説明

合成スメクタイト、及びこれを含有する分散液、粘土フィルム、耐水フィルム、並びに合成スメクタイト及び耐水フィルムの製造方法

【課題】高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる耐水フィルムを形成可能な合成スメクタイトを提供すること。
【解決手段】合成スメクタイト100は、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート3、並びに一対の四面体シート3に挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シート1を含む層10を複数備える。合成スメクタイト100は、下記一般式(1)で表され、ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スメクタイト、及びこれを含有する分散液、粘土フィルム、耐水フィルム、並びに合成スメクタイト及び耐水フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スメクタイトとは、シリカを主成分とする一対の四面体シートと、その間に挟まれるアルミニウム、マグネシウム、又は鉄などを主成分とする一つの八面体シートとからなる層を複数有する層状鉱物の総称である。スメクタイトは、四面体シート又は八面体シートを構成する元素の他に、これらのシートに生ずる負の層電荷を補償するために、通常、二つの層の間にナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの交換性陽イオンを含有する。
【0003】
八面体シートがマグネシウム、亜鉛などの2価の陽イオンを主成分として構成されるスメクタイトは、3八面体型スメクタイトと分類されている。3八面型スメクタイトとしては、スチーブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイトと呼称される粘土鉱物が挙げられる。
【0004】
一方、八面体シートがアルミニウム、鉄などの3価の陽イオンを主成分として構成されるスメクタイトは、2八面体型スメクタイトと分類されている。2八面体スメクタイトとしては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトと呼称される粘土鉱物が挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
これらのうち、2八面体型スメクタイトの一種であるモンモリロナイトは、一対のシリカ四面体シートと、その間に挟まれる1枚のアルミニウム八面体シートとからなる層を備えている。そして、八面体シートの3価のアルミニウムの一部分が2価のマグネシウムに置換されているため、八面体シートは負の層電荷を有している。この負の層電荷を補償するために、二つの層の間にナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの交換性陽イオンを含有している。
【0006】
モンモリロナイトは、このような交換性陽イオンの存在により、イオン交換能、インターカレーション機能、膨潤性、水中でのゾル・ゲル特性など特異な性質を有している。このため、陶磁器原料として用いられるカオリナイトなどの他の粘土材料とは異なり、ボーリング泥水、鋳物砂、有機スメクタイトなど特殊な工業的用途に用いられている(例えば非特許文献2参照)。
【0007】
これらの工業的用途に用いられるモンモリロナイトは、天然産モンモリロナイトとして米国、日本など世界各地で産出される。天然産モンモリロナイトには、通常、3価の鉄イオンが不純物として含まれており、八面体シート中のアルミニウムイオンサイトの0.3〜22.8原子%が鉄イオンに置換されている(例えば非特許文献3又は4参照)。また、天然産モンモリロナイトは、通常、鉄イオンの他に、交換性陽イオンとして、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含有している。
【0008】
また、モンモリロナイトに類似した結晶構造を有する合成スメクタイトとしては、鉄分含有のFe−Mg−Si系合成スメクタイトが知られている(特許文献1参照)。この合成スメクタイトは八面体シートが3価の鉄で構成され、その一部分を2価のマグネシウムと置換することによって負の層電荷を発現している。また、この合成スメクタイトは、天然産モンモリロナイトと同様に交換性陽イオンとして、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含有している。
【0009】
ところで、近年、粘土材料を積層させることによってフィルムを形成できることが見出されており、ガスバリア性、耐熱性、可とう性などの特性を有する粘土膜が提案されている(例えば特許文献2及び3参照)。このような粘土膜は、例えば食品や医薬品などの変質を嫌う材料の包装材料用途、液晶ディスプレイや有機EL、優れた可とう性が要求されるディスプレイデバイスなどの電子デバイス用途への応用が提案されている。
【0010】
このように、様々な用途への利用が期待されている粘土フィルム形成用材料の一つとして、天然産モンモリロナイト、及びモンモリロナイトに類似した結晶構造を有するFe−Mg−Si系合成スメクタイトが挙げられている(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特許第2979141号公報
【特許文献2】特許第3855003号公報
【特許文献3】特許第3855004号公報
【非特許文献1】日本粘土学会編、「粘土ハンドブック」、技報堂出版、58頁
【非特許文献2】日本粘土学会編、「粘土ハンドブック」、技報堂出版、9頁
【非特許文献3】日本粘土学会編、「粘土ハンドブック」、技報堂出版、1304頁
【非特許文献4】Chemistry of Clays and Clay Minerals, Edited by A.C.D. Newman, John Wiley & Sons, 49頁、 1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
天然産モンモリロナイトや特許文献1などに記載されているモンモリロナイトに類似した結晶構造を有する従来のFe−Mg−Si系合成スメクタイトは、二つの層の間に含まれる交換性陽イオンが水分子を吸着して容易に水中に分散する。これらの粒子が分散した分散液から水分を除去して乾燥し、フィルム化するとモンモリロナイト粒子や合成スメクタイト粒子をフィルム状に配向させることができる。このような構造の粘土フィルムは、酸素や窒素などのドライガスに対しては優れたバリア性を有しており、耐熱性、可とう性にも優れる。しかしながら、二つの層の間に含まれる交換性陽イオンが水分子を吸着するため、水蒸気バリア性が十分ではない。
【0012】
また、天然産モンモリロナイトや、モンモリロナイトに類似した結晶構造を有する従来のFe−Mg−Si系合成スメクタイトに含有される交換性陽イオンは、高温多湿条件下においては層間から脱離し溶出してしまう。このため、これらの材料から形成される粘土フィルムは、高純度材料が要求されるディスプレイデバイスなど、電子デバイス用フィルム基材としては応用できない。
【0013】
上記の点を改善するため、本発明者らは、天然産モンモリロナイト、及び特許文献1に記載される、モンモリロナイトに類似した結晶構造を有する従来のFe−Mg−Si系合成スメクタイトにおいて、交換性陽イオンをリチウムイオンに置換して加熱処理し、リチウムイオンを層を構成している八面体シート内に拡散させ、層内に固定化することを検討した。すなわち、ナトリウムイオン及びカルシウムイオン等に比べてイオン半径の小さいリチウムイオンを、例えば加熱処理などの手法によって層内(八面体シート内)に拡散させて層内に保持させることを検討した。
【0014】
ところが、イオン交換法などの手法によって交換性陽イオンをリチウムイオンに置換する方法では、天然産モンモリロナイト、及び従来のFe−Mg−Si系合成スメクタイトに含まれる交換性陽イオンのリチウムイオンへの置換率を向上させることは困難であった。このため、当該置換率を向上することにより、交換性陽イオンの溶出が十分に低減され、十分な水蒸気バリア性を有する粘土材料及び粘土製のフィルムが求められている。
【0015】
一方で、天然産モンモリロナイトやモンモリロナイトに類似した結晶構造を有する従来のFe−Mg−Si系合成スメクタイトには、鉄イオンが含まれているため、これらの材料やこのような材料から形成される粘土フィルムは茶褐色に着色してしまう。このため、着色していない粘土材料及粘土製のフィルムが求められている。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる粘土製の耐水フィルム及びその製造方法、並びにこのような耐水フィルムを形成可能な合成スメクタイト及びその製造法を提供することを目的とする。また、当該耐水フィルムを形成できる粘土フィルム、及び当該粘土フィルムを形成可能な上記合成スメクタイトを含有する分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明では、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに当該一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数備える合成スメクタイトであって、下記一般式(1)で表され、ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である合成スメクタイトを提供する。
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]
【0018】
本発明によれば、高温多湿条件下において金属イオンが溶出せず、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる合成スメクタイトや耐水フィルムを得ることができる。本発明者らは、このような特性を有する合成スメクタイトを得ることができる理由を以下の通り推察する。
【0019】
