説明

可逆的な水素吸蔵用の不安定化触媒化ホウ水素化物

【課題】ホウ水素化物に水素を吸蔵すると、加熱又は水と混合することで水素を放出できるが、水素の放出が高温になること等がホウ水素化物の使用を制限する。加えて、ホウ水素化物は一般的に水素放出の後、再び水素化物にできない。それゆえ、低温で水素を放出し、再び水素化物にできる水素吸蔵材料の必要性がある。
【解決手段】Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、化学式M(BH4Xの第1の材料を用意し、M(AlH4X、M(AlH4XとMClXの混合物、MClXとAlの混合物、MClXとAlH3の混合物、MHXとAlの混合物、Al、及びAlH3から選択される第2の材料を用意する、ステップを含む水素吸蔵材料の形成方法。第1の材料よりも低い水素放出温度を有し、第2の材料よりも高い水素質量密度を有する第3の材料を形成する時間、第1と第2の材料を高温の高水素ガス圧力下で組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省によって締結された契約No.DE−AC0996−SR18500に基づく政府の支援によってなされたものである。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、水素吸蔵材料、特に、熱力学特性に優れた水素吸蔵材料に関する。
【背景技術】
【0003】
ガス状水素吸蔵に利用される現在の技術は、5000〜10000psiの範囲のような非常に高い圧力下でも低い体積吸蔵ガス密度に限られる。ガス状水素の体積エネルギー密度は、ガソリンの体積エネルギー密度よりも低い。代替燃料としての水素の使用はこの低いエネルギー密度のために制限される。約20Kの温度での水素の極低温吸蔵は、ガス状吸蔵と比較して体積的なエネルギー密度を改良できるかもしれないが、それでも所定量のエネルギーについてガソリンと比較すると体積エネルギー密度は少ない。加えて、液体水素の製造はエネルギー集約型で、水素の蒸発を避けるための低温吸蔵及び他の液体水素の制限のために、特別の配慮を要する。
【0004】
固体、例えばホウ水素化物(borohydride)等に化学的に水素を吸蔵すると、加熱、又は水と混合することで、水素を放出できるという効果がある。しかしながら、固体副産物の形成、又は通常ホウ水素化物の融点を超える非常に高温での水素の放出が、ホウ水素化物の使用を制限する。加えて、ホウ水素化物は一般的に、水素放出の後、再び水素化物にできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、当該技術分野において、低温で水素を放出し、水素放出の後に再び水素化物にできる改良した水素吸蔵材料の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様で、次のステップを含む水素吸蔵材料の形成方法を開示する。そのステップは、Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である化学式M(BH4Xの第1の材料を用意し、M(AlH4X、M(AlH4XとMClXの混合物、MClXとAlの混合物、MClXとAlH3の混合物、MHXとAl又はAlH3の混合物、Al、及びAlH3から選択される第2の材料を用意する。その第1と第2の材料を高温高水素ガス圧力下でしばらくの間組み合わせて、第1の材料よりも低い水素放出温度を有し第2の材料よりも高い水素質量密度を有する第3の材料を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者に対して、ベストモードを含む、本発明を完全に実施可能とする開示が、添付の図面への参照を含む、残りの明細書中でより具体的に説明される。
【0008】
【図1】記載した触媒を作用させたホウ水素化物と、対照のLiBH4の脱水素化特性を示したグラフである。
【図2】600℃、100バールにおける触媒を作用させたホウ水素化物の再水素化能力を示したグラフである。
【図3】記載した温度における、LiBH475%−TiO225%の第1と第2のサイクルの水素放出特性を示したグラフである。
【図4】400℃、300℃、及び200℃それぞれの温度におけるLiBH475%−TiO225%の水素脱離データを示したグラフである。
【図5】LiBH4試料と比較して、LiBH475%−TiO225%の特徴的な結晶構造を示すX線散乱スペクトルである。
【図6】不安定化させたLiBH4と市販のLiBH4の脱水素化の比較を示したグラフである。
【図7】不安定化させたLiBH4と市販のLiBH4を比較したラマンスペクトルである。
【図8】LiBH4に0.2molのMgを加えた材料で部分的にLiBH4を置換した、第1、第2、及び第3のサイクルの水素放出特性を示したグラフである。
【図9】不安定化させたLiBH4と市販のLiBH4の脱水素化の比較を示したグラフである。
【図10】部分的に置換したLiBH4材料の水素脱離データを示したグラフである。
【図11】600℃、70バールの圧力下での、部分的に置換したホウ水素化物材料の再水素化能力を示したグラフである。
【図12】記載した触媒で部分的に置換したLiBH4の水素脱離データを示したグラフである。
