説明

合成樹脂製壜体

【課題】内部の減圧化に伴う胴部の減容変形のし易さを劣化させることなく要求される加飾を可能とすると共に、減容姿勢を自己保持可能とすることにより、壜体に加飾を適正に設けると共に、安定した減容変形を得る合成樹脂製壜体を提供する。
【解決手段】合成樹脂製壜体1において、胴部4の周壁は減容変形が進行可能な薄肉に形成し、肩部3に加飾7を有する肩部ラベル6を固着することにより、胴部の減容変形のし易さを阻害することなく加飾を好適に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の減圧化に伴って減容変形が進行するように薄肉に形成された合成樹脂製壜体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、価格の低減化あるいは省資源や環境の観点から、例えば洗剤や食品調味料等の多くの用途で詰替え容器の利用が進展している。普段、内容液を収納して使用する、比較的厚肉で注出口に計量機能部を付帯させる等した容器(以下、継続使用容器とする。)は継続使用するものとし、補充する内容液は安価な詰替え容器に収納し、継続使用容器に移し替えて使用する。
【0003】
従来、この種の詰替え容器としては、例えば特許文献1に記載があるような、柔軟なシート片を重ねるようにして袋状とした、所謂、パウチ容器が多く使用されている。従来、パウチ容器から継続使用容器への内容液の詰め替えに際には、液跳ねや、液ダレ等により周囲を汚してしまうことがあったが、特許文献1に記載のあるパウチ容器は、注出口となるノズル受け部を配設し、このノズル受け部を、継続使用容器の注出ノズルに外嵌組付けして内容液を移し替えることができるようにしたものであり、内容液がノズル受け部と注出ノズルを通して詰め替えられるので、内容液の液跳ねや液ダレをなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267403公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のパウチ容器では、ノズル受け部を継続使用容器の注出ノズルに外嵌組付けすることにより、一応その倒立姿勢を保持することが可能である。しかしながら、内容液の注出が進行するに従ってパウチ容器は、その主体部分である胴部を扁平状に減容変形させるので、倒立姿勢を安定して保持することは難しく、扁平状になった胴部で折れ曲り、バランスを失くして継続使用容器と共に転倒する恐れもあり、詰め替え中は監視しながら、あるいはある程度手で支えてやる必要があり、使い勝手がいいものとは云い難い、と云う不都合を有する。
【0006】
この不都合を解消するものとして、詰替え容器を、全体を肉薄に成形したブロー成形壜体で構成し、減容変形時における胴部の変形が、縦方向の押し潰れ変形となるようにし、これにより折れ曲がりの発生を防止する提案がなされているが、このブロー成形製の詰替え容器は、その全体がきわめて肉薄であるがために、胴部の潰れ変形形態が不安定となり易いと共に、胴部の減容変形のし易さを阻害する恐れがあることから、法定表示等の加飾を表示するラベルの固着が難しい、と云う問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、姿勢を保持しながら内部の減圧化に伴う胴部の減容変形のし易さを劣化させることなく要求される加飾を可能とすると共に、減容姿勢を自己保持可能とすることを技術的課題とし、もって安定して良好な減容変形動作を得、また必要とする加飾を好適に表示すると共に、良好な減容廃棄を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するための、本発明の主たる構成は、
口筒部とテーパー筒状の肩部と筒状の胴部と底部を有するブロー成形による合成樹脂製壜体であること、
胴部の周壁は、壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成されていること、
肩部の外表面を覆って、表面に加飾を施した肩部ラベルを固着すること、
にある。
【0009】
胴部の周壁は、壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成されているので、壜体内部の減圧化に伴って、内外の圧力差により胴部は自発的にもしくは縦方向の押し潰し力に従って減容変形する。
【0010】