すなわち、合成スメクタイトのナトリウムイオン含有量を10ppm以下とすることによって、ナトリウムイオンが層の間に存在することを防止することができる。ナトリウムイオンが層の間に存在する場合、周囲の水分子を容易に吸着するため、合成スメクタイトの水蒸気に対するバリア性を低下させ、交換性陽イオンの溶出量を増加させる原因となる。また、合成スメクタイトの鉄イオン含有量を10ppm以下とすることによって、合成スメクタイトの着色を抑制し、可視光吸収率を低くすることができる。これによって、形成される耐水フィルムの光学特性を向上させることができる。なお、本発明の合成スメクタイトは、粘土フィルムや耐水フィルム形成用原料として好適に用いることができるが、フィルム形成用途のみに限定されるものではない。以下、場合により「粘土フィルム」及び「耐水フィルム」を「フィルム」と総称する。
【0020】
本発明の合成スメクタイトは、交換性陽イオンとしてリチウムイオン及び水素イオンの少なくとも一方を含有することが好ましい。リチウムイオンや水素イオンはイオン半径が十分に小さいため、層の内部に安定的に保持される。その結果、高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気に対するバリア性に十分優れた合成スメクタイト及び耐水フィルムを得ることができる。なお、例えば、ナトリウムイオン及びカルシウムイオンなどは、リチウムイオンおよび水素イオンよりもイオン半径が大きいため、合成スメクタイトの層の内部に存在させることは困難である。
【0021】
本発明の合成スメクタイトは、モンモリロナイト型の結晶構造を有することが好ましい。このような結晶構造を有する合成スメクタイトは、層の間に交換性陽イオンを容易に含有することができる。これによって、優れたイオン交換能及び分散性を備えさせることができる。また、加熱処理等によって、層の間の交換性陽イオンを層の内部に容易に移動させて安定的に保持することができる。したがって、交換性陽イオンの溶出を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の合成スメクタイトは、成膜性を有することが好ましい。これによって、合成スメクタイトの粒子が集積した粘土フィルムを容易に得ることができる。かかる粘土フィルムに例えば加熱処理を施すことによって、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れ、耐水性を有する耐水フィルムを容易に得ることができる。なお、成膜性を有する合成スメクタイトとは、容器内の合成スメクタイトを含有する分散液を、例えば室温以上の温度で乾燥させて固形状とした場合に、容器の底面に粘土膜を形成し、室温下で粘土膜としての取り扱いが可能な合成スメクタイトをいう。一方、成膜性を有しない合成スメクタイトとは、上記のように乾燥させて固形状にした場合に粘土膜を形成せず、例えば粉状となるものをいう。
【0023】
また、本発明の合成スメクタイトは、リチウムイオン及び水素イオンの少なくとも一部を、八面体シートの内部に有していてもよい。このような合成スメクタイトは、高温多湿条件下でもリチウムイオン及び水素イオンの溶出を十分に防止することができる。また、優れた水蒸気バリア性と光学特性を有する耐水フィルムを構成することができる。
【0024】
また、本発明の合成スメクタイトは、230〜400℃に加熱して得ることのできる、[001]方位の面間隔が1.00nm以下のものであることが好ましい。このような合成スメクタイトは、層の間に残留する交換性陽イオンの割合が十分に低減されたものである。したがって、高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出を十分に低減することができる。また、このような合成スメクタイトを有する耐水フィルムは、水蒸気バリア性に十分に優れる。
【0025】
また、本発明の合成スメクタイトは、230〜400℃に加熱して得ることのできる、25℃、相対湿度60%における吸水率が1質量%以下のものであることが好ましい。このような合成スメクタイトは、高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出を一層十分に低減することができる。また、このような合成スメクタイトを有する耐水フィルムは水蒸気バリア性に一層十分に優れる。
【0026】
また、本発明の合成スメクタイトは、230〜400℃に加熱して得ることのできる、イオン交換容量が5ミリ当量/100g以下のものであることが好ましい。このような合成スメクタイトは、交換性陽イオンの溶出を一層抑制することができる。また、このような合成スメクタイトを有する耐水フィルムは水蒸気バリア性に一層十分に優れる。
【0027】
本発明ではまた、主成分として上述の合成スメクタイトと水とを含有する分散液を提供する。
【0028】
このような分散液は、分散性に優れており、耐水フィルム形成用の原料として好適に用いることができる。また、このような分散液を用いて、形成された耐水フィルムは、高温多湿条件下において金属イオンが容易に溶出せず、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れている。
【0029】
本発明ではまた、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに当該一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数有する合成スメクタイトが積層されている粘土フィルムであって、当該合成スメクタイトは、上記一般式(1)で表され、交換性陽イオンを層の間に有しており、当該合成スメクタイトのナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である、粘土フィルムを提供する。
【0030】
このような粘土フィルムは、ナトリウムイオンの含有量が10ppm以下の合成スメクタイトを有するため、加熱処理等を施すことにより、リチウムイオンや水素イオンなどの交換性陽イオンを合成スメクタイトの層間から層の内部に容易に移動させることができる。したがって、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる耐水フィルムを容易に形成することができる。また、鉄イオンの含有量が10ppm以下の合成スメクタイトを有するため、光学的特性に優れている。
【0031】
本発明の粘土フィルムは、5〜200μmの厚さを有することが好ましい。このような粘土フィルムに加熱処理等を施すことにより、優れた機械的強度と可とう性とを高水準で両立させることができるフィルムを得ることができる。
【0032】
本発明ではまた、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに当該一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数有する合成スメクタイトが積層されている耐水フィルムであって、当該合成スメクタイトは、上記一般式(1)で表され、交換性陽イオンの少なくとも一部を八面体シートの内部に有しており、当該合成スメクタイトのナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である耐水フィルムを提供する。
【0033】
このような耐水フィルムを構成する合成スメクタイトは、交換性陽イオンを層の内部、すなわち、八面体シート内に保持することができる。また、ナトリウムイオンの含有量が低いために、合成スメクタイトの層の間に残留する交換性陽イオンの量が十分低減されたものである。したがって、この耐水フィルムは、高温多湿条件下における金属イオンの溶出を十分に低減することができ、また、水蒸気バリア性に十分優れている。さらに、鉄イオンの含有量が低いために、殆ど着色しておらず十分優れた光学特性を有する。
【0034】
本発明の耐水フィルムは、5〜200μmの厚さを有することが好ましい。このような耐水フィルムは、優れた機械的強度と可とう性とを高水準で両立させることができる。
【0035】
また、本発明の耐水フィルムは、厚さ50μmにおける波長550nmの光の吸収率が20%以下であることが好ましい。このような耐水フィルムは、光の吸収率が十分に低いため、着色が十分に低減されており、優れた光学特性を有する。
【0036】
また、本発明の耐水フィルムは、25℃、相対湿度60%における吸水率が0.5質量%以下であることが好ましい。このような耐水フィルムは、高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出が一層十分に低減されており、また、水蒸気バリア性に一層十分に優れる。
【0037】
本発明ではまた、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、及びマグネシウム化合物を含有する混合液と、アルカリ水溶液とを混合して含水複合水酸化物が分散した分散液を得る第一工程と、分散液と、リチウムイオン及び/又は水素イオンを生成するイオン化合物とを混合して前駆体スラリーを得る第二工程と、前駆体スラリーを水熱反応させる第三工程と、を備える合成スメクタイトの製造方法を提供する。この合成スメクタイトは、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びにこの一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数備えており、上記一般式(1)で表される。そして、複数の層と、当該複数の層の間に交換性陽イオンとしてリチウムイオン及び/又は水素イオンとを有しており、ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である。
【0038】
上述の製造方法によれば、水への分散性に優れ、フィルム状に成形することが容易な合成スメクタイトを得ることができる。また、この合成スメクタイトは、加熱処理等により、交換性陽イオンを層の間から層の内部に容易に移動させることができる。これによって、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる合成スメクタイトとなる。
【0039】
