説明

可食性フィルム供給具及び可食性フィルム

【課題】可食性フィルムを収容すると共に、所定長さの可食性フィルムを外部に排出して使用に供することができる可食性フィルム供給具を提供する。
【解決手段】供給具1は、長尺の可食性フィルム60が巻回されたフィルムロール66とケース10とを具備し、可食性フィルムは所定長さ間隔で設けられ、それぞれ二以上の切り込み部及びつなぎ部により形成された複数の切り離し線を備え、ケースは、フィルムロールを回転可能に支持するロール支持部15、ケースに開口する開口部20、ロール支持部と開口部との間に位置するローラ30、ローラの周面から突出した突起部32、ローラの回転軸と同軸に一方の回転方向に回動しローラを回転させる操作レバー40、ローラの回転を一方向に規制する回転方向規制機構35,45、操作レバーを他方向に付勢する付勢部材48を備え、切り込み部と突起部は係合可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性フィルムを収容すると共に、所定長さの可食性フィルムを外部に排出して使用に供することができる可食性フィルム供給具、及び、該可食性フィルム供給具に使用される可食性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口中清涼剤やフィルム状製剤などの可食性フィルムの包装形態としては、所定のサイズにカットされた可食性フィルムが、数十枚重ねられた状態で箱型の小型ケースに収容されているものが公知である(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1のケースでは、箱体に対してヒンジ部を介して蓋体が取り付けられており、この蓋体は先端に向かって幅広となるように形成されていると共に、蓋体の先端には箱体と係脱可能な係止部が設けられている。かかる構成により、蓋体の係止を解除すると、先端に向かって幅広となる開口部が形成されるため、最上のフィルムに指の腹を押し当てて先端に向かってスライドさせ易く、フィルムを一枚ずつ取り出すことができる。
【0003】
一方、所定のサイズにカットされた可食性フィルムが、プラスチックフィルム等のガスバリア性のフィルムで形成された袋状の容器に、一枚ずつ収容された包装体も公知である(例えば、特許文献2参照)。ここで、特許文献2の包装体は、イージーオープン性及びヒートシール性を備える二枚のフィルムの周縁をヒートシールし、内部に可食性フィルムなどの被包装フィルムを収容したものである。かかる構成により、イージーオープン性を備える二枚のフィルムを容易に剥離して、被包装フィルムを取り出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のケースには、数十枚の可食性フィルムが重ねられた状態で収容されているため、指の腹を押し当てる力の強さによっては、一度に複数枚のフィルムが取り出されてしまうことがあった。一方、特許文献2の包装体では、可食性フィルムを必要に応じて一枚ずつ取り出すことができると共に、使用直前まで可食性フィルムを密閉して保存できる利点を有するが、可食性フィルムを取り出すために包装体を開封する手間や時間を要し、また、一枚の可食性フィルムを取り出すたびに包装用のフィルムがゴミとなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、可食性フィルムを収容すると共に、所定長さの可食性フィルムを外部に排出して使用に供することができ、且つ、可食性フィルムの使用ごとにゴミが発生することがない可食性フィルム供給具、及び、該可食性フィルム供給具に使用される可食性フィルムの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる可食性フィルム供給具は、「長尺の可食性フィルムがロール状に巻回されたフィルムロールと、該フィルムロールを内部に収容するケースとを具備し、前記可食性フィルムは、長軸方向の所定長さ間隔で設けられた複数の切り離し線を備え、該切り離し線のそれぞれは、二以上の切り込み部及びつなぎ部により形成されており、前記ケースは、前記フィルムロールを回転可能に支持するロール支持部、前記ケースに開口し前記フィルムロールから引き出された前記可食性フィルムを挿通させる開口部、前記ロール支持部と前記開口部との間に位置する回転軸周りに回転可能なローラ、該ローラの周面から突出した突起部、前記回転軸と同軸に一方の回転方向に回動することにより前記ローラを回転させる操作レバー、前記ローラの回転を、前記一方の回転方向のみに規制する回転方向規制機構、及び、前記操作レバーを他方の回転方向に付勢する付勢部材を備え、前記切り込み部と前記突起部は係合可能に形成されている」ものである。
【0007】
