説明

合成セグメント及びトンネル覆工

【課題】継手板によるずれ止め機能と、地山側の鋼板及び/又は内空側の鋼板に設けた定着材による定着機能とを発揮する合成セグメントを提供すること。
【解決手段】主桁6と、継手板7と、地山側または内空側の鋼板とを有する鋼殻の内側にコンクリートを充填した合成セグメントであって、鋼殻の内側面における鋼板の地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に、定着材を間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、継手板7は、その継手板7と地山側または内空側のいずれか一方または両方に設けられた鋼板および少なくとも2枚の主桁6とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを構築する場合に使用される合成セグメント及びトンネル覆工に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成セグメントとしては、次の(1)、(2)のような技術が知られている。
【0003】
(1)鋼とコンクリートから構成されるトンネル覆工用合成セグメントにおいて、トンネルの地山側および内空側並びに周方向両側面(主桁面)の4面、すなわち、主桁間に亘る継手板を用いないで、地山側と内空側と各主桁に鋼板を用いコンクリートを充填した4面鋼殻合成セグメントで、地山側の鋼板と内空側の鋼板とにそれぞれ多数のずれ止めジベルを設けると共に、上下のスタッドジベルの先端部相互をトンネル半径方向に重なるように設けた形態の4面鋼殻合成セグメントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、(2)鋼とコンクリートとから構成されるトンネル覆工用合成セグメントにおいて、地山側と内空側の2面にスタッドジベル付の鋼板を用い、上下のスタッドジベルの先端部相互をトンネル半径方向に重なるように設け、前記各鋼板のトンネル周方向両端部を折り曲げて継手面としての折り曲げ部を設け、両鋼板間にコンクリートを打設し、前記スタッドジベルにより鋼板とコンクリートとを一体化した合成セグメントも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−286097号公報
【特許文献2】特開平3−59300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記(1)の場合には、継手板を持たないためずれ止めを、地山側の鋼板(スキンプレート)および内空側の鋼板(スキンプレート)とに、トンネル周方向に間隔をおいて配設すると共にトンネル軸方向に間隔をおいて配設している。本セグメントではトンネル周方向両端の位置に継手板が無いので、鋼殻と充填コンクリートとの一体性に乏しく、また、地山側の鋼板に設けたスタッドジベルと、内空側の鋼板に設けたスタッドジベルの先端部相互をトンネル半径方向に重なるように設ける形態であるので、スタッドジベルの設置本数が格段に多くなる。そのため、スタッドジベルの設置作業に時間がかかり、設置作業コストが高くなり、合成セグメントの製造コストが高くなるという問題がある。
前記(2)の場合には、スタッドジベルによる施工コストの高沸以外にも、主桁を持たないため、断面性能が低くなる。断面性能の低下をカバーするために、セグメント厚さを厚くすると、セグメントの製造コストが高くなりトンネルの施工コストが高くなるという問題がある。
また、前記(2)の場合は、折り曲げた継手板のため、コンクリートの密閉効果が極めて低く、ずれ止めを多数配列する必要があり、セグメントの製造コストが高くなるという問題がある。
また、前記(1)及び(2)の従来の場合のスタッドジベルは、中詰めコンクリートのずれ止め部材であると共に中詰めコンクリートと地山側の鋼板との付着、あるいは内空側の鋼板との付着を確実に図る部材であり、また、地山側の鋼板と内空側の鋼板を中詰めコンクリートおよびスタッドジベルを介して一体化を確実に図る部材であるため、地山側の
鋼板に固定のスタッドジベルと内空側に設置のスタッドジベルの先端頭部相互は、トンネル半径方向で、相互に対向して重なるように設置されている。このようにスタッドジベルの頭部を配置することで、トンネル半径方向に隣り合うスタッドジベルの頭部により中詰めコンクリートを挟むようになり、地山側の鋼板および内空側の鋼板がトンネル半径方向で離反しようとする力には、トンネル半径方向で頭部相互間で中詰めコンクリートを圧縮するように作用し、抵抗させる機能も備えている。したがって、トンネル半径方向にスタッドジベルは、トンネル半径方向で、合成セグメントのトンネル半径方向の高さの2/3程度の高さ寸法を有している。
前記のような従来技術の問題点に鑑み、次の(1)(2)(3)を満足するような合成セグメントが望まれる。
(1)鋼殻内面に配置するずれ止めを必要最小限にして、セグメントの製造コストの削減を図ることが可能な合成セグメントであり、(2)セグメントの断面性能を最大限高めて、セグメント厚さを薄くし、トンネル施工コストの削減を図ることが可能な合成セグメントが望まれる。
(3)スタッドジベルを設ける形態の合成セグメントのコストを低減させるには、ジベルの数を極力少なくすることであり、ずれ止め部材としてのジベルを無くすることができれば、最も好ましい。
前記(1)〜(3)の要望を満足させるために種々研究した結果、トンネル軸方向両端に位置する少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に設けられた鋼板とが剛結合された鋼殻、すなわち、5面鋼殻、好ましくは6面鋼殻とすることで、継手板は、少なくとも2枚の主桁と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に設けられた鋼板(スキンプレート)に溶接により剛に結合された状態になる。そのため、各継手板の3辺好ましくは4辺が確実に固定され、その各継手板により中詰めコンクリートのずれ止め機能を担保させることができることを見出した。
前記の場合には、地山側の鋼板および内空側の鋼板は、主桁と同等程度の厚みを有する鋼材を使用することで、地山側の鋼板および内空側の鋼板を構造材として機能させた、5面鋼殻、好ましくは6面鋼殻がよいことを見出した。また、その場合の継手板には、中詰めコンクリートのずれ止め機能を担保させることができることで、合成セグメントを製作する場合に、中詰めコンクリートと地山側の鋼板あるいは内空側の鋼板との付着を確実に図る部材には、中詰めコンクリートとのトンネル半径方向の付着以外に、トンネル周方向のずれ止め機能を期待しない設計が可能になることを見出した。
