説明

合成樹脂製容器

【課題】 加温による変形を、加温抑制に利用することにより、容器に対する加温程度を制御できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 加温器Hで加温される合成樹脂製容器1において、容器本体2の底部4の内方に陥没したテーパー筒片7の下面に、突出高さの等しい三つ以上の脚突片8を、周方向に沿って略等間隔に突設すると共に、少なくともテーパー筒片7を、加温により変形し易い程度に肉薄に成形して、加温によるテーパー筒片7の変位により容器1をリフトアップして、加温程度を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を密封収納した状態で、ホットウォーマ等の加温器により加温される合成樹脂製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶、コーヒー、スープ等の内容物を密封収納し、内容物が50〜60℃程度となるように、ホットウォーマ等で加温された状態で保持されて、販売される合成樹脂製容器が知られている。
【0003】
この種の加温保持される従来の合成樹脂製容器は、例えば、特許文献1(特開2004−256128号公報)に示されているように、ホットウォーマ等で加温保持されても、底部に熱変形が発生しないように、もしくは発生する熱変形を許容できる範囲内に抑制できるように、底部に形成される凹部を、十分に耐熱性の高いものとなるように構成している。
【0004】
すなわち、底部に形成される凹部の陥没程度を大きくし、かつ凹部の周壁部分にリブ状の凹凸を形成し、されに底部の肉厚を、加温による軟化の影響が出ない程度に大きい値に設定している。
【特許文献1】特開2004−256128号公報
【0005】
この特許文献1の技術にあっては、容器の底部に優れた耐熱性を付与することができ、内容物を充填した後、ホットウォーマ等で長時間加温しても、底部の変形を防止して、自立性を保持することができることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、底部における凹部の陥没容積が大きくなり、容器の大きさの割には、内容物の収納量が小さくなってしまう、と云う問題があった。
【0007】
また、底部の凹部に成形される凹凸構造の凹凸程度が大きいと共に、複雑であるため、底部の成形性が低下する恐れがある、と云う問題があった。
【0008】
さらに、底部全体を大きな肉厚で成形しなければならないので、一つの容器を成形するのに要する合成樹脂材料量が、他の同じ大きさの合成樹脂製容器に比べて格段に大きくなってしまい、材料費が割高となると共に、省資源化に逆行してしまう、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、加温による変形を、加温抑制に利用することを技術的課題とし、もって容器に対する加温程度を制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による合成樹脂製容器は、ホットウォーマ等の加温器で加温されながら温かい内容物を収納する容器本体の開口部を、蓋体で密封した容器において、容器本体の底部を、脚筒片と、上方に縮径するテーパー筒片と、内方に陥没する陥没中央部分とから構成している。
【0011】
この底部における脚筒片と、テーパー筒片と、陥没中央部分は、脚筒片の下端に形成された接地部にテーパー筒片の下端を連設し、このテーパー筒片の上端に陥没中央部分を連設している。
【0012】
また、テーパー筒片の肉厚は、加温器による加温により変形し易くなる程度の値、すなわち肉薄に設定されている。
【0013】
さらに、テーパー筒片の下面に、突出高さの等しい三つ以上の脚突片を、周方向に沿って略等間隔に突設している。
【0014】
内容物を密封収納した容器を加温器に載せて、内容物を含めた容器内が設定された温度まで加温されると、内容物およびヘッドスペースの空気の膨張により、容器の内圧が上昇すると共に、底部のテーパー筒片も設定された温度まで加温される。
【0015】
この状態での容器の加温は、接地部が加温器の加温面に接触して、テーパー筒片内が閉鎖された空間となることから、テーパー筒片に対する加温のための熱が逃げないので、効率良く行われることになる。
【0016】
この状態で、容器内が設定温度まで加温されると、底部のテーパー筒片は、加温により変形し易い肉厚に設定されているので、加温された状態で、上昇した容器の内圧が作用すると、「底落ち」状に下降変位して、脚突片を下方に突出させる。
【0017】
テーパー筒片が下降変位して脚突片を下方に突出させると、接地部に代わって脚突片が接地機能部分となるため、容器は、加温器の加温面から押上げられて、脚突片だけで加温器の加温面に接触することになる。
【0018】
この際、脚突片は、等しい突出高さで三つ以上を、周方向に沿って略等間隔に突設しているものであるので、この下方に突出した脚突片は、安定した脚機能を発揮することになる。
【0019】
この状態では、底部のテーパー筒片内が開放された状態になると共に、加温器の加温面には脚突片の突出端だけが接触している状態となるので、テーパー筒片内の熱が放散されると共に、接触加熱面積が減少する。
