可飽和吸収体を用いた光論理デバイス
光論理デバイス(1)であって、第2の鏡(M2)に対面する第1の鏡(M1)と、該鏡の間に位置する可飽和吸収体と、該デバイスから出力される光は第1の鏡(M1)を経由して出力されるような光と、使用時に、特定の値より大きい強度をもつ入射光に対しては出射光の強度は閾値より下であり、該特定の値より下の強度をもつ入射光に対しては出射光の強度は該閾値より上であるように第1の鏡(M1)の反射率を備えた光論理デバイス。該光論理デバイスは、NANDゲートおよびNORゲートとして用いられるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可飽和吸収体を用いた光論理デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光領域で行われる論理動作は、次世代のオールオプティカル(全光)ネットワークのための超高速全光信号処理(AOSP)を実現するために必要である。全光論理ゲートは、パケット交換ネットワークに応用されるAOSP用の多くの機能を実現するために用いることができる。これらの機能は、ヘッダーの認識および/または変更、パケット競合、データの符号化、半加算器及び全加算器の実現その他を含む。半導体デバイスは、小型、低動作パワー、および比較的高速度であるという利点を提供する。今日までに、光学媒質中の非線形効果を用いた色々な全光論理ゲートを実現するために多くの案が提案されてきた。例えば、光領域で半導体光増幅器(SOA)を用いる種々の論理操作装置が提供されてきた[l]−[3]。SOA以外としては、受動的デバイスが、安価であり、電流を流すための外部回路を通常は必要とせず、熱的に安定であるゆえに魅力的である。半導体多重量子井戸(MQW)を備えた受動的可飽和吸収体(SA)は、超高速AND動作を行うために広く利用されてきた(例えば、[6]を参照のこと。)。微小リング共振器(MR)におけるAOSPのための論理動作も理論的[4]および実験的[5]に研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SOAに基づく実施形態は、通常、パワー消費が大きく、本質的に雑音を伴い、その縦続接続性は増幅器の雑音指数で制限される。更に、多くの場合、入力信号を注意深く偏波整合させる必要がある。一方、入力エネルギーが低いときは透過率が低下し、入力パワーが高いときには透過率が高くなるといった受動的SAの非線形特性は、入射光信号間のAND動作だけを行うのに適している。微小リング共振器デバイスの実現は、技術的な問題があり、それがこの方法を、現状ではなお高価であり信頼性に乏しいものに制限している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面によれば、請求項1に記載するような光論理デバイスが提供される。
【0005】
本発明の1つの実施形態は、NANDおよびNOR論理動作をするために設計された、非対称ファブリ・ペロー共振器内に埋め込まれた半導体多重量子井戸における可飽和吸収を用いる光デバイスと見ることができよう。該デバイスは反射モードで動作する。すなわち、出力光は入力光と同じ側から集められる。空洞共振器のパラメータを適当に設計することで、該デバイスは、逆可飽和吸収体の挙動を示すことができる。すなわち、低入力エネルギー時に高反射率を示し、高入力エネルギー・レベルの時に低反射率を示す。該デバイスは、受動デバイスであり、小型であり、かつ偏波無依存である。
【0006】
本発明の他の側面によれば、本発明の第1の側面の該デバイスを用いた光信号処理の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
さて、本発明のいろいろな実施形態が、例示の方法で、以下の付属の図面を参照して記述される。
【図1】図1は光論理デバイスの概略的断面図である。
【図2】図2は、低入力エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たすように設計された図1のデバイスに対する、規格化入力エネルギーに対する反射率特性のグラフ表示である。
【図3】図3は、高入力エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たすように設計された図1のデバイスに対する、規格化入力エネルギーに対する反射率特性のグラフ表示である。
【図4】図4は、1往復の非可飽和損失αns×dの色々な値に対する、逆可飽和挙動を示している図1のデバイスの非線形反射率特性である。
【図5】図5は、図1のデバイスを備えた光信号処理装置の概略的表示である。
【図6】図6は、(a)NANDゲートおよび、(b)NORゲートとして機能している図1のデバイスの反射率対光入力パワーのグラフ表示を示す。
【図7】図7は、(a)NAND動作および、(b)NOR動作のための色々な入力パワー条件下での、図1のデバイスの反射率スペクトルのグラフ表示を示す。
【図8】図8は、飽和パワーに対する入力パワー成分の比に対する反射率のグラフ表示の3組(a)、(b)および(c)を示す。
【図9】図9は、図1のデバイスの双安定と非双安定の動作に対する強度特性(出力強度対入力強度)を示すグラフ表示である。
【図10】図10a)は、適度な値の高エネルギー時のフィネス(αns×d=0.005)、および適度なバイアス用プローブ電磁界(Ppb=Psat)をもち、およびα0×dの値は0.25である図1のデバイスに対する、ポンプの離調が共振時の誘導反射率に及ぼす効果に関する2つのグラフ表示を示す。図10b)は、(ポンプ電磁界がないときの)反射率対プローブ・パワーの特性のグラフ表示を示す。
【図11】図11は、図10(a)(実線)の場合の図1のデバイスの動的NAND動作に対する2つの入力ポンプ信号と出力信号の3つのグラフ表示を示す。
【図12】図12は、図10(a)(実線)と同じパラメータをもつが、より大きなバイアス用プローブ・パワーPpb=2Psatをもつ、図1のデバイスの動的NAND動作に対する2つの入力ポンプ信号と出力信号の3つのグラフ表示を示す。
【図13】図13は、共振波長から1nm離調したポンプ電磁界、およびαns×d=2.5×10−3、α0×d=0.25における共振時の誘導反射率のグラフ表示を示す。実線は高エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たす上面鏡反射率、すなわちRt=exp(−αns×d)の場合、破線は上面鏡反射率がRt=96%に低下した場合を示す。どちらの場合もバイアス・プローブ・パワーは、ヒステレシスを避けるように選ばれている。
【図14】図14は、(a)図13の実線および(b)図13の破線の2つの場合に対する、動的NAND動作に対応するグラフ表示を2組示す。
【図15】図15は、図13の破線のようなVCSGのパラメータをもつNOR動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、反射率Rbが100%に近い底面半導体鏡M2と反射率がRtである上面鏡M1の間に形成された非対称ファブリ・ペロー共振器すなわちエタロンを備えた垂直空洞共振器半導体ゲート(VCSG)デバイス1を示す。上面鏡の反射率Rtは100%よりは低い。それぞれの鏡は、2つの異なる半導体または誘電体材料を交互積層した層で、または、高反射性の底面鏡の場合には、金属材料 (たとえば、銀または金)の薄い層で実現できる。空洞共振器内の可飽和損失は、半導体多重量子井戸(MQW)によって提供される。 代替としては、例えば、量子ドット可飽和吸収体またはカーボン・ナノチューブ可飽和吸収体のような、光可飽和損失を示す他の媒体を用いることもできる。該非線形空洞共振器は、ファブリ・ペロー共振器の共振波長毎に反射率の最小値を示す。以下では、共振波長が、最適な動作条件であるとして考えられる。共振波長では、VCSGの反射率は数式1で与えられる[7]。
【0009】
【数1】
【0010】
ここでd[m]は吸収性の層の長さである。α[m−1]は片道の強度吸収係数であり、これは、可飽和および非可飽和吸収の両方の寄与を含む。ここで、吸収の可飽和部分は、エネルギーに依存する部分の吸収であり、これはMQWにおけるバンド・フィリング効果によって引き起こされるものであり、次のように表わすことができる。
【0011】
【数2】
【0012】
α0[m−1]はMQWの未飽和の吸収係数であり、EsatはMQWの吸収飽和エネルギーである。一方、吸収の非可飽和部分αns「m−1]は、入射エネルギー(または強度)で変化することはなく、吸収性材料における固定の損失によるものである。このように、全吸収係数は、通常の記号で表わすと、次のようになる。
【0013】
【数3】
【0014】
数式1を用いるとデバイスの反射率は次式が成立するとゼロになることが分かる。
【0015】
【数4】
【0016】
ここで、量exp(−2αd)はこの吸収体構造を1往復するときのパワー伝達率である。数式4で表わされた条件は、通常は、インピーダンス整合(IM)と呼ばれる。この内部1往復損失は、数式3を通して非線形吸収係数αを通して入力エネルギーに依存する。このように、所与のRtに対して、IM 条件は、信号エネルギーの特定の値に対して満たされる。数式2を数式3へ代入することによって、エネルギーに依存したインピーダンス整合条件は数式5のようになる。
【0017】
【数5】
【0018】
数式5から分かるように、上面鏡反射率Rtが数式6に表わされる条件を満足するとき、
【0019】
【数6】
【0020】
低入力エネルギー(E<<Esat)の時にIM条件が満足される。これは、共振器が通常のSA特性を増強するような全光ANDゲートを実現するための最適な条件である。この場合には実際に、VCSGの反射率 (これは上面鏡M1からデバイスを出射する光の強度の尺度であり、出射強度と入射強度の比として定義される。)は、低入力パワーに対しては低く(理想的にはゼロである)、高入力パワーに対しては高い。数値的シミュレーションから得たVCSGの反射率対規格化入力エネルギーの典型的な特性は図2に示されている。
【0021】
一方、上面鏡の反射率Rtが数式7の条件を満足するときは、