【図13】部分的に置換したホウ水素化物と記載した触媒の再水素化能力を示したグラフである。
【図14】0.2モルのアルミニウムで部分的に置換したLiBH4の水素脱離データを示したグラフである。
【図15】600℃、水素ガス圧力100バールにおける、図14に記載の部分的に置換したLiBH4の再水素化能力を示したグラフである。
【図16】0.5LiAlH4を加えたLiBH4の水素脱離データを示したグラフである。
【図17】0.5LiAlH4で部分的に置換したLiBH4の再水素化能力を示したグラフである。
【図18】1molのNaAlH4を加えた1molのLiBH4の水素脱離データを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一形態として、水素吸蔵材料は、金属含有ホウ水素化物等の第1の材料から形成してもよく、その金属はアルカリ金属又はアルカリ土類金属でもよい。第1の材料は、Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり1≦X≦2である化学式M(BH4Xを有してもよい。
【0010】
第1の材料は第2の材料と組み合わせてもよく、第2の材料は、1≦X≦4の化学式M(AlH4Xで表される金属アラネート、金属アラネートと金属塩化物の混合物、金属塩化物とアルミニウムの混合物、金属塩化物とアラン(AlH3)の混合物、1≦X≦2の化学式MHXで表される金属水素化物とアルミニウム又はアランの混合物、アルミニウム、及びアラン等である。
【0011】
第1と第2の材料を高温高水素ガス圧力下でしばらくの間組み合わせて、第1の材料よりも低い水素放出温度を有し第2の材料よりも高い水素質量密度を有する材料を形成してもよい。
【0012】
各種水素化ホウ素金属を第1の材料として利用してもよく、第1の材料には水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、又はそれらの材料の組み合わせが含まれる。加えて、各種アルカリ土類金属を水素化ホウ素金属に含んでもよく、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、及びそれらの混合から選択してもよい。
【0013】
各種金属塩化物を上述の第2の材料として利用してもよい。そのような金属塩化物には、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ジルコニウム、塩化チタン、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。塩化物をいくつかの実施例に用いる説明をしているが、臭化物及びヨウ化物を含む各種金属ハロゲン化物も用いてもよい。
【0014】
各種金属水素化物を上述の第2の金属として利用してもよい。そのような金属水素化物は、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化チタン、及び水素化ジルコニウム、並びにそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0015】
上述のように、各種アラネートは、金属をアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択するもので用いてもよく、化学式LiAlH4を有するリチウムアラネート、化学式NaAlH4を有するナトリウムアラネート、及び化学式Mg(AlH42を有するマグネシウムアラネートを含んでもよい。
【0016】
一形態として、水素吸蔵材料形成方法は、第1と第2の材料を組み合わせるステップよりも前に、第1と第2の材料をボールミル粉砕するステップを含んでもよい。ボールミル粉砕プロセスでは、第1と第2の材料をボールミルに投入して、粒子径50〜100ナノメートルの範囲に粉砕してもよい。
【0017】
一つの具体例として、第1の材料又は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属と、第2の材料、アラネートを、ボール混合又はボールミル粉砕方法を用いて組み合わせてもよい。ボールミル粉砕に続いて、その混合した材料を、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で最高300℃で高温処理をしてもよい。そのプロセスから形成される第3の材料は、最初の水素化ホウ素金属材料に比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよい。加えて、そのプロセスによる第3の材料は、最初の水素組成物の放出後に可逆的に水素化してもよい。そのプロセスによって形成される第3の材料は、アラネートの金属カチオンで部分的に置換したホウ水素化物のリチウム金属カチオン、又はアルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のホウ素、又は部分的に置換したホウ水素化物のカチオンとホウ素を含んでもよい。
【0018】