このように継手板によるずれ止め機能と、地山側の鋼板または内空側の鋼板と中詰めコンクリートとの付着とに分けて考え、前記付着に必要な最小限の付着材(すなわち、定着材)を設けることとすることで、合成セグメントの設計思想を根本から変え、設計思想の単純化を図り、しかもトンネル半径方向の合成セグメントの厚みを薄くできて、例えば、トンネル掘削半径を小さくすることもでき、経済的で合理的な合成セグメントになることを見出した。
本発明は、前記従来の課題を有利に解消し、継手板によるずれ止め機能と、地山側の鋼板または内空側の鋼板と中詰めコンクリートとの付着を図る定着材による定着機能とを発揮することが可能で合理的・経済的な合成セグメント及びトンネル覆工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の合成セグメントにおいては、少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をト
ンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は、その継手板と前記地山側または内空側のいずれか一方または両方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されたことを特徴とする。 第2発明の合成セグメントにおいては、少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側または内空側のいずれか一方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は、その継手板と前記地山側または内空側のいずれか一方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されたことを特徴とする。 第3発明の合成セグメントにおいては、少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側および内空側の両方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側および内空側の両方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は前記地山側または内空側の両方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接する全線において連続して剛結されたことを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの合成セグメントにおいて、トンネル周方向に間隔をおいて設置された定着材による仮想のコーン破壊面がトンネル周方向に接続して連続していることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの合成セグメントにおいて、主桁断面が、フランジおよびウェブを備えた、I形、L形、コの字形断面であることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの合成セグメントにおいて、定着材が、頭付きスタッドジベル、T字状鋼材、U字状鋼材、L字状鋼材のいずれかであることを特徴とする。
第7発明のトンネル構造においては、請求項1〜6のいずれかに記載の合成セグメントがトンネル覆工に用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明〜第3発明によると、地山側の鋼板または内空側の鋼板のいずれか一方あるいは両方の鋼板の内側面に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置したので、地山側の鋼板又は内空側の鋼板と中詰めコンクリートとを定着材を介して確実に付着一体化させることができ、土水圧荷重が作用した場合のトンネル周方向の伝達荷重が作用した場合に、地山側の鋼板あるいは内空側の鋼板が、中詰めコンクリートから肌離れを防止することができ、中詰めコンクリートとの合成一体化を高めることができる等の効果が得られる。
また、少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に設けられた鋼板とを有する鋼殻における地山側の鋼板または内空側の鋼板のいずれか一方あるいは両方の鋼板に定着材
を設ける簡単な構造であるので、合成セグメントを安価に製造することができる等の効果が得られる。
また、定着材は、トンネル周方向では、トンネル軸方向に比べて密に配置し、トンネル周方向では、トンネル周方向の配置間隔に比べて広く疎に配置すればよいので、定着材の配置数を全体に密に配置する場合に比べて少なくでき、合成セグメントの製作が容易である等の効果が得られる。
また、定着材は、トンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいた離散的な定着材の配置構造としているので、中詰めコンクリートの充填性に優れており、均質な中詰めコンクリートを形成することができ、合成セグメントの品質を高めることができる。従来、トンネル周方向に連続する鋼板に孔開け加工を施すことでずれ止めとする構造や、同様に棒状鋼材をらせん状に加工整形することで、ずれ止めとする構造が知られているが、いずれもコンクリートを充填する際にトンネル周方向に連続するずれ止めの部位においてコンクリートの充填障害を引き起こしている。すなわち、前記部位においてコンクリートが閉塞されて、気泡が溜まって空隙状の充填不良の発生やコンクリート不純物の堆積といった不具合が発生しており、本発明ではこのような不具合を一掃できる。
また、従来の合成セグメントに用いられているずれ止め部材を廃して、地山側の鋼板及び/又は内空側の鋼板に設ける定着材も、必要最小限の定着材の配置構造としているので、合成セグメントの製造コストを削減することができる。
また、定着材を介した中詰めコンクリートとの付着による、地山側の鋼板及び/又は内空側の鋼板の肌離れ防止機能と、継手板による中詰めコンクリートのずれ止め機能とを、それぞれ分離した合理的な設計とすることが可能になり、合成セグメントの断面性能を合理的な設計により最大に見込んで、トンネル半径方向のセグメントの厚さを薄くして、トンネル覆工構造の施工コストの低減を図ることができる等の効果が得られる。
特に、本発明の場合は、トンネル周方向に間隔をおいた必要最小限の定着材による定着構造にできるため、合成セグメントの製造コストが削減できる等の効果が得られる。