【0022】
【数7】
【0023】
反射率の最小値(すなわち、インピーダンス整合条件)は、数式5から容易に証明されるように、高入力エネルギー(E>>Esat)の時に達成される。この場合には、以下に実証されるように、VCSGは逆可飽和吸収特性を示す。
【0024】
Rb≒1と仮定すると、数式6で表わされた条件下では、低入力エネルギー(E>>Esat)のときは、VCSGの反射率は、数式1より、
【0025】
【数8】
【0026】
となる。これはゲートの高反射率(オン)状態を表す。このRonの値はα0とαnsの値に依存する。高レベルの入力パワー(E>>Esat)に対しては、吸収の可飽和部分は完全になくなり(すなわち、αsat〜0、高入射エネルギーの効果により可飽和損失はほぼ残っていない。)、数式3で与えた吸収係数は数式9のようになる。
【0027】
【数9】
【0028】
数式7で表わされる条件のもとでは、数式1で与えられたVCSGの反射率は、Rb=1を仮定すると、デバイスは今やインピーダンス整合されているので、Roff=0に低下する。
【0029】
高入力エネルギーでインピーダンス整合条件を満たすように設計されたVCSGの場合に対する数値的シミュレーションの結果は、図3に示されている。
【0030】
このように、吸収の可飽和部分が完全になくなる時にVCSGのインピーダンスを整合させることにより(それゆえに、反射の電磁界を相殺することにより)、標準の可飽和吸収体のAND特性を逆転することができる。この特徴は、以下により詳しく説明するように、NOR/NAND論理ゲートを実現することを可能とする。この機能は、上面鏡M1の反射率を注意深く選択することによって達成できる。数式6および数式7から、NAND/NORゲートを実現するための条件は、ANDゲートの場合に比べて上面鏡反射率Rtをより大きくすることに対応する、ということが分かる。
設計の最適化
上記したことから分かるように、吸収の可飽和部分が完全になくなる時にVCSGのインピーダンスを整合させることにより(それゆえに、反射の電磁界を相殺することにより)、標準のSAのAND特性を逆転することができる。
【0031】
しかしながら、効率の良い論理動作を実現するためには、オンとオフ状態間でゲートを切り替えるために必要な、動的範囲の少ない階段状の遷移が望ましい。逆可飽和吸収体特性の急峻な遷移を実現するためには、共振器内部での内部電磁界の増大効果が利用でき、この効果は空洞共振器のフィネスに関するものである。空洞共振器のフィネスが高ければ高いほど、電磁界の増大係数は高くなる。空洞共振器のフィネスは、また、吸収係数のパワー依存の値に従って動的に変化するので、フィネスが遷移の期間に出来るだけ大きく増加することが重要である。共振時には、該構造内部での強度分布は、動作条件に依存して入力エネルギーよりもはるかに高く(低く)することができる。共振波長において空洞共振器内部のエネルギーと共振器に入射するエネルギーの比は、数式10で与えられる[7]。
【0032】
【数10】
【0033】
は共振器のフィネスであり、数式11で定義される。
【0034】
【数11】
【0035】
空洞共振器内部の損失が減少すればファブリ・ペロー共振器のフィネスは増大することはよく知られている。吸収係数はパワーが増大すると常に減少するので、フィネスは、入力エネルギーが増大すると単調に増大し、このことは吸収体を更に飽和領域へ追い込むのに適当である。実際このように、吸収が或る値以下に小さくなると内部電磁界は増大するが、このことは、より迅速に吸収を最終の状態に到達させるための助けになる。入力エネルギーの小さな変化に対するΨの大きな変化は、オン状態からオフ状態への急峻な遷移を実現させることを可能にする。このように、フィネスはαをαnsへ近づけるために必要な急峻な増加を示す。E>>Esatでは、数式12が成立する。
【0036】
【数12】
【0037】
上面鏡が高パワー時にインピーダンス整合のために最適化されている時は(αE→∞=αns)、
前の数式は数式13のように書き換えられる。
【0038】
【数13】
【0039】
そして、Rb=1およびαns→0の時はΨ→∞となることが分かる。それ故、αnsが小さい値であることが、吸収体が完全に(または部分的に)飽和したときに、大きな値の内部電磁界増大係数を実現するために好都合である。このことは、ゲートがその動作状態を変えるときに必要な動的入力エネルギー範囲を減少することになり、入力エネルギーの関数としてのゲートの反射率の急峻な特性を可能にする。VCSGの非線形反射率特性に与える(一定のα0に対して)αnsの減少の効果を図4に示す。結果は、共振波長に同調した信号の入力エネルギーの関数とし空洞共振器の共振時の非線形VCSGの反射率を示す。底面鏡の反射率Rbは100%であるとしている。
VCSGを用いたNOR/NAND論理動作器の設計
ここまでは、VCSGの共振の1つに同調した入射電磁界を考えてきた。しかしながら、NORおよびNAND論理動作のためにVCSGを用いることが望まれる場合は、ポンプ‐プローブ構成が必要になる。実際には、2つの論理入力を表す2つのポンプ・ビームが、2つの入力ポンプ・ビット間の論理動作の結果を供給するように、VCSGの出力におけるプローブ信号の状態に影響を与える。原理的には、ポンプ信号およびプローブ信号は、非線形空洞共振器の2つの異なる共振に同調させることもできる。この場合には、動作の効率は、最大値にまで増大することになろう。実際には、プローブ信号だけがファブリ・ペロー共振に同調していて、一方、2つのポンプはプローブ波長から離調していて十分であり、またその方が望ましい。これは、局所的なプローブ信号の波長をVCSG共振の近くに維持させながら、外部の入力ポンプ信号に関して、デバイスの波長透明性を増すことになるであろう。
【0040】
このように、ポンプ‐プローブ構成においてNAND/NOR機能を実現するためには、ゲートのスペクトル解析が必要になる。これは、空洞共振器の共振に整合している入力信号に対しては数式1と数式6によって与えられるところの、VCSGの反射率および内部電磁界増大係数に対する一般的な表示式を考慮することによって容易に行うことができる。任意の入力波長に関して共振器内部の1往復の位相を考慮に入れると数式1および数式6は数式14および数式15のように拡張される。
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
【0043】
ここでφは波長に依存する片道離調度である。数式10および数式11を用い、数式2に示されたαのパワー依存性(E=ΨEinとして、ここでEinは入力エネルギー。)を用いると、入力のポンプおよびプローブのエネルギーの色々な値に対するVCSGの反射率スペクトルを計算することができる。該スペクトル・モデルを用いて、次に、一般の波長のポンプ・パワーが共振波長に同調したプローブ電磁界の反射率に与える影響を計算することができる。デバイス1を含む信号処理装置は図5に示される。
NAND動作
提案されたVCSGをもつNANDゲートの動作原理の概略的表示が図6aに示されているが、これは、全入力パワー(プローブとポンプ電磁界)の関数として共振状態にあるプローブ電磁界が感じる反射率を示している。ほぼ階段状の逆SA反射率特性をもつ理想ゲートを考えよう。遷移端近くのパワーPpbをもつ連続波のプローブ電磁界がまず初めにゲートに入力され、ポンプ・パルスがないので高い反射率R(Ppb)を感じる。
【0044】
2つのポンプ信号が、デバイスに同時に入力されるものと考える。ポンプ信号は、論理“1”および“0”の信号から成る。ここでそれぞれ”1”のデータ信号に関するポンプ・パワーはPpmpであり、“0”のデータ信号に関するポンプ・パワーはゼロである。PpbとPpmpの値は、データ信号が単一のポンプ“1”だけではゲートをオフ状態(プローブ光の低反射率に対応)に切り替えるのには十分ではないが、ポンプ“1”の信号に関するパワーが2倍になるとゲートをオフ状態に切り替えるのに十分であるように選ばれる。このように、プローブ・パワーと単一のポンプ・ビットの和に関係する反射率R(Ppb+Ppmp)は高い。一方、プローブと2つのポンプ“1”のデータ信号の和によって与えられる全入力パワーに対応する反射率R(Ppb+2Ppmp)は低い。フィルタを通った出力プローブ電磁界は、それ故、2つの入力ポンプ・パルスの間におけるNAND動作を表す。色々な入力パワー条件下での非線形ゲートのスペクトル反射率の計算結果は、NAND動作の場合に図7aに示されている。シミュレーションに用いられたパラメータ値は、α0×d=0.25、αns×d=0.005、Ppb=2.5×Psat、Ppmp=1×Psat、およびポンプの共振からの離調度Δres=1nmである。
【0045】
入力のプローブとポンプのパワーが好都合の値であると、プローブ電磁界またはプローブと単一のポンプ・パルスのどちらかがゲートに入力された場合は、反射率は常に高いことが分かる。一方、ポンプ・パワーの2倍がゲートに入力されると、共振波長での反射率は急激に低下する。図7aから、共振幅は、オン状態の低フィネス状態と高い値の共振器フィネスに関連するオフ状態との間を急激に変化することも分かる。オフ状態にあるVCSG共振のバンド幅は、このように非線形特性の急峻さに反比例している。バンド幅の増大は遷移の急峻さを低下させ、オン/オフ消光比(ER)を低下させることにつながる。共振バンド幅とERの間のトレード・オフはデバイスの設計において考慮しなければならない。シミュレーションは、また、多くの場合、数10GHzを超える動作スピードを可能にするのに十分に広い共振バンド幅を持って、10dBより大きなERが得られることを明らかにした。
NOR動作
同じようにしてNOR動作を行わせることができる。この場合、プローブ電磁界は空洞共振器の共振に整合させ、適当なパワーの値をもち、1つの単一のポンプ・パルスがゲートを共振波長でオフ状態に切り替えるのに十分なエネルギーをもつときは、反射プローブ・パワーをフィルタに通すことによって2つのポンプ・パルス間のNORが実現できる。この場合の動作の概略と計算されたスペクトル反射率は、それぞれ図6bおよび図7bに示されている。スペクトル反射率を計算するために用いられたパラメータは、図7aの場合と同じであるが、ポンプ・パワーは、この場合、Ppmp=2×Psat、に設定されていることが異なる。
