説明

合成樹脂積層シートおよびその使用方法

【課題】強い吸着力による吸着を可能にできるとともに美麗な印刷も可能であって、様々な用途に自由に使用できる、汎用性のある合成樹脂積層シートの提供。
【解決手段】磁性粉体12aを含有し可撓性を有する合成樹脂製で一定の厚さを有する磁性層12と、該磁性層12の片面のみにラミネートされて、非水性インクジェットプリンタによる印刷が可能な白色を呈する合成樹脂製で前記磁性層12よりも薄く可撓性を有する印刷許容層13のみからなる合成樹脂積層シート11。マグネットシートの相手方の被吸着シートのほか、タペストリや掲示板など、様々に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、掲示、広告、案内、装飾などに用いられるほか、日用品や学習教材の資材としても幅広く好適に活用できるような合成樹脂積層シートに関し、より詳しくは磁性体を有する合成樹脂積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体を有する被吸着シートやマグネットシートは、様々に使用されている。たとえば、磁化されてない非磁化状態の磁性体を有する被吸着シートの場合には、掲示板のための資材や壁紙等としての利用が提案されている。このようなものとしては下記特許文献1、2、3、4に開示されたものがある。
【0003】
これらの被吸着シートの磁性体は、粉状のもので構成され塗料に混合してシート材に塗布したり(特許文献3、4参照)、金属箔で構成されてシート材に貼り付けられたり(特許文献1、2参照)して、被吸着シートの一部に層状に付与される。しかし、これらのようにして構成されているので、磁性体を有する層は薄く、磁石に引き付けられる力が弱かった。
【0004】
磁化された磁性体を有するマグネットシートの場合には、広告等の表示のために掲示板や自動車のボディー等の磁石が吸着可能な場所に貼り付けて用いられている。このようなものとしては下記特許文献5、6に開示されたものがある。
【0005】
これらのマグネットシートの磁性体は、粉状のもので構成され、合成樹脂に混合してシート状に形成して、マグネットシートの一部に磁石層として付与される。
【0006】
このマグネットシートでは、他の磁性体を吸着してその吸着状態を維持しなければならないので、強い磁力を持つことが望ましいが、広告等の表示のために印刷が行えるようにするには、少なくとも所定の厚さ以下であることが必要である。このため、磁性体を有する磁石層を厚くして磁力を高めるにも限界がある。一方で、高めにくい磁力を減殺させずに吸着力を得るためには、マグネットシートの軽さも必要である。しかしまた、美麗な印刷を可能にするには、印刷を行う部分の厚さもある程度は必要となる。
【0007】
これらのような相矛盾する要求を実現することは難しく、前記特許文献5、6に開示されたようなマグネットシートでは満足が得られるものではなかったところ、本出願人は、そのような問題を解決できる大型インクジェットプリンタ用マグネットシート(下記特許文献7参照)を提案した。このシートは、屋外広告用のマグネットシートで、強い吸着力が得られ、美麗な印刷が可能にしたもので、厚さ0.4mmの磁石層と厚さ0.1mmの塩化ビニルからなる印刷層を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−166719号公報
【特許文献2】特開2005−274660号公報
【特許文献3】特開平11−272217号公報
【特許文献4】特開平9−1743号公報
【特許文献5】特開2004−29095号公報
【特許文献6】特許第2848582号公報
【特許文献7】登録実用新案第3117937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このマグネットシートによれば、所期の目的を達成できて実用的価値が高いものの、このマグネットシートが吸着する相手方は、前述例のような掲示板や自動車のボディーなどのような硬い部分に限られていた。前述したように、非磁化状態の磁性体を有する被吸着シートが強い吸着力を発揮させられないからである。
【0010】
また、特に非磁化状態の磁性体を有する被吸着シートにおいては、たとえば掲示用などと用途が限定されており、汎用性のあるものではなかった。前記特許文献1などのように接着剤層が備えられたものではさらに、接着剤の種類によって貼り付け可能な対象が限定されたり、再粘着ができなかったりと、使い方まで制限され、自由な使用ができなかった。
【0011】