上記した構成の壜体を詰替え容器として利用することを想定すると、満杯状に近く内容液を充填した上記構成の壜体を、口筒部を固定した状態で倒立姿勢にし、外気を内部に侵入させることなく一定量の内容液を口筒部から自重により注出させることができる。
【0011】
この際、内容液の注出の進行に伴って、肩部ラベルを固着した肩部や底部はほぼ元の形状を保持しながら、薄肉に形成された胴部の周壁が潰れ状に変形し、その結果、胴部が高さ方向に縮小し、この胴部の潰れ状の変形と高さ方向の縮小により、その倒立姿勢を保持しつつ壜体の減容変形を進行させることが可能となる。
【0012】
このため、パウチ容器のように注出に伴う容器の横倒れの心配もないので、手で支えてやる必要もなく、安心して詰替え操作を実施することができる。
【0013】
壜体の肩部外表面に肩部ラベルを固着したので、この肩部ラベルの表面に施された法定表示等の加飾が、壜体の目立つ箇所である肩部に位置することになり、また固着された肩部ラベルが肩部に対して補強材として機能することになるので、肩部が胴部を剛的に安定して支えることになる。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えた、肩部ラベルを、ブロー成形される壜体のインサートラベルとした、ものである。
【0015】
肩部ラベルをインサートラベルとしたものにあっては、壜体のブロー成形と同時に、壜体への肩部ラベルの固着が達成され、またこの壜体に対する肩部ラベルの固着を、密にかつ均一に達成する。
【0016】
また、本発明の他の構成は、上記した主たる構成に加えて、胴部の周壁を、周方向に沿って略等間隔に縦姿勢の山折り状となった3本の稜線を有し、隣り合った該稜線を3ケのパネル壁で連結して構成し、この各パネル壁に一方の稜線の上端と他方の稜線の下端を対角線状に連結する谷折り状の折り目線を形成した、ものである。
【0017】
胴部の周壁に、稜線とパネル壁と折り目線を形成したものにあっては、内容液の注出に伴って、内部と外部の圧力差により壜体の胴部全体に押圧力が作用するが、胴部の周壁の各パネル壁に傾斜状に谷折り状、すなわち陥没状に形成される3本の折り目線が、壜体の中心軸に近づくように変位して減容変形が進行する。この減容変形の際に、各パネル壁は、折り目線を起点として、折り目線に沿って折り畳まれるようにして陥没状に変形する。
【0018】
一方、縦方向に形成される3本の山折り状の稜線は、押圧力に対して柱部としての機能を発揮するものであり、減容変形に際しては、平面的に見て、胴部の捩れ変形に伴い、捩れ角度を中心角とする「弦」を形成しながら、胴部の周壁の平断面形状を略正三角形状に保持して、胴部の減容変形状態時に、壜体の倒立姿勢を安定して真直ぐに保持するように機能する。
【0019】
この際、各稜線は、平面的に見て、捩れ角を中心角とする「弦」を描きながら、折り目線に沿ったパネル壁の陥没変形の進行に従って、傾斜変位する。その結果、胴部の周壁が捩れ状に変形するに従い、胴部が高さ方向に縮小する。
【0020】
また、本発明の他の構成は、上記した主たる構成において、肩部を半球殻状、底部を有底短円筒状とする、ものである。
【0021】
肩部を半球殻状、底部を有底短円筒状とするものにあっては、肩部および底部を減圧化に伴う変形が進行し難い形状とすることにより、減圧化に伴う減容変形が胴部で優先的に進行するようにすることができ、壜体の縦方向への潰れ変形姿勢を保持しながら、減容変形をよりスムーズに進行させることができる。
【0022】
また、本発明の他の構成は、上記した主たる構成に加えて、底部の底面の中央部に底面壁を壜体の内部方向に陥没させて形成した陥没部を形成する、ものである。
【0023】
底部の底面の中央部に陥没部を形成するものにあっては、底部の形状を安定して維持することになり、底部の底面に押圧力を作用させて壜体を上下方向に押し潰す際、底面の形状を保持して、その陥没部により、押し潰された胴部をテーパー筒状の肩部内に押し込み易い姿勢に変形させることが可能となる。なお、この押し潰された胴部の肩部内への押し込みは、底部の周端部の局部変形を伴う強引なものとなるので、肩部と底部の間には引っ掛かりが生じることになるが、この引っ掛かりを利用して、胴部を肩部内に押し込んだ潰れ姿勢を自己保持させることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、内容液の注出の進行に伴って、肩部や底部はほぼ元の形状を保持しながら、胴部の周壁が、潰れ状に変形すると共に高さ方向に縮小しながら、減容変形するので、パウチ容器のように注出に伴う容器の横倒れの心配もないので、手で支えてやる必要もなく、安心して詰替え操作を実施することができる。
