説明

可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料

【課題】 電子受容性化合物として特定のフェノール性水酸基を有するヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いることにより、可逆熱変色機能を発現させることのできる可逆変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(1)で示される化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物、及び、前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1又は2の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。更に詳細には、昇温により消色し、降温により発色する可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と、電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の相溶体からなる可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関して幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
前記可逆熱変色性組成物に含まれる電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して電子供与性呈色性有機化合物を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群などが挙げられ、特にフェノール性水酸基を有する化合物が有効な熱変色特性を発現させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−11242号公報
【特許文献2】特開2002−53853号公報
【特許文献3】特開2010−106052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物に適用される(ロ)電子受容性化合物について検討した結果、特定のフェノール性水酸基を有するヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いると可逆熱変色機能を発現できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(1)で示される化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物を要件とする。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1又は2の整数を示す。)
更には、前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、特定のフェノール性水酸基を有するヒドロキシ安息香酸エステル化合物を用いることにより、電子供与性呈色性有機化合物との電子授受反応を満たし、更に(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とを混合して相溶体とすることにより可逆熱変色機能を十分に発現させることのできる可逆変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図2】色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記可逆熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記可逆熱変色性組成物は、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性を有する(図1参照)。
また、大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0009】
以下に各(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に説明する。
本発明の(イ)成分の電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3′,6′−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0010】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、一般式(1)で示されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物が用いられる。
前記一般式(1)で示されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物として具体的には、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―o―メチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―m―メチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―メチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―エチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―プロピルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―tert−ブチルベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―o―メチルフェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―m―メチルフェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―メチルフェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―エチルフェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―プロピルフェニルエチル、4−ヒドロキシ安息香酸―p―tert−ブチルフェニルエチルを例示できる。
【0011】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記化合物を用いてマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0012】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸n−デシル、ミリスチン酸3−メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p−tert−ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ−(n−ノニル)、1,18−オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5−ペンタンジオールジステアレート、1,2,6−ヘキサントリオールトリミリステート、1,4−シクロヘキサンジオールジデシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0013】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2−エチルヘキシル、ベヘン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5−トリメチルヘキシル、カプロン酸2−メチルブチル、カプリル酸2−メチルブチル、カプリン酸2−メチルブチル、パルミチン酸1−エチルプロピル、ステアリン酸1−エチルプロピル、ベヘン酸1−エチルプロピル、ラウリン酸1−エチルヘキシル、ミリスチン酸1−エチルヘキシル、パルミチン酸1−エチルヘキシル、カプロン酸2−メチルペンチル、カプリル酸2−メチルペンチル、カプリン酸2−メチルペンチル、ラウリン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸2−メチルブチル、ステアリン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸2−メチルブチル、ベヘン酸3−メチルブチル、ステアリン酸1−メチルヘプチル、ベヘン酸1−メチルヘプチル、カプロン酸1−エチルペンチル、パルミチン酸1−エチルペンチル、ステアリン酸1−メチルプロピル、ステアリン酸1−メチルオクチル、ステアリン酸1−メチルヘキシル、ラウリン酸1,1−ジメチルプロピル、カプリン酸1−メチルペンチル、パルミチン酸2−メチルヘキシル、ステアリン酸2−メチルヘキシル、ベヘン酸2−メチルヘキシル、ラウリン酸3,7−ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7−ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7−ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7−ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7−ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7−ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12−ヒドロキシステアリン酸2−メチルペンチル、18−ブロモステアリン酸2−エチルヘキシル、2−ケトミリスチン酸イソステアリル、2−フルオロミリスチン酸2−エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0014】
更に、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4−17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0015】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデルシ、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等が挙げられる。