また、地山側の鋼板及び/又は内空側の鋼板に定着材を設ける簡単な構造であると共に、中詰めコンクリートとの付着を確実にし、セグメントの断面性能を、簡単な構造で高める製造コストの安価な合成セグメントとすることができる。
特に、少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側及び内空側の両方に鋼板を有する6面鋼殻では、各継手板は、その4辺が、トンネル軸方向両側の主桁と、トンネル半径方向内空側の鋼板および地山側の鋼板により溶接により固定され、セグメントは密閉型の箱型鋼殻構造になり、継手板は密閉型の箱型構造に用いられている密閉型継手板構造となる。トンネルに土水圧の外力が作用した場合、セグメントピースにはトンネル周方向に力が発生するが、鋼殻と中詰めコンクリートは部材剛性が異なるために、トンネル周方向の伸縮量が異なる。その結果、鋼殻と中詰めコンクリートは別挙動を起こして、本来の鋼殻とコンクリートが一体として挙動する性能を発揮できない。そこでセグメントピースのトンネル周方向両端部に継手板を設け、主桁並びに地山側及び内空側鋼板とを連続して溶接により剛接続することで、鋼殻は剛な密閉構造となり、中詰めコンクリートは完全に拘束される。この中詰めコンクリートに対する継手板のずれ止め作用は大きく、合成構造化が確実に図られ、合成セグメントの性能が高くなる。そのため、セグメント桁高を薄くできるので、これにより、トンネル外径を小さくしたり、セグメントを小型軽量化が図れ、トンネル施工コストが削減できる等の効果が得られる。
第4発明によると、トンネル周方向に間隔をおいて設置された定着材による仮想のコーン破壊面がトンネル周方向に接続して連続しているので、地山側の鋼板及び/又は内空側の鋼板に仮想のコーン破壊面がトンネル周方向に連続した補剛ライン(補剛領域)を簡単な手段によって形成でき、トンネル周方向の伝達力に対して、確実に抵抗して、中詰めコンクリートとの肌離れを防止することができ、中詰めコンクリートとの合成構造化を図ることができる等の効果が得られる。
第5発明によると、主桁断面が、フランジおよびウェブを備えた、I形、L形、コの字
形断面であるので、板状の主桁の場合に比べて、主桁の剛性を高めることができ、また、市販の鋼板を組み立てた主桁あるいは形鋼による主桁を用いて、製造が容易で安価な合成セグメントとすることができる等の効果が得られる。
第6発明によると、定着材が、頭付きスタッドジベル、T字状鋼材、U字状鋼材、L字状鋼材のいずれかであるので、簡単な形状の定着材を用いて、コンクリート充填性のよい鋼殻を製作して、コンクリートが均一で均質な合成セグメントを製作することができる等の効果が得られる。
第7発明によると、第1発明〜第6発明のいずれかの合成セグメントがトンネル覆工構造に用いられているトンネル覆工であるので、土水圧荷重が作用した場合でも、地山側の鋼板及び/又は内空側の中詰めコンクリートとからの肌離れを防止可能なトンネル覆工構造とすることができ、薄壁の合理的かつ経済的なトンネル構造を構築できる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1に示す合成セグメントの縦断側面図である。
【図3】図1に示す合成セグメントの縦断正面図である。縦断正面図一部
【図4】地山側の鋼板または内空側の鋼板に定着材を設ける場合の位置を説明するための説明図である。
【図5】地山側の鋼板または内空側の鋼板に定着材を設ける場合の間隔および配列の一例を示す説明図である。
【図6】地山側の鋼板または内空側の鋼板に定着材を設ける場合の間隔および配列の他の例を示す説明図である。
【図7】(a)(b)(c)は定着材の作用を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図9】図8に示す合成セグメントの縦断側面図である。
【図10】図8に示す合成セグメントの縦断正面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図12】図11に示す合成セグメントの縦断側面図である
【図13】図11に示す合成セグメントの縦断正面図である。
【図14】周方向の定着材に渡って定着材相互を連結する定着材用連結材を設けた第4実施形態を示す縦断側面図である。
【図15】図14に示す第4実施形態の合成セグメントの縦断正面図である。
【図16】本発明の第5実施形態の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図17】図16に示す合成セグメントの縦断側面図である
【図18】図16に示す合成セグメントの縦断正面図である。
【図19】(a)および(b)は主桁の他の断面形態を示すものであって、(a)は第6実施形態の合成セグメントの縦断正面図、(b)は第7実施形態の合成セグメントの縦断正面図である。
【図20】(a)および(b)は主桁の他の断面形態を示すものであって、(a)は第8実施形態の合成セグメントの縦断正面図、(b)は第9実施形態の合成セグメントの縦断正面図である。
【図21】(a)および(b)は主桁の他の断面形態を示すものであって、(a)は第10実施形態の合成セグメントの縦断正面図、(b)は第11実施形態の合成セグメントの縦断正面図である。
【図22】(a)および(b)は主桁の他の断面形態を示すものであって、(a)は第12実施形態の合成セグメントの縦断正面図、(b)は第13実施形態の合成セグメントの縦断正面図である。
【図23】比較例の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図24】図23に示す比較例の合成セグメントの縦断正面図である。
【図25】図23に示す比較例の合成セグメントにおける地山側の鋼板の縦断側面図である。
【図26】本発明の第13実施形態の合成セグメントを示す一部切り欠き斜視図である。
【図27】図26に示す合成セグメントの縦断側面図である。
【図28】図26に示す合成セグメントの縦断正面図である。
【図29】本発明の合成セグメントを用いたトンネル構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1〜図6には、本発明の第1実施形態の合成セグメント1が示されている。図1は合成セグメント1の一部切り欠き斜視図、図2は図1に示す合成セグメントの縦断側面図、図3は図1に示す合成セグメント1の縦断正面図、図4は地山側の鋼板2または内空側の鋼板3に定着材4を設ける場合の位置を説明するための説明図である。図5および図6は地山側の鋼板または内空側の鋼板に定着材を設ける場合の間隔および配列の一例および他の例を示す説明図である。