【0020】
このため、加温器による容器の加温は、設定温度までとなり、テーパー筒片の変形による加温作用の低下程度が過剰となった場合は、テーパー筒片が原形に復帰して、効率の良い加温状態に戻る。
【0021】
また、テーパー筒片は、加温により変形し易い肉厚、すなわち肉薄に成形されているので、底部を成形するに要する合成樹脂材料量をその分、少なくすることができる。
【0022】
本発明の別の構成は、底部の脚筒片を、下方に縮径する円筒片状とした、ものである。
【0023】
脚筒片を、下方に縮径する円筒片状としたものにあっては、テーパー筒片の「底落ち状」の下降変形により、脚筒片の下端部の径が拡径変形することになるが、このように脚筒片の下端部が拡径変形しても、脚筒片の下端部が大きく外方に突出することがない。
【0024】
また、本発明の別の構成は、底部の陥没中央部分を、有頂短円筒状とした、ものである。
【0025】
陥没中央部分を、有頂短円筒状としたものにあっては、加温されてテーパー筒片が下降変位した状態で、陥没中央部分の一部が、脚突片の下端よりも下方に突出する程度に変形するのを、略完全に防止することができる。
【0026】
また、本発明の別の構成は、容器本体を、射出成形品とした、ものである。
【0027】
容器本体を、射出成形品としたものにあっては、底部の肉厚設定が容易であると共に、成形性の低下を生じさせることなく、脚突片を成形できる。
【0028】
また、本発明の別の構成は、容器本体を、熱成形による成形品とした、ものである。
【0029】
容器本体を、熱成形による成形品としたものにあっては、容器本体全体を、肉薄に成形することが容易である。
【0030】
また、本発明の別の構成は、容器本体を、2軸延伸ブロー成形品とした、ものである。
【0031】
容器本体を、2軸延伸ブロー成形品としたものにあっては、この種のボトル状容器の底部の成形性の悪さを解消することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、加温器による容器の加温を、略一定した設定温度までとすることができるので、底部の熱変形を一定範囲内に抑えることができると共に、内容物に対する加温程度を一定範囲に設定することができ、これにより安全で良好な加温状態を得ることができる。
【0033】
また、底部を成形するに要する合成樹脂材料量を、少なくすることができるので、容器の製造に要する合成樹脂材料量の無理のない減少を得ることができ、これにより省資源化を十分に達成することができる。
【0034】
脚筒片を、下方に縮径する円筒片状としたものにあっては、脚筒片の下端部が拡径変形しても、脚筒片の下端部が大きく外方に突出することがないので、加温器の加温面に、隣接して整列配置された各容器が、拡径変形した脚筒片の下端部で押し合うと云う不都合を生じることがなく、加温器に対する複数の容器の安定した載置状態を得ることができる。
【0035】
陥没中央部分を、有頂短円筒状としたものにあっては、陥没中央部分が、脚突片の下端よりも下方に突出するのを防止することができるので、陥没中央部分が脚突片による脚機能を邪魔することがなく、脚突片による安定して良好な脚機能を得ることができる。
容器本体を、射出成形品としたものにあっては、底部の肉厚設定が容易であると共に、成形性の低下を生じさせることなく、脚突片を成形できるので、要求される機能を有する脚突片を簡単に得ることができる。
【0036】
容器本体を、熱成形により成形品としたものにあっては、容器本体全体を、肉薄に成形することが容易であるので、簡易な加温用の容器を安価に得ることができる。
【0037】
容器本体を、2軸延伸ブロー成形品としたものにあっては、この種のボトル状容器の底部の成形性の悪さを解消することができるので、成形が容易となると共に、大幅な省資源化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1〜図4に示した第一の実施形態例の容器1は、上端の開口部10に外鍔片を設けてカップ状容器に、射出成形された容器本体2の開口部10を、容器本体2内に所定量の内容物Nを充填収納した状態で、アルミラミネートシート等の高いバリヤー機能を有する蓋体11の溶着により、密閉している。
【0040】
容器本体2は、下方にやや縮径した円筒状の胴部3の下端に底部4を連設して構成され、底部4は、下端部を湾曲状に縮径して胴部3の下端に連設した脚筒片5と、この脚筒片5の下端部である接地部6に下端周端縁を連設させて、上方に縮径したテーパー円筒状のテーパー筒片7と、このテーパー筒片7の上端に、短筒片の下端を連設した、有頂短円筒状の陥没中央部分9とから構成されている。
【0041】
テーパー筒片7の下面には、等しい突出高さに三つ以上(図示実施例の場合、五つ)の脚突片8が、周方向に沿って等間隔に突設(図2参照)されているが、この脚突片8は、テーパー筒片7が「底落ち」状に変形していない状態では、接地部6が形成する接地面レベルからはみだして、下方に突出することがないように成形されていることは、云うまでもない。
【0042】
有頂短円筒状をした陥没中央部分9の頂壁は、やや球弧状に膨出湾曲した壁構造に成形されており、底部4が加温された状態となった際に、下方に突出状に変形することがないように構成されている。