また、本発明の合成スメクタイトの製造方法では、ケイ素化合物がテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ及び水ガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、アルミニウム化合物が硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、マグネシウム化合物が硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、イオン化合物が硝酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、塩酸、硝酸、硫酸及びアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。これによって、上記の特徴を有する合成スメクタイトを容易に製造することができる。
【0040】
また、本発明の合成スメクタイトの製造方法では、第一工程で得られる分散液のpHが9.4〜11.0であり、第二工程で得られる前駆体スラリーのpHが10.0〜12.0であり、第三工程では、前駆体スラリーを250〜375℃の自生圧力条件下で24時間以上水熱反応させることが好ましい。これによって、純度の高い上記一般式(1)で表される合成スメクタイトを高収率で製造することができる。
【0041】
本発明では、交換性陽イオンを層の間に有する粘土フィルムに加熱処理を施して、粘土フィルムの層の間にある交換性陽イオンの少なくとも一部を、八面体シートの内部に移動させる工程を有する、耐水フィルムの製造方法を提供する。かかる製造方法によって得られる耐水フィルムの交換性陽イオンは、層の内部、すなわち八面体シートの内部に保持され、層間に残存する交換性陽イオンの量を十分に低減することができる。これによって、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる耐水フィルムを容易に得ることができる。
【0042】
本発明の耐水フィルムの製造方法における加熱処理は、230〜500℃で10分間〜48時間加熱することが好ましい。これによって、合成スメクタイトの層間の陽イオンを層の内部に十分に移動させることができ、層の間に残存する交換性陽イオン量を一層十分に低減することができる。したがって、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が一層十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに一層十分優れる耐水フィルムを製造することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減され、水蒸気バリア性と光学特性とに十分優れる粘土製の耐水フィルム及びその製造方法、並びにこのような耐水フィルムを形成可能な合成スメクタイト及びその製造法を提供することができる。また、当該耐水フィルムを形成できる粘土フィルム、及び当該粘土フィルムを形成可能な上記合成スメクタイトを含有する分散液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を以下に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る合成スメクタイトは、主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに当該一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数備える合成スメクタイトであって、下記記一般式(1)で表される。
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]
また、ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である。なお、ナトリウムイオン及び鉄イオンを含有しない合成スメクタイトも本発明の合成スメクタイトに含まれる。
【0046】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る合成スメクタイトの構造を模式的に示す断面図である。合成スメクタイト100は、八面体結晶構造からなる八面体シート1及びこの八面体シート1を挟むようにして四面体結晶構造からなる一対の四面体シート3を有する層10を複数備える。そして、複数の層10の間、すなわち層間に交換性陽イオンXを備える。
【0047】
八面体シート1を構成する八面体結晶構造は、アルミニウムイオン(Al3+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、酸素イオン(O2−)及び水酸化物イオン(OH)を有する。一方、四面体シート3を構成する四面体結晶構造は、ケイ素イオン(Si4+)と酸素イオン(O2−)とを有する。この四面体結晶構造は、ケイ素イオンと酸素イオンとからなるものであることが好ましいが、微量のアルミニウムイオンなどを有していてもよい。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る合成スメクタイト100は、モンモリロナイト構造を有している。モンモリロナイト構造は、八面体シート1のアルミニウムイオンの一部にマグネシウムイオンとの同型置換や欠陥があるため、層10内に負電荷を有している。この負電荷を補償して電気的中性を保つために、層10間に交換性陽イオンXを有している。
【0049】
層10は八面体シート1に空きサイトを有しており、例えば230〜400℃の加熱処理に伴って層10間から移動してくる交換性陽イオンXを安定して保持することができる。なお、合成スメクタイト100の結晶構造の同定方法として、例えばX線回折法を好適に用いることができる。
【0050】
したがって、本発明の合成スメクタイトは、モンモリロナイト型及びこれに類似する結晶構造を有することが好ましい。なお、本明細書における「モンモリロナイト型の結晶構造」は、モンモリロナイト型に類似する構造も含む。例えば、八面体結晶構造からなる八面体シートを四面体結晶構造からなる一対の四面体シートで挟んだ層の基本構造を有し、交換性陽イオンXが八面体シート1内に保持されている結晶構造も含む。
【0051】
なお、ゼオライトの一種であるアナルシムに類似する構造では、図1に示すような二つの層10の間に交換性陽イオンを含有する結晶構造は得られない。したがって、アナルシムに類似する構造では、本発明の効果を得ることはできない。
【0052】
合成スメクタイト100のナトリウムイオン含有量は10ppm以下である。層10間に存在する交換性陽イオンは、層10間に層10とのvan der Waals力で保持されているため、高温多湿条件下で容易に溶出する。すなわち、ナトリウムイオンは層内に移動できないため、容易に溶出する。このため、ナトリウムイオン含有量を10ppm以下とすることによって、加熱処理後に層10間に残留する交換性陽イオンをより一層低減することができる。したがって、交換性陽イオンの溶出を一層低減し、水蒸気バリア性に一層優れる耐水フィルムを得ることができる。
【0053】
合成スメクタイト100の鉄イオン含有量は10ppm以下であり、5ppm以下であることがより好ましい。鉄イオン(Fe3+)は有色のイオンであり、10ppmを超える鉄イオンを含有する合成スメクタイトは、着色して、可視光吸収率が高くなる。このため、形成される耐水フィルムの光学特性が低下し、ディスプレイデバイス用途などの高い光学特性が要求されるフィルム基材として使用することが困難となる。なお、合成スメクタイト100に含有される鉄イオンは、合成スメクタイト100中、八面体シート1のアルミニウムイオンの一部を置換して存在している。八面体結晶構造は通常イオン結合で構成されており、結合力が強いため、例えばイオン交換法などの手法により、該鉄イオンを除去することは困難である。
【0054】
なお、ナトリウムイオン及び鉄イオンは蛍光X線装置によって定量することができる。蛍光X線分析装置については、走査型蛍光X線分析装置、および波長分散型蛍光X線分析装置などを好適に用いることができる。また、これら以外の定量分析方法、例えば、高周波誘導プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)、イオンクロマトグラフ法などの分析方法も好適に用いることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る合成スメクタイト100は、交換性陽イオンXとしてリチウムイオン(Li)又は水素イオン(H)を含有することが好ましい。
【0056】
リチウムイオンは、イオン半径が0.068nm、水素イオンはイオン半径が0.038nmである。これらのイオンは小さいイオン半径を有するので、加熱処理等によって容易に層10の間から層10内、すなわち八面体シート1中の空きサイト内に移動させることができる。なお、イオン半径0.097nmのナトリウムイオン及びイオン半径0.100nmのカルシウムイオンなど、リチウムイオン及び水素イオンよりもイオン半径の大きい交換性陽イオンは、熱処理等を実施しても、八面体シート1中の空きサイトに移動できない。交換性陽イオンXは、例えばSchllenberger法、又は高温加湿法などの方法を用いて合成スメクタイト100に含まれる交換性陽イオンを水溶液中に抽出し、イオンクロマトグラフによって同定し定量することができる。
【0057】
なお、上記一般式(1)におけるaが0.01未満の場合、交換性陽イオンの量が少な過ぎるため、そのような合成スメクタイトは水に分散させることができない。一方、上記一般式(1)におけるaが0.75以上の場合、交換性陽イオンを層間又は層内に保持できるような結晶構造とすることができない。
【0058】
合成スメクタイト100は水と混合すると、層10間の交換性陽イオンXが水素結合力によって水分子を吸着して水和し、粒子状の合成スメクタイト100が分散した分散液を得ることができる。当該分散液は、水以外の成分、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶液、ポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤等を好適に含むことができる。この分散液から乾燥又は遠心分離などの方法によって液体を分離除去し、合成スメクタイト粒子を規則的に積層させることによって、フィルム状成形体(粘土フィルム)を得ることができる。このような粘土フィルムに加熱処理等を施すことによって、配向性の高い良好な耐水性を有する耐水フィルムを形成することができる。