【0046】
このように、(バイアス用プローブ・パワーのレベルを好都合の値に設定して)ポンプ・パワーを適当に設定することによって、同じデバイスで2つの動作を実現することができる。代替の実施形態では、NANDとNORの2つの論理動作間を切り替えるために、ポンプ・パワーを一定に保ちながら、バイアス用プローブのパワーを変えることができる。
空洞共振器パラメータの効果
この節では、空洞共振器パラメータがデバイスの動作に与える効果について調べる。特に、低パワー時の可飽和吸収係数α0および非可飽和吸収係数αnsが非線形空洞共振器特性に与える影響について解析する。底面鏡の反射率は100%と仮定し、上面鏡の反射率は数式4の条件を満たす値に設定された。全ての結果は、吸収体の飽和パワーで規格化されている。
【0047】
デバイスのよさの指数は、オン/オフコントラスト比、遷移が起こる動的エネルギー範囲、およびゲートの効率すなわちゲートがオン状態となったときの反射率の値である。
【0048】
該デバイスはポンプ‐プローブ動作で動作するように意図されているので、プローブ電磁界自身によって誘起される共振波長時の非線形反射率がまず計算された。このシミュレーションは、入力プローブのパワーの適当な値を評価することになった。次の段階では、適当なパワー・レベルをもち(常に共振している)プローブ電磁界が感じる反射率が、共振から一定量だけ離調しているポンプ光のポンプ・パワーの関数として計算される。シミュレーションは、上に導入した非線形スペクトル・モデルを用いて行われた。
【0049】
図8a、8bおよび8cは、シミュレーションの結果を示す。それぞれの対の図は、3つの異なる値αns×dと一定の値α0×dに対して得られた、プローブと反射率の関係(上図)と、プローブ・パワーの選ばれた値に対してポンプ電磁界によって誘起される共振時の非線形反射率特性(下図)を示す。上記から予想されるように、図から、共振時の反射率対ポンプ・パワー特性におけるもっとも急峻な特性は、αns×dの最小の値に対して得られることが分かる。この理由は、上に説明したように、或る値を超えると損失が飽和するので共振器のフィネスが急峻に増大することによる。その結果、共振器内のプローブ電磁界のパワーが増強され、それが吸収体の深い飽和に寄与し、共振時のフィネスと電磁界増大係数のさらに大きな値に導く。これらの条件下では、高反射率の初期条件が外部のポンプ信号によって変えられるや否や、ゲートをオン状態からオフ状態へ迅速に切り替えるのに寄与するのはプローブ光自身である。このような動作条件下では、ポンプ・パワーの役目は、共振波長にあるプローブ光に対する再生過程をトリガーすることであると見なすことができる。しかしながら、この特殊事情下では、光双安定性が現れることがある。すなわち、ポンプ電磁界が切られたときに、該デバイスがオフ状態を維持することが起こる。それは他のシステム応用にとっては有用である場合もあるが、現在のこの種の応用にとっては明らかに避けるべき状況である。
【0050】
図8に戻ると、反射率対Ppmp特性から、オン状態からオフ状態への完全な遷移は入力ポンプ・パワーの狭い動的範囲で得ることができることが分かる。もっとも小さな動的範囲はαns×dの最小の値に対して起こる。しかしながら、非可飽和損失αns×dの非常に小さな値は、また、上面鏡の反射率が>0.99という実際的ではない値になる。このことは、原理的に、該デバイスの実現を阻むものである。更に、以下に記述するように、この状況では、双安定性が起こりやすい。非可飽和損失αns×dを増大させることは、2重の有害な影響を持つ。共振時の反射率対ポンプ・パワーの非線形特性はよりスムーズになり、オン/オフコントラスト比が劣化する。これらの挙動もまた、ファブリ・ペロー理論の範囲で説明可能である。損失の可飽和部分(図の凡例ではα0×d)が減少すると、無視できないαnsの有害な影響がさらに悪くなる。一方、α0×dが増大すると、適度な値のαns×dがあっても、消光比の値はよくなる。しかしながら、α0×dの非常に大きな値は、実際には得るのが困難であり、飽和パワーの大きな値につながり(その結果、低パワー動作を妨げることになる)、通常はαnsのより大きな値と一緒に現れる。それ故に、実際の実現のためにデバイス特性に関するトレード・オフを考えねばならない。
双安定解析
ここでは、該デバイスの双安定動作と、双安定を回避する条件とを調べる。双安定の解析は、吸収ではなくて屈折率変化だけが関わる非線形効果を扱った参考文献[8]と同様の手続きを用いて行うことができる。ここでは、非線形屈折率変化は(大きな吸収変化に比べて小さいものと仮定して)無視することとし、吸収飽和の効果だけを考慮することにする。解析は、非線形屈折率と吸収変化の両方を考慮した一般的な場合にも容易に拡張できる。双安定の挙動は、入力および反射の強度(それぞれ、IinおよびIref)を空洞共振器内部の電磁界強度Icの関数として書き下し、つぎに、変数Icを無視してIrefをIinに対してプロットすることによって見ることができる。
数式16および数式17を得る。
【0051】
【数16】
【0052】
【数17】
【0053】
図9は、色々な値のαns×dと固定のα0×dに対する共振時の入力光対反射光の特性を示す。高入力エネルギー時にフィネスがより大きい(αns×dがより低い)場合に、該デバイスは双安定挙動を示すことが分かる。上記のことから、高入力エネルギー時にフィネスが大きい条件は、オン状態とオフ状態間の、可能な範囲の最も急峻な遷移を与えることが示された。しかしながら、双安定性は、内部非可飽和損失の理想最小値の極限を与える。実際、入力プローブ・バイアス用パワーに依存して双安定条件が満たされると、ポンプ信号が切れた時に該デバイスは、初期のオン状態に戻るのではなくオフ状態にとどまることになる。このことはまた、以下に記述する動的シミュレーションによっても確認される。空洞共振器の設計に際して、双安定が設定される条件は回避されるべきものである。これは基本的には2つの方法で行うことができる。第1は、本来非双安定である空洞共振器を設計することである。第2は、図9の破線の間のヒステレシス領域の外側にあるような適当な値の入力プローブ・パワーでゲートにバイアスを加えておくことである。このどちらの方法もオン/オフ消光比の劣化という観点で見たときにいくらかの欠陥となる。これらの効果は、いくつかの緩和策とともに、VCSGの動的挙動に関する数値的シミュレーション結果を与える時に、以下に論じられる。
動的動作
VCSGの動的動作は、数式1にMQWにおける吸収の動的変化を記述する数式を代入することによって研究することができる。吸収を表す部分に単一の時定数モデルを用いることにより、空洞共振器内の吸収係数に対して数式18のように書くことができる。
【0054】
【数18】
【0055】
ここでPpbおよびPpmpは、それぞれ、通常のプローブ入力パワーおよびポンプ入力パワーであり、φpbおよびφpmpは、それぞれプローブ波長およびポンプ波長に関する1往復の位相である。τsは、MQWにおけるキャリアの再結合時間である。以下では、τs=5psの値が仮定された。この値は、たとえば、イオン注入[9]、または低温分子線エピタキシ[10]のような、半導体材料中の再結合時間の高速化のための標準技術を用いることによって半導体MQWにおいて通常に達成可能である。
NAND動作
上記したように、ゲートがその初期状態へ回復するのを可能にするためには、空洞共振器内におけるヒステリシスの条件は回避すべきである。これは、高エネルギー時のフィネス値を制限することによって、αnsの値を十分に大きな値に選ぶか、または、バイアス用プローブ・パワーがヒステリシスの境界領域の外に在るように設定することによって達成できる。もちろん、2つの解決法を組み合わせてもよい。しかしながら、これら2つの解決法とも出力信号の質を暗示する。実際、αnsの値を大きくすることは、図10に示すように共振波長においてオン/オフ遷移をスムーズにする。共振から外れたポンプ電磁界によって誘起されたプローブ電磁界の反射率変化を考慮すると、曲線はよりスムーズになる(例えば、図8cの下図実線を見よ。)。この劣化は、入力ポンプの動的範囲の3dB以内で強い反射率変化が必要になるNANDゲートの動作の妨げになりかねない。可能な解決法は、この場合、ポンプ電磁界も空洞共振器の共振の近傍に同調させることであろう。この場合、αnsが大きすぎない限り、遷移の急峻さは保持され、NAND動作はなお可能である。この状況の例は図10(a)に示されている。この図では、ポンプが第2の空洞共振器の共振から遠くに(破線)、または近くに(実線)ある2つの場合に対して、ポンプ電磁界によって誘起されるプローブ電磁界の反射率が示されている。αns×d=5−3およびα0×d=0.25である。この場合、プローブ・バイアス用パワーはPpb=Psatとし、(図10bに示す)反射率対プロ―ブ・パワーの特性における遷移端に近すぎることのないような値に選ばれている。数式14と数式1で与えられたモデルを用いて得られた動的挙動も図11に示されている。比較のために、双安定動作の場合の動的挙動も図12に示されている。この場合、プローブ・パワーが2×Psatに増大されていて、この場合、ポンプ・パルスが切られた後も出力プローブ・パワーは低い値で残ることが図12の最下のグラフから見てとれる。ポンプ電磁界が空洞共振器の共振の近くにあるという条件は、波長変換の段階をデバイスの入力側に挿入しなければ、外部のポンプ波長に関して動作の透明性を制限することになるであろうから、望ましくはない。
【0056】
共振からのポンプの離調に余裕度をもたせ、かつヒステリシスを回避するために、αns×dとして小さな値を選び、かつバイアス・パワーを遷移端に近くはないように設定することが可能である。この場合、ポンプ・パワーによって誘起されたプローブの反射率を考えると、特性の劣化がここでも見られる。
【0057】