【0012】
本発明の合成セグメント1における鋼殻5は、少なくとも2枚の鋼製の主桁6と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の鋼製の継手板7と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に設けられた鋼板2(3)とを有する鋼殻5とされている。
【0013】
主桁6は、トンネル軸方向に間隔をおいて3枚あるいはそれ以上の枚数があってもよいが、少なくとも2枚必要である。図示を省略するが、3枚以上の主桁を用いる場合には、例えば、トンネル軸方向の両端部に位置してトンネル周方向に延長するように配置される2枚の主桁と、これらの主桁間に配置され、トンネル周方向に延長する1枚以上の中主桁とされる。
【0014】
各主桁6は、そのトンネル周方向両端部に配設の各継手板7と溶接Wにより固着されて一体化され、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方に配設される鋼板2(3)は、前記各主桁6と各継手板7に溶接Wにより固定されて、一体化されている。
図1に示す形態では、地山側および内空側の両方に、それぞれ地山側の鋼板2と、内空側の鋼板3が配設されて、前記各主桁6と各継手板7とのトンネル半径方向の地山側端面に溶接Wにより固定され、また、前記各主桁6と各継手板7とのトンネル半径方向の内空側端面に溶接Wにより固定されて、一体化されている。前記の溶接Wはトンネル周方向あるいはトンネル軸方向に連続した溶接とされる。溶接Wは、隅肉溶接又は全溶け込み溶接による。
【0015】
トンネル周方向の両端部に配設の鋼製矩形状の継手板7は、その3辺または4辺縁部(トンネル半径方向地山側でトンネル周方向の連続した端縁全体およびトンネル軸方向両端でトンネル半径方向の連続した端縁)全体が、主桁6の端部(トンネル周方向両端でトンネル半径方向の連続した端縁)および地山側の鋼板2の端部(トンネル周方向両端でトンネル軸方向の連続した端縁)に突合わされて溶接する全線とされて、連続した溶接Wによる剛結合されて固定されたり、主桁6の端部および内空側の鋼板3の端部に連続した溶接Wによる剛結合により固定されたり、主桁6の端部および地山側の鋼板2並びに内空側の鋼板3の端部に連続した溶接Wによる剛結合により固定される。すなわち、前記継手板7は、その継手板7の3辺または4辺と、前記地山側または内空側のいずれか一方または両方に設けられた鋼板2,3および前記少なくとも2枚の主桁6とが隣接して当接される部分全体が溶接される部分(溶接全線)とされて、その溶接される部分において連続した溶接により剛結されることで、継手板7は、強固に固定されることになるため、本発明では、トンネル周方向両端部の継手板7により、中詰めされる中詰めコンクリート10がトンネル周方向にずれないように、ずれ止め防止部材としての機能を発揮させることができる。
【0016】
ところで、図23〜図25、特に、図25に示すように、一般的に円形形状にトンネルセグメントリングを構成する円弧状合成セグメント40に土水圧荷重Fが作用した場合、トンネルセグメントリングに作用する伝達力Tは、トンネル周方向に流れてゆくが、その際に、正曲げモーメント(トンネル内空側に引張力、地山側に圧縮力を作用させようとする方向の曲げモーメント。逆向きの曲げモーメントを負曲げモーメントという)Mが作用する部位の合成セグメント40がある。そのような部位の合成セグメント40では、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3は、トンネルセグメントリングの法線方向に面外変形して、中詰めコンクリート10から離れようとする。
例えば、図25に示す比較例の合成セグメント40の地山側の鋼板2に、トンネル周方向の圧縮力P3が作用した場合、地山側の鋼板2と中詰めコンクリート10との付着が不十分であると、地山側の鋼板2は、実線で示すように地山側に凸の面外変形8をおこし、中詰めコンクリート10と剥離をおこして、鋼板2(3)と中詰めコンクリート10とが付着一体化された合成セグメントとしての高い剛性を発揮することができなくなる。
また、前記合成セグメント40における内空側の鋼板3にトンネル周方向の引っ張り力Sが作用した場合、内空側の鋼板3と中詰めコンクリート10との付着が不十分であると、内空側の鋼板3は、実線で示すように内空側に直線状に近くなるような面外変形9をおこし、中詰めコンクリート10と剥離をおこして、鋼板3(2)と中詰めコンクリート10とが一体化された合成セグメントとしての高い剛性を発揮することができなくなる。
【0017】
本発明では、地山側の鋼板2と中詰めコンクリート10とを確実に付着させて剥離力に十分抵抗できるように一体化させるため、あるいは内空側の鋼板3と中詰めコンクリート10とを確実に付着させて剥離力に十分抵抗できるように一体化するために、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3のいずれか一方あるいは両方の鋼板2,3の内側面に、それぞれ独立した定着材4を、トンネル周方向に隣り合う定着材4の間隔G1を密に配置して設置して、複数の定着材4によりトンネル周方向定着材列11を形成している。
【0018】
さらに、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向の定着材4(またはトンネル周方向定着材列11)のトンネル軸方向の間隔Gを、前記トンネル周方向に隣り合う定着材4(またはトンネル周方向定着材列11)の間隔G1より広くして、トンネル周方向に配置する間隔G1よりもトンネル軸方向に疎に配置した合成セグメント1とされている。
【0019】
本発明における基本としている技術思想は、従来合成セグメントに設けられているずれ止め部材によるずれ止め機能については、5面鋼殻あるいは6面鋼殻とされている鋼殻5における継手板7による中詰めコンクリート10の密閉効果で確実に担保し、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3の中詰めコンクリート10からの肌離れ防護のみを目的とした、最小限の定着材4を配置するという、中詰めコンクリート10とのずれ止め機能と、中詰めコンクリート10との肌離れ防護機能との機能分化を明確にし、ずれ止め機能については継手板7により、肌離れ防護のために定着材4を設けることで、ずれ止め部材の設置を省略し、必要数の定着材4の設置により、合成セグメント1のコスト削減を達成するようにしている。