「可食性フィルム」は、平滑な基面上に固定したベースフィルム上に、可食性のフィルム形成剤を含有する溶液または懸濁液を流延し、流延された溶液または懸濁液を乾燥させフィルム化することにより形成することができる。ここで、可食性のフィルム形成剤としては、公知のものを特に限定なく使用することができるが、プルラン、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、加工澱粉等を例示することができる。なお、本発明において「フィルム」とは、厚さ1μm〜500μmの薄片を指している。
【0008】
また、「可食性フィルム」には、フィルム形成剤に加えて、医薬品成分、食品、甘味料、矯味剤、香料、着色料の少なくとも何れかを含有させることができる。ここで、医薬品成分は、いわゆる西洋薬であっても生薬や生薬を組み合わせた漢方薬であっても良い。また、食品としては、ビタミン、ミネラル等の栄養補助成分を含む食品や、抗酸化作用や抗炎症作用等が期待されるプロポリス、カテキン等の植物系抽出物質を含む食品を例示することができる。甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ステビア等を、矯味剤としては、キシリトール、カンゾウ等を、香料としては、スペアミントフレーバー、レモンフレーバー、メントール等を例示することができる。なお、可食フィルムの柔軟性を高め、ひび割れや破れ等の発生を防止するために可塑剤を添加しても良く、可塑剤としては、クエン酸トリエチル、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、マクロゴール、マンニトール等を例示することができる。
【0009】
更に、「可食性フィルム」は、可食性とはいえ食用や経口投与用に限定されず、化粧品成分を含有し水に濡らして肌に貼る化粧用パックフィルムや、外傷被覆や止血のために皮膚に貼着する外用薬フィルムであっても良い。
【0010】
「回転方向規制機構」としては、ローラ側に歯車を設けると共に操作レバー側に爪部を設け、一方の回転方向に対しては歯車と爪部が噛み合い、他方の回転方向に対しては爪部が歯車上を滑る構成としたものを例示することができる。或いは、ローラの軸周り及び操作レバーの軸周りに共に爪車を設け、一方の回転方向に対しては両爪車が噛み合い、他方の回転方向に対しては両爪車が噛み合わない構成であっても良い。
【0011】
また、「付勢部材」としては、操作レバーの一方の回転方向への回動に伴い、圧縮または引張されるコイルバネを例示することができる。
【0012】
「前記切り込み部と前記突起部は係合可能に形成されている」とは、両者の大きさ・形状及び位置の関係が、切り込み部に突起部が挿入可能な関係にあることを指している。
【0013】
上記構成により、本発明の可食性フィルム供給具は次のように動作する。操作レバーを付勢部材による付勢に抗して一方の回転方向に回動させると、これに伴い、操作レバーと回転軸を同軸とするローラが回転する。ローラの周面には突起部が設けられており、この突起部は上記のように可食性フィルムの切り込み部と係合可能な関係に形成されている。そのため、初期状態として、フィルムロールから可食性フィルムを少し引き出し、可食性フィルムの先端を開口部に臨ませると共に、切り込み部と突起部とを係合させた状態とすれば、以降は操作レバーの回動によるローラの回転に伴って、ローラの突起部に切り込み部を係合させている可食性フィルムが送られる。これにより、開口部を介して可食性フィルムをケースの外部に繰り出すことが可能となる。
【0014】
操作レバーに加える力を除くと、付勢部材による付勢によって操作レバーは逆方向に回動し、元の位置に戻る。これに対して、ローラは回転方向が一方向のみに規制されているため、逆方向には回転しない。これにより、繰り出された可食性フィルムは逆戻りすることがない。また、操作レバーの操作の繰り返しにより、ローラは間欠的に一方向に回転し、可食性フィルムは一方向のみに送られる。
【0015】
従って、操作レバーを回動させるのみの簡易な操作で、ケース内に収容された可食性フィルムを、所定長さ、すなわち、操作レバーの回動角度分のローラの回転に伴い突起部によって可食性フィルムが運ばれる長さ分だけ、ケース外に繰り出すことができる。そして、繰り出された可食性フィルムは、つなぎ部を破断することにより、切り離し線に沿って切り離すことができるため、カッターや鋏などの道具を要することなく、使用に供することができる。このように、本発明によれば、可食性フィルムを通常はケース内に保存しておき、使用する分だけを容易に取り出すことができる。また、使用分ごと包装されている形態ではないため、可食性フィルムの使用のたびにゴミが発生することがない。
【0016】
なお、「ロールフィルム」は可食性フィルムのみがロール状に巻回されているものの他、可食性フィルムが上記のベースフィルムに積層された状態で巻回されているものとすることができる。その場合、可食性フィルムの切り込み部と一致するようにベースフィルムにも切り込み部を設ければ、可食性フィルムがベースフィルムに積層された状態で、両フィルムの切り込み部にローラの突起部を引掛け、ローラの回転により送ることができる。