そこで、この発明は、強い吸着力による吸着を可能にできるとともに必要であるなら美麗な印刷も可能であって、必要に応じて様々に自由度高く使用できる汎用性のある合成樹脂積層シートとその使用方法の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、磁性粉体を含有し可撓性を有する合成樹脂製で一定の厚さを有する磁性層と、該磁性層の片面のみにラミネートされて、非水性インクジェットプリンタによる印刷が可能な白色を呈する合成樹脂製で前記磁性層よりも薄く可撓性を有する印刷許容層のみからなる合成樹脂積層シートである。
【0013】
前記非水性シンクジェットプリンタのインクには、ソルベントインク(溶剤系インク)やUV硬化型インク、ミューバイオインク(環境対応型インク)などがある。
【0014】
前記磁性粉体には、磁性ナノ粒子が好適に用いられる。
【0015】
前記磁性層は磁石に吸着されたり磁石として他の部材を吸着したり、印刷許容層を支持したりする機能を果たす。一方、前記印刷許容層は、磁性層を隠蔽したり必要に応じて印刷のインキをのせたりするなどの機能を果たす。印刷許容層は磁性層よりも薄く、非水性インクジェットプリンタによる印刷が可能な範囲内でそれぞれの層が必要な機能を果たせるように各層の厚さは設定される。
【0016】
このような合成樹脂積層シートは、必要に応じて印刷許容層に所望の印刷をし、また必要に応じて適宜裁断して使用される。磁性層が磁化状態であれば掲示板や自動車のボディー等にそのまま固定することができ、磁性層が非磁化状態であればマグネットシート等にそのまま固定することができる。必要ならば磁性層または印刷許容層の表面に粘着剤を塗布するなどして壁面やガラス面等に固定することも可能である。また硬質のシート材等に貼り合わせて、カッターマットや粘土板、画板、遊戯板、教材など、日用品や学習教材等の資材として使用することもできる。貼り合わせる部材は、たとえば壁紙等の柔軟なシート材であるもよい。
【0017】
特に、前述のように壁面等に固定するほかに、当該合成樹脂積層シートの前記印刷許容層に印刷をしたのち、合成樹脂積層シートの上下両端部に、合成樹脂積層シートを張設するための張設用部材を取り付けて張設して使用すると、壁面を損傷したりすることなく、掲示板機能や装飾機能などを発揮させることができる。この場合には、特に、展示会や見本市などの展示ブースの壁面に取り付けるようにすると、展示ブースの準備や後片付けが簡易迅速に行えるようになるほか、展示内容の変更も容易であり、さらに展示ブースのパネルを傷めたりすることを回避できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、強い吸着力による吸着を可能にできるとともに、必要であるなら美麗な印刷も可能である。また、磁性層と印刷許容層のみからなるので、必要に応じて様々に自由度高く使用できる汎用性のある合成樹脂積層シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】合成樹脂積層シートの斜視図と断面図。
【図2】吸着力の試験方法と試験結果。
【図3】合成樹脂積層シートの断面図。
【図4】大型インクジェットプリンタの概略構成図。
【図5】印刷時の状態を示す断面図。
【図6】バナーとしての使用方法を示す合成樹脂シートの斜視図。
【図7】タペストリしての使用方法を示す斜視図。
【図8】タペストリとしての展示ブースでの使用方法を示す斜視図。
【図9】タペストリとしての使用方法の一例を示す斜視図。
【図10】タペストリとしての使用方法の一例を示す斜視図。
【図11】他の例に係る合成樹脂積層シートとマグネットシートの断面図。
【図12】他の使用方法を示す断面図。
【図13】他の使用方法を示す断面図。
【図14】他の使用方法を示す断面図。
【図15】掲示板を示す斜視図と断面図。
【図16】他の例の掲示板を示す斜視図。
【図17】お風呂で使えるマルチボードの斜視図。
【図18】カッターマットと定規の斜視図。
【図19】作品展示用シートの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、合成樹脂積層シート11の斜視図とその断面構造を示す一部拡大断面図であり、この図に示すように、合成樹脂積層シート11はロール状に巻取り可能な柔軟性を有する可撓性シートで、特に大型インクジェットプリンタで印刷するのに適した1000mmほどの幅広に形成され、磁性層12と、この磁性層12の片面のみにラミネートされた印刷許容層13のみからなる。
【0021】
前記磁性層12は、磁性粉体12aを含有する可撓性を有した合成樹脂製で、カレンダー加工により一定の厚さtに成形されている。磁性粉体12aには、たとえば酸化鉄などの適宜の粉体を用いることができる。なかでも、磁性ナノ粒子(MnZnFe)を用いるのがよい。通常の鉄粉に比べて微細であり、吸着力を向上できるからである。