これは図13(実線)に示されている。そこでは、双安定を回避するために十分に低いプローブ・パワーに対して、1nm離調したポンプ電磁界によって誘起された共振時の反射率変化は低反射率の値(高入力エネルギー)の付近でスムーズな傾斜を示すことが見られる。更に、必要とされる動作パワーが増大することも見て取れる。上面鏡の反射率は、数式4によって与えられた条件に従って、Rt=exp(−αns×d)である。 対応する動的挙動は図14a)に示されている。NAND動作がいくらかは保存されているが、出力信号のERは劣化している。 しかしながら、この劣化は、部分的に飽和した吸収係数(αns<α<α0+αns)に対応してゲートをインピーダンス整合させることによって大幅に緩和させることができる。すなわち、この場合は、上面鏡反射率は、高入力エネルギー時にインピーダンス整合するために必要な値Rt=exp(−αns×d)より低くする。その効果は図13(破線)に示されているが、そこでは上面鏡の反射率Rt=96%の場合にプローブ電磁界が感じる反射率がポンプ・パワーに対して描かれている。Ppb=Psatのプローブ・パワーに対して、単一の”1”ビットのポンプ信号のパワーはプローブ光に対して高反射率を示すように選ばれ、一方、2つの入力”1”ビットのポンプ信号のパワーは低反射率領域になるように選ばれる。このようにして、フィルタを通った後のプローブ光に対して高ERをもつNAND動作を実現することができる。このERの増加は、ゲート効率の少しの減少(オン状態における反射率の低下)の犠牲の上に得られる。出力のERの増加のほかに、上面鏡の反射率を低下させることは、また、2つのほかの有利な結果をもたらす。第1は、上面鏡の反射率の低減は空洞共振器内の全損失を増加させ、それゆえにそのフィネスを低減するので、ヒステレシスの抑制に役立つ。その結果、今や、Rt=exp(−αns×d)の時に可能であった値よりもプローブ・パワーを遷移端のより近くに設定することが可能となる。Rtを低減することの他の利点は、Rtの値が低いと、空洞共振器内部と有効に結合するポンプ電磁界がより多くなるから、ゲートを切り替えるために必要な入力ポンプ・パワーが劇的に減少することである。図13(破線)に関するNAND動作の動的シミュレーションは図14bに示されている。更に、小さな値のαns×dに対して数式4によって与えられる条件は非常に高い値のRtとなり、実際的ではなくなる。それゆえに、Rtを低減することは鏡の製作がより容易になるという結果にもなりうる。
NOR動作
NOR動作の実現は直接的である。この場合は、ポンプ電磁界によって誘起された非線形プローブ反射率特性の急峻性に関する制約は少ない。実際、この場合、それぞれのポンプ・パルスがゲートをオフ状態に切り替えるのに十分なパワーを持っている限り、比較的スムーズな特性でさえも容認できる。しかしながら、低パワー動作が常に望まれ、VCSGを用いて効率のよい、低パワーのNORゲートを実現するために前の小節にて展開した考察を取り入れることが有利である。例として、図15は、図13の破線の場合に関係し、低反射率領域内に及ぶようなポンプ・パワーを持つVCSGのNOR動作を示す。
結論
上に示したように、非線形吸収特性を持つMQW部分を含む非対象ファブリ・ペロー共振器を備えた非線形VCSGは、NANDおよびNORの論理操作器の実現を可能にする、ことが有利な点である。該デバイスは、VCSGの共振波長に同調したプローブ電磁界に対して逆可飽和吸収特性が達成可能とする空洞共振器の特定の設計に依存している。これは、空洞共振器内の損失の非可飽和部分に対応してゲートのインピーダンスを整合させることにより可能となる。屈折率の非線形変化は、MQWにおける大きな吸収変化に比べて小さいと仮定して、ここでは考慮していない。しかしながら、キャリア密度が誘起する屈折率変化も考慮する場合へ解析を拡張するのは容易である。実際の応用では、MQWにおけるキャリア密度の変化は、定常状態で空洞共振器の共振のシフトをもたらすが、これは、入力プローブ電磁界を適当に同調させることで考慮に入れることができる。空洞共振器の色々なパラメータの条件下でのデバイス特性が調べられ、オン状態からオフ状態への最も急峻な遷移は、期待通り、空洞共振器内の非可飽和損失が最低値の時に達成されることが分かった。しかしながら、この条件では、双安定も起こり、デバイスの正しい動作を妨げられることになる。双安定を解決する条件を研究する発見的方法も行われた。しかしながら、双安定を回避し良好なオン/オフ消光比を保持するためのいくつかの簡単な設計規則が提案され、動的モデルによって数値的に実証された。光ネットワーク応用における全光信号処理のための該デバイスの利点は、小型であり、受動的動作であり、偏波無依存であり、低パワー動作が可能なことに関係している。
参考文献
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[10]R. タカハシ(Takahashi)、Y. カワムラ(Kawamura)、T. カガワ(Kagawa)、およびH. イワムラ(Iwamura);"低温成長InGaAs/InAlAs量子井戸における超高速1.55μm光応答(Ultrafast 1.55μm photoresponses in low−temperature−grown InGaAs/InAlAs quantum wells)"、アプライド フィジックス レターズ(Appl. Phys. Lett.)、65巻、14号、ページ1790−1792,10月、1994年。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可飽和吸収体を用いた光論理デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光領域で行われる論理動作は、次世代のオールオプティカル(全光)ネットワークのための超高速全光信号処理(AOSP)を実現するために必要である。全光論理ゲートは、パケット交換ネットワークに応用されるAOSP用の多くの機能を実現するために用いることができる。これらの機能は、ヘッダーの認識および/または変更、パケット競合、データの符号化、半加算器及び全加算器の実現その他を含む。半導体デバイスは、小型、低動作パワー、および比較的高速度であるという利点を提供する。今日までに、光学媒質中の非線形効果を用いた色々な全光論理ゲートを実現するために多くの案が提案されてきた。例えば、光領域で半導体光増幅器(SOA)を用いる種々の論理操作装置が提供されてきた[l]−[3]。SOA以外としては、受動的デバイスが、安価であり、電流を流すための外部回路を通常は必要とせず、熱的に安定であるゆえに魅力的である。半導体多重量子井戸(MQW)を備えた受動的可飽和吸収体(SA)は、超高速AND動作を行うために広く利用されてきた(例えば、[6]を参照のこと。)。微小リング共振器(MR)におけるAOSPのための論理動作も理論的[4]および実験的[5]に研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SOAに基づく実施形態は、通常、パワー消費が大きく、本質的に雑音を伴い、その縦続接続性は増幅器の雑音指数で制限される。更に、多くの場合、入力信号を注意深く偏波整合させる必要がある。一方、入力エネルギーが低いときは透過率が低下し、入力パワーが高いときには透過率が高くなるといった受動的SAの非線形特性は、入射光信号間のAND動作だけを行うのに適している。微小リング共振器デバイスの実現は、技術的な問題があり、それがこの方法を、現状ではなお高価であり信頼性に乏しいものに制限している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面によれば、請求項1に記載するような光論理デバイスが提供される。
【0005】
本発明の1つの実施形態は、NANDおよびNOR論理動作をするために設計された、非対称ファブリ・ペロー共振器内に埋め込まれた半導体多重量子井戸における可飽和吸収を用いる光デバイスと見ることができよう。該デバイスは反射モードで動作する。すなわち、出力光は入力光と同じ側から集められる。空洞共振器のパラメータを適当に設計することで、該デバイスは、逆可飽和吸収体の挙動を示すことができる。すなわち、低入力エネルギー時に高反射率を示し、高入力エネルギー・レベルの時に低反射率を示す。該デバイスは、受動デバイスであり、小型であり、かつ偏波無依存である。
【0006】
本発明の他の側面によれば、本発明の第1の側面の該デバイスを用いた光信号処理の方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
さて、本発明のいろいろな実施形態が、例示の方法で、以下の付属の図面を参照して記述される。
【図1】図1は光論理デバイスの概略的断面図である。
【図2】図2は、低入力エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たすように設計された図1のデバイスに対する、規格化入力エネルギーに対する反射率特性のグラフ表示である。
【図3】図3は、高入力エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たすように設計された図1のデバイスに対する、規格化入力エネルギーに対する反射率特性のグラフ表示である。
【図4】図4は、1往復の非可飽和損失αns×dの色々な値に対する、逆可飽和挙動を示している図1のデバイスの非線形反射率特性である。
【図5】図5は、図1のデバイスを備えた光信号処理装置の概略的表示である。
【図6】図6は、(a)NANDゲートおよび、(b)NORゲートとして機能している図1のデバイスの反射率対光入力パワーのグラフ表示を示す。
【図7】図7は、(a)NAND動作および、(b)NOR動作のための色々な入力パワー条件下での、図1のデバイスの反射率スペクトルのグラフ表示を示す。
【図8】図8は、飽和パワーに対する入力パワー成分の比に対する反射率のグラフ表示の3組(a)、(b)および(c)を示す。
【図9】図9は、図1のデバイスの双安定と非双安定の動作に対する強度特性(出力強度対入力強度)を示すグラフ表示である。