したがって、主桁6および継手板7並びに地山側の鋼板2と内空側の鋼板3には、定着材4を除いては、ずれ止め部材を設けていない。また、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3に設けている定着材4には、ずれ止め機能を期待しておらず、専ら、肌離れ防止機能を発揮させるために設置している。定着材4のトンネル半径方向の長さは、設計により設定されるが、短いほうが、経済的であり、例えば、トンネル半径方向のセグメント厚さ寸法で主桁6の巾寸法の1/2〜1/3、あるいは1/3〜1/4の寸法とすると、地山側の鋼板2に固定の定着材4と内空側の鋼板3に固定の定着材4が干渉することはないので、鋼殻5の製作が容易であると共に、コストを安くすることができる。
【0020】
図1〜図4に示す形態では、地山側の鋼板2のトンネル半径方向の内側、あるいは内空側の鋼板3のトンネル半径方向の外径側となる鋼殻5の内側面に、トンネル周方向に間隔をおいて、頭部にトンネル周方向に張り出すフランジ28を有するスタッドジベルからなる定着材4が溶接により固定され、図5に示すように、トンネル周方向に一定の間隔をおいて整列配置されたトンネル周方向定着材列11を形成している。また、トンネル軸方向には、位相が同じとされたトンネル周方向定着材列11が、2列または3列形成されている。トンネル周方向定着材列11の列数は、トンネル軸方向のセグメント巾が多くなる場合には、適宜、列数は増やされる。
図6に示すように、定着材4の配置形態としては、トンネル周方向に整列配置して、トンネル軸方向には、例えば、位相が半ピッチずれたトンネル周方向定着材列11とし、全体として千鳥状配置としてもよい。
定着材4が中詰めコンクリート10を破壊してトンネル半径方向に抜け出す場合には、コーン破壊することになるが、そのコーン破壊した場合には、コーン破壊面を生じるようになる。本発明では、仮に前記のコーン破壊面を生じると想定した場合の破壊面を、仮想のコーン破壊面12としている(図7参照)。
なお、トンネル周方向定着材列11内において、トンネル周方向に定着材4を千鳥状配置としてもよいが、整列配置する場合に比べて、仮想のコーン破壊面(あるいは仮想のコーン破壊領域)12をトンネル周方向に連続させる点では、定着材数が多くなり経済的でなくなる。
図7(a)に示すように、トンネル周方向の前記の定着材4の配置間隔は、トンネル周方向に隣り合う定着材4の仮想のコーン破壊面(または仮想のコーン破壊領域)12がトンネル周方向に重なりあって(または、図示を省略するが、仮想のコーン破壊領域12が接触し合って)、仮想のコーン破壊面12相互がトンネル周方向に接続して連続している。このように、隣り合う定着材4の仮想のコーン破壊面(または仮想のコーン破壊領域)12がトンネル周方向に重なりあって(または、接触し合って)、トンネル周方向に接続してトンネル周方向に連続していることで、トンネル周方向の地山側の鋼板2と中詰めコンクリート10との付着一体化、および内空側の鋼板3と中詰めコンクリート10との付着一体化が高められている。
【0021】
本発明では、定着材4は、セグメントにおけるトンネル周方向あるいはトンネル軸方向に間隔をおいて断続して設けられており、鋼殻内部全体に亘る中詰めコンクリート10の充填性がよいため、セグメントに中詰めされる中詰めコンクリート10を確実に充填でき、均質な中詰めコンクリート10を形成することができ、合成セグメントの品質を高められている。
従来、合成セグメントにおいて、トンネル軸方向に連続する断面L形等の補強リブを主桁間に設ける場合も知られているが、前記の補強リブがコンクリートを充填する場合の仕切り板としても作用する恐れもあるため、単に充填したのでは、断面L形の補強リブの隅角部あるいは地山側または内空側の鋼板との接合部付近では、空隙が生じる恐れがあり、コンクリートの充填作業に工夫された設備と熟練が必要なる。しかし、本発明の場合には、そのような補強リブを配置する必要がないので、簡単な設備で熟練を要しないで、コンクリートの充填が確実にでき、しかも中詰めコンクリート10の品質、強いては、合成セグメントの品質が向上する。
また、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3と中詰めコンクリート10との付着一体化を確実に図ることができる。
【0022】
さらに説明すると、前記および後記の各実施形態では、次の(1)及び(2)の作用を発揮させるようにしている。
(1)継手板によるコンクリートの密閉効果
本発明の合成セグメント1では、2枚の主桁6と、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3と、2枚の継手板7を備えた5面鋼殻または6面鋼殻にコンクリートを充填した形態の合成セグメントであり、このような場合(特に、6面鋼殻の場合)には、2枚の主桁6と地山側の鋼板2・内空側の鋼板3に剛結されて配置される継手板7は剛性が高く、中詰めコンクリート10の挙動を拘束する効果が、前記従来のずれ止め構造に対して極めて高い。そのため、中詰めコンクリート10がトンネル周方向に力を受けて鋼殻からズレ出る挙動をセグメントの両端部で挟み込むように拘束するため、鋼殻5と中詰めコンクリート10との一体挙動が発生して、合成構造としての挙動が得られる。
そして、本発明では、前記の合成構造を一層確実にするために、下記(2)のような効果を発揮させるようにしている。
(2)定着材4による地山側の鋼板2・内空側の鋼板3の肌離れ防護効果
一般的に円形形状にトンネルセグメントリングを構成する円弧状合成セグメント1(ピース)に土水圧荷重が作用した場合、トンネルセグメントリングに作用する伝達力は、トンネル周方向に流れてゆくが、その際に地山側の鋼板2・内空側の鋼板3は、トンネルセグメントリングの法線方向に面外変形して中詰めコンクリート10から離れようとする。その結果、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3は、有効に機能せず、セグメントの性能が低下する。
この地山側の鋼板2または内空側の鋼板3の面外変形を効果的に抑制する方法として、本発明では、伝達力に平行(トンネル周方向)に地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3を、中詰めコンクリート10に間隔をおいた定着材4により定着することで、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3を補剛すると共に確実な付着一体化を図り、剥離力に抵