【0017】
本発明にかかる可食性フィルム供給具は、上記構成において、「前記切り込み部は湾曲している」ものとすることができる。
【0018】
切り込み部が湾曲していると、直線である場合に比べて、切り込み部の両側の可食性フィルム間に空隙が形成されやすい。従って、上記構成によれば、切り込み部に突起部が挿入され易く、両者が係合し易い。
【0019】
本発明にかかる可食性フィルム供給具は、上記構成に加えて、「前記ケースは、前記開口部の周縁部から突出した開口突起部を備える」ものとすることができる。
【0020】
上記構成により、ケース外に繰り出された可食性フィルムの切り込み部を開口突起部に引き掛けた状態で、可食性フィルムを引張るように操作することにより、つなぎ部を容易に破断させることができる。
【0021】
次に、本発明にかかる可食性フィルムは、「上記に記載の可食性フィルム供給具に使用される長尺の可食性フィルムであって、ロール状に巻回されていると共に、長軸方向に沿って所定長さ間隔で設けられた切り離し線を備え、該切り離し線のそれぞれは、二以上の切り込み部及びつなぎ部により形成されており、前記切り込み部は前記可食性フィルム供給具の突起部と係合可能に形成されている」ものである。また、上記構成において、「前記切り込み部は湾曲している」ものとすることができる。
【0022】
かかる構成の可食性フィルムは、上記に記載の可食性フィルム供給具のフィルムロールとして使用することができる。また、一つのフィルムロールを使い切った後に、詰め替え用のフィルムロールとして使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の効果として、可食性フィルムを収容すると共に、所定長さの可食性フィルムを外部に排出して使用に供することができ、且つ、可食性フィルムの使用ごとにゴミが発生することがない可食性フィルム供給具、及び、該可食性フィルム供給具に使用される可食性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態の可食性フィルム供給具の内部の構成を示す図である。
【図2】図1の可食性フィルム供給具における回転方向規制機構の構成を説明する図である。
【図3】図1の可食性フィルム供給具における突起部の(a)平面図、及び(b)正面である。
【図4】(a)図1の可食性フィルム供給具で使用される可食性フィルムをフィルムロールから引き出された状態で示す図、(b)ローラの周面における突起部を真上から見た図、及び、(c)切り込み部と突起部との係合を説明する図である。
【図5】図1の可食性フィルム供給具における可食性フィルムの繰り出しを説明する図である。
【図6】本発明の第二実施形態の可食性フィルム供給具の(a)内部の構成を示す図、及び、(b)Y−Y線端面図である。
【図7】蓋体を備える他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態である可食性フィルム供給具、及び、これに使用される可食性フィルムについて、図1乃至図5を用いて説明する。
【0026】
第一実施形態の可食性フィルム供給具1(以下、単に「供給具1」と称する)は、長尺の可食性フィルム60がロール状に巻回されたフィルムロール66と、フィルムロール66を内部に収容するケース10とを具備し、可食性フィルム60は、長軸方向の所定長さL間隔で設けられた複数の切り離し線61を備え、切り離し線61のそれぞれは、二以上の切り込み部62及びつなぎ部63により形成されており、ケース10は、フィルムロール66を回転可能に支持するロール支持部15、ケース10に開口しフィルムロール66から引き出された可食性フィルム60を挿通させる開口部20、ロール支持部15と開口部20との間に位置する回転軸周りに回転可能なローラ30、ローラ30の周面から突出した突起部32、前記回転軸と同軸に一方の回転方向に回動することによりローラ30を回転させる操作レバー40、ローラ30の回転を、一方の回転方向のみに規制する回転方向規制機構、及び、操作レバー40を他方の回転方向に付勢する付勢部材を備え、切り込み部62と突起部32は係合可能に形成されているものである。また、本実施形態の供給具1では、ケース10は、開口部20の周縁部から突出した開口突起部21を更に備えている。
【0027】
より詳細に説明すると、ケース10はプラスチック製であり、トレー状の第一ケース半体11と第二ケース半体を、それぞれの開口縁を突き合せるよう対設することにより、中空の内部空間を有するケース10が形成されている。また、第一ケース半体11及び第二ケース半体のそれぞれの開口縁には、相対する位置に切欠き20aが形成されており、第一ケース半体11及び第二ケース半体を対設することにより双方の切欠き20aが合わさって開口部20が形成される。なお、図1及び図5は、第二ケース半体を取り外した状態を図示している。また、図示は省略するが、第一ケース半体11と第二ケース半体は、一方に設けられたピン状突部と、他方に設けられた筒状部との嵌合により、対設された状態を保持できると共に分離可能な構成となっている。
