説明

合いじゃくり実結合構造を有する床材およびそれを用いた部分補修方法

【課題】リフォームしたときの原状への回復や、フローリングをしたとき、傷んだ床材のみを部分的に簡単に、差し替えできる床材およびそれを用いた部分補修方法を提供する
【解決手段】合いじゃくり結合の重合水平当接面に実結合部を組み込んだ接合部を端部に有する床材であって、該接合部は、合いじゃくりの上当接面1に雄実3を突設し、下当接面2に雌実4を凹設してなり、合いじゃくり結合と共に雄実を雌実に嵌合して実結合する、合いじゃくり実結合構造を有する床材A。床材Bは上記床材Aの裏面に伸縮性を有するクッション材5を貼着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関する。さらに詳しくは、合いじゃくり結合に実結合を組み込んだ接合部を端部に有する床材およびそれを用いた床面の部分補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、床材は床下地材に接着剤や釘等の固着手段により固着され、床材どうしは、端部の凹凸の嵌合を利用する実結合あるいは、端部を重ね合わせて固定する合いじゃくり結合により接合される。しかしながら、上記した方法で施工された床材は、既存の床材や、床下地材の上に新しい木質床材を貼ってリフォームする場合や、賃貸住宅でリフォームした場合の原状への回復は、手間がかかり、専門業者の熟練した技能を必要とする。
【0003】
そこで、下記特許文献1には上記した問題点を解決するために、施工が簡単な薄型床材が提案されている。すなわち、具体的解決手段として、特定の厚さ、幅、長さを有する長方形の板を上層とし、厚さは略同等であるが、他の寸法が上層の板に比べて、相対する長辺の相対する位置に幅方向に10mmないし30mmの幅の凹入部と偶数個の凸出部を設けた板を下層とし、上層と下層とを貼合、切削あるいは型内で成形して一体とし、これを長さ方向に短辺どうしを密着させ1つの列として敷設し、また隣り合う列の下層の板の長辺の凸出部と凹入部が互いに嵌合するように長方形の板を長さ方向にずらし、長辺どうしが互いに密着するように施工するものであって、上層の表面層を除く部分の比重が1.4以上の施工が簡単で取り外しも可能な厚さが薄いことを特徴とする薄型床材が開示されている。
【特許文献1】特開平6−207458号公報(第1〜3頁、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術における床材は、いわば複合床材であって、上層を、例えば合板からなる木質層とし、下層を合成樹脂層として両者を例えば、金型内に装着して合成樹脂成型機により一体成型して製作する必要がある。また、その前工程として下層の合成樹脂層を、凹入部と凸出部を有するシートに裁断する工程等があり、製作に手間がかかり、コスト的に必ずしも有利に得られるものとはいえない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決して、リフォームしたときの原状への回復、あるいは、フローリングをした場合、傷んだ床材のみを部分的に簡単に、手間がかからずに差し替えできる床材およびそれを用いた床面の部分補修方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、合いじゃくり結合の重合水平当接面に実結合部を組み込んだ接合部を端部に有する床材であって、該接合部は、合いじゃくりの上当接面に雄実を突設し、下当接面に雌実を凹設してなり、合いじゃくり結合と共に雄実を雌実に嵌合して実結合する、合いじゃくり実結合構造を有する床材が提供される。
【0007】
上記床材としては、とくに限定されず、MDF、パーティクルボード等の木質材料系、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂等の合成樹脂材料系からなるものが用いられる。
【0008】
請求項2に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は、請求項1に記載の発明に加えて、上記床材の裏面に伸縮性を有するクッション材を貼着してなるものとされる。クッション材としては、クッション性とともに、伸縮性を有するものであればとくに限定されず、ポリエチレン、ポリウレタン等軟質樹脂発泡体あるいはポリエステル系、不織布系クッション材等が好ましく用いられる。
【0009】
請求項3に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は、請求項1に記載の発明に加えて、上記雄実の嵌合面に側面視山型の突起部が設けられる。
【0010】