【0022】
磁性粉体12aを含む合成樹脂には、軟質のものを用い、たとえば塩素化ポリエチレン等が好適に用いられる。
【0023】
磁性粉体12aとして磁性ナノ粒子(MnZnFe)を用いる方が吸着力を向上できることの事実を示す試験をしたので、次に説明する。
前記磁性層12のみからなるシートが磁石に引き付けられる力を調べるべく、図2(a)に示したような装置21を用いて試験を行った。装置21のうち、22はロードセルで、23はウエイトメータ、24はマグネットシート、25は前記磁性層12のみからなる被吸着シートである。被吸着シート25をマグネットシート24に密着して吸着させ、この状態の被吸着シート25をマグネットシート24から引き離すのに必要な力を計測した。
【0024】
前記被吸着シート25には、磁性ナノ粒子を含有した試料1と、鉄粉を含有した試料2を用意した。いずれも、厚さは0.4mmである。また組成については、試料1が、磁性ナノ粒子(MnZnFe)を88.90%、塩素化ポリエチレンを8.53%、添加物を2.57%とするものである。一方、試料2は、鉄粉を89%、塩素化ポリエチレンを10%、添加物を1%とするものである。なお、いずれも重量%である。
【0025】
また試験では、吸着力の差による違いについても観察すべく、同一組成の厚さの異なる2種類のマグネットシート24を用いた。マグネットシート24の吸着力は厚さが厚いほど高いからである。
【0026】
その結果、図2(b)に示したように、吸着力の異なる2種類のマグネットシート24のいずれにおいても、磁性ナノ粒子を含有した試料1のほうが、鉄粉を含有した試料2よりも磁石に引き付けられる力が強かった。また、マグネットシート24の吸着力が高いほど、被吸着シート25が引き付けられる力も強いことが分かる。
【0027】
前記印刷許容層13は、非水性インクジェットプリンタによる印刷が可能な白色を呈する合成樹脂で成形されている。合成樹脂には、塩化ビニルが用いられる。PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることもできる。印刷許容層13はカレンダー加工によって一定の厚さtに成形され、その厚さtは、磁性層の厚さtよりも薄い。また、表面は水性インクジェットプリンタで印刷する場合に必要なインク受理層のためのコート層を有しないが、微細な凹凸が形成され、外観上マット調に仕上げられている。
【0028】
前記磁性層12と印刷許容層13は、ラミネート加工(加熱圧着)により貼り合わせられる。磁性層12は非磁化状態である。
【0029】
なお、大型インクジェットプリンタで印刷をするには、磁性層12と印刷許容層13を合わせて0.5mmとするのが好ましく、具体的には磁性層12の厚さtを0.4mm、印刷許容層の厚さtを0.1mmにするのがよい。
【0030】
このように構成された合成樹脂積層シート11は、図3(a)に示したように印刷許容層13に印刷を行ったり、図3(b)に示したように磁性層12に別体のシート材14を貼ったり、図3(c)に示したように印刷許容層13に別体のシート材14を貼ったりして、あるいは何もせずに適宜裁断して使用される。図3(a)中、15はインクである。
【0031】
まず、印刷許容層13に印刷をすることについて説明する(図3(a)参照)。
図4は、溶剤系大型インクジェットプリンタ21(以下、プリンタという)の概略構成を示す。
【0032】
プリンタ21は、ロール状に巻かれた合成樹脂積層シート11を一対の送りローラ22,23で搬送面24上に送り込み、水平に搬送しながら搬送面24上方に配置されたプリントヘッド25で印刷を行い、印刷をしてから合成樹脂積層シート11を送り出す。入口側に設けられた受け板26の下と、搬送面24の下におけるプリントヘッド25に対応する位置にはヒータ27,28が設けられ、合成樹脂積層シート11を加熱してソルベントインクの定着が良好に行われるように構成される。図中29は、出口側に設けられた受け板である。
【0033】
図5に示したように、上記搬送面24とプリントヘッド25との間H1は、一般的なプリンタでは、2mm程度に設定されている。このため、上記のような0.5mm厚の合成樹脂積層シート11を搬送すると、プリントヘッド25との間に約1.5mmの隙間H2が残る。
【0034】
上記ヒータ27,28による加熱で合成樹脂積層シート11は緩み、浮くような変形をするが、1.5mmも浮き上がることは決してなく、搬送中に合成樹脂積層シート11の引っ掛かりは発生しない。このため、プリントヘッド25の高さを調整する必要はなく、印刷作業は簡単に行える。