【0025】
また、壜体の肩部に、表面に加飾を施した肩部ラベルを固着したので、胴部の潰れ変形のし易さを劣化させることなく、要求される加飾を表示できると共に、肩部の剛性を適度に高めることができ、これにより適正な加飾の表示と、好ましい強度アップを得ることができる。
【0026】
肩部ラベルをインサートラベルとしたものにあっては、壜体のブロー成形と同時に、壜体への肩部ラベルの固着が達成され、またこの壜体に対する肩部ラベルの固着を、密にかつ均一に達成できるので、肩部ラベルの固着処理が容易であると共に、壜体に対する肩部ラベルの強固で安定した固着を簡単に得ることができる。
【0027】
胴部の周壁に、稜線とパネル壁と折り目線を形成したものにあっては、胴部の縦方向に沿った潰れ変形が捩れ変形となるので、減容変形する胴部の姿勢が直立状に安定して維持されることになり、これにより内容液の詰替え動作を安全に達成できる。
【0028】
肩部を半球殻状、底部を有底短円筒状とするものにあっては、肩部および底部の形状が安定して維持されるので、この肩部および底部に支えられた胴部の減容変形をよりスムーズに進行させることができ、これにより壜体の安定した減容化変形を得ることができる。
【0029】
底部の底面の中央部に陥没部を形成するものにあっては、陥没部により、折り畳み状に押し潰された胴部を、テーパー筒状の肩部内に押し込み可能に変形させることができ、これにより壜体を十分に小さく減容化変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の壜体の第一の実施形態例を示す、一部縦断した正面図である。
【図2】本発明の壜体の第二の実施形態例を示す、一部縦断した正面図である。
【図3】図2の壜体の(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図4】図2中のロの丸印で示した部分の、拡大断面図である。
【図5】図2中のイ−イ線に沿った、平断面図である。
【図6】本発明の壜体の成形例の説明に供する、縦断面図である。
【図7】図2の壜体を詰替え容器として継続使用容器に装着し、減容変形が進行した状態を一部縦断して示す正面図である。
【図8】図7の壜体の斜視図である。
【図9】図7の変形状態での壜体の平面図である。
【図10】図7の状態から壜体をさらに押潰した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の合成樹脂製壜体の実施の形態について、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
【0032】
壜体1の肩部3には、その外表面を覆って表面に法定表示等の加飾7を施した肩部ラベル6が固着されており、この肩部ラベル6は、胴部4の減容変形のし易さを損なうことなく、壜体1に対して要求される加飾7を設けることができると共に、補強材として機能して肩部3の自己形状保持能力を高めている。
【0033】
この肩部ラベル6は、例えば図4に示すように、ベースシート6aの表面側に加飾7を現出する印刷層6bを積層し、この印刷層6bを覆って保護層6cを積層し、またベースシート6aの裏面側に接着層6dを積層して構成されている。
【0034】
この肩部ラベル6の壜体1に対する固着(以下、図6参照)は、例えば壜体1に2軸延伸ブロー成形されるプリフォームPの口筒部2の下端部に設けられたネックリング2aの直下に、成形される肩部3の外表面に沿った球弧殻状に成形された肩部ラベル6を嵌装組付けし、このプリフォームPと肩部ラベル6の組合せ物を2軸延伸ブロー成形金型にセットして、プリフォームPを壜体1にブロー成形することにより達成される。
【0035】
すなわち、図6に示した例は、肩部ラベル6をインサート材として、プリフォームPを壜体1にインサート成形することにより、壜体1の成形と同時に肩部ラベル6の強固で安定した固着を達成するようにしているのである。
【0036】
図2〜5は本発明の壜体の第二実施例を示すものであり、図2は正面図、図3(a)は側面図、図3(b)は背面図(図3では口筒部を図示省略している)、図4は、図2中ロ丸印で示した部分の拡大断面図、図5は図2中のイ−イ線に沿った平断面図である。
【0037】