【図10】図10a)は、適度な値の高エネルギー時のフィネス(αns×d=0.005)、および適度なバイアス用プローブ電磁界(Ppb=Psat)をもち、およびα0×dの値は0.25である図1のデバイスに対する、ポンプの離調が共振時の誘導反射率に及ぼす効果に関する2つのグラフ表示を示す。図10b)は、(ポンプ電磁界がないときの)反射率対プローブ・パワーの特性のグラフ表示を示す。
【図11】図11は、図10(a)(実線)の場合の図1のデバイスの動的NAND動作に対する2つの入力ポンプ信号と出力信号の3つのグラフ表示を示す。
【図12】図12は、図10(a)(実線)と同じパラメータをもつが、より大きなバイアス用プローブ・パワーPpb=2Psatをもつ、図1のデバイスの動的NAND動作に対する2つの入力ポンプ信号と出力信号の3つのグラフ表示を示す。
【図13】図13は、共振波長から1nm離調したポンプ電磁界、およびαns×d=2.5×10−3、α0×d=0.25における共振時の誘導反射率のグラフ表示を示す。実線は高エネルギー時にインピーダンス整合条件を満たす上面鏡反射率、すなわちRt=exp(−αns×d)の場合、破線は上面鏡反射率がRt=96%に低下した場合を示す。どちらの場合もバイアス・プローブ・パワーは、ヒステレシスを避けるように選ばれている。
【図14】図14は、(a)図13の実線および(b)図13の破線の2つの場合に対する、動的NAND動作に対応するグラフ表示を2組示す。
【図15】図15は、図13の破線のようなVCSGのパラメータをもつNOR動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、反射率Rbが100%に近い底面半導体鏡M2と反射率がRtである上面鏡M1の間に形成された非対称ファブリ・ペロー共振器すなわちエタロンを備えた垂直空洞共振器半導体ゲート(VCSG)デバイス1を示す。上面鏡の反射率Rtは100%よりは低い。それぞれの鏡は、2つの異なる半導体または誘電体材料を交互積層した層で、または、高反射性の底面鏡の場合には、金属材料 (たとえば、銀または金)の薄い層で実現できる。空洞共振器内の可飽和損失は、半導体多重量子井戸(MQW)によって提供される。 代替としては、例えば、量子ドット可飽和吸収体またはカーボン・ナノチューブ可飽和吸収体のような、光可飽和損失を示す他の媒体を用いることもできる。該非線形空洞共振器は、ファブリ・ペロー共振器の共振波長毎に反射率の最小値を示す。以下では、共振波長が、最適な動作条件であるとして考えられる。共振波長では、VCSGの反射率は数式1で与えられる[7]。
【0009】
【数1】
【0010】
ここでd[m]は吸収性の層の長さである。α[m−1]は片道の強度吸収係数であり、これは、可飽和および非可飽和吸収の両方の寄与を含む。ここで、吸収の可飽和部分は、エネルギーに依存する部分の吸収であり、これはMQWにおけるバンド・フィリング効果によって引き起こされるものであり、次のように表わすことができる。
【0011】
【数2】
【0012】
α0[m−1]はMQWの未飽和の吸収係数であり、EsatはMQWの吸収飽和エネルギーである。一方、吸収の非可飽和部分αns「m−1]は、入射エネルギー(または強度)で変化することはなく、吸収性材料における固定の損失によるものである。このように、全吸収係数は、通常の記号で表わすと、次のようになる。
【0013】
【数3】
【0014】
数式1を用いるとデバイスの反射率は次式が成立するとゼロになることが分かる。
【0015】
【数4】
【0016】
ここで、量exp(−2αd)はこの吸収体構造を1往復するときのパワー伝達率である。数式4で表わされた条件は、通常は、インピーダンス整合(IM)と呼ばれる。この内部1往復損失は、数式3を通して非線形吸収係数αを通して入力エネルギーに依存する。このように、所与のRtに対して、IM 条件は、信号エネルギーの特定の値に対して満たされる。数式2を数式3へ代入することによって、エネルギーに依存したインピーダンス整合条件は数式5のようになる。
【0017】
【数5】
【0018】
数式5から分かるように、上面鏡反射率Rtが数式6に表わされる条件を満足するとき、
【0019】
【数6】
【0020】
低入力エネルギー(E<<Esat)の時にIM条件が満足される。これは、共振器が通常のSA特性を増強するような全光ANDゲートを実現するための最適な条件である。この場合には実際に、VCSGの反射率 (これは上面鏡M1からデバイスを出射する光の強度の尺度であり、出射強度と入射強度の比として定義される。)は、低入力パワーに対しては低く(理想的にはゼロである)、高入力パワーに対しては高い。数値的シミュレーションから得たVCSGの反射率対規格化入力エネルギーの典型的な特性は図2に示されている。
【0021】
一方、上面鏡の反射率Rtが数式7の条件を満足するときは、
【0022】
【数7】
【0023】
反射率の最小値(すなわち、インピーダンス整合条件)は、数式5から容易に証明されるように、高入力エネルギー(E>>Esat)の時に達成される。この場合には、以下に実証されるように、VCSGは逆可飽和吸収特性を示す。
【0024】
Rb≒1と仮定すると、数式6で表わされた条件下では、低入力エネルギー(E>>Esat)のときは、VCSGの反射率は、数式1より、
【0025】
【数8】
【0026】
となる。これはゲートの高反射率(オン)状態を表す。このRonの値はα0とαnsの値に依存する。高レベルの入力パワー(E>>Esat)に対しては、吸収の可飽和部分は完全になくなり(すなわち、αsat〜0、高入射エネルギーの効果により可飽和損失はほぼ残っていない。)、数式3で与えた吸収係数は数式9のようになる。
【0027】
【数9】
【0028】
数式7で表わされる条件のもとでは、数式1で与えられたVCSGの反射率は、Rb=1を仮定すると、デバイスは今やインピーダンス整合されているので、Roff=0に低下する。
【0029】
高入力エネルギーでインピーダンス整合条件を満たすように設計されたVCSGの場合に対する数値的シミュレーションの結果は、図3に示されている。
【0030】
このように、吸収の可飽和部分が完全になくなる時にVCSGのインピーダンスを整合させることにより(それゆえに、反射の電磁界を相殺することにより)、標準の可飽和吸収体のAND特性を逆転することができる。この特徴は、以下により詳しく説明するように、NOR/NAND論理ゲートを実現することを可能とする。この機能は、上面鏡M1の反射率を注意深く選択することによって達成できる。数式6および数式7から、NAND/NORゲートを実現するための条件は、ANDゲートの場合に比べて上面鏡反射率Rtをより大きくすることに対応する、ということが分かる。
設計の最適化
上記したことから分かるように、吸収の可飽和部分が完全になくなる時にVCSGのインピーダンスを整合させることにより(それゆえに、反射の電磁界を相殺することにより)、標準のSAのAND特性を逆転することができる。
【0031】
しかしながら、効率の良い論理動作を実現するためには、オンとオフ状態間でゲートを切り替えるために必要な、動的範囲の少ない階段状の遷移が望ましい。逆可飽和吸収体特性の急峻な遷移を実現するためには、共振器内部での内部電磁界の増大効果が利用でき、この効果は空洞共振器のフィネスに関するものである。空洞共振器のフィネスが高ければ高いほど、電磁界の増大係数は高くなる。空洞共振器のフィネスは、また、吸収係数のパワー依存の値に従って動的に変化するので、フィネスが遷移の期間に出来るだけ大きく増加することが重要である。共振時には、該構造内部での強度分布は、動作条件に依存して入力エネルギーよりもはるかに高く(低く)することができる。共振波長において空洞共振器内部のエネルギーと共振器に入射するエネルギーの比は、数式10で与えられる[7]。
【0032】
【数10】
【0033】
は共振器のフィネスであり、数式11で定義される。
【0034】
【数11】
【0035】
空洞共振器内部の損失が減少すればファブリ・ペロー共振器のフィネスは増大することはよく知られている。吸収係数はパワーが増大すると常に減少するので、フィネスは、入力エネルギーが増大すると単調に増大し、このことは吸収体を更に飽和領域へ追い込むのに適当である。実際このように、吸収が或る値以下に小さくなると内部電磁界は増大するが、このことは、より迅速に吸収を最終の状態に到達させるための助けになる。入力エネルギーの小さな変化に対するΨの大きな変化は、オン状態からオフ状態への急峻な遷移を実現させることを可能にする。このように、フィネスはαをαnsへ近づけるために必要な急峻な増加を示す。E>>Esatでは、数式12が成立する。
【0036】
【数12】
【0037】
上面鏡が高パワー時にインピーダンス整合のために最適化されている時は(αE→∞=αns)、
前の数式は数式13のように書き換えられる。
【0038】
【数13】
【0039】
そして、Rb=1およびαns→0の時はΨ→∞となることが分かる。それ故、αnsが小さい値であることが、吸収体が完全に(または部分的に)飽和したときに、大きな値の内部電磁界増大係数を実現するために好都合である。このことは、ゲートがその動作状態を変えるときに必要な動的入力エネルギー範囲を減少することになり、入力エネルギーの関数としてのゲートの反射率の急峻な特性を可能にする。VCSGの非線形反射率特性に与える(一定のα0に対して)αnsの減少の効果を図4に示す。結果は、共振波長に同調した信号の入力エネルギーの関数とし空洞共振器の共振時の非線形VCSGの反射率を示す。底面鏡の反射率Rbは100%であるとしている。
VCSGを用いたNOR/NAND論理動作器の設計
ここまでは、VCSGの共振の1つに同調した入射電磁界を考えてきた。しかしながら、NORおよびNAND論理動作のためにVCSGを用いることが望まれる場合は、ポンプ‐プローブ構成が必要になる。実際には、2つの論理入力を表す2つのポンプ・ビームが、2つの入力ポンプ・ビット間の論理動作の結果を供給するように、VCSGの出力におけるプローブ信号の状態に影響を与える。原理的には、ポンプ信号およびプローブ信号は、非線形空洞共振器の2つの異なる共振に同調させることもできる。この場合には、動作の効率は、最大値にまで増大することになろう。実際には、プローブ信号だけがファブリ・ペロー共振に同調していて、一方、2つのポンプはプローブ波長から離調していて十分であり、またその方が望ましい。これは、局所的なプローブ信号の波長をVCSG共振の近くに維持させながら、外部の入力ポンプ信号に関して、デバイスの波長透明性を増すことになるであろう。