他の具体例として、第1の材料は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属でもよく、第2の材料はアラネートと塩化チタン等の金属ハロゲン化物を含んでもよく、ボール混合方法を使って混合してもよい。その混合の後に、第1と第2の材料を、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で、最高300℃の高温で組み合わせてもよい。高温処理によって形成される第3の材料は、最初のホウ水素化物材料に比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよい。形成した第3の材料は、最初の水素が組成物から除去されたときに可逆的に水素化してもよい。第3の材料は、アラネートの金属カチオンで部分的に置換したホウ水素化物のリチウム金属カチオン、又はアルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のホウ素、又は部分的に置換したホウ水素化物のカチオンとホウ素を含んでもよい。
【0019】
他の具体例として、第1の材料は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属でもよく、第2の材料は塩化ジルコニウム又は塩化チタン、塩化マグネシウム又は塩化カルシウム等の金属ハロゲン化物、及びアルミニウム又はアランでもよく、ボール混合方法を用いて混合してもよい。第1の材料と第2の材料を、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で、最高300℃の高温で組み合わせてもよい。高温処理によって形成される第3の材料は、最初のホウ水素化物材料に比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよい。加えて、そのプロセスによる第3の材料は、最初の水素組成物の放出後に可逆的に水素化してもよい。第3の材料は、ハロゲン化物のカチオンで部分的に置換したホウ水素化物のリチウム金属カチオン、及び/又はアルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のホウ素、又は部分的に置換したホウ水素化物のカチオンとホウ素を含んでもよい。
【0020】
他の具体例として、第1の材料は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属でもよく、第2の材料は、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ土類ベースの水素化物、若しくは水素化ジルコニウム、水素化チタン等の水素化遷移金属、及びアルミニウム又はアラン(AlH3)でもよく、ボール混合粉砕方法を使って混合してもよい。第1と第2の材料を、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で、最高300℃の高温処理で組み合わせてもよい。上述した具体例と同様に、そのプロセスによる第3の材料は、第1の材料と比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよく、可逆的に水素化してもよい。第3の材料は、アルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のカチオン及び/又は部分的に置換したホウ水素化物のホウ素、又はホウ水素化物の部分的に置換したカチオンとアニオンの両方でもよい。
【0021】
他の具体例として、第1の材料は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属でもよく、第2の材料はアランでもよく、ボール混合方法を用いて混合してもよい。第1と第2の材料を、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で、最高300℃の高温処理で組み合わせてもよい。そのプロセスによって形成される第3の材料は、第1の材料と比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよい。加えて、第3の材料は可逆的に水素化してもよい。第3の材料は、アルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のカチオン、及び/又はアルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のホウ素を含んでもよい。
【0022】
他の具体例として、第1の材料は水素化ホウ素リチウム等の水素化ホウ素金属でもよく、第2の材料はアルミニウムでもよく、ボール混合方法を用いて混合してもよい。ボール混合に続いて、最大24時間、最高5500psiの水素ガス圧力下で、最高300℃の高温処理を行ってもよい。そのプロセスによって形成される第3の材料は、第1の材料と比べて、低い水素脱離温度と速い水素脱離反応速度を有してもよい。第3の材料は可逆的に水素化してもよい。第3の材料は、アルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のカチオンを含んでもよく、及び/又はアルミニウムで部分的に置換したホウ水素化物のホウ素を含んでもよい。
【0023】
ボールミル粉砕プロセスに続いて、約0.250グラム〜約0.500グラムの範囲の混合試料を、Sieverts体積測定装置で、Temperature Programmed Desorption(TPD)を使って、昇温速度2℃/min又は5℃/minで、室温から600℃まで昇温させて評価した。脱離条件は、P0=1.4mbar以下の背圧を含んでもよい。表1に対応する試料1〜5の水素脱離の結果を、市販のLiBH4(100%)(試料6)の適切な対照と一緒に、図1に示す。