【0035】
合成樹脂積層シート11は搬送されながら、プリントヘッド25から吐出されるインクを受け、印刷表示が形成される。このとき、プリントヘッド25と印刷許容層13との間の距離が離れすぎることはないので、インクの定着性も所望通り良好に行え、鮮明な印刷表示を得ることができる。インクの定着性は、印刷許容層13の表面がマット調であることによっても高められる。
【0036】
また、印刷に際してヒータ27,28の温度設定を合成樹脂積層シート11にあわせて変更することも不要である。すなわち、合成樹脂積層シート11が0.8mmや1mmなどというように厚いものではなく、0.5mmであるので、ヒータ27,28からの熱伝導は良好であって、インクの乾燥性や定着性がよいうえに、印刷ムラも発生しないからである。
【0037】
プリントヘッド25の高さ調整やヒータ27,28の温度設定の変更は、つぎに別の種類の印刷シートに対して印刷するときのことを考慮すると、その作業が大変煩雑であるのでしないほうが理想的である。この点、上記合成樹脂積層シート11を用いれば、それらの変更が不要であるため、印刷作業は容易である。合成樹脂積層シート11の厚さが0.5mmを越えると、そのメリットは得られない。
【0038】
なお、インクにソルベントインクを用いるので、印刷終了後乾燥すると、印刷許容層の収縮が起こるものであるが、0.4mm厚の磁性層12が印刷許容層13をしっかりと強固に支持し、また印刷許容層13も0.1mmであって、インクが印刷許容層13を侵す厚さである10μmに比して充分な厚さを有するので、必要以上の収縮を抑えることができる。このため、収縮による不良品の発生をなくすことができるとともに、所望サイズの印刷表示を得られる。収縮がなく所望サイズの印刷表示が得られるため、分割出力された合成樹脂積層シート11同士をシームして大型の合成樹脂積層シートにしたときに印刷表示にずれが生じるようなことはない。
【0039】
そして、その磁性層12は0.4mmと、比較的厚く形成されているので、前述のように磁性ナノ粒子を用いたことと相俟って、磁石に吸着される力は強い。しかも、その特異な厚さゆえに、製造に困難性はなく廉価に生産でき、低価格化を図ることができる。低価格化は、印刷許容層13が表面にインク受理層を有しない塩化ビニルからなるものであるためコストを抑えることができることによっても実現できる。
【0040】
また、磁性層12を0.4mm厚としたので合成樹脂積層シート11の重さを抑えることができる。この結果、印刷時の搬送に際してプリンタ21の搬送装置に負担をかけず、搬送に際して速度差を生じさせないようにすることができる。このため、印刷初期の印刷表示と印刷終期の印刷表示にずれが生じないようにすることが可能である。印刷表示にずれがないので、分割出力された合成樹脂積層シート11同士をシームする場合でも何ら支障はなく、印刷表示が合った美麗な大型の合成樹脂積層シートを得ることができる。
【0041】
次に、磁性層12に別体のシート材14を貼ることと、印刷許容層13に別体のシート材14を貼ることについて説明する(図3(b)(c)参照)。
【0042】
別体のシート材14は、磁性層12や印刷許容層13の全面を覆う大きさのものであるも、一部を覆う大きさのものであるも、いずれでも良い。前者の場合には、マーカによる書き消しを可能にするフィルム(ホワイトボード用フィルム)や壁紙などの既存のシートや、好みのメディアに印刷された印刷シートなど、後者の場合には、カット文字やシールなどがある。接着剤による接着やラミネート(加熱圧着)等の適宜手段によって貼り付けることができる。
【0043】
最後に、何もせずに適宜裁断して使用することについて説明する。
【0044】
合成樹脂積層シート11は、前述のように可撓性を有し柔軟な合成樹脂製であるので、カッター等で容易に裁断・切断できる。裁断・切断後は、印刷許容層13に印刷や文字や図などの記入をすることが可能である。
【0045】
以上のような合成樹脂積層シート11の使用方法について次に説明する。
まず、いわゆるバナーやタペストリの形で使用する方法について説明する。このようなものとして使用するには、合成樹脂積層シート11の上下両端部に、合成樹脂積層シート11を張設するための張設用部材を取り付けて張設できるようにする。
【0046】
図6は、バナー41としての使用状態を示し、このバナー41は合成樹脂積層シート11とバナー用スタンド32で構成される。合成樹脂積層シート11に対して、まず、それの印刷許容層13に所望の表示内容を印刷してから、前記張設用部材としてのハトメ31を四隅に固定する。
【0047】