【0043】
そして、底部4全体、特にテーパー筒片7は、加温により変形し易くなる程度に薄い肉厚に成形されている。
【0044】
図3に示すように、内容物Nを密封収納した容器1を、ホットウォーマ等の加温気H上に載置して加温すると、内容物Nおよびヘッドスペースの空気も加温されて膨張するので、この膨張により、容器1内の圧力、すなわち内圧が上昇すると共に、容器1自体も加温されて、特に底部4が軟化する。
【0045】
このため、容器1に対する加温が継続して、予め設定された温度まで加温されると、増大した内圧と、進行した軟化とにより、テーパー筒片7が「底落ち」状に下降変位(図4参照)し、脚突片8を「脚」として機能させながら、容器1全体をリフトアップする。
【0046】
この図4に示した、脚突片8による「リフトアップ」状態では、テーパー筒片7の内部が開放され、そこに貯まっていた熱気が放散されると共に、加温器Hに対する底部4の接触面積が小さくなるので、容器1に対する加温器Hによる加温効率が、極端に低下し、それ以上の加温が停止する。
【0047】
これにより、内容物Nの必要以上の加温を防止することになると共に、底部4の必要以上の変形を防止し、不良変形の発生を確実に防止する。
【0048】
図1〜図4に示した第一の実施形態例の場合、容器本体2は、その全体が肉薄な射出成形品であるので、成形材料としては、ポリプロピレンが適している。
【0049】
図5と図6は、第二の実施形態例を示すもので、第一の実施形態例と殆ど同じカップ状容器に構成されているが、容器本体2は、合成樹脂シート体からのサーモフォーム成形品となっている。
【0050】
この第二の実施形態例においては、ポリプロピレン等のシート体からのサーモフォーム成形品であるので、容器本体1を所望する程度に肉薄に成形するのが容易であると共に、その成形処理が容易で、容器1を安価に得ることができる。
【0051】
図7と図8は、第三の実施形態例を示すもので、PETにより、ボトル状に2軸延伸ブロー成形されたもので、底部4は、第二の実施形態例と殆ど同じとなっているが、開口部10は、ネジキャップ状の蓋体11により、開閉可能に構成されている。
【0052】
この第三の実施形態例においては、PET製の2軸延伸ブロー成形品であるので、底部4を肉薄に成形するのが容易であり、これによりきわめて高い省資源化効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施形態例を示す、全体縦断面図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、底面図である。
【図3】容器の加温時の状態を示す、動作説明図である。
【図4】容器の加温された状態を示す、動作説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態例を示す、全体縦断面図である。
【図6】図5に示した実施形態例の、底面図である。
【図7】本発明の第三の実施形態例を示す、全体縦断面図である。
【図8】図7に示した実施形態例の、底面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ;容器
2 ;容器本体
3 ;胴部
4 ;底部
5 ;脚筒片
6 ;接地部
7 ;テーパー筒片
8 ;脚突片
9 ;陥没中央部分
10;開口部
11;蓋体
N ;内容物
H ;加温器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温器で加温されながら温かい内容物を収納する容器本体の開口部を、蓋体で密封した合成樹脂製容器において、前記容器本体の底部を、脚筒片と、上方に縮径するテーパー筒片と、内方に陥没する陥没中央部分とから構成し、前記脚筒片の下端に形成された接地部にテーパー筒片の下端を連設し、該テーパー筒片の上端に陥没中央部分を連設し、前記テーパー筒片の肉厚を、前記加温器による加温により変形し易くなる程度の値に設定し、前記テーパー筒片の下面に、突出高さの等しい三つ以上の脚突片を、周方向に沿って略等間隔に突設した合成樹脂製容器。
【請求項2】
脚筒片を、下方に縮径する円筒片状とした請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
陥没中央部分を、有頂短円筒状とした請求項1または2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
容器本体を、射出成形品とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
容器本体を、熱成形による成形品とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
容器本体を、2軸延伸ブロー成形品とした請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241964(P2009−241964A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92025(P2008−92025)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】