【0028】
ケース10は、片手で把持できる程度の大きさに形成されている。また、本実施形態では、ケース10を片手で把持し、人差し指で引き金を引くように操作レバー40を操作した場合に、中指及び薬指が当たる部分のケース10の外周面に、指の形に沿う凹状部18が形成されている。
【0029】
第一ケース半体11の内表面には円筒状のロール支持部15が突設されており、この外径は、フィルムロール66の巻芯の内径より僅かに小さく設定されている。これにより、フィルムロール66にロール支持部15を挿通させることにより、フィルムロール66は回転可能にロール支持部15に支持される。
【0030】
また、第一ケース半体11の内表面にはローラ軸部31が支持されており、ローラ30はローラ軸部31の軸心を回転軸として回転する。このローラ軸部31は、操作レバー40の基端部を挿通しており、これにより操作レバー40はローラ30の回転軸と同軸に回動可能となっている。更に、ローラ軸部31は、ローラ支持バー50の一端を挿通しており、他端はピン51によって第一ケース半体11に固定されている。すなわち、ローラ支持バー50は、ローラ30の回転に伴って回転することはない。
【0031】
また、ローラ軸部31は、ねじりコイルバネ48のコイル部48aを挿通しており、コイル部48aの両端からそれぞれ延びた二本のバネ腕部48bのうち、一方が操作レバー40に取り付けられていると共に、他方はローラ支持バー50に取り付けられている。かかる構成により、操作レバー40がローラ支持バー50に近づく方向(図示、X方向)に回動すると、ねじりコイルバネ48が圧縮され、操作レバー40はX方向とは反対方向の回動に付勢される。ここで、ねじりコイルバネ48が本発明の「付勢部材」に相当し、図示X方向の回転方向が本発明の「一方の回転方向」に相当する。
【0032】
操作レバー40には、拡大図を図2に示すように、爪部45が突設されている。一方、ローラ30には、内歯車35が形成されている。この内歯車35のぞれぞれは、一方の傾斜が緩やかで他方の傾斜が急な山型であり、操作レバー40が図示X方向に回動する際には爪部45と内歯車35とが噛合うが、操作レバー40がX方向とは反対方向に回動する際には、爪部45と内歯車35とは噛合わず、内歯車35上を爪部45が滑るように移動する。かかる構成により、操作レバー40の図示X方向への回動に伴って、ローラ30は同方向に回転するが、操作レバー40がX方向とは反対方向に回動する際には、ローラ30は回転しない。ここで、爪部45及び内歯車35が、本発明の「回転方向規制機構」に相当する。なお、図1,2,5では、ローラ30において内歯車35を部分的にのみ図示しているが、全周にわたり連続して形成されているものである。
【0033】
ローラ30の外周面には突起部32が形成されているが、図3に示すように、本実施形態では突起部32は平板状の三角形に形成されている。また、本実施形態では、開口部20においてケース10を把持した際に下方となる周縁部から、突起部32と同一形状の開口突起部21が突設されている。なお、図1乃至図5では、構成を明確に示すため、突起部32及び開口突起部21の厚さ及び長さを、誇張して図示している。
【0034】
突起部32は可食性フィルム60の切り込み部62と係合可能に形成されているため、次に、可食性フィルム60の構成、及び突起部32と切り込み部62との係合について、図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、可食性フィルム60には、長軸方向に沿って長さLの間隔で複数の切り離し線61が設けられている。そして、一本の切り離し線61は、可食性フィルム60が貫通して切断された複数の切り込み部62と、可食性フィルム60が切断されていないつなぎ部63によって形成されている。本実施形態では、一本の切り離し線61は三つの切り込み部62と四つのつなぎ部63を有しており、切り込み部62が円弧状に湾曲している。また、切り離し線61も全体的に円弧状に湾曲しており、可食性フィルム60の長軸方向の中心線に対し左右対称な構成となっている。
【0035】
このような切り離し線61における切り込み部62に対応して、図4(b)に示すように、ローラ30の外周面上において幅方向に並ぶように三つの突起部32が設けられており、これらの突起部32を結ぶ仮想線は切り離し線61と同一の円弧状を描いている。従って、ローラ30の突起部32と可食性フィルム60の切り込み部62とは、図4(c)のように、位置関係が一致し係合することが可能である。このとき、切り離し線61が円弧状で切り込み部62が湾曲しているため、切り込み部62の両側の可食性フィルム60間に空隙が形成され易く、突起部32が挿入され易い。また、ローラ30の周方向においては、同一線上に複数の同形の突起部32が設けられており、突起部32間の距離は切り離し線61の間隔L、すなわち、切り込み部62の間隔に対応させて設定されている。