【0059】
合成スメクタイト100は、加熱処理前(常態)の[001]方位の面間隔L1が1.2〜1.25nmであることが好ましい。当該面間隔L1が1.2nm未満であると、水を吸着する交換性陽イオンが少ないため、水中で膨潤して安定な分散液の形成が困難となり、配向性の優れた耐水フィルムの形成が困難になる傾向がある。一方、当該面間隔L1が1.25nmを超える場合、層10の相互間の結合力が強固になるため、水中で膨潤して安定な分散液の形成が困難となり、配向性の優れた耐水フィルムの形成が困難になる傾向がある。ここで、[001]方位の面間隔L1は、例えばX線回折法などの方法によって測定することができる。なお、面間隔L1は、合成スメクタイト100の層10の間に含まれる交換性陽イオンの量、又は合成スメクタイト100の層10の間に含まれる交換性陽イオンに吸着されている水分子の量を変えることによって調整することができる。
【0060】
また、本実施形態の合成スメクタイト100は、加熱処理前(常態)の25℃、相対湿度60%における吸水率が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。当該吸水率が15質量%以上の合成スメクタイトは、配向性が特に高いため、配向性に優れる耐水フィルムを形成することができる。
【0061】
吸水率は、温度25℃、相対湿度60%の雰囲気中に放置して十分に吸湿させた合成スメクタイトの質量を基準として、吸湿後の合成モンモリロナイトを25〜300℃まで昇温した際の質量減少分の百分率で表され、例えば示差熱天秤法などの方法により測定できる。なお、合成スメクタイトの加熱処理前の吸水率は、合成スメクタイト100の層10の間に含まれる交換性陽イオンの量を変えることによって調整することができる。
【0062】
合成スメクタイト100は、加熱処理前(常態)の状態で、イオン交換容量で50〜150ミリ当量/100gの交換性陽イオンを含有することが好ましく、50〜120ミリ当量/100gの交換性陽イオンを含有することがより好ましい。
【0063】
イオン交換容量が50ミリ当量/100g未満の場合、水を吸着する交換性陽イオンが少ないため、安定な分散液の形成が困難となる傾向がある。その結果、配向性の優れたフィルム形成が困難になる傾向にある。一方、イオン交換容量が150ミリ当量/100gを超える場合、層10の相互間の結合力が強固になるために過剰に膨潤し、安定な分散液の形成が困難となる傾向がある。その結果、配向性に優れたフィルム形成が困難になる傾向にある。ここで、イオン交換容量とは、八面体シートを含む層10間に存在する交換性陽イオンXの量を示し、例えばSchllenberger法などの方法によって測定できる。なお、合成スメクタイトの加熱処理前のイオン交換容量は、合成スメクタイト100の層10の間に含まれる交換性陽イオンの量を変えることによって調整することができる。
【0064】
本実施形態の合成スメクタイト100を用いて、粘土フィルム、すなわちフィルム状の成形体を形成することができる。粘土フィルムは、本実施形態の合成スメクタイト100の他に、例えば、バイデライト、スチーブンサイト、ヘクトライトなどのスメクタイト、及びポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤等を含むこともできる。粘土フィルムは、例えば上述の分散液に、乾燥又は遠心分離などの処理を施して液を分離除去して得られた粒子状の合成スメクタイトを、規則的に積層させることによって、形成することができる。
【0065】
粘土フィルムの厚さは、5〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましく、40〜100μmであることがさらに好ましい。当該厚さが5μm未満の場合、粘土フィルムの機械的強度が不十分となる傾向がある。一方、厚さが200μmを超えると、粘土フィルムの可とう性が低下する傾向がある。
【0066】
粘土フィルムの厚さは、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡等を用いて、各フィルム断面で厚さ方向の長さを複数点計測し、その平均値を算出することによって測定することができる。このとき、統計学的に信頼できる数値を得るために、当該長さを5点以上計測し、その平均値を算出することが好ましい。
【0067】
また、本実施形態に係る粘土フィルムの鉄イオン含有量は10ppm以下である。したがって、この粘土フィルムは、着色が十分低減されており、優れた光学特性を有する。なお、粘土フィルムの波長550nmにおける光の吸収率は、フィルム厚さ50μmに換算した値で、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
当該吸収率が20%を超えると、粘土フィルムの可視光吸収率が増加して、フィルムの光学特性が低下する傾向がある。なお、波長550nmの光の吸収率は、例えば紫外−可視−近赤外領域分光光度法により測定することができる。また、フィルムの厚さ50μmの換算値は、吸収率(実測定値)を、フィルムの厚さを50μmで除して得られた数値で除して得ることができる。
【0069】
上述の粘土フィルムに加熱処理を施すことによって、従来よりも水蒸気バリア性に十分優れ、高温多湿条件下における金属イオンの溶出が十分に低減された耐水フィルム(熱処理フィルム)を得ることができる。
【0070】
このような特性を有する耐水フィルムが得られる理由は以下の通りである。粘土フィルムに含まれる合成スメクタイト100の層10の間にある交換性陽イオンXは、加熱処理によって、層10の内部、すなわち八面体シート1の内部に移動する。これによって、層10の間の交換性陽イオンX量が減少する。その結果、合成スメクタイトは水和力を失い、水への再分散性が抑制される。したがって、最終的に得られる熱処理フィルムの水蒸気バリア性などを向上させることができる。なお、交換性陽イオンXを、層10の間から層10内に移動する手段は、加熱処理になんら限定されるものではない。
【0071】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る耐水フィルムを構成する合成スメクタイトの構造を模式的に示す断面図である。合成スメクタイト200は、アルミニウムイオン及びマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シート2が、ケイ素イオンと酸素イオンとを有する四面体結晶構造からなる一対の四面体シート3に挟まれている層20を複数含有する。また、少なくとも一部の八面体シート2中に交換性陽イオンXを有する。そして、本実施形態に係る耐水フィルムのナトリウム含有量は10ppm以下である。したがって、層20の間には交換性陽イオンXは殆ど存在しない。なお、本発明の合成スメクタイトは、図1にように層10間に交換性陽イオンを有するものと、図2のように層20内に交換性陽イオンを有するものとを含む。
【0072】
合成スメクタイト200は、[001]方位の面間隔L2が0.90〜1.00nmであることが好ましい。当該面間隔L2が0.9nm未満であると、合成スメクタイト200の結晶構造が損なわれる傾向がある。一方、当該面間隔L2が1.00nmを超える場合、加熱処理後の層20間に残留する交換性陽イオン量が多いために、最終的に得られる耐水フィルムの水蒸気に対するバリア性が低下する傾向がある。なお、[001]方位の面間隔L2は、例えばX線回折法などの方法によって測定することができる。面間隔L2は、層20間に残留する交換性陽イオンの量、又は層20間に残留する交換性陽イオンに吸着されている水分子の量を変えることによって調整することができる。
【0073】
合成スメクタイト200の吸水率は、1質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以下であることがより好ましい。0.9質量%以下である合成スメクタイトは、層20間における交換性陽イオンXの残留量が十分に低減されたものである。したがって、水蒸気バリア性により十分に優れている。一方、吸水率が1質量%を超える場合、十分な水蒸気バリア性が損なわれる傾向がある。合成スメクタイト200の吸水率は、合成スメクタイト200に含まれる交換性陽イオン全体に対する層20間に残留する交換性陽イオンの比率を変えることによって調整することができる。
【0074】
合成スメクタイト200のイオン交換容量は、5ミリ当量/100g以下であることが好ましい。イオン交換容量が5ミリ当量/100gを超える場合、吸水量が大きくなり、水蒸気バリア性が低下する傾向がある。また、高温加湿条件下における金属イオン溶出量が十分に低減されない傾向がある。合成スメクタイト200のイオン交換容量は、合成スメクタイト200に含まれる交換性陽イオン全体に対する層20間に残留する交換性陽イオンの比率を変えることによって調整することができる。
【0075】
合成スメクタイト200が積層された耐水フィルムの厚さは、5〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましく、40〜100μmであることがさらに好ましい。当該厚さが5μm未満の場合、フィルムの機械的強度が不十分となる傾向がある。この結果、ディスプレイデバイス用途、電子デバイス用途などの実用途への応用が困難になる傾向がある。一方、厚さが200μmを超えると、フィルムの可とう性が低下する傾向がある。なお、耐水フィルムの厚さは、上述の粘土フィルムと同様にして測定することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る合成スメクタイト200、すなわち耐水フィルムの鉄イオン含有量は10ppm以下である。したがって、着色が十分低減されているため優れた光学特性を有する。なお、耐水フィルムの波長550nmにおける光の吸収率は、フィルム厚さ50μmに換算した値で、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。光の吸収率は、耐水フィルムの鉄イオンの含有量を変えることによって調整できる。
【0077】