【0016】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0017】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N−メチルアミド、カプリル酸N−メチルアミド、カプリン酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−メチルアミド、ミリスチン酸N−メチルアミド、パルミチン酸N−メチルアミド、ステアリン酸N−メチルアミド、ベヘニン酸N−メチルアミド、オレイン酸N−メチルアミド、エルカ酸N−メチルアミド、ラウリン酸N−エチルアミド、ミリスチン酸N−エチルアミド、パルミチン酸N−エチルアミド、ステアリン酸N−エチルアミド、オレイン酸N−エチルアミド、ラウリン酸N−ブチルアミド、ミリスチン酸N−ブチルアミド、パルミチン酸N−ブチルアミド、ステアリン酸N−ブチルアミド、オレイン酸N−ブチルアミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、ミリスチン酸N−オクチルアミド、パルミチン酸N−オクチルアミド、ステアリン酸N−オクチルアミド、オレイン酸N−オクチルアミド、ラウリン酸N−ドデシルアミド、ミリスチン酸N−ドデシルアミド、パルミチン酸N−ドデシルアミド、ステアリン酸N−ドデシルアミド、オレイン酸N−ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N−メチルアミド、アジピン酸N−メチルアミド、グルタル酸N−メチルアミド、マロン酸N−メチルアミド、アゼライン酸N−メチルアミド、コハク酸N−エチルアミド、アジピン酸N−エチルアミド、グルタル酸N−エチルアミド、マロン酸N−エチルアミド、アゼライン酸N−エチルアミド、コハク酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−ブチルアミド、グルタル酸N−ブチルアミド、マロン酸N−ブチルアミド、アジピン酸N−オクチルアミド、アジピン酸N−ドデシルアミド等が挙げられる。
【0019】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(2)で示される化合物を用いることもできる。
【化2】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(2)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(2)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(3)で示される化合物が用いられる。
【化3】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0020】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0021】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0022】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】

(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0023】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0024】
本発明の可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、(ハ)成分5〜100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0025】
更に、各種光安定剤を必要により添加することができる。
前記光安定剤は、(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物の光劣化を防止するために含有され、(イ)成分1質量%に対して0.3〜24質量%、好ましくは0.3〜16質量%の割合で含有される。又、前記光安定剤のうち、紫外線吸収剤は、太陽光等に含まれる紫外線を効果的にカットして、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する。又、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等は、光による酸化反応を抑制する。
前記光安定剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
前記可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用することが好ましい。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.01〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.5〜20μmの範囲が実用性を満たす。
なお、粒子径の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
【0027】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料は、水及び/又は有機溶剤と必要により各種添加剤を含むビヒクル中に分散してスクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷インキ、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料、インクジェット用インキ、紫外線硬化型インキ、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具又は塗布具用インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液等の可逆熱変色性液状組成物として利用できる。
前記液状組成物には各種添加剤を添加することができ、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
前記した液状組成物を用いて各種材質及び形状の支持体上に可逆熱変色層を設けて可逆熱変色性積層体が形成される。
なお、前記可逆熱変色層は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の成分(添加剤)により形成される層であり、前記マイクロカプセル顔料は樹脂に分散状態に固着されてなる。
前記液状組成物を塗布する支持体の材質は特定されず、総て有効であり、紙、合成紙、糸、繊維、布帛、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
前記支持体上に非熱変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、温度変化により前記着色層を隠顕させることができ、変化の様相を更に多様化させることができる。
更に、前記液状組成物を用いて支持体上に可逆熱変色層を設ける他、予め可逆熱変色層を設けた転写シートを用いて支持体上に可逆熱変色層を形成することもできる。
また、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態として可逆熱変色性成形用樹脂組成物として利用できる。
前記成形用樹脂を用いて、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
また、熱可塑性樹脂やワックス類に溶融ブレンドしてクレヨン、鉛筆芯、シャープペンシル芯を得ることもできる。
なお、前記液状組成物や成形用樹脂組成物中に一般の染料や顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記積層体、或いは、樹脂組成物を用いて成形した成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤を例示できる。
前記透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
【0028】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料を用いた製品として具体的には、人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具、乗物、動物、植物、建築物、食品等を模した玩具、Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、ふろしき等の布製身の回り品、絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、額縁、造花等の屋内装飾品、布団、枕、マットレス等の寝具、指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ等のアクセサリー、筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、粘着テープ等の文房具類、口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等の台所用品、カレンダー、ラベル、カード、記録材、偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、手袋、ネクタイ、帽子、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、歯ブラシ、コースター、時計、眼鏡、照明器具、冷暖房器具、楽器、カイロ、蓄冷剤、写真立て、財布等の袋物、傘、家具、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、教習具を例示できる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示す。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン3.0部、(ロ)成分として4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル6.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸n−ノニル50.0部を混合し、均一に加温溶解して黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物と、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けてマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離して、黒色から無色に変色する平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)は13℃、発色開始温度(t)は20℃、消色開始温度(t)は28℃、完全消色温度(t)は33℃であった。