【0036】
上記構成の供給具1は、次のように使用することができる。まず、最初の使用に先立ち、或いは、新しいフィルムロール66に詰め替えた後の使用に先立ち、第一ケース半体11及び第二ケース半体を分離させ、フィルムロール66をロール支持部15に支持させた状態で、フィルムロール66から可食性フィルム60を少し引き出す。そして、一対のガイドローラ56a,56bを介して可食性フィルム60をローラ30まで導き、ローラ30の突起部32に可食性フィルム60の切り込み部62を引掛けると共に、可食性フィルム60の先端を開口部20に臨ませる。この状態で、第一ケース半体11及び第二ケース半体を突き合わせて一体化する。
【0037】
可食性フィルム60を使用する際は、ねじりコイルバネ48による付勢に抗して操作レバー40を一方の回転方向(図示、X方向)に回動させる。このとき、本実施形態の供給具1は、ケース10を片手で把持し、凹状部18に中指及び薬指を添えた状態で、人差指で操作レバー40を引くように操作するのに適している。操作レバー40がX方向に回動すると、これに伴い操作レバー40の爪部45がローラ30の内歯車35と噛合った状態で、ローラ30が同方向に回転する。これにより、ローラ30の突起部32と切り込み部62が係合している可食性フィルム60も、ローラ30の回転に伴って移動し、開口部20に向かう方向に送られる。
【0038】
操作レバー40がX方向に回動する際には、ねじりコイルバネ48のバネ腕部48bはローラ支持バー50のバネ腕部48bに近づき、ねじりコイルバネ48が圧縮される。そのため、操作レバー40に加える力が除かれると、ねじりコイルバネ48の復元力に付勢されて、操作レバー40はX方向とは逆方向に回動し、元の位置に戻る。このとき、操作レバー40の爪部45はローラ30の内歯車35上を滑るため、ローラ30は回転せず、繰り出された可食性フィルム60は逆戻りすることがない。
【0039】
このように操作レバー40を引く操作を繰り返すことにより、ローラ30はX方向のみに間欠的に回転する。そして、切り込み部62は可食性フィルム60において所定間隔で設けられており、ローラ30における突起部32もこの間隔に対応させた間隔で形成されているため、ローラ30の回転に伴って一つの突起部32が可食性フィルム60の切り込み部62から外れると、可食性フィルム60においてそれまで突起部32と係合していた切り込み部62より下流側の切り込み部62と、次の突起部32が係合する。これにより、可食性フィルム60は一方向に送られ、開口部20を介してケース10外に繰り出される。ここで、一回の操作レバー40の操作により繰り出される可食性フィルム60の長さは、操作レバー40の回動に伴うローラ30の回転角度に対応して、常に一定である。
【0040】
ケース10外に繰り出された可食性フィルム60が所望の長さに達したら、切り離し線61に沿って可食性フィルム60を切り離す。この際、ケース10を把持している手とは反対側の手で可食性フィルム60の先端側を把持し、引き下げるように操作することにより、切り込み部62を開口突起部21に引掛けて可食性フィルム60を保持させることができるため、引き下げ力によって容易につなぎ部63を破断することができる。
【0041】
上記のように、第一実施形態の供給具1によれば、通常は可食性フィルム60をケース10内に保存しておくことができる。そして、可食性フィルム60の使用に際しては、操作レバー40を回動させるのみの簡易な操作で、使用する分だけをケース10外に繰り出し、容易に切り離すことができる。
【0042】
また、本実施形態の供給具1は、ケース10が手で把持できる大きさであることに加え、カッターや鋏などの道具を要することなく可食性フィルム60を切り離すことができるため、携帯に適している。加えて、可食性フィルム60に切り離し線61が設けられており、供給具1自体にカッター等の刃物を備える必要がないため、供給具1の構成が簡易である。
【0043】
更に、フィルムロール66一つ分の可食性フィルム60を使いきった後は、第一ケース半体11及び第二ケース半体を分離させて新しいフィルムロール66をセットすることができ、ケース10は継続的に使用することができるため、資源の有効利用に資するものとなっている。加えて、可食性フィルム60を使用分ごと分包することなく、可食性フィルム60を使用分だけ確実に取り出すことができる構成であるため、可食性フィルム60の使用のたびにゴミが発生することがなく、この点からも資源の有効利用に資するものとなっている。
【0044】
