説明

合成樹脂製多重容器とこの製造方法

【課題】容器のデザイン性能を大きく向上できるとともに、容器の外観不良を防止できるようにする。
【解決手段】内側容器部(2)とこの内側容器部(2)の外表面へ一体に射出成型された外側容器部(3)を有する合成樹脂製多重容器(1)であって、内側容器部(2)と外側容器部(3)との間に表示手段(4)を配置する。このため外側容器部(3)の外表面と表示手段(4)の表示内容が同一の面からずれて目視されるので、外側容器部(3)の外表面の光沢等の演出の奥に表示内容が目視され、表示内容の表示を合成樹脂製多重容器(1)の内部で立体的に演出でき、容器のデザイン性能を大きく向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等を収容する合成樹脂製多重容器に関し、さらに詳しくは、容器のデザイン性能を大きく向上できるとともに、表示内容が読み取れなくなる恐れを解消できる合成樹脂製多重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記化粧料等を収容する容器は、収容物が変質しないように優れた耐薬品性能が要求されるとともに、収容物の製品情報等を明確に且つ美的に表示する高いデザイン性能が要求される。このため、ガラス製容器が利用されていたが、近年では成型の容易さから、合成樹脂製容器が多く用いられている。この合成樹脂容器は、容器に重量感を得るため、射出成型により容器壁や底部を厚くすることが望まれる。しかし射出成型により容器壁等が厚く形成されると、長い冷却時間が必要となり、生産効率が悪くなるとの問題があった。
【0003】
従来、上記の問題を解消するため、射出成型により内側容器部を形成した後、この内側容器部の外表面へ一体に外側容器部を射出成型する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち特許文献1には、2台の射出成型機を用い、一方の射出成型機により内側容器部を射出成型した後、他方の射出成型機により内側容器部の外表面へ一体に外側容器部を射出成型し、合成樹脂製多重容器を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3114093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の合成樹脂製多重容器では、内側容器部に外側容器部が一体に射出成型された後、例えば、十分な冷却時間を設けて、外側容器部の外表面にラベルが貼着される。このラベルには、収容される化粧料等の製品情報やこの製品に応じた容器の図柄・模様等の表示内容が印刷されている。また例えば、外側容器部の外表面に前記表示内容が直接印刷されている。すなわち従来のような合成樹脂製多重容器では、前記表示内容を外側容器部の外表面と同じ面に表示するしかなく、容器のデザイン性能が低いとの問題があった。
【0006】
また、収容物が化粧料等である場合は特に、収容物が1度で使い切られることは少なく、長期間に亘って使用される。例えば、容器の開閉が繰り返し行われる間に、または容器が鞄等に入れられ持ち運びされる間に、ラベルまたは印刷が損傷して表示内容が読み取れなくなる恐れがあり、ラベルに保護層を形成する必要があった。
【0007】
そこで本発明は、容器のデザイン性能を大きく向上できるとともに、表示内容が読み取れなくなる恐れを解消できる合成樹脂製多重容器とこの製造方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1〜図5に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明1は合成樹脂製多重容器に関し、有底容器状に射出成型された内側容器部(2)と、前記内側容器部(2)の外表面へ一体に射出成型された透明な外側容器部(3)とを備えた合成樹脂製多重容器であって、前記内側容器部(2)と前記外側容器部(3)との間に、収容物の製品情報や図柄・模様等からなる表示内容を表示する表示手段(4)を配置した、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明2は、内側容器部(2)を射出成型し、前記内側容器部(2)の外表面へ前記表示手段(4)を配置した後、前記内側容器部(2)の外表面と一体に透明な外側容器部(3)を射出成型する、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記の表示内容を表示する表示手段は、内側容器部と外側容器部との間に配置されるので、外側容器部の外表面に対し表示手段の表示内容がずれて目視される。このため外側容器部の外表面の光沢等の演出の奥に表示内容が目視され、表示内容の表示を容器の内部で立体的に演出でき、表示内容のデザイン性能が大きく向上される。また表示手段が外側容器部に保護される状態にあり、表示手段が読み取れなくなる上記の問題も解消される。