【0024】
水素脱離に続いて、600℃、水素ガス圧力100barで、45分間、脱離材料を再水素化した。図2に示すように、記載した材料が吸収した水素の割合をY軸に反映した。
【0025】
図3にみられるように、LiBH475%−TiO225%試料は、第1の脱水素化と第2の脱水素化サイクルにおける材料の質量%中の水素放出量(wt%)によって示される可逆的な水素サイクル特性を示す。
【0026】
例に示したデータで示すように、第3の材料は水素放出開始温度が400℃から200℃に低減したことを示している。加えて、第3の材料は、約6質量%〜約9質量%の水素を可逆的に吸蔵できることを示した。
【0027】
下記に示すように、各種金属、アルミニウム又はアランと組み合わせてもよい金属塩化物、アルミニウム又はアランと組み合わせてもよい金属水素化物、及び他の錯体水素化物を本方法で第2の材料として用いて、LiBH4中のLi原子又はB原子のいずれかのある割合を置換して、脱水素化温度をより低くすることができる。部分的な不安定化が、脱水素化反応速度と再水素化反応速度を改良するということも示している。当該プロセスは各種ステップを含んでもよく、以下のステップを含んでもよい。
【0028】
Step1は、市販のLiBH4の混合物を、Mg、Ca、Sr、Ba、及びAl等の金属;アルミニウムやアランと組み合わせてもよいMgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl3等の金属塩化物;アルミニウムやアランと組み合わせてもよいMgH2、CaH2、AlH3等の金属水素化物;又はLiAlH4、NaAlH4、Mg(AlH42、及びCa(AlH42等の錯体水素化物と組み合わせて、粒子サイズを小さくし材料の均一な混合を行うために一括してボールミル粉砕する。
【0029】
Step2は、最初のボールミル粉砕と混合に続いて、得られた混合物を、反応温度でLiBH4の分解圧よりも大きい水素ガス圧力の水素雰囲気(100バール以下)で、300℃までの温度で焼結する。
【0030】
Step3は、部分的に置換した材料の得られた焼結ブロックを、約20〜約100ナノメートル以下の最終的な平均粒子径を達成するように、砕いてボールミル粉砕する。最終のボールミル粉砕ステップの間、TiCl3及びTiO2等の触媒を加えてもよく、それは水素の吸収と放出の反応速度と特性についてさらなる改良をもたらす。
【実施例】
【0031】
例1
上述の手順を用いて、LiBH4を0.2モルのマグネシウムと混合し、部分的な置換物を得た。図6〜8に示すように、市販の純粋なLiBH4が325℃で水素を放出するのに対して、不安定化した材料LiBH4+0.2Mgは60℃で水素を放出する。室温では、2つのラマン活性内部BH4-1振動v4及びv’4がそれぞれ1253cm-1と1287cm-1で発生し、2つの倍音振動2v4及び2v4’がそれぞれ2240cm-1と2274cm-1で発生していることが、図7のスペクトル2にみられる。しかしながら、不安定化したLiBH4+0.2Mgを添加すると、v4、v’4、及び2v4のピークは、スペクトルから消える。スペクトル1に示すように、2v4’のピークは小さくなり2300cm-1にシフトし、部分的なLi+の置換によって、B−H結合強度が減少することを示している。結合が弱まることによって、水素脱離温度は低くなる。図8にこれまで示したように、部分的に置換したLiBH4材料は、再水素化の多重サイクルを達成することができる。
【0032】
例2
LiBH4を、0.2モルのTiCl3を加えた0.3MgCl2と組み合わせて、上述のプロセスに通した。図9に示すように、部分的に置換した生成物は、市販のLiBH4と比較して、水素の脱離放出の温度特性と、500℃以下の温度で放出する水素の割合を改良した。
【0033】
図10と図11に、部分的に置換したLiBH4の繰り返しの水素脱離と再水素化のそれぞれの能力を示した。
【0034】
例3
LiBH4を、0.007TiCl3を加えた0.5MgH2と混合し、及び上述のステップにしたがったプロセス処理を行った。図12に、得られた生成物の温度による水素脱離データを示す。
【0035】
図13に、部分的に置換したLiBH4の再水素化データを示す。
【0036】
例4
80質量%のLiBH4を0.2モルのAlと組み合わせて、上述の手順で処理した。図14と図15に、水素脱離と再水素化のそれぞれのデータを示した。
【0037】
例5
LiBH4を0.5LiAlH4と組み合わせて、上述の手順に通した。図16と図17にみられるように、部分的に置換したLiBH4の水素脱離特性と再水素化特性をそれぞれ示した。
【0038】
例6
等モルのLiBH4とNaAlH4の混合物を、上述の手順にしたがって準備した。図18に、改良した水素脱離特性を示した。
【0039】
上述の例にみられるように、不安定化剤を用いてLiBH4のLi原子又はB原子のいずれか(又は両方の原子)のある割合を部分的に置換することができ、それによって、置換していないLiBH4を用いたときよりも低い脱水素化温度を達成できる。加えて、図に示したように、TiCl3やTiO2等の触媒を任意に加える部分的置換手順を用いて、好ましい脱水素化と再水素化の反応速度特性を得ることができる。