次に、第二実施形態の可食性フィルム供給具2(以下、単に「供給具2」と称する)、及び、これに使用される可食性フィルムについて、図6を用いて説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
第一実施形態の供給具1との相違は、可食性フィルム60がベースフィルム69に積層された状態でフィルムロールから送られ、開口部20に至る前に可食性フィルム60がベースフィルム69から剥離され、可食性フィルム60のみが開口部20から排出されると共に、剥離後のベースフィルム69が巻き取りローラ80に巻き取られる点である。
【0046】
すなわち、供給具2は、供給具1の構成において、
「前記フィルムロールは、前記可食性フィルムがベースフィルムに積層された状態で巻回されたものであり、
前記ベースフィルムには、前記可食性フィルム重畳した状態で前記切り込み部と一致する位置及び形状のベースフィルム切り込み部が形成されており、
前記ケースは、
外歯を有し、前記フィルムロールと一体的に回転可能に前記ロール支持部に支持されている円環状の第一歯車、
該第一歯車の外歯と噛合する第二外歯を有し、巻き取り軸周りに回転可能な第二歯車、
該第二歯車と一体的に回転する巻き取りローラを備える」ものである。
【0047】
より詳細に説明すると、本実施形態のフィルムロール67は円筒状の支持スリーブ70を備えており、可食性フィルム60はベースフィルム69に積層された状態で支持スリーブ70に巻回されている。ここで、ベースフィルム69は、可食性フィルムのフィルム化の際に、可食性のフィルム形成剤を含有する溶液または懸濁液を、その上に流延するプラスチック製のフィルムであり、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンのフィルムを使用可能である。そして、図示は省略するが、ベースフィルム69には、可食性フィルム60と重畳した状態で可食性フィルム60の切り込み部62と一致する位置及び形状にベースフィルム切り込み部が形成されている。このような切り込み部62及びベースフィルム切り込み部は、重畳した状態の可食性フィルム60及びベースフィルム69に対して、切り込み部62に相当する形状の刃体を押圧し、両フィルムを貫通するように切り込みを入れることにより形成することができる。
【0048】
また、円環状の第一歯車71の内径は、ロール支持部15の外径より僅かに大きく形成されており、ロール支持部15を第一歯車71に挿通することにより、第一歯車71は回転可能にロール支持部15に支持される。この第一歯車71の上面には、内周に沿って所定間隔で複数の凸部73が設けられており、一方、支持スリーブ70の底面には所定間隔で複数の凹部72が設けられており、凸部73と凹部72とは互いに係合可能な位置及び形状に形成されている。これにより、第一歯車71の上でフィルムロール67にロール支持部15を挿通させ、支持スリーブ70の凹部72と第一歯車71の凸部73とを係合させることにより、第一歯車71はフィルムロール67と一体的にロール支持部15周りを回転する。
【0049】
更に、第一ケース半体11からは巻き取り軸81が突設されており、第二歯車82が巻き取り軸81に回転自在に軸支されている。ここで、巻き取り軸81は、第二歯車82の外歯が第一歯車71の外歯と噛合う位置に設けられている。なお、図6では、第一歯車71及び第二歯車82それぞれの外歯を簡略化して図示している。
【0050】
第二歯車82の上面には、円筒状のナット部83が巻き取り軸81と同心に設けられており、ナット部83の内周面にはネジ溝が形成されている。そして、ナット部83の外径より僅かに大きな内径を有する円筒状の巻き取りローラ80が、ナット部83を挿通させている。更に、外周面にネジ山が形成された円柱状のネジ軸84a、及び頭部84bを備えるボルト部84が、ネジ山とネジ溝との螺合によりナット部83に留め付けられている。ここで、ボルト部84の頭部84bの外径は巻き取りローラ80の外径と同程度或いはそれ以上であり、頭部84bと巻き取りローラ80の上面との間には、弾性部材86が介設されている。この弾性部材86としては、Cリング状のバネワッシャやコイルバネを使用可能である。このような構成により、ナット部83に対するボルト部84の締め付け具合により、巻き取りローラ80が第二歯車82に対して圧接される度合いを調整することができる。なお、図6(a)は、ボルト部84を取り外した状態を図示している。
【0051】