【0040】
このように、ポンプ‐プローブ構成においてNAND/NOR機能を実現するためには、ゲートのスペクトル解析が必要になる。これは、空洞共振器の共振に整合している入力信号に対しては数式1と数式6によって与えられるところの、VCSGの反射率および内部電磁界増大係数に対する一般的な表示式を考慮することによって容易に行うことができる。任意の入力波長に関して共振器内部の1往復の位相を考慮に入れると数式1および数式6は数式14および数式15のように拡張される。
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
【0043】
ここでφは波長に依存する片道離調度である。数式10および数式11を用い、数式2に示されたαのパワー依存性(E=ΨEinとして、ここでEinは入力エネルギー。)を用いると、入力のポンプおよびプローブのエネルギーの色々な値に対するVCSGの反射率スペクトルを計算することができる。該スペクトル・モデルを用いて、次に、一般の波長のポンプ・パワーが共振波長に同調したプローブ電磁界の反射率に与える影響を計算することができる。デバイス1を含む信号処理装置は図5に示される。
NAND動作
提案されたVCSGをもつNANDゲートの動作原理の概略的表示が図6aに示されているが、これは、全入力パワー(プローブとポンプ電磁界)の関数として共振状態にあるプローブ電磁界が感じる反射率を示している。ほぼ階段状の逆SA反射率特性をもつ理想ゲートを考えよう。遷移端近くのパワーPpbをもつ連続波のプローブ電磁界がまず初めにゲートに入力され、ポンプ・パルスがないので高い反射率R(Ppb)を感じる。
【0044】
2つのポンプ信号が、デバイスに同時に入力されるものと考える。ポンプ信号は、論理“1”および“0”の信号から成る。ここでそれぞれ”1”のデータ信号に関するポンプ・パワーはPpmpであり、“0”のデータ信号に関するポンプ・パワーはゼロである。PpbとPpmpの値は、データ信号が単一のポンプ“1”だけではゲートをオフ状態(プローブ光の低反射率に対応)に切り替えるのには十分ではないが、ポンプ“1”の信号に関するパワーが2倍になるとゲートをオフ状態に切り替えるのに十分であるように選ばれる。このように、プローブ・パワーと単一のポンプ・ビットの和に関係する反射率R(Ppb+Ppmp)は高い。一方、プローブと2つのポンプ“1”のデータ信号の和によって与えられる全入力パワーに対応する反射率R(Ppb+2Ppmp)は低い。フィルタを通った出力プローブ電磁界は、それ故、2つの入力ポンプ・パルスの間におけるNAND動作を表す。色々な入力パワー条件下での非線形ゲートのスペクトル反射率の計算結果は、NAND動作の場合に図7aに示されている。シミュレーションに用いられたパラメータ値は、α0×d=0.25、αns×d=0.005、Ppb=2.5×Psat、Ppmp=1×Psat、およびポンプの共振からの離調度Δres=1nmである。
【0045】
入力のプローブとポンプのパワーが好都合の値であると、プローブ電磁界またはプローブと単一のポンプ・パルスのどちらかがゲートに入力された場合は、反射率は常に高いことが分かる。一方、ポンプ・パワーの2倍がゲートに入力されると、共振波長での反射率は急激に低下する。図7aから、共振幅は、オン状態の低フィネス状態と高い値の共振器フィネスに関連するオフ状態との間を急激に変化することも分かる。オフ状態にあるVCSG共振のバンド幅は、このように非線形特性の急峻さに反比例している。バンド幅の増大は遷移の急峻さを低下させ、オン/オフ消光比(ER)を低下させることにつながる。共振バンド幅とERの間のトレード・オフはデバイスの設計において考慮しなければならない。シミュレーションは、また、多くの場合、数10GHzを超える動作スピードを可能にするのに十分に広い共振バンド幅を持って、10dBより大きなERが得られることを明らかにした。
NOR動作
同じようにしてNOR動作を行わせることができる。この場合、プローブ電磁界は空洞共振器の共振に整合させ、適当なパワーの値をもち、1つの単一のポンプ・パルスがゲートを共振波長でオフ状態に切り替えるのに十分なエネルギーをもつときは、反射プローブ・パワーをフィルタに通すことによって2つのポンプ・パルス間のNORが実現できる。この場合の動作の概略と計算されたスペクトル反射率は、それぞれ図6bおよび図7bに示されている。スペクトル反射率を計算するために用いられたパラメータは、図7aの場合と同じであるが、ポンプ・パワーは、この場合、Ppmp=2×Psat、に設定されていることが異なる。
【0046】
このように、(バイアス用プローブ・パワーのレベルを好都合の値に設定して)ポンプ・パワーを適当に設定することによって、同じデバイスで2つの動作を実現することができる。代替の実施形態では、NANDとNORの2つの論理動作間を切り替えるために、ポンプ・パワーを一定に保ちながら、バイアス用プローブのパワーを変えることができる。
空洞共振器パラメータの効果
この節では、空洞共振器パラメータがデバイスの動作に与える効果について調べる。特に、低パワー時の可飽和吸収係数α0および非可飽和吸収係数αnsが非線形空洞共振器特性に与える影響について解析する。底面鏡の反射率は100%と仮定し、上面鏡の反射率は数式4の条件を満たす値に設定された。全ての結果は、吸収体の飽和パワーで規格化されている。
【0047】
デバイスのよさの指数は、オン/オフコントラスト比、遷移が起こる動的エネルギー範囲、およびゲートの効率すなわちゲートがオン状態となったときの反射率の値である。
【0048】
該デバイスはポンプ‐プローブ動作で動作するように意図されているので、プローブ電磁界自身によって誘起される共振波長時の非線形反射率がまず計算された。このシミュレーションは、入力プローブのパワーの適当な値を評価することになった。次の段階では、適当なパワー・レベルをもち(常に共振している)プローブ電磁界が感じる反射率が、共振から一定量だけ離調しているポンプ光のポンプ・パワーの関数として計算される。シミュレーションは、上に導入した非線形スペクトル・モデルを用いて行われた。
【0049】
図8a、8bおよび8cは、シミュレーションの結果を示す。それぞれの対の図は、3つの異なる値αns×dと一定の値α0×dに対して得られた、プローブと反射率の関係(上図)と、プローブ・パワーの選ばれた値に対してポンプ電磁界によって誘起される共振時の非線形反射率特性(下図)を示す。上記から予想されるように、図から、共振時の反射率対ポンプ・パワー特性におけるもっとも急峻な特性は、αns×dの最小の値に対して得られることが分かる。この理由は、上に説明したように、或る値を超えると損失が飽和するので共振器のフィネスが急峻に増大することによる。その結果、共振器内のプローブ電磁界のパワーが増強され、それが吸収体の深い飽和に寄与し、共振時のフィネスと電磁界増大係数のさらに大きな値に導く。これらの条件下では、高反射率の初期条件が外部のポンプ信号によって変えられるや否や、ゲートをオン状態からオフ状態へ迅速に切り替えるのに寄与するのはプローブ光自身である。このような動作条件下では、ポンプ・パワーの役目は、共振波長にあるプローブ光に対する再生過程をトリガーすることであると見なすことができる。しかしながら、この特殊事情下では、光双安定性が現れることがある。すなわち、ポンプ電磁界が切られたときに、該デバイスがオフ状態を維持することが起こる。それは他のシステム応用にとっては有用である場合もあるが、現在のこの種の応用にとっては明らかに避けるべき状況である。
【0050】
図8に戻ると、反射率対Ppmp特性から、オン状態からオフ状態への完全な遷移は入力ポンプ・パワーの狭い動的範囲で得ることができることが分かる。もっとも小さな動的範囲はαns×dの最小の値に対して起こる。しかしながら、非可飽和損失αns×dの非常に小さな値は、また、上面鏡の反射率が>0.99という実際的ではない値になる。このことは、原理的に、該デバイスの実現を阻むものである。更に、以下に記述するように、この状況では、双安定性が起こりやすい。非可飽和損失αns×dを増大させることは、2重の有害な影響を持つ。共振時の反射率対ポンプ・パワーの非線形特性はよりスムーズになり、オン/オフコントラスト比が劣化する。これらの挙動もまた、ファブリ・ペロー理論の範囲で説明可能である。損失の可飽和部分(図の凡例ではα0×d)が減少すると、無視できないαnsの有害な影響がさらに悪くなる。一方、α0×dが増大すると、適度な値のαns×dがあっても、消光比の値はよくなる。しかしながら、α0×dの非常に大きな値は、実際には得るのが困難であり、飽和パワーの大きな値につながり(その結果、低パワー動作を妨げることになる)、通常はαnsのより大きな値と一緒に現れる。それ故に、実際の実現のためにデバイス特性に関するトレード・オフを考えねばならない。
双安定解析
ここでは、該デバイスの双安定動作と、双安定を回避する条件とを調べる。双安定の解析は、吸収ではなくて屈折率変化だけが関わる非線形効果を扱った参考文献[8]と同様の手続きを用いて行うことができる。ここでは、非線形屈折率変化は(大きな吸収変化に比べて小さいものと仮定して)無視することとし、吸収飽和の効果だけを考慮することにする。解析は、非線形屈折率と吸収変化の両方を考慮した一般的な場合にも容易に拡張できる。双安定の挙動は、入力および反射の強度(それぞれ、IinおよびIref)を空洞共振器内部の電磁界強度Icの関数として書き下し、つぎに、変数Icを無視してIrefをIinに対してプロットすることによって見ることができる。
数式16および数式17を得る。
【0051】
【数16】
【0052】
【数17】
【0053】