【0011】
上記の表示手段は、収容物の製品情報や図柄・模様等からなる表示内容を表示するものであればよく、特定の構成に限定されるものではない。例えば、表示手段が、表示内容を形成する印刷層と、印刷層と外側容器部との間に印刷層を保護する保護層を有する構成としてもよい。この場合には、外側容器部を内側容器部へ射出成型する工程において生ずる熱から印刷層を保護できる。このため印刷層に印刷された表示内容が熱で変形されることなく、容器の生産過程での外観不良を防止できる。
【0012】
上記の保護層は、表示内容が熱で溶融されることから保護するものであればよく、特定の作用に限定されるものではない。例えば、保護層を、熱が加えられると硬化する熱硬化保護層としてもよい。この場合には、印刷層に印刷された表示内容が硬化された熱硬化保護層に保護され、外側容器部を射出成型する際に生じる熱で表示内容が溶けても、これらがずれて変形されることなく保護できる。また、上記の保護層は、熱を遮断する保護層であってもよい。この場合に、外側容器部を射出成型する際に生じる熱で表示内容が溶けることを防止できる。
【0013】
上記の表示手段は、内側容器部と外側容器部の間に配置される構成であればよく、特定の構成に限定されるものではない。例えば、表示手段が、接着剤等からなる接着層を有し、保護層と接着層との間に印刷層が形成されている構成としてもよい。この場合には、内側容器部に予め設定された表示手段の取付け位置に表示手段を容易に貼着することができるとともに、この表示手段を取付け位置へ固定することができる。
【0014】
上記の外側容器部は、透明な形成材料から形成されればよく、特定の形成材料に限定されない。例えば、外側容器部を、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂ともいう。)やシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂にて形成してもよい。これらの場合には、透明性に優れた外側容器部が形成され、この外側容器部を介して良好に表示内容を目視することができる。ここでシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂とは、例えば、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位からなるポリエステルであって、かつエチレングリコール単位のモル比が、シクロヘキサンジメタノール単位のモル比よりも大きいPETG樹脂、テレフタル酸単位とエチレングレコール単位およびシクロヘキサンジメタノール単位からなるポリエステルであって、エチレングリコール単位のモル比が、シクロヘキサンジメタノール単位のモル比よりも小さいPCTG樹脂、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位とシクロヘキサンジメタノール単位とからなるPCTA樹脂等が包含されるものである。
【0015】
上記の表示手段は、印刷層に用いられるインクが汎用的なインクであればよく、特定のインクに限定されるものではない。例えば、外側容器部の射出成型の際に生じる熱に耐え得る耐熱性のインクを用いた印刷層を有してもよい。この場合には、印刷層に描かれた表示内容が外側容器部を射出成型する際に生じる熱で変形されることを防止できる。
【0016】
また合成樹脂製多重容器は、内側容器部と外側容器部からなり、これらの間に表示手段が配置される多重容器であればよく、特定の構成に限定されるものではない。例えば、外側容器部の外側へ順に射出成型される少なくとも1つの透明な装飾容器部を備え、装飾容器部と内側容器部との間の少なくとも1カ所に表示手段を配置する構成としてもよい。この場合には、装飾容器部および外側容器部の光沢等の演出の奥に、複数の表示内容が目視され、例えば、外側の表示内容が半透明なものであれば、内側のものと重ねて表示内容をより立体的に演出でき、表示内容のデザイン性能をより大きく向上できる。なお、前記の装飾容器部は、透明な形成材料から形成されればよく、特定の形成材料に限定されない。例えば、PET樹脂やシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂にて形成すると透明性が高く好ましい。
【0017】
