【0069】
比較例2
マイクロカプセルAの代わりに、マイクロカプセルFを用いた以外は、実施例1と同様にして記録紙を作成した。
得られた記録紙を、120℃の熱スタンプを記録面に当てて、さらに記録面より磁気ヘッドにて垂直磁場を与え、フレーク状磁性粉を垂直に配向させて、可逆性記録体を得た。
【0070】
評価
上記方法で作成した可逆性記録体について、下記のような評価を行ない、その評価結果を表1に示した。
〔プリンター印字〕
実施例1〜4、および比較例1は、図11に示すような方法で、印字評価を行った。図11において、可逆性記録体2の記録層22側に、プリンターのサーマルヘッド31が当たるようにする。プラテンロール33で矢印方向に搬送しながら、磁石32で、分散媒が融解している部分の粒子を回転させて、書き込み記録を行う。
【0071】
比較例2においては、図12のような方法で印字評価を行った。図11の方法との違いは、図11の32にあたる磁石が、図12では磁気ヘッド41になっていることである。磁気ヘッド41より水平磁場を印加し、分散媒が融解している部分の磁性粉の配向を垂直から水平に変化させる。
【0072】
印字に使用したプリンターは、熱転写用プリンター試験機(商品名:TH−PMD、大倉電機製)を用いた。印加電圧25V、パルス幅1.25m秒から20m秒までの間を16階調で区切った。
【0073】
〔画像のコントラスト〕
画像のコントラストとして、20m秒のパルス幅で印字した黒ベタ部の反射濃度と、サーマルヘッドからの熱が全くかかっていない白紙部分との反射濃度とを、官能的に評価した。白色度80%のOA古紙に、普通のコピー印刷した文書のコントラストを基準とした。
○:OA古紙よりコントラストが高い。
×:OA古紙よりコントラストが低い。
【0074】
〔画像の保存性〕
印字した可逆性記録体を、35℃、85%RHの環境下に2週間放置し、画像の乱れを目視にて官能評価した。
○:画像の乱れが殆どない。
×:初期の画像との区別がつかなくなる。
【0075】
〔2色の発色状態〕
実施例2〜4については、パルス幅の短い部分での青の発色と、パルス幅の長い部分での黒の発色が、きれいに分かれて発色しているかを官能的に評価した。
○:青と黒がはっきり区別できる。
△:青と黒が僅かに混じって見えているが、実用可能な程度である。
【0076】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の請求項の範囲内である実施例1〜4の可逆性記録体は、コントラストが通常のOA古紙以上に高く、また、室温で固体の分散媒を用いているために、高温高湿下に長く放置されていても画像の乱れが殆どない。また、磁性粒子の回転による画像の書き込み、消去を繰り返す方式なので、ほぼ半永久的に書き込み、消去を知り返すことができる。
また、実施例2、3のように、2色の発色が可能な可逆性記録体を提供することもできる。さらに、実施例4のように、融点差が5℃以上ある場合には、2色の発色状態はより良くなる。一方、比較例1のように、室温で液体の分散媒では、高温高湿下におかれると画像が乱れてしまうという欠点を有している。また、比較例2のように、磁性粉の配向だけで画像の書き込み、消色を繰り返す方式では、コントラストが低いという問題が解消できない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、熱および磁場の印加によって、画像の書き込み、消去を繰り返すことのできる可逆性記録体として、高いコントラスト、繰り返し安定性、画像の安定性に優れる可逆性記録体を得ることが可能となる。従って、本発明の可逆性記録体は、実用上の価値の極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の可逆性記録体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の可逆性記録体において、一部が発色している状態を表わす断面図である。
【図4】本発明に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図である。
【図5】本発明の可逆性記録体の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の可逆性記録体において、一部が発色している状態を表わす断面図である。
【図7】本発明に用いられるマイクロカプセルの一例を示す断面図である。
【図8】本発明の可逆性記録体の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の可逆性記録体において、1色のみが発色している状態を表わす断面図である。
【図10】本発明の可逆性記録体において、2色の混色が発色している状態を表わす断面図である。
【図11】印字評価方法の一例を示す断面図である。
【図12】印字評価方法の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 マイクロカプセル
1’ マイクロカプセル
2 可逆性記録体
7 マイクロカプセル
11 粒子
12 分散媒
13 壁剤
21 支持体
22 記録層
23 バインダー
31 プリンターのサーマルヘッド
32 磁石
33 プラテンロール
41 磁気ヘッド
71 粒子
72 分散媒
111 粒子の着色部分
112 粒子の淡色部分
711 粒子の着色部分



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の少なくとも一面に形成された記録層とを有し、前記記録層が、表面が異なる色の領域に区分された粒子と室温で固体状態の分散媒との混合物を内包するマイクロカプセルを含有し、熱および磁場の印加によって、分散媒の融解した部分の粒子が回転することにより、画像の書き込み、消去を繰り返すことができることを特徴とする可逆性記録体。
【請求項2】
前記粒子が、磁性粉を含む着色部分と白色の非磁性材料を含む淡色部分とを有する請求項1記載の可逆性記録体。
【請求項3】
前記記録層が、着色部分の色が各々異なる粒子を内包し、かつ該粒子の着色部分の色ごとに異なった融点を有する分散媒を用いた、異なる色相を示す2種以上のマイクロカプセルを含有する請求項1または2記載の可逆性記録体。
【請求項4】
前記分散媒が、融点30〜130℃の有機化合物であり、かつ、各粒子の着色部分の色ごとに用いる分散媒の融点の差が5℃以上である請求項3記載の可逆性記録体。
【請求項5】
前記支持体が、紙、プラスチックフィルム、およびこれらの積層体から選択された一種であり、かつ支持体の全厚さが30μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の可逆性記録体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−116713(P2006−116713A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303893(P2004−303893)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】