【0040】
本発明の好ましい具体例を、特定の用語、デバイス、及び方法によって記載したが、そのような記載は、例示を目的とするだけのものである。使用した言葉は、記述するものであり、制限するものでない。以下の請求項に示す本発明の精神と範囲から離れずに、当業者によって変化と多様化がなされることは当然である。加えて、全体又は部分的に様々な具体例の態様の置き換えも当然であるべきである。それゆえに、添付の請求項の精神と範囲は、本明細書の好ましいバージョンの記載に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式M(BH4X(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属で、1≦X≦2)である第1の材料を用意し、
M(AlH4X(1≦X≦4)、M(AlH4X(1≦X≦4)とMClX(1≦X≦4)の混合物、MClX(1≦X≦4)とAlの混合物、MClX(1≦X≦4)とAlH3の混合物、MHX(1≦X≦2)とAl又はAlH3の混合物、Al、及びAlH3から選択される第2の材料を用意し、
該第1の材料よりも低い水素放出温度を有する第3の材料を形成する時間、該第1と該第2の材料を高温の高水素ガス圧力下で組み合わせる、
ステップを含む水素吸蔵材料の形成方法。
【請求項2】
該第3の材料が該第2の材料よりも高い水素質量密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1と該第2の材料を組み合わせるステップの前に、該第1と該第2の材料をボールミル粉砕するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該第1と該第2の材料を約50〜100ナノメートルの粒子サイズに粉砕する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該第3の材料が可逆的に水素を吸蔵する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第3の材料が再水素化されるとき、該第3の材料がその後に可逆的に少なくとも約6質量%の水素を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該第1の材料が、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該アルカリ土類金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
MClXが、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl3、ZrCl4、TiCl3、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
MHXが、MgH2、CaH2、TiH2、ZrH2、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
M(AlH4Xが、LiAlH4、NaAlH4、Mg(AlH42、及びCa(AlH42からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
化学式M(BH4X(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属で、1≦X≦2)である第1の材料を用意し、
M(AlH4X(1≦X≦4)、M(AlH4X(1≦X≦4)とMClX(1≦X≦4)の混合物、MClX(1≦X≦4)とAlの混合物、MClX(1≦X≦4)とAlH3の混合物、MHX(1≦X≦2)とAl又はAlH3の混合物、Al、及びAlH3から選択される第2の材料を用意し、
可逆的に水素を吸蔵する第3の材料を形成する時間、該第1と該第2の材料を高温の高水素ガス圧力下で組み合わせる、
ステップを含む水素吸蔵材料の形成方法。
【請求項13】
化学式M(BH4X(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属で、1≦X≦2)である第1の材料を用意し、
M(AlH4X(1≦X≦4)、M(AlH4X(1≦X≦4)とMClX(1≦X≦4)の混合物、MClX(1≦X≦4)とAlの混合物、MClX(1≦X≦4)とAlH3の混合物、MHX(1≦X≦2)とAl又はAlH3の混合物、Al、及びAlH3から選択される第2の材料を用意し、
該第1の材料よりも低い水素放出温度を有し該第2の材料よりも高い水素質量密度を有する第3の材料を形成する時間、該第1と該第2の材料を高温の高水素ガス圧力下で組み合わせる、
ステップを含む水素吸蔵材料の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−195903(P2009−195903A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−38405(P2009−38405)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】