説明

合わせ鏡装置

【課題】上下の鏡の角度調節が容易であり、しかも不使用時の静止安定性の高い合わせ鏡装置を提供する。
【解決手段】固定部(中フレーム12)と、該固定部の上下各端にヒンジ(15U・15L)を介して連結された一対の可動部(上フレーム13、下フレーム14)とを、実質的に共通な垂直面を有する基台(11)に取り付けてなる合わせ鏡装置(縦型三面鏡)を、固定部と一対の可動部との間の折曲角度を略同一に変化させるための同期連動機構(16)と、一対の可動部を基台に個々に固定するための一対のロック手段(30・31)とを有し、一対のロック手段は、一方に加えた解除操作力を他方に伝達する力伝達機構(37)を介して互いに連動連結されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に頭頂部を見るための合わせ鏡を簡便に行うことのできる合わせ鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、頭頂部の頭髪の手入れや毛染め、あるいは怪我の治療などを自分で行う場合は、合わせ鏡を用いることが一般的である。しかし、こうした作業を片手に鏡を持ちつつ行うのは厄介である。そこで3枚の平面鏡を互いに折曲できるように水平軸を持つヒンジで連結し、互いの鏡面の角度を適宜に調節した上で水平の台上に下鏡を置き、中央鏡と上鏡とで反射した頭頂部を下鏡に映すようにした縦型の三面鏡が、特許文献1に提案されている。
【特許文献1】特開平11−56554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この特許文献1に記載された三面鏡は、互いの鏡面同士間の角度を自由に調節でき、持ち運びが自由である反面、上下の鏡の角度を個々に調節する作業が厄介である。特に、角度調節を楽に行えるようにするにはヒンジの回動抵抗が低い方が好ましいが、各鏡板を任意の角度で安定させるにはヒンジの回動抵抗がある程度必要である。つまり、操作性と使用時の安定性との両立は困難であった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の不都合を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、上下の鏡の角度調節が容易であり、しかも不使用時の静止安定性の高い合わせ鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明の請求項1は、固定部(中フレーム12)と、該固定部の上下各端にヒンジ(15U・15L)を介して連結された一対の可動部(上フレーム13、下フレーム14)とを、実質的に共通な垂直面を有する基台(11)に取り付けてなる合わせ鏡装置(縦型三面鏡7)を、固定部と一対の可動部との間の折曲角度を略同一に変化させるための同期連動機構(16)と、一対の可動部を基台に個々に固定するための一対のロック手段(30・31)とを有し、一対のロック手段は、一方に加えた解除操作力を他方に伝達する力伝達機構(37)を介して互いに連動連結されたものとした。
【0006】
特に、固定部と可動部との間に、固定部と可動部との折曲方向と逆向きの力を常時作用させる弾発付勢手段(捩りばね29U・29L)を設けると良い(請求項2)。また、前記連動機構として、固定部に設けられたピニオン(17)と、該ピニオンの中心軸を挟む両側に噛合する一対のラック(26・27)とからなり、一対のラックと一対の可動部との一方同士と他方同士とが互いに連結されるものとすると良い(請求項3)。
【発明の効果】
【0007】
このような本発明の請求項1の構成によれば、一対の可動部の傾動動作が同期すると共に、一対の可動部の垂直状態を保持するロック手段の作動が同期するので、操作性を高める上に大きな効果が得られる。特に請求項2の構成により、製造精度や組み付け精度に起因して各部に連動誤差が介入しても、一対の可動部のロック動作を確実化する上に効果的であり、また請求項3の構成によれば、一対の可動部の傾斜を大きくしようとする力と傾斜を少なくしようとする力のバランスにより、格別なストッパを要さずに任意の位置で静止させるフリーストップ機能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に添付の図面を参照して本発明の鏡装置について詳細に説明する。
【0009】