このあとは、既存のバナー用スタンド32を用い、スタンド32のフック32aに前記ハトメ31を挿嵌して張って展示すれば、印刷内容を表示し伝達するとともに、磁石やマグネットシート16に吸着されるバナー41となる。
【0048】
図7は、タペストリ42の形での使用状態を示し、このタペストリ42は合成樹脂積層シート11とバー33で構成される。合成樹脂積層シート11に対しては、まず、図6に示したものと同様に、それの印刷許容層13に表示内容を印刷してから、前記張設用部材としての前記バー33を上下両端縁に固定する。バー33には既存のものを適宜使用できる。バー33は、上端面に設けられた挿通孔33aを利用して吊り下げられたりして適宜場所に取り付けられる。挿通孔33aではなく紐による取り付けでもよい。
【0049】
このようにしてタペストリ42の形で使用する合成樹脂積層シート11は、様々な場面で使用できるが、特に、図8に示したように、展示会や見本市での展示ブース34において使用するとよい。つまり、合成樹脂積層シート11を、展示ブース34のパネル35の表面に、その表面を覆うように取り付けて使用するのである。
【0050】
展示ブース34では、釘打ちなどが禁止されているため、たとえばポスターや発泡ボードを貼る場合には、両面テープが用いられる。しかし、展示が終わって剥がすときに、両面テープによってポスター等が損傷するので、そのポスターを再度使用することはできない。このため、同一内容の展示を行う展示会等が複数の会場で行われる場合でも、必要なポスター等を作り変えなければならない。このほかにも、パネル35を損傷しないよう細心の注意を払う必要もあり、便利さに欠ける難点がこれまでにはあった。
【0051】
しかし、この発明の合成樹脂積層シート11をタペストリの形で使用すれば、準備に当たっては合成樹脂シート11を吊り下げるなどしてパネル35の表面や会場の壁面等、利用可能な壁面に取り付けるだけでよいので、準備も後片付けも簡易迅速に行える。特に、展示会等が終わった後の搬出には時間厳守が求められるので、大変メリットがある。
【0052】
そして、展示内容については、図8に示したように、たとえば「わが社の新製品」、「会社概要」、「実績」などと、予め所定の内容を印刷しておき、展示のたびに更新すべき部分には、マグネットシート16にその内容を印刷して合成樹脂積層シート11に貼り付けられるようにしておけば、一つの合成樹脂積層シート11を継続して使用することができ、無駄がない。また、印刷した部分であっても、その上から別の印刷内容を有するマグネットシート16を取り付ければ、表示内容の変更もでき、この点でも無駄がない。
【0053】
また、マグネットシートの表面にチラシやサービス券などのようなシート片を保持できるようなポケットを固定することもできるので、展示の仕方も広がる。
【0054】
これまで、展示ブース34のパネル35をタペストリで覆って展示をすることは無かった。これは、タペストリやバナーを構成する本体シートが布やターポリン、熱転写シートで構成されており、一度行った印刷表示の表示内容を変更することができないことは勿論のこと、たとえばポケットなどの別部材を取り付けようとする場合には縫い付けや接着をしなければならず、不自由なものであったからであると思われるが、そのような先入観が支配する情況下では、必然的なことでもある。
【0055】
しかし、この点、この発明の合成樹脂積層シート11を用いたタペストリ42や前記バナー41では、前述のように様々な効果が得られ、きわめて便利に使用でき、実用的な価値も高いものとなる。
【0056】
特に、磁性層12には鉄粉などの磁性粉体を含有しているので、防炎効果も有する。このため、展示会等で壁面等を覆う場合に、好適に使用できる。
【0057】
さらに、前述のようにして合成樹脂積層シート11をタペストリの形で展示を行うと、展示の仕方の幅が広がる上に出っ張りを少なくしてよりコンパクトに展示が行える。このため、限られたスペースを有効に利用してゆとりあるレイアウトが実現でき、効果的な展示も可能である。特に、車椅子使用者や杖使用者が訪れる展示会等では、ゆとりをもってみてもらえるようなスマートな展示が求められており、この点を考慮して来場者に対する行き届いたサービスも可能である。
【0058】
このような活用の仕方の一例を、図9、図10を用いて説明する。
図9と図10は、飲食店の店頭に展示するタペストリ42の形で使用する合成樹脂積層シート11であって、印刷許容層13には、ランチメニューが印刷されている。
【0059】