抗させるようにしている。しかも、定着材4をトンネル周方向に間隔をおいて密に配置することで、個々の定着材4により形成される仮想のコーン破壊面12がトンネル周方向に接続してトンネル周方向に連続した仮想のコーン破壊面12(仮想のコーン破壊領域)を形成することで、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3をトンネル周方向に補剛し、トンネル周方向に確実に連続して付着した付着ラインを兼ねた補剛ライン13を形成している。より好ましくは、個々の定着材4により形成される仮想のコーン破壊面12がトンネル周方向で十分重なりあって連続したトンネル周方向の補剛ライン13を形成し、このトンネル周方向の補剛ライン13を、トンネル軸方向に所定の間隔を空けて配列するように形成することで、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3の肌離れ拘束効果が高められ、地山側の鋼板2及び/又は内空側の鋼板3の面外変形が抑制され、トンネル周方向の圧縮軸力が作用するような場合には、座屈防止効果が生じるようにしている。
そこで、トンネル周方向に間隔をおいて、離散的に定着材(例えば、頭つきスタッドジベル)をトンネル周方向に密に配置し、中詰めコンクリート10との付着一体化を図ることで、前記の補剛ライン13を形成し、前記の補剛ライン13をトンネル軸方向に所定の間隔を空けて疎に配列することで上記の効果が得られる。トンネル軸方向および周方向に離散的に定着材が配置されることで、コンクリートを充填した場合に空隙が形成される恐れはなく、コンクリートの充填性も確保している。なお、定着材4によるトンネル周方向の補剛ライン13と同様に、定着材4によるトンネル軸方向の補剛ラインをも形成することも考えられるが、トンネル軸方向に定着材を密に配列する必要はなく、経済的でなくなる。
【0023】
定着材4を頭付きスタッドとする場合に、頭付きスタッドの頭部は、トンネル周方向に張り出す頭部があるほうが、好ましく、図示のように円形の頭部よりは、トンネル周方向の張り出し長さが長い楕円形頭部であるほうが望ましい。
【0024】
なお、図示のように、主桁6あるいは継手板7に、鋼製箱型材(または空間)からなるボルトボックス23が設けられている形態では、内空側の鋼板3には、ボルト締結作業用の開口部が前記ボルトボックス23の内部空間に接続するように設けられる。トンネル周方向あるいはトンネル軸方向に、雄継手あるいは雌継手を備えたボルトレス接合形式の合成セグメントとする場合には、ボルトボックス23等は省略される(以下の実施形態でも、同様)。
【0025】
以下の実施形態では、相違する点を主に説明し、同様な部分には、同様な符号を付している。
【0026】
図8〜10および図7(b)(c)には、本発明の第2実施形態の合成セグメント1が示されている。この形態と前記実施形態の相違する部分は、定着材4の形態が相違するが、その他の構造は、同様であるので、相違する部分を主に説明する。
第2実施形態では、異形鉄筋あるいは異形棒鋼その他の鋼材をU字状に曲げ加工したU字状鋼材14が、地山側の鋼板2および内空側の鋼板3に立設され、かつ各脚部15を接続している横連結部16がトンネル周方向に延長するように配置されて、各脚部15の先端部が溶接により固定されている。このようなU字状鋼材14による定着材4であると、設置本数が少なくなるので、コスト面で有利である。またU字状鋼材14による定着材4の場合は、鋼板2,3に各脚部15が連結され、また剛結されている各脚部15を接続している横連結部16は、図7(b)に示すように剥離力Pが作用した場合に、矢印P1で示すように中詰めコンクリート10を押圧して抵抗するようになる。また、トンネル周方向に隣り合うU字状鋼材14の定着材4の場合は、図7(c)に示すように、トンネル周方向に隣り合うU字状鋼材14の定着材4の仮想のコーン破壊面12がトンネル周方向に接続して、トンネル周方向に連続するように設けられている。その他の構成は、前記実施形態の場合と同様であるので、同様な部分については、同様な符号を付している。
【0027】
図11から図13に示す形態では、T字状の鋼材4aからなる定着材4が用いられ、T字状の鋼材4aにおける各頭部のフランジ28が地山側の鋼板2または内空側の鋼板3に間隔をおいて平行にトンネル周方向に延長するように配置されているが、その他の構成は、前記第1実施形態の場合と同様である。
このようなT字状の鋼材17におけるフランジ28をトンネル周方向に延長するように配置すると、トンネル周方向に大きく張り出したフランジ28であるので、トンネル周方向に隣り合う定着材4の間隔を広げることができ、また、トンネル周方向に隣り合う仮想のコーン破壊面12を接続させる点では、T字状の鋼材4aの高さを一定とし、第1実施形態のスタッドの定着材4の配置ピッチを同じとした場合にはこれに比べて、フランジ28先端部間の間隔を小さくすることができるので、仮想のコーン破壊面12をトンネル周方向に容易に接続して連続させることができ、定着材4の配置本数を第1実施形態の場合に比べて、少なくすることができる。
【0028】
図14および図15に示す第4実施形態では、トンネル周方向に隣り合う定着材4の先端部に渡って、トンネル周方向に連続した異形鉄筋または異形棒鋼あるいは鋼材からなる定着材用連結材19が配置されて、溶接等により固定され、定着材4相互がトンネル周方向に連結されている。
このような形態では、各定着材4による仮想のコーン破壊面12のトンネル周方向の接続および連続化および前記定着材用連結材19による付着抵抗をトンネル周方向に連続して図ることができ、また、定着材用連結材19の設けられている位置が、定着材4の頭部付近に位置して、トンネル周方向に連続しているので、定着材4による仮想のコーン破壊面がトンネル周方向に接続して連続していることによる作用に加えて、定着材用連結材19による付着を図ることができる。また、前記定着材用連結材19により、トンネル半径方向の引き抜き抵抗あるいは定着材4に引き抜き力が作用した場合に、トンネル周方向の定着材4に引き抜き力を分散させることもできる。
【0029】
図16〜図18は、本発明の第5実施形態を示すものであって、この形態では、トンネル内空側の鋼板3が省略され、鋼殻5の内側には、中詰めコンクリート10が充填・硬化されて、トンネル内空側に露出している。