図1並びに図2は、本発明が適用された洗面化粧台の全体斜視図である。この洗面化粧台1は、下方にロワキャビネット2を備えた洗面・洗髪ボウル3と、洗面・洗髪ボウル3の上方に設けられた鏡ユニット4と、側方に設けられたサイドキャビネット5とからなり、例えば脱衣室のコーナー部などに設置される。
【0010】
サイドキャビネット5の上部は、図2に示すように、前方へ引き出すことができる抽斗式収納箱6として構成されており、この抽斗式収納箱6の前面に、本発明に係わる縦型三面鏡7が設けられている。この縦型三面鏡7は、床面に対して略垂直に配置された固定部としての中鏡8と、中鏡8の上端および下端にそれぞれヒンジを介して連結された可動部としての上鏡9および下鏡10とから構成されている。中鏡8は、抽斗式収納箱6の前板と一体をなす基台11に対してその右側縁がヒンジ結合されており、抽斗式収納箱6を引き出した上で中鏡8の左側縁を手前に引くと、図2に示したように、上鏡9および下鏡10を伴って右側縁を軸として旋回動し、洗面化粧台1の側方にその鏡面を向けるようになっている。また上鏡9および下鏡10は、例えば下鏡10の下端をユーザーが手前に引いて傾動させると、上鏡9もその上端をユーザー側へ近づけるように傾動するようになっている。
【0011】
次にこの縦型三面鏡7の内部構造について図3〜図8を参照して説明する。
【0012】
各鏡は、それぞれ対応する中フレーム12、上フレーム13及び下フレーム14に固定されており、以下、各フレームを基準にして説明する。固定部としての中フレーム12の上下各端に、可動部としての上フレーム13の下端および下フレーム14の上端が、それぞれヒンジ15U・15Lを介して連結されている。そして上フレーム13と下フレーム14との傾動動作の連動機構16は、中フレーム12の中央部に枢着されたピニオン17と、中フレーム12のピニオン17を挟む上下に固設された一対のスライドガイド18U・18Lをもって上下方向にスライド自在に支持された上スライド板19および下スライド板20と、上フレーム13の下端および下フレーム14の上端から上下各フレーム13・14の延在方向と同一方向へ延出された上アーム21及び下アーム22と、上、下各アーム21・22と上スライド板19の上端および下スライド板20の下端とをそれぞれ個別に連結する上連結リンク23及び下連結リンク24とからなっている。
【0013】
下スライド板20の上部には、ピニオン17を受容する縦に長い長方形の窓25が開けられると共に、窓25の右側内縁に、ピニオン17の右側部分に噛合する上向きラック26が形成されている。そして上スライド板19の左側の下端からは、ピニオン17の左側部分に噛合する下向きラック27が延出されている。また下スライド板20の左側部には、下向きラック27との干渉を避ける切欠部28が形成されている。
【0014】
上下各スライド板19・20と上下各連結リンク23・24との連結部には、上連結リンク23の上部並びに下連結リンク24の下部を手前側へ押し出す向きの回動付勢力を作用させる捩りばね29U・29Lがそれぞれ装着されている。
【0015】
他方、図4並びに図5に示すように、上フレーム13の上端並びに下フレーム14の下端には、上下各フレーム13・14を基台11に固定するためのロック機構30・31が設けられている。このロック機構30・31は、図6に示すように、基台11の上下各端部に一体的に設けられたロック爪32に係合するフック33を備えたラッチ部材34が、水平方向に延在する軸回りに回動可能に設けられている。これらのラッチ部材34には、図4並びに図5に併せて示したように、上フレーム13の上端並びに下フレーム14の下端に枢着された操作ハンドル35・36が一体的に設けられている。このラッチ部材34と一体をなす操作ハンドル35・36は、その回動中心軸に設けられた捩りばね36Tにより、ロック爪32にフック33を係合させる向きに常時弾発付勢されている。なお、図6には下側ロック機構31のみを示したが、上下各ロック機構30・31は基本的に同一である。
【0016】