図9は、色々な値のαns×dと固定のα0×dに対する共振時の入力光対反射光の特性を示す。高入力エネルギー時にフィネスがより大きい(αns×dがより低い)場合に、該デバイスは双安定挙動を示すことが分かる。上記のことから、高入力エネルギー時にフィネスが大きい条件は、オン状態とオフ状態間の、可能な範囲の最も急峻な遷移を与えることが示された。しかしながら、双安定性は、内部非可飽和損失の理想最小値の極限を与える。実際、入力プローブ・バイアス用パワーに依存して双安定条件が満たされると、ポンプ信号が切れた時に該デバイスは、初期のオン状態に戻るのではなくオフ状態にとどまることになる。このことはまた、以下に記述する動的シミュレーションによっても確認される。空洞共振器の設計に際して、双安定が設定される条件は回避されるべきものである。これは基本的には2つの方法で行うことができる。第1は、本来非双安定である空洞共振器を設計することである。第2は、図9の破線の間のヒステレシス領域の外側にあるような適当な値の入力プローブ・パワーでゲートにバイアスを加えておくことである。このどちらの方法もオン/オフ消光比の劣化という観点で見たときにいくらかの欠陥となる。これらの効果は、いくつかの緩和策とともに、VCSGの動的挙動に関する数値的シミュレーション結果を与える時に、以下に論じられる。
動的動作
VCSGの動的動作は、数式1にMQWにおける吸収の動的変化を記述する数式を代入することによって研究することができる。吸収を表す部分に単一の時定数モデルを用いることにより、空洞共振器内の吸収係数に対して数式18のように書くことができる。
【0054】
【数18】
【0055】
ここでPpbおよびPpmpは、それぞれ、通常のプローブ入力パワーおよびポンプ入力パワーであり、φpbおよびφpmpは、それぞれプローブ波長およびポンプ波長に関する1往復の位相である。τsは、MQWにおけるキャリアの再結合時間である。以下では、τs=5psの値が仮定された。この値は、たとえば、イオン注入[9]、または低温分子線エピタキシ[10]のような、半導体材料中の再結合時間の高速化のための標準技術を用いることによって半導体MQWにおいて通常に達成可能である。
NAND動作
上記したように、ゲートがその初期状態へ回復するのを可能にするためには、空洞共振器内におけるヒステリシスの条件は回避すべきである。これは、高エネルギー時のフィネス値を制限することによって、αnsの値を十分に大きな値に選ぶか、または、バイアス用プローブ・パワーがヒステリシスの境界領域の外に在るように設定することによって達成できる。もちろん、2つの解決法を組み合わせてもよい。しかしながら、これら2つの解決法とも出力信号の質を暗示する。実際、αnsの値を大きくすることは、図10に示すように共振波長においてオン/オフ遷移をスムーズにする。共振から外れたポンプ電磁界によって誘起されたプローブ電磁界の反射率変化を考慮すると、曲線はよりスムーズになる(例えば、図8cの下図実線を見よ。)。この劣化は、入力ポンプの動的範囲の3dB以内で強い反射率変化が必要になるNANDゲートの動作の妨げになりかねない。可能な解決法は、この場合、ポンプ電磁界も空洞共振器の共振の近傍に同調させることであろう。この場合、αnsが大きすぎない限り、遷移の急峻さは保持され、NAND動作はなお可能である。この状況の例は図10(a)に示されている。この図では、ポンプが第2の空洞共振器の共振から遠くに(破線)、または近くに(実線)ある2つの場合に対して、ポンプ電磁界によって誘起されるプローブ電磁界の反射率が示されている。αns×d=5−3およびα0×d=0.25である。この場合、プローブ・バイアス用パワーはPpb=Psatとし、(図10bに示す)反射率対プロ―ブ・パワーの特性における遷移端に近すぎることのないような値に選ばれている。数式14と数式1で与えられたモデルを用いて得られた動的挙動も図11に示されている。比較のために、双安定動作の場合の動的挙動も図12に示されている。この場合、プローブ・パワーが2×Psatに増大されていて、この場合、ポンプ・パルスが切られた後も出力プローブ・パワーは低い値で残ることが図12の最下のグラフから見てとれる。ポンプ電磁界が空洞共振器の共振の近くにあるという条件は、波長変換の段階をデバイスの入力側に挿入しなければ、外部のポンプ波長に関して動作の透明性を制限することになるであろうから、望ましくはない。
【0056】
共振からのポンプの離調に余裕度をもたせ、かつヒステリシスを回避するために、αns×dとして小さな値を選び、かつバイアス・パワーを遷移端に近くはないように設定することが可能である。この場合、ポンプ・パワーによって誘起されたプローブの反射率を考えると、特性の劣化がここでも見られる。
【0057】
これは図13(実線)に示されている。そこでは、双安定を回避するために十分に低いプローブ・パワーに対して、1nm離調したポンプ電磁界によって誘起された共振時の反射率変化は低反射率の値(高入力エネルギー)の付近でスムーズな傾斜を示すことが見られる。更に、必要とされる動作パワーが増大することも見て取れる。上面鏡の反射率は、数式4によって与えられた条件に従って、Rt=exp(−αns×d)である。 対応する動的挙動は図14a)に示されている。NAND動作がいくらかは保存されているが、出力信号のERは劣化している。 しかしながら、この劣化は、部分的に飽和した吸収係数(αns<α<α0+αns)に対応してゲートをインピーダンス整合させることによって大幅に緩和させることができる。すなわち、この場合は、上面鏡反射率は、高入力エネルギー時にインピーダンス整合するために必要な値Rt=exp(−αns×d)より低くする。その効果は図13(破線)に示されているが、そこでは上面鏡の反射率Rt=96%の場合にプローブ電磁界が感じる反射率がポンプ・パワーに対して描かれている。Ppb=Psatのプローブ・パワーに対して、単一の”1”ビットのポンプ信号のパワーはプローブ光に対して高反射率を示すように選ばれ、一方、2つの入力”1”ビットのポンプ信号のパワーは低反射率領域になるように選ばれる。このようにして、フィルタを通った後のプローブ光に対して高ERをもつNAND動作を実現することができる。このERの増加は、ゲート効率の少しの減少(オン状態における反射率の低下)の犠牲の上に得られる。出力のERの増加のほかに、上面鏡の反射率を低下させることは、また、2つのほかの有利な結果をもたらす。第1は、上面鏡の反射率の低減は空洞共振器内の全損失を増加させ、それゆえにそのフィネスを低減するので、ヒステレシスの抑制に役立つ。その結果、今や、Rt=exp(−αns×d)の時に可能であった値よりもプローブ・パワーを遷移端のより近くに設定することが可能となる。Rtを低減することの他の利点は、Rtの値が低いと、空洞共振器内部と有効に結合するポンプ電磁界がより多くなるから、ゲートを切り替えるために必要な入力ポンプ・パワーが劇的に減少することである。図13(破線)に関するNAND動作の動的シミュレーションは図14bに示されている。更に、小さな値のαns×dに対して数式4によって与えられる条件は非常に高い値のRtとなり、実際的ではなくなる。それゆえに、Rtを低減することは鏡の製作がより容易になるという結果にもなりうる。
NOR動作
NOR動作の実現は直接的である。この場合は、ポンプ電磁界によって誘起された非線形プローブ反射率特性の急峻性に関する制約は少ない。実際、この場合、それぞれのポンプ・パルスがゲートをオフ状態に切り替えるのに十分なパワーを持っている限り、比較的スムーズな特性でさえも容認できる。しかしながら、低パワー動作が常に望まれ、VCSGを用いて効率のよい、低パワーのNORゲートを実現するために前の小節にて展開した考察を取り入れることが有利である。例として、図15は、図13の破線の場合に関係し、低反射率領域内に及ぶようなポンプ・パワーを持つVCSGのNOR動作を示す。
結論
上に示したように、非線形吸収特性を持つMQW部分を含む非対象ファブリ・ペロー共振器を備えた非線形VCSGは、NANDおよびNORの論理操作器の実現を可能にする、ことが有利な点である。該デバイスは、VCSGの共振波長に同調したプローブ電磁界に対して逆可飽和吸収特性が達成可能とする空洞共振器の特定の設計に依存している。これは、空洞共振器内の損失の非可飽和部分に対応してゲートのインピーダンスを整合させることにより可能となる。屈折率の非線形変化は、MQWにおける大きな吸収変化に比べて小さいと仮定して、ここでは考慮していない。しかしながら、キャリア密度が誘起する屈折率変化も考慮する場合へ解析を拡張するのは容易である。実際の応用では、MQWにおけるキャリア密度の変化は、定常状態で空洞共振器の共振のシフトをもたらすが、これは、入力プローブ電磁界を適当に同調させることで考慮に入れることができる。空洞共振器の色々なパラメータの条件下でのデバイス特性が調べられ、オン状態からオフ状態への最も急峻な遷移は、期待通り、空洞共振器内の非可飽和損失が最低値の時に達成されることが分かった。しかしながら、この条件では、双安定も起こり、デバイスの正しい動作を妨げられることになる。双安定を解決する条件を研究する発見的方法も行われた。しかしながら、双安定を回避し良好なオン/オフ消光比を保持するためのいくつかの簡単な設計規則が提案され、動的モデルによって数値的に実証された。光ネットワーク応用における全光信号処理のための該デバイスの利点は、小型であり、受動的動作であり、偏波無依存であり、低パワー動作が可能なことに関係している。
参考文献
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[2]N. デン(Deng)、K. チャン(Chan)、C.K. チャン(Chan)、L.K. チェン(Chen)、“半導体光増幅器におけるFWMを用いた高速度RZ−DPSK信号のための全光XOR論理ゲート(An All−Optical XOR Logic Gate for High−Speed RZ−DPSK Signals by FWM in Semiconductor Optical Amplifier)”、ジャーナル・オブ・セレクテト・トピックス・オン・カンタム・エレクトロニクス(J. Sel. Topics. Quant. Electron.)12巻、4号、7月/8月、2006年。