【0030】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン2.0部、(ロ)成分として4−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル6.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部を混合し、均一に加温溶解して黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物と、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けてマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離して、ピンク色から無色に変色する平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)は−15℃、発色開始温度(t)は−5℃、消色開始温度(t)は47℃、完全消色温度(t)は62℃であった。
【0031】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン2.0部、(ロ)成分として4−ヒドロキシ安息香酸フェニルエチル6.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸−p−メチルベンジル50.0部を混合し、均一に加温溶解して黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物と、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けてマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離してマイクロカプセル顔料を単離して、ピンク色から無色に変色する平均粒子径が2.5μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)は−2℃、発色開始温度(t)は11℃、消色開始温度(t)は32℃、完全消色温度(t)は49℃であった。
【0032】
実施例4
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として
4−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルフェニルエチル5.0部、(ハ成分としてステアリン酸ステアリル50.0部を混合し、均一に加温溶解して青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物と、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けてマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、界面重合法によりマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)は43℃、発色開始温度(t)は51℃、消色開始温度(t)は45℃、完全消色温度(t)は58℃であった。
【0033】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として4−ヒドロキシ安息香酸−p−エチルベンジル5.0部、(ハ)成分としてデカン酸オクタデシル50.0部を混合し、均一に加温溶解して青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物と、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー25.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けてマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、界面重合法によりマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、青色から無色に変色する平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度(t)は26℃、発色開始温度(t)は31℃、消色開始温度(t)は30℃、完全消色温度(t)は39℃であった。
【0034】
なお、前記各温度(t、t、t、t)は、マイクロカプセル顔料40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合した可逆熱変色性インキを用いて、スクリーン印刷により上質紙に所定の大きさの円(可逆熱変色層)を印刷して試験試料を作製し、色差計〔TC−3600型色差計、東京電色(株)製〕の測定部にセットし、完全発色温度以下から完全消色温度以上までの温度範囲で10℃/分の速度で加熱及び冷却し、各温度における色濃度を測定して求めた。
【0035】
応用例1
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部(予め13℃以下に冷却して黒色に発色させたもの)を、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)78.0部、消泡剤2.0部からなるビヒクルに均一に分散させて可逆熱変色性インキを調製した。
上質紙に、前記可逆熱変色性インキを用いてグラビア印刷により縞模様を印刷して印刷物を得た。前記印刷物は室温(25℃)では黒色の縞模様が視認されており、手触により33℃以上に加熱すると無色となり、この状態は13℃以下に冷却しない限り維持することができた。
なお、前記紙面を13℃以下に冷却すると、再び縞模様が視認され、前記変色挙動は繰り返し再現することができた
【0036】
応用例2
ボールペンの調製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め−15℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)20部、キサンタンガム0.3部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透剤性付与剤0.5部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防腐剤0.2部、水58.9部からなる可逆熱変色性インキ組成物を調製した。
前記可逆熱変色性インキ組成物をポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させ、先軸胴、後軸胴を組み付け、キャップを嵌めた後、遠心分離により脱気処理を行い、ボールペンを得た。
なお、前記後軸筒後部に摩擦体としてSEBS製ゴムを装着してなる。
前記ボールペンを用いて紙面に筆記してピンク色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)でピンク色を呈しており、摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は−15℃以下に冷却しない限り維持することができた。
なお、前記紙面を冷凍庫に入れて−15℃以下に冷却すると、再び文字がピンク色になる変色挙動を示し、前記変色挙動は繰り返し再現することができた。
【0037】
応用例3
実施例3で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部(予め−2℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)を、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)78.0部、消泡剤2.0部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて可逆熱変色性インキを調製した。
上質紙からなる商品券に、前記可逆熱変色性インキを用いてグラビア印刷により偽造判別マークを印刷した。前記偽造判別マークは室温(25℃)ではピンク色を呈しており、体温や環境温度では色変化しないが、49℃以上に加熱すると無色となり、この状態は−2℃以下に冷却しない限り維持することができた。
前記商品券の偽造判別マークは室温温度域ではピンク色を呈して色変化しないため、偽造判別マークであることを識別できないが、49℃以上に加熱すると無色となることから、偽造防止機能を有していた。
【0038】
応用例4
実施例4で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料5部、分散剤1部、非熱変色性ピンク色顔料0.1部、ポリプロピレンホモポリマー93.9部をエクストルーダーにて180℃で溶融混合して感温変色性色彩記憶性ペレットを得た。
前記ペレットを用いて、射出成形機にてシリンダー温度180℃でプラスチックカップを成形した。前記プラスチックカップは室温(25℃)では紫色を呈しているが、加温により58℃以上の温度でピンク色となった。この状態から降温すると43℃以下の温度で再び紫色となった。
前記プラスチックカップに飲料を入れ、電子レンジで加熱したところ、紫色からピンク色へ変色し、内部の飲料が58℃以上の温度となったことを容易に確認することができた。加熱によりピンク色へ変色した前記プラスチックカップを電子レンジから取出して室温に放置すると、ピンク色から再び紫色に変色し、カップ内の飲料が43℃以下の温度になったことを容易に確認することができた
【0039】
応用例5
実施例5で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料15部、50%アクリル樹脂/キシレン溶液40部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部、ポリイソシアネート系硬化剤5部からなるビヒクル中に攪拌混合して可逆熱変色性スプレー塗料を得た。
前記、可逆熱変色性スプレー塗料を、白色のミニチュアカーのボディ全体にスプレー塗装を施して乾燥して可逆熱変色層を設け、可逆熱変色性ミニチュアカーを得た。
前記ミニチュアカーは、室温(25℃)下では可逆熱変色層が青色に発色しているが、39℃の温水に浸漬すると白色となった。温水から取り出して室温下で放置すると再び青色になり、前記の様相は繰り返し行うことができた。
【符号の説明】
【0040】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(1)で示される化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは1又は2の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。

【図1】
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【図2】
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