上記の内側容器部の外表面へ表示手段を配置する工程は、内側容器部と外側容器部との間に表示手段を配置するものであればよく、特定の工程に限定されない。例えば、前記表示手段を、収容物の製品情報や図柄・模様等からなる表示内容を形成する印刷層と、前記印刷層を保護する保護層と、接着剤等からなる接着層とから形成し、前記表示手段を、前記保護層と前記接着層との間に前記印刷層が位置し、前記接着層が外側となるようにベースとなるフィルムに予め配置した後、前記内側容器部の外表面に前記フィルムを圧着するとともに熱を加えて前記表示手段を転写することにより、前記表示手段を前記フィルムから前記内側容器部の外表面に配置する工程としてもよい。この場合には、表示手段が転写されるとともに、表示手段が転写される熱により熱硬化保護層を硬化することができる。
【0018】
上記の表示手段は、内側容器部と外側容器部の間に配置する構成、または装飾容器部と内側容器部との間の少なくとも1カ所に配置する構成であればよく、特定の構成に限定されない。例えば、容器の外表面に、表示手段に表示された表示内容に重ねて目視される表示内容を表示する外側表示手段を配置する構成としてもよい。この場合には、外側の表示内容と内側の表示内容とが重ねて表示され、表示内容をより立体的に演出できるので、表示内容のデザイン性能をより大きく向上できる。
【0019】
上記の内側容器部と外側容器部の形状は、特定の形状のものに限定されない。例えば、内側容器部の外周面に蓋体に応じた雄ねじからなる装着部を形成し、この装着部を除いた内側容器部の外表面に、外側容器部を一体に射出成型してもよい。
【発明の効果】
【0020】
(1)本発明1の合成樹脂製多重容器によれば、外側容器部の外表面と表示手段の表示内容が同一の面からずれて目視される。このため外側容器部の外表面の光沢等の演出の奥に表示内容が目視され、表示内容の表示を容器の内部で立体的に演出でき、表示内容のデザイン性能を大きく向上できる。
(2)本発明1の合成樹脂製多重容器によれば、表示手段が外側容器部に保護される状態にあり、表示手段が読み取れなくなる問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における合成樹脂製多重容器の一部破断斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の転写装置を示す概略図である。
【図4】本発明の変形例1を示し、(a)は合成樹脂製多重容器の横断平面図、(b)は合成樹脂製多重容器の縦断正面図である。
【図5】本発明の変形例2を示し、(a)は合成樹脂製多重容器の横断平面図、(b)は合成樹脂製多重容器の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、この合成樹脂製多重容器(1)は、有底容器状に射出成型された内側容器部(2)の内部に化粧料等が収容される収容部(5)を形成してあり、この収容部(5)の上部に広い開口部が開口され、広口容器状に形成されている。また内側容器部(2)と、この内側容器部(2)の外表面と一体に射出成型された透明な外側容器部(3)により厚く形成された容器壁と底部とを備えている。また内側容器部(2)と外側容器部(3)との間には、収容部(5)に収容される収容物の製品情報や容器のデザインからなる表示内容を表示する表示手段(4)が配置されている。なお上記の開口部の周囲には、外周面に雄ねじを備えた装着部(8)が形成され、図示しない蓋がこの装着部(8)に着脱自在に螺着される。
【0023】
上記の内側容器部(2)は、例えばPET樹脂を成形材料とし、射出成型により形成され、所定の色彩に着色された半透明のものにされている。一方、上記の外側容器部(3)は、内側容器部(2)の外表面と一体に射出成型され、詳しくは、上記の表示手段(4)と装着部(8)を除いた内側容器部(2)の外表面に融着し、内側容器部(2)の一部と一体化する状態に射出成型により形成されている。この外側容器部(3)は、例えばシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂であるPETG樹脂を成形材料とし、外観無色透明なものにされている。
【0024】
また図2に示すように、上記の表示手段(4)は、表示内容が印刷された印刷層(4c)と、この印刷層(4c)と外側容器部(3)との間に位置する保護層(4b)と、接着剤等からなる接着層(4d)とを有している。また表示手段(4)は、保護層(4b)と接着層(4d)との間に、表示内容に応じて印刷層(4c)が形成され、内側容器部(2)の外方側面に沿って一周分の長さのシート状に形成されている。
【0025】