上下の各操作ハンドル35・36は、水平軸回りについての操作ハンドル35・36の回動運動を垂直方向の直線運動に変換すると共に、下側の操作ハンドルに加えた解除操作力を上側の操作ハンドルに伝達するための力伝達機構37を介して相互に連動連結されている。この力伝達機構37は、上下各フレーム13・14に設けられた複数のピン38に対して上下方向長孔39を介して所定範囲をスライド自在に係合した上変換リンク40及び下変換リンク41と、上変換リンク40の下端とベルクランク42を介して連動連結され、且つ上フレーム13に設けられた複数のピン43に対して上下方向長孔44を介して所定範囲をスライド自在に係合した中間変換リンク45と、下変換リンク41の上端と中間変換リンク45の下端との間を連結すべくアウタチューブ46でガイドされたフレキシブルケーブル47とからなっている。また上下各変換リンク40・41は、共に対応するフレーム13・14に設けられたばね受け48U・48Lとの間に縮設された圧縮コイルばね49U・49Lにより、上変換リンク40は下向きに、下変換リンク41は上向きにそれぞれ弾発付勢されている。
【0017】
中フレーム12におけるピニオン17を挟む上下対称位置には、一対の長方形枠50U・50Lが固設されている。そして上下各スライド板19・20の適所には、この長方形枠50U・50Lを受容すべく上下に長い長方形孔51U・51Lが形成されている。これら長方形孔51U・51Lと長方形枠50U・50Lとは、長方形孔51U・51L内に長方形枠50U・50Lを受容した状態で上下各スライド板19・20が所定範囲を上下に移動し得るように、長方形孔51U・51Lの方がより長くされている。また各長方形孔51U・51Lにおける側部対向内面の上下方向中間位置よりもやや上方には、それぞれ凹部52が形成されている。
【0018】
下側の長方形枠50L内には、弾発変形可能な長円形のクリック音発生部材53が装着されている。このクリック音発生部材53における側部外面の上下中間位置には、長方形枠50Lの長手方向延在部の上下方向中間位置に形成された孔54を突き抜ける突起55が形成されている。なお、クリック音発生部材53は、必ずしも下側の長方形枠50L内に設けなければならないわけではなく、上側でも良いし、場合によっては両方に設けても良い。
【0019】
次に本発明装置の作動要領について説明する。
【0020】
通常は、上フレーム13および下フレーム14は、フック33に対するロック爪32の係合により、垂直な中フレーム12と連続面となる垂直位置を保持している(図7の状態)。この状態で下フレーム14の下端に設けられた操作ハンドル36に指先をかけて手前側へ引くと、圧縮コイルばね49U・49L及び捩りばね36Tによるロック状態保持力に抗して図6における反時計回りに操作ハンドル36が回動し、これに伴ってフック33とロック爪32との係合を解除する向きにラッチ部材34が回動する。この操作ハンドル36の回動運動により、下変換リンク41は下向きに直線移動する。この下変換リンク41の下向き直線運動は、フレキシブルケーブル47を介して中間変換リンク45へと伝達され、中間変換リンク45も下向きに直線移動する。すると中間変換リンク45とベルクランク42を介して連動連結された上変換リンク40は、上向きに直線移動する。この上変換リンク40の上向き移動により、下側のロック機構31と上下対称位置に配された上側のロック機構30が解除される。
【0021】
上下の両ロック機構30・31が解除された状態で、その下端を前方へ振り出すように下フレーム14を回動させると、図8に示すように、下フレーム14のヒンジ15Lの近傍に設けられた下アーム22が反時計回りに回動し、下連結リンク24を引き下ろす。これにより、下スライド板20が下向きに移動する。この下スライド板20の下向き移動により、下スライド板20と一体の上向きラック26が下向きに移動し、ピニオン17が時計回りに回転し、ピニオン17の左側に噛合した下向きラック27が上向きに移動させられる。これにより、この下向きラック27と一体をなす上スライド板19が押し上げられ、上スライド板19の上端に連結された上連結リンク23が上向きに移動する。すると下フレーム14と上下対称形に配された上フレーム13はその上端を前向きに振り出すように回動する。
【0022】
このようにして、下フレーム14の下端を引き出す操作が上フレーム13に伝達され、上フレーム13は下フレーム14に同期して下フレーム14の中フレーム12とのなす角度と同じ角度だけ前傾する。そして、図9に示すように、中フレーム12上での下スライド板20の下向き移動に伴い、図9(a)の状態から図9(b)の状態へ向けて長方形孔51Lと長方形枠50Lとが相対移動し、下スライド板20の移動限度位置近傍でクリック音発生部材53の突起55が長方形孔51Lの側縁の凹部52に落ち込む際に打音を発するので、これによって上下各フレーム13・14の傾動限度をユーザーが知ることができる。
【0023】