図9の合成樹脂積層シート11は、「本日のサービス定食」の部分を毎日適宜設定できるようにしたものである。つまり、合成樹脂積層シート11には、「本日のサービス定食」の部分を空欄にしておき、他の部分にはその他の定食メニューを、その名称と写真と金額入りで印刷表示している。そして、「本日のサービス定食」の部分に貼り付ける必要内容を印刷したマグネットシート16を、複数枚付属している。マグネットシート16に対する印刷は簡単に行えるので、その日の食材に応じて容易に対応できる。
【0060】
図10の合成樹脂積層シート11は、予め用意されている定食から、「本日のおすすめ」を適宜設定できるようにしたものである。つまり、合成樹脂積層シート11には、すべての定食メニューを、その名称と写真と金額入りで印刷表示している。そして、「本日のおすすめ」と表示した枠状のマグネットシート16aと、金額を表示した複数枚のマグネットシート16bを付属している。その日ごとに適宜の定食メニューを囲むように枠状のマグネットシート16aを貼り付けるとともに、印刷表示されている金額の上に、正しい金額のマグネットシート16bを貼り付けて使用する。
【0061】
これらのほか、印刷許容層に様々なデザインの印刷をして、店や商店街等の装飾や模様替えなどに用いることができる。近年の印刷はとても美麗に行えるので、装飾に有効である。そのうえ、そのための作業も容易である。
【0062】
なお、図6〜図10に示した例では、合成樹脂積層シート11の磁性層12が磁化されていないものを例に示したが、図11に示したように、合成樹脂積層シート11には、磁性層12を磁化したものを使用することもできる。この場合、吸着させる被吸着シート17には、磁性層12が磁化されていない、前述の合成樹脂積層シート11と同一構成の合成樹脂積層シート11を使用できる。
【0063】
図11において仮想線で描いた矢印は、磁化状態のものに向けている。また、前記合成樹脂積層シート11と同一構成の合成樹脂積層シート11を被吸着シートとして用いるほか、金属粉を塗布した被吸着シートや金属箔を貼り付けたその他の被吸着シートを使用してもよい。以下に示す例においても同様である。
【0064】
つぎに、前述のような張設用部材を使用しないで使用する方法について説明する。
【0065】
図12は、合成樹脂積層シート11の印刷許容層13に、たとえば適宜の文字や図柄等を印刷して、壁面や床面、天井面等の被貼り付け面36に貼り付ける使用方法を示している。すなわち、印刷許容層13に印刷を施した後、所望する被貼り付け面36に適した接着剤18を磁性層12に塗布して壁面等の被貼り付け面36に貼り付ける。図12中、15はインクである。
【0066】
前述のように近年の印刷はとても美麗に行えるので、見栄えのする表示が行える上に、壁紙や天井に適した模様を印刷したり、たとえば誘導用の表示をしたりと、自由に使用できる。しかも、マグネットシート16を貼り付けられるので、多彩な表示や表示内容の変更も可能であり、さらに紙片等をピンで固定することも可能である。
【0067】
また、壁面や床面等の被貼り付け面36の性質に合わせて接着剤18を選べるので、良好な固定状態が得られる。接着剤18には、再粘着性を有するものを使用することもでき、この場合には、剥がすことが必要な場合の使用に便利である。
【0068】
図13は、合成樹脂積層シート11の磁性層12に、壁紙や、ホワイトボード用フィルム、コルクシート、化粧フィルム等のシート材14を貼り付けて、壁面等の被貼り付け面36に貼り付ける使用方法を示している。すなわち、磁性層12に所望するシート材14を貼り付けた後、所望する被貼り付け面36に適した接着剤18を印刷許容層13に塗布し、壁面等の被貼り付け面36に貼り付ける。接着剤18は被貼り付け面36に塗布して貼り付けを行うもよい。
【0069】
前述したような印刷による方法では感触が良くないと思う場合や、ホワイトボードのように使用したいと思う場合、印刷許容層13に対する印刷では所望する色目が出ない場合などに好適である。
【0070】
この場合もマグネットシート16を貼り付けることが可能であるが、シート材14側から貼り付けるので、印刷許容層13側からマグネットシート16を貼り付ける場合に比して、磁性層12までの距離を短くすることができ、強力な吸着が可能である。
【0071】
また、この場合も壁面等の性質に合わせて接着剤18を選べるので、良好な固定状態が得られる。接着剤18には、再粘着性を有するものを使用することもできる。
【0072】
図14は、合成樹脂シート11の印刷許容層13に、広告などのために文字や模様を印刷したり、カット文字を貼り付けたりして、建物や自動車などのガラス面36aに貼り付ける使用方法を示している。すなわち、図14(a)に示したように、印刷許容層13に所望する印刷表示をした後、ガラス面36aに対する固定に適した透明の接着剤18を印刷許容層13に塗布して、ガラス面36aに貼り付ける。
【0073】