この壜体1は、ポリプロピレン樹脂製の2軸延伸ブロー成形品であり、口筒部2、半球殻状でテーパー筒状の肩部3、筒状の胴部4、有底短円筒状の底部5を有し、全高さ125mm、横幅70mmで、容量300mlの壜体である。また、底部5の底面の中央部には底面壁を壜体の内部方向に陥没させて陥没部5aが形成されており、その周縁にはリング状の周縁部5pが配設されている。
【0038】
また、胴部4の周壁には、山折状に縦方向に等間隔で3本の稜線12(12a、12b、12c)が形成されており、周壁は隣接する稜線12を図5に見られるように平断面形状が円弧状の3ケのパネル壁11(11ab、11bc、11ca)で連結して構成されている。
【0039】
また、各パネル壁11には一方の側端に位置する稜線12の上端部と他方の側端に位置する稜線12の下端部を対角線状に連結する谷折状の折り目線13(13ab、13bc、13ca)を形成し、これら3本の折れ目線13が周方向に並列状に傾斜するようにしている(図2、3では右斜め上から左斜め下に傾斜している。)。
【0040】
なお、変形の態様がわかり易いように、図面では稜線12を、12a、12b、12cと云うように3本の稜線が区別できるように示し、図面間で相互に対応が取れるようにした。パネル壁11と折り目線13についても同様である。
【0041】
ここで、3本の稜線12は図5の平断面図に見られるように、正3角形の頂点に配置され、壜体1に作用する横方向の力に対して柱部としての機能を発揮する。また、この胴部4の周壁は、稜線12部分を除いて、上端と下端から中央高さ位置に向けて縮径するように形成されている。
【0042】
また、第二の実施例の壜体1では、図2に見られるように、隣接する稜線12間の距離Lと稜線13の高さHの比である、L/Hの値は略1であり、折り目線13の中心軸Axに対する傾斜角度Dを約45°程度としている。この傾斜角度は、壜体の形状や、内容液のスムーズな注出性に係る胴部4の周壁の減容変形の態様を考慮して、適宜に決めることができるものであるが、L/Hの値は0.6〜1.7の範囲(中心軸Axに対する傾斜角度Dでは30°〜60°の範囲)とするのが好ましい。
【0043】
次に、図7〜10は、上記した第二の実施例の壜体1を詰替え容器Aの壜体として利用した例を説明するためのもので、この説明の中で本発明の壜体1の減容変形の態様を説明する。図7は、図2の壜体1を倒立姿勢で継続使用容器Bに装着した状態を示す正面図、図8は図7中の減容変形した壜体1の斜視図、図9は減容変形した壜体1の平面図、そして図10は図7の減容状態から壜体1をさらに押潰した状態を示す正面図である。
【0044】
本例において、詰替え容器Aは、壜体1と、この壜体1の口筒部2に装着される結合蓋20から構成されている。結合蓋20は、壜体1の口筒部2に螺合状に組付き固定する組付き筒21を有し、組付き筒21の頂壁の開口縁から円筒状の嵌合筒22が起立設され、この嵌合筒22の上端開口部には係合周条23を利用して、図中二点鎖線で示されるように中栓24が配設されている。
【0045】
一方、継続使用容器Bは、容器本体30、容器本体30の口筒31に液密状に組付き固定する本体キャップ40、そして押上げ体48から構成されている。本体キャップ40は、容器本体30の口筒31内に嵌入する嵌入筒41を有し、この嵌入筒41の底板42には注出開口43が形成され、その開口縁からは前述した結合蓋20の嵌合筒22に外嵌する平断面形状がC状の注出筒片44が起立設されている。
【0046】
また、押上げ体48はリング状の組付きリング51を有し、この組付きリング51から軸対称の位置に2本の梁片50を水平状に延設し、その先端から押上げ片49を起立設したものであり、本体キャップ40の注出筒片44の内周面に周設された結合リブ47を利用して注出筒片44内部に組付き固定し開口Kを形成する。
【0047】
そして、内容液(図示省略)を略充満した壜体1に結合蓋20を装着した詰替え容器Aを倒立姿勢として、結合蓋20の嵌合筒22を継続使用容器Bの本体キャップ40の注出筒片44に嵌入する。この際、押上げ体48の押上げ片49により中栓24が嵌合筒22内に押上げられて開口Kが形成され、この開口K、さらに注出開口43を通して壜体1内の内容液が自重により継続使用容器Bの容器本体30内に流入する。
【0048】
次に、上記した継続使用容器Bへの内容液の詰め替えの進行、すなわち壜体1からの内容液の注出に伴う壜体1の減容変形について説明する。
【0049】