この構成によると、上フレーム13が前傾すると、重力によって上フレーム13には中フレーム12とのなす角度を減少させようとする(90度に近づけようとする)力が作用する。一方、下フレーム14は、常に垂直姿勢を保とうとする、つまり中フレーム12とのなす感度を180度に戻そうとする力が作用する。この両者の対抗する力は、各ラック26・27から共通のピニオン17に加わり、上フレーム13の垂直分力と下フレーム14の水平分力との釣り合いで静止するので、ヒンジ15U・15Lに格別な仕組みを設けなくても、任意の角度で静止させることができる。
【0024】
上下各フレーム13・14を垂直位置に復帰させるには、下フレーム14を垂直に戻せば、上フレーム13も下フレーム14に同期して垂直位置に戻り、垂直位置近傍では上下各スライド板19・20と上下各連結リンク23・24との連結部に設けられた捩りばね29U・29Lの弾発力で上フレーム13と下フレーム14とが共にその遊端を基台11に近づける向きに付勢されているので、ヒンジ15U・15Lのがたやラック26・27とピニオン17との間のバックラッシュ等に起因して上下両フレーム13・14間に連動誤差が生じても、上下のロック機構30・31が確実に噛み合うこととなる。
【0025】
上フレーム13と下フレーム14とは、一側に下変換リンク41の取付部を設け、他側に上変換リンク40、ベルクランク42、及び中間変換リンク45の取付部を設けるものとすれば、上フレーム13と下フレーム14とを共通に構成し得るので、金型費用を削減でき、部品管理も簡略化できる。またクリック音発生部材53の装着部も上下対称位置に設けておけば、中フレーム12の上下方向の選択性を無くすことができるので、組み付け性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる連動機構は、上記した縦型三面鏡に限らず、例えばウイング式に開閉する窓枠にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用される洗面化粧台の通常時の外観斜視図である。
【図2】図1に示した洗面化粧台の使用状態時の外観斜視図である。
【図3】本発明装置の中央部の正面図である。
【図4】本発明装置の上部の正面図である。
【図5】本発明装置の下部の正面図である。
【図6】本発明装置の下部の要部縦断面図である。
【図7】本発明装置のヒンジ部の通常位置での縦断面図である。
【図8】本発明装置のヒンジ部の回動限度位置での縦断面図である。
【図9】クリック音発生部の正面図であり、(a)は通常位置であり、(b)回動限度近傍位置である。
【符号の説明】
【0028】
12・13・14 フレーム
16 傾動動作の連動機構
17 ピニオン
18U・18L スライドガイド
19・20 スライド板
21・22 アーム
23・24 連結リンク
26・27 ラック
29 捩りばね
30・31 ロック機構
37 力伝達機構
40・41・45 変換リンク
ベルクランク42
46 アウタチューブ
47 フレキシブルケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、該固定部の上下各端にヒンジを介して連結された一対の可動部とを、実質的に共通な垂直面を有する基台に取り付けてなる合わせ鏡装置であって、
前記固定部と前記一対の可動部との間の折曲角度を略同一に変化させるための同期連動機構と、前記一対の可動部を前記基台に個々に固定するための一対のロック手段とを有し、
前記一対のロック手段は、一方に加えた解除操作力を他方に伝達する力伝達機構を介して互いに連動連結されることを特徴とする合わせ鏡装置。
【請求項2】
前記固定部と前記可動部との間に、前記固定部と前記可動部との折曲方向と逆向きの力を常時作用させる弾発付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の合わせ鏡装置。
【請求項3】
前記連動機構は、前記固定部に設けられたピニオンと、該ピニオンの中心軸を挟む両側に噛合する一対のラックとからなり、前記一対のラックと前記一対の可動部との一方同士と他方同士とが互いに連結されるものであることを特徴とする請求項1若しくは2に記載の合わせ鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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