当該吸収率が20%を超えると、耐水フィルム及び粘土フィルムの可視光吸収率が増加して、フィルムの光学特性が低下する傾向がある。なお、耐水フィルムの波長550nmにおける光吸収率の厚さ50μmの換算値は、上述の粘土フィルムと同様に測定、換算することができる。
【0078】
本実施形態に係る粘土フィルム及び耐水フィルムの製造方法について、場合により図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0079】
本実施形態のフィルムの製造方法では、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、及びマグネシウム化合物を含有する混合液と、アルカリ水溶液とを混合して含水複合水酸化物が分散した分散液を得る第一工程と、分散液と、水に混合することによってリチウムイオン及び/又は水素イオンを生成するイオン化合物とを混合して前駆体スラリーを得る第二工程と、前駆体スラリーを水熱反応させることにより、上記一般式(1)で表され、複数の層と前記複数の層の間に交換性陽イオンとを有する合成スメクタイトを得る第三工程と、合成スメクタイトを複数積層した粘土フィルムに加熱処理を施して、交換性陽イオンの少なくとも一部を層内に移動させる第四工程とを備える。以下、各工程の詳細について説明する。
【0080】
(第一工程)
まず、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物を含有する混合液は、それぞれの化合物を含有する水溶液、アルコール溶液又は分散液を混合することによって得ることができる。それぞれの化合物の混合比率は、上記一般式(1)の合成スメクタイトの化学式の組成比と同一比率とすることが好ましい。なお、混合液としてナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量が十分に低減されていることが好ましい。
【0081】
アルミニウム化合物を含有する水溶液としては、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水溶液を好適に用いることができる。
【0082】
マグネシウム化合物を含有する水溶液としては、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水溶液を好適に用いることができる。
【0083】
ケイ素化合物を含有する水溶液又はアルコール溶液としては、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、水ガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水溶液又はアルコール溶液を好適に用いることができる。これらのうち、ナトリウムイオンを含有しないテトラエチルオルトシリケート、テトラメチルオルトシリケート、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0084】
各化合物は、一層優れた水蒸気バリア性、光学特性を有する耐水フィルムを得るためには、純度の高いものを用いることが好ましい。例えば、全金属元素に対するケイ素、アルミニウム、及びマグネシウムのそれぞれの純度が99.9原子%以上の溶液又は分散液を用いることが好ましい。
【0085】
次に、ケイ素化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物を含有する混合液に、アルカリ水溶液を滴下することによって、上記一般式(1)で表される合成スメクタイトの含水複合水酸化物が液中に分散した分散液を調製することができる。該アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等を例示できる。これらのうち、金属元素を含まないアンモニア水溶液を用いることが好ましい。
【0086】
不純物の少ない上記一般式(1)の合成スメクタイトを得る観点から、上記含水複合水酸化物のpHは9.4〜11.0であることが好ましく、9.8〜10.5であることが好ましい。なお、pHの調整はアルカリ水溶液の滴下量によって調整することができる。上記含水複合水酸化物のpHが9.4未満の場合、アルミニウム及びマグネシウムがイオン状態で水中に溶出する傾向がある。このため、上記一般式(1)の組成割合を満たす合成スメクタイトを十分に得られない傾向がある。一方、上記含水複合水酸化物のpHが11.0を超えると、ケイ素の溶解度が高くなり、水中に溶出する傾向がある。このため、上記一般式(1)の組成割合を満たす合成スメクタイトを十分に得られない傾向がある。なお、不純物の少ない上記一般式(1)の合成スメクタイトを得る観点から、上述の操作で得られた含水複合水酸化物を、ろ過法又は遠心分離法などの方法によって水洗した後、水に混合して次工程に用いる分散液とすることが好ましい。
【0087】
(第二工程)
第二工程は、上記分散液と、水に混合することによってリチウムイオン及び/又は水素イオンを生成するイオン化合物とを混合して前駆体スラリーを得る工程である。
【0088】
リチウムイオン源として用いられるイオン化合物としては、水酸化リチウム、硝酸リチウム及び塩化リチウムを挙げることができる。水素イオン源として用いられるイオン化合物としては、塩酸、硝酸、硫酸及びアンモニアを挙げることができる。これらのイオン化合物の少なくとも一種を含む水溶液を上記分散液に混合することによって、前駆体スラリーを得ることができる。
【0089】
合成スメクタイトの収率を向上させるため、イオン化合物と分散液との混合比率は、上記一般式(1)の合成スメクタイトの化学式の組成比と同一比率とすることが好ましい。
【0090】
高純度の上記一般式(1)で表される合成スメクタイトを得るために、前駆体スラリーのpHは10.0〜12.0に調整することが好ましく、10.2〜11.6に調整することが好ましい。上記前駆体スラリーのpHが10.0未満の場合、水酸化物イオンの存在割合が必要以上に低くなり、上記一般式(1)の組成割合を満たす合成スメクタイトを十分に得られない傾向がある。一方、前駆体スラリーのpHが12.0を超えると、水酸化物イオンの存在割合が必要以上に高くなり、上記一般式(1)の組成割合を満たす合成スメクタイトを十分に得られない傾向がある。
【0091】
(第三工程)
第三工程は、前駆体スラリーを水熱反応させることにより、上記一般式(1)で表され、複数の層と、当該複数の層の間に交換性陽イオンとを有する合成スメクタイトを得る工程である。
【0092】
この工程では、上記前駆体スラリーを市販のオートクレーブに仕込み、水熱反応させる。
水熱反応の温度範囲は250〜375℃であることが好ましく、250〜350℃であることがより好ましい。水熱反応の温度が250℃未満の場合、上記一般式(1)の合成スメクタイトを得るのに十分な自生圧力が得られず、反応が十分に進行しない傾向がある。一方、水熱反応温度が375℃を超えると、前駆体スラリー中に含まれる水分が超臨界状態となり、固体成分の水に対する溶解度が著しく変化して、合成スメクタイトの成分が水中に溶出しやすくなる傾向がある。
【0093】
水熱反応時の自生圧力としては、例えば40〜70MPaとすることができる。水熱反応の反応時間は24時間以上とすることが好ましい。24時間未満の場合、水熱反応が十分に進行しない傾向がある。なお、当該反応時間の上限に特に制限はない。
【0094】
この水熱反応によって、水中に分散したゲル状の合成スメクタイト100(図1)を得ることができる。この合成スメクタイト100を遠心分離法や濾過法で水と分離し、得られた合成スメクタイトに加熱処理を施せば粒子状の合成スメクタイト200(図2)、すなわち交換性陽イオンを層内に有する合成スメクタイトを得ることができる。この合成スメクタイトを積層して耐水フィルムを得ることも可能である。なお、本実施形態のフィルムの製造方法では、上述の合成スメクタイト100が分散した分散液を次の第四工程でそのまま用いることによって、耐水フィルムを効率よく製造することができる。
【0095】
(第四工程)
第四工程は、合成スメクタイトを複数積層した粘土フィルムに加熱処理を施して、交換性陽イオンの少なくとも一部を層内に移動させる工程である。
【0096】
第四工程では、まず、合成スメクタイト100が分散した分散液から、水分を乾燥除去して粒子状の合成スメクタイトを積層させることにより、粘土フィルムを得ることができる。なお、分散液としては第三工程で得られた分散液をそのまま用いてもよいし、一旦分散液から分離した合成スメクタイト100を再分散させた分散液を用いてもよい。
【0097】
分散液全体に対する合成スメクタイト100の含有量は、0.5〜10質量%とすることが好ましい。分散液中の合成スメクタイト100の含有量が0.5質量%未満の場合、乾燥に長時間を所要する傾向がある。また、分散液中の合成スメクタイト100の含有量が10質量%を超える場合、合成スメクタイト100の分散性が低下し、均一な膜厚を有する粘土フィルムを形成することが困難になる傾向がある。
【0098】
より均一な膜厚を有し、緻密な粘土フィルムを得る観点から、分散液の乾燥温度は水の沸点未満とすることが好ましい。乾燥速度は、乾燥装置内の温度、相対湿度を制御等することにより、分散液表面からの水の蒸発速度を0.01〜1.0g・cm・hとすることが好ましい。水の蒸発速度が0.01g・cm・h未満の場合、水分の乾燥除去に長時間を所要する傾向がある。一方、水の蒸発速度が1.0g・cm・hを超える場合、粘土フィルムの緻密さが損なわれる傾向がある。
【0099】
粘土フィルムの厚さは、使用する分散液の量及び、分散液に含まれる合成スメクタイトの含有量を変えることによって調整することができる。
【0100】
次に、この粘土フィルムに加熱処理を施して、合成スメクタイト200(図2)が積層された耐水フィルムを製造する。この加熱処理によって、層間にある交換性陽イオンXを、層の内部、すなわち八面体シート1内に移動させることができる。加熱処理における加熱温度は230〜500℃とすることが好ましく、300〜450℃とすることがより好ましい。加熱温度が230℃未満の場合、交換性陽イオンXが層10間から八面体シート1内へ移動し難くなる傾向がある。したがって、耐水フィルムの水蒸気バリア性が低下する傾向、及び高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出を十分に抑制できない傾向がある。一方、加熱温度が500℃を超える場合、合成スメクタイト100中の水酸化物イオンが脱水して、結晶構造が異なる場合があり、また、可とう性が損なわれる傾向がある。