このような形態の合成セグメント1は、トンネル内空側に圧縮力が大きく作用しない部位のトンネル覆工部位に設置することで、トンネル覆工を経済的に構築することができる。なお、トンネル内空側の仕上げ材として、定着材4を設けないで、スキンプレートのような鋼板を設けて、セグメントリング組み立て時に使用する支保材と内空側の中詰めコンクリート10との接触によるコンクリートのひび割れ防止を図るようにしてもよい。
なお、この形態では、箱抜き等により形成された空間によりボルトボックス23が形成されている。
【0030】
図19(a)(b)は、主桁6の断面がL形でもよいことを示す代表形態を示すものであって、(a)のようにウェブ20と地山側または内空側にフランジ18とを備えたL形の主桁6としてもよい。前記フランジ18は、トンネル周方向にウェブ20と同じように連続している。また、図19(a)に示すように、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3の両方に定着材4を設けるようにしてもよい。図19(a)(b)の形態では、地山側の鋼板2の巾方向(トンネル軸方向)の両端部が、それぞれ地山側のフランジ18の巾方向一端部に突き合わされて、トンネル周方向に連続した溶接により固定されている。もしくは、地山側の鋼板2は地山側のフランジ18の地山側外面に載置しておき、鋼板2の巾方向(トンネル軸方向)の両端部と地山側のフランジ18とをトンネル周方向に連続した隅肉溶接により固定されていてもよい。また、図19(a)では、ウェブ20の巾方向一端側が前記フランジ18の巾方向他端側でトンネル半径方向の内側にトンネル周方向に連続した溶接Wにより固定され、また、ウェブ20の巾方向他端側が内空側の鋼板3の端部に
トンネル周方向に連続した溶接Wにより固定されている。溶接Wにより定着材4を設けてトンネル周方向の定着材列11を形成する形態は、あるいは定着材4の変形形態は、前記各実施形態の場合と同様である。
【0031】
図20(a)(b)は、主桁6の断面が内向きの溝形でもよいことを示す代表形態を示すものであって、図20(a)のようにウェブ20と地山側および内空側にトンネル周方向に連続するフランジ18とを一体に備えた溝形の主桁6としてもよい。
図20(a)(b)の形態では、ウェブ20の内空側端部に、内空側のフランジ18がトンネル周方向の連続した溶接Wにより固定されている。このように、トンネル内空側にフランジ18を備えた形態では、ボルトボックス23を設ける形態では、内空側のフランジ18が、トンネル周方向で分断される形態になってしまうため、ボルトボックス23を設けないで、ボルトレスで接合可能な、公知の雄継手あるいは雌継手を、主桁6のウェブ20に設けたり、継手板7に設ける形態とすればよい。なお、ウェブ20および各フランジ18は継手板7に、トンネル周方向あるいはトンネル軸方向に連続した溶接(図示を省略)により固定される。
図20(a)における内空側の鋼板3の巾方向(トンネル軸方向)の両端部は、それぞれ内空側のフランジ18の巾方向一端部に突き合わされて、トンネル周方向に連続した溶接Wにより固定されている。
また、図20(a)では、ウェブ20の巾方向内空側の端部は、内空側のフランジ18の巾方向端部に、トンネル周方向に連続した溶接Wにより固定されている。
この形態では、継手板7は、地山側のフランジ18および内空側のフランジ18にも、トンネル軸方向およびトンネル半径方向に連続した溶接により剛結合で固定されるために、一層強固に固定でき、各鋼製のフランジ18が厚肉であることも相まって、強固に固定された継手板7となる。なお、図20(b)において、各フランジ18に亘って、内空側の化粧鋼板を配置して溶接により固定するようにしてもよい。
【0032】
図21(a)(b)は、主桁6の断面がI形(またはH形)でもよいことを示す代表形態を示すものであって、図21(a)のようにウェブ20と地山側および内空側にフランジ18とを一体に備えた断面I形(またはH形)の主桁6としてもよい。ウェブ20をフランジ18の巾方向中央部に配置して溶接により固定した形態でも、圧延加工された断面I形の主桁6としてもよい。このような形態では、ウェブ20とフランジ18とにより形成された溝部分に継手を配置して、トンネル軸方向に隣り合うセグメント相互を、ボルトレスにより接合することができる。
【0033】
図22(a)(b)は、主桁6の断面が外向きの溝形でもよいことを示す代表形態を示すものであって、(a)のようにウェブ20と、地山側および内空側にフランジ18とを一体に備えた溝形の主桁6としてもよい。
この形態では、ウェブ20が、地山側のフランジ18と内空側のフランジ18の巾方向一端側に配置されて、溶接Wによりトンネル周方向に連続した溶接Wにより固定されている。
【0034】
図26〜図28は、本発明の第13実施形態の合成セグメントを示すものであって、この形態では、トンネル地山側の鋼板2が省略され、鋼殻5の内側には、中詰めコンクリート10が充填・硬化されて、トンネル地山側に露出している。
このような形態の合成セグメント1は、トンネル地山側に圧縮力が大きく作用しない部位のトンネル覆工部位に設置することで、トンネル覆工を経済的に構築することができる。なお、トンネル地山側において、定着材4を設けないスキンプレートのような鋼板を設け、主桁6および継手板7と連続溶接により液密に固定することで、セグメントの止水性能を高めるようにしてもよい。
【0035】
前記各実施形態の合成セグメント1を、トンネル覆工構造に用いる場合には、例えば、図29に示すように、トンネル周方向の一部または全部に合成セグメント1を組み込んで、トンネル周方向に隣り合うセグメントの継手板7相互をボルト・ナットにより連結してセグメントリング22を形成し、また、トンネル軸方向に隣り合うセグメントの主桁6相互をボルト・ナット(または継手)により連結して、トンネル軸方向に隣り合うセグメントリング21相互が連結される。
なお、前記のように、合成セグメント1の継手板7および主桁6に、雄継手または雌継手を設けて、トンネル周方向またはトンネル軸方向に隣り合うセグメントの継手相互を嵌合させるボルトレス形態の合成セグメントとしてもよく、このような場合には、継手板7および主桁6にボルト孔21およびボルトボックス23を設ける必要はない。
【0036】
本発明の前記のような合成セグメント1では、剛性が大きいために、合成セグメントのトンネル半径方向の厚みを薄くすることができるので、シールド掘進機により掘削する外径寸法を小さくしたり、掘削外径が同じ場合には、トンネル覆工の内空側空間を大きくしたりすることができ、経済的で合理的なトンネル覆工構造とすることができる。
【0037】
本発明を実施する場合、深度の深いトンネル覆工セグメントあるいは地下空間の広い地下空間構築用の覆工セグメントとして利用することができる。