上記構成の供給具2は、次のように使用することができる。まず、最初の使用に先立ち、或いは、新しいフィルムロール67に詰め替えた後の使用に先立ち、第一ケース半体11及び第二ケース半体12を分離させ、フィルムロール67の支持スリーブ70にロール支持部15を挿通し、凹部72を第一歯車71の凸部73と係合させる。そして、フィルムロール67から可食性フィルム60をベースフィルム69と共に少し引き出す。引き出された可食性フィルム60を、ベースフィルム69と共に一対のガイドローラ56a,56bを介してローラ30まで導き、可食性フィルム60の切り込み部62を、ベースフィルム69のベースフィルム切り込み部を介してローラ30の突起部32に引掛ける。更に、それより上流側で可食性フィルム60をベースフィルム69から剥がし、可食性フィルム60と分離したベースフィルム69を、一対のガイドローラ57a,57bを介して巻き取りローラ80まで導き、ベースフィルム69の端部を巻き取りローラ80に固定する。
【0052】
この状態で、操作レバー40を操作すると、上記と同様の動作で、可食性フィルム60はベースフィルム69と共にフィルムロール67から引き出され、ローラ30の回転に伴い、開口部20に最も近付く位置までは、切り込み部62及びベースフィルム切り込み部に突起部32が係合した状態で送られる。そして、ローラ30がそれ以上回転すると、可食性フィルム60はベースフィルム69から剥離して開口部20に向かい、ベースフィルム69はベースフィルム切り込み部を突起部32に係合させた状態で、ローラ30の外周に沿って移動する。
【0053】
ここで、ベースフィルム69に積層された可食性フィルム60が、ローラ30の回転によってフィルムロール67から引き出される際、支持スリーブ70がロール支持部15周りを回転すると、支持スリーブ70と一体的に第一歯車71が回転する。これに伴い、第一歯車71と噛合している第二歯車82が相反する方向に回転する。その結果、第二歯車82に対して圧接されている巻き取りローラ80が第二歯車82と共に回転する。すなわち、操作レバー40でローラ30を回転させることにより、フィルムロール67が回転して第一歯車71が回転し、これに従動する第二歯車82を介して巻き取りローラ80が回転する。これにより、操作レバー40の操作によりベースフィルム69を開口部20に向かって送りつつ、ベースフィルム69を巻き取りローラ80に巻き取ることができる。
【0054】
なお、フィルムロール67から送り出される可食性フィルム60及びベースフィルム69の長さと、巻き取りローラ80に巻き取られるベースフィルム69の長さは等しくする必要があるが、可食性フィルム60及びベースフィルム69が引き出されるにつれてフィルムロール67の外径は減少するため、ローラ30の一回転に対して第一歯車71が回転する角度が変化する。加えて、ベースフィルム69が巻き取られるにつれて、巻き取りローラ80周りでロール状となるベースフィルム69の外径も増加するため、ある長さのベースフィルム69を巻き取るために必要となる第二歯車82の回転角度も変化する。そこで、ナット部83に対するボルト部84の締め付け具合によって、巻き取りローラ80が第二歯車82に対して圧接される度合いを調整することにより、ローラ30と巻き取りローラ80との間でベースフィルム69に所定の大きさ以上の張力が作用した場合に、回転する第二歯車82に対して巻き取りローラ80が従動せず滑るように調整することができる。これにより、第二歯車82の回転に伴い巻き取りローラ80が回転する角度が、ローラ30から送られるベースフィルム69を巻き取るべき回転角度より大きくなってしまい、ベースフィルム69に大きな張力がかかり破断することを抑止することができる。
【0055】
また、ロールフィルム67から可食性フィルム60が全て引き出されると共に、ベースフィルム69が全て巻き取りローラ80に巻き取られた後のロールフィルム67は、凹部72と凸部73との係合を解除することにより第一歯車71から取り外し、新しいロールフィルム67に交換することができる。
【0056】
以上のように、第二実施形態の供給具2によれば、可食性フィルム60がベースフィルム69に積層された状態でロール状とされたフィルムロール67を使用して、可食性フィルム60のみを開口部20から外部に繰り出すことができる。これにより、フィルムロール67において、巻回されている可食性フィルム60の重なりの間にベースフィルム69が介在することにより、可食性フィルム60同士の接着を有効に防止できると共に、可食性フィルム60の使用に際して、可食性フィルム60をベースフィルム69から剥離する手間を省くことができる。
【0057】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記では、可食性フィルム60の切り離し線61が円弧状に形成されている場合を例示したが、これに限定されず、楕円弧状や、中心が膨出するように湾曲した形状とすることができる。また、ローラ30における突起部32の数、一つの切り離し線61における切込み部62の数など、図示により説明したものに限定されない。更に、突起部32の形状が平板状の三角形である場合を例示したが、これに限定されず、円錐形や四角錐の形状とすることができる。
【0059】