概略的にみると、壜体1からの内容液の注出の進行に伴って、図7〜9に示されるように、肩部3や底部5はほぼ元の形状を保持しながら、比較的薄肉に形成され、陥没変形の起点となる折り目線13の形成された胴部4の周壁が、捩れ状に変形すると共に高さ方向に縮小しながら、図7中二点鎖線で示した初期の形状からその倒立姿勢を略真直ぐに保持しつつ壜体1の減容変形が進行する。
【0050】
ここで、底部5は、壜体の中心軸Ax回りに口筒部2に対して相対的に回動変位する(図8、9中の白抜き矢印参照)と共に下降変位する。なお、図7、8、9に示した状態では、底部5は口筒部2に対して60°程度回動している。
【0051】
また、壜体1の初期の形状では図4、5に示されるように肩部3の下端部及び底部5の平面形状は円形であるが、図9の状態では捻り変形に伴う力が作用して、それぞれが3本の稜線12の上端を頂点とした三角形あるいは下端を頂点とした三角形に近い形状に変化している。この三角形状は、四角形状やさらなる多角形状に比較して横方向の力が作用しても扁平に変形し難く、壜体1の倒立姿勢を安定して保持することが可能となる。
【0052】
さらに、上記した注出の進行に伴う壜体1の各構成要素の減容変形の態様は次のようである。内部の減圧化が進行すると、胴部4の周壁全体に押圧力が作用するが、肩部3は肩部ラベル6の固着により機械的に剛性が補強されており、底部5は胴部4に比較して厚肉であるので、胴部4を構成している比較的薄肉で陥没変形の起点となる谷折り状の折れ目線13が形成された各パネル壁11に陥没変形が進行する。
【0053】
この際、3本の折り目線13は、壜体1の中心軸Axに近づくように変位し、各パネル壁11は各折り目線13を起点として、各折り目線13に沿って折り畳まれるようにして陥没状に変形する。図9の平面図には、口筒部2の開口部を通して、3本の折目線13ab、13bc、13caが中心軸Axに近接した様子が見られる。
【0054】
一方、縦方向に形成される3本の山折り状の稜線12a、12b、12cは、各パネル壁11の陥没変形に従って、例えば図8中の稜線12b、12cに明確に示されるように傾斜状に変位するが、図9中に示されるように、平面的に見ると胴部4の捩れ角を中心角とした「弦」として位置し、その両端を略円形を保持している肩部3の下端縁部および底部5の周縁部5pに位置させており、減容変形状態においても壜体1に横方向から作用する力に対して、倒立姿勢を安定して保持する柱部として機能を発揮する。
【0055】
そして、各稜線12a、12b、12cの変位により、底部5が壜体1の中心軸Ax回りに口筒部2に対して相対的に回動変位する捩り変形が進行すると共に、底部5の下降変位が進行する。
【0056】
なお、図9からも分かるように、内容液の注出がさらに進行すると3本の稜線12a、12b、12cがその中央高さ位置近傍で相互に当接し、まだ肩部3から口筒部2にかけての部分に内容液を残した状態で内容液の自重による注出は一端停止するが、この壜体1は全体として薄肉に形成されているので、底部5に図10中の白抜き矢印の方向に押圧力を強制的に作用させることにより、壜体1を図10中に示されように容易に押し潰すことができ、内容液を略全量注出することができる。
【0057】
また、図9では底部5が口筒部2に対して60°程度回動した状態が示されているが、図10のように胴部4全体を押し潰す際には、強制的に120°程度まで回動させ、胴部4全体を折り畳み状に十分に押し潰して底部5と一緒に半球殻状の肩部3の中に埋め込むようにして、廃棄することができる。なお、胴部4を120°程度まで強制的に回動変位させた状態では、胴部4の折り畳み状変形に影響されて、肩部3および底部5の周端縁部が、図9中点線図示した正三角形に類似した形状に変形する傾向が現れる。
【0058】
この場合、底部5が肩部3に十分に接近するまで胴部4を押し潰した状態では、底部5の陥没部5aが折り畳み状に変形している胴部4の中央部分に対して、肩部3内に向う押込み力を作用させることになるので、底部5は折り畳まれた胴部4を撓み変形させながら弾性変形して肩部3の下端部に強引に嵌入することが可能であり、それゆえこの状態での底部5の肩部3に対する引っ掛かりを利用して、図10に示した押し潰し状態を自己保持させることが可能となる。
【0059】