また図1に実線または仮想線で示すように、表示手段(4)は、上記の装着部(8)に形成された切欠き状の凹部を基準とした始点(7)から内側容器部(2)の外方側面に沿って上記の接着層(4d)を介して貼着されており、内側容器部(2)に対する表示手段(4)の位置が所定の位置とされている。このため、例えば、表示手段(4)に表示される表示内容に連続する表示内容が上記の蓋に形成された場合であっても、内側容器部(2)と蓋の連続した表示内容の整合性を図ることができる。
【0026】
上記の保護層(4b)は、熱が加えられると硬化する熱硬化保護層であり、例えば150℃程に熱せられることで硬化する。また上記の接着層(4d)は、熱が加えられると接着性を有する接着層であり、例えば150℃程に熱せられることで接着性を有する接着剤である。これら保護層(4b)と接着層(4d)は、無色透明であり、内側容器部(2)の外方側面に沿って一周分の長さのシート状に形成されている。また上記の印刷層(4c)は、複数種類の彩色を有する汎用のインクから形成された表示内容であり、この表示内容に応じて保護層(4b)と接着層(4d)との間に点在される。
【0027】
上記の合成樹脂製多重容器(1)では、例えば、外側容器部(3)の外表面に対し表示手段(4)の表示内容がずれて目視されるので、外側容器部(3)の外表面の光沢等の演出の奥に表示内容が目視され、表示内容の表示を合成樹脂製多重容器(1)の内部で立体的に演出できる。
【0028】
また上記の外側容器部(3)の外表面、すなわち合成樹脂製多重容器(1)の外表面には、図1に示すように、外側表示手段(13)が配置されている。この外側表示手段(13)は、上記の表示手段(4)とは異なる表示内容の印刷層を有しており、他の構成は同様であり、下記転写装置によって、合成樹脂製多重容器(1)の外表面に転写される。なお、外側表示手段(13)に表示される表示内容の色彩は、例えば、半透明等任意に設定される。
【0029】
以下、上記の合成樹脂製多重容器(1)の製造手順について説明する。
上記の合成樹脂製多重容器(1)は、例えば、2台の射出成型機と表示手段(4)の転写装置を用いて製造される。なお、上記の表示手段(4)は、内側容器部(2)へ配置される前段階において、接着層(4d)が外側となるようにベースとなるフィルム(10)へ上記の順で重ねて形成されている。なおこのフィルム(10)には、所定の間隔で複数の表示手段(4)が配置されている。また上記の転写装置は、フィルム(10)が巻き回された連動軸と、このフィルム(10)の一端が取り付けられた巻取り用の駆動軸を有し、これら駆動軸と連動軸の間には、内側容器部(2)を把持して回転させる回転軸と、この回転軸に向けてスライド自在な150℃程に熱せられたホットローラ(11)を備えている。
【0030】
最初に、一方の射出成型機により、上記の内側容器部(2)が例えば270℃程の温度で射出成型されたのち、この射出成型機の金型が開かれ内側容器部(2)が取り出される。次に取り出された内側容器部(2)が、図3に示すように、転写装置の回転軸にセットされる。このとき内側容器部(2)は、上記の装着部(8)の凹部を基準に前記回転軸にセットされ、内側容器部(2)へフィルム(10)が圧着される。そして、駆動軸、連動軸、回転軸およびホットローラ(11)が連動されると同時にホットローラ(11)が回転軸に向けてスライドされる。すなわち、内側容器部(2)にフィルム(10)が圧着されるとともに熱が加えられ、表示手段(4)がフィルム(10)から内側容器部(2)へ転写される。なお、駆動軸、連動軸、回転軸およびホットローラ(11)が連動されるとともに、内側容器部(2)が上記の凹部を基準に回転軸にセットされているので、内側容器部(2)の外表面の所定位置に表示手段(4)が転写される。
【0031】
次いで、表示手段(4)が転写された内側容器部(2)を、他方の射出成型機のコア側金型に装着し、この後、内側容器部(2)の外表面に、外側容器部(3)が表示手段(4)を被覆するように、外側容器部(3)を例えば270℃程の温度で射出成型する。このとき表示手段(4)が保護層(4b)を有することにより、外側容器部(3)を成型する工程での印刷層(4c)および接着層(4d)の熱変形を防止できる。
【0032】
以上のように本実施の形態によれば、透明な外側容器部(3)を介して表示手段(4)が目視され、例えば、外側容器部(3)の外表面に対し表示手段(4)の表示内容がずれて目視される。このため外側容器部(3)の外表面の光沢等の演出の奥に表示内容が目視され、表示内容の表示を合成樹脂製多重容器(1)の内部で立体的に演出でき、表示内容のデザイン性能を大きく向上できる。また本実施の形態によれば、表示手段(4)が外側容器部(3)に保護される状態にあり、表示手段(4)が読み取れなくなる問題を解消でき、新たに保護層を設けることなく良好に使用することができる。
【0033】