【0038】
本発明を実施する場合、定着材4としては、鉄筋または鋼棒あるいは鋼材をL形に折り曲げてなるL字状鋼材、あるいは断面L形の鋼材を短尺に切断して構成したL字状鋼材を用い、L字状鋼材の一片を脚部として、地山側の鋼板2あるいは内空側の鋼板3に対して立設するように設け、他方の一片を、地山側の鋼板2あるいは内空側の鋼板3に対してほぼ平行に、かつトンネル周方向に延長するように配置することで、トンネル周方向の補剛ラインを効率よく形成することができる。前記のように、定着材4としては、トンネル周方向に延長する張り出し部を備えた形態のほうが、仮想のコーン破壊面12をトンネル周方向に効率よく接続させ、連続化させる点ではよい。
【0039】
なお、本発明を実施する場合、トンネル軸方向に隣り合う補剛ライン間における仮想のコーン破壊面は、トンネル軸方向に離れた位置としてもよい。
【0040】
本発明を実施する場合に、トンネル軸方向に間隔をおいたU字状鋼材14相互を、トンネル軸方向の定着材用連結材19により連結して、一つの定着材を形成するようにしてもよい。
【0041】
本発明の合成セグメントをトンネル分岐合流部のセグメントとして用いても良い。
【0042】
本発明を実施する場合、合成セグメント1のトンネル軸方向の巾寸法により、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3に設けるトンネル周方向定着材列11を、3列又は4列あるいはそれ以上の列数設けるようにしてもよい。その場合、地山側の鋼板2または内空側の鋼板3のトンネル法線方向への面外変形は、合成セグメント1のトンネル軸方向の巾中央部において最も大きくなるため、トンネル周方向定着材列11を少なくともトンネル軸方向の巾中央部に設けることが望ましい。
【0043】
本発明を実施する場合、主桁6間に中主桁を設ける形態では、主桁と中主桁との間に、トンネル周方向に1列好ましくは2列以上の複数列のトンネル周方向定着材列11を設け、セグメント全体として、トンネル軸方向に2列以上設ける。この場合も主桁6間に中主桁を設けない場合と同様に、トンネル周方向定着材列11を少なくともトンネル軸方向の巾中央部に設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 合成セグメント
2 地山側の鋼板
3 内空側の鋼板
4 定着材
4a T字状の鋼材
5 鋼殻
6 主桁
7 継手板
8 地山側の面外変形
9 内空側の面外変形
10 中詰めコンクリート
11 トンネル周方向定着材列
12 仮想のコーン破壊面(または仮想のコーン破壊領域)
13 補剛ライン
14 U字状鋼材
15 脚部
16 横連結部
17 T字状の鋼材
18 フランジ
19 定着材用連結材
20 ウェブ
21 ボルト孔
22 セグメントリング
23 ボルトボックス
28 フランジ
40 合成セグメント
G トンネル軸方向の間隔
G1 トンネル周方向の間隔
P トンネル周方向の圧縮力
S トンネル周方向の引っ張り力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方または両方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側又は内空側のいずれか一方あるいは両方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は、その継手板と前記地山側または内空側のいずれか一方または両方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されたことを特徴とする合成セグメント。
【請求項2】
少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側または内空側のいずれか一方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側または内空側のいずれか一方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は、その継手板と前記地山側または内空側のいずれか一方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されたことを特徴とする合成セグメント。
【請求項3】
少なくとも2枚の主桁と、そのトンネル周方向両端部にそれぞれ配設の2枚の継手板と、地山側および内空側の両方に設けられた鋼板とを有する鋼殻の内側に、コンクリートを充填してなる合成セグメントであって、前記鋼殻の内側面における前記鋼板の地山側および内空側の両方に、それぞれ独立した定着材をトンネル周方向およびトンネル軸方向に間隔をおいて設置すると共に、トンネル周方向の間隔をトンネル軸方向の間隔よりも狭く密に設置してトンネル周方向定着材列を形成し、トンネル軸方向に隣り合うトンネル周方向定着材列のトンネル軸方向の間隔を、前記トンネル周方向の定着材の間隔より広く疎に配置し、前記継手板は、その継手板と前記地山側または内空側の両方に設けられた鋼板および前記少なくとも2枚の主桁とが隣接して突合される全線において連続した溶接により剛結合されたことを特徴とする合成セグメント。
【請求項4】
トンネル周方向に間隔をおいて設置された定着材による仮想のコーン破壊面がトンネル周方向に接続して連続していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項5】
主桁断面が、フランジおよびウェブを備えた、I形、L形、コの字形断面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項6】
定着材が、頭付きスタッドジベル、T字状鋼材、U字状鋼材、L字状鋼材のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成セグメント。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の合成セグメントがトンネル覆工構造に用いられていることを特徴とするトンネル覆工。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2011−12490(P2011−12490A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158659(P2009−158659)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】