他方、継続使用容器Bの押上げ体48により形成される開口Kの開口面積を大きくしておけば、上記のように内容液の自重による注出が一端停止した後、壜体1の内外の圧力差により開口Kを通して外気を気泡として壜体1内に進入させることができ、上記のように押圧力を強制的に作用させることなく残りの内容液を注出することもできる。なお、この場合も内容液を注出した後は、前述したように押圧力を強制的に作用させて押し潰した状態で廃棄することができる。
【0060】
以上、実施例に沿って本願発明の壜体の実施の形態、およびその作用効果を説明したが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施例では底部5の底面の形状を円形としているが、図5に示される胴部4の平断面形状と同様に三角状にすることもできる。
【0061】
また、壜体1の容量は300ml程度のものに限定されるものではないし、ポリプロピレン樹脂製の2軸延伸ブロー成形の壜体に限らず、PET樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体、あるいはポリエチレン樹脂製のダイレクトブロー成形壜体と、さまざまな樹脂製のブロー成形品を使用することができる。
【0062】
また、上記実施例では詰替え容器として利用する例を説明したが、本発明の壜体は前述したように使用後は高さ方向に十分に押し潰して、その押し潰し形状を維持した状態で廃棄可能なものであり、省資源、易廃棄性、そして肩部ラベルの補強作用に伴う肩部付近でのハンドリング性の向上と云う特徴を生かして、通常の収納容器としての壜体単体としても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の合成樹脂製壜体は上記説明したように、内部に発生した減圧に従って容易に減容変形すべく十分に肉薄にブロー成形された合成樹脂製壜体において、胴部の減容変形のし易さを劣化させることなく加飾を適正に施すことができるものであり、また壜体の肩部を剛的に補強して胴部の減容変形を安定的に行わせるので、商品としての詰替え容器等の用途で幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0064】
1 ;壜体
2 ;口筒部
2a;ネックリング
3 ;肩部
4 ;胴部
5 ;底部
5a;陥没部
5p;周縁部
6 ;肩部ラベル
6a;ベースシート
6b;印刷層
6c;保護層
6d;接着層
7 ;加飾
11(11ab、11bc、11ca);パネル壁
12(12a、12b、12c);稜線
13(13ab、13bc、13ca);折り目線
P ;プリフォーム
A ;詰替え容器
20;結合蓋
21;組付き筒
22;嵌合筒
23;係合周条
24;中栓
B ;継続使用容器
30;容器本体
31;口筒
40;本体キャップ
41;嵌入筒
42;底板
43;注出開口
44;注出筒片
47;係合リブ
48;押上げ体
49;押上げ片
50;梁片
51;組付きリング
K ;開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部とテーパー筒状の肩部と筒状の胴部と底部を有するブロー成形による合成樹脂製壜体において、前記胴部の周壁は壜体内部の減圧化に伴って減容変形が進行可能な薄肉に形成され、前記肩部の外表面を覆って、表面に加飾を施した肩部ラベルを固着した合成樹脂製壜体。
【請求項2】
肩部ラベルを、ブロー成形される壜体のインサートラベルとした請求項1に記載の合成樹脂製壜体。
【請求項3】
胴部の周壁を、周方向に沿って略等間隔に縦姿勢の山折り状となった3本の稜線を有し、隣り合った該稜線を3ケのパネル壁で連結して構成し、該各パネル壁に一方の稜線の上端と他方の稜線の下端を対角線状に連結する谷折り状の折り目線を形成した請求項1または2に記載の合成樹脂製壜体。
【請求項4】
肩部を半球殻状、底部を有底短円筒状とした請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂製壜体。
【請求項5】
底部の底面の中央部に、底面壁を壜体の内部方向に陥没する陥没部を形成した請求項1〜4の何れか1項に記載の合成樹脂製壜体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−157100(P2011−157100A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19595(P2010−19595)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】