請求項4に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は、請求項1に記載の発明に加えて、上記雄実の嵌合面に側面視凸状の突起部が設けられる。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材で床面を施工したときの部分補修方法であって、単板の床材を差し換え用床材として用い、傷んだ単板床材を除去した後、隣接する既設の単板床材の長手方向の端部を雄実が見えるまでクッション材を伸ばして持ち上げるとともに、上記差し換え用床材の長手方向端部の雌実を横方向から嵌め込み、幅方向端部の雌実を隣接する既設の床材の幅方向端部の雄実の下に入り込ませ、上から押さえて嵌合させる床材の部分補修方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材は上記のとおりであり、合いじゃくりの上当接面に雄実を突設し、下当接面に雌実を凹設し、合いじゃくり結合と共に雄実を雌実に嵌合する実結合を組み込んだ接合部を端部に有しているため、合いじゃくり結合単独の場合に起こる反り等による浮きや、段違いを凹凸嵌合で実結合することにより防いで、しっかりと隣接する床材どうしを接合することができる。
【0013】
請求項2に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は上記のとおりであり、請求項1の合いじゃくり実結合構造を有する床材の持つ効果に加え、上記床材の裏面に伸縮性を有するクッション材を貼着してなるため、床面のクッション性をよくするとともに、防音性や制音性を高めることができる。
【0014】
請求項3に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は上記のとおりであり、請求項1の合いじゃくり実結合構造を有する床材の持つ効果に加え、上記雄実の嵌合面に側面視山型の突起部が設けられているため、この突起部が上記雌実の嵌合面に凹設された係合凹部にしっかりと係合し、雄実が雌実から抜けることを防ぐ。
【0015】
請求項4に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材は上記のとおりであり、請求項1の合いじゃくり実結合構造を有する床材の持つ効果に加え、上記雄実の嵌合面に側面視凸状の突起部が設けられているため、この突起部が上記雌実の嵌合面に凹設された係合凹部にしっかりと係合し、雄実が雌実から抜けることを防ぐ。
【0016】
請求項5に記載の発明にかかる床材の部分補修方法は上記のとおりであり、請求項2に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材で床面を施工したとき、単板の床材を差し換え用床材として用い、傷んだ単板床材を除去した後、隣接する既設の単板床材の長手方向の端部を裏面に貼着されたクッション材の伸びを利用して雄実が見えるまで持ち上げ、上記差し換え用床材の長手方向端部の雌実を横方向から上記雄実に容易に嵌め込むことができる。また、差し換え用床材の幅方向端部の雌実を隣接する既設の床材の幅方向端部の雄実の下に入り込ませる際、既設の床材の幅方向端部をクッション材の伸びを利用して持ち上げ、容易に入り込ませることができる。その後、上から押し込むことによって容易に床材の差し換え行うことが可能であり、床面の部分補修を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材Aを示す部分断面斜視図である。図1に示すように、上記合いじゃくり実結合構造は、一方の床材の接合端の合いじゃくり結合の上当接面1に設けられた雄実3と、他方の床材の下当接面2に凹設された雌実4とから構成される。また、上記雄実3の両側の嵌合面31には側面視山型の突起部311が設けられ、この突起部311は、上記雌実4の嵌合面41に凹設された係合凹部411に係合する。
【0018】
このとき、上記突起部311を含めた雄実3の幅aに対して雌実4の間口寸法bを若干狭く、例えば、0.1〜1mm狭くすることにより、雄実3を上方から押し込んで雌実4に嵌合したとき、雌実4の間口は弾性的に変形した後、しっかりと嵌合する。このように、雄実3の幅aに対して雌実4の間口寸法bを狭くすることにより、十分に嵌合強度を有する。
【0019】
図2は、図1に示す床材Aを合いじゃくり結合するとともに、上記雄実3を上方から押し込んで雌実4に嵌合した状態を示す断面図である。図2に示されているように、合いじゃくり結合の上当接面1と下当接面2とは、重合水平当接面を形成するとともに、雄実3は雌実4に嵌合して実結合部を形成する。このように、雄実3を押し込むことにより、合いじゃくり結合と実結合とを同時に行うことができる。なお、上記突起部311は側面視山型とされているが、山型に限定されることなく、例えば凸状の突起部とすることも可能である。
【0020】
図3は、本発明の第2実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材Bを示す断面図である。図3に示すように、上記床材Bは、図1に示す本発明の第1実施形態にかかる床材Aの裏面にクッション材5を貼着して構成される。上記クッション材5としては、クッション性とともに、伸縮性のある軟質樹脂発泡体やポリエステル系不織布からなるクッション材5が用いられる。
【0021】