【0101】
加熱処理における加熱時間は10分間〜48時間とすることが好ましく、20分間〜24時間とすることがより好ましい。加熱時間は48時間を超えても問題はないが、実用上、24時間を上限とすることが好ましい。一方、加熱時間が10分間未満の場合、層間から層内、すなわち八面体シート1内への交換性陽イオンXの移動が十分に進行せず、層20の間に残留する交換性陽イオンXの量が増加する傾向がある。したがって、耐水フィルムの水蒸気バリア性が低下する傾向、及び高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出を十分に抑制できない傾向がある。
【0102】
上記加熱処理は、通常の空気中の他、窒素雰囲気中でも行うことができる。また、上述の製造方法により得られる耐水フィルムの厚さは、用いる粘土フィルムの厚さを変えることによって調整することができる。
【0103】
また、本実施形態で得られる耐水フィルムの、25℃、相対湿度60%における吸水率は0.5質量%以下であることが好ましい。耐水フィルムの吸水率が0.5質量%を超える場合、耐水フィルムの水蒸気バリア性が低下する傾向、及び高温加湿条件下における交換性陽イオンの溶出を十分に抑制できない傾向がある。
【0104】
上述の製造方法によって得られる耐水フィルムは、本実施形態の合成スメクタイトから得られるフィルムが本来有する優れた可とう性、及びガスバリア性を維持しつつ、水蒸気バリア性にも十分優れるという効果を奏する。また、耐水性にも優れており、高温加湿条件下における金属イオンの溶出を十分に抑制することができる。さらに、この耐水フィルムはモンモリロナイトが本来有する結晶構造を維持しつつ、交換性陽イオンXを八面体シート2中に取り込んだものであるため、優れた耐熱性、高純度特性をも具備する。またさらに、この耐水フィルムは、鉄の含有量が十分に低減されたものであるため、優れた光学特性をも有する。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
<合成スメクタイト(Li0.7Al3.3Mg0.7Si20(OH))の製造>
まず、テトラエチルオルトシリケート(多摩化学工業株式会社製、純度99.95質量%)20.83gに、1規定の硝酸水溶液5ml及び蒸留水2.5mlを混合した。これに、全量が100mlになるようにエタノール(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)を混合して、テトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液を得た。
【0108】
また、これとは別に、硝酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)15.47g及び硝酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)2.24gを蒸留水100mlに溶解させて溶液を得た。この溶液と上記のテトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlとを混合して混合溶液を得た。この混合溶液に28質量%のアンモニア水溶液32.57gを、6.0ml/minの滴下速度で滴下して混合し、pH=9.8の含水複合水酸化物を得た。
【0109】
得られた含水複合酸化物に、水酸化リチウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)0.37gを混合し、さらに全量が250mlとなるように蒸留水を混合し、前駆体スラリーを得た。なお、得られた前駆体スラリーのpHは10.8であった。
【0110】
次に、ステンレス製オートクレーブ中にこの前駆体スラリーを仕込み、300℃、48時間、自生圧力の条件で水熱反応させることにより、Li0.7Al3.3Mg0.7Si20(OH)の化学式で表される合成スメクタイトを得た。このようにして得られた合成スメクタイトは、無色半透明のゲル状物質であった。
【0111】
<合成スメクタイトの評価>
得られた合成スメクタイトのナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量、結晶構造、400℃加熱処理前後の[001]方位の面間隔、吸水率(温度25℃、相対湿度60%)、交換性陽イオンの種類及びイオン交換容量を以下の手順で評価した。
【0112】
[ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量]
波長分散型蛍光X線分析装置(株式会社島津製作所製、XRF−1800)を用いて、合成スメクタイトの蛍光X線スペクトルを測定した。測定したスペクトルにおいて、ナトリウムイオン、及び鉄イオンに起因するピーク面積強度から、合成スメクタイトに含有されるナトリウムイオン及び鉄イオン含有量を算出した。結果を表1に示す。
【0113】
[合成スメクタイトの結晶構造]
結晶構造は、X線回折法を用い、Greene−Kellyの方法により評価した。具体的には、まず、1gの合成スメクタイトと1規定の硝酸リチウム100mlとを混合してテフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、100rpmの震とう速度で24時間震とうして、交換性陽イオンをリチウムイオンで飽和させた。
【0114】
次に、遠心分離法により5000rpm、10分間の条件で固液分離して固体成分を採取し、温風循環式の乾燥機(いすゞ株式会社製、製品名:EPFH)中に収容して300℃で24時間熱処理した。熱処理後の固体試料をX線回折装置((株)Rigaku製、ATX−G)セルにセットしてX線回折を測定した。測定にはCuKα線を使用して、2θを2〜70°まで1°/minでスキャンした。得られたX線回折パターンのうち、[001]方位の面間隔に起因する回折ピークの2θ位置からBraggの条件式により[001]方位の面間隔を算出し、「面間隔A」とした。なお、得られた合成スメクタイトがモンモリロナイト構造である場合、上述の300℃,24時間の熱処理によって、リチウムイオンが層内に移動するため、「面間隔A」は1.00nm以下となる。
【0115】
次いで、「面間隔A」測定後の固体試料1gとグリセリン100mlとを混合してテフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、100rpmの震とう速度で24時間震とうした。その後、遠心分離法により5000rpm、10分間の条件で固液分離して固体成分を採取し、温風循環式の乾燥機(いすゞ株式会社製、製品名:EPFH)中に収容して60℃で4時間乾燥した。乾燥後の試料について、「面間隔A」と同一の測定条件でX線回折を測定し、[001]方位の面間隔を算出し、「面間隔B」とした。ここで、合成スメクタイトがモンモリロナイト構造を有する場合、層内のリチウムイオンは完全に層内に固定化されるため、グリセリンに吸着されない。したがって、グリセリン混合前後において合成スメクタイトの面間隔は変化しない。一方、例えば、合成スメクタイトが、モンモリロナイト構造に類似する「バイデライト構造」である場合、グリセリンと混合することによって面間隔が変化する。かかる前提に基づき、「面間隔A」と「面間隔B」との差が0.1nm以内である場合に、合成スメクタイトの結晶構造がモンモリロナイト構造であると判定した。結果を表1に示す。
【0116】
[[001]方位の面間隔]
合成スメクタイトを、上記の温風循環式の乾燥機中で、60℃、4時間乾燥させた後、上記X線回折装置セルにセットして合成スメクタイトのX線回折を測定した。測定にはCuKα線を使用して、2θを2〜70°まで1°/minでスキャンした。得られたX線回折パターンのうち、[001]方位の面間隔に起因する回折ピークの2θ位置から、Braggの回折条件式により[001]方位の面間隔(加熱処理前)を算出した。結果を表1に示す。
【0117】
合成スメクタイトを、上記の温風循環式の乾燥機中で、400℃、30分間の条件で加熱処理した。加熱処理後の合成スメクタイトについて、上記と同様にして[001]方位の面間隔(加熱処理後)を導出した。結果を表1に示す。
【0118】
[吸水率測定]
合成スメクタイトを相対湿度60%、温度25℃の雰囲気中に5時間放置して十分に吸湿させ、吸湿後の合成スメクタイトの質量を測定した。次いで、吸湿後の合成スメクタイトを熱重量分析装置のセルにセットして熱重量分析を行った。測定条件は、昇温速度10℃/min、系内の空気流量50ml/min、測定温度範囲25〜300℃とした。熱重量分析による質量減少率から、吸水率(加熱処理前)を算出した。結果を表1に示す。
【0119】
合成スメクタイトを、上記の温風循環式の乾燥機中で、400℃、30分間の条件で加熱処理した。加熱処理後の合成スメクタイトについて、上記と同様にして吸水率(加熱処理後)を導出した。結果を表1に示す。
【0120】
[交換性陽イオン種の同定及びイオン交換容量の測定]
Schllenberger法で合成スメクタイト中の交換性陽イオンをアンモニウムイオンに交換した。その際に溶出した陽イオンを定量・定性することにより交換性陽イオン種の同定を行った。
【0121】
具体的には、まず、0.1gの合成スメクタイトと1規定の酢酸アンモニウム10mlとを混合してテフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、100rpmの震とう速度で24時間震とうして交換性陽イオンを抽出した。そして、抽出した交換性陽イオンを含有する抽出液を、イオンクロマトグラフ(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名:ICA−2000、使用カラム:東亜ディーケーケー株式会社製、PCI−321)で分析し、得られたピーク位置から交換性陽イオンの種類を同定した。また、得られたピーク強度から交換性陽イオンを定量し、イオン交換容量(加熱処理前)を算出した。結果を表1に示す。
【0122】
合成スメクタイトを、上記の温風循環式の乾燥機中で、400℃、30分間の条件で加熱処理した。加熱処理後の合成スメクタイトについて、上記と同様にしてイオン交換容量(加熱処理後)を導出した。結果を表1に示す。