[3]S.H. キム(Kim)、J.H. キム(Kim)、B.G. ユ(Yu)、Y.T. ビュン(Byun)、Y.M. ジェオン(Jeon)、S. リ(Lee)、D.H.ウー(Woo)、およびS.H. キム(Kim);“半導体光増幅器内の交差利得変調を用いた全光NANDゲート(All−optical NAND gate using cross−gain modulation in semiconductor optical amplifiers)”、エレクトロニクス レター(Electron. Lett.)、41巻、18号、9月、2001年。
[4]S. ミクロウリス(Mikroulis)、H. シモス(Simos)、E.ロディティ(Roditi)、A. チプーラス(Chipouras)、およびD. シヴリディス(Syvridis);“受動性InGaAsP/InP微小リング共振器をベースにした全光AND論理ゲートの40Gb/sNRZおよびRZ動作(40−Gb/s NRZ and RZ Operation of an All−Optical AND Logic Gate Based on a Passive InGaAsP/InP Microring Resonator)”,ジャーナル オブ ライトウェーブ テクノロジ(J. Ligthw. Technol)、24巻、3号、3月、2006年。
[5]T.A. イブラヒム(Ibrahim)、R. グローバー(Grover)、L.C. クオ(Kuo)、S. カナカラジュ(Kanakaraju)、L.C. カルホウン(Calhoun)、およびP.T. ホ(Ho);"半導体微小共振器を用いた全光AND/NAND論理ゲート(All−Optical AND/NAND Logic Gates Using Semiconductor Microresonators)“、フォトニック テクノロジ レター(Photon. TechnoL Lett.)、15巻、10号、10月、2003年。
[6]H. コバヤシ(Kobayashi)、R. タカハシ(Takahashi)、Y. マツオカ(Matsuoka)、およびH. イワムラ(Iwamura)、“低温成長InGaAs/InAlAs多重量子井戸を用いた1Tbit/s分波(1 Tbit/s demultiplexing using low temperature grown InGaAs/InAlAs multiple quantum wells”,エレクトロニクス レター(Electron. Lett.)、34巻、ページ908−909、4月、1998年。
[7]L. ブロヴェリ(Brovelli)、U. ケラー(Keller)、およびT. チウ(Chiu);“モード・ロック固体レーザのための反共振ファブリ・ペロー可飽和半導体吸収体の設計と動作(Design and operation of antiresonant Fabry−Perot saturable semiconductor absorbers for mode−locked solid−state lasers)”,ジャーナル オブ オプティカル ソサエティ オブ アメリカ(J. Opt. Soc. Am.)、B12巻、 ページ311、(1995年)。
[8]E. ガーマイヤ(Garmire)、“損失が飽和するファブリ・ペローにおける光双安定の基準(Criteria for optical bistability in a lossy saturating Fabry−Perot)”,ジャーナル オブ カンタム エレクトロニクス(J. Quant. Electron.)、25巻、3号、3月、1989年。
[9]P.W. スミス(Smith)、Y. シルバーガー(Silberger)、およびD.A.B.ミラー(Miller)、“可飽和励起子非線形性を用いた半導体ダイオード・レーザのモード同期(Mode locking of semiconductor diode lasers using saturable excitonic nonlinearities)”,ジャーナル オブ オプティカル ソサエティ オブ アメリカ(J. Opt. Soc. Am.)、2巻、7号、ページ1228−1236,7月、1985年。
[10]R. タカハシ(Takahashi)、Y. カワムラ(Kawamura)、T. カガワ(Kagawa)、およびH. イワムラ(Iwamura);"低温成長InGaAs/InAlAs量子井戸における超高速1.55μm光応答(Ultrafast 1.55μm photoresponses in low−temperature−grown InGaAs/InAlAs quantum wells)"、アプライド フィジックス レターズ(Appl. Phys. Lett.)、65巻、14号、ページ1790−1792,10月、1994年。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光論理デバイスであって、
第2の鏡に対面する第1の鏡と、
前記第1の鏡と前記第2の鏡との間に配置された可飽和吸収体と
を備え
前記光論理デバイスから出力される光は前記第1の鏡を経由して出力される光であり、
前記第1の鏡の反射率は、使用時において、特定の値より大きな強度をもつ入射光に対しては出射光の強度が閾値未満となり、前記特定の値未満の強度をもつ入射光に対しては出射光の強度が前記閾値を超えるように設定された反射率であることを特徴とする光論理デバイス。
【請求項2】
前記第1の鏡の反射率は、前記第2の鏡の反射率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の光論理デバイス。
【請求項3】
前記第2の鏡の反射率はほぼ100%に等しいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光論理デバイス。
【請求項4】
NANDゲートおよびNORゲートのうちの少なくとも1つとして使用可能なように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項5】
NANDゲートとNORゲートとして用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項6】
任意の特定の時刻において、少なくとも2つの2値の入力信号に加わる信号である入力バイアス用の制御信号の強度を制御することによって、NAND機能またはNOR機能がそれぞれ実現されることを特徴とする請求項5に記載の光論理デバイス。
【請求項7】
ファブリ・ペロー共振器構造を備えてることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項8】
少なくとも2つの2値の入力信号およびバイアス用の制御信号を請求項1に記載の光論理デバイスに入力するステップを備え、前記少なくとも2つの2値の入力信号およびバイアス用の制御信号間の相対的な強度が、前記光論理デバイスがNANDゲートとして動作するか、またはNORゲートとして動作するかに応じて制御されることを特徴とする光信号処理方法。
【請求項1】
光論理デバイスであって、
第2の鏡に対面する第1の鏡と、
前記第1の鏡と前記第2の鏡との間に配置された可飽和吸収体と
を備え
前記光論理デバイスから出力される光は前記第1の鏡を経由して出力される光であり、
前記第1の鏡の反射率は、使用時において、特定の値より大きな強度をもつ入射光に対しては出射光の強度が閾値未満となり、前記特定の値未満の強度をもつ入射光に対しては出射光の強度が前記閾値を超えるように設定された反射率であることを特徴とする光論理デバイス。
【請求項2】
前記第1の鏡の反射率は、前記第2の鏡の反射率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の光論理デバイス。
【請求項3】
前記第2の鏡の反射率はほぼ100%に等しいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光論理デバイス。
【請求項4】
NANDゲートおよびNORゲートのうちの少なくとも1つとして使用可能なように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項5】
NANDゲートとNORゲートとして用いられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項6】
任意の特定の時刻において、少なくとも2つの2値の入力信号に加わる信号である入力バイアス用の制御信号の強度を制御することによって、NAND機能またはNOR機能がそれぞれ実現されることを特徴とする請求項5に記載の光論理デバイス。
【請求項7】
ファブリ・ペロー共振器構造を備えてることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光論理デバイス。
【請求項8】
少なくとも2つの2値の入力信号およびバイアス用の制御信号を請求項1に記載の光論理デバイスに入力するステップを備え、前記少なくとも2つの2値の入力信号およびバイアス用の制御信号間の相対的な強度が、前記光論理デバイスがNANDゲートとして動作するか、またはNORゲートとして動作するかに応じて制御されることを特徴とする光信号処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−534868(P2010−534868A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518504(P2010−518504)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057922
【国際公開番号】WO2009/015692
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057922
【国際公開番号】WO2009/015692
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
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