つぎに、上記第2実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材Bを用いて床面を施工した場合、床面の一部を差し換える部分補修方法について説明する。図4は、上記裏面にクッション材5を貼着した床材Bを敷き詰めた床面の一部を示す説明図である。図4において、白抜き部分は傷んだ床材の単板を取り除いた跡の床下地を示す。このとき、この床下地部分に必要に応じて接着剤を塗布してもよい。
【0022】
図5は、図4に示すXの部分、すなわち、隣接する既設の床材Kの長手方向の端部を雄実3が見えるまでクッション材5を伸ばして持ち上げ、差し換え用床材Sの長手方向端部の雌実4を横方向から嵌め込む状態を示す説明図である。図5に示すように、既設の床材Kの長手方向の端部の雄実3と差し換え用床材Sの長手方向端部の雌実4とを横方向からスライドして嵌合させる。その後、図6に示すように、差し換え用床材Sの幅方向端部の雌実4を、図4に示すYの部分、すなわち、隣接する既設の床材Kの幅方向の端部の雄実3の下に入り込ませる。このとき、既設の床材Kの裏面には伸縮性のあるクッション材5が貼着されているため、このクッション材5が伸びて上記雄実3の下に雌実4を容易に入り込ませることができる。その後、Xの部分と反対側及びYの部分と反対側の差し替え用床材Sの雄実を、既設の床材Kの雌実に上方から押し込んで嵌合させる(図示せず)。雄実3の上を押さえて雌実4に嵌合させることにより、傷んだ1枚の床材Bを容易に差し換えることができる。
【0023】
上記は、1枚の床材Bを差し換えたときの部分補修方法について述べたが、複数の場合も同様にして補修することができる。また、床面全体も補修することができる。以上述べたように、第1実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材Aの裏面に伸縮性のあるクッション材5を裏面に貼着して床材Bとし、本発明の方法を実施することにより、床面のクッション性をよくする、あるいは防音性や制音性を高めるというクッション材5の本来の機能に加えて、補修の容易性を向上させるという機能をも付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材を示す部分断面斜視図である。
【図2】図1に示す床材を合いじゃくり結合するとともに、雄実と雌実とで実結合した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる合いじゃくり実結合構造を有する床材を示す部分断面斜視図である。
【図4】第2実施形態にかかる床材で施工した床面の一部を示す説明図である。
【図5】本発明にかかる床材の部分補修方法の初期の段階を示す説明図である。
【図6】本発明にかかる床材の部分補修方法の中間の段階を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
A 本発明の第1実施形態にかかる床材
B 本発明の第2実施形態にかかる床材
K 既設の床材
S 差し換え用床材
X 既設の床材の長手方向端部
Y 既設の床材の幅方向端部
1 上当接面
2 下当接面
3 雄実
31 嵌合面
311 突起部
4 雌実
41 嵌合面
411 係合凹部
5 クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合いじゃくり結合の重合水平当接面に実結合部を組み込んだ接合部を端部に有する床材であって、該接合部は、合いじゃくりの上当接面に雄実を突設し、下当接面に雌実を凹設してなり、合いじゃくり結合と共に雄実を雌実に嵌合して実結合する、合いじゃくり実結合構造を有する床材。
【請求項2】
上記床材の裏面に伸縮性を有するクッション材を貼着してなる請求項1に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材。
【請求項3】
上記雄実の嵌合面に側面視山型の突起部が設けられた請求項1に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材。
【請求項4】
上記雄実の嵌合面に側面視凸状の突起部が設けられた請求項1に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材。
【請求項5】
請求項2に記載の合いじゃくり実結合構造を有する床材で床面を施工したときの部分補修方法であって、上記単板の床材を差し換え用床材として用い、傷んだ単板床材を除去した後、隣接する既設の単板床材の長手方向の端部を雄実が見えるまでクッション材を伸ばして持ち上げるとともに、上記差し換え用床材の長手方向端部の雌実を横方向から嵌め込み、幅方向端部の雌実を隣接する既設の単板床材の幅方向端部の雄実の下に入り込ませ、上から押さえて嵌合させる床材の部分補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−240249(P2008−240249A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78207(P2007−78207)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】