【0123】
<耐水フィルムの作製>
合成スメクタイト0.5gをビーカー中に入れ、これに25gの蒸留水(20℃)を加えてテフロン(登録商標)回転子で攪拌することにより、合成スメクタイトが水に分散した分散液を得た。この分散液を5cm角の底面を有する直方体形状のポリプロピレン製容器に高さ5mmまで注いだ。次に、その容器を温風循環式の乾燥機(いすゞ株式会社製、製品名:EPFH)中に収容し、60℃で4時間加熱して、分散液中の水分を乾燥除去した。こうして、層間にリチウムイオンを有する合成スメクタイトの粘土フィルムを得た。次に、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4300)を用いて上記粘土フィルム断面の写真を倍率1000倍で撮影し、フィルムの厚さ方向における上記粘土フィルムの断面の長さを測定した。10箇所ランダムに選択した測定位置で測定を行い、10点の測定値の平均値を粘土フィルムの厚さとした。その結果、粘土フィルムの厚さは、84μmであった。
【0124】
次いで、同じ温風循環式の乾燥機中で、400℃、30分間の条件で上記フィルム材料に加熱処理を施し、層間のリチウムイオンを層の内部に移動させて熱処理フィルム(耐水フィルム)を得た。
【0125】
<耐水フィルムの評価>
上記耐水フィルムの厚さ、波長550nmの光の吸収率、溶出陽イオン分析、および水蒸気透過率測定を以下の手順で行った。
【0126】
[耐水フィルムの厚さ測定]
走査型電子顕微鏡を用いて耐水フィルム断面の写真を倍率1000倍で撮影し、耐水フィルムの厚さ方向における耐水フィルムの断面の長さを測定した。10箇所ランダムに選択した測定位置で測定を行い、10点の測定値の平均値を耐水フィルムの厚さとした。結果を表2に示す。
【0127】
[波長550nmの光の吸収率測定]
紫外−可視−近赤外領域分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−570)を用い、波長550nmにおける耐水フィルムの光吸収率を測定した。得られた測定値は、厚さ50μmに換算して、耐水フィルムの光吸収率とした。なお、正確な光吸収率を測定するために、測定前には光吸収率3%以下の炭酸マグネシウムを用いてベースライン補正を実施した。結果を表2に示す。
【0128】
[溶出陽イオン分析]
ステンレス製耐圧容器中に耐水フィルム1.0g及び超純水35.16gを仕込み、120℃の高温加湿条件下で24時間放置して陽イオン成分を抽出した。そして、抽出された溶出陽イオンを含有する抽出液のイオンクロマトグラフ測定を行って、得られたピーク位置から溶出陽イオンを同定した。また、得られたピーク強度から陽イオンの溶出量を定量した。結果を表2に示す。
【0129】
[吸水率測定]
耐水フィルムを相対湿度60%、温度25℃の雰囲気中に5時間放置して十分に吸湿させ、吸湿後の耐水フィルムの質量を測定した。次いで、吸湿後の耐水フィルムを熱重量分析装置のセルにセットして熱重量分析を行った。測定条件は、昇温速度10℃/min、系内の空気流量50ml/min、測定温度範囲25〜300℃とした。熱重量分析による質量減少率から、耐水フィルムの吸水率を算出した。結果を表2に示す。
【0130】
[水蒸気透過率測定]
感湿センサー(Lyssy社製、商品名:L80−5000型)を用いて、以下の通り、水蒸気透過率測定を行った。50cmの耐水フィルムで上下に隔てられた空間の下側の雰囲気を相対湿度100%に、上側の雰囲気を相対湿度9.9%以下にそれぞれ調整した。そして、この耐水フィルムを透過する水蒸気によって、耐水フィルム上側の雰囲気の相対湿度が9.9%から10.1%になるまでの時間を測定して水蒸気透過率(g/(m・day))を算出した。結果を表2に示す。
【0131】
(実施例2)
前駆体スラリーの水熱反応の条件を300℃、72時間としたこと以外は、実施例1と同様にして合成スメクタイト及び耐水フィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして、合成スメクタイト及び耐水フィルムの評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0132】
(実施例3)
前駆体スラリーの水熱反応の条件を350℃、48時間としたこと以外は、実施例1と同様にして合成スメクタイト及び耐水フィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして、合成スメクタイト及び耐水フィルムの評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0133】
(実施例4)
まず、コロイダルシリカ(Sigma Aldrich Co.製、LUDOX TM−50、SiO含有割合50重量%)12gに、1規定の硝酸水溶液5mlを攪拌しながら混合した。これに、全量が100mlになるように蒸留水を混合して、Si含有コロイド水溶液を得た。テトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液の代わりに、このSi含有コロイド水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして合成スメクタイト及び耐水フィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして、合成スメクタイト及び耐水フィルムの評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0134】
(実施例5)
<合成スメクタイト(Li0.3Al3.7Mg0.3Si20(OH))の製造>
まず、テトラエチルオルトシリケート(多摩化学工業株式会社製、純度99.95質量%)20.83gに、1規定の塩酸水溶液5ml及び蒸留水2.5mlを混合した。これに、全量が100mlになるようにエタノール(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)を混合して、テトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlを得た。
【0135】
また、これとは別に、硝酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)13.13g及び硝酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)3.85gを蒸留水100mlに溶解して溶液を得た。この溶液と上記のテトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlとを混合し、混合溶液を得た。この混合溶液に、28質量%のアンモニア水溶液34.62gを6.0ml/minの滴下速度で滴下して混合し、pH=10.2の含水複合水酸化物を得た。
【0136】
得られた含水複合酸化物に、水酸化リチウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)0.63gを混合し、さらに全量が250mlとなるように蒸留水を混合して、前駆体スラリーを得た。得られた前駆体スラリーのpHは11.4であった。
【0137】
次に、ステンレス製オートクレーブ中にこの前駆体スラリーを仕込み、300℃、48時間、自生圧力の条件で水熱反応させることによって、Li0.3Al3.7Mg0.3Si20(OH)で表される合成スメクタイトを得た。このようにして得られた合成スメクタイトは、無色半透明のゲル状物質であった。実施例1と同様にして、得られた合成スメクタイトの評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
<耐水フィルムの作製及び評価>
得られた合成スメクタイトを用い、実施例1と同様にして耐水フィルムを作製した。
そして、実施例1と同様にして耐水フィルムの評価を行った。結果を表2に示す。
【0139】
(比較例1)
<合成スメクタイト(Na0.7Al3.3Mg0.7Si20(OH))の製造>
まず、テトラエチルオルトシリケート(多摩化学工業株式会社製、純度99.95質量%)20.83gに、1規定の塩酸水溶液5ml及び蒸留水2.5mlを混合した。これに、全量が100mlになるようにエタノール(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)を混合して、テトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlを得た。
【0140】
また、これとは別に、硝酸アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)15.47g及び硝酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)2.24gを蒸留水100mlに溶解して溶液を得た。この溶液と上記のテトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlとを混合し、混合溶液を得た。この混合溶液に、28質量%のアンモニア水溶液34.62gを6.0ml/minの滴下速度で滴下して混合し、pH=9.8の含水複合水酸化物を得た。
【0141】
得られた含水複合酸化物に、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)0.35gを混合し、さらに全量が250mlとなるように蒸留水を混合して、前駆体スラリーを得た。得られた前駆体スラリーのpHは10.6であった。
【0142】
次に、ステンレス製オートクレーブ中にこの前駆体スラリーを仕込み、300℃、48時間、自生圧力の条件で水熱反応させることによって、Na0.7Al3.3Mg0.7Si20(OH)の化学式で表される合成スメクタイトを得た。こうして得られた合成スメクタイトは、白色のスラリー状物質であった。そして、実施例1と同様にして、この合成スメクタイトの評価を行った。結果を表1に示す。
【0143】
<耐水フィルムの作製>
この合成スメクタイトを用い、実施例1と同様にして耐水フィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして耐水フィルムの評価を行った。結果を表2に示す。