このような使用方法によれば、窓等のガラスを利用して外部への広告が容易にできる上に、目隠し等の機能も持たせることができる。接着剤18に再粘着性を有するものを使用すれば、一時的な使用が可能である。
【0074】
図14(b)に示したように、磁性層12に壁紙や、書き消し可能にするフィルム等のシート材14を貼り付けたり、適宜の模様等を印刷したりして表層部19を形成すると、室内においては装飾や掲示、マグネットシート16の貼り付けなどの、実用的な利用も可能である。
【0075】
つづいて、日用品や学習教材等の資材として使用する方法について説明する。
【0076】
図15(a)は、磁石やマグネットシート16のほか、押しピン51も使用できるコルクボード調の掲示板45の斜視図であり、図15(b)は、その一部断面図である。
【0077】
掲示板45は、枠材45aと、この内側に収められ層状をなす前記合成樹脂積層シート11および支持板45bを有する。枠材45aも支持板45bも適宜の材料で構成される。合成樹脂積層シート11は、印刷許容層13にコルクの模様が非水性インクで印刷されている。
【0078】
このような掲示板45では、印刷許容層13への印刷により、外観上はコルクのように見える上に、実際にコルクボードのように押しピン51を用いることができる。しかも、磁石やマグネットシート16を貼り付けることができる。このため、コルクボードよりも幅広い使い方ができる。しかも、印刷許容層13は合成樹脂製であるので、コルクのように割れたりすることはなく、美麗な状態のまま使い続けることができる。
【0079】
図16は、ホワイトボードのように使用できる掲示板45の斜視図であり、一部を拡大した断面図に示すように、掲示板45は合成樹脂積層シート11と、この合成樹脂積層シート11の柔らかさを補って適宜の強度を持たせる支持板45bを重合して構成される。支持板45bは適宜の合成樹脂板等で構成すればよい。また、合成樹脂積層シート11の印刷許容層13には、ホワイトボード用フィルム14aがラミネートされている。
【0080】
この掲示板45は、たとえば仮想線で示したように紐45cにより適宜の場所に吊り下げて使用できるほか、前記支持板45bの硬さが丸めることを許容するものである場合には、丸めてコンパクトに持ち運びでき、筆談等に便利である。また、支持板45の硬さをたとえば合板のように硬くした場合には、画板のような使用も可能となる。
【0081】
マーカによる書き消しができる上に磁石やマグネットシート16が使えるので、自由に様々な利用ができる掲示板となる。
【0082】
また、図17に示したように、前記合成樹脂積層シート11の磁性層12に、水を含むと壁面等に吸着するスポンジ状の機能性シート材46aを積層すれば、お風呂でも遊べる遊戯具や学習用具として使えるマルチボード46となる。つまり、貼り付けるマグネットシート16として、図示例のような様々な形状のマグネットシート16を付属すれば、積み木遊び等として、また、図示はしないが文字や数字のマグネットシートを付属すれば学習用具として使用できる。
【0083】
図18(a)は、カッターマット47の斜視図である。このカッターマット47は、前記合成樹脂積層シート11の印刷許容層13に、カッターマットとして必要な線の印刷をした後、合成樹脂積層シート11に剛性を付与するための支持板47aを磁性層12に重合する。この後、適宜裁断し、所定大のカッターマット47にする。
【0084】
このようなカッターマット47では、図18に示したように下面に磁石板48aを備えた定規48を用いて、カッターによる切断を行う。定規48はカッターマット47に対して位置や向きにかかわらず良好に吸着するので、使用しやすい。
【0085】
なお、図18(b)の断面図に示したように、カッターマット47は、合成樹脂積層シート11の両面に別部材を重合して構成することもできる。すなわち、前記支持板47aを印刷許容層13側の面に重合することに加えて、磁性層12側の面には、カッターの刃が刺さっても傷を目立たなくする柔軟なカバーシート14bを重合する。前述の必要な線は、このカバーシート14bに印刷しておく。
【0086】
このように構成すると、カッターによる傷を積極的に目立たなくすることができる。
【0087】
なお、図18(b)に示した断面構造のカッターマットにおいて、たとえば印刷許容層13に適宜の印刷表示をしておき、支持板47aに透明の板材を使用すると、裏返したときに印刷表示が見える状態で使用できる粘土板などとしても使用可能なマットとなる。
【0088】