また、円筒状のロール支持部15周りに回転するフィルムロール66,67の回転し易さを調整するために、ロール支持部15の外周面に沿って突条や溝を設けることにより、フィルムロール66,67とロール支持部15との間に作用する摩擦力を加減することができる。
【0060】
更に、図7に例示するように、開口部20を被覆する蓋体90を設けることができる。具体的に説明すると、蓋体90は、開口部20近傍におけるケース10の外形に沿う形状であり、一端が軸91によってケース10に取り付けられている。そして、蓋体90の他端には突起94が設けられていると共に、これと対面するようにケース10の外表面に突起95が設けられている。
【0061】
また、蓋体90からは、軸91を介して平板状の開閉レバー92が一体的に延設されている。この開閉レバー92は、蓋体90に対する角度の設定により、蓋体90が開口部20を被覆している状態で、ケース10の外表面から離隔するように形成されており、付勢部材によってケース10に近付く方向に付勢されている。付勢部材としては、ねじりコイルバネや折り曲げられた板バネを使用可能である。
【0062】
このような構成により、付勢部材の付勢に抗して蓋体90をケース10に向けて押し、突起94及び突起95の弾性変形によって突起94を突起95に引掛けるように係止させることにより、蓋体90で開口部20を被覆することができる(図7(a)参照)。これにより、可食性フィルム60を使用しない時は、開口部20を蓋体90で被覆し、開口部20を介した埃や湿気の浸入から可食性フィルム60を保護することができる。一方、開閉レバー92をケース10に向けて押すと、突起94と突起95との係合が解除され、蓋体90は開口部20を開放する位置に変位する(図7(b)参照)。蓋体90が開口部20を開放する状態は、付勢部材の付勢によって保持されるため、この状態で操作レバー40を操作し、可食性フィルム60を開口部60から外部に供給することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,2 供給具(可食性フィルム供給具)
10 ケース
15 ロール支持部
20 開口部
21 開口突起部
30 ローラ
32 突起部
35 内歯車(回転方向規制機構)
40 操作レバー
45 爪部(回転方向規制機構)
48 ねじりコイルバネ(付勢部材)
60 可食性フィルム
61 切り離し線
62 切り込み部
63 つなぎ部
66,67 フィルムロール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】実登第2527511号公報
【特許文献2】特許第3870241号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の可食性フィルムがロール状に巻回されたフィルムロールと、
該フィルムロールを内部に収容するケースとを具備し、
前記可食性フィルムは、長軸方向の所定長さ間隔で設けられた複数の切り離し線を備え、該切り離し線のそれぞれは、二以上の切り込み部及びつなぎ部により形成されており、
前記ケースは、
前記フィルムロールを回転可能に支持するロール支持部、
前記ケースに開口し、前記フィルムロールから引き出された前記可食性フィルムを挿通させる開口部、
前記ロール支持部と前記開口部との間に位置する回転軸周りに回転可能なローラ、
該ローラの周面から突出した突起部、
前記回転軸と同軸に一方の回転方向に回動することにより前記ローラを回転させる操作レバー、
前記ローラの回転を、前記一方の回転方向のみに規制する回転方向規制機構、及び、
前記操作レバーを他方の回転方向に付勢する付勢部材を備え、
前記切り込み部と前記突起部は係合可能に形成されている
ことを特徴とする可食性フィルム供給具。
【請求項2】
前記切り込み部は湾曲している
ことを特徴とする請求項1に記載の可食性フィルム供給具。
【請求項3】
前記ケースは、前記開口部の周縁部から突出した開口突起部を更に備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可食性フィルム供給具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の可食性フィルム供給具に使用される長尺の可食性フィルムであって、
ロール状に巻回されていると共に、
長軸方向に沿って所定長さ間隔で設けられた切り離し線を備え、
該切り離し線のそれぞれは、二以上の切り込み部及びつなぎ部により形成されており、
前記切り込み部は前記可食性フィルム供給具の突起部と係合可能に形成されている
ことを特徴とする可食性フィルム。
【請求項5】
前記切り込み部は湾曲している
ことを特徴とする請求項4に記載の可食性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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