【0144】
(比較例2)
<合成スメクタイト(Li0.7Fe3.3Mg0.7Si20(OH))の製造>
まず、テトラエチルオルトシリケート(多摩化学工業株式会社製、純度99.95質量%)20.83gに、1規定の塩酸水溶液5ml及び蒸留水2.5mlを混合した。これに、全量が100mlになるようにエタノール(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)を混合して、テトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlを得た。
【0145】
また、これとは別に、硝酸鉄(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)16.67g及び硝酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)2.24gを蒸留水100mlに溶解して溶液を得た。この溶液と上記のテトラエチルオルトシリケート含有エタノール溶液100mlとを混合し、混合溶液を得た。この混合溶液に、28質量%のアンモニア水溶液35.76gを6.0ml/minの滴下速度で滴下して混合し、pH=9.9の含水複合水酸化物を得た。
【0146】
得られた含水複合酸化物に、水酸化リチウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.9質量%)0.37gを混合し、さらに全量が250mlとなるように蒸留水を混合して、前駆体スラリーを得た。得られた前駆体スラリーのpHは10.9であった。
【0147】
次に、ステンレス製オートクレーブ中にこの前駆体スラリーを仕込み、300℃、48時間、自生圧力の条件で水熱反応させることによって、Li0.7Fe3.3Mg0.7Si20(OH)の化学式で表される合成スメクタイトを得た。こうして得られた生成物は、茶色のゲル状物質であった。そして、実施例1と同様にして、この合成スメクタイトの評価を行った。結果を表1に示す。
【0148】
<耐水フィルムの作製及び評価>
この合成スメクタイトを用い、実施例1と同様にして耐水フィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして耐水フィルムの評価を行った。結果を表2に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
表1における加熱処理前後の面間隔の測定結果より、実施例1〜5の合成スメクタイトは、加熱処理によって、リチウムイオンが層間から層内に移動していることが確認できた。
【0151】
【表2】

【0152】
表2の結果より、実施例1〜5の耐水フィルム(熱処理フィルム)は、交換性陽イオンの溶出量が十分に低減され、優れた水蒸気バリア性を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る合成スメクタイトの構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る耐水フィルムを構成する合成スメクタイトの構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0154】
1、2…八面体シート、3…四面体シート、10、20…層、L1,L2…面間隔、100,200・・・合成スメクタイト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに前記一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数備える合成スメクタイトであって、
下記一般式(1)で表され、
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]
ナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である合成スメクタイト。
【請求項2】
前記交換性陽イオンとして、リチウムイオン及び水素イオンの少なくとも一方を含有する請求項1記載の合成スメクタイト。
【請求項3】
モンモリロナイト型の結晶構造を有する請求項1又は2記載の合成スメクタイト。
【請求項4】
成膜性を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の合成スメクタイト。
【請求項5】
前記リチウムイオン及び前記水素イオンの少なくとも一部を、前記八面体シートの内部に有する請求項2記載の合成スメクタイト。
【請求項6】
230〜400℃に加熱して得ることのできる、[001]方位の面間隔が1.00nm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の合成スメクタイト。
【請求項7】
230〜400℃に加熱して得ることのできる、25℃、相対湿度60%における吸水率が1質量%以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の合成スメクタイト。
【請求項8】
230〜400℃に加熱して得ることのできる、イオン交換容量が5ミリ当量/100g以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の合成スメクタイト。
【請求項9】
主成分として請求項1〜8のいずれか一項に記載の合成スメクタイトと水とを含有する分散液。
【請求項10】
主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに前記一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数有する合成スメクタイトが積層されている粘土フィルムであって、
前記合成スメクタイトは、下記一般式(1)で表され、
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]
前記交換性陽イオンを前記層の間に有しており、
前記合成スメクタイトのナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である、粘土フィルム。
【請求項11】
5〜200μmの厚さを有する請求項10記載の粘土フィルム。
【請求項12】
主としてケイ素イオンと酸素イオンとを有する一対の四面体シート、並びに前記一対の四面体シートに挟まれるように、主としてアルミニウムイオン及び/又はマグネシウムイオンと酸素イオン及び/又は水酸化物イオンとを有する八面体結晶構造からなる八面体シートを含む層を複数有する合成スメクタイトが積層されている耐水フィルムであって、
前記合成スメクタイトは、下記一般式(1)で表され、
Al4−aMgSi20(OH) (1)
[式中、aは下記式(2)を満たす数を示し、Xは一価の交換性陽イオンを示す。]
0.01≦a<0.75 (2)]
前記交換性陽イオンの少なくとも一部を前記八面体シートの内部に有しており、
前記合成スメクタイトのナトリウムイオン及び鉄イオンの含有量がそれぞれ10ppm以下である、耐水フィルム。
【請求項13】
5〜200μmの厚さを有する請求項12記載の耐水フィルム。
【請求項14】
厚さ50μmにおける波長550nmの光の吸収率が20%以下である請求項12又は13記載の耐水フィルム。
【請求項15】
25℃、相対湿度60%における吸水率が0.5質量%以下である請求項12〜14のいずれか一項に記載の耐水フィルム。
【請求項16】
ケイ素化合物、アルミニウム化合物、及びマグネシウム化合物を含有する混合液と、アルカリ水溶液とを混合して含水複合水酸化物が分散した分散液を得る第一工程と、
前記分散液と、リチウムイオン及び/又は水素イオンを生成するイオン化合物とを混合して前駆体スラリーを得る第二工程と、
前記前駆体スラリーを水熱反応させる第三工程と、を備える、請求項2記載の合成スメクタイトの製造方法。
【請求項17】
前記ケイ素化合物がテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ及び水ガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、前記アルミニウム化合物が硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム及び硫酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、前記マグネシウム化合物が硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であり、前記イオン化合物が硝酸リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、塩酸、硝酸、硫酸及びアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項16記載の合成スメクタイトの製造方法。
【請求項18】
前記第一工程で得られる前記分散液のpHが9.4〜11.0であり、
前記第二工程で得られる前記前駆体スラリーのpHが10.0〜12.0であり、
前記第三工程では、前記前駆体スラリーを250〜375℃の自生圧力条件下で24時間以上水熱反応させる請求項16又は17記載の合成スメクタイトの製造方法。
【請求項19】
請求項10記載の粘土フィルムに加熱処理を施して、前記粘土フィルムの前記層の間にある前記交換性陽イオンの少なくとも一部を、前記八面体シートの内部に移動させる工程を有する、請求項12記載の耐水フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記加熱処理では、230〜500℃で10分間〜48時間加熱する請求項19記載の耐水フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−107907(P2009−107907A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284266(P2007−284266)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】