また本実施の形態の合成樹脂製多重容器の製造方法によれば、内側容器部と外側容器部との間に表示内容を表示する表示手段が配置された合成樹脂製多重容器を製造できる。また本実施の形態の合成樹脂製多重容器(1)によれば、表示手段(4)が、印刷層(4c)および接着層(4d)を保護する保護層(4b)を有していることにより、外側容器部(3)の射出成型の工程において、印刷層(4c)および接着層(4d)の熱変形を防止できる。
【0034】
なお本発明の変形例1では、図4に示すように、外側容器部(3)から外方へ順に射出成型される少なくとも1つの装飾容器部(6)と、装飾容器部(6)と内側容器部(2)との間の少なくとも1カ所に配置された表示手段(4)を有する構成であってもよい。この構成によれば、装飾容器部(6)を成型する毎に、複数の表示手段(4)を配置でき、外側容器部(3)の光沢や透明感と、装飾容器部(6)の光沢や透明感と、各印刷層(4c)に印刷された収容物の製品情報や容器のデザイン等とを組み合わせることが可能となり、容器のデザイン性能をより大きく向上できる。
【0035】
また本発明の変形例2では、図5に示すように、内側容器部(2)と外側容器部(3)との間に、形状および表示の異なる複数の表示手段(4)を設け、合成樹脂製多重容器(1)を構成してもよい。この構成によっても、上記の本実施の形態と同様の効果を奏する。なお外側容器部(3)または装飾容器部(6)の外表面に、上記の表示手段(4)と異なる表示の複数の表示手段(4)を設けてもよい。
【0036】
上記の実施の形態で説明した合成樹脂製多重容器は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の形状や寸法、構造などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0037】
例えば、上記の実施の形態では、上記の表示手段(4)は、内側容器部(2)と外側容器部(3)の間に配置する構成、または装飾容器部(6)と内側容器部(2)との間の少なくとも1カ所に配置する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、合成樹脂製多重容器(1)の外表面に、表示手段(4)に表示された表示内容に重ねて目視される外側表示手段(13)を配置する構成としてもよい。この場合に、外側表示手段(13)に表示される外側の表示内容と表示手段(4)に表示される内側の表示内容とが重ねて表示され、表示内容をより立体的に演出でき、表示内容のデザイン性能をより大きく向上できる。
【0038】
また上記の実施の形態では、保護層(4b)により外側容器部(2)を射出成型する際に生じる熱から印刷層(4c)を保護する構成とし、印刷層(4c)の溶融を防止することについて説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、表示手段(4)が、前記外側容器部(2)の射出成型の際に生じる熱に耐え得る耐熱性の印刷層(4c)を有する構成としてもよい。この場合には、表示手段(4)が保護層(4b)を有することなく、上記の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0039】
また上記の実施の形態では、内側容器部分(2)を有色半透明のPET樹脂材料で構成し、外側容器部分(3)を無色透明のPETG樹脂材料で構成することについて説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、内側容器部分(2)と外側容器部分(3)を、互いに同じ色彩に着色された材料や互いに異なる任意の色彩に着色された材料で形成してもよく、或いは、いずれか一方または両方を無色や有色、さらに拡散材等を用いた透明材料で形成してもよい。また内側容器部(2)は、不透明材料で形成してもよい。なおこれらの内側容器部(2)と外側容器部(3)とは、同一の成形材料であっても、その他の異なる成形材料であってもよい。
【0040】
また上記の実施の形態では、内側容器部を取り囲む状態に外側容器部を形成したので、この外側容器部と内側容器部とを良好に一体化できて好ましい。しかし本発明は、上記の実施形態のものに限定されず、内側容器部と外側容器部とを任意の形状に形成することができる。例えば、上記の内側容器部は周方向に略均一な厚さを備えると、成型時の歪が抑制されて好ましいが、外周面を多角形状などの任意の形状に形成して、周方向に付均一な厚さであってもよい。また上記の装着部は、外側容器部に形成することも可能である。
【0041】