図19は、新規な作品展示用マット49の斜視図である。この作品展示用マット49は、前記合成樹脂積層シート11の印刷許容層13に、ホワイトボード用フィルム14aがラミネートされ、適宜大に形成されている。形状は、図示例においては長方形であるものを示したが、たとえば木の形など、適宜の形状であるもよい。また、必要に応じて好みの形状に切断するものであるもよい。
【0089】
このような作品展示用マット48は、図19(a)に示したように、粘土細工等の作品52を乗せるとともに、所望する絵53をマーカによって描く。絵53のほかに、必要に応じて作者を特定する個人名等の必要事項を記載する。また、底面にマグネットシート54aを有する装飾部材54を取り付けて、作品52を飾りつける。なお、予め必要な文字や模様、線などを印刷許容層13に印刷しておくもよい。
【0090】
このようにして作品52を単独で展示するのではなく、絵53や装飾部材54によって引き立てることができる。換言すれば、絵53や装飾部材54等をあわせて一つの作品とすることができる。
【0091】
この作品展示用マット48は、図19(b)に示したように丸めることができるので、展示会等への移動にも便利である。
【0092】
これらのほか、たとえば支持板に剛性の有るものを使用して粘土板を得るなど、様々な教材や遊戯板などに利用できる。
【0093】
以上説明したように、この発明の合成樹脂積層シート11は、特異な磁性層12と、これの片面にのみラミネートされた印刷許容層13のみからなるので、マグネットシートの相手方として、あるいはマグネットシートとして、磁力による強い吸着力や被吸着力を得ることができるとともに、必要に応じて非水性大型インクジェットプリンタによる印刷が可能である。その上、二層のみからなるので、必要に応じて広告等の表示などに利用できるほか、日用品や学習教材等の物品の資材としても利用でき、高い自由度で様々に使用できるこれまでにない利汎用性ある合成樹脂積層シート11である。
【0094】
特に、タペストリ42の形で使用して展示会等の展示ブース34を飾れば、パネル35を傷つけるようなこともなく、スマートな展示を実現できる。しかも、簡易迅速に設営や撤去が可能であって、至便である。
【0095】
また、磁性層12が鉄粉などの磁性粉体12aを含有するので、防炎効果が得られる。このため、特に展示会などのように多くの人が集まる場所で壁面等を覆うようにして使用をする場合に好適である。
【0096】
この発明の構成と、前述の一形態の構成との対応において、
この発明の張設用部材は、前述のハトメ31、バー33に対応するも、
この発明は、前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【符号の説明】
【0097】
11…合成樹脂積層シート
12…磁性層
12a…磁性粉体
13…印刷許容層
31…ハトメ
33…バー
34…展示ブース
41…バナー
42…タペストリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体を含有し可撓性を有する合成樹脂製で一定の厚さを有する磁性層と、
該磁性層の片面のみにラミネートされて、非水性インクジェットプリンタによる印刷が可能な白色を呈する合成樹脂製で前記磁性層よりも薄く可撓性を有する印刷許容層のみからなる
合成樹脂積層シート。
【請求項2】
前記磁性粉体が、磁性ナノ粒子である
請求項1に記載の合成樹脂積層シート。
【請求項3】
前記磁性層が、非磁化状態である
請求項1または請求項2に記載の合成樹脂積層シート。
【請求項4】
非磁化状態の前記合成樹脂積層シート又は磁化状態の前記合成樹脂積層シートに、磁化状態の前記合成樹脂積層シート又は非磁化状態の前記合成樹脂積層シートが付属された
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の合成樹脂積層シート。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の合成樹脂積層シートの前記印刷許容層に印刷をしたのち、
合成樹脂積層シートの上下両端部に、合成樹脂積層シートを張設するための張設用部材を取り付けて張設して使用する
合成樹脂積層シートの使用方法。
【請求項6】
展示ブースの壁面に取り付ける
請求項5に記載の合成樹脂積層シートの使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−247436(P2010−247436A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99628(P2009−99628)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505397760)有限会社マグライフ (1)
【Fターム(参考)】