また上記の実施の形態では、2台の射出成型機を用い、一方の射出成型機にて内側容器部を成形し、他方の射出成型機にて外側容器部を形成し、合成樹脂製多重容器を製造しており、生産効率において特に好ましい。しかし本発明は、例えば1台の射出成型機にて内側容器部を形成したのち、この射出成型機の金型を外側容器部の金型へ交換するとともに、この同じ射出成型機に内側容器部を装着して外側容器部を射出成型してもよい。この場合上記表示手段は、内側容器部が形成されたのち、外側容器部が射出されるまでの間に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の合成樹脂製多重容器は、容器のデザイン性能を大きく向上できるとともに、成型時の外観不良を防止できるので、化粧品などを収容する容器に特に好適であるが、他の収容物を収容する容器にも好適である。
【符号の説明】
【0043】
1…合成樹脂製多重容器
2…内側容器部
3…外側容器部
4…表示手段
4b…保護層
4c…印刷層
4d…接着層
6…装飾容器部
10…フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成型された内側容器部(2)と、前記内側容器部(2)の外表面へ一体に射出成型された透明な外側容器部(3)とを備えた合成樹脂製多重容器であって、
前記内側容器部(2)と前記外側容器部(3)との間に、収容物の製品情報や図柄・模様等からなる表示内容を表示する表示手段(4)を配置した、
ことを特徴とする合成樹脂製多重容器。
【請求項2】
前記表示手段(4)が、前記表示内容を形成する印刷層(4c)と、前記印刷層(4c)と前記外側容器部(3)との間で前記印刷層(4c)を保護する保護層(4b)を有する、
請求項1に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項3】
前記保護層(4b)は、熱が加えられると硬化する熱硬化保護層である、
請求項2に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項4】
前記表示手段(4)は、接着剤等からなる接着層(4d)を有し、前記保護層(4b)と前記接着層(4d)との間に前記印刷層(4c)が形成されている、
請求項2または請求項3に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項5】
前記外側容器部(3)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂とシクロヘキサンジメタノール系ポリエステル樹脂のいずれかにて形成される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項6】
前記表示手段(4)が、前記外側容器部(3)の射出成型の際に生じる熱に耐え得る耐熱性の印刷層(4c)を有する、
請求項1に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項7】
前記外側容器部(3)の外側へ順に射出成型される少なくとも1つの装飾容器部(6)と、
前記装飾容器部(6)と前記内側容器部(2)との間の少なくとも1カ所に配置された前記表示手段(4)を有する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の合成樹脂製多重容器。
【請求項8】
内側容器部(2)を射出成型し、前記内側容器部(2)の外表面へ前記表示手段(4)を配置した後、前記内側容器部(2)の外表面と一体に透明な外側容器部(3)を射出成型する、
ことを特徴とする合成樹脂製多重容器の製造方法。
【請求項9】
前記表示手段(4)を、収容物の製品情報や図柄・模様等からなる表示内容を形成する印刷層(4c)と、前記印刷層(4c)を保護する保護層(4b)と、接着剤等からなる接着層(4d)とから形成し、
前記表示手段(4)を、前記保護層(4b)と前記接着層(4d)との間に前記印刷層(4c)が位置し、前記接着層(4d)が外側となるようにベースとなるフィルム(10)に予め配置した後、
前記内側容器部(2)の外表面に前記フィルム(10)を圧着するとともに熱を加えて前記表示手段を転写することにより、前記表示手段(4)を前記フィルム(10)から前記内側容器部(2)の外表面に配置する、
請求項8に記載の合成樹脂製多重容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−25402(P2012−25402A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163043(P2010−163043)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(505430975)株式会社ヤシマ精工 (9)